説明

固体酸化物燃料電池用の還元−酸化耐性電極

固体酸化物燃料電池のアノード部材は、細長い粒子から実質的に構成される比較的粗いイットリア安定化ジルコニウム(YSZ)粉末を、粒度の小さい比較的微細なNiO/YSZまたはNiOの粉末と混合するステップであって、それによって、混合した粉末を焼結すると、粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、微細な粉末が、かご形の開放気孔を通過して分散する、ステップによって形成される。カソード部材の形成方法は、細長い粒子から実質的に構成される粗いYSZ粉末を、粒度の小さい微細なランタンストロンチウムマンガナイト粉末と混合するステップであって、それによって、混合した粉末を焼結すると、粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、微細な粉末が、かご形の開放気孔を通過して分散する、ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年12月19日に出願された米国仮特許出願第61/203,185号明細書の利益を主張する。
【0002】
上記出願の教示全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、化学反応によって電気を発生する装置である。種々の燃料電池の中で、固体酸化物燃料電池では、硬質セラミック化合物の金属(たとえば、カルシウムまたはジルコニウム)酸化物が電解質として使用される。典型的には、固体酸化物燃料電池中で、Oなどの酸素ガスは、カソードにおいて還元されて酸素イオン(O2−)となり、Hガスなどの燃料ガスは、アノードにおいて酸素イオンで酸化されて水を形成する。燃料電池は、一般に積層体として設計され、そのため、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間の固体電解質を含む部分組立体が、1つの部分組立体のカソードともう1つの部分組立体のアノードとの間に電気相互接続を配置することによって、直列に組み立てられる。
【0004】
固体酸化物燃料電池(SOFC)のアノード組成物は、典型的には、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)との混合物から構成される。還元(水素)雰囲気中での運転中、NiOが還元されてニッケル(Ni)金属となり、次にこれが導電相として機能する。均一に分布したほぼ同じ大きさの球状粉末から構成される典型的な混合物の場合、過度の抵抗を示さずに電気を流すため、アノード微細構造全体に十分なNi金属を浸透させるためには、約30体積%Niの最低分率が必要となる。N.Q.Minh,Ceramic Fuel Cells,J.Am.Ceram.Soc.Vol.76(3),pp.563−588(1993)を参照されたい。NiOが還元してNiになることによる体積減少を考慮すると、30体積%のNiのためには、約42体積%のNiOが必要であり、これはYSZとの混合物中に約45重量%のNiOの最低分率に相当する。
【0005】
SOFCアノード組成物は、いくつかの理由で典型的には70〜80重量%程度のNiOで構成される。NiO分率が高いと、良好な導電性が保証され、機械的強度の増加した微細構造が得られる。さらに、NiOからNiへの体積減少によって微細構造中の気孔が増加し、NiO分率の増加によって体積減少量も増加するため、アノード中により高い多孔度をその場で形成する方法となる。しかし、NiOの分率が増加すると、還元−酸化(レドックス)サイクル中に問題が発生する。還元雰囲気中での高温の運転条件から、酸化雰囲気中の低温の停止条件へのサイクルが繰り返されると、体積変化および熱膨張係数の差によってアノード微細構造中に繰り返し応力条件が生じる。たとえば、80体積%のNiOを含有するNiO/YSZ組成物は約33%のレドックス体積変化を示す。一般的な下限の45重量%のNiO(30体積%のNi)は、約18%のレドックス体積変化に相当する。還元雰囲気と酸化雰囲気との間のサイクルによって生じる熱応力は、固体酸化物燃料電池の寿命の間の周知の故障モードの1つであり、一般にレドックス耐性と呼ばれている。
【0006】
したがって、固体酸化物燃料電池の運転中の体積変化を軽減または解消する必要が存在する。
【0007】
固体酸化物燃料電池の製造および運転において常に存在する問題は、熱膨張係数の差によって異なる構成層の間での応力の不一致が生じることである。1,100〜1,400℃の範囲内の製造温度および600〜1,000℃の範囲内の運転温度では、さらに小さな熱膨張係数(CTE)の差によって、大きな繰り返し応力が発生して、固体酸化物燃料電池スタックの故障が生じる場合がある。一般に、アノード組成物およびカソード組成物の組み合わせを選択するための重要な基準の1つは、室温と製造温度または運転温度との間の熱膨張係数の差を最小限にすることである。しかし、多くのさらなる性質はアノードおよびカソードの性能のために最適化する必要があるので、希望するよりも大きなCTE差を許容する必要が生じることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、熱膨張係数の差のために固体酸化物燃料電池中に生じる繰り返し熱応力を軽減または解消する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に比較的大きく細長い形状のセラミック粉末と、より微細なセラミック粉末との組み合わせを使用することによる、固体酸化物燃料電池の電極部材の形成方法に関する。
【0010】
一実施形態においては、固体酸化物燃料電池のアノード部材の形成方法は、実質的に細長い粒子から構成される比較的粗いイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、粒度の小さい比較的微細なNiO/YSZまたはNiOの粉末とを混合するステップであって、それによって、混合した粉末を焼結すると、粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、微細な粉末がかご形の開放気孔を通過して分散するステップと、粗いYSZ粉末とNiO/YSZまたはNiOの微細な粉末との組み合わせを焼結してアノード部材を形成するステップとを含む。別の一実施形態においては、固体酸化物燃料電池のカソード部材の形成方法は、実質的に細長い粒子から構成される比較的粗いイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末を、粒度の小さな比較的微細なランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)粉末と混合するステップであって、それによって、混合した粉末を焼結すると、粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、微細な粉末がかご形の開放気孔を通過して分散するステップと、粗いYSZ粉末と微細なLSM粉末との組み合わせを焼結してカソード部材を形成するステップとを含む。ある実施形態においては、粗い粉末の粒子は、約15ミクロン〜約60ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜3.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する。ある実施形態においては、粗い粉末の粒子は、約15ミクロン〜約50ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜2.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する。微細な粉末の粒子は、約0.5ミクロン〜約8ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50を有することができる。微細な粉末:粗い粉末の重量比は、約1:4〜約3:2の間の範囲内とすることができる。特定の一実施形態においては、この重量比を約2:3とすることができる。
【0011】
別の一実施形態においては、固体酸化物燃料電池のアノードは、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するニッケル成分を含む。ニッケル成分およびかご形成分の体積パーセントは、約1:8〜約1:1の間の範囲内とすることができる。特定の一実施形態においては、ニッケル成分は、アノード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める。
【0012】
さらに別の一実施形態においては、固体酸化物燃料電池のカソードは、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するLSM成分を含む。LSM成分およびかご形成分の体積パーセントは、約1:8〜約1:1の間の範囲内とすることができる。特定の一実施形態においては、LSM成分は、アノード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める。
【0013】
さらに別の一実施形態においては、固体酸化物燃料電池は、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するニッケル成分を含むアノード層と、電解質層と、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するLSM成分を含むカソード層とを含む。
【0014】
本発明は、改善された還元−酸化耐性を有する電極の製造が可能なこと、CTE差を最小限にするためにアノード組成およびカソード組成の化学量論の厳密な規定および制御の必要性が解消されることなどの多くの利点を有する。たとえば、本発明は、アノードおよびカソードの両方の微細構造の基礎として同じ材料を使用することによって、CTEに関連する応力の発生の問題に対処する。たとえば、比較的粗い粒度のYSZ粉末を、比較的微細な粒度のNiOまたはNiO/YSZの粉末とともに使用することで、アノード部材を製造することができ;同じ比較的粗いYSZ粉末を比較的微細な粒度のLSMとともに使用することで、カソード部材を製造することができる。両方の部材において、粗いYSZ粒子によって、部材の緻密化および膨張ひずみを制御するかご形微細構造が形成され、一方、微細なNiO、NiO/YSZ、およびLSMを加えることによって、導電率および酸化−還元耐性などの部材の機能特性が得られる。
【0015】
本発明は、SOFCスタック中のアノード部材におけるレドックスにより生じる故障の問題にも対処する。本発明により記載されるアノード微細構造は、一般的なアノード組成物の70〜80重量%のNiOと比較するとNiO(したがってNi)の分率がかなり低く、約45重量%のNiOの一般に知られている下限よりも低い分率でNiOを含有することができる。このような低い分率のNiOにおいては、一般には、十分な気孔および導電率を有する微細構造を形成することが困難である。これらの問題を、比較的粗い細長い粒度分布のYSZ粉末と、比較的微細な粒度分布のNiO/YSZまたはNiOの粉末との複合組成物を使用することで解決した。粗いYSZ粉末によって、粒子間に高い機械的衝突を有するかご形微細構造が形成されることで、緻密化中の体積減少が防止され、それによって大きな体積分率の気孔が維持された。微細な球状、または微細な細長い形状の粒子分布のNiO/YSZまたはNiOは、YSZかご形微細構造中の大きな分率の開放気孔中に浸透する。
【0016】
一般に使用される方法に対するこの方法の利点の1つは、CTE差を最小限にするためにアノード組成およびカソード組成の化学量論の厳密な規定および制御の必要性が軽減または解消されることである。YSZ材料の粗い構造によって制御される部材の全体的な熱膨張挙動の影響に関する問題を最小限にしながら、NiO、NiO/YSZ、およびLSMの微細分散添加物を最適化することができる。
【0017】
以上の説明は、添付の図面に示されるような本発明の例示的な実施形態の以下のより詳細な説明によって明らかになるであろう。これらの図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の実施形態の説明において強調が行われている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】粗いYSZ粉末の4つのバッチの粒度分布(PSD)のグラフである。
【図2】YSZグレインの代表的なサンプルの顕微鏡写真である。
【図3】粗いYSZ粉末の4つのバッチのアスペクト比分布のグラフである。
【図4】NiO微細な粉末の4つのバッチのPSDのグラフである。
【図5】本発明の方法によって製造したアノード部材のNiOの重量%の関数としての伝導率およびCTEのグラフである。
【図6】本発明の方法によって製造されたアノード部材の微細構造の顕微鏡写真である。
【図7】図6中に示されるアノード部材のより高倍率の顕微鏡写真である。
【図8】平板積層設計の本発明の燃料電池の概略図である。
【図9】管状設計の本発明の燃料電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
還元−酸化耐性アノード組成物
一実施形態においては、本発明は、大きく細長い形状のセラミック粉末をより微細なセラミック粉末と組み合わせて使用することによって、大きく改善された還元−酸化耐性アノード微細構造を形成することが可能となる方法に関する。
【0020】
別の一実施形態においては、本発明の新規な特徴としては、一般的な下限である30体積%Ni未満で十分な導電性が得られること、および粗く細長いYSZ粒子と、微細で球状の、または微細で細長いNiO/YSZまたはNiOの粒子とから構成される複合アノード微細構造が挙げられる。
【0021】
さらに別の一実施形態においては、本発明は、組成、科学的性質、および電気化学的性能が大きく異なるにもかかわらず熱膨張係数が同等となるような、バルクアノード部材およびバルクカソード部材の製造方法に関する。このような方法においては、熱膨張係数の差のために固体酸化物燃料電池スタック中に発生する繰り返し熱応力を解消することができる。
【0022】
さらに別の一実施形態においては、本発明は、バルクアノード部材およびバルクカソード部材の両方において共通の粒度の粗い材料を含むことができる。この共通材料は、大きな気孔を有する開放微細構造の形成に関して各部材の構造の主成分となる。さらに、各電極部材は、電気的および科学的性質を得るために粒度の小さい異なる材料を含有する。
【0023】
細長い形状のセラミック粉末は、以下の製造方法によって製造することができる。所望の粉末材料からセラミック体を形成する。このセラミック体は、好ましくは長さが少なくともミリメートルであり、すなわち、すべての寸法が少なくとも1mmを超える。セラミック体は、焼結、加圧下での焼結(「IP」)、熱間静水圧プレス(「HIP」)、SPS(「放電プラズマ焼結」(Spark Plasma Sintering))、または溶融によって製造することができる。この目的は、後の破砕中に「破裂」に対して十分な抵抗性を有する塊状体を製造することである。言い換えると、製造される塊状体が、破砕中に崩壊しそうなグレインの単純な凝集体となることを考慮すべきではない。このような崩壊では、工業的に使用するのに十分な細長いグレインを得ることができない。セラミック体は、好ましくはローラー粉砕機を使用して粉砕して、粒子を得ることができる。粒子は、たとえば、製造すべき粉末のグレインの最大サイズを超えるサイズを有するものをふるい分けすることによって、好ましくはこの最大サイズの少なくとも2倍および/またはこの最大サイズの4倍未満のサイズを有する粒子を選択することによって、選択される。選択した粒子は、次に、特にローラー粉砕機によって、剪断応力条件下で粉砕する。摩擦による粉砕機は、多量の細長いグレインを効率的に製造するのには適していない。
【0024】
粒度分布または「グレインサイズ」分布は、たとえば、Horiba(Horiba Instruments,Inc.,Irvine,CA)のPartica LA−950などのレーザー粒子測定装置を使用して行われる粒状分布の特性決定によって得られるグレインのサイズであると理解されたい。
【0025】
百分位数10(d10)、50(d50)、および90(d90)は、粉末のグレインサイズの累積粒状分布の曲線上における、体積でそれぞれ10%、50%、および90%のパーセント値に相当するグレインのサイズである。グレインのサイズは、昇順に分類される。たとえば、粉末のグレインの体積の10%がd10未満のサイズを有し、グレインの体積の90%がd10を超えるサイズを有する。百分位数は、レーザー粒子測定装置を使用して行われる粒状分布を使用して求めることができる。
【0026】
アスペクト比(「AR」と略記される)は以下のように定義される。比AR50は、グレインの見かけの最長寸法、すなわち「長さ」Lと、グレインの見かけの最短寸法、すなわち「幅」Wとの間で測定される。グレインの長さおよび幅は典型的には以下の方法によって測定される。YSZ粉末のサンプルを顕微鏡用スライドガラス上に軽く振りかけて、スライド上に粉末の単層を残す。このスライドを黒色背景の一片上に載せる。分析用に、互いに接触する数個のグレインがある領域を探す。Nikon DXM 1200デジタルカメラにより1280×1024ピクセルの解像度で画像を取り込む。サンプル1つ当たり6つの画像を取り込み、較正スライドの画像を1つ取り込む。この方法で、6つの画像のそれぞれで600〜1100個の物体が測定される。後に比率を測定しやすくするために、グレインが最も分離している領域でこれらの画像が得られる事が好ましい。各グレインのそれぞれの画像に対して、見かけの最長寸法(長さL)、および見かけの最小寸法(幅W)を測定する。好ましくは、これらの寸法は、たとえば、NOESIS(Saint Aubin,France)より入手可能なVISILOG、またはSimplePCI Image Analysisソフトウェア(Hamamatsu Corporation,Sewickley,PA,USA)などの画像処理ソフトウェアを使用して測定される。各グレインについて、L/Wの比が計算される。次に粉末の比の分布を求めることができる。グレインの「メジアン比」AR50は、50%のグレインがこの値未満の比を有し、50%のグレインがこの値を超える比を有する値である。
【0027】
さらに別の一実施形態においては、固体酸化物燃料電池は、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するニッケル成分を含む前述のようなアノード層と、電解質層と、焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、かご形が開放気孔である微細構造かご形成分、およびかご形成分の開放気孔を通過して分散するLSM成分を含む前述のようなカソード層とを含む。
【0028】
その教示全体が参照により本明細書に援用される”High Temperature Solid Oxide Fuel Cells:Fundamentals,Design and Applications,”pp.83−112,Dinghal,et al.Ed.,Elsevier Ltd.(2003)に記載されるような当技術分野において周知のあらゆる好適な固体電解質を本発明において使用することができる。例としては、YSZ、ランタンストロンチウムマンガネート(lanthanum strontium manganate)(LSM)、ZrO系材料、たとえばScをドープしたZrO、YをドープしたZrO、およびYbをドープしたZrO;CeO系材料、たとえばSmをドープしたCeO、GdをドープしたCeO、YをドープしたCeO、およびCaOをドープしたCeO;Lnガレート系材料(Ln=La、Pr、Nd、またはSmなどのランタニド)、たとえば、Ca、Sr、Ba、Mg、Co、Ni、Fe、またはそれらの混合物をドープしたLaGaO(たとえば、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.05、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2、LaSrGaO、LaSrGa、またはLa0.90.1GaO、式中A=Sr、Ca、またはBa);ならびにそれらの混合物が挙げられる。別の例としては、ドープしたジルコン酸イットリウム(たとえば、YZr)、ドープしたチタン酸ガドリニウム(たとえば、GdTi)、およびブラウンミラライト類(たとえば、BaInまたはBaIn)が挙げられる。
【0029】
本発明の燃料電池は、図8中に示されるように平面状に積み重ねられた燃料電池であってよい。あるいは、図9中に示されるように、本発明の燃料電池は管状の燃料電池であってよい。典型的には、図8中に示されるような平面状の設計においては、部材は平板スタックに組み立てられ、相互接続中に形成されたチャネルに空気および燃料が流される。典型的には、図9中に示されるような管状の設計においては、部材は中空管の形態に組み立て、セルは管状カソードの周囲に複数の層で構成され;管の内部には空気が流され、外部の周囲には燃料が流される。
【実施例】
【0030】
前述の製造法によって粗いYSZ粉末の4つのバッチを作製した。以下の表1および図1は4つのバッチの粒度分布(PSD)を示している。
【0031】
【表1】

【0032】
図2は、YSZグレインの代表的なサンプルの典型的な顕微鏡写真を示している。以下の表2はAR50値を示しており、図3は、YSZ粉末の4つのバッチのアスペクト比分布のグラフである。
【0033】
【表2】

【0034】
60重量%の細長く粗いYSZ粉末と40重量%のNiO微細な粉末との湿式分散混合物を以下の方法によって作製した。1グラムの分散剤(Darvan(登録商標)C(R.T.Vanderbilt,Norwalk,CT))と、平均粒度0.74μmの80gのNiO微細な粉末とを、ナルゲン(nalgene)瓶中の80gの脱イオン水に加えた。NiO粉末(バッチ#1)のPSDを以下の表3に示し、図4中のグラフに示している。
【0035】
【表3】

【0036】
小さなジルコニア粉砕媒体を水面の高さの半分まで加え、混合物を12時間回転させた。次に、平均粒度が約37μmでメジアンアスペクト比が1.58である120gの細長く粗いYSZ粉末(表1および2中に示されるバッチ#1)を、14gのポリビニルアルコールと3gのポリエチレングリコールバインダーとのスラリー混合物に加えた後、1時間回転させた。回転後、ふるいを使用して粉砕媒体を粉末混合物から分離した。得られた湿潤粉末混合物は、撹拌しながら数時間にわたってホットプレート上で蒸発させることによって乾燥させた。
【0037】
得られた乾燥粉末混合物を、3,000psiの一軸圧力下で乾式プレスして、直径57mmおよび高さ5mmの寸法のアノード部材ディスクを形成した。続いて、このアノード部材ディスクを、酸化雰囲気中、1,320℃の温度、7MPaの一軸圧力下で30分間、2つの緻密質アルミナプラテンの間でホットプレスした。
【0038】
得られたアノード部材を、800℃において水素を含有する還元ガス組成物に曝露して、すべてのNiOを金属ニッケルに変換させた。還元前後のサンプルの重量を測定して、完全な還元を確認した。密度測定より、還元後に43%の気孔を有する部材の微細構造が示された。次に、熱膨張および導電率の特性決定のために、このディスクを棒状に切断した。
【0039】
熱膨張および導電率の測定は、水素を含有する還元ガス組成物中で行った。熱膨張係数(CTE)は、室温から1,200℃までの熱膨張データのベストフィットラインから計算した。導電率は、標準的な4プローブ設定で25℃、800℃、900℃、および1000℃において測定した。
【0040】
以下の表4および図5は、40重量%のNiOを使用して前述のように製造したアノード部材、およびNiO量を増加させて同様に製造した3つの別の組成物のデータを示している。図6および7は、前述の方法によって製造したアノード部材の微細構造の顕微鏡写真を示している。
【0041】
【表4】

【0042】
60重量%の細長く粗いYSZ粉末および40重量%のNiO微細な粉末を含有する実験用アノード組成物の導電率を測定すると272S/cmであり、この値はSOFCアノードに好適となる十分な値100S/cmを超えている。導電率の規格に関しては、H.Itoh,et al.,Electrochemical Society Proceedings,Volume 2001−16,pp.750−758(2001)を参照されたい。
【0043】
本明細書において引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示はそれら全体が参照により援用される。
【0044】
同等物
本発明の例示的な実施形態を参照しながら本発明を詳細に示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱せずに、それらの形態および詳細について種々の変更を行うことができることは、当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物燃料電池のアノードの形成方法であって:
a)細長い粒子から実質的に構成される比較的粗いイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末を、粒度の小さい比較的微細なNiO/YSZまたはNiOの粉末と混合するステップであって、それによって、前記混合した粉末を焼結すると、前記粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、前記微細な粉末が、前記かご形の前記開放気孔を通過して分散するステップと;
b)前記粗いYSZ粉末と前記NiO/YSZまたはNiOの微細な粉末との組み合わせを焼結してアノード部材を形成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記粗い粉末の粒子が、約15ミクロン〜約60ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜3.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粗い粉末の粒子が、約15ミクロン〜約50ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜2.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記微細な粉末の粒子が、約0.5ミクロン〜約8ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
微細な粉末:粗い粉末の重量比が約1:4〜約3:2の間の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記重量比が約2:3である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
固体酸化物燃料電池のアノードであって:
a)焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、前記かご形が開放気孔である微細構造かご形成分と;
b)前記かご形成分の前記開放気孔を通過して分散するニッケル成分とを含む、アノード。
【請求項8】
前記ニッケル成分および前記かご形成分の体積パーセントが、約1:8〜約1:1の間の範囲内である、請求項7に記載のアノード。
【請求項9】
前記ニッケル成分が、前記アノード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める、請求項7に記載のアノード。
【請求項10】
固体酸化物燃料電池のカソードの形成方法であって:
a)細長い粒子から実質的に構成される比較的粗いイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末を、粒度の小さい比較的微細なランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)粉末と混合するステップであって、それによって、前記混合した粉末を焼結すると、前記粗いYSZ粉末が開放気孔のかご形微細構造を形成し、前記微細な粉末が、前記かご形の前記開放気孔を通過して分散するステップと;
b)前記粗いYSZ粉末と前記微細なLSM粉末との組み合わせを焼結してカソード部材を形成するステップとを含む、方法。
【請求項11】
前記粗い粉末の粒子が、約15ミクロン〜約60ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜3.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粗い粉末の粒子が、約15ミクロン〜約50ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50、および約1.2〜2.0の間の範囲内のメジアン粒子アスペクト比を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微細な粉末の粒子が、約0.5ミクロン〜約8ミクロンの間の範囲内のメジアン粒度d50を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
微細な粉末:粗い粉末の重量比が約1:4〜約3:2の間の範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重量比が約2:3である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
固体酸化物燃料電池のカソードであって:
a)焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、前記かご形が開放気孔である微細構造かご形成分と;
b)前記かご形成分の前記開放気孔を通過して分散するランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)成分とを含む、カソード。
【請求項17】
前記LSM成分および前記かご形成分の体積パーセントが、約1:8〜約1:1の間の範囲内である、請求項16に記載のカソード。
【請求項18】
前記LSM成分が、前記カソード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める、請求項16に記載のカソード。
【請求項19】
固体酸化物燃料電池であって:
a)アノード層であって、
i)焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、前記かご形が開放気孔である微細構造かご形成分と;
ii)前記かご形成分の前記開放気孔を通過して分散するニッケル成分とを含む、アノード層と;
b)電解質層と;
c)カソード層であって、
i)焼結した細長いYSZ粒子の微細構造かご形成分であって、前記かご形が開放気孔である微細構造かご形成分と;
ii)前記かご形成分の前記開放気孔を通過して分散するランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)成分とを含む、カソード層と、
を含む、固体酸化物燃料電池。
【請求項20】
前記ニッケル成分および前記かご形成分の体積パーセントが、約1:8〜約1:1の間の範囲内である、請求項19に記載のアノード。
【請求項21】
前記ニッケル成分が、前記アノード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める、請求項19に記載のアノード。
【請求項22】
前記LSM成分および前記かご形成分の体積パーセントが、約1:8〜約1:1の間の範囲内である、請求項19に記載のアノード。
【請求項23】
前記LSM成分が、前記アノード部材中の固体体積の約27体積パーセントを占める、請求項19に記載のアノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−513096(P2012−513096A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542443(P2011−542443)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068507
【国際公開番号】WO2010/080507
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】