説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】燃料電池を発電させるにあたって電気取り出し部の熱膨張を吸収し望ましくない電気的接触を回避することができる燃料電池を提供することにある。
【解決手段】上下方向に延在する筒状のセルを有するセル集合体を容器内に配置し、前記セル集合体から外部への電気取り出し部を有する固体酸化物形燃料電池であって、
前記電気取り出し部はセル集合体側電気取り出し部と、外部側電気取り出し部と、前記セル集合体側電気取り出し部と前記外部側電気取り出し部を接続する接続板を有し、
前記セル集合体側電気取り出し部は折曲部を有し、前記外部側電気取り出し部は前記折曲部と同一方向に延在配置され、前記折曲部と、前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が前記接続板で離間配置して接続される電気取り出し部を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば家庭で消費される電力を供給するために都市ガス等を利用して発電する
燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化対策の一環として発電効率に優れ環境に与える負荷の低減を図ること
ができる燃料電池の開発が進められている(例えば、特許文献1)。
係る燃料電池は、都市ガスやプロパンガス等を改質し、水素リッチのガスとして酸素と反応させて発電する一種の発電装置である。このような燃料電池は、分散設置型の発電装置で、家屋や店舗、工場ごとに設置でき、電力供給ロスが少ないのでその開発ニーズが高まっている。
【0003】
ここで、特許文献1に記載の燃料電池は、燃料電池に電気を容器外部に取り出すための電気取り出し部を有している。前記電気取り出し部により燃料電池への電気的接続を容器外部にて容易に行うことが可能となる。

【特許文献1】特開2006−261025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
続いて、上述した特許文献1に記載されたような、2つの電気取り出し部の少なくとも一方が2つの方向に延在している構造を有する燃料電池の製造方法について説明する。
【0005】
最初にこの燃料電池セルを互いに電気的に接続し構造的に束ねてセル集合体を形成する
。この際、セル集合体に鉛直方向に延在するセル側電気取り出し部をとりつける。そして、電気を外部に取り出すために水平方向に延在する外部側電気取り出し部をセル側電気取り出し部に取り付ける。また、セル側電気取り出し部と外部側電気取り出し部は燃料電池容器と絶縁となるように処理をしている。
【0006】
このように、2つの方向に延在する部材を電気取り出し部に使用することにより、鉛直方向に延在するセル集合体の中央部から電気を取り出すことになり、電気的な偏りをもたらさずに外部へと電気を取り出すことができる。
【0007】
この構造を持つ燃料電池の電気取り出し部は、セル側電気取り出し部と外部側電気取り出し部を直接取り付けている。燃料電池は発電の際は高温であるため、セル側電気取り出し部と外部側電気取り出し部は熱膨張を引き起こす。セル側電気取り出し部は鉛直方向に、外部側電気取り出し部は鉛直方向に膨張する。その結果、セル側電気取り出し部はセル集合体のほうに押され、セル集合体と接触し、電気的な偏りを生じさせてしまう可能性がある。また、外部側電気取り出し部も容器と接触する可能性がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、燃料電池を発電させるにあたって電気取り出し部の熱膨張を吸収し望ましくない電気的接触を回避することができる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る燃料電池は、
上下方向に延在する筒状のセルを有するセル集合体を容器内に配置し、前記セル集合体から外部への電気取り出し部を有する固体酸化物形燃料電池であって、
前記電気取り出し部はセル集合体側電気取り出し部と、外部側電気取り出し部と、前記セル集合体側電気取り出し部と前記外部側電気取り出し部を接続する接続板を有し、
前記セル集合体側電気取り出し部は折曲部を有し、前記外部側電気取り出し部は前記折曲部と同一方向に延在配置され、前記折曲部と、前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が前記接続板で離間配置して接続されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、燃料電池を発電させるにあたって電気取り出し部の熱膨張を吸収し望ましくない電気的接触を回避することができる燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用及び効果に
ついて説明する。
【0012】
本発明に係る燃料電池は、上下方向に延在する筒状のセルを有するセル集合体を容器内に配置し、前記セル集合体から外部への電気取り出し部を有する固体酸化物形燃料電池であって、
前記電気取り出し部はセル集合体側電気取り出し部と、外部側電気取り出し部と、前記セル集合体側電気取り出し部と前記外部側電気取り出し部を接続する接続板を有し、
前記セル集合体側電気取り出し部は折曲部を有し、前記外部側電気取り出し部は前記折曲部と同一方向に延在配置され、前記折曲部と、前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が前記接続板で離間配置して接続される。
【0013】
本発明に係る燃料電池によれば、セル集合体側電気取り出し部と外部側電気取り出し部の熱膨張による伸びを前記接続板の変形によって吸収し、セル集合体側電気取り出し部や外部側電気取り出し部が容器に接触して短絡を生じてしまうことを防ぐという効果がある。
【0014】
本発明に係る燃料電池は、前記接続版が前記折曲部と前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部とをはさむように配置されている。
【0015】
本発明に係る燃料電池によれば、接続板と前記折曲部と前記外部側電気取り出し部との接続面積を増やすことでさらに接合強度を高めるという効果がある。
【0016】
本発明に係る燃料電池は、前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が角柱形状を有している。
【0017】
本発明に係る燃料電池によれば、セル集合体側端部が角柱形状を有することで、接続板と前記折曲部と前記外部側電気取り出し部との接続面積を増え、さらに接合強度を高めるという効果がある。
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池について図面に基づき説明する。なお、以下
の説明にあたって、上下方向や高さ方向、幅方向等の用語については、燃料電池を実際に
設置した状態を基準とした方向として示すものとする。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。また、図2は、図1
に示した燃料電池の平面図である。また、図3は、図1に示した燃料電池の設置部分を示
すと共に、燃料電池容器の一部側壁及びその周囲の断熱材を取り去って示した斜視図であ
る。
【0020】
本発明の一実施形態に係る燃料電池10は、図1乃至図3に示すように、複数の燃料電
池セル110(図4参照)を電気的かつ構造的に接続したセルユニット(セル集合体)1
00と、セルユニット100が収容配置されセルユニット挿入側部分を一部に有した燃料
電池容器200と、セルユニット100によって発電した電気をセルユニット100から
燃料電池容器200の外部に電気を取り出す陽極側電気取り出し部310及び陰極側電気
取り出し部320とを備えている。
【0021】
また、本発明の特徴点として陽極側電気取り出し部310と陰極側電気取り出し部32
0とが、陽極側電気取り出し延在部315及び陰極側電気取り出し延在部325のそれぞ
れ一方の端部にセル側取り出し部311,321を備えると共に、他方の端部に外部側取
り出し部313,323を備えている。そして、各電気取り出し部310,320と外部
側取り出し部313,323との間には両者を着脱可能に接続する接続部316,326
を備え、燃料電池容器200のセルユニット挿入側部分210に各接続部316,326
が位置するようになっている(図3参照)。
【0022】
以下、これらの各構成要素について詳細に説明する。図1乃至図3に示す燃料電池容器
200は、フェライト系ステンレス鋼でできた4枚の側板と、同じくフェライト系ステン
レス鋼でできた1枚の底板の各縁部を溶接接合して作られており、上部が開口した箱体形
状を有している。なお、各側板に形成されたリブ201は燃料電池作動時に発生する熱応
力により燃料電池容器200の変形を防ぐ役目を果たしている。
【0023】
燃料電池容器200の上部は後述するセルユニット挿入側部分210をなし、セルユニ
ット挿入側部分210の上端がセルユニット挿入口211として開口している。
【0024】
図1における手前側の側板のセルユニット挿入口211から約50mm程度下方に後述
する陽極側電気取り出し部310と陰極側電気取り出し部320のそれぞれの外部側取り
出し部313,323を挿通収容するロッド挿通部252,262が所定間隔隔てて平行
に突出形成されている。
【0025】
4枚の側板の周囲は、図1に一部を示すシリカ系の断熱材255で覆われている。また
、底板の四隅からはL字鋼をなす4本の支持脚221が下方に突出形成され(図3参照)
、その下端部は平面部222をなし、それぞれ2つの燃料電池取付け孔222aが形成さ
れている。そして、底板の下部にも底板下面の大部分を覆うシリカ系の断熱材256が取
付けられている。
【0026】
燃料電池容器200のセルユニット下端部と底板との間には、ここでは詳細には示さな
いが、燃料ガスを充填させる燃料ガス室が形成され、図2においてT字型をなすガス供給
部261から燃料ガスが供給されるようになっている。なお、この燃料ガスは、都市ガス
等を改質して得られる水素リッチの改質ガスである。
【0027】
燃料ガス室の上面は、ここでは詳細には図示しない分散板が載せられている。分散板に
は、燃料電池容器200に挿入収容される後述するセルユニット100の隣接するセル間
の隙間に対応する位置に大きめの燃料ガス供給孔が形成されると共に、それ以外の部分に
小さめの燃料ガス供給孔が形成されている。そして、これらの燃料ガス供給孔を介してセ
ルユニット100の隣接するセル同士の隙間に燃料ガスを効率良く供給するようになって
いる。
【0028】
図4は、図1に示した燃料電池のセルユニット100を示す斜視図である。本実施形態
では、一つのセルユニット100に細長い燃料電池セル110(以下、単に「セル110
」とする)が3本×6本の合計18本、端面視マトリックス状に配置され、フレーム12
0で保持されることで各セル同士が電気的に接続されると共に、構造的に1つのセルユニ
ット100を構成している。
【0029】
なお、これらのセル110は互いに電気的に直列接続され、一方の極がセルユニット1
00の所定箇所から後述する一方のユニット集電板上の接続板(例えば図4における上側
のユニット集電板128上の接続板127)に電気的に接続され、他方の極がセルユニッ
ト100の所定箇所から後述する他方のユニット集電板上の接続板(例えば図4における
下側のユニット集電板上の接続板)に電気的に接続されようになっている。
【0030】
フレーム120は、図4に示すように各セルの両端を端面視マトリックス状に束ねて固
定する保持板(保持板の一部をなす手前側の側板125,126のみ図示)と、保持板の
図4中上下長手方向に延在する部分の外側に備わったユニット集電板(図4においては上
側のユニット集電板128のみ図示)を備えている。ユニット集電板は、保持板のセル長
手方向に延在する部分の外側であって保持板との間に絶縁材を介在させた状態で配置され
ているので、電気的に直列接続されたセル110の両端部のセルは、接続板を介してユニ
ット集電板に電気的に接続されている。ユニット集電板と保持板は絶縁材を介してこれら
と電気的に絶線された状態になっている。なお、導電部材からなる接続板127は、ユニ
ット集電板の幅方向一方の端部において長手方向に延在形成され、接続板127(図2参
照)を介して各セルユニット同士を電気的に直列に接続するようになっている。なお、こ
のより詳細な具体的構成については後述する。
【0031】
続いて、セルユニット100を構成する個々のセル110の構造について説明する。セ
ル110は、ここでは詳細には図示しないが、支持体を兼ねた細長い有底円筒体形状の空
気極と、空気極の表面を覆う電解質と、電解質の表面を覆う燃料極とから構成されている
。空気極は、ランタン(La)とマンガン(Mn)の酸化物にストロンチウム(Sr)を
含有した材質でできており、押出成形で作られている。また、空気極は、支持体を兼ねる
ために厚さ約2mm程度の細長い有底円筒体形状をなし、その下端部が徐々に縮径し、端
面略U字状をなす底部が備わっている。
【0032】
なお、空気極の上端開口部からは空気極の外径よりもかなり小さい外径を有する空気供
給パイプが空気極の底部近傍まで挿通されるようになっている。これによって、空気極の
内部に空気(酸素)を十分供給することができるようにしている。
【0033】
電解質は、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)でできており、空気極の外側面を
ディッピングする(浸漬する)ことで形成されている。
【0034】
燃料極は、金属のニッケル(Ni)にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を混ぜて
できており、電解質の形成後にテープ状の燃料極素材を巻き付けて焼成することで形成さ
れている。
【0035】
また、セル110の長手方向ほぼ中央部には、インターコネクタ(図5及び図8におけ
るインターコネクタ110a参照)が突出形成されている。インターコネクタは、ランタ
ン(La)とクロム(Cr)の酸化物にカルシウム(Ca)を混ぜた材質でできており、
空気極と導通し電解質及び燃料極とは非導通の状態でセル周方向外側に突出形成され、そ
の先端面が隣接するセル110の燃料極にニッケルフォーム(図5及び図8におけるニッ
ケルフォーム111b参照)を介して電気的に接続されるようになっている。これによっ
て、セルユニット内の全てのセル110を電気的に直列接続し、個々のセル110の発電
量を総和した発電量がセルユニット単体の発電量となるようにしている。
【0036】
係るセルユニット100は上述した燃料電池容器200のセルユニット挿入側部分21
0の上部に形成されたセルユニット挿入口211から挿入される。
【0037】
本実施形態では、3つのセルユニット100を並列に並べて1つのセルユニットブロッ
ク100Aとし、このセルユニットブロック100Aを合計4つ、セルユニット挿入口2
11から燃料電池容器内に挿入収容している。ここで、各セルユニット同士は上述した隣
接するセルユニット100のユニット集電板同士を幅が狭く細長の金属導体からなるユニ
ット接続板129で電気的に接続することで、セルユニット同士が電気的に直列接続され
ており、4つのセルユニットブロック同士も上述のユニット接続板129よりも幅広でユ
ニット接続板と同等の長さを有する金属導体からなる図示しないブロック接続板で電気的
に接続することで、セルユニットブロック同士が電気的に直列接続されている。
【0038】
この点についてより詳細に説明する。図5は、セルユニットの電気的な接続状態を概略
的に説明する平面図である。図5から分かるように、セルユニット100を構成する3×
6個のセル110は、6個ずつ3列に並んで配置されている。そして、各列の6個のセル
110は、インターコネクタ110a及び導電部材であるニッケルフォーム110bを介
して直列接続されている。
【0039】
図5における左側の2列のセル列は、同図面上の下端部においてフレーム内面の絶縁材
131上に配置された導電部材からなる第1セル接続板141によって電気的に接続され
ている。また、図5における右側の2列のセル列は、同図面上の上端部においてフレーム
内面の絶縁材132上に配置された導電部材からなる第2セル接続板142によって電気
的に接続されている。また、図5における最も左側のセル列の上端は、電気取り出し用の
2つの断面角型C字状の切起こし部を長手方向所定間隔で設けた2つの接続板127によ
ってフレーム120の外側に配置されるユニット集電板128に電気的に接続している。
【0040】
フレーム120は、ここでは図示しない絶縁材を介してユニット集電板128及び接続
板127と電気的に独立している。そして、接続板127のユニット集電板側端面は、図
5では接続板151としてその一部を示す導電板を介して、図中左側の側方に隣接するこ
こでは図示しない別のセルユニット100の接続板のユニット集電板側端面に電気的に接
続している。
【0041】
また、図5における最も右側のセル列の下端も、電気取り出し用の2つの断面角型C字
状の切起こし部を長手方向所定間隔で設けた接続板137によってフレーム120の外側
に配置されるユニット集電板138に電気的に接続している。
【0042】
フレーム120は、ここでは図示しないを絶縁材を介してユニット集電板138及び接
続板137と電気的に独立している。そして、接続板137のユニット集電板側端面は、
図5に一部を示す接続板152としてその一部を示す導電板を介して、図中右側の側方に
隣接するここでは図示しない別のセルユニットの電気取り出し接続板のユニット集電板側
端面に電気的に接続している。
【0043】
本実施形態に係るセルユニット100がこのような構成を有することによって、セルユ
ニット100に含まれる3×6個のセルが直列接続され、かつ本実施形態において接続板
(151,152他)を介して3つのセルユニット100が直列接続され、更にはより幅
広の接続板を介して隣接する3つのセルユニット100を構成する4つのセルユニットブ
ロック100Aを互いに電気的に直列接続するようになっている。
【0044】
その結果、全てのセル110が電気的に全て直列接続されている。また、セルユニット
側の電気取り出し部は、図2における下側に示す2つのセルユニットブロック100Aの
長手方向中央部において燃料電池容器200の内周面とそれぞれ対向するように形成され
た燃料電池10の陰極側電極となるユニット集電板及び陽極側電極となるユニット集電板
に電気的に接続されている。
【0045】
なお、セルユニットブロック同士の間には厚さが厚く長さが各セルユニットに対応した
長さを有する絶縁材411,412が介装され、ブロック接続板を除いて各セルユニット
ブロック同士を絶縁している。
【0046】
また、図2に示す上下のユニット接続板129と後述する押圧部材420との間には、
幅が狭く長さが各セルユニット100に対応した長さを有する絶縁材413が介装され、
ユニット接続板129と押圧部材420との間の絶縁を確保している。
【0047】
また、図2に示すセルユニット両側面と燃料電池容器200の左右内壁面との間には、
以下に説明する押圧部材420と共に、燃料電池容器内に挿入収容される絶縁板414が
介装されている。絶縁板414は、セルユニット側がフェルト状のアルミナからなる絶縁
部材で押圧部材側が金属板から構成されている。
【0048】
セルユニットブロック100Aの周囲に介装された絶縁材413及び絶縁板414と燃
料電池容器内壁面との間には複数の押圧部材420が介装されている。この押圧部材42
0は、弾力性を有するフェルト状のアルミナ等の絶縁材を金属板で挟み込んだサンドイッ
チ構造を有し、燃料電池容器内に押圧部材420を抜き差しするための取っ手が上部に備
わっている。そして、押圧部材420をこのように燃料電池容器内に介装することで、各
押圧部材420の弾性反発力が各セルユニット周囲に作用し、その結果、各セルユニット
内に直列接続されたセル間の電気的導通を確実なものとするようになっている。
【0049】
続いて、本発明の特徴的部分である電気取り出し部310(320)について説明する
。図6は、セルユニット100を3つ電気的に直列接続したセルユニットブロック100
Aと、このセルユニットブロック100Aに取付けられる電気取り出し部310(320
)及び端部集電板332(342)を互いに離した状態で示す斜視図である。また、図7
は、図6に示したセルユニットブロック100Aに電気取り出し部310(320)及び
端部集電板332(342)を固定した状態を示す斜視図である。また、図8は、図7の
電気取り出し部310(320)及び端部集電板332(342)をセルユニット100
に固定した部分に対応する構成を拡大して示す平面図である。また、図9は、図8におけ
るB−B’断面図である。また、図10は、図3に示した燃料電池10を図3の左側から
平面視幅方向に沿って示した断面図である。また、図11は、燃料電池の電気取り出し部
310(320)の取り出し側端部を組み付けた状態で示す斜視図(図11(a))、及
びこれを分解して示す斜視図(図11(b))である。
【0050】
電気取り出し部310(320)は、上述したように陽極側電気取り出し部310と陰
極側電気取り出し部320の2つから構成され、陽極側電気取り出し部310は、後述す
る支持板331(341)で支持された端部集電板332(342)を介してセルユニッ
トブロック100Aの陽極側電極をなすユニット集電板128に電気的に接続され、陰極
側電気取り出し部320は、上述したセルユニットブロック100Aと隣接するセルユニ
ットブロック100Aの陰極側電極(ここでは図示せず)に下端部が電気的に接続される
ようになっている(図7参照)。
【0051】
なお、陽極側電気取り出し部310と陰極側電気取り出し部320の形状は同一である
ので、構造上共通する電気取り出し部310(320)として以下にその構造を説明する

【0052】
電気取り出し部310(320)は、一方の端部(燃料電池設置状態における下端部)
にセル側取り出し部311(321)を備えると共に(図9参照)、他方の端部(燃料電
池設置状態における上端部)にロッド状をなす外部側取り出し部313(323)を備え
ている(図6及び図7参照)。また、電気取り出し部310(320)のセル側取り出し
部311(321)と外部側取出し部313(323)との間は電気取り出し延在部31
5(325)となっている(図9参照)。
【0053】
そして、電気取り出し部310(320)の一部でありロッド状をなす外部側取り出し
部313(323)と電気取り出し延在部315(325)との間には外部側取り出し部
313(323)を電気取り出し延在部315(325)に対して着脱可能に接続する接
続部316(326)が備わっている(図11参照)。この接続部316(326)は、
燃料電池容器200のセルユニット挿入側部分210の上部に形成されたセルユニット挿
入口211から下方に約50mm下がった燃料電池容器内に位置するようになっている。
即ち、電気取り出し部310(320)はセルユニット100の長手方向中央部に接続さ
れたセル側取り出し部311(321)から電気取り出し延在部315(325)が端部
集電板332(342)、即ちセルユニット100のユニット集電板128に沿って上方
に延在し、その上端に備わった接続部316(326)がセルユニット挿入口211から
下方に約50mm下がった所に位置するようになっている。
【0054】
また、電気取り出し延在部315(325)の下端に備わったセル側取り出し部311
(321)は、端部集電板332(342)の長手方向略中央部にそれぞれ位置する図6
では陽極側電極をなすユニット集電板128に端部集電板332を介して接続されている
。これによって、電流の偏流が生じ難い部分から電気を取り出すことができ、燃料電池1
0の発電効率を高めている。
【0055】
この点についてより詳細に説明する。なお、図6及び図7においてはロッド状の外部取
り出し部313(323)は燃料電池組み立て工程の最終工程で電気取り出し部310(
320)との接続部316(326)に取付けられるので、二点鎖線で示している。
【0056】
図6及び図7から分かるように、電気取り出し部310(320)は、図中裏側面に支
持板331(341)で支持された端部集電板332(342)にネジ止めされている。
【0057】
端部集電板332(342)は、図6及び図7に示すように、支持板331(341)
よりも長手方向の長さが短く、かつ電気取り出し部取付け側と反対側の長手方向側縁部か
ら多数のスリット332a(342a)が延在形成されている。このスリット332a(
342a)は端部集電板332(342)の図7、図8中左側側縁部の板幅が電気取り出
し部315(325)の下端部から離れるに従って広くなり、電気取り出し部315(3
25)の下端部に向かうに従って板幅が徐々に狭まるように形成され、偏流防止の役目を
果たしている。
【0058】
図8は、図7の電気取り出し部310(320)をセルユニット100に固定した部分
の構成を拡大して示す平面図である。また、図9は、図8におけるB-B断面図である。
【0059】
本実施形態の電気取り出し部310(320)の電気取り出し延在部315(325)
とセルユニット100のセル110との電気的及び構造的接続関係については、図8及び
図9において明らかになっている。具体的には、図8及び図9に示すように、電気取り出
し延在部315(325)の下端には図9に明確に示すようにニッケルフォームからなる
セル側電気取り出し部311(321)が備わり、セル側電気取り出し部311(321
)は上述した偏流防止機能を備えた端部集電板332(342)の一方の面と電気的かつ
構造的に接続している。また、端部集電板332(342)の他方の面は、ニッケルフォ
ームからなる導電材451(461)を介してセルユニット100のユニット集電板12
8(138)と電気的かつ構造的に接続している。また、図9に示すように、セル側電気
取り出し部311(321)は電気取り出し延在部315(325)の下端に備わり、そ
れ以外の電気取り出し延在部315(325)と端部集電板332(342)の一方の面
との間は絶縁材431(441)を介して絶縁されている。また、端部集電板332(3
42)の他方の面とセルユニット100のユニット集電板128(138)との間は導電
材451(461)及び接続板127(137)を介してフレーム120とは電気的に独
立してセルユニット100のユニット集電板128(138)及び図8中左上のセル11
0と電気的に接続している。
【0060】
なお、電気取り出し部310(320)の接続部316(326)は、両者ともセルユ
ニット挿入口211の同一側に位置している。これによって、作業者が作業場所を変える
ことなく各電気取り出し部310(320)の外部側取り出し部313(323)と電気
取り出し延在部315(325)の接続作業を接続部316(326)において行うこと
ができ、接続作業が行い易くなる。
【0061】
また、電気取り出し部310(320)の外部側取り出し部313(323)は、電気
取り出し延在部315(325)の図11に示す上端折曲部315a(325a)の上下
面に固定された上側固定板318(328)と下側固定板319(329)の各一方の端
部間に挟まり、ねじ(ここでは図示せず)を介して着脱自在に取付けられている。具体的には、外部側取り出し部313(323)はセルユニットから外部への方向を軸方向とする丸棒形状をもっており前記固定板側端部は角柱形状をもち、角柱部分の固定板に平行な面(図中において上下方向)において前記固定板の各端部と接合される。電気取り出し部延在部315(325)は鉛直方向を長軸とする角棒形状をもつ。前述した構成により、外部側取り出し部313(323)は軸方向に熱膨張し、電気取り出し部延在部315(325)は鉛直方向に膨張するが、前記固定板が薄板であるため変形し熱膨張を吸収する。かつ前記固定板と前記外部側取り出し部313(323)および電気取り出し延在部315(325)との接合は保たれるため、高温においても電気的接続は保つことができる。仮に前記固定板がなく、直接外部側取り出し部313(323)と電気取り出し延在部315(325)が接合していたら、外部側取り出し部313(323)は前記電気取り出し延在部315(325)の熱膨張により引っ張られ、燃料電池容器に接触し短絡を引き起こす可能性が生じる。また、前記電気取り出し延在部315(325)もまた外部側取り出し部313(323)の熱膨張により引っ張られ、燃料電池容器に接触し短絡を引き起こす可能性が生じる。
【0062】
電気取り出し部310(320)が以上の構成を有することによって、予め箱状に作ら
れた燃料電池容器200にセルユニット挿入側部分210のセルユニット挿入口211か
ら作業者がセルユニット100を挿入して外部側取り出し部313(323)を電気取り
出し延在部315(325)に取付ける際に、セルユニット挿入側部分210のセルユニ
ット挿入口211から手を少しだけ入れ、セルユニット挿入側部分210に位置した接続
部316(326)において外部側取り出し部313(323)を電気取り出し延在部3
15(325)に取付けることができるので、燃料電池10の組み付けが容易に行えるよ
うになる。
【0063】
また、セルユニット100の燃料電池容器200からの取り出し時にも、作業者がセル
ユニット挿入側部分210のセルユニット挿入口211から手を少しだけ入れ、燃料電池
容器内のセルユニット挿入側部分210に位置した接続部316(326)において外部
側取り出し部313(323)を電気取り出し延在部315(325)から外すことがで
きるので、セルユニット100の取り出しを容易に行えるようになる。
【0064】
続いて、上述した燃料電池10の製造方法を図12及び図13に基づいて概略的に説明
する。燃料電池10を製造するに当たって、最初にセルユニット100を収容配置するた
めのセルユニット挿入側部分210を一部に有した燃料電池容器200(図12(a)参
照)、及びセルユニット100に沿って配置される電気取り出し部310(320)の一
部をなす電気取り出し延在部315(325)を用意する(第1の工程)。この際、実際
には下端部にセル側取り出し部311(321)を備えた電気取り出し延在部315(3
25)を支持板331(341)で支持された端部集電板332(342)にねじ締め等
で固定しておく。
【0065】
次いで、電気取り出し部310(320)の一部をセルユニット100に取り付ける(
第2の工程)。この際、実際には電気取り出し部310(320)が取付けられ、支持板
331(341)で支持された端部集電板332(342)をセルユニット100のユニ
ット集電板128(138)の電極をなす部分にねじ締め等で取り付ける。
【0066】
次いで、セルユニット100及びこれに取付けられた電気取り出し部310(320)
の一部である電気取り出し延在部315(325)及びその下端部に備わったセル側取り
出し部311(312)と電気的に接続した上述の端部集電板332(342)をセルユ
ニット挿入側部分210のセルユニット挿入口211から燃料電池容器内に挿入収容する
(第3の工程)。
【0067】
これによって、電気取り出し延在部315(325)の外部側取り出し部313(32
3)との接続部316(326)が燃料電池容器200のセルユニット挿入側部分210
、具体的にはセルユニット挿入側部分210の上部にあるセルユニット挿入口211から
燃料電池容器200の内側下方に約50mmm程度の場所に位置する。
【0068】
なお、この際、上述したセルユニット100を纏めたセルユニットブロック100Aご
とに燃料電池容器内に挿入しても良い。これと同時に、セルユニット同士の間に挟まれる
絶縁材411,412を燃料電池容器内に挿入収容する。
【0069】
次いで、セルユニット100によって発電した電気をセルユニット100から燃料電池
容器200の外部に取り出すロッド状の外部側取り出し部313(323)を燃料電池外
側壁上部に設けた電気取り出し部取付け用孔252a,262aから燃料電池容器内に挿
入する(第4の工程)。
【0070】
次いで、接続部316(326)において外部側取り出し部313(323)を電気取
り出し延在部315(325)にねじを介して接続すると共に、押圧部材420を燃料電
池容器200のセルユニット挿入口211から挿入して燃料電池容器内壁とセルユニット
間の所定位置に押圧部材420を介装させる。この際、押圧部材420のセルユニット側
にアルミナのフェルト状をなす絶縁材に金属板をあてた絶縁板414(図13では図示せ
ず)と共に押圧部材420を燃料電池内部に収容し、燃料電池10の製造作業を完了する
(第5の工程)。
【0071】
このような製造工程を経ることで、燃料電池製造作業の効率を格段に向上させることが
できる。具体的には、燃料電池容器200に電気取り出し部310(320)の外部側取
り出し部313(323)を取り付ける際に、燃料電池容器200のセルユニット挿入口
211から約50mm程度下方に位置する接続部316(326)まで作業者が手を入れ
てねじ等で両者を固定するだけで良い。また、セルユニット100を燃料電池容器200
から取り外す際にも、燃料電池容器200のセルユニット挿入口211から約50mmほ
ど下に位置する接続部316(326)まで作業者が手を入れてねじ等を緩めて外部側取
り出し部313(323)を電気取り出し延在部315(325)から取り外すだけで良
い。
【0072】
しかも、本発明に係る燃料電池によると、セル集合体の周囲を側板や底板で囲ってこれ
らを溶接する場合に従来問題となっていたシール不良に伴う燃料電池容器の分解及び再組
立を行う必要がなく、予め箱体形状をなす燃料電池容器を用いた場合に電気取り出し部の
取り付けに必要なシール性が低下する大きめな取付け孔を燃料電池容器の側壁に穿設する
必要がない。
【0073】
なお、上述した実施形態における各構成要素の材質、寸法、個数はあくまで一例として
示したもので示したものであり、これらは本発明を逸脱しない範囲で上述した実施形態と
は異なる材質、寸法、個数とすることができることは言うまでもない。
【0074】
また、上述の実施形態ではセルを複数本電気的かつ構造的に束ねたセルユニットを燃料
電池容器に挿入する場合について説明したが、従来技術で説明した複数のセルを束ねた状
態で加熱して電気的かつ構造的に接続したセル集合体を本発明の燃料電池容器に収容する
場合にも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
【図2】図1に示した燃料電池の平面図である。
【図3】図1に示した燃料電池の設置部分を示すと共に、燃料電池容器の側板の一部及びその周囲の断熱材を取り去って示した斜視図である。
【図4】図1に示した燃料電池のセルユニットを示す斜視図である。
【図5】セルユニットの電気的な接続状態を概略的に説明する平面図である。
【図6】セルユニットを3つ電気的に直列接続したセルユニットブロックと、このセルユニットブロックに取付けられる電気取り出し部の一部及び端部集電板を互いに離した状態で示す斜視図である。
【図7】図6に示したセルユニットブロックに電気取り出し部の一部及び端部集電板を固定した状態を示す斜視図である。
【図8】図7の電気取り出し部をセルユニットに固定した部分に対応する構成を拡大して示す平面図である。
【図9】図8におけるB−B’断面図である。
【図10】図3に示した燃料電池を図3の左側から平面視幅方向に沿って示した断面図である。
【図11】燃料電池の電気取り出し部の取り出し側端部を組み付けた状態で示す斜視図(図11(a))、及びこれを分解して示す斜視図(図11(b))である。
【図12】燃料電池の組み付け手順を示す工程図である。
【図13】図12に続いて燃料電池の組み付け手順を示す工程図である。
【符号の説明】
【0076】
10 燃料電池
100 セルユニット(セル集合体)
110 (燃料電池)セル
100A セルユニットブロック
110a インターコネクタ
110b ニッケルフォーム
120 フレーム
125,126 側板
127 接続板
128 ユニット集電板
129 ユニット接続板
131,132 絶縁材
137 接続板
138 ユニット集電板
141 第1セル接続板
142 第2セル接続板
151,152 接続板
200 燃料電池容器
201 リブ
210 セルユニット挿入側部分
211 セルユニット挿入口
221 支持脚
222 平面部
222a 燃料電池取付け用孔
252 ロッド挿通部
252a 電気取り出し部取付け用孔
255,256 断熱材
261 ガス供給部
262 ロッド挿通部
262a 電気取り出し部取付け孔
310 (陽極側)電気取り出し部
311 セル側取り出し部
313 外部側取り出し部
315 (陽極側)電気取り出し延在部
315a 上端折曲部
316 接続部
318 上側固定板
319 下側固定板
320 (陰極側)電気取り出し部
321 セル側取り出し部
323 外部側取り出し部
325 (陰極側)電気取り出し延在部
325a 上端折曲部
325b 側方延在部
326 接続部
328 上側固定板
329 下側固定板
331 支持板
332 端部集電板
332a スリット
341 支持板
342 端部集電板
342a スリット
411,412,413 絶縁材
414 絶縁板
420 押圧部材
431,441 絶縁材
451(461) 導電材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する筒状のセルを有するセル集合体を容器内に配置し、前記セル集合体から外部への電気取り出し部を有する固体酸化物形燃料電池であって、
前記電気取り出し部はセル集合体側電気取り出し部と、外部側電気取り出し部と、前記セル集合体側電気取り出し部と前記外部側電気取り出し部を接続する接続板を有し、
前記セル集合体側電気取り出し部は折曲部を有し、前記外部側電気取り出し部は前記折曲部と同一方向に延在配置され、前記折曲部と、前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が前記接続板で離間配置して接続されることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記接続版が前記折曲部と前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部とをはさむように配置されることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記外部側電気取り出し部のセル集合体側端部が角柱形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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