説明

回転霧化式塗装装置

【課題】塗料の微粒化能力を向上できる回転霧化式塗装装置を提供する。
【解決手段】回転霧化式塗装装置10の回転霧化頭20は、塗料を遠心力で薄膜化する第1及び第2塗料吐出沿面42、44を前面に有する第1及び第2ベルカップ38、40を有する。回転霧化頭20には、塗料溜り部32から塗料を流出させて各塗料吐出沿面42、44へ供給するための第1及び第2塗料供給孔46、48が第1及び第2ベルカップ38、40の各々に対応して設けられ、各塗料吐出沿面42、44の外周縁部には、回転霧化頭20の半径方向に沿って延在する第1及び第2溝54、56が周方向に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化頭の先端から液体塗料を噴霧して静電塗装を行う回転霧化式塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディなどを塗装する塗装装置として、回転霧化式塗装装置が知られている。この回転霧化式塗装装置は、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で、回転霧化頭に導電性塗料(液体塗料)を供給する。これにより、液体塗料を帯電させて霧化し、回転霧化頭の先端縁から噴霧して、静電塗装を行う。
【0003】
また、一従来例に係る回転霧化式塗装装置では、軸孔を介して回転霧化頭に供給された塗料を回転霧化頭の内表面(塗料吐出沿面)に沿って液膜として放出端縁に導き、放出端縁に形成された溝によって多数の液糸に細分化して放出する(例えば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−213991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、塗装ロボットの削減に伴い、回転霧化頭1台あたりの塗料の吐出量増大が求められている。このようなニーズに対応して回転霧化頭へ供給する塗料の量を増大させた場合、回転霧化頭の表面での液膜厚が厚くなり、遠心力が十分に与えられないまま回転霧化頭の表面を流れることとなる。この場合、液膜の厚い部分はコリオリの力を受けて回転霧化頭に対して円周方向に流れることにより、液膜厚がさらに厚くなる。よって、微粒化能力が悪化し、塗膜品質の不具合が生じる。このような問題を解決するために、回転霧化頭を大きくすることが考えられるが、車体の内板部品等との干渉や、回転霧化頭の重量増大に伴う回転数低下等の観点から好ましい対策とはいえない。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、塗料の微粒化能力を向上できる回転霧化式塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、内部に塗料溜り部を有し、供給された塗料を微粒化してワークに対して吐出する回転霧化頭と、前記塗料溜り部に前記塗料を供給するための塗料供給ノズルと、を備えた回転霧化式塗装装置であって、前記回転霧化頭は、前記塗料を遠心力で薄膜化する塗料吐出沿面を前面に有する複数のベルカップを有し、前記回転霧化頭には、前記塗料溜り部から前記塗料を流出させて前記各塗料吐出沿面へ供給するための塗料供給孔が前記複数のベルカップの各々に対応して設けられ、前記各塗料吐出沿面の外周縁部には、前記回転霧化頭の半径方向に沿って延在する複数の溝が周方向に形成されることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、塗料供給ノズルから供給された塗料を複数のベルカップにそれぞれ供給し、各ベルカップにおいて、塗料吐出沿面の外周端部に形成された溝で塗料を細分化し、液糸として放出するので、塗料の微粒化能力を向上させることができる。よって、回転霧化頭への塗料の供給量を増大させた場合でも、塗料を確実に微粒化することができ、良好な塗膜品質を得ることができる。
【0009】
上記の回転霧化式塗装装置において、前記複数のベルカップの前記塗料供給孔は、互い違いに等間隔に配置され、かつそれらの流入口が同一円周上に位置するとよい。
【0010】
上記の構成によれば、複数のベルカップの塗料供給孔が、互い違いに等間隔に配置され、かつそれらの流入口が同一円周上に位置するので、各ベルカップへ同一量の塗料を供給できる。
【0011】
上記回転霧化式塗装装置において、前記複数のベルカップは、前記塗料供給孔の数及び開口径が同一であるとよい。
【0012】
上記の構成によれば、複数のベルカップ間で塗料供給孔の数及び開口径が同一であるので、各ベルカップへ同一量の塗料を供給できる。
【0013】
上記の回転霧化式塗装装置において、前記複数のベルカップは、前記塗料供給ノズルに対して同軸的に配置され、かつ互いに同一外径を有するとよい。
【0014】
上記の構成によれば、複数のベルカップ間で同一の大きさ及び形状の溝を設けることができるため、各ベルカップでの微粒化を均等にすることができ、したがって回転霧化頭全体として塗料粒径を均一化でき、塗膜品質を向上できる。
【0015】
上記の回転霧化式塗装装置において、前記複数のベルカップに形成された前記溝の周方向の位相は、前記ベルカップ間で異なっているとよい。
【0016】
上記の構成によれば、ベルカップ間で溝の周方向の位相をずらすことで、各ベルカップの外周縁部から放出された瞬間の液糸は、互い違いに飛び出してシェーピングエアを均等に受けることができ、ベルカップごとに確実に微粒化(液滴化)することができ、塗膜品質を一層向上できる。
【0017】
上記の回転霧化式塗装装置において、前記複数のベルカップは、一体的に回転するとよい。
【0018】
上記の構成によれば、複数のベルカップが同一回転数で回転するため、各ベルカップに供給された塗料に同一の遠心力を与え、塗料を均等に微粒化することができ、塗膜品質を一層向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転霧化式塗装装置によれば、塗料供給管から供給された塗料を複数のベルカップにそれぞれ供給し、各ベルカップにおいて、塗料吐出沿面の外周端部に形成された溝で塗料を微粒化するので、塗料の微粒化能力を向上させることができる。よって、回転霧化頭への塗料の供給量を増大させた場合でも、塗料を確実に微粒化することができ、良好な塗膜品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転霧化式塗装装置の縦断面図である。
【図2】図1に示した回転霧化式塗装装置の第1ベルカップの正面図である。
【図3】第1ベルカップの部分拡大正面図である。
【図4】変形例に係る回転霧化式塗装装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る回転霧化式塗装装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転霧化式塗装装置10の縦断面図である。図1に示すように、回転霧化式塗装装置10は、装置本体のケーシング12と、ケーシング12内に設けられたエアモータ14と、エアモータ14によって高速回転する回転軸16と、回転軸16の中空部に挿通された管部材18と、回転軸16の先端に設けられたベル型の回転霧化頭20と、回転霧化頭20の先端外周に向けてシェーピングエアを噴出するシェーピングエアリング22とを有する。
【0023】
エアモータ14は、図示しない圧縮空気源から圧縮エアが供給され、回転軸16を高速回転するように構成されている。この回転軸16は、高電圧を発生する図示しない高電圧発生装置に接続されている。したがって、ベルカップには回転軸16を介して負の高電圧が印加される。また、回転軸16は、中空円筒状に形成された部材であり、その中空部内には、管部材18が配置されている。
【0024】
管部材18内には、塗料を流すための塗料供給路24と、洗浄液を流すための洗浄液供給路26とが形成されている。管部材18の先端部は、二重管となっており、塗料を吐出する塗料供給ノズル28と、洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル30とが同心状に形成されている。
【0025】
回転霧化頭20は、回転軸16の先端に固定されており、回転軸16がエアモータ14の作用下に回転すると、回転霧化頭20も回転軸16とともに一体的に回転する。回転霧化頭20の内部には、管部材18を介して供給された塗料を一旦貯留するための塗料溜り部32が形成されている。塗料溜り部32は、円形の空間である。この塗料溜り部32の中心部に、塗料供給ノズル28が臨んでいる。
【0026】
図1に示すように、回転霧化頭20は、回転軸16に固定されたインナー部材34と、インナー部材34の外周部に固定されたアウター部材36とから構成されており、インナー部材34とアウター部材36との間に、塗料溜り部32が形成されている。インナー部材34には、回転軸16の先端部が嵌合する凹部34aが形成され、インナー部材34の前面中央部には、管部材18の先端部が挿通される開口部34bが形成されている。
【0027】
アウター部材36は、複数のベルカップ(本実施形態では、2つであり、以下、「第1ベルカップ38」、「第2ベルカップ40」という)を有している。第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40は、全体として円形のカップ状に形成されており、前方に向かって半径方向外方に広がるフレア部39、41を有する。第1ベルカップ38のフレア部39の背面と、第2ベルカップ40のフレア部41の前面との間には、円環状の隙間43が形成されている。
【0028】
本実施形態において、第1ベルカップ38の外径と、第2ベルカップ40の外径は同一に設定されている。第1ベルカップ38の前面には、当該前面に供給された塗料を薄膜化する第1塗料吐出沿面42が形成され、第2ベルカップ40の前面には、当該前面に供給された塗料を薄膜化する第2塗料吐出沿面44が形成されている。第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44は、ともに、半径方向外方に向かって前方に傾斜し、正面視でドーナツ型の面であり、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40の回転による遠心力で、塗料溜り部32からの塗料を薄膜化する。
【0029】
図2は、回転霧化頭20の正面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図1〜図3に示すように、回転霧化頭20には、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44へ塗料を供給するための塗料供給孔46、48が、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44の各々に対応して、それぞれ周方向に複数ずつ設けられている。以下、第1塗料吐出沿面42に塗料を供給する塗料供給孔46を「第1塗料供給孔46」とよび、第2塗料吐出沿面44に塗料を供給する塗料供給孔48を「第2塗料供給孔48」とよぶ。図示した構成例では、第1塗料供給孔46及び第2塗料供給孔48は、第1ベルカップ38に形成されている。
【0030】
第1塗料供給孔46は、回転霧化頭20の軸線aを中心とする周方向に沿って等間隔に複数(図示例では、60個)形成されている。図3に示すように、第1塗料供給孔46は、一端(内方端)が塗料溜り部32で流入口46aとして開口し、他端(外方端)が第1ベルカップ38の前面で流出口46bとして開口している。各第1塗料供給孔46は、正面視で回転霧化頭20の半径方向に延在し、かつ、回転霧化頭20の前方に向かって軸線aから遠ざかるように傾斜している。
【0031】
第2塗料供給孔48は、回転霧化頭20の軸線aを中心とする周方向に沿って等間隔に複数(図示例では、第1塗料供給孔46と同数の60個)形成されている。図3に示すように、第2塗料供給孔48は、一端(内方端)が塗料溜り部32で流入口48aとして開口し、他端(外方端)が第2ベルカップ40の外周面で流出口48bとして開口している。
【0032】
各第2塗料供給孔48は、正面視で回転霧化頭20の半径方向に延在し、かつ、前方に向かって回転霧化頭20の軸線aから遠ざかるように傾斜している。なお、各第2塗料供給孔48は、第1ベルカップ38又は第2ベルカップ40の形状等の諸条件に応じて、回転霧化頭20の軸線a方向に垂直に延在してもよく、あるいは、回転霧化頭20の後方に向かって回転霧化頭20の軸線aに近づくように傾斜してもよい。
【0033】
第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48は、第1塗料吐出沿面42と第2塗料吐出沿面44に同一量の塗料を供給するように構成されている。すなわち、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とは、互い違いに等間隔に配置され、かつそれらの流入口46a、48aが同一円周上に位置している。したがって、回転霧化頭20の軸線aと第1塗料供給孔46の流入口46aとの距離と、軸線aと第2塗料供給孔48の流入口48aとの距離は等しい。また、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とは、開口径及び長さが同一に設定されている。第1塗料供給孔46及び第2塗料供給孔48の数は、図示例の構成に限らず、設計条件等に応じて変更し得る。
【0034】
第1ベルカップ38の背面側中央部には、塗料溜り部32の内方(管部材18側)に向かって突出するガイド部50が形成され、供給された塗料や洗浄液を半径方向外側に分配するようになっている。また、ガイド部50の周囲には、複数(図示例では、4つ)の洗浄液吐出孔52が形成されている。洗浄液吐出孔52は、それらの軸線が前方において回転霧化頭20の軸線aと交差するように傾斜している。
【0035】
第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40の前面外周縁部(すなわち、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44の外周縁部)の各々には、塗料を液糸にするための複数の溝54、56が周方向に等間隔に形成されている。以下、第1塗料吐出沿面42の外周縁部に形成された溝54を「第1溝54」とよび、第2塗料吐出沿面44の外周縁部に形成された溝56を「第2溝56」とよぶ。
【0036】
各第1溝54及び各第2溝56は、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44の外周縁部の全周にわたり等間隔に設けられるとともに、回転霧化頭20の半径方向に沿って延在しており、それぞれ、第1塗料吐出沿面42、第2塗料吐出沿面44に沿って薄半径方向外方に流れてきた薄膜状の塗料を細分化する。これにより、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40の外周端からは、細糸状となった塗料(液糸)が放出される。
【0037】
本実施形態において、第1溝54と第2溝56とでは、溝数、溝長さ、溝形状が同一であるが、互いに周方向の位相が異なっている。このため、第1溝54から放出される液糸と、第2溝56から放出される液糸は、周方向の位相がずれる。
【0038】
シェーピングエアリング22は、回転霧化頭20の基部を取り囲むようにケーシング12の先端部に固定されており、第2ベルカップ40の外周端の後方から、回転霧化頭20の先端外周に向けてシェーピングエアを噴出するものである。図1に示すように、シェーピングエアリング22は、その内側部分を構成する内側リング部材58と、その外側に配置される外側リング部材60とから構成されている。
【0039】
内側リング部材58は、後端側の大径部62と、この大径部62の先端に設けられた小径部64とを備えている。大径部62には、図示しないエア供給源に連通したエア供給通路63が形成されている。外側リング部材60は、後端側の内側リング部材58の大径部62に外側から接する大径部65と、この大径部65の先端から内側リング部材58の小径部64の先端に向けて内向きに傾斜するテーパ部66とを備えている。
【0040】
内側リング部材58と外側リング部材60との間には、エア供給通路63と連通した環状の隙間67が形成されている。この隙間67の先端は、第2ベルカップ40の外周端部の後方位置で、エアの噴出口69として回転霧化頭20の先端外周に向けて開口している。したがって、エアを図示しないエア供給源からエア供給通路63に供給すると、シェーピングエアが噴出口から回転霧化頭20の先端外周に向けて噴出され、回転霧化頭20から遠心方向外方に放出された霧状の塗料が所定の塗布パターンに整形される。
【0041】
本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0042】
塗装を行うときは、エアモータ14により回転軸16を高速に回転させる。そして、塗料供給ノズル28から回転霧化頭20の塗料溜り部32に向けて塗料を吐出する。これにより、塗料溜り部32に流入した塗料は、第1塗料供給孔46及び第2塗料供給孔48に流入する。この場合、第1塗料供給孔46を通過した塗料は、第1塗料吐出沿面42に流出し、そこで薄膜化された後、第1溝54で細分化されて第1ベルカップ38の外周端から液糸となって飛び出す。第2塗料供給孔48を通過した塗料は、第2塗料吐出沿面44に流出し、そこで薄膜化された後、第2溝56で細分化されて第2ベルカップ40の外周端から液糸となって飛び出す。第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40の外周端から放出された液糸は、塗料粒子として微粒化される。
【0043】
このとき、回転霧化頭20とワーク(被塗装物)との間には高電圧が印加されているため、回転霧化頭20によって微粒化された帯電塗料粒子は、ワークに向かって飛行し、ワークに塗着する。また、このときの塗料の噴霧パターンは、シェーピングエアリング22から噴出されるシェーピングエアによりパターン整形される。
【0044】
このように、本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10によれば、塗料供給ノズル28から供給された塗料を第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40にそれぞれ供給し、各ベルカップ38、40において、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44の外周端部に形成された第1溝54及び第2溝56で塗料を細分化し、液糸として放出するので、塗料の微粒化能力を向上させることができる。よって、回転霧化頭20への塗料の供給量を増大させた場合でも、塗料を確実に微粒化することができ、良好な塗膜品質を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10によれば、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とは、互い違いに等間隔に配置され、かつそれらの流入口46a、48aが同一円周上に位置するので、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40へ同一量の塗料を供給できる。すなわち、第1塗料供給孔46の流入口46aと、第2塗料供給孔48の流入口48aとが、同一円周上に位置することで、各流入口46a、48aで塗料に作用する遠心力が同一となり、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とに塗料が均等に分配される。
【0046】
さらに、本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10によれば、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48では、孔数及び開口径が同一に設定されているので、一層確実に、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40へ同一量の塗料を供給できる。
【0047】
またさらに、回転霧化式塗装装置10によれば、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40は、塗料供給ノズル28に対して同軸的に配置され、かつ互いに同一外径を有するので、第1ベルカップ38に設ける第1溝54と、第2ベルカップ40に設ける第2溝56とを、同一の大きさ及び形状にすることができる。これにより、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40での微粒化を均等にすることができ、したがって回転霧化頭20全体として塗料粒径を均一化でき、塗膜品質を向上できる。
【0048】
本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10によれば、第1溝54と第2溝56は、互いに周方向の位相が異なっているので、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40の外周縁部から放出された瞬間の液糸は、互い違いに飛び出て、シェーピングエアを均等に受けることができる。よって、第1ベルカップ38、第2ベルカップ40ごとに塗料を確実に微粒化(液滴化)することができ、塗膜品質を一層向上できる。
【0049】
また、本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10によれば、第1ベルカップ38と第2ベルカップ40とは互いに固定されているため、これらは一体的に回転する。よって、第1ベルカップ38と第2ベルカップ40は、同一回転数で回転するため、第1ベルカップ38及び第2ベルカップ40に供給された塗料に同一の遠心力を与え、塗料を均等に微粒化することができ、塗膜品質を一層向上できる。
【0050】
上述した本実施形態に係る回転霧化式塗装装置10では、第1塗料供給孔46の流入口46aと第2塗料供給孔48の流入口48aとは、回転霧化頭20の軸線a方向に関する位置が同一であるが、当該軸線a方向の位置が互いに異なってもよい。このように構成しても、回転霧化頭20の軸線aと第1塗料供給孔46の流入口46aとの距離と、前記軸線aと第2塗料供給孔48の流入口48aとの距離とが等しいので、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44へ同一量の塗料を供給できる。
【0051】
回転霧化式塗装装置10では、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48は、周方向に互い違いに配置され、別々の流入口46a、48aを有しているが、図4に示す変形例に係る回転霧化式塗装装置10aのように、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とで、流入口70を共有してもよい。すなわち、回転霧化式塗装装置10aでは、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48は、流入口70を共有し、流出口46b、48bを別々としている。第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48は、回転霧化頭20の軸線aを中心とした周方向に関し、位相が一致している。
【0052】
図4に示した回転霧化式塗装装置10aの構成によっても、図1に示した回転霧化式塗装装置10と同様に、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44へ同一量の塗料を供給できる。すなわち、回転霧化式塗装装置10aでは、第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48とが共通の流入口70を有することにより、塗料溜り部32からの塗料が流入口70で第1塗料供給孔46と第2塗料供給孔48に均等に分配されるので、第1塗料吐出沿面42及び第2塗料吐出沿面44へ同一量の塗料を供給できる。
【0053】
上述した実施形態では、回転霧化頭20は2つのベルカップを有する構成であるが、ベルカップを3つ以上有する構成であってもよい。この場合、各ベルカップにおいて、フレア部の前面に塗料吐出沿面を形成し、各フレア部39、41間に環状の隙間が形成されるように各ベルカップを軸線a方向にずらして配置する。
【0054】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10、10a…回転霧化式塗装装置 20…回転霧化頭
28…塗料供給ノズル 38…第1ベルカップ
40…第2ベルカップ 42…第1塗料吐出沿面
44…第2塗料吐出沿面 46…第1塗料供給孔
48…第2塗料供給孔 54…第1溝
56…第2溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に塗料溜り部を有し、供給された塗料を微粒化してワークに対して吐出する回転霧化頭と、
前記塗料溜り部に前記塗料を供給するための塗料供給ノズルと、を備えた回転霧化式塗装装置であって、
前記回転霧化頭は、前記塗料を遠心力で薄膜化する塗料吐出沿面を前面に有する複数のベルカップを有し、
前記回転霧化頭には、前記塗料溜り部から前記塗料を流出させて前記各塗料吐出沿面へ供給するための塗料供給孔が前記複数のベルカップの各々に対応して設けられ、
前記各塗料吐出沿面の外周縁部には、前記回転霧化頭の半径方向に沿って延在する複数の溝が周方向に形成される、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転霧化式塗装装置において、
前記複数のベルカップの前記塗料供給孔は、互い違いに等間隔に配置され、かつそれらの流入口が同一円周上に位置する、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転霧化式塗装装置において、
前記複数のベルカップは、前記塗料供給孔の数及び開口径が同一である、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転霧化式塗装装置において、
前記複数のベルカップは、前記塗料供給ノズルに対して同軸的に配置され、かつ互いに同一外径を有する、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転霧化式塗装装置において、
前記複数のベルカップに形成された前記溝の周方向の位相は、前記ベルカップ間で異なっている、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転霧化式塗装装置において、
前記複数のベルカップは、一体的に回転する、
ことを特徴とする回転霧化式塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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