説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】発電室内部における冷却を促進することができる固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】筒状のセルチューブ102の内部に第1ガスである燃料ガス121を供給すると共に、前記セルチューブ102の外面に設けられた燃料電池セルに第2ガスである空気122を供給することにより、前記燃料電池セルにおいて前記第1ガスと前記第2ガスとを電気化学的に反応させて発電する固体酸化物形燃料電池であって、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子14がセルチューブ102の内部の全体に亙って挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換補助具としての中子を備えた固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気化学反応を利用した発電装置であり、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有する。このため、21世紀を担う都市型のエネルギー供給システムとして、実用化に向けた研究開発が進んでいる。
【0003】
従来の燃料電池の一例としてワンスルータイプの燃料電池が提案されている。このワンスルータイプの燃料電池は、例えば、燃料ガスを、セルチューブの一端(例えば上端)から供給し、セルチューブの他端(例えば下端)から排出するタイプの燃料電池である。また、酸化剤ガスは、セルチューブの外周面に供給される。
【0004】
また、発電を行うためには、燃料電池モジュール内が約800℃から1000℃となるような高温環境における化学反応を利用するため、外部から燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する際に、ガスを予熱しておく必要がある。これは、供給するガスの予熱を行わないと、燃料電池セルの温度を低下させる結果、発電効率の低下及び発電自体の不安定化を招く危険性があるからである。
【0005】
この予熱は、効率の面から高温の排出ガスを利用して行われる。すなわち、排出室から排出された高温の排出燃料ガスと燃料電池に供給される酸化剤ガス(空気)とを熱交換し、酸化剤ガスを予熱する。また、高温の排出酸化剤ガスと燃料電池に供給される燃料ガスとを熱交換し、燃料ガスを予熱する。このため、排出ガスの排出経路内には、熱交換を効率的に行うための補助機器として中子が設置されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−63916号公報
【特許文献2】特開2004−127640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、発電室内部の温度は供給空気量の調整により、管理値温度以下に保持しているが、今後、低コスト化のために高出力密度化、コンパクト化を行う場合、単位体積当たりの発熱密度が増加するため、発電室内部の冷却を促進する必要がある。
【0008】
しかしながら、燃料電池に供給する空気流量を増加させると、空気を供給するために必要な動力も増え、システム全体の効率が低下してしまう。また、例えばガスタービンとのコンバインドシステム等の場合、ガスタービン側の定格運転の関係から燃料電池側への供給空気流量に制限がある場合が多い。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、発電室内部における冷却を促進することができる固体酸化物形燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、筒状のセルチューブの内部に第1ガスを供給すると共に、前記セルチューブの外面に設けられた燃料電池セルに第2ガスを供給することにより、前記燃料電池セルにおいて前記第1ガスと前記第2ガスとを電気化学的に反応させて発電する固体酸化物形燃料電池であって、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子がセルチューブの内部の全体に亙って挿入されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記熱交換用中子が、前記セルチューブの径と同一径の支持部材を有し、前記セルチューブの上端開口部に接着支持されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記セルチューブの一端から前記第1ガスが供給されると共に、前記セルチューブの他端から前記第1ガスが排出されるワンスルータイプの燃料電池であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0013】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記第1ガスは燃料ガスであり、前記第2ガスは酸化剤ガスであることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記第1ガスは酸化剤ガスであり、前記第2ガスは燃料ガスであることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【0015】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記セルチューブが燃料電池モジュール内に複数配設されており、前記燃料電池モジュールが、断熱材からなるケーシングと、ケーシング内に設けられ、前記セルチューブの両端を支持する上管板及び下管板と、上下の管板間に配置された上断熱体及び下断熱体と、上下の断熱体に挟まれた空間に形成される発電室とからなることを特徴とする固体酸化物形燃料電池にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換用中子を用いて、セルチューブの全体に亙って挿入させることで、熱交換部のみならず、発電室内部での熱交換を良好とすることができ、発電室内部での冷却を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、固体酸化物形燃料電池モジュールを表す概略構成図である。
【図2】図2は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子の斜視図である。
【図3】図3は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子の他の斜視図である。
【図4−1】図4−1は、熱交換用中子と支持部材との支持構造の概略図である。
【図4−2】図4−2は、熱交換用中子と支持部材との支持構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0019】
本発明による実施例に係る熱交換補助具としての中子を備えた固体酸化物形燃料電池について、図面を参照して説明する。図1は、固体酸化物形燃料電池モジュールを表す概略構成図である。
【0020】
本実施例の固体酸化物形燃料電池モジュール(以下「燃料電池モジュール」ともいう)100は、図1に示すように、断熱材であるケーシング101と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ102と、セルチューブ102の両端を支持する上下の管板(第1仕切り部材)103a、103bと、これら上下の管板103a、103bの間に配置された上下の断熱体104a、104bとから構成されている。
【0021】
上下の断熱体104a、104bに挟まれた空間には、発電室105が形成されている。ケーシング101と上管板103aとの間には、燃料供給室106が形成されている。ケーシング101と下管板103bとの間には、燃料排出室107が形成されている。下管板103bと下断熱体104bとの間には、空気供給室108が形成されている。上管板103aと上断熱体104aとの間には、空気排出室109が形成されている。
【0022】
上管板103aは、ケーシング101の長手方向(図1の上下方向)の一方(上側)に配置された板状の部材であり、下管板103bは、ケーシング101の長手方向の他方(下側)に配置された板状の部材である。セルチューブ102は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向(図1の上下方向)における中央部に発電を行なう複数の燃料電池セル110が設けられている。本実施例においてこの燃料電池セル110は燃料極と固体電解質と空気極とがこの順に積層され形成されている。セルチューブ102は、一方の開口端が燃料供給室106に開口し、他方の開口端が燃料排出室107に開口するように、上下の管板103a、103bに支持されている。また、セルチューブ102は、燃料電池セル(発電素子)110が発電室105内にのみ位置するように配置されている。
【0023】
上断熱体104aは、ケーシング101の長手方向の一方(上側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材104bは、ケーシング101の長手方向の他方(下側)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。各断熱体104a、104bには、セルチューブ102が挿通される孔111a,111bが形成され、孔111a,111bの直径はセルチューブ102の直径よりも大きく形成されている。
【0024】
なお、孔111a,111bの内周面は、略円筒状に形成されていてもよいし、螺旋状または直線状の凹部(溝)または凸部(畝状突起)が形成されていてもよく、特に限定するものではない。このような構成にすることで、セルチューブ102と孔111bとの間を通って発電室105に流入する空気に、排出燃焼ガス121a及び下断熱体104bの熱が伝達されやすくなり、発電室105の温度を高温に保ちやすくすることができる。同様に、セルチューブ102と孔111aとの間を通って発電室105から排出される排出空気122aの熱を伝達することでセルチューブ102に導入される燃料ガス121を高温とすることができる。
【0025】
また、セルチューブ102の内部に、セルチューブ102の長手方向全域(セルチューブの上端部からか端部まで)に亙って、熱交換用中子14が挿入されている。例えば、内径が22mmのセルチューブの場合には、19mmの熱交換用中子としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
この熱交換用中子14の外周壁とセルチューブ102内壁との隘路間に燃料ガス121を供給させることで、セルチューブ102の外周を流れる酸化剤ガスである空気122との熱交換を良好としている。
すなわち、上断熱体104a領域が上部熱交換部123aを形成し、下断熱体104b領域が下部熱交換部123bを形成している。そして、上部熱交換部123aでは導入される燃料ガス121と排出される排出空気122aとの熱交換がなされ、下部熱交換部123bでは、導入される空気122と排出燃料ガス121aとの熱交換がなされる。
【0026】
さらに、本実施例では、セルチューブ102の内部において、セルチューブ102の長手方向の中央部分にも熱交換用中子14が存在しているので、セルチューブ102の発電室105に対応する領域においても発電室内部における冷却を促進することができる。
【0027】
このように、従来の冷却機構は発電室両端部の冷却部品として、セルのリード部に中子を挿入していたが(上下それぞれ2箇所)、セルチューブ内部の全体に亙って熱交換用中子14を挿入することで、発電室105内部についても燃料側からの冷却を促進することができることとなる。
【0028】
この結果、高出力密度化、コンパクト化によって、単位体積当たりの発熱密度が増加する場合であっても、発電室内部の冷却が可能となるだけでなく、部品点数の減少による低コスト化も図ることができる。
【0029】
また、発電室内部の冷却について、例えばガスタービンコンバインドシステム等を適用する場合、ガスタービン側の定格運転の関係から燃料電池への供給空気流量に制限がある場合であっても、熱交換用中子を全体に亙って挿入することで冷却対応が可能となる。
【0030】
ここで、熱交換用中子の材質としては、高温部での耐熱の観点からセラミックス製とすることが好ましい。
【0031】
図2は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子の斜視図である。図3は、固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子の他の斜視図である。
図2に示すように、本実施例のセルチューブ(燃料電池)102に挿入される熱交換用中子14は、セルチューブ102の上端開口に支持される鍔11aを有する支持部材11Aをその頂部に有している。
鍔11aは少なくとも3方向に支持部材から伸びるように設け、セルチューブ102の上端開口に載せるようにしている。なお、燃料ガス121は鍔11aで覆われていない隙間から内部に流入するようにしている。
【0032】
また、図3に示すように、フランジ形式の支持部材11Bを有して、セルチューブ102の上端開口に支持されるようにしてもよい。
この支持部材11Bの場合には、セラミック発泡体とし、接着剤により接着されている。
このセラミック発泡体は、例えばコージュライトとアルミナとの混合物からなり、連続気孔の三次元骨格構造であり、空孔率が高く、燃料ガス121の流入が容易としている。
【0033】
図4−1及び図4−2は、熱交換用中子と支持部材との支持構造の概略図である。
図4−1は、鍔11aを有する支持部材11Aを用いた場合の支持構造であり、図4−2は、支持部材11Bを用いた場合の支持構造である。
【0034】
ここで、図4−1では、鍔11aを4方向とし、支持部材11Aの径と両端の2つの鍔11aを併せた直径d1が、セルチューブの直径d2と同一となるようにし、両端の鍔11aを接着剤15で接合するようにしている。
この結果、予め支持部材11Aに設ける鍔11aは全て同じ長さとしている場合には、熱交換用中子14がセルチューブの中心位置となるように容易に芯出しすることが可能となる。
【0035】
また、図4−2に示すように、支持部材11Bの場合には、支持部材11Bの直径d3とセルチューブ102の直径d2とが同一に形成されることで、セルチューブ102の上端面に支持部材11Bを載置する際に、芯出しを容易に行うことができる。
この結果、熱交換用中子14の外周面等に、芯出しのための芯出し部材を余分に設ける必要がなく、熱交換用中子14に余分な機械加工を要しない構造とすることができ、簡易な構造で芯出しを確実に行うことができる。
【0036】
また本実施例では、熱交換用中子14は、支持部材11A又は支持部材11Bをセルチューブ102の上端面に設けることで支持するようにしているが、例えば、中子の下端面を燃料排出室107の下管板103bとは反対側の壁、すなわちケーシング101の壁に載せる構造とすることもできる。この場合、熱交換用中子14は別途も受ける芯出し部材により、セルチューブの中心に位置するように配置される必要がある。
【0037】
ここで、上記構成からなる燃料電池モジュール100の動作の概要を説明する。
【0038】
燃料電池モジュール100の空気供給室108には空気122が流入する。該空気122は下断熱材104bの孔111bとセルチューブ102との隙間を通って、発電室105内に供給される。
一方、燃料供給室106には燃料ガス121が流入する。該燃料ガス121はセルチューブ102の基体管の内部を通って発電室105内に供給される。空気122と燃料ガス121とは、燃料電池セル110において発電に利用される。その後排出空気122aは空気排出室109に流入し、排出燃料ガス121aは燃料排出室107に流入し、それぞれ燃料電池モジュール100の外部に排出口101a、101bからそれぞれ排出される。
【0039】
この時、空気122と燃料ガス121とは、セルチューブ102の内面または外面を互いに逆向きに流れている。このことにより、発電に利用され高温となった燃料ガスおよび空気が、発電に利用される前の空気および燃料ガスとそれぞれ熱交換される。すなわち、セルチューブ102の軸方向両端部であって燃料電池セル110が形成されていない上部熱交換部123a、下部熱交換部123bの熱交換領域において、燃料ガス121と空気122とが熱交換される。
【0040】
上述したように燃料電池モジュール100では、反応に利用されて高温となった排出燃料ガス121aおよび排出空気122aが熱交換により冷却された後、燃料排出室107および空気排出室109に供給される。このことにより、金属部材を有する上管板103aと下管板103bとが高温雰囲気に晒されることを抑制することができる。その結果、燃料電池モジュール100では、燃料電池セル110における運転温度を高温化、例えば800℃から950℃にすることを可能にしている。
【0041】
本実施例では、第1ガスとして燃料ガス、第2ガスとして酸化剤ガス(空気)を例示したが、本発明はこれに限定されず、セル構造を逆として、第1ガスとして酸化剤ガス(空気)、第2ガスとして燃料ガスを供給するようにしてもよい。
【0042】
このように、本発明によれば、熱交換用中子14を用いて、セルチューブ102の全体に亙って挿入させることで、熱交換部123a、123bのみならず、発電室105内部での熱交換を良好とすることができ、発電室内部での冷却を促進することとなり、極力950℃程度を保持することができ、供給する空気流量を抑えることができるため、システム効率が向上する。
【符号の説明】
【0043】
11A、11B 支持部材
14 熱交換用中子
102 セルチューブ
121 燃料ガス
122 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセルチューブの内部に第1ガスを供給すると共に、前記セルチューブの外面に設けられた燃料電池セルに第2ガスを供給することにより、前記燃料電池セルにおいて前記第1ガスと前記第2ガスとを電気化学的に反応させて発電する固体酸化物形燃料電池であって、
固体酸化物形燃料電池の熱交換用中子がセルチューブの内部の全体に亙って挿入されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱交換用中子が、前記セルチューブの径と同一径の支持部材を有し、前記セルチューブの上端開口部に接着支持されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記セルチューブの一端から前記第1ガスが供給されると共に、前記セルチューブの他端から前記第1ガスが排出されるワンスルータイプの燃料電池であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記第1ガスは燃料ガスであり、前記第2ガスは酸化剤ガスであることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記第1ガスは酸化剤ガスであり、前記第2ガスは燃料ガスであることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記セルチューブが燃料電池モジュール内に複数配設されており、
前記燃料電池モジュールが、
断熱材からなるケーシングと、
ケーシング内に設けられ、
前記セルチューブの両端を支持する上管板及び下管板と、
上下の管板間に配置された上断熱体及び下断熱体と、
上下の断熱体に挟まれた空間に形成される発電室とからなることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2012−252801(P2012−252801A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122500(P2011−122500)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】