説明

固体酸化物形燃料電池セル

【課題】端部における破損を抑制できる固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【解決手段】固体電解質層4を燃料極層3と酸素極層6とで挟んで構成された発電素子部9と、該発電素子部9の燃料極層3または酸素極層6に電気的に接続されたインターコネクタ8とを備え、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行う固体酸化物形燃料電池セル10であって、該固体酸化物形燃料電池セル10の燃料ガスまたは酸素含有ガスの流れる方向に沿った断面と直交する方向から見た場合に、インターコネクタ8と燃料極層3または酸素極層6との間に中間層7を具備するとともに、固体酸化物形燃料電池セル10の端部における中間層7の厚みt2が、固体酸化物形燃料電池セル10の中央部における中間層7の厚みt1よりも厚い。これにより、固体酸化物形燃料電池セル10の端部における破損を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池セルは、酸化物からなる固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部を有している。
【0003】
固体酸化物形燃料電池セルでは、例えば、上記のような発電素子部を、内部にガス通路を備えた多孔質の導電性支持体上に形成し、導電性支持体内部のガス通路に燃料ガス(例えば、水素ガス)を流すことにより、導電性支持体を介して燃料極層表面に水素を供給すると同時に、酸素極層の外面に空気等の酸素含有ガスを流すことにより、酸素極層表面に酸素を供給し、これにより、各電極で電極反応を生じせしめ、発電した電流を、導電性支持体に設けられているインターコネクタにより取り出すようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような構造の燃料電池セルは、その複数を集電部材により互いに直列に接続してセルスタックとし、このようなセルスタックを複数、適当な収容容器内に収容し、各セルスタックを導電部材により接続することにより、燃料電池モジュールとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−146334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の燃料電池セルでは、端部に何らかの衝撃が与えられたり、もしくは応力集中した場合に破損が生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、端部における破損を抑制できる固体酸化物形燃料電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部と、該発電素子部の前記燃料極層または前記酸素極層に電気的に接続されたインターコネクタとを備え、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行う固体酸化物形燃料電池セルであって、該固体酸化物形燃料電池セルの前記燃料ガスまたは前記酸素含有ガスの流れる方向に沿った断面と直交する方向から見た場合に、前記インターコネクタと前記燃料極層または前記酸素極層との間に中間層を具備するとともに、前記固体酸化物形燃料電池セルの端部における前記中間層の厚みが、前記固体酸化物形燃料電池セルの中央部における前記中間層の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルの端部における中間層の厚みが、固体酸化物形燃料電池セルの中央部における中間層の厚みよりも厚いため、固体酸化物形燃料電池セルの端部における強度を向上し、破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】固体酸化物形燃料電池セルの一形態を示すもので、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図2】図1に示す固体酸化物形燃料電池セルの側面図である。
【図3】燃料電池セルスタック装置の一形態を示し、(a)は燃料電池セルスタック装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置の破線で囲った部分の一部を拡大した断面図である。
【図4】図3に示す燃料電池セルスタック装置の一部断面図である。
【図5】燃料電池モジュールの一形態を示す外観斜視図である。
【図6】燃料電池装置の一形態を示す分解斜視図である。
【図7】平板型燃料電池を示すもので、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図8】図7のx−x線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の固体酸化物形燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す場合がある)の一形態を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)の断面図である。なお、両図面において、燃料電池セル10の各構成を一部拡大して示している。
【0012】
この燃料電池セル10は、中空平板型の燃料電池セル10で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状をしたNiを含有してなる多孔質の導電性支持体(以下、支持体ということがある)1を備えている。導電性支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス流路2が長手方向に形成されており、燃料電池セル10は、この導電性支持体1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
【0013】
導電性支持体1は、図1に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方の平坦面n(下面)と両側の弧状面mを覆うように多孔質な燃料極層3が設けられており、さらに、この燃料極層3を覆うように、緻密質な固体電解質層4が積層されている。また、固体電解質層4の上には、反応防止層5を介して、燃料極層3と対面するように、多孔質な酸素極層6が積層されている。また、燃料極層3および固体電解質層4が積層されていない他方の平坦面n(上面)には、中間層7を介してインターコネクタ8が形成されている。
【0014】
言い換えれば、導電性支持体1の一方側の平坦面に、固体電解質層4の両側に燃料極層3、酸素極層6が形成された発電素子部9が設けられ、他方側の平坦面に、中間層7、インターコネクタ8が形成されている。インターコネクタ8は、導電性支持体1を介して発電素子部9の燃料極層3に電気的に接続されており、インターコネクタ8と燃料極層3との間、具体的には、インターコネクタ8と導電性支持体1との間には中間層7が形成されている。さらに言い換えると、中間層7は、燃料電池セル10の燃料ガスの流れる方向に沿った断面と直交する方向から見た場合に、インターコネクタ8と燃料極層3との間に形成されている。
【0015】
中間層7は、導電性支持体1とインターコネクタ8との接合強度を向上させるために設けられており、インターコネクタ8とともに、導電性支持体1の長さ方向の全体に形成されている。なお、中間層7およびインターコネクタ8は、図1(b)に示したように導電性支持体1の長さ方向の全体に形成する必要はない。
【0016】
この中間層7は、燃料極層3と同様な組成を有しており、例えば、NiとYSZとを含有している。Y2O3を有しているものでも良く、Ni、YSZ、Y2O3を有しているものでも良い。燃料極層3と同一組成であっても良い。中間層7の組成はこれに限定されるものではなく、導電性を有し、かつ、導電性支持体1とインターコネクタ8との接合強
度を向上させるものであれば良い。
【0017】
燃料極層3および固体電解質層4は、両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(上面)まで形成されており、固体電解質層4の両端にインターコネクタ8の両端が位置するように積層され、固体電解質層4とインターコネクタ8で導電性支持体1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。
【0018】
そして、図1(b)、図2に示すように、燃料電池セル10の長さ方向の両端部における中間層7の厚みt2が、燃料電池セルの長さ方向の中央部における中間層の厚みt1よりも厚く形成されている。言い換えれば、中間層7は燃料ガス流路2に沿って形成されており、燃料ガスの流れ方向xの下流側および上流側の端部における中間層7の厚肉部7aの厚みt2が、中央部の薄肉部7bの厚みt1よりも厚く形成されている。
【0019】
すなわち、本形態の燃料電池セル10では、中間層7は、厚肉部7aと薄肉部7bとを有しており、燃料ガスの流れ方向xの上流側と下流側に形成されている中間層7は厚肉部7aとされ、上流側の厚肉部7aと下流側の厚肉部7aとの間に薄肉部7bを有している。中間層7の厚みは5〜40μmとされており、厚肉部7aの厚みは25〜40μmとされ、薄肉部7bの厚みは5〜25μmとされている。厚肉部7aと薄肉部7bとの厚み差は、5μm以上あることが望ましい。
【0020】
燃料電池セル10の上流側の厚肉部7aに位置する部分は、図3、4に示すように、ガスタンク16の上面にシール材17で接合され、一方、下流側の厚肉部7aは解放端とされており、薄肉部7bに相当する部分には、発電素子部9が設けられている。
【0021】
これは、燃料電池セル10の両端部は構造的に解放端であり、何らかの衝撃が加わると破損し易いため厚肉部7aとされており、また、ガスタンク16に燃料電池セル10の下端側(燃料ガスの流れ方向xの上流側)が接合される場合には、ガスタンク16との接合部である燃料電池セル10の下端側に応力が集中し易く、破損し易いため、厚肉部7aとされている。
【0022】
また、例えば、インターコネクタ8として、ランタンクロマイト(LaCrO)系材料を用いる場合には、インターコネクタ8が雰囲気によって変形するため、特に導電性支持体1のインターコネクタ8側に設けられた中間層7の厚みをセルの端部で厚くすることで、インターコネクタ8の雰囲気による変形に直接対抗することができ、燃料電池セル10の破損を抑制することができる。
【0023】
また、中間層7における燃料ガスの流れ方向xの中央部を薄肉部7bとしたのは、この中間層7は、導電性支持体1とインターコネクタ8との間の導電性を向上するという点からは、設けないことが望ましいが、導電性支持体1とインターコネクタ8とを接合するためには設けることが好ましく、このため必要最小限の厚みとされ、薄肉部7bに位置する部分に発電素子部9が設けられている。これにより、燃料極層3とインターコネクタ8との間の導電性を向上することができる。
【0024】
上流側の厚肉部7aの長さは、図4で示すように、導電性支持体1の下端から5〜15mmの長さで形成されている。上流側の厚肉部7aの長さは、ガスタンク16に燃料電池セル10を接合するためのシール材17の位置よりも高い位置とされている。これにより、燃料電池セル10の下端側を中心に曲げ応力が発生したとしても、燃料電池セル10に応力が生じるシール材17の高さ以上に、中間層7の厚肉部7aが形成されているため、この部分補強することができ、破損を抑制することができる。
【0025】
下流側の厚肉部7aの長さは、導電性支持体1の上端から5〜15mmの長さで形成されている。これは、燃料電池セルの解放端は衝撃が加わると破損し易いため、導電性支持体1の上端から5〜15mmの長さを厚肉部7aとすることにより、燃料電池セル10の破損を抑制できる。
【0026】
なお、図1(b)、図2、図4では、中間層の上下両端部に厚肉部7aを形成した形態を説明したが、上側端部または下形端部のいずれか一方に形成しても良いことは勿論である。
【0027】
以下、各部材について説明する。
【0028】
(支持体1)
支持体1は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、及びインターコネクタ8を介しての集電を行うために導電性であることが要求されるが、このような要求を満たすと同時に、同時焼成により生じる不都合を回避するために、鉄属金属成分と特定の希土類酸化物とから支持体1を構成するのがよい。特にこれに限定されるものではなく、導電性材料であれば良い。
【0029】
鉄族金属成分は、支持体1に導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。鉄族金属には、Fe、Ni、Coがあり、本形態では、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることからNi及び/またはNiOを鉄族金属成分として含有していることが好ましい。
【0030】
また希土類酸化物は、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数と近似させるために使用されるものであり、高い導電率を維持し且つ固体電解質層4等への元素拡散を防止するために、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む希土類酸化物が、上記鉄族金属成分と組合せで使用することが好適である。かかる希土類酸化物としては、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y、Ybが好適である。
【0031】
これらの希土類酸化物は、焼成時や発電中において、鉄族金属やその酸化物との固溶、反応をほとんど生じることがなく、しかも、支持体1中の鉄族金属或いはその酸化物、及び上記希土類酸化物は、何れも拡散しにくい。従って、支持体1と固体電解質層4とが同時焼成された場合においても、希土類元素の固体電解質層4への拡散が有効に抑制され、固体電解質層4のイオン伝導度等への悪影響を回避することができる。
【0032】
特に、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近似させるという点で、上記の鉄族金属は支持体1中に35〜70体積%の量で含まれ、上記の希土類酸化物は、支持体1中に30〜65体積%の量で含まれていることが好適である。尚、支持体1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
【0033】
上記のような鉄族金属成分と希土類酸化物とから構成される支持体1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好適である。また、支持体1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
【0034】
また、支持体1の平坦面nの長さは、通常、15〜35mmであり、支持体1の高さは、用途に応じて適宜設定されるが、一般家庭での発電用に使用される場合には、通常、100〜150mm程度の高さに設定される。さらに、平坦面nの両端には、コーナー部での欠けを防止し、さらには機械的強度を高めるために弧状面mが形成されるが、後述する固体電解質層4の剥離を防止するためには、弧状面mの曲率半径を5mm以下、好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1〜4mmの範囲とするのがよい。固体電解質層4の剥離を有効に防止するためには、支持体1の厚み(2つの平坦面nの間隔)は2〜10mmの範囲にあることが望ましい。
【0035】
(燃料極層3)
燃料極層3は、電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質のサーメットから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているZrO或いはCeOと、Ni及び/またはNiOとから形成される。
【0036】
燃料極層3中の上記ZrO或いはCeO含量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65〜35体積%であるのがよい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、性能低下及び熱膨張差による剥離等を防止するため、1〜30μmであることが望ましい。
【0037】
また、ZrO或いはCeO中に固溶している希土類元素(CeO中に固溶している希土類元素はCeを除く)としては、支持体1で使用する希土類酸化物に関して示したものと同様のものを例示することができるが、セルの分極値を低くするという点で、ZrOに対してはYが3〜10モル%程度、CeOに対してはSmが5〜20モル%程度固溶しているものが好ましい。
【0038】
さらに、この燃料極層3は、少なくとも空気極層6に対面する位置に存在していればよい。即ち、図1の例では、燃料極層3は、支持体1の一方側の平坦面nから他方の平坦面nまで延びており、インターコネクタ8の両端まで延びているが、一方側の平坦面nにのみ形成されていてもよい。
【0039】
尚、図示されていないが、必要により、上記の燃料極層3上に拡散抑制層を設け、このような拡散抑制層を燃料極層3と固体電解質層4との間に介在させることもできる。この拡散抑制層は、燃料極層3や支持体1からの固体電解質層4への元素拡散を抑制し、絶縁層形成による性能低下を回避するためのものであり、Laが固溶したCeO、又はCeが固溶したLa、あるいはそれらの混合体から形成される。さらに、元素拡散を遮断または抑制する効果を高めるために、他の希土類元素の酸化物が、この拡散防止層に含有されていてもよい。この希土類元素としては、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができる。
【0040】
また、このような拡散抑制層は、固体電解質層4と共に、インターコネクタ8の両端部まで延びていることが好ましい。これにより、支持体1や燃料極層3から固体電解質層4への元素拡散をさらに防止することができる。
【0041】
(固体電解質層4)
固体電解質層4は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有すると同時に、燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有していることが必要である。従って、この固体電解質層4の形成に用いる固体電解質としては、このような特性を備えている緻密質な酸化物セラミックス、例えば、3〜15モル%の希土類元素が固溶した安定化ジルコニアを用いるのが好ましい。この安定化ジルコニア中の希土
類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができるが、安価であるという点で、Y、Ybが好適である。
【0042】
さらには、LaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物も固体電解質として使用することができる。この複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性を有するものであり、これを固体電解質として使用することにより、高い発電効率を得ることができる。このランタンガレート系複合酸化物は、AサイトにLaおよびSr、BサイトにGaおよびMgを有するものであり、例えば下記一般式:(La1−xSr)(Ga1−yMg)O(式中、xは、0<x<0.3の数であり、yは、0<y<0.3の数である)で表される組成を有していることが望ましい。このような組成の複合酸化物を固体電解質として使用することによっても、高い発電性能を発揮させることができる。
【0043】
このような固体電解質層4は、ガス透過を防止するという点から相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上であることが望ましい。
【0044】
(空気極層6)
固体電解質層4に形成される空気極層6は、前述した電極反応を生じせしめるものであり、図1に示されているように、固体電解質層4を間に挟んで、前述した燃料極層3と対面するような位置に配置されている。即ち、少なくとも支持体1の一方の平坦面n上に位置する部分に配置される。
【0045】
かかる空気極層6は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物の焼結体粒子からなる。このようなペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属型ペロブスカイト酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも一種が好適であり、600〜1000℃程度の比較的低温での電気伝導性が高く、酸素イオンに対して優れた表面拡散機能と体積拡散機能とを示すという点から、(La,Sr)(Co,Fe)O系酸化物、例えば下記一般式:LaSr1−yCoFe1−Z(式中、yは、0.5≦y≦0.7の数であり、zは、0.2≦z≦0.8の数である)で表される組成を有する複合酸化物が特に好適である。
【0046】
また、このような空気極層6は、ガス透過性を有していなければならず、従って、上記の導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが望ましい。また、空気極層6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
【0047】
また、上記の空気極層6は、固体電解質層4上に形成してもよいが、固体電解質層4上に反応防止層5を設け、このような反応防止層5を介して空気極層6を固体電解質層4に積層することもできる。このような反応防止層5は、空気極層6から固体電解質層4への元素拡散を遮断するためのものであり、元素拡散防止機能を有する酸化物の焼結体から形成される。このような反応防止層用酸化物としては、例えば、構成元素としてCeを含有する酸化物を例示することができ、特にCeOに希土類元素酸化物が固溶したCe系複合酸化物が高い元素拡散遮断性に加えて、酸素イオン導電性及び電子伝導性に優れているという点で、好適に使用される。
【0048】
(インターコネクタ8)
支持体1上の平坦面nに設けられているインターコネクタ8は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が使用される。イ
ンターコネクタ8としては、Tiを含有するペロブスカイト形複合酸化物等であっても良く、特に限定されるものではない。また、支持体1の内部を通る燃料ガス及び支持体1の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
【0049】
かかるインターコネクタ8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが望ましい。
【0050】
(燃料電池セルの製造)
上述した構造を有する燃料電池セル10は、中間層7の厚みが厚肉部7aと薄肉部7bとで異なることを除けば、それ自体公知の方法で製造することができるが、特に以下に述べる同時焼成法を利用することが好適である。以下の製造方法は、図1、2に示した構造の燃料電池セルを例にとって説明したものである。
【0051】
例えば、前述した導電性支持体1を形成するための混合粉末(即ち、鉄族金属もしくはその酸化物粉末と希土類酸化物粉末との混合粉末)に、有機バインダーと、溶媒、及び必要によりメチルセルロース等の分散剤とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを押出成形して、ガス通過孔を有する柱状の導電性支持体用成形体を作製し、これを乾燥し、800〜1100℃の温度域で仮焼する。
【0052】
また、上記導電性支持体用成形体を作製するにあたって、用いる混合粉末は、鉄族金属もしくは鉄族金属酸化物の粉末(以下、導体粉末と呼ぶ)と希土類酸化物粉末とを所定の体積比で混合したものである。
【0053】
固体電解質層用のシート(以下、固体電解質シートと呼ぶ)を作製する。即ち、Yを含有したZrO(YSZ)などの固体電解質粉末を、有機バインダー及びトルエン等の溶媒と混合して成形用スラリーを調製し、このスラリーを用いて、固体電解質シートを成形する。
【0054】
次いで、燃料極層形成用粉末(例えばNiO粉末とYSZ粉末との混合粉末)に有機バインダーと溶媒とを混合して調製されたスラリーを用いて、燃料極層用シートを作製し、この燃料極層用シートを、上記の固体電解質シートの一方の面に積層し、これを、前述した支持体用成形体(仮焼体)の所定位置に燃料極層シートが対面するように巻き付け、乾燥する。
【0055】
この後、例えば、LaCrO系材料などのインターコネクタ用粉末を、有機バインダー及び溶媒に混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて常法に従ってインターコネクタ用シートを作製する。
【0056】
次に、所定の中間層形成用粉末(例えばNi及び/又はNiO粉末と希土類元素が固溶したZrO粉末との混合粉末)を、所定の有機バインダー及び溶媒と混合してスラリーを調製し、このスラリーを、導電性支持体用成形体の仮焼体の所定面の部分に塗布し、前記中間層用のコーティング層を形成する。この塗布は、例えばメッシュ製版を用い、コーティング層の厚みが1〜40μm程度となるように行われ、塗布後、80〜150℃の温度で乾燥する。このコーティング層は、厚肉部7aを形成する部分に塗布する。このコーティング層の厚みの分だけ、薄肉部7bの厚みよりも厚肉部7aが厚いことになる。
【0057】
次いで、上記中間層形成用粉末に有機バインダーと溶媒とを混合して調製されたスラリーを用いて、中間層用シートを作製し、この中間層用シートを、上記のインターコネクタ
用シートの一方の面に積層する。この中間層用シートが積層されたインターコネクタ用シートを、中間層用シート側がコーティング層側となるように積層し、乾燥する。
【0058】
次いで上記の積層成形体について、脱バインダー処理のための熱処理を行なった後、酸素含有雰囲気中で1300〜1600℃で同時焼成することにより、導電性支持体1上に燃料極層3及び固体電解質層4が積層され、さらに所定位置に中間層7、インターコネクタ8が積層され、必要により元素拡散防止層や反応防止層を備えた焼結構造体を得ることができる。
【0059】
さらに、上記で得られた焼結体の固体電解質層4上(或いは反応防止層上)に、LaFeO系酸化物粉末などを溶媒に分散させた酸素極層用の塗布液をスプレー噴霧して(或いはディッピングし)酸素極層用コーティング層を形成し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、空気極層6を備えた燃料電池セル10を得ることができる。尚、得られた燃料電池セル10は、酸素含有雰囲気での焼成により、支持体1などに含まれる導体成分がNiOなどの酸化物となっているが、このような酸化物は、燃料ガスを供給しての還元処理や発電によって還元されることになる。
【0060】
図3は、上述した燃料電池セル10の複数個を、集電部材13を介して電気的に直列に接続して構成された燃料電池セルスタック装置の一例を示したものであり、(a)は燃料電池セルスタック装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置11の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示しており、(b)で示す燃料電池セル10においては、上述した反応防止層5等の一部の部材を省略して示している。
【0061】
なお、燃料電池セルスタック装置11においては、各燃料電池セル10を集電部材13を介して配列することで燃料電池セルスタック12を構成しており、各燃料電池セル10の下端部が、図4に示すように、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するためのガスタンク16の上壁に、シール材17により固定されている。すなわち、ガスタンク16の上壁には、セルスタック12の下端部が挿入される貫通穴が形成されており、セルスタック12の下端部が貫通穴に挿入された状態で、ガラス、ガラスセラミックス等のシール材17で接合されている。
【0062】
また、燃料電池セル10の配列方向の両端から、燃料電池セルスタック12を挟持するように、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な導電部材14を具備している。
【0063】
また、図3に示す導電部材14においては、燃料電池セル10の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、燃料電池セルスタック12(燃料電池セル10)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部15が設けられている。
【0064】
ここで、本形態の燃料電池セルスタック装置11においては、上述した燃料電池セル10を用いて、燃料電池セルスタック12を構成することにより、長期信頼性が向上した燃料電池セルスタック装置11とすることができる。
【0065】
図5は、燃料電池セルスタック装置11を収納容器19内に収納してなる燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図3に示した燃料電池セルスタック装置11を収納して構成されている。
【0066】
なお、燃料電池セル10にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃
料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20を燃料電池セルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介して燃料電池セル10の内部に設けられたガス流路2に供給される。
【0067】
なお、図5においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されている燃料電池セルスタック装置11および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図5に示した燃料電池モジュール18においては、燃料電池セルスタック装置11を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、燃料電池セルスタック装置11は、改質器20を含むものとしても良い。
【0068】
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図5においてはガスタンク16に並置された燃料電池セルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル10の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル10の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、燃料電池セル10のガス流路2より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させて燃料電池セル10の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル10の温度を上昇させることができ、燃料電池セルスタック装置11の起動を早めることができる。また、燃料電池セル10の上端部側にて、燃料電池セル10のガス流路2から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル10(燃料電池セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
【0069】
さらに、本形態の燃料電池モジュール18では、上述した燃料電池セルスタック装置11を収納容器19内に収納してなることから、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
【0070】
図6は、外装ケース内に、図5で示した燃料電池モジュール18と、燃料電池セルスタック装置11を動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図6においては一部構成を省略して示している。
【0071】
図6に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機類を収納する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略している。
【0072】
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
【0073】
このような燃料電池装置23においては、上述したように、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置23とすることができる。
【0074】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0075】
例えば、上記形態では、中空平板型の固体酸化物形燃料電池セルについて説明したが、円筒型の固体酸化物形燃料電池セルであっても良いことは勿論である。
【0076】
また、上記形態では、導電性支持体1に発電素子部9を設けた形態について説明したが、絶縁性支持体に発電素子部を設けた場合にも、本発明を適用することができる。
【0077】
また、上記形態では、燃料極層3にインターコネクタ8を接続した場合について説明したが、酸素極層6にインターコネクタ8を接続する場合であっても良い。例えば、中空平板型、円筒型の燃料電池セルでは、固体電解質層4の内側に酸素極層が形成されている場合に、本発明を適用しても良いことは勿論である。
【0078】
さらに、燃料極層、固体電解質層、酸素極層を順次設けてなる平板状の発電素子部と、燃料極層に電気的に接続する燃料側インターコネクタと、酸素極層に電気的に接続する酸素側インターコネクタとの積層体を隔離板を介して複数積層してなり、燃料極層及び酸素極層の中央部にそれぞれ燃料ガス及び酸素含有ガスが供給され、これらのガスが燃料極層及び酸素極層の外周部に向けて流れ、燃料電池セルの外周部から余剰の燃料ガス及び酸素含有ガスが放出されるタイプのセルスタック装置にも応用できる。
【0079】
すなわち、図7、8に示すように、燃料極層33a、固体電解質層33b、酸素極層33cを順次設けてなる円板状の発電素子部33と、燃料極層33aに電気的に接続する燃料側インターコネクタ36と、酸素極層33cに電気的に接続する酸素側インターコネクタ35との積層体を隔離板37、38を介して複数積層してなるもので、燃料ガスまたは酸素含有ガスの流れる方向に沿った断面と直交する方向から見た場合に、燃料極層33aと接続する燃料側インターコネクタ36との間、酸素極層33cと酸素側インターコネクタ35との間に中間層を有するものにも、本発明を適用することができる。
【0080】
なお、図7、8において符号51は燃料ガス供給管、符号53は酸素含有ガス供給管を示している。
【符号の説明】
【0081】
1:導電性支持体
2:燃料ガス流路
3、33a:燃料極層
4、33b:固体電解質層
6、33c:空気極層
7:中間層
7a:厚肉部
7b:薄肉部
8:インターコネクタ
9、33:発電素子部
10:固体酸化物形燃料電池セル
11:燃料電池セルスタック装置
17:シール材
18:燃料電池モジュール
23:燃料電池装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んで構成された発電素子部と、該発電素子部の前記燃料極層または前記酸素極層に電気的に接続されたインターコネクタとを備え、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行う固体酸化物形燃料電池セルであって、該固体酸化物形燃料電池セルの前記燃料ガスまたは前記酸素含有ガスの流れる方向に沿った断面と直交する方向から見た場合に、前記インターコネクタと前記燃料極層または前記酸素極層との間に中間層を具備するとともに、前記固体酸化物形燃料電池セルの端部における前記中間層の厚みが、前記固体酸化物形燃料電池セルの中央部における前記中間層の厚みよりも厚いことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項2】
内部に燃料ガスを流通させるための燃料ガス流路を有する支持体の一方側に、前記発電素子部が形成されており、前記支持体の他方側に、前記インターコネクタが形成されていることを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項3】
請求項2記載の固体酸化物形燃料電池セルを、複数電気的に接続してなるセルスタックを、ガスタンクに、該ガスタンクの内部空間が前記燃料ガス流路と連通するようにシール材で接合してなるセルスタック装置であって、前記固体酸化物形燃料電池セルの前記シール材で接合された部分における前記中間層の厚みが、前記固体酸化物形燃料電池セルの中央部における前記中間層の厚みよりも厚いことを特徴とするセルスタック。
【請求項4】
請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池セルを収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−248473(P2012−248473A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120650(P2011−120650)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】