説明

図面作成CADと部材展開CADとの間の情報連携システム

【課題】住宅建設において設計部門のCADシステムと部材展開部門のCADシステムとの間で、入力階及び立面階の情報に関する情報連携を行うシステムを提供する。
【解決手段】
情報連携システムを設計部門に設置された図面作成CADシステム、部材展開部門に設置された図面作成CADシステム及び部材展開CADシステムとで構成し、部材展開部門に設置された図面作成CADシステムは、建物を各階の基準高さで層状に切断した場合に部材の大半が属している階を立面階として定義し、部材の属する立面階を情報として付加する情報付加手段と、情報付加手段により付加された立面階に関する情報と入力階に関する情報を比較し、立面階に関する情報と入力階に関する情報が異なる場合には立面階に関する情報を選択し階情報の補正を行い、立面階に関する情報と入力階に関する情報が同じ場合には階情報の補正を行わない比較補正手段とを有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建設における、設計部門に設置された図面作成CAD(Computer Aided Design)と部材展開部門に設置された部材展開CADとの間の情報連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウスメーカー等が、住宅設計及び建築部材の自社工場等への発注業務を行うに際しては、設計部門(営業所)において顧客と打合わせを重ねながら設計図面・仕様書を作成する実施設計CAD(以下、「図面作成CADシステム」という)、及び部材展開部門(工場)において部材を拾い出すために利用するCAD(以下、「部材展開CADシステム」という)が用いられている。
両システムは、ともに住宅を扱うモデリングCADであるが、開発時期の相違や用途に特化した機能を実装するために、各々独自の開発が重ねられてきた結果、単純にデジタル連携することができず、設計部門で図面作成CADシステムによって作成した図面・仕様書を、プリントアウトした後に工場へ郵送し、工場で部材展開CADシステムによって、その図面を元に最初から再入力していた。
一方、建設分野において設計部門と施工部門との情報統合システムに関するものとして、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−316835
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部材展開部門において図面・仕様書を最初から入力し直すという従来の方法では、設計部門で入力されたのと同様の要素を再入力するという二度手間が生じ、そのために多大な労力が必要とされていた。
また、再入力の際に、図面・仕様書の見落としや勘違いなどによる入力ミスを完全に防止することは難しいため、結果として、間違った部材を拾い出して出荷され、現場でトラブルが発生することもあった。
上記特許文献1は、設計部門と施工部門との情報を連携し、業務の合理化・効率化を図ろうとするものであるが、部材展開部門が図面・仕様書の再入力を行うことなく部材展開処理を行う上で必要となる情報連携手段について開示するものではない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、部材展開部門における図面・仕様書の再入力の負担を軽減し、再入力の際の見落としや入力忘れといったヒューマンエラーの削減を可能とする、図面作成CADと部材展開CADとの間の情報連携システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る情報連携システムは、住宅建設において設計部門のCADシステムと部材展開部門のCADシステムとの間の情報連携を行うシステムであって、当該システムは、設計部門に設置された図面作成CADシステム、部材展開部門に設置された図面作成CADシステム及び部材展開CADシステムとで構成され、前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムは、電気通信手段によって、前記設計部門に設置された図面作成CADシステムから送信された情報の受信が可能とされ、前記設計部門に設置された図面作成CADシステムは、作成された部材の入力階に関する情報を、前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムに送信する送信手段を有し、前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムは、前記部材の入力階に関する情報を受信する受信手段と、建物を各階の基準高さで層状に切断した場合に部材の大半が属している階を立面階として定義した上で、この定義に基づいて部材の属する立面階を情報として付加する情報付加手段と、前記情報付加手段により付加された部材の属する立面階に関する情報と前記入力階に関する情報を比較し、立面階に関する情報と入力階に関する情報が異なる場合には立面階に関する情報を選択し、階情報の補正を行い、一方、立面階に関する情報と入力階に関する情報が同じ場合には階情報の補正を行わない比較補正手段と、補正を行った場合は補正後の階情報を前記部材展開CADシステムに送信し、補正を行わない場合は部材の入力階の情報を前記部材展開CADシステムに送信する送信手段とを有し、前記部材展開CADシステムは前記部材の補正後の階情報又は入力階の情報を受信する受信手段とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシステムは、外形領域、屋根、階、仕様情報に関して特徴的な連携機能を有するため、本発明によれば、設計部門の図面作成CADシステムで作成された情報(CAD情報・仕様情報)を、中間ファイルを介することによって、部材展開部門の部材展開CADシステムで変換して読込み、読込んだ情報を用いて部材展開処理を行うことができる。
したがって、部材展開部門の側で、設計部門で作成された情報を再度入力するという必要がなくなり、部材展開部門で従来要していた負担・労力を大幅に軽減することが可能となる。
【0008】
さらに、部材展開CADシステムにおいて読込んだ情報を、そのまま用いて部材展開処理が行えるため、図面・仕様書の見落としや入力忘れといった、従来再入力時に発生していたヒューマンエラーがなくなり、間違った部材が現場へ出荷される等の出荷ミスを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るシステムの全体構成図である。
【図2】本発明による情報連携の流れを示すフロー図である。
【図3】第1の実施例に係る建物の概略透視図である。
【図4】外形領域に関する連携機能による処理の状況を示す図である。
【図5】屋根に関する連携機能による処理の状況を示す図である。
【図6】屋根に関する連携機能による補正状況を示す図である。
【図7】階に関する連携機能による処理の状況を示す図である。
【図8】階に関する連携機能による階補正状況を示す図である。
【図9】仕様情報に関する連携機能による処理の状況を示す図である。
【図10】仕様書の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る情報連携システムの全体構成図である。本発明に係るシステムは、図1に示すように、設計部門における図面作成CADシステム、部材展開部門における図面作成CADシステム並びに部材展開CADシステム、及び中間ファイルによって構成される。
各CADシステムは、従来の既知の機能に、本発明を実施するために必要なプログラムが付加されたものである。すなわち、システムを制御する主制御部、記憶装置、入力装置、表示装置、出力装置等からなり、主制御部にはOS(Operating system)等の制御プログラム、本発明を実施するためのプログラムを機能させる各種手段の他、当該手段の処理手順を規定したプログラム及びシステムを稼動させるために必要となる諸手段が格納されている。
また、その他、各種データの一時蓄積のための内部メモリや、コンピュータシステムを稼動させ、前記プログラムを実行させる上で必要なハードウエアやソフトウエアなどの構成要件は当然有するものとする。
【0011】
本発明は、設計部門のCADシステムと部材展開部門のCADシステムとの間の情報連携を行うものであるが、本発明が連携を実現する「情報」とは、CAD情報及び仕様情報をいうものとする。「CAD情報」とは、点、線、面などをあらわす幾何データ、及びそれらを繋ぎ合わせて部品化するための位相データ(グループ、レイヤ)、すなわち図形情報、そして該図形情報に部材名、製品コード、寸法、加工方法など形状以外の情報を付加した属性情報によりなる。また、「仕様情報」とは、商品名や建物高さといった、CAD入力情報にない情報である。
【0012】
「部材展開処理」とは、設計図面・仕様書に基づき、建築部材の発注等を目的として、CADシステム(部材展開CADシステム)を用いて部材の自動拾い出しを行うことをいう。「部材展開部門」とは、上記部材展開処理を行うための部署であるが、設計部門と部材展開部門とが、必ずしも同一企業傘下等になくてもよい。
本発明においては、設計部門及び部材展開部門に図面作成CADシステムが設置されるが、「部材展開部門に設置された図面作成CADシステム」とは、設計部門に設置された図面作成CADシステムから、電気通信手段等を通じて、部材展開部門に情報をそのまま(中間ファイル等によって変換する必要なく)受け渡しすることを目的とするシステムをいい、この目的を達成するものであれば、両システムは完全に同一でなくてもよい。「電気通信手段等」とは、図面・仕様書等を紙にプリントアウトすることなく、電子メール等、電子的に情報のやりとりを行う手段をいうものとする。
【0013】
部材展開CADシステムは、部材拾い出し(部材展開処理)を最終目的としているため、図面作成CADシステムと部材展開CADシステムとの間には、単なる絵情報(図形情報)の連携ではなく、壁や屋根・サッシといった部材の属性情報の連携が必要となる。さらに、部材展開処理に際しては、CADの入力情報の他に、商品名や建物高さといったCAD入力情報にない情報(仕様情報)が使用されるため、仕様情報の連携が必要となる。
本発明は、上記の情報連携を可能とするために、デジタル情報を利用した独自の中間ファイルを開発したものであり、その中で、外形領域に関する連携機能、屋根に関する連携機能、階に関する連携機能、仕様情報に関する連携機能、という四点について特に工夫したものである。本発明では、これら四つの機能を具備するシステムを実現したことで、本発明が目的とする情報連携が可能となった。
【0014】
本発明において「建物外形領域ソース情報」、「建物外形領域オブジェクト情報」、「建物外形領域モデル情報」とは、それぞれ、図面作成CADシステム、部材展開CADシステム、中間ファイル内における、建物外形領域についての情報であり、「建物外形領域モデル情報」は、「建物外形領域ソース情報」から「建物外形領域オブジェクト情報」を発生させるためのフラグ的な要素とし機能する。
【0015】
本発明において「コンバートテーブル」とは、図面作成CADシステムにおける属性情報を、部材展開CADシステム側において取得しやすいように値を変換するテーブルである。
【0016】
本発明において「立面階」とは、建物を各階の基準高さで層状に切断し、配置した部材の大半が属している層(階)をいい、部材展開CADシステムにおいて部材展開処理を行うに際しての階概念と同一のものである。
【0017】
本発明において「建物基本情報」とは、商品名や建物高さといった、建物の基本的な情報であり、部材展開処理時に利用されるものである。「初期仕様」とは、図面作成CADシステムと部材展開CADシステムとの間で連携不可能な部材(不足部材)がある場合に、不足部材を部材展開CADシステム側で入力する必要があるが、その際に不足部材の初期値として連動するものである。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例は、本発明に係るシステムが有する、外形領域に関する連携機能を実現するものである。
【0019】
図1は本発明に係るシステムの全体構成図、図2は本発明による情報連携の流れを示すフロー図、図3は第1の実施例に係る建物の概略透視図、図4は外形領域に関する連携機能による処理の状況を示す図である。
また図中、(1)は出窓、(2)はアルコーブ、(3)は小屋裏、(4)は葺下し、(5)は外形領域、(6)は出窓領域、(7)はアルコーブ(単階)、(8)は アルコーブ(階通し)、(9)は地廻り領域、(10)は葺下し候補領域、(11)は小屋裏領域、(12)は基本外形領域、(13)はフラット下屋領域、(14)は葺下し領域、(15)はアルコーブ、(16)は小屋裏外形領域、(17)は外壁線、(18)は屋根構成線である。
【0020】
本実施例に係るシステムは、図1に示すように、営業所(設計部門)における図面作成CADシステム、工場(部材展開部門)における図面作成CADシステム、部材展開CADシステム、及び中間ファイルにより構成される。
【0021】
本実施例における情報連携の流れを、図2に基づいて説明する。
部材展開部門である工場において部材展開処理を行うに先立って、設計部門である営業所において、営業所の有する図面作成CADシステムにより、CAD図面が作成される(S201)。
作成されたCAD図面の情報は、営業所の図面作成CADシステムが有する情報蓄積手段によって、家モデル情報DB(X)として蓄積される(S202)。家モデル情報DBとは、部材の種類や座標といったCAD情報と仕様情報からなる邸別のデータベースである。
蓄積された情報は、電子メール等の通信手段によって、工場の有する図面作成CADシステムに送信され(S203)、家モデル情報(Y)として蓄積される(S204)。
工場の図面作成CADシステムに家モデル情報(Y)として蓄積された情報は、中間ファイルを介して出力処理(S205)、読込処理(S206)が行われ、本実施例の外形領域連携機能によって変換された情報が、家モデル情報DB(Z)として部材展開CADシステムに蓄積されるので(S207)、工場は蓄積された情報を利用して部材展開CADシステムによって材料の拾い出し(部材展開処理)を行う(S209)。
【0022】
次に、本実施例における外形領域連携機能について、図3〜図4に基づいて説明する。
本実施例では、図3に示すような、2階建て住宅を例にする。2階建てとなっている部分は出窓(1)、アルコーブ(2)(一部単階、一部階通し)を有しており、平屋建てとなっている部分は小屋裏(3)を有し、一部葺下し(4)となっている。
【0023】
本実施例において、営業所の図面作成CADシステムにより作成される平面図は、図4(a)に示すように、1Fは外形領域(5)、出窓領域(6)、アルコーブ(単階)(7)、アルコーブ(階通し)(8)から形成され、2Fは外形領域(5)、アルコーブ(階通し)(8)から形成されている。この情報が建物外形領域ソース情報として、工場における図面作成CADシステムの家モデル情報DB(Y)に蓄積され、中間ファイルを介して出力処理・読込処理が行われる。
中間ファイル出力時には、図4(b)に示すように、1Fに地廻り領域(9)、葺下し候補領域(10)、2Fに小屋裏領域(11)が生成され、外形領域(5)、出窓領域(6)、アルコーブ(単階)(7)、アルコーブ(階通し)(8)と併せて、建物外形領域モデル情報が形成される。
地廻り領域(9)は、屋根を軒高で水平方向に切った時の切断面部と総2階部に生成され、葺下し候補領域(10)は、「1F外形領域(5)−地廻り領域(9)」で生成される。さらに、小屋裏領域(11)は、1階屋根と2階屋根の重なっている部分として生成される。
【0024】
そして中間ファイル読込時には、図4(c)に示すように、1Fに基本外形領域(12)、フラット下屋領域(13)、葺下し領域(14)、アルコーブ(15)が形成され、2Fに基本外形領域(12)、小屋裏基本外形領域(16)、アルコーブ(15)が、建物外形領域オブジェクト情報として形成される。
1Fの基本外形領域(12)は、「1F外形領域(5)−アルコーブ(階通し)(8)−葺下し候補領域(10)」から生成され、フラット下屋領域(13)は出窓領域(6)から生成され、さらに葺下し領域(14)は葺下し候補領域(10)から生成される。また、1Fのアルコーブ(15)はアルコーブ(単階)(7)から生成される。
一方で、2階の基本外形領域(12)は「2F外形領域(5)−小屋裏領域(11)」から生成され、小屋裏外形領域(16)は「1F地廻り領域(9)−2F基本外形領域(12)」から生成される。また、2Fのアルコーブ(15)はアルコーブ(階通し)(8)から生成される。
中間ファイルを介して、上記のような出力処理・読込処理を行うことによって、部材展開CADシステムには、図4(c)に示す図面の情報(建物外形領域オブジェクト情報)が、家モデル情報DB(Z)として蓄積されるので、これを利用して部材展開処理が行われることとなる。
【0025】
以上、本実施例によれば、同じ住宅でも図面作成CADシステムと部材展開CADシステムとで、建物外形について入力する要素・場所が異なる場合であっても、中間ファイルを介して出力・読込処理を行わせることで、部材展開CADシステム側において、部材展開処理を行うために必要な情報として再度入力することが不要となる。
【実施例2】
【0026】
本発明の第2の実施例を図面を参照しながら説明する。本実施例は、本発明に係るシステムが有する、屋根に関する連携機能を実現するものである。
【0027】
図5は屋根に関する連携機能による処理の状況を示す図、図6は屋根に関する連携機能による補正状況を示す図である。
また図中、(17)は外壁線、(18)は屋根構成線である。
【0028】
本実施例においても、システム全体の構成(図1)や部材展開処理の基本的な流れ(図2)は、前実施例と同様であり、工場の図面作成CADシステムに家モデル情報(Y)として蓄積された情報が、中間ファイルを介して出力処理・読込処理が行われることとなるが、本実施例は、本発明の有する屋根に関する連携機能によって変換されたCAD情報が、家モデル情報DB(Z)として部材展開CADシステムに蓄積されるものである。
【0029】
本実施例における屋根に関する連携機能について、図5〜図6に基づいて説明する。
本実施例では、営業所の図面作成CADシステムにより作成される平面図(屋根伏図)は、図5(a)に示すように、軒、棟、稜線といった屋根構成線(18)によって作成されており、外壁線(17)から軒先母屋までの寸法値が795mmで設定されている。
上記作成された図面の情報が、工場における図面作成CADシステムに家モデル情報DB(Y)として蓄積されており、中間ファイルを介して出力処理・読込処理が行われる。
【0030】
中間ファイルを介する際には、屋根構成線種類、種類、座標値、各線の向き、勾配、補正値が考慮される。
本実施例では、部材展開CADにおいて垂木先端の位置が屋根構成線(軒線)となる場合を例として、補正値を考慮した補正処理が行われる状況を示す。
図面作成CADシステムにおいて、図6(a)に示すような属性設定がなされているとすると、中間ファイルを介することにより、図面作成CADシステム側の属性より取得された情報が加工され、サイズが調整された上で、部材展開CADシステムによって読込処理が行われる。
情報の加工には、図6(b)に示すように、コンバートテーブルが用いられる。コンバートテーブルにより、図面作成CADの属性を部材展開CAD側で取得しやすいように値が変換される。本実施例では、図6(b)に示すように、「セントレージ・グランツCX」の軒先母屋サイズが45(mm)で設定されているため、本実施例においては、この「45」が補正値として採用され、軒の出795−45=750(mm)として、図5(b)に示すようにサイズ調整された上で、部材展開CADシステムに情報蓄積される。
【0031】
以上、本実施例によれば、同じ住宅でも図面作成CADシステムと部材展開CADシステムとで、屋根の寸法が異なる場合であっても、中間ファイルを介することによって、補正された寸法に変換された上で読込処理が行われるため、部材展開CADシステム側での再入力負担が軽減される。
【実施例3】
【0032】
本発明の第3の実施例を図面を参照しながら説明する。本実施例は、本発明に係るシステムが有する、階に関する連携機能を実現するものである。
図7は階に関する連携機能による処理の状況を示す図、図8は階に関する連携機能による階補正状況を示す図である。
【0033】
本実施例においても、システム全体の構成(図1)や部材展開処理の基本的な流れ(図2)は、前実施例までと同様である。
本実施例では、工場の図面作成CADシステムに家モデル情報(Y)として蓄積された情報が、中間ファイルを介して出力処理・読込処理が行われる際に、本発明の有する階に関する連携機能によって補正され、補正された情報が家モデル情報DB(Z)として部材展開CADシステムに蓄積されるものである。
【0034】
本実施例における階に関する連携機能について、図7〜図8に基づいて説明する。
本実施例では、営業所の図面作成CADシステムにより、図7(a)に示すように、A、B、Cの破風サッシを有する住宅の立面図が作成され、工場の図面作成CADシステムに情報蓄積されている。
【0035】
いま、部材展開CADシステムにおいて部材展開処理を行うにあたり、図8(a)に示すパターン1のように、サッシA、B、Cが、それぞれ3F、2F、2Fの部材として入力されている必要がある場合を考える。
図面作成CADシステムにおいて、サッシA、B、Cが、図8(a)に示すパターン2のように、それぞれ2F、2F、1Fの部材として入力されているものとすると、中間ファイルを介する際に、本発明の有する階に関する連携機能によって、次のような処理がなされる。
すなわち中間ファイル内において、サッシA、B、Cの入力階は、図8(b)に示すように、それぞれ2F、2F、1Fとして認識される。中間ファイルにおいては、建物を各階の基準高さで層状に切断し、配置した部材の大半が属している層(階)を立面階として定義されており、図8(b)に示すように、サッシA、B、Cの立面階が、それぞれ3F、2F、2Fであるという情報が付加される。
そして、入力階≠立面階であれば立面階が採用されるという処理がなされることによって、図7(b)に示すように階補正がなされた上で、部材展開CADシステムに情報蓄積される。
【0036】
また、図面作成CADシステムにおいて、サッシA、B、Cが、図8(a)に示すパターン1のように入力されている場合には、入力階=立面階となるので(図8(c))、中間ファイルを介しても階補正は行われず、そのまま部材展開CADシステムに情報蓄積される。
【0037】
以上の処理をまとめると、以下のとおりである。入力階として入力されている情報から、立面階に関する定義にあてはめて立面階を導き出し、入力階と立面階とを比較した上で、入力階と立面階が異なっていれば立面階を採用して階に関する情報の補正がなされる。一方、入力階と立面階が同じであれば、階に関する情報は補正される必要はないため、階補正が行われず入力階に関する情報が採用される。これらの比較補正処理は、部材展開部門の図面作成CADシステムによって行われ、該部材展開部門の図面作成CADシステムから、補正がなされた、又は補正がなされなかった階に関する情報が部材展開CADシステムへと出力される。
【0038】
以上、本実施例によれば、図面作成CADシステムと部材展開CADシステムとで、同一部材の入力階について階概念が異なる場合であっても、中間ファイルを介することによって、部材展開処理を行う際の階概念と同一の立面階に階補正されるため、部材展開部門において部材の入力階を調整し再入力する手間が不要となる。
【実施例4】
【0039】
本発明の第4の実施例を図面を参照しながら説明する。本実施例は、本発明に係るシステムが有する、仕様情報に関する連携機能を実現するものである。
図9は仕様情報に関する連携機能による処理の状況を示す図、図10は仕様書の例を示す図である。
【0040】
本実施例においても、システム全体の構成(図1)や部材展開処理の基本的な流れ(図2)は、前実施例までと同様であるが、本実施例では、図9に示すように、工場の図面作成CADシステムにCAD情報とともに仕様情報が蓄積され、本発明が有する仕様情報に関する連携機能によって、CAD情報と同時に仕様情報が中間ファイルを介して変換され、読込処理が行われるものである。
【0041】
本実施例における仕様情報に関する連携機能について、図9〜図10に基づいて説明する。
本実施例では、営業所の図面作成CADシステムによって、図10に示すような仕様情報がCAD情報とともに作成・蓄積されており、これらの情報が工場の図面作成CADシステムにおいても蓄積される。
図面作成CADシステム側で作成された仕様書は、図10に示すように、商品名や建物高さ等に関する建物基本情報と、部材の色等に関する初期仕様情報とを含むが、図9に示すように、中間ファイルを介することによって、部材展開CADシステムにおいて、CAD情報とともに上記仕様情報が同時に読込処理される。
【0042】
図9に示すように、読込処理された仕様情報は、初期仕様と建物基本情報として部材展開CADシステムに蓄積される。初期仕様は初期仕様情報と連動し、部材展開CADシステムにおいて不足部材を入力する際の初期値として用いられ、図面作成CADシステムとの間で連携不可能な部材(不足部材)がある場合には、初期仕様に基づいて部材展開CADシステム側で情報入力される。
すなわち、部材展開CADシステム側において、中間ファイルを介することによってCAD情報、初期仕様、建物基本情報が得られ、さらにCAD情報について初期仕様に基づいて不足部材が入力されることによって、部材の自動拾い出し(部材展開)が行われる。
【0043】
部材展開部門では、CAD情報の他に、商品名や建物高さといった仕様情報を用いて部材展開処理を行うが、本実施例によれば、図面作成CAD側で入力した仕様情報を、中間ファイルを介することによって、建物基本情報、初期仕様として抽出して、部材展開CADシステムに読込処理させるため、部材展開部門側で、仕様情報を改めて入力する必要がない。
また、両システムで連携不可能な部材がある場合には、初期仕様が不足部材の初期値として連動しているため、初期仕様に基づいて容易に不足部材を入力することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、運用面の違いから相違点の多い、設計部門のCADシステムと部材展開部門(工場部門)のCADシステムとを、スムーズに情報連携するものであり、住宅建設の分野だけでなく、一般的な建設分野等においても利用できるものであり、産業上利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 出窓
2 アルコーブ
3 小屋裏
4 葺下し
5 外形領域
6 出窓領域
7 アルコーブ(単階)
8 アルコーブ(階通し)
9 地廻り領域
10 葺下し候補領域
11 小屋裏領域
12 基本外形領域
13 フラット下屋領域
14 葺下し領域
15 アルコーブ
16 小屋裏外形領域
17 外壁線
18 屋根構成線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅建設において設計部門のCADシステムと部材展開部門のCADシステムとの間の情報連携を行うシステムであって、
当該システムは、設計部門に設置された図面作成CADシステム、部材展開部門に設置された図面作成CADシステム及び部材展開CADシステムとで構成され、
前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムは、電気通信手段によって、前記設計部門に設置された図面作成CADシステムから送信された情報の受信が可能とされ、
前記設計部門に設置された図面作成CADシステムは、作成された部材の入力階に関する情報を、前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムに送信する送信手段を有し、
前記部材展開部門に設置された図面作成CADシステムは、前記部材の入力階に関する情報を受信する受信手段と、
建物を各階の基準高さで層状に切断した場合に部材の大半が属している階を立面階として定義した上で、この定義に基づいて部材の属する立面階を情報として付加する情報付加手段と、
前記情報付加手段により付加された部材の属する立面階に関する情報と前記入力階に関する情報を比較し、立面階に関する情報と入力階に関する情報が異なる場合には立面階に関する情報を選択し、階情報の補正を行い、一方、立面階に関する情報と入力階に関する情報が同じ場合には階情報の補正を行わない比較補正手段と、
補正を行った場合は補正後の階情報を前記部材展開CADシステムに送信し、補正を行わない場合は部材の入力階の情報を前記部材展開CADシステムに送信する送信手段とを有し、
前記部材展開CADシステムは前記部材の補正後の階情報又は入力階の情報を受信する受信手段とを有することを特徴とする情報連携システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−192005(P2010−192005A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134110(P2010−134110)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【分割の表示】特願2004−17507(P2004−17507)の分割
【原出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】