説明

固体電解コンデンサ、電気回路、及び固体電解コンデンサの実装構造

固体電解コンデンサ(A1)は、金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体(10)と、多孔質焼結体(10)内に一部が進入した陽極ワイヤ(11A,11B)と、陽極ワイヤ(11A,11B)のうち多孔質焼結体(10)から突出する部分により形成された陽極端子と、多孔質焼結体(10)の表面に形成された陰極(30)とを備える。上記陽極端子は、第1及び第2の陽極端子(11a,11b)からなり、多孔質焼結体(10)を第1の陽極端子(11a)から第2の陽極端子(11b)に向けて回路電流が流れる構成とされている。このことにより、広い周波数帯域においてノイズ除去特性を向上させ、高い応答性で大容量の電力供給を行なうことが可能となる。また、固体電解コンデンサ(A1)が用いられた電気回路において、基板上のスペース効率の向上とコスト低減とを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子又は導電性セラミック粒子からなる弁作用を有する多孔質焼結体を用いた固体電解コンデンサ及び電気回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CPUなどのデバイスは、高クロック化がなされている。高クロック化されたCPUからは、周波数の高いノイズが発生しやすい。
【0003】
CPUなどのデバイスとこのデバイスに駆動電力を供給する電源とを接続する電源ラインには、一般にデバイスで発生した高周波ノイズをグランド側(接地ライン側)にバイパスして電源への進入を阻止するために比較的大容量のコンデンサが使用されている。
【0004】
また、直流電源においても出力側に比較的大容量のコンデンサが並列に接続され、このコンデンサへの電荷の充放電を繰り返すことにより出力電力の安定化を図ることが行われている。
【0005】
そして、これらの用途のコンデンサとして、従来、固体電解コンデンサが知られている。
【0006】
下記特許文献1には、従来の固体電解コンデンサの構造の一例が示されている。図26は、同公報に示される固体電解コンデンサの構造を示す図である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−163137号公報

図示されたコンデンサBは、多孔質焼結体90、陽極90a、陰極90b、端子92,93及び封止樹脂94を備えた、樹脂パッケージ型の固体電解コンデンサとして構成されている。多孔質焼結体90は、金属粒子又は導電性セラミック粒子を成形及び焼結してなる。コンデンサBは、例えば図27に示すように、電源100とデバイス101との間に並列に接続され、デバイス101から発生するノイズを負極側のライン(図31で(−)のライン)にバイパスすることにより当該ノイズが電源100側に進入するのを阻止し、このノイズが電源100に影響を与えることを防止するために用いられる。
【0008】
コンデンサBは、多孔質焼結体90の大型化により大容量化を図ることが比較的容易である。周知のように、コンデンサの容量が大きいほど低インピーダンスとなるから、大容量化した理想的なコンデンサは低周波帯域からノイズ除去特性に優れたコンデンサとなる。
【0009】
しかしながら、図26に示すコンデンサBは、陽極90aと端子93間及び陰極90bと端子92間の線路にそれぞれ等価直列抵抗Rxと等価直列インダクタンスLxを有し、これらの等価直列抵抗Rx及び等価直列インダクタンスLxと等価容量Cとによって決定される固有の自己共振周波数を有している。
【0010】
このため、コンデンサBは、自己共振周波数を中心に所定の周波数の範囲では比較的良好な低インピーダンスとなり、十分なノイズ除去特性を得られるが、その範囲外では十分なノイズ除去特性が得られないという問題がある。
【0011】
また、コンデンサBを直流電源の安定化に用いた場合は、コンデンサBの等価容量Cに蓄積された電荷がデバイスに出力される際の過渡応答特性が問題となる。すなわち、過渡応答特性は、等価直列抵抗Rx及び等価直列インダクタンスLxによって決定される時定数が小さいほど応答特性が優れるが、図26に示す構造では、陽極90aと端子93間及び陰極90bと端子92間の線路長が比較的長く、等価直列抵抗Rx及び等価直列インダクタンスLxが比較的大きく、時定数を十分に小さくすることができないため、十分な過渡応答特性が得られない、すなわち、高速応答性に一定の限界があるという問題がある。
【0012】
従来のコンデンサの他の使用例を、図28に示す。本図には、静電容量や自己共振周波数の異なる複数のコンデンサを並列に接続する構成が示されている。この構成によれば、ノイズ除去特性が高い周波数帯域をある程度広くすることと、応答性を改善することとが可能となる。しかしながら、自己共振周波数などの各コンデンサに固有の特性を調節することは困難である。このため、ノイズ除去特性及び高速応答性の改善効果をさらに高めることができない場合があった。また、上記構成によれば、複数のコンデンサを用いるために、基板上のスペース効率やコストの面においても不利である。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものである。そこで本発明は、広い周波数帯域において良好なノイズ除去特性を有し、かつ、高い応答性で大容量の電力供給を行なうことが可能な固体電解コンデンサを提供することをその課題としている。
【0014】
本発明の第1の側面によって提供される固体電解コンデンサは、金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、上記陽極のうち上記多孔質焼結体から突出する部分により形成された第1及び第2の陽極端子と、上記多孔質焼結体の表面に形成された陰極と、を備えており、上記多孔質焼結体を上記第1の陽極端子から上記第2の陽極端子に向けて回路電流が流れる構成とされていることを特徴としている。ここで、本発明でいう多孔質焼結体とは、その内部及び外表面に誘電体層及び固体電解質層が形成されているものをいう。
【0015】
好ましくは、上記陽極は、複数の陽極ワイヤからなる。
【0016】
好ましくは、上記陽極は、両端部が上記多孔質焼結体から突出するように設けられた陽極ワイヤからなり、上記第1及び第2の陽極端子は、上記両端部により形成されている。
【0017】
好ましくは、上記多孔質焼結体は、ニオブ又は亜酸化ニオブからなる。
【0018】
好ましくは、上記多孔質焼結体は、偏平な板状である。
【0019】
上記多孔質焼結体は、厚み方向に起立する一側面を有しており、上記第1及び第2の陽極端子は、上記一側面から突出している。
【0020】
好ましくは、上記多孔質焼結体は、厚み方向に起立する2以上の側面を有しており、上記第1及び第2の陽極端子は、互いに異なる上記側面から突出している。
【0021】
好ましくは、上記陽極は、偏平な断面形状を有する。
【0022】
好ましくは、上記多孔質焼結体は、円柱形状又は角柱形状である。
【0023】
好ましくは、上記第1の陽極端子は、上記第2の陽極端子よりも等価直列インダクタンスが大きい。
【0024】
好ましくは、上記陰極に導通する第1及び第2の陰極端子を備えており、上記陰極を上記第1の陰極端子から上記第2の陰極端子に向けて回路電流が流れる構成とされている。
【0025】
好ましくは、上記第1の陰極端子は、上記第2の陰極端子よりも等価直列インダクタンスが大きい。
【0026】
好ましくは、上記陰極は、上記多孔質焼結体を挟む一対の金属部材を含む。
【0027】
好ましくは、上記一対の金属部材の少なくとも一方は、上記多孔質焼結体を収容する金属ケースである。
【0028】
好ましくは、上記一対の金属部材と上記多孔質焼結体との間には、導電性材料が介在している。
【0029】
本発明の第2の側面によって提供される固体電解コンデンサは、金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、上記多孔質焼結体の表面に形成された陰極と、を備える固体電解コンデンサであって、上記陰極に導通する第1及び第2の陰極端子を備えており、上記陰極を上記第1の陰極端子から上記第2の陰極端子に向けて回路電流が流れる構成とされていることを特徴としている。
【0030】
本発明の第3の側面によって提供される電気回路は、金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、上記陽極により形成された第1及び第2の陽極端子陽極と、陰極とを備えた固体電解コンデンサが用いられており、回路電流が上記第1の陽極端子から上記第2の陽極端子へと流れる構成とされていることを特徴としている。
【0031】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に第1実施形態に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図2】第1実施形態の固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図3】第1実施形態の固体電解コンデンサを用いた電気回路の一例を示す図である。
【図4】図3に示した電気回路の等価回路図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る固体電解コンデンサを用いた電気回路の一例を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図10】本発明のに係る固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図11】第6実施形態の固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図13】本発明の第8実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図14】本発明の第9実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図15】本発明の第10実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図16】本発明の第11実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図17】本発明の第12実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図18】本発明の第13実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図19】第13実施形態に係る固体電解コンデンサを用いた電気回路の一例を示す図である。
【図20】本発明の第14実施形態に係る固体電解コンデンサを示す要部斜視図である。
【図21】第14実施形態に係る固体電解コンデンサを用いた電気回路の一例を示す図である。
【図22】本発明の第15実施形態に係る固体電解コンデンサを示す上面側斜視図である。
【図23】第15実施形態に係る固体電解コンデンサの他の例を示す底面側斜視図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV線に沿う断面図である。
【図25】図23のXXV−XXV線に沿う断面図である。
【図26】従来の固体電解コンデンサの一例を示す断面図である。
【図27】従来の固体電解コンデンサを用いた電気回路の一例を示す図である。
【図28】従来のコンデンサを用いたノイズ除去の手法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0034】
まず、図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る固体電解コンデンサを示す。図1は固体電解コンデンサの断面図を示し、図2は要部斜視図である。
【0035】
図1に示すように、コンデンサA1は、多孔質焼結体10、2つの陽極ワイヤ11A,11B、陰極30、リード部材21a,21b,31、及び封止樹脂50を具備している。なお、図2においては、封止樹脂50は省略されている。
【0036】
図2に示すように、多孔質焼結体10は、矩形の板状をなしている。多孔質焼結体10は、例えばニオブ又は亜酸化ニオブ(NbO:導電性セラミック材料)の粉末を加圧成形し、これを焼結することにより形成されている。これにより、多孔質焼結体10は、等価直列抵抗が小さくなっている。なお、本発明でいう多孔質焼結体とは、その内部及び外表面に誘電体層及び固体電解質層(いずれも図示略)が形成されているものをいう。多孔質焼結体10の材質としては、ニオブ又は亜酸化ニオブに代えてたとえばタンタルなどを用いても良い。ニオブはタンタルと比べて難燃性に優れている。
【0037】
2つの陽極ワイヤ11A,11Bは、例えばニオブ製である。図1に示すように、陽極ワイヤ11A,11Bそれぞれの一部分は、多孔質焼結体10の相対向する一方の側面10aと他方の側面10bから内部に進入している。従って、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間は多孔質焼結体10を介して互いに電気的に導通している。すなわち、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間に電位差を与えると、多孔質焼結体10を介してこれらの間に電流が流れるようになっている。
【0038】
陽極ワイヤ11A,11Bのうち多孔質焼結体10から突出する部分は、陽極陽極リード部材21a,21bに接続するための第1及び第2の陽極端子11a,11bを構成している。ここで、2つの陽極ワイヤ11A,11Bは、本発明でいう陽極を構成している。
【0039】
陽極リード部材21a,21bは断面コ字型をなしている。陽極リード部材21aの段差の形成された一方の端部22a(以下、接続部22aという。)は陽極ワイヤ11Aの第1の陽極端子11aに電気的及び機械的に接続されている。同様に陽極リード部材21bの段差の形成された一方の端部22b(以下、接続部22bという。)は陽極ワイヤ11Bの第2の陽極端子11bに電気的及び機械的に接続されている。一方、陽極リード部材21aの他方の端部23aはコンデンサA1を基板上に実装する際の信号ライン用の端子(以下、第1の陽極実装端子23aという。)を構成し、陽極リード部材21bの他方の端部23bはコンデンサA1を基板面上に実装する際の信号ライン用の端子(以下、第2の陽極実装端子23bという。)を構成している。
【0040】
陰極30は、多孔質焼結体10の上下面に導電性樹脂40によって接着された一対の金属プレートで構成されている。金属プレートの材質としては、Cu合金、Ni合金などが用いられる。一対の金属プレート30(以下、陰極プレート30という。)は、図2に示すように、多孔質焼結体10の側面10c,10dでそれぞれ2個の導電部材32によって短絡されている。
【0041】
多孔質焼結体10の下面に接着された金属プレートには、断面コ字型の陰極リード部材31の一方の端部34(図2では上側の端部)が電気的に接続されている。陰極リード部材31の他方の端部33はコンデンサA1を基板面上に実装する際の接地ライン用の端子(以下、陰極実装端子33という。)を構成している。
【0042】
多孔質焼結体10の回りは、図1に示すように、第1,第2の陽極実装端子23a,23b及び陰極実装端子33を露出させて封止樹脂50により封止されている。陰極プレート30が取り付けられた多孔質焼結体10及び陽極ワイヤ11a,11bの陽極リード部材21a,21bとの接続部は封止部材50により電気的及び機械的に保護されている。また、封止部材50によりコンデンサA1における第1,第2の陽極実装端子23a,23b及び陰極実装端子33の位置が固定されている。
【0043】
次に、コンデンサA1の作用について、図3に示す電気回路(電源へのノイズ侵入を阻止する回路)に用いられた場合を一例として説明する。
【0044】
図3に示される電気回路は、デバイス70と電源装置71とを接続する信号線上にコンデンサA1を挿入したものである。同図の電気回路においては、コンデンサA1は、デバイス70から発生する不要なノイズが電源装置71側に漏れることを抑制するために用いられている。
【0045】
デバイス70としては、たとえばCPUやICなどがある。配線81は、電源装置71とデバイス70とを接続するための正極側の配線である。配線82は、デバイス70と電源装置71とを接続するための負極側の配線である。第1の陽極実装端子23aは電源装置71側の配線81に接続され、第2の陽極実装端子23bはデバイス側の配線81に接続され、陰極実装端子33は、配線82に接続されている。これにより、コンデンサA1は、デバイス70と電源装置71との間に接続されている。
【0046】
コンデンサA1は、図1,図2に示した構造により、図3の一点鎖線内に示す等価回路を有している。抵抗R1とインダクタンスL1は、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間に電流が流れる場合の多孔質焼結体10の有する等価的な抵抗R1(以下、等価直列抵抗R1という。)と等価的なインダクタンスL1(以下、等価直列インダクタンスL1という。)である。陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bは、上述したように、それぞれ板状の多孔質焼結体10の一方の側面10aと他方の側面10bとに取り付けられているから、等価直列抵抗R1と等価直列インダクタンスL1は、多孔質焼結体10内を上下面に沿う方向に電流が流れる場合の等価的な抵抗とインダクタンスである。
【0047】
容量C1と抵抗R2とインダクタンスL2は、陽極ワイヤ11A,11Bと陰極プレート33との間に電流が流れる場合の多孔質焼結体10の有する等価的な容量C1(以下、等価容量C1という。)と抵抗R2(以下、等価抵抗R2という。)と等価的なインダクタンスL2(以下、等価インダクタンスL2という。)である。陽極プレート33は、上述したように、板状の多孔質焼結体10の上下面に設けられ、陽極ワイヤ11A,11Bは2枚の陽極プレート33(電気的には短絡されている)の間の空間に配置されているから、等価容量C1と等価抵抗R2と等価インダクタンスL2は、多孔質焼結体10内を上下面に垂直な方向に電流が流れる場合の等価的な容量と抵抗とインダクタンスである。
【0048】
コンデンサA1は、図2に示すように、立体回路であり、陽極ワイヤ11A及び陽極ワイヤ11Bと陽極プレート33の間に電圧が印加されると、多孔質焼結体10の内部全体に電流が流れる。多孔質焼結体10の結晶構造に基づき、図3に示すコンデンサA1の交流信号に対する電気的な回路をより具体的な等価的な回路に置き換えると、図4のようになる。
【0049】
図4に示すように、コンデンサA1は、インダクタンスL1aと抵抗R1aの直列接続からなる直列インピーダンスと、容量C1aと抵抗R2aの直列接続からなる並列アドミッタンスとが多数個、梯子状に接続された回路として表される。なお、梯子型回路の両端と第1,第2の陽極実装端子23a,23bとの間のインダクタンスは、陽極リード部材21a,21bの有するインダクタンス成分である。また、梯子型回路と陽極実装端子33との間のインダクタンスL2は、陰極リード部材31の有するインダクタンス成分である。
【0050】
本実施形態によれば、以下に述べる改善が図られる。
【0051】
第1に、コンデンサA1内部の等価直列インダクタンスL1によって高周波帯域のノイズ除去特性が改善される。
【0052】
より具体的には、デバイス70で発生した高周波ノイズが配線81を通して電源装置71側に進行した場合、コンデンサA1の等価直列インダクタンスL1が高周波ノイズに対して抵抗として作用し、高周波ノイズの電源装置71内への入力が阻止される。
【0053】
図30に示した従来のコンデンサBの構造では、図31に示したように、直列等価インダクタンスL1に相当するインダクタンスが形成されないので、上記効果を奏することはない。
【0054】
直列等価インダクタンスL1は、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間の多孔質焼結体10の距離を長くすると、図4に示す梯子型回路の段数が増加してその大きさは大きくなり、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間の多孔質焼結体10の距離を短くすると、図4に示す梯子型回路の段数が減少してその大きさは小さくなる。
【0055】
従って、陽極ワイヤ11Aと陽極ワイヤ11Bとの間の多孔質焼結体10の距離を適切に設定することにより、所望の高周波帯域のノイズの電源装置71内への入力を好適に阻止することができる。
【0056】
第2に、コンデンサA1の等価容量C1を増大させ、広い周波数帯域でノイズ除去特性が改善される。
【0057】
より具体的には、デバイス70で発生した高周波ノイズが配線81を通してコンデンサA1内に進入すると、この高周波ノイズは、図3に示す等価容量C1によって配線82(負極側)にバイパスされ、電源装置71側への進入が阻止される。
【0058】
等価容量C1が大きいほど、配線81から配線82に交流信号をバイパスするインピーダンス値が小さくなるから、配線81を通してコンデンサA1内に進入したノイズは、広い周波数帯域に渡って等価容量C1により配線82(負極側)にバイパスされ、電源装置71側への進入が阻止される。
【0059】
図3に示す等価回路における等価容量C1は、図4に示す梯子型回路における並列アドミッタンスの容量C1aを合成したものであり、並列アドミッタンスの数が多いほど、等価容量C1は大きくなる。梯子型回路の並列アドミッタンスは、多孔質焼結体10の平面視の面積が増大するのに応じて増大し、かつ、厚みが薄くなるのに応じて増大するから、図30に示す従来のコンデンサBの構造よりも容易に等価容量C1を増大させることができる。
【0060】
従って、本実施形態に係るコンデンサA1によれば、従来のコンデンサBに比して容易に等価容量C1を増大させ、広い周波数帯域でノイズ除去特性を改善することができる。
【0061】
第3に、多孔質焼結体10が偏平な板状であることにより、ノイズ除去特性が更に改善される。
【0062】
より具体的には、多孔質焼結体10の厚みが薄いため、多孔質焼結体10内をその厚み方向に流れる電流の導通経路の長さが短くなる。これにより、容量C1aは増大する一方、等価抵抗R2aは小さくなるから、等価容量C1は大きく、等価抵抗R2は小さくすることができる。従って、配線81によって進入した交流電流であるノイズは配線82側(負極側)にバイパスし易くなる。従って、広い周波数帯域でノイズを適切に除去することが可能である。
【0063】
第4に、コンデンサA1は、陰極プレート30の構成により、機械的強度の高強度化が図られる。
【0064】
より具体的には、図2に示されるように、一対の金属プレートからなる陰極プレート30は、板状の孔質焼結体10を上下から挟むように設けられている。また、陰極プレート30は、多孔質焼結体10の上下面に対して、導電性樹脂40により比較的強固に接合されている。従って、コンデンサA1は、電気回路として主要な機能を果す多孔質結晶体10の上下面が金属プレート30により機械的に高い強度で保護れる。これにより、コンデンサA1が電気的に逆接続されて過度な発熱を生じた場合においても、コンデンサA1が大きく変形することを防止することが可能であり、封止樹脂50に亀裂を生じることも抑制することができる。
【0065】
多孔質焼結体10内に誘電体層を形成するための処理においては、多孔質焼結体10だけでなく、陽極ワイヤ11A,11Bのうち多孔質焼結体10内に進入している部分も、たとえばリン酸水溶液に浸漬する。陽極ワイヤ11A,11Bは、ニオブ製であることにより、その表面にも上記誘電体層が形成される。この後に、上記誘電体層を覆うように、固体電解質層が形成される。従って、陽極ワイヤ1A,11Bと上記固体電解質層とが直接導通することを適切に回避することができる。
【0066】
上記したように、コンデンサA1は、従来技術によるコンデンサと比較して、広い周波数帯域におけるノイズ除去特性が優れている。このため、図3に示された電気回路においては、従来よりも少ないコンデンサにより、ノイズ除去を改善することが可能である。従って、基板上のスペース効率の向上とコスト低減とを図ることができる。
【0067】
図5〜図25は、本発明の他の実施形態に係る種々な固体電解コンデンサを示している。これらの図面においては、上記第1実施形態と同一又は類似の要素には、当該第1実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0068】
図5〜図9に示す4つの実施形態と上記実施形態との相違点は、第1及び第2の陽極端子11a,11bの本数及び多孔質焼結体10に対する配置である。なお、図5〜9においては、陰極プレート、封止樹脂及び面実装用の端子を示していない。
【0069】
図5に示された第2実施形態においては、4本の陽極ワイヤ11A,11Bを備えていることにより、一対ずつの第1及び第2の陽極端子11a,11bを備えている。一対の第1の陽極端子11aは、ともに多孔質焼結体10の一方の側面10aから突出するように設けられている。一対の陽極端子11bは、ともに反対の側面10bから突出するように設けられている。
【0070】
本実施形態によれば、図5の矢印で示すように、回路電流は、2本の第1の陽極端子11aに分散して多孔質焼結体10内に流れ込み、当該多孔質焼結体10を介して、2本の第2の陽極端子11bに分散して外部に流出される。このため、第1及び第2の陽極端子11a,11bの1本当たりの電流量を少なくすることができる。従って、第1及び第2の陽極端子11a,11bにおける発熱を抑制することが可能である。
【0071】
また、図6は、第2実施形態のコンデンサA1の等価回路である。この実施形態では、第1及び第2の陽極端子11a,11bのそれぞれが2本ずつ設けられているために、コンデンサA1の等価容量C1を挟んだ両側の等価直列抵抗R1及び等価直列インダクタンスL1は、等価直列抵抗R1及び等価直列インダクタンスL1の直列接続をそれぞれ2個並列に接続したものとなる。
【0072】
このため、図2に示した実施形態に比較して、コンデンサA1の等価容量C1を挟んだ両側の等価直列抵抗R1及び等価直列インダクタンスL1は小さくなる。
【0073】
第2実施形態のコンデンサA1をデバイス70への電源供給の安定化を目的として用いた場合は、等価容量C1と第1の陽極実装端子23a又は第2の陽極実装端子23bとの間の等価直列インダクタンスL1が小さくなるので、この等価直列インダクタンスL1に基づく時定数が小さくなり、等価容量C1から蓄積電荷がデバイス70に供給される際の過渡応答特性の高速化を図ることができる。従って、高い周波数に対応して、高い応答性で大容量の電力供給を行なうことができる。
【0074】
図7に示された第3実施形態においては、第1及び第2の陽極端子11a,11bが、ともに一方の側面10aから突出するように設けられている。
【0075】
第3実施形態によれば、第1及び第2の陽極実装端子(図示略)が、一方の側面10a側に配置される。従って、コンデンサA1を基板に搭載する場合、このコンデンサA1に対する配線81をコンデンサA2の一方の側面10a側に形成することができる。従って、配線81がコンデンサA1の周囲に実装される部品と不当に干渉することを避けて、当該配線81を基板上に効率よく配置することができる。
【0076】
図8に示す第4実施形態においては、1つの第1の陽極端子11aと、一対の第2の陽極端子11bとが、一方の側面10aから突出するように設けられている。これにより、等価容量C1と第2の陽極端子11bとの間の等価直列インダクタンス(以下、出力側の等価直列インダクタンスという。)を、等価容量C1と第1の陽極端子11aとの間の等価直列インダクタンス(以下、入力側の等価直列インダクタンスという。)よりも小さくすることができる。
【0077】
第4実施形態によれば、コンデンサA1を電源装置への高周波ノイズ除去用に用いる場合は、高周波ノイズが入力される側を入力側の等価直列インダクタンスの高い第1の陽極端子11aとすることにより、高周波数帯域におけるノイズを適切に除去することができる。一方、コンデンサA1を電力供給の安定化用に用いる場合は、等価容量C1から蓄積電荷が出力される側を出力側の等価直列インダクタンスの低い第2の陽極端子11bとすることにより、電流を急激な立ち上がりで放出することが可能である。従って、高周波数帯域におけるノイズ除去特性の向上と、電力供給の高速応答化とを図るのに好適である。
【0078】
図9に示された第5実施形態においては、1本の第1の陽極端子11aと、3本の第2の陽極端子11bとを備えた構成とされている。第1の陽極端子11aは、1つの側面10aから突出するように設けられている。3本の第2の陽極端子11bは、他の3つの側面10b,10c,10dからそれぞれ突出するように設けられている。
【0079】
第5実施形態によれば、第1の陽極端子11aに電源装置を接続し、かつ3本の第2の陽極端子11bのそれぞれを、3つのデバイスに接続することにより、これら3つのデバイスから発生するノイズが電源装置に進入するのを阻止することができる。3本の第2の陽極端子11bは、それぞれがほぼ直交し、かつ放射状に延びている。このため、3本の第2の陽極端子11bのそれぞれに接続されるデバイス70を互いに干渉すること無く配置可能である。
【0080】
次に、本発明の第6実施形態に係る固体電解コンデンサを、図10及び図11を参照しつつ説明する。
【0081】
第6実施形態は、第1実施形態(図1〜3)における2本の陽極ワイヤ11A,11Bに代えて1本の陽極ワイヤ12を設けたものである。陽極ワイヤ12は多孔質焼結体10を貫通するように設けられ、その両端部は、多孔質焼結体10から突出している。これらの両端部が、第1及び第2の陽極端子12a,12bとなっている。
【0082】
図11に示すように、陽極ワイヤ12の第1の陽極端子12aは陽極リード部材21aの接続部22aに電気的及び機械的に接続され、陽極ワイヤ12の第2の陽極端子12bは陽極リード部材21bの接続部22bに電気的及び機械的に接続されている。なお、図11には、図2と同様に、封止樹脂50は示されていない。
【0083】
第6実施形態によれば、多孔質焼結体10は、内部に多数の微小な孔を有するため、比較的電気抵抗が大きいが、陽極ワイヤ12は、中実な構造であるため、多孔質焼結体10よりも電気抵抗を小さくすることができる。
【0084】
第1実施形態(図1〜3)では、多孔質焼結体10の等価直列抵抗R1が比較的高いので、等価直列抵抗R1での電気的損失が大きいが、第6実施形態によれば、1本の陽極ワイヤ12により第1及び第2の陽極端子12a,12b間の等価直列抵抗R1が小さくなり、コンデンサA1に入力される電流の大部分は陽極ワイヤ12を通るので、コンデンサA1内での電気的損失を小さくすることができる。また、多孔質焼結体10内を流れる電流が小さくなるので、多孔質焼結体10内での発熱を抑制することも可能である。
【0085】
図12及び図13は、本発明の第7実施形態及び第8実施形態に係る固体電解コンデンサを示している。これらの実施形態と第6実施形態(図10及び図11)とは、第1及び第2の陽極端子12a,12bの本数及びそれらの多孔質焼結体10に対する配置が異なるのみである。
【0086】
図12に示された第7実施形態は、第2実施形態(図5)における2組の陽極ワイヤ11A,11Bに代えてそれぞれ1本の陽極ワイヤ12を設けたものである。各陽極ワイヤ12は多孔質焼結体10を貫通するように設けられている。
【0087】
第7実施形態によれば、図6の等価回路において、各陽極ワイヤ12の等価直流抵抗R1を小さくすることができるので、第1の陽極実装端子23aと第2の陽極実装端子23bの間の等価直流抵抗(2本の陽極ワイヤ12の等価直流抵抗R1を合成した等価直流抵抗)を小さくすることができ、コンデンサA1での電気的損失をさらに抑制することができる。また、各陽極ワイヤ12の等価直流インダクタンスL1を小さくすることができるので、第1の陽極実装端子23aと第2の陽極実装端子23bの間の等価直流インダクタンス(2本の陽極ワイヤ12の等価直流インダクタンスL1を合成した等価直流インダクタンス)を小さくすることができ、電力供給の更なる高速応答化を図ることができる。
【0088】
図13に示された第8実施形態は、第3実施形態(図7)における陽極ワイヤ11A,11Bに代えて1本のU字状に屈曲した陽極ワイヤ12を設けたものである。陽極ワイヤ12は多孔質焼結体10を貫通するように設けられている。
【0089】
第8実施形態によれば、第3実施形態(図7)に比して、1本の陽極ワイヤ12により第1及び第2の陽極端子12a,12b間の等価直流抵抗R1が小さくなり、コンデンサA1に入力される電流の大部分は陽極ワイヤ12を通るので、コンデンサA1内での電気的損失を小さくすることができる。また、多孔質焼結体10内を流れる電流が小さくなるので、多孔質焼結体10内での発熱を抑制することも可能である。
【0090】
図14に示すように、陽極ワイヤ13A,13Bは、図中の高さを多孔質焼結体10の厚さよりも小さくする必要がある。第9実施形態においては、陽極ワイヤ13A,13Bは、その高さに対して幅が広い。このため、陽極ワイヤ13A,13Bは、その断面積を大きくするのに有利である。従って、陽極ワイヤ13A,13Bの電気抵抗を小さくすることができ、電気的損失を抑制することができる。
【0091】
図15は、本発明の第10実施形態に係る固体電解コンデンサを示している。この実施形態に係るコンデンサは、偏平な板状の多孔質焼結体10、及び偏平な断面を有する陽極ワイヤ14を備えている。また、陽極ワイヤ14が多孔質焼結体10を貫通している。本実施形態によれば、1本の陽極ワイヤ14が多孔質焼結体10を貫通しているので、第9実施形態(図14)に対して、更になる低抵抗化が可能になる。
【0092】
図16に示された第11実施形態においては、多孔質焼結体15は、円柱形状であり、長手方向に離間した2つの端面15a,15bを有している。第1の陽極端子11aは、一方の端面15aに一部を嵌入させて設けられ、第2の陽極端子11bは、他方の端面15bに一部を嵌入させて設けられている。
【0093】
図17に示す第12実施形態においては、1本の陽極ワイヤ12が円柱形状の多孔質焼結体15を貫通している。陽極ワイヤ12を長くて、低抵抗化を図るのに好適である。なお、多孔質焼結体15の形状としては、円柱形状に限らず、角柱形状など、一様な断面形状を有して一方向に延びる形状であればよい。
【0094】
次に、本発明の第13実施形態に係る固体電解コンデンサについて、図18及び図19を参照しつつ説明する。
【0095】
図18に示すように、第13実施形態のコンデンサA3は、2つの陰極リード部材31a,31bを備えている。陰極リード部材31a,31bは、陽極リード部材21と類似の形状を有し、一方の端部(図18では上側の端部)が多孔質焼結体10の下面に接着された陰極プレート30に電気的に接続されている。陰極リード部材31aの他方の端部33aはコンデンサA3を基板上に実装する際の接地ライン用の端子(以下、第1の陰極実装端子33aという。)を構成する。陰極リード部材31bの他方の端部33bはコンデンサA3を基板上に実装する際の接地ライン用の端子(以下、第2の陰極実装端子33bという。)を構成している。
【0096】
図19に示される電気回路は、デバイス70と電源装置71とを接続する信号線上にコンデンサA3を挿入したものである。同図の電気回路においては、コンデンサA3は、デバイス70から発生する不要なノイズが電源装置71側に漏れることを抑制するために用いられている。
【0097】
第1及び第2の陰極実装端子33a,33bは、電源装置71からデバイス70への負極側の配線82中に接続されている。これにより、陰極プレート30は、配線82において直列となるように接続されている。等価直列インダクタンスL2は、図18に示す陰極プレート30及び陰極リード部材31a,31bのインダクタンス成分である。
【0098】
第13実施形態は、実質的に、第1実施形態のコンデンサA1の図3に示す等価回路における陽極と負極を逆にした関係である。従って、図1〜図3に示す第1実施形態と同様に、回路電流に含まれる高周波数帯域のノイズが適切に遮断され、高周波数帯域のノイズ除去特性の向上を図ることができる。
【0099】
図20及び図21は、本発明の第14実施形態に係る固体電解コンデンサを示している。図20に示されたコンデンサA4は、第1及び第2の陽極実装端子23a,23bと、第1及び第2の陰極実装端子33a,33bとを備えている。
【0100】
第14実施形態は、図18に示す第13実施形態おいて、多孔質焼結体10の側面10bに陽極ワイヤ11Bを追加し、この陽極ワイヤ11Bの第2の陽極端子11bに陽極リード部材21bを接続したものである。
【0101】
図21は、このコンデンサA4が用いられた電気回路を示している。図示された電気回路においては、正極側及び負極側の配線81,82の全ての回路電流が、等価直列インダクタンスL1,L2を流れることとなる。従って、等価直列インダクタンスL1,L2の双方により高周波数帯域のノイズが適切に遮断可能となり、高周波数帯域のノイズ除去特性をさらに向上させることができる。
【0102】
図22〜図25は、本発明の第15実施形態に係る固体電解コンデンサを示している。この実施形態に係るコンデンサA5は、上記第1〜14実施形態のコンデンサA1〜A4とは異なり、陰極30を構成する一方の金属プレートが、金属ケース30Aとされた構成となっている。その他の要素は、第14実施形態に係るコンデンサA4と同様である。
【0103】
図22及び図23によく表れているように、コンデンサA5は、金属ケース30Aを備えている。金属ケース30Aの下方からは、第1及び第2の陽極実装端子23a,23bと、第1及び第2の陰極実装端子33a,33bとが延出している。
【0104】
図24及び図25によく表われているように、金属ケース30Aと金属プレート30Bとは、陰極30を構成している。金属ケース30A及び金属プレート30Bは、多孔質焼結体10を挟むように導電性樹脂40により多孔質焼結体10に接合されている。図23に示すように、複数の陰極リード部材32は、金属ケース30Aと金属プレート30Bとを導通させている。図24に示すように、陽極ワイヤ12は、その両端部が多孔質焼結体10から突出するように設けられている。陽極ワイや12の両端部は、第1及び第2の陽極端子12a,12bとなっている。第1及び第2の陽極端子12a,12bは、導体部材21a,21bに電気的に導通している。金属ケース30A内の空間部には、封入樹脂51が充填されており、各部間の絶縁と外気の遮断とが図られている。
【0105】
第15実施形態によれば、金属ケース30Aと金属プレート30BとによりコンデンサA5が電気的にシールドされているので、コンデンサA5の電気的特性が安定する。また金属ケース30Aは、金属プレートよりも高剛性であるために、コンデンサA5全体の高強度化を図るのに好適である。また、図24及び図25に示すように、封入樹脂51が金属ケース30Aにより覆われている。このため、たとえば全体を封止樹脂により覆った構成と比較して、封入樹脂51に亀裂が生じにくい。さらに、金属ケース30Aは、封止樹脂よりも熱伝導性が高い。多孔質焼結体10に発熱が生じた場合に、外気への放熱が促進される。これにより、コンデンサA5の動作安定性が高められる。また、多孔質焼結体10における許容電力損失を大きくすることができる。なお、金属ケース30Aの表面に、樹脂層を形成すれば、外部との絶縁をより確実なものとすることができる。
【0106】
なお、本発明に係る固体電解コンデンサ、電気回路、及び実装構造は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0107】
上記実施形態においては、陰極に接続された導体部材の一部が面実装用の陰極側の端子となっているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、陰極の一部が延出し、その端部が面実装用の陰極側の端子となっている構成とするなど、陰極と面実装用の端子とが一体とされた構成であっても良い。
【0108】
本発明に係る固体電解コンデンサの用途は、CPUに代表される回路を対象としたノイズ除去や、電力供給の安定化のみに限定されず、たとえばDC−DCコンバータの出力平滑化や、バイパス回路のリップル除去などにも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、
上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、
上記陽極のうち上記多孔質焼結体から突出する部分により形成された第1及び第2の陽極端子と、
上記多孔質焼結体の表面に形成された陰極と、
を備えており、
上記多孔質焼結体を上記第1の陽極端子から上記第2の陽極端子に向けて回路電流が流れる構成とされていることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
上記陽極は、複数の陽極ワイヤからなる、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
上記陽極は、両端部が上記多孔質焼結体から突出するように設けられた陽極ワイヤからなり、
上記第1及び第2の陽極端子は、上記両端部により形成されている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
上記多孔質焼結体は、ニオブ粒子又は亜酸化ニオブ粒子からなる、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
上記多孔質焼結体は、偏平な板状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
上記多孔質焼結体は、厚み方向に起立する一側面を有しており、
上記第1及び第2の陽極端子は、上記一側面から突出している、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
上記多孔質焼結体は、厚み方向に起立する2以上の側面を有しており、
上記第1及び第2の陽極端子は、互いに異なる上記側面から突出している、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
上記陽極は、偏平な断面形状を有する、請求項5に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
上記多孔質焼結体は、円柱形状又は角柱形状である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
上記第1の陽極端子は、上記第2の陽極端子よりも等価直列インダクタンスが大きい、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
上記陰極に導通する第1及び第2の陰極端子を備えており、上記陰極を上記第1の陰極端子から上記第2の陰極端子に向けて回路電流が流れる構成とされている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
上記第1の陰極端子は、上記第2の陰極端子よりも等価直列インダクタンスが大きい、請求項11に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項13】
上記陰極は、上記多孔質焼結体を挟む一対の金属部材を含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項14】
上記一対の金属部材の少なくとも一方は、上記多孔質焼結体を収容する金属ケースである、請求項13に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項15】
上記一対の金属部材と上記多孔質焼結体との間には、導電性材料が介在している、請求項13に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項16】
金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、
上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、
上記多孔質焼結体の表面に形成された陰極と、
を備える固体電解コンデンサであって、
上記陰極に導通する第1及び第2の陰極端子を備えており、上記陰極を上記第1の陰極端子から上記第2の陰極端子に向けて回路電流が流れる構成とされていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項17】
金属粒子又は導電性セラミック粒子の多孔質焼結体と、上記多孔質焼結体内に一部が進入した陽極と、上記陽極により形成された第1及び第2の陽極端子陽極と、陰極とを備えた固体電解コンデンサが用いられており、
回路電流が上記第1の陽極端子から上記第2の陽極端子へと流れる構成とされていることを特徴とする、電気回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【国際公開番号】WO2005/015588
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513010(P2005−513010)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011558
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)