説明

固体電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】大容量で、陽極引出部同士の接合強度が大きい固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】
本発明に係る固体電解コンデンサ1は、陽極引出部12aと、陰極層形成部12cと、を有する弁作用金属箔12と、陰極層形成部12cの表面に形成されている酸化皮膜14と、酸化皮膜14の表面に形成されている固体電解質層16と、を有する複数のコンデンサ素子10を備え、陽極引出部12aが互いに対向して積層された状態で接合されており、陽極引出部12aの互いに対向して積層された部分は折り返されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の固体電解コンデンサとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この固体電解コンデンサは、図6のように、複数のコンデンサ素子101と、コンデンサ素子101を被覆する外装樹脂114とからなる。
【0003】
コンデンサ素子101は、陽極引出部104と絶縁層形成部103と陰極層形成部105と、を有する弁作用金属箔102と、酸化皮膜106と、固体電解質層107と、陰極層108と、を備えている。酸化皮膜106は、陰極層形成部105の表面に形成されている。また、固体電解質層107は、酸化皮膜106の表面に形成されている。そして、陰極層108は、カーボン層と銀ペースト層の2層構造であり、固体電解質層107の表面に形成されている。
【0004】
このコンデンサ素子101は、陽極引出部104が互いに積層されて接合されている。そして、積層された陽極引出部104は陽極端子112と電気的に接合されている。一方、陰極層108は、導電性ペースト層123を介して、陰極端子113と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、固体電解コンデンサには一定体積下での大容量化が求められている。この大容量化を達成するためには、弁作用金属箔102の陰極層形成部105を大きくして、陽極引出部104を小さくすることが好ましい。しかしながら、図6の構造で陽極引出部104を小さくすると、陽極引出部104が互いに接合する部分の面積が小さくなり、陽極引出部104同士の接合強度が低下するという問題が生じていた。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであって、大容量で、陽極引出部同士の接合強度が大きい固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極引出部と、陰極層形成部と、を有する弁作用金属箔と、陰極層形成部の表面に形成されている酸化皮膜と、酸化皮膜の表面に形成されている固体電解質層と、を有する複数のコンデンサ素子を備え、陽極引出部が互いに対向して積層された状態で接合されており、陽極引出部の互いに対向して積層された部分は折り返されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る固体電解コンデンサでは、陽極引出部の折り返されている部分は巻回されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る固体電解コンデンサでは、陽極引出部の折り返されている部分は折り畳まれていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、陽極引出部と、陰極層形成部と、を有する弁作用金属箔と、陰極層形成部の表面に形成されている酸化皮膜と、酸化皮膜の表面に形成されている固体電解質層と、を有する複数のコンデンサ素子を準備するコンデンサ素子作製工程と、複数のコンデンサ素子の前記陽極引出部を互いに対向させて積層した後に、陽極引出部を互いに接合する陽極引出部接合工程と、陽極引出部に芯材を接合する芯材接合工程と、芯材を軸にして、陽極引出部を巻回する巻回工程と、を備えることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法にも向けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、陽極引出部同士の接合強度を確保しながら、陽極引出部を小さくまとめることが可能である。そのため、固体電解コンデンサ全体の体積を変えずに、陰極層形成部を大きくすることで、大容量の固体電解コンデンサを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。(第1の実施形態)
【図2】本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法を示す断面図である。(第1の実施形態)
【図3】本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法を示す断面図で、図2の続きを示すものである。(第1の実施形態)
【図4】本発明に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。(第2の実施形態)
【図5】本発明に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。(第3の実施形態)
【図6】従来の固体電解コンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。固体電解コンデンサ1は、複数のコンデンサ素子10と、外装樹脂26と、陽極端子22と、陰極端子24と、を備えている。
【0016】
コンデンサ素子10は、弁作用金属箔12と、酸化皮膜14と、固体電解質層16と、カーボン含有層17と、銀含有層18と、絶縁層20と、を有している。
【0017】
弁作用金属箔12は、陽極引出部12aと、絶縁層形成部12bと、陰極層形成部12cと、を有している。本実施形態では、陽極引出部12aと絶縁層形成部12bと陰極層形成部12cは連続的に一体に形成されている。陽極引出部12aは陽極リード部として用いられ、陽極端子22と電気的に接続されている。また、絶縁層形成部12bは、陽極引出部12aと陰極層形成部12cとを分画する位置に設けられている。
【0018】
弁作用金属箔12は、例えばシート状や平板状の形態である。弁作用金属箔12の幅と厚さは、製造する固体電解コンデンサのサイズや静電容量によって適宜選択される。弁作用金属箔12の材質としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム及びこれらの合金が挙げられる。
【0019】
酸化皮膜14は、弁作用金属箔12の陰極層形成部12cの表面に形成されている。酸化皮膜14は弁作用金属箔12の酸化膜であり、例えば陽極酸化処理等で形成される。
【0020】
絶縁層20は、弁作用金属箔12の絶縁層形成部12bの表面に形成されている。絶縁層20は、陽極引出部12aが固体電解質層16、カーボン含有層17、及び銀含有層18から電気的に絶縁されるように設けられている。
【0021】
絶縁層20の例としては、ポリフェニルスルホン(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、低分子量ポリイミドや、それらの誘導体や前駆体等の絶縁性樹脂が挙げられる。特に低分子量ポリイミド、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂及びそれらの前駆体が好ましい。
【0022】
固体電解質層16は、陰極層形成部12cに形成されている酸化皮膜14の表面に形成されている。固体電解質層16の材質の例としては、例えば、チオフェン化合物、多環状スルフィド化合物、ピロール化合物、フラン化合物、アニリン化合物等を繰り返し単位として含む導電性高分子が挙げられる。
【0023】
カーボン含有層17と銀含有層18は陰極層19を構成しており、固体電解質層16の表面に順次形成されている。
【0024】
複数のコンデンサ素子10の陽極引出部12aは、互いに対向して積層された状態で接合されている。そして、本実施形態では、この互いに対向して積層された部分が折り返されていることを特徴としている。この部分が折り返されることにより、陽極引出部12a同士が接合する面積を小さくすることなく、陽極引出部12aを小さくまとめることができる。そして、その分陰極層形成部12cを大きくすることにより、固体電解コンデンサの全体の体積を変えずに、静電容量を大きくすることが可能である。
【0025】
また、本実施形態では、陽極引出部12aの折り返されている部分は、巻回されている。そのため、陽極引出部12aが占有する体積がさらに小さくなり、静電容量を大きくすることが可能である。
【0026】
また、本実施形態では、陽極引出部12aの折り返されている部分は、芯材28を軸にして巻回されている。そして、陽極引出部12aと芯材28とは接合されている。この場合には、折り返されている部分に隙間が生じにくく、容易に巻回できるという利点を有する。
【0027】
陽極引出部12aは、上述したように折り返された状態で、陽極端子22と電気的に接続されている。一方、複数のコンデンサ素子10の陰極層19は互いに積層されており、銀含有層18は互いに電気的に接続されている。また、銀含有層18は陰極端子24と電気的に接続されている。陽極端子22と陰極端子24には、例えばリードフレームが用いられる。
【0028】
外装樹脂26は、コンデンサ素子10と陽極端子22の一部と陰極端子24の一部を覆うように形成されている。外装樹脂26の材質の例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法を説明する。
【0030】
最初に、図2(A)のように、陽極引出部12aと、絶縁層形成部12bと、陰極層形成部12cと、を有する弁作用金属12と、陰極層形成部12cの表面に形成されている酸化皮膜14と、酸化皮膜14の表面に形成されている固体電解質層16と、固体電解質層16の表面に形成されている陰極層19と、を有する複数のコンデンサ素子10を作製する。
【0031】
まず、弁作用金属箔12を用意する。弁作用金属箔12は、陽極リード部となるべき陽極引出部12aと、表面に酸化皮膜14が形成される陰極層形成部12cと、陽極引出部12aと陰極層形成部12cとを分画する絶縁層形成部12bと、を有する。
【0032】
その後、絶縁層形成部12bの表面に絶縁層20を形成する。絶縁層20の材質が絶縁性樹脂である場合には、絶縁層形成部12bの表面に絶縁性樹脂を塗布し、加熱等によって固化または硬化させて絶縁層20を形成する。
【0033】
次に、陰極層形成部12cの表面に酸化皮膜14を形成する。酸化皮膜14は、例えば、弁作用金属箔12を電解液に浸漬して、陽極酸化処理を行うことにより形成される。
【0034】
その後、酸化皮膜14の表面に固体電解質層16を形成する。固体電解質層16は、例えば、陽極引出部12aを保持して吊り下げた状態で、陰極層形成部12cを導電性高分子の原料溶液に浸漬して形成される。
【0035】
導電性高分子の原料溶液には、任意の適切な溶液が用いられる。例えば、モノマーを含む溶液と、重合酸化剤及び必要に応じて別途用いられるドーパントを含む溶液の2種類が用いられる。この場合、陰極層形成部12cは2種類の溶液に順次浸漬される。この浸漬は必要に応じて繰り返してもよい。また、導電性高分子の原料溶液には、モノマー、重合酸化剤、ドーパントを含む1種類の溶液を用いても良い。
【0036】
その後、固体電解質層16の表面に、カーボン含有層17と銀含有層18を順次積層して陰極層19を形成する。カーボン含有層17と銀含有層18は、例えばカーボンペーストを塗布及び乾燥させた後に、銀ペーストを塗布及び乾燥させて形成される。以上のようにしてコンデンサ素子10を作製する。
【0037】
次に、図2(B)のように、複数のコンデンサ素子10の陽極引出部12aを互いに対向させて積層した後に、陽極引出部12aを互いに接合する。
【0038】
まず、複数のコンデンサ素子10を積層する。このとき、陽極引出部12aを互いに対向させて積層する。また、絶縁層20、陰極層19に対応する部分同士もそれぞれ接するように積層する。このとき、陰極層19は互いに電気的に接続されることになる。
【0039】
その後、陽極引出部12aを互いに接合する。接合方法の例としては、溶接や圧着等が挙げられる。
【0040】
次に、図3(C)のように、陽極引出部12aの端部に芯材28を接合する。芯材28は、陽極引出部12a同士を接合する前に、接合してもよい。
【0041】
次に、図3(D)のように、芯材28を軸にして、陽極引出部12aを巻回する。その後、陽極引出部12aを圧着する。この圧着により、陽極引出部12aの巻回部分が接合される。また、陽極引出部12aの占有する体積が小さくなる。
【0042】
次に、図示していないが、巻回された陽極引出部12aに、陽極端子22を接合する。また、銀含有層18に、陰極端子24を接合する。
【0043】
最後に、図示していないが、複数のコンデンサ素子10と陽極端子22の一部と陰極端子24の一部とを覆うように外装樹脂26を形成する。外装樹脂26は、例えばトランスファーモールドによって形成する。以上のようにして固体電解コンデンサを作製する。
【0044】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。第1の実施形態と共通する部分については記載を省略する。
【0045】
本実施形態では、陽極引出部12aの折り返されている部分は、折り畳まれている。この折り畳まれている部分は、山と谷とを交互に繰り返すように曲げられている。この場合にも、陰極層形成部12cを大きくして、静電容量を大きくすることが可能である。なお、図4では、折り目に相当する部分は湾曲しているが、筋目がついていてもよい。
【0046】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る固体電解コンデンサを示す断面図である。本実施形態においても、陽極引出部12aの折り返されている部分は、折り畳まれている。本実施形態では、折り畳まれている部分は、陽極引出部12aの端が内側になるように折り畳まれている。
【0047】
なお、本実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 固体電解コンデンサ
10 コンデンサ素子
12 弁作用金属箔
12a 陽極引出部
12b 絶縁層形成部
12c 陰極層形成部
14 酸化皮膜
16 固体電解質層
17 カーボン含有層
18 銀含有層
19 陰極層
20 絶縁層
22、24 端子
26 外装樹脂
28 芯材
101 コンデンサ素子
102 弁作用金属箔
103 絶縁層形成部
104 陽極引出部
105 陰極層形成部
106 酸化皮膜
107 固体電解質層
108 陰極層
112 陽極端子
113 陰極端子
114 外装樹脂
123 導電性ペースト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極引出部と、陰極層形成部と、を有する弁作用金属箔と、前記陰極層形成部の表面に形成されている酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成されている固体電解質層と、を有する複数のコンデンサ素子を備え、前記陽極引出部が互いに対向して積層された状態で接合されている固体電解コンデンサであって、
前記陽極引出部の互いに対向して積層された部分は折り返されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極引出部の折り返されている部分は巻回されていることを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陽極引出部の折り返されている部分は折り畳まれていることを特徴とする、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
陽極引出部と、陰極層形成部と、を有する弁作用金属箔と、前記陰極層形成部の表面に形成されている酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成されている固体電解質層と、を有する複数のコンデンサ素子を用意するコンデンサ素子作製工程と、
前記複数のコンデンサ素子の前記陽極引出部を互いに対向させて積層した後に、前記陽極引出部を互いに接合する陽極引出部接合工程と、
前記陽極引出部に芯材を接合する芯材接合工程と、
前記芯材を軸にして、前記陽極引出部を巻回する巻回工程と、
を備えることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256689(P2012−256689A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128402(P2011−128402)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)