説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】外部コネクタの反りや破損の発生を抑制できる固体酸化物形燃料電池を提供すること。
【解決手段】外部コネクタ29、31は、SOFC1の積層方向における外側より、表面基板63と調整基板65と各平板67〜71とを積層したものである。第1〜第3平板67〜71は、マグネシアを主成分とするセラミック基板73にビア74が形成されたものである。調整基板65は、ジルコニアを主成分とする固体電解質基板81にビア75が形成されたものであり、固体電解質基板81の板厚方向の両側には、全てのビア75と接するように、Ag−Pdからなる内側電極82、83が形成されている。表面基板63は、マグネシアを主成分とするセラミック基板84にビア85が形成されたものであり、表面基板63の外側には外側電極3、5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルと(燃料電池セル等との電気的導通を確保する)コネクタとを同時に焼成した固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池として、固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物形燃料電池(以下SOFCとも記す)が知られている。
このSOFCでは、発電単位として、例えば固体電解質層の一方の側に燃料ガスに接する燃料極を設けるとともに、他方の側に空気と接する空気極を設けた固体酸化物形燃料電池セル(燃料電池セル;発電セル)が使用されている。また、この燃料電池セルを複数積層した固体酸化物形燃料電池スタック(燃料電池スタック)も開発されている。
【0003】
上述したSOFCとしては、円筒形、平板形、モノリス形などのSOFCが知られている。このうち、モノリス形のSOFCは、セラミックスグリーンシートの状態で、固体電解質層と(燃料電池セル間の導通を確保する)インターコネクタと(電力を外部に取り出すための)外部コネクタとを積層して焼成した、いわゆる一体焼結型SOFCである。このモノリス形SOFCは、セル間の接続信頼性が高く、しかもガスシール性が高いため、優れたスタック構造であると考えられている。
【0004】
また、前記外部コネクタは、燃料電池スタックの積層方向の両側に積層されたものであり、アルミナ等の絶縁性セラミックスからなる基板に、Ag等の導電性材料からなる導電性ビアが形成されているものが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−351253号公報
【特許文献2】特開2009−205907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、外部コネクタの構造やその材料と、燃料電池スタックの中心部(主に燃料電池セル)の構造やその材料とが異なるために、上述した同時焼成によってモノリス形SOFCを製造すると、外部コネクタに反りが発生したり、破損が生じることがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、外部コネクタの反りや破損の発生を抑制できる固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、第1固体電解質層を備える層状の燃料電池セルと、隣接する二つの前記燃料電池セルに挟まれて、該隣接する燃料電池セル間の電気的導通を行う第1コネクタ(例えばインターコネクタ)と、前記燃料電池セルと前記第1コネクタとが交互に積層された積層体の積層方向の両端にさらに積層されて、該積層体と外部との電気的導通を行う第2コネクタ(例えば外部コネクタ)と、を有し、前記燃料電池セルと前記第1コネクタと前記第2コネクタとが同時焼成により一体化されてなる固体酸化物形燃料電池であって、前記第2コネクタは、前記積層方向に沿って積層され且つ前記第1固体電解質層を構成する各成分のうち同じ主成分を有する第2固体電解質層と、前記第2固体電解質層を厚み方向に貫通し、該第2固体電解質層の厚み方向の両側面を電気的に導通する第1貫通導体部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、燃料電池セルの第1固体電解質層と第2コネクタの第2固体電解質層とは同じ主成分(例えば、第1固体電解質層がYSZの場合には、ジルコニアが主成分となる。また、例えば、第1固体電解質層がGDC若しくはSDCの場合には、セリアが主成分となる。)を有しているので、燃料電池セルと第1コネクタと第2コネクタとを同時焼成により一体化した場合でも、第2コネクタに反りや破損が生じ難いという効果がある。
【0010】
つまり、第2コネクタにも燃料電池セルと同様な主成分を有する固体電解質層を備えているので、従来技術に比べて、第2コネクタと燃料電池セルとの焼結挙動が一致する。そのため、同時焼成を行っても第2コネクタに割れが生じにくいという利点がある。
【0011】
なお、ここで、固体電解質層の主成分とは、各成分のモル合計に対して、最も含有量の多い成分を言うが、50モル%以上を占める成分が、より安定した焼結挙動が得られるため好適である。
【0012】
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、前記第2コネクタは、前記第2固体電解質層の前記燃料電池セルに面する側の第1面に積層され、電気絶縁性を有する基板と該基板を厚み方向に貫通し該基板の厚み方向の両側面を電気的に連通する第2貫通導体部(例えばビア)とを備える第1部材と、前記第2固体電解質層の前記燃料電池セルの反対側の第2面に積層され、電気絶縁性を有する基板と該基板を厚み方向に貫通し該基板の厚み方向の両側面を電気的に連通する第3貫通導体部(例えばビア)とを備える第2部材と、前記第1部材と前記第2固体電解質層との間に、前記第2固体電解質層の前記第1面に沿って延び、且つ前記第2貫通導体部と前記第1貫通導体部とを電気的に接続する第1集電層と、前記第2部材と前記第2固体電解質層との間に、前記第2固体電解質層の前記第2面に沿って延び、且つ前記第3貫通導体部と前記第1貫通導体部とを電気的に接続する第2集電層と、を備えることができる。
【0013】
ここでは、第2コネクタの構成を例示している。このような構造によって、燃料電池セルと外部とを容易に電気的に接続することが可能である。また、第2固体電解質層の両側に、第1集電層と第2集電層とを備えているので、第2、第3貫通導体(例えばビア)を用いて板厚方向に電気的導通を得る場合でも、集電能力が高いという利点がある。更に、第2コネクタには、第1集電層や第2集電層を備えているので、第2コネクタの面積を小さくした場合でも、十分に集電能を確保できる。なお、更に集電能を高くするために、集電層を増やしてもよい。
【0014】
なお、ここで電気絶縁性とは、電子伝導及びイオン伝導の絶縁性を意味している。
(3)本発明では、請求項3に記載の様に、前記第3貫通導体部は、前記第2部材の前記基板の外縁以外の領域に形成されており、前記第2部材の前記燃料電池セルの反対側の第3面に、該第3面に沿って該第3面における前記第3貫通導体部に対応する領域内に延び、且つ前記第3貫通導体部と電気的に接続して前記燃料電池セルで発生する電力を外部に出力する出力端部を備えることができる。
【0015】
ここでは、第3貫通導体部は基板の外縁より内側に形成されているので、出力端部も基板の外縁より内側に形成することができる。よって、マニホールドや各種の接合部材がとの絶縁が取りやすくなり、ショート不良を低減できる。
【0016】
また、出力端部により、燃料電池セルにて発電した電力を取り出すことができる。
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、前記第2コネクタの出力端部の面積を、前記第2コネクタの第1集電層及び第2集電層の面積よりも小さくすることが望ましい。
【0017】
つまり、第2コネクタの出力端部の面積を、第2コネクタの第2集電層の面積(更には、燃料電池セルの電極の面積)よりも小さくすることにより、一層、マニホールドや各種の接合部材がとの絶縁が取りやすくなり、ショート不良を低減できる。
【0018】
なお、以下に、本発明における各構成について説明する。
・前記電気絶縁性有する基板の材料としては、例えばSiO2とAl23とRO(R;Mg、Ca、Sr、Ba)からなるセラミックスを作用でき、この場合には、固体電解質基板との同時焼成がし易いので望ましい。
【0019】
・前記固体電解質としては、YSZ、ScSZ、GDC、SDC、ペロブスカイト酸化物など、公知のものを用いることができる。特に、YSZ、ScSZ等のジルコニア固溶体は、材料温度や雰囲気安定性が高く望ましい。このうち、更にScSZが望ましいが、これは、ScSZは、焼結温度が低く、かつ酸素イオン導電性が高いからである。
【0020】
・前記導体部、集電層、出力端部の材料としては、Pt、Pd、Ag、Au等の貴金属、及びこれらの少なくとも1種を含む合金などを用いることができる。
特に、Ag−Pd合金は、Ptよりも安価な金属であり望ましい。また、Ag−Pdの組成は、Pd含有量が20〜40mol%(Ag−Pd全体を100mol%としたとき)であることが好ましい。これは、20mol%を下回ると、融点が低く、固体電解質材料と一体に焼結する際に金属が溶融して、集電層等が形成できないことがあるからである。一方、40mol%を上回ると、合金が高価になってしまうからである。
【0021】
・また、前記導体部、集電層、出力端部の材料としては、前記貴金属材料とセラミックスとの複合体とすることが望ましい。複合化するセラミックスとしては、公知のもの、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、カルシア、マグネシア、スピネル等を使用できる。
【0022】
・前記燃料電池セルに用いられる電極は、空気極及び燃料極であり、その材料としては、公知のものが使用できるが、特に、金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体が好ましい。これは、金属材料とすることで、焼成時の割れや反りを抑制できるからである。
【0023】
この金属材料としては、Pt、Pd、Ag、Au、Cu、Ni、W、Mo、Fe、Co等の金属、及びそれらの少なくとも1種を含む合金などを用いることができる。また、空気極としては、Pt、Ag−Pd等の貴金属を使用することが望ましい。
【0024】
特に、Ag−Pd合金は、Ptよりも安価な金属であり望ましい。また、Ag−Pdの組成は、Pd含有量が20〜40mol%(Ag−Pd全体を100mol%としたとき)であることが好ましい。これは、20mol%を下回ると、融点が低く、固体電解質材料と一体に焼結する際に金属が溶融して、集電層等が形成できないことがあるからである。一方、40mol%を上回ると、合金が高価になってしまうからである。
【0025】
・電極を金属材料とセラミックスとの複合体とする場合、固体電解質と同じ材料であると、同時焼成が容易に行えるようになり、また、電極性能が向上するので好ましい。
・また、本発明のモノリス型SOFCの場合には、燃料電池セルとインターコネクタと外部コネクタとを未焼成の状態で積層圧着して一体としたものを、脱脂焼成して製造することができる。
【0026】
この焼成温度としては、1050〜1250℃(望ましくは1100〜1200℃)が好適である。これは、1050℃を下回る場合には、固体電解質やインターコネクタが焼結しないからである。一方、1250℃を上回る場合には、固体電解質とインターコネクタとの反応が進行して、発電特性が低下したり、Ag−Pdによるビア形状を維持できなくなることがあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の固体酸化物形燃料電池を示す斜視図である。
【図2】固体酸化物形燃料電池を分解して示す斜視図である。
【図3】固体酸化物形燃料電池複合体を示す斜視図である。
【図4】(a)は燃料電池セルを示す平面図、(b)はインターコネクタを分解して示す説明図である。
【図5】外部コネクタを分解して示す説明図である。
【図6】固体酸化物形燃料電池を製造するための部材を示す平面図である。
【図7】固体酸化物形燃料電池となる積層体を分解して示す斜視図である。
【図8】固体酸化物形燃料電池の積層体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明が適用される実施形態について図面を用いて説明する。
[実施形態]
a)まず、本実施形態であるモノリス形の固体酸化物型燃料電池(以下固体酸化物型燃料電池をSOFCと記す)の構成について、図1〜図3に基づいて説明する。
【0029】
図1に示す様に、本実施形態のSOFC1は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気(詳しくは空気中の酸素))との供給を受けて発電を行う装置である。
このSOFC1は、後述するSOFCセル等を積層した柱状のSOFCスタックであり、例えば縦0.3cm×横1cm×長さ5cmの長尺の四角柱である。なお、0.3cm×1cmの面が底面であり、5cm×1cmの面が主面であり、5cm×0.3cmの面が側面である。
【0030】
このSOFC1は、一方の主面側(同図上面)に、出力端部として、カソード端子用の電極(Ag−Pd電極)3が設けられ、その反対側の主面には、アノード端子用の電極(Ag−Pd電極)5が設けられている。
【0031】
また、SOFC1の長手方向の端面(底面)の一方には、燃料導入孔7が設けられるとともに、他方の端面(底面)には、同様に空気導入孔9が設けられている。更に、SOFC1の左右の側面の燃料導入孔7側には、空気排気孔11が設けられ、燃料導入孔9側には、同様に燃料排気孔13が設けられている。
【0032】
図2に分解して示す様に、前記SOFC1は、インターコネクタ23と、その両側に配置されたSOFCセル(発電セル)25、27と、その両側に配置された外部コネクタ29、31とが、板厚方向に積層されたものであり、そのうち、インターコネクタ23と外部コネクタ29、31とは、後に詳述する様に、複数のセラミックス層などから構成されている。
【0033】
前記インターコネクタ23は、板厚方向の両側のSOFCセル25、27との電気的導通を行うものであり、ここでは1層のみを例示しているが、積層されるSOFCセル25、27の数に応じて、各セル25、27間に1層ずつ(合計複数層)配置される。また、外部コネクタ29、31は、各隣接するSOFCセル25、27(従ってSOFC1の中心側)と外部との電気的導通を行うものである。
【0034】
そして、図3に示す様に、このSOFC1は、例えば、その長手方向の両側に、ロー材(銀又は銀合金ロー)33によって金属マニホールド34、35を接合してシールしたSOFC複合体36として用いられる。
【0035】
この金属マニホールド34、35は、例えばフェライト系金属からなる長方形の2枚の板材(接合板)37に、例えば同様なフェライト系金属からなるチューブ38が接合されたものである。なお、接合板37の中央には、チューブ38と連通するガス孔(図示せず)が形成されている。
【0036】
b)次に、本実施形態のSOFC1の要部について、更に詳しく説明する。
(1)SOFCセル25、27
図4(a)に示す様に、SOFCセル25、27は、ジルコニアを主成分とする(詳しくは10Sc1CeSZからなる)固体電解質基板(第1固体電解質層)41の表裏面に、Ag−Pdからなる電極(空気極、燃料極)43を備えたものである。
【0037】
(2)インターコネクタ23
図4(b)に分解して示す様に、インターコネクタ23は、外側より、一対の第1平板45、47と一対の第2平板49、51と1枚の第3平板53とを積層した積層体である。つまり、第3平板53の板厚方向の両側に第2平板49、51を配置し、第2平板49、51の外側に第1平板45、47を配置して積層したものである。
【0038】
前記第1〜第3平板45〜53は、マグネシアを主成分とする(詳しくは、MgO:58mol%、SiO2:30mol%、Al23:4mol%、MnO:4mol%、CoO:2mol%、CaO:1mol%、TiO2:1mol%からなる)電気絶縁性を有するセラミック基板55と、Ag−Pd(Pd:30mol%)からなる導電性を有するビア57とから構成されている。
【0039】
また、第1平板45、47には、複数の流路形成用貫通孔59が形成され、第2平板49、51には、前記流路形成用貫通孔59に連通するように配置された複数の流路形成用貫通孔61が形成されている。なお、第3平板53には、貫通孔がなくビア57のみが形成されている。
【0040】
なお、第1〜第3平板45〜53における各ビア57は、例えば縦8列×横3列の合計24個形成されており、その位置は、積層方向において一致するように形成されている。
(3)外部コネクタ29、31
図5に分解して示す様に、外部コネクタ29、31は、SOFC1の積層方向における外側より、表面基板(第2部材)63と調整基板65と各平板(第3平板67、第2平板69、第3平板71)とを積層したものである。
【0041】
このうち、前記第1〜第3平板67〜71(第1部材)は、前記インターコネクタ23の第1〜第3平板45〜53と同様に、マグネシアを主成分とする同様な組成のセラミック基板73に、同様な配置(縦8列×横3列)でビア(第2貫通導体部)74が形成されたものである。なお、第1平板71と第2平板69には、それぞれ(インターコネクタ23と同様に)流路形成用貫通孔77、79が形成されている。
【0042】
また、前記調整基板65は、ジルコニアを主成分とする(SOFCセル25、27と同様な組成の)固体電解質基板(第2固体電解質層)81にビア(第1貫通導体部)75が形成されたものであり、更に、固体電解質基板81の板厚方向の両側には、全てのビア(縦8列×横3列)と接するように、Ag−Pd(Pd:30mol%)からなる内側電極(裏側の第1集電層82、表側の第2集電層83)が形成されている。なお、内側電極82、83は固体電解質基板81の表面全体を覆うように形成されているが、その外周の縁部に達しないように、全周にわたってわずかに内側に引き下がっている。
【0043】
更に、前記表面基板63は、前記第1〜第3平板67〜71と同様なマグネシアを主成分とする組成のセラミック基板84にビア(第3貫通導体部)85が形成されたものである。なお、この表面基板63のみは、同図左右方向の最外側の各列のビア85のみが形成されていない。
【0044】
そして、前記表面基板63の外側表面には、表面基板63における全てのビア(即ち中央部分の縦6列×横3列)85と接するように、Ag−Pd(Pd:30mol%)からなる外側電極(出力端部)3、5が形成されている。つまり、外部コネクタ29、31は、SOFC1の両側に形成されているので、各外部コネクタ29、31の表面基板63の外側電極87が、カソード端子用の電極3及びアノード端子用の電極5に対応している。
【0045】
また、この外側電極3、5は、前記積層方向に投影した場合に、前記内側電極82、83及びSOFCセル25、27の電極43より外側に広がらないように、内側電極82、83の面積及びSOFCセル25、27の電極43の面積よりも小さく設定されている。
【0046】
つまり、固体電解質基板81のビア75と表面基板63のビア85とは、積層方向における位置が一致するように形成されているが、表面基板63においては、長手方向の両側における各1列分のビアが形成されていない。従って、固体電解質基板81においては、長手方向における8列のビア75を覆うように内側電極82、83が形成されているが、表面基板63においては、長手方向における6列のビア85を覆うように外側電極3、5が形成されているだけである。
【0047】
c)次に、本実施形態のSOFC1の製造方法を説明する。
(1)固体電解質基板用及び調整基板用のグリーンシートの作製
Ce添加Sc安定化ジルコニア粉末(10Sc1CeSZ)とブチラール樹脂と可塑剤と有機溶剤とを混合して、スラリーを調整し、そのスラリーをドクターブレード法でキャスティングし、150μm厚の固体電解質基板用及び調整基板用のグリーンシートを作製した。
【0048】
(2)インターコネクタ用及び外部コネクタ用及び表面基板用の電気絶縁グリーンシートの作製
MgO:58mol%、SiO2:30mol%、Al23:4mol%、MnO:4mol%、CoO:2mol%、CaO:1mol%、TiO2:1mol%からなる組成のセラミックス粉とブチラール樹脂と可塑剤と有機溶剤とを混合して、スラリーを調整し、そのスラリーをドクターブレード法でキャスティングし、150μm厚の電気絶縁グリーンシートを作製した。
【0049】
(3)電極用及びビア用のペーストの作製
Ag−Pd(Pd:30mol%)粉末と10Sc1CeSZ粉末とエチルセルロースと有機溶剤とを混合し、Ag−Pdペーストを作製した。
【0050】
(4)未焼成発電セルの作製
図6に示す様に、固体電解質基板用のグリーンシート101の表裏面に、Ag−Pdペーストを印刷して電極パターン103を形成し、2枚の未焼成発電セル105、107を作製した。
【0051】
(5)未焼成インターコネクタの作製
図6に示す様に、電気絶縁グリーンシート109に、流路形成用貫通孔59とAg−Pdペーストにてビア57を形成した第1平板用シート111、113(2枚)と、前記流路形成用貫通孔59に連通するように形成した流路形成用貫通孔61と同様なビア57とを形成した第2平板用シート115、117(2枚)と、貫通孔がなくビア57のみを形成した第3平板用シート119(1枚)とを用意した。
【0052】
そして、前記流路形成用貫通孔59、61に、可燃性ペースト(昇華性有機物とエチルセルロースと有機溶剤とを混合したもの)を充填し、充填部121とした。
次に、第1平板用シート111、第2平板用シート115、第3板用シート119、第2平板用シート117、第1平板用シート113の順で積層して積層体を形成し、その積層体を所定寸法に切断して、未焼成インターコネクタ123を形成した。
【0053】
(6)未焼成外部コネクタの作製
図6に示す様に、前記電気絶縁グリーンシート109に、流路形成用貫通孔77とAg−Pdペーストにてビア74を形成した第1平板用シート125と、前記流路形成用貫通孔77に連通するように形成した流路形成用貫通孔79とビア74とを形成した第2平板用シート127と、貫通孔がなくビア74のみを形成した第3平板用シート129とを用意した。
【0054】
そして、前記流路形成用貫通孔77、79に、同様に可燃性ペーストを充填した。
また、前記調整基板用のグリーンシートに、ビア75を形成するとともに(全ビア75に接するように)両面にAg−Pdペーストを印刷して電極パターン131を形成した調整基板用シート133を用意した。
【0055】
更に、電気絶縁グリーンシート109に、ビア85を形成するとともに(全ビア85に接するように)外側の表面にAg−Pdペーストを印刷して電極パターン135を形成した表面基板用シート137を用意した。
【0056】
次に、第1平板用シート125、第2平板用シート127、第3平板用シート129、調整基板用シー133、表面基板用シート137の順で積層して積層体を形成し、その積層体を所定寸法に切断して、2枚の未焼成外部コネクタ139、141を形成した。
【0057】
(7)積層及び焼成
図7に分解して示す様に、未焼成インターコネクタ123の両側に未焼成発電セル105、107を配置するとともに、未焼成発電セル105、107の各外側に未焼成外部コネクタ139、141を配置し、図8に示す様に、それらを積層して圧着して一体とし、積層体143を形成した。
【0058】
この積層体143を250℃にて加熱して脱脂を行い、その後、1150℃、1時間、大気雰囲気という条件で焼成して、前記図1に示した様な四角柱状のモノリス形SOFC1を作製した。
【0059】
この様にして製造されたSOFC1は、緻密化しており、外部コネクタ29、31に反りや割れなども確認できなかった。
c)次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0060】
<実験例>
前記実施形態の製造方法でSOFC1を製造した。このSOFC1においても、外部コネクタ29、31に反りや割れなども確認できなかった。
【0061】
そして、SOFC1の長手方向の両端に、前記ロー材33を用いて金属マニホールド34、35を接合して、SOFC複合体36のサンプルを作製した。
このサンプルを800℃に昇温し、各金属マニホールド34、35を介して、燃料導入孔7には燃料ガスである露点30℃のH2ガスを供給し、空気導入孔9には酸化剤ガスである空気を供給した。また、外部コネクタ29、31の各電極3、5から電気を取り出せるように端子接続した。
【0062】
この状態で発電を行ったところ、2.1Vにて1.5Wの発電ができた。
d)次に、本実施形態による効果について説明する。
本実施形態では、燃料電池セル25、27の固体電解質基板41と外部コネクタ29、31の固体電解質基板81とは同じ主成分(ジルコニア)を有しているので、燃料電池セル25、27とインターコネクタ23と外部コネクタ29、31とを同時焼成により一体化した場合でも、外部コネクタ29、31に反りや破損が生じ難いという効果がある。
【0063】
また、外部コネクタ29、31の固体電解質基板81の両側に、第1集電層82と第2集電層83とを備えているので、ビア75を用いて板厚方向に電気的導通を得る場合でも、集電能力が高いという利点がある。更に、外部コネクタ29、31には、第1集電層82や第2集電層83を備えているので、外部コネクタ29、31の面積を小さくした場合でも、十分に集電能を確保できる。
【0064】
しかも、本実施形態では、外部コネクタ29、31の第1集電層82、第2集電層83、外側電極3、5は、基板に外縁より引き下がっており、しかも、外部コネクタ29、31の外側電極3、5の面積は、燃料電池セル25、27の電極43及び外部コネクタ29、31の第1、第2集電層82、83の面積よりも小さいので、金属マニホールド34、35や各種の接合部材との絶縁が取りやすくなり、ショート不良を低減できる。
【0065】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1…固体酸化物形燃料電池(SOFC)
3…カソード端子用の電極(外側電極:出力端部)
5…アノード端子用の電極(外側電極:出力端部)
7…ガス導入孔
9…空気導入孔
23…インターコネクタ
25、27…固体酸化物形燃料電池セル(SOFCセル:発電セル)
29、31…外部コネクタ
34、35…金属マニホールド
41、81…固体電解質基板(第1、第2固体電解質層)
57、74、75、85…ビア
82…第1集電層(内側電極)
83…第2集電層(内側電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固体電解質層を備える層状の燃料電池セルと、
隣接する二つの前記燃料電池セルに挟まれて、該隣接する燃料電池セル間の電気的導通を行う第1コネクタと、
前記燃料電池セルと前記第1コネクタとが交互に積層された積層体の積層方向の両端にさらに積層されて、該積層体と外部との電気的導通を行う第2コネクタと、
を有し、前記燃料電池セルと前記第1コネクタと前記第2コネクタとが同時焼成により一体化されてなる固体酸化物形燃料電池であって、
前記第2コネクタは、
前記積層方向に沿って積層され且つ前記第1固体電解質層を構成する各成分のうち同じ主成分を有する第2固体電解質層と、
前記第2固体電解質層を厚み方向に貫通し、該第2固体電解質層の厚み方向の両側面を電気的に導通する第1貫通導体部と、
を備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記第2コネクタは、
前記第2固体電解質層の前記燃料電池セルに面する側の第1面に積層され、電気絶縁性を有する基板と該基板を厚み方向に貫通し該基板の厚み方向の両側面を電気的に連通する第2貫通導体部とを備える第1部材と、
前記第2固体電解質層の前記燃料電池セルの反対側の第2面に積層され、電気絶縁性を有する基板と該基板を厚み方向に貫通し該基板の厚み方向の両側面を電気的に連通する第3貫通導体部とを備える第2部材と、
前記第1部材と前記第2固体電解質層との間に、前記第2固体電解質層の前記第1面に沿って延び、且つ前記第2貫通導体部と前記第1貫通導体部とを電気的に接続する第1集電層と、
前記第2部材と前記第2固体電解質層との間に、前記第2固体電解質層の前記第2面に沿って延び、且つ前記第3貫通導体部と前記第1貫通導体部とを電気的に接続する第2集電層と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記第3貫通導体部は、前記第2部材の前記基板の外縁以外の領域に形成されており、 前記第2部材の前記燃料電池セルの反対側の第3面に、該第3面に沿って該第3面における前記第3貫通導体部に対応する領域内に延び、且つ前記第3貫通導体部と電気的に接続して前記燃料電池セルで発生する電力を外部に出力する出力端部を備えることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記第2コネクタの出力端部の面積を、前記第2コネクタの第1集電層及び第2集電層の面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate