説明

固体電気化学セルの電力供給方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業炉などの煙道中のガス酸素濃度等を測定するのに好適に使用できる固体電気化学セルの電力供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、工業炉などの煙道中のガス酸素濃度などを測定するには、固体電気化学セルと加熱体とを有する酸素検出装置を煙道内に設置し、この酸素検出装置に離れた場所に設けた別体の電力供給装置からリード線を介して一定の電圧を供給して、ガス酸素濃度などを測定するシステムが知られている。この際、酸素検出器と信号変換器を含む電力供給装置との距離が例えば10mのときは、予め10mのリード線の電圧降下分を求めておき、その電圧降下分を加味して電力供給装置の出力電圧を決定していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の酸素濃度検出システムでは、酸素検出器と信号変換器を含む電力供給装置との距離が設置条件により異なるとき、リード線による電圧降下がその距離により異なるため、上記電力供給装置の出力電圧を、電力供給装置とは離れた場所にある酸素検出器の端子台の電圧を監視して、離れた位置にある電力供給装置において規定の電圧に調整しなければならないため、非常に手間のかかる問題があった。
【0004】本発明の目的は上述した課題を解消して、酸素検出器と信号変換器との距離によらず、酸素検出器の加熱体に供給する電圧を自動的に補正できる固体電気化学セルの電力供給方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の固体電気化学セルの電力供給方法の第1発明は、固体電気化学セルと加熱体とを有する酸素検出器に、別体の電力供給装置からリード線を介して一定電圧を供給する方法であって、前記酸素検出器の接続端子部または電力供給装置内に、前記固体電気化学セルが稼働温度になるときの前記加熱部の抵抗値に相当する抵抗値を有する抵抗を設け、前記電力供給装置内において電力供給装置と酸素供給部との間を接続するリード線による電圧降下分を求め、その補償をすることを特徴とするものである。
【0006】本発明の固体電気化学セルの電力供給方法の第2発明は、固体電気化学セルと加熱体とを有する酸素検出器に、別体の電力供給装置からリード線を介して一定電圧を供給する方法であって、前記酸素検出器の電力供給用の2つの接続端子に、前記加熱部に供給する電圧を検知するための各別の検知用補助線を接続して、各検知用補助線にリード線を接続して前記電力供給装置に導き、電力供給装置においてこれら検知用補助線間の電圧が一定になるよう制御することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】上述した構成において、第1発明では、固体電気化学セルが稼働温度になるときの加熱部の抵抗値に相当する抵抗値を有する抵抗を酸素検出器または電力供給装置内に設けてリード線による電圧降下分を補償することにより、また第2発明では、酸素検出器の加熱部の2つの接続端子の各別に検知用補助線を設け、この補助線をリード線を介して電力供給装置に導き、電力供給装置内において補助線間の電圧が一定になるように制御することにより、酸素検出器と電力供給装置との間のリード線の長さにかかわらず、酸素検出器の加熱体に供給する電圧を常に一定にすることができる。
【0008】
【実施例】図1は本発明の第1発明である固体電気化学セルの電力供給方法の一例を説明するための図である。図1に示す実施例では、トランスTr、スイッチSW、整流器1、ツェナダイオードZD1、抵抗R0,R1,R2,R3,R4,R5、可変抵抗器VR1、トランジスタTR、コンデンサC1、オペアンプOPを図示のように接続することにより、電力供給装置2を構成している。また、抵抗RHは酸素検出器3の加熱体4を抵抗として表示している。固体電気化学セルが稼働温度になる時の加熱体4の抵抗値に相当する抵抗R2を酸素検出器の内部に設ける。電力供給装置2の4ケの端子5ー1〜5ー4と酸素検出器3の4ケの端子6ー1〜6ー4との間は線抵抗が1m当たりrΩ/mで、長さLmのリード線7ー1〜7ー4により接続する。
【0009】図1に示す回路における動作は以下の通りになる。オペアンプOPの出力V0(電力供給装置2の5−1端子の電圧)はツェナダイオードZD1の電圧をVZとすると、
【化1】


となる。リード線が短い時は2rLは0であるからこのときヒータの供給電圧を規定の電圧になるよう可変抵抗VR1で調整し、リード線の長さがLmと長くなればリード線の抵抗は2rLの抵抗増加となり、補償抵抗R2に対するこの抵抗増加分の電圧を端子5−1に加え、電流分はトランジスタTRより供給することにより、検出器3と電力供給装置2との間にリード線Lmを接続した時のリード線の抵抗による電圧降下を補償することが出来る。
【0010】図2は本発明の第2発明である固体電気化学セルの電力供給方法の一例を説明するための図である。図2に示す実施例では、図1に示す例と同様に、トランスTr,スイッチSW、整流器1、コンデンサC1、ツェナダイオードZD1、抵抗R0、R1、R2、R3、トランジスタTR、オペレーショナル・アンプOPを図示のように結線するとともに、さらに差動アンプ8を図示のように結線している。図1に示す例と異なるのは、図1における補償用の抵抗R2を使用せず、酸素検出器3の加熱体4に電力を供給するための2つの接続端子6ー1、6ー4の各別に検知用補助線9ー1、9ー4を設け、この補助線9ー1、9ー4をリード線7ー2、7ー3を介して電力供給装置2内の差動アンプ8に入力している点である。
【0011】図2に示す回路では、設定電圧はR2*VZ/(R1+R2)となり、この設定電圧を誤差検知用のオペレーショナル・アンプOPの+側に入力し、また差動アンプ8により加熱体4の抵抗RHの両端の電圧(ヒータ電圧)を検知して誤差検知用のオペレーショナル・アンプOPのー側に入力している。一方、誤差検知用のオペレーショナル・アンプOPの出力に抵抗R3を介してレギュレーション用TRを挿入してリード線7ー1を介して加熱体4の抵抗RHの一端に接続している。これにより、設定電圧 ヒータ電圧となるようにオペレーショナル・アンプOPがレギュレーションTRを動作させるため、電力供給装置内において補助線間の電圧が一定になるように制御することができ、その結果、酸素検出器と電力供給装置との間のリード線の長さにかかわらず、酸素検出器の加熱体に供給する電圧を常に一定にすることができる。
【0012】実際に、図1に示す本発明の回路におけるヒータ印加電圧VHと、図3に示す従来の回路におけるヒータ印加電圧VHとを比較したグラフを図4に示す。図4に示したように、従来例では100mで1.27Vの電圧降下が発生する。そのため、ヒータ端子間の設定電圧が14Vでセンサ温度が約550℃であるとすると、100mリード線を延ばしたときヒータ端子間の電圧がリード線による電圧降下で12.75Vとなり、その結果センサ温度が約400℃に低下し、センサとして十分な動作ができなくなる。これに対し、本発明例では、リード線延長距離にかかわりなく、ヒータ端子間の電圧が14Vの一定となり、その結果センサ稼働温度を約550℃に常に維持することができ、安定したセンサ稼働状態を得ることができる。
【0013】本発明は上述した実施例にのみ限定されるものでなく、幾多の変形、変更が可能である。例えば、上述した実施例は本発明の電力供給方法を実施できる一例を開示しているにすぎず、他の構成でも本発明の方法を実施できる構成であれば本発明の範囲内であることはいうまでもない。また、上述した第1発明の実施例において、固体電気化学セルが稼動温度になるときの加熱部の抵抗値に相当する抵抗値を有する抵抗を酸素検出器内に設けたが、電力供給装置内に設けても同様な補償ができることはいうまでもない。
【0014】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、いずれも酸素検出器と電力供給装置との間のリード線の電圧降下分を補償することになるため、酸素検出器と電力供給装置との間のリード線長が種々変化した場合でも、その都度ヒータ設定電圧を再調整することなく、リード線長に対応して正しい設定電圧が自動的に設定できるため、リード線によるヒータ電圧の再調整が不要となり、現地での作業を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1発明である電気化学セルの電力供給方法の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の第2発明である電気化学セルの電力供給方法の一例を説明するための図である。
【図3】従来の電気化学セルの電力供給方法の一例を説明するための図である。
【図4】本発明例および従来例におけるヒータ印加電圧の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 整流器
2 電力供給装置
3 酸素検出器
4 加熱体
5ー1〜5ー4 端子
6ー1〜6ー4 端子
7ー1〜7ー4 リード線
8 差動アンプ
9ー1、9ー4 検知用補助線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 固体電気化学セルと加熱体とを有する酸素検出器に、別体の電力供給装置からリード線を介して一定電圧を供給する方法であって、前記酸素検出器の接続端子部または電力供給装置内に、前記固体電気化学セルが稼働温度になるときの前記加熱部の抵抗値に相当する抵抗値を有する抵抗を設け、前記電力供給装置内において電力供給装置と酸素検出器との間を接続するリード線による電圧降下分を求め、その補償をすることを特徴とする固体電気化学セルの電力供給方法。
【請求項2】 固体電気化学セルと加熱体とを有する酸素検出器に、別体の電力供給装置からリード線を介して一定電圧を供給する方法であって、前記酸素検出器の加熱部の2つの接続端子に、前記加熱部に供給する電圧を検知するための各別の検知用補助線を接続して、各検知用補助線にリード線を接続して前記電力供給装置に導き、電力供給装置においてこれら検知用補助線間の電圧が一定になるよう制御することを特徴とする固体電気化学セルの電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3045848号(P3045848)
【登録日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【発行日】平成12年5月29日(2000.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−309301
【出願日】平成3年11月25日(1991.11.25)
【公開番号】特開平5−142193
【公開日】平成5年6月8日(1993.6.8)
【審査請求日】平成9年7月10日(1997.7.10)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)