説明

固体電解コンデンサ用分散液の製造方法及び固体電解コンデンサ用分散液、この分散液を用いた固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサ

【課題】高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを与えることが可能な導電性高分子の水性分散液を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法は、有機高分子バインダーを含まない水に、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子の微粒子が、全体の1.0〜2.0質量%の量で混合されている混合液を得る調製工程、及び、前記混合液に15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射する分散工程、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを与えることが可能な固体電解コンデンサ用分散液を製造する方法、及びこの方法により得られた分散液に関する。本発明はまた、上記分散液を用いて高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを製造する方法、及びこの方法により得られた固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属箔の表面に誘電体としての酸化皮膜が設けられている陽極と、酸化皮膜と接しており、真の陰極として作用する固体電解質層とを含んでいる。そして、この固体電解質層を形成するために、置換又は非置換のチオフェン、ピロール、アニリン等のπ共役二重結合を有するモノマーから誘導された導電性高分子が広く使用されている。
【0003】
ところで、固体電解質層の形成のための導電性高分子の中には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)のように水不溶性又は水難溶性の導電性高分子が含まれている。このような水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む固体電解質層を形成する方法として、水に上記導電性高分子の粒子を分散させ、得られた分散液を陽極の酸化皮膜に浸透させて乾燥する方法が従来から知られている。この方法は、環境負荷が小さく経済性に優れた水を媒体として使用することができ、また、モノマーの化学重合や電解重合により固体電解質層を形成する方法に比較して、簡便且つ迅速に固体電解質層を得ることができるという利点を有しており、さらに、高い分子量を有する高導電性の導電性高分子を分散液中に含ませることにより、導電率の高い固体電解質層を形成することができる。そのため、水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む水性分散液を使用して、容量出現率CRが高く、すなわち静電容量が高く、その上、等価直列抵抗ESRが低い、すなわち低インピーダンスを示す、固体電解コンデンサの製造方法が検討されており、分散処理を施すことにより粘度を低下させた水性分散液を使用する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2003−100561号公報)は、陽極と陰極とをその間にセパレータを介在させて巻回することによりコンデンサ素子を形成する工程と、このコンデンサ素子に導電性高分子分散水溶液を含浸させて第1の固体電解質層を形成する工程と、この第1の固体電解質層の表面に複素環式モノマーと酸化剤を含有する混合溶液を含浸することにより第2の固体電解質層を形成する工程と、を具備した固体電解コンデンサの製造方法を開示しているが、第1の固体電解質層を形成するための導電性高分子分散水溶液は、導電性高分子の微粒子と、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等の有機高分子バインダーと、界面活性剤とを含む水溶液に分散処理を施すことにより得られている。
【0005】
分散処理としては、周波数40〜60kHz、出力50〜100Wの超音波処理装置を用いた超音波処理の他、ホモジナイザー、ハイブリッドミキサー、又はハイシェアミキサーを用いた処理が例示されている。これらの分散処理により、水溶液中の導電性高分子の微粒子及び有機高分子バインダーの分散性を高めることができ、導電性高分子分散水溶液の粘度を低下させることができる。そして、ハイシェアミキサーを用いた分散処理が、導電性高分子分散水溶液の粘度を短時間で低下させることが示されている。
【0006】
この低粘度の導電性高分子分散水溶液にコンデンサ素子を浸漬して引き上げた後、乾燥処理を行うことにより、陽極の酸化皮膜上に、この酸化皮膜との密着性が良好な、導電性高分子の微粒子と有機高分子バインダーとを含有する第1の固体電解質層を形成し、次いで、このコンデンサ素子をモノマーと酸化剤と重合溶剤とを含む混合溶液に浸漬して引き上げた後、放置することにより、陽極と陰極との間に化学酸化重合による第2の固体電解質層を形成している。第1の固体電解質層中の有機高分子バインダーと化学酸化重合で生成した導電性高分子との相溶性が高いため、酸化皮膜上への導電性高分子の被覆率が高められ、固体電解コンデンサの静電容量が増加し、インピーダンスが低下する。そして、ハイシェアミキサーによる分散処理液の使用により、最も高い静電容量と最も低いインピーダンスとを有する固体電解コンデンサが得られている。
【0007】
また、特許文献2(特開2010−87401号公報)は、陽極の表面を酸化処理し、誘電体層(酸化皮膜)を形成して、コンデンサ用基材を得る工程と、該コンデンサ用基材の誘電体層の表面に固体電解質層を形成する工程とを有するコンデンサの製造方法において、固体電解質層を形成する工程で、上記コンデンサ用基材の誘電体層上に、π共役系導電性高分子、ポリアニオンおよび溶媒を含む導電性高分子溶液を塗布し、乾燥して導電性高分子膜を形成する成膜処理を2回以上繰り返し、2回目以降の少なくとも1回の成膜処理に用いる導電性高分子溶液として、1回目の成膜処理に用いる導電性高分子溶液より粘度が高い高粘度溶液を用いることを特徴とするコンデンサの製造方法を開示している。1回目の成膜処理においてコンデンサ用基材に低粘度溶液を塗布すると、この溶液が多孔質のコンデンサ用基材の表面に浸透して1層目の導電性高分子膜が形成される。2回目以降の成膜処理のための高粘度溶液は、少ない成膜回数で膜厚を確保するために使用される。
【0008】
1回目の成膜処理に用いる低粘度溶液は、導電性高分子とポリアニオンとを必須成分として含有する導電性高分子溶液に分散処理を施すことにより得ることができることが示されている。分散処理としては、高圧ホモジナイザー等を用いた高圧分散法、10〜50kHzの超音波を照射する超音波分散法、高速流体分散法が例示されているが、実施例において具体的に用いられている分散方法は高圧分散法のみある。
【0009】
実施例では、1.7質量%のポリスチレンスルホン酸/ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)複合体を含む水溶液に、高導電化剤兼中和剤としてのイミダゾールと、高導電化剤としてのジエチレングリコールとを添加した後、高圧分散処理により8〜40mPa・sの粘度に調整した水性分散液が、低粘度溶液として使用されている。そして、上記コンデンサ用基材の低粘度溶液への浸漬及び乾燥を5回繰り返して1回目の成膜処理を行った後、高粘度溶液への浸漬及び乾燥を2回繰り返して2回目の成膜処理を行うことにより、固体電解コンデンサを得ている。1回目の成膜処理のために用いた低粘度溶液の粘度が低いほど、得られた固体電解コンデンサの静電容量が増加し、ESRが低下している。なお、水性分散液中に含まれている高導電化剤は、固体電解質層の導電性を向上する目的で、固体電解コンデンサの製造において広範に使用されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−100561号公報
【特許文献2】特開2010−87401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、分散処理により水不溶性又は水難溶性の導電性高分子の分散性を向上させた水性分散液を用いて固体電解コンデンサの固体電解質層の少なくとも一部を構成すること自体は知られており、使用可能な水性分散液の分散処理法も例示されている。しかしながら、それぞれの分散処理法についての詳細な検討が行われていないのが現状である。一方、固体電解コンデンサに対するCRの向上及びESRの低下に対する要請は常に存在するため、この要請に応えることができる水性分散液の分散処理法を検討することが望まれる。
【0012】
また、特許文献1に開示されている、導電性高分子の粒子と有機高分子バインダーとを含む分散液を使用して固体電解コンデンサの固体電解質層を形成し、有機高分子バインダーの作用により固体電解質層と陽極の酸化皮膜との密着性を確保する方法では、ハイシェアミキサー等を用いた分散処理を行ったとしても、有機高分子バインダーの存在により、導電性高分子の分散が抑制され、一旦分散した導電性高分子の再凝集が促進されるため、この分散液の使用だけでは固体電解コンデンサのCRの向上とESRの低下を十分に達成することはできない。すなわち、満足のいくCRの向上とESRの低下を得るためには、化学酸化重合による第2の固体電解質層の形成工程が不可欠である。しかし、この化学酸化重合をも利用する方法は、導電性高分子の水性分散液を利用する方法における、簡便且つ迅速に固体電解質層を得ることができるという利点を失わせるものであり、化学酸化重合を利用しない方法の検討が望まれる。
【0013】
さらに、一般に、陽極(コンデンサ基材)或いはコンデンサ素子に浸透させる液の粘度を低下させるほど、1回あたりの液への浸漬及び乾燥により陽極或いはコンデンサ素子に付着する導電性高分子量が少なくなるため、同じ厚さの固体電解質層を有する固体電解コンデンサを得るためには、低粘度の液を使用するほど、液への陽極或いはコンデンサ素子の浸漬及び乾燥の繰り返し回数を増加させなければならない。しかし、簡便且つ迅速に固体電解コンデンサを得るためには、繰り返し回数が少ないほうが望ましく、したがって、比較的高粘度であっても高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを与える分散液の使用が望ましい。
【0014】
そこで、本発明の目的は、水不溶性又は水難溶性の導電性高分子の水性分散液を基礎として、水性分散液の分散処理条件を検討することにより、従来より高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを、化学酸化重合を利用することなく簡便且つ迅速に製造する方法及びそのための分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、鋭意検討した結果、水と、特定量のπ共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子(以下、「π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子」を、単に「水不溶性導電性高分子」と表わす)の微粒子(以下、超音波照射前の混合液に含まれている微粒子を、「凝集体」と表わす)とを含み、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートのような有機高分子バインダーを含まない混合液に、15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射することにより得られた分散液が、意外にも、高圧分散法により得られた分散液に比較して、より高い粘度を示すにもかかわらず、より高いCRとより低いESRとを有する固体電解コンデンサへと導くことを発見した。
【0016】
したがって、本発明はまず、分散媒としての水と水不溶性導電性高分子の微粒子とを含み、有機高分子バインダーを含まない固体電解コンデンサ用分散液の製造方法であって、有機高分子バインダーを含まない水に上記導電性高分子の凝集体が全体の1.0〜2.0質量%の量で混合されている混合液を得る調製工程、及び、上記混合液に15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射する分散工程、を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用分散液の製造方法に関する。
【0017】
有機高分子バインダーを含まない水に全体の1.0〜2.0質量%の水不溶性導電性高分子の凝集体が混合されている混合液に、15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射すると、この範囲の超音波によって発生したキャビテーションにより、混合液中の水不溶性導電性高分子の凝集体が分裂するとともに、分裂した微粒子が有機高分子バインダーに阻害されることなく衝突するため、水不溶性導電性高分子の凝集体が容易に分裂して微細化し、液の粘度が低下する。そして、水不溶性導電性高分子の微粒子は、有機高分子バインダーに阻害されることなく、水中に安定に分散し、再凝集が抑制される。その結果得られた分散液は、高圧分散法により得られた分散液に比較して、高い粘度を示す。
【0018】
水不溶性導電性高分子の含有量が混合液全体の1質量%未満であると、凝集体或いは微細化した微粒子の衝突の機会が不足するためであると思われるが、水不溶性導電性高分子の微粒子が高分散した分散液が得られにくく、得られる固体電解コンデンサのESRが増大する傾向がある。また、水不溶性導電性高分子の含有量が混合液全体の2.0質量%を超えると、超音波照射により液がゲル化する傾向があるため好ましくない。分散液中の水不溶性導電性高分子の微粒子の平均粒径は、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜100nmの範囲である。この水不溶性導電性高分子の微粒子が、陽極の酸化皮膜におけるエッチングピット内に侵入し、固体電解コンデンサのCRを向上させる。なお、分散液における水不溶性導電性高分子の平均粒径は動的光散乱法により測定することができる。
【0019】
なお、本発明では、水不溶性導電性高分子として、一般に水1リットルに対して2g以下、好ましくは水1リットルに対して1g以下の溶解度を示すものを使用することができる。この水不溶性導電性高分子には、ドーパントとして、ポリマーアニオン、好ましくはポリスチレンスルホン酸(以下、「PSS」と表わす)のアニオンが含まれているのが好ましい。ポリマーアニオンの界面活性作用により、水不溶性導電性高分子の微粒子が、水中にさらに安定に分散し、微粒子の再凝集が抑制される。
【0020】
本発明では、公知の水不溶性導電性高分子を特に限定なく使用することができるが、3位と4位に置換基を有するチオフェンからなる群から選択された少なくとも一種のモノマーから誘導された水不溶性導電性高分子は、高い導電性を示し、耐熱性にも優れているため、本発明において好ましく使用することができる。中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、「EDOT」と表わす)のポリマーであるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、「PEDOT」と表わす)のカチオンと、PSSのアニオンとの複合体(以下、「PEDOT/PSS複合体」と表わす)が好ましい。
【0021】
固体電解コンデンサの固体電解質層を形成するための分散液には、固体電解質層の導電性を向上させるための高導電化剤を含ませるのが好ましい。本発明では、公知の高導電化剤を特に制限なく使用することができ、例えば、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物、アミド基を有する水溶性化合物、ラクトン基を有する水溶性化合物、ラクタム基を有する水溶性化合物、エーテル基を有する水溶性化合物、水溶性スルホキド及び水溶性スルホンからなる群から選択された少なくとも一種の化合物を高導電化剤として使用することができる。これらの高導電化剤は、上記分散工程において、超音波照射後の液に添加するのが好ましい。高導電化剤の種類及びその濃度によっては、超音波照射時の水不溶性導電性高分子の凝集体或いは微細化した微粒子の衝突を阻害し、或いは再凝集を促進する場合があるからである。高導電化剤としては、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物の1種であるソルビトールを使用するのが特に好ましい。ソルビトールは、固体電解質層の導電性を向上させる上に、固体電解コンデンサの耐電圧性を顕著に向上させる。
【0022】
水と水不溶性導電性高分子の凝集体とを含み、有機高分子バインダーを含まない混合液の中には、PEDOT/PSS複合体を含む混合液のように、pHが3未満の強い酸性を示すものがあるが、このような強い酸性を示す分散液を用いて固体電解コンデンサを製造しようとすると、陽極の酸化皮膜或いはコンデンサの周囲の電極部材等を腐食させる場合がある。そのため、上記分散工程において、中和剤を液に添加することにより、分散液のpHを4〜10の範囲に調整するのが好ましい。pHが4以上の範囲では、酸化皮膜などの腐食が抑制される上に、固体電解質層と酸化皮膜との密着性が増す。しかしながら、pHが10を超えると、ドーパントの脱離により固体電解質層の導電性が低下するため好ましくない。また、高導電化剤として特に好ましいソルビトールはpHが4〜10の範囲で安定であるため、ソルビトールの十分な効果を得るためには、pHを4〜10の範囲に調整するのが好ましい。
【0023】
本発明の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法により、比較的高い粘度を示すにもかかわらず、従来より高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを与える固体電解コンデンサ用分散液を得ることができる。したがって、本発明はまた、本発明の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法によって得られた、分散媒としての水と、水不溶性導電性高分子の微粒子と、を含み、有機高分子バインダーを含まない固体電解コンデンサ用分散液に関する。
【0024】
本発明の分散液は、比較的高い粘度を示すにもかかわらず、高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサへと導くため、高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを化学酸化重合を利用することなく簡便且つ迅速に製造する目的のために好適に使用することができる。
【0025】
したがって、本発明はまた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極の酸化皮膜上に設けられた水不溶性導電性高分子を含む固体電解層と、を備えた固体電解コンデンサの製造方法であって、上記陽極の酸化皮膜に本発明の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥することにより、上記陽極の酸化皮膜上に上記導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法、及びこの方法により得られた固体電解コンデンサに関する。この方法により、高いCRと低いESRとを有する平板型の固体電解コンデンサを簡便且つ迅速に得ることができる。
【0026】
本発明はさらに、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置された水不溶性導電性高分子を含む固体電解質層を保持したセパレータと、を備えた固体電解コンデンサの製造方法であって、上記陽極と、上記陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置されたセパレータと、を含むコンデンサ素子を得る素子作成工程、及び、上記コンデンサ素子に本発明の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥することにより、上記陽極の酸化皮膜と上記陰極との間に上記導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程、を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法、及びこの方法により得られた固体電解コンデンサに関する。この固体電解コンデンサの製造方法により、高いCRと低いESRとを有する巻回型又は積層型の固体電解コンデンサを簡便且つ迅速に得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
水と特定量の水不溶性導電性高分子の凝集体とを含み、有機高分子バインダーを含まない混合液に、15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射することによって得られた分散液は、高圧分散法により得られた分散液に比較して高い粘度を示すにもかかわらず、より高いCRとより低いESRとを有する固体電解コンデンサへと導くため、本発明の固体電解コンデンサの製造方法によると、高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを簡便且つ迅速に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
A:固体電解コンデンサ用分散液及びその製造方法
本発明では、分散媒としての水と水不溶性導電性高分子の微粒子とを含み、有機高分子バインダーを含まない固体電解コンデンサ用分散液を、有機高分子バインダーを含まない水に水不溶性導電性高分子の凝集体が全体の1.0〜2.0質量%の量で混合されている混合液を得る調製工程、及び、上記混合液に15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射する分散工程、を含む方法により製造する。以下、各工程について詳細に説明する。
【0029】
(1)調製工程
本発明では、水不溶性導電性高分子として、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を、特に限定無く使用することができ、水不溶性又は水難溶性のポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフラン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等を使用することができる。
【0030】
以下に代表的なモノマーを例示する。これらのモノマーは、単独で使用しても良く、2種以上の混合物として使用しても良い。
【0031】
まず、チオフェン及びチオフェン誘導体を使用することができる。チオフェン誘導体は、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された化合物が好ましく、チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。例としては、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェンなどの3−アルキルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェンなどの3,4−ジアルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェンなどの3−アルコキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェンなどのアルキルアルコキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、EDOT、3,4−(1,2−プロピレンジオキシ)チオフェンなどのアルキレンジオキシチオフェン、3,4−メチレンオキシチアチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンオキシチア)チオフェンなどのアルキレンオキシチアチオフェン、3,4−メチレンジチアチオフェン、3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンジチア)チオフェンなどのアルキレンジチアチオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、イソプロピルチエノ[3,4−b]チオフェン、t−ブチル−チエノ[3,4−b]チオフェンなどのアルキルチエノ[3,4−b]チオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェンなどのアルキルカルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェンなどのアルキルカルボキシアルキルチオフェン、3−フェニルチオフェン、3−シアノチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、及び3−カルボキシチオフェンを挙げることができる。特にEDOTを使用するのが好ましい。
【0032】
また、ピロール及びピロール誘導体、例えば、N−メチルピロール、N−エチルピロールなどのN−アルキルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロールなどの3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロールなどの3−アルコキシピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジエチルピロールなどの3,4−ジアルキルピロール、3,4−ジメトキシピロール、3,4−ジエトキシピロールなどの3,4−ジアルコキシピロール、3−メチル−4−カルボキシピロールなどのアルキルカルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロールなどのアルキルカルボキシアルキルピロール、N−フェニルピロール及びN−ナフチルピロールを使用することができる。
【0033】
また、アニリン及びアニリン誘導体、例えば、2,5−ジメチルアニリン、2−メチル−5−エチルアニリンなどの2,5−ジアルキルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、2−メトキシ−5−エトキシアニリンなどの2,5−ジアルコキシアニリン、2,3,5−トリメトキシアニリン、2,3,5−トリエトキシアニリンなどの2,3,5−トリアルコキシアニリン、2,3,5,6−テトラメトキシアニリン、2,3,5,6−テトラエトキシアニリンなどの2,3,5,6−テトラアルコキシアニリンを使用することができる。
【0034】
また、フラン及びフラン誘導体、例えば、3−メチルフラン、3−エチルフランなどの3−アルキルフラン、3,4−ジメチルフラン、3,4−ジエチルフランなどの3,4−ジアルキルフラン、3−メトキシフラン、3−エトキシフランなどの3−アルコキシフラン、3,4−ジメトキシフラン、3,4−ジエトキシフランなどの3,4−ジアルコキシフランを使用することができる。
【0035】
上記導電性高分子には、ドーパントが含まれる。ドーパントとしては、水不溶性導電性高分子に含まれる公知のドーパントを特に限定無く使用することができ、単独のドーパントを使用しても良く、2種以上のドーパントを混合して使用しても良い。ドーパントの例としては、まず、ホウ酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコット酸、酒石酸、スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、1,2−ジヒドロキシ−3,5−ベンゼンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ボロジサリチル酸、ビスオキサレートボレート酸、スルホニルイミド酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などの有機酸のアニオンを挙げることができる。
【0036】
さらに、ドーパントとして、ポリマーアニオンを好ましく使用することができる。ポリマーアニオンの界面活性作用により、以下の分散工程において、水不溶性導電性高分子の微粒子が、水中にさらに安定に分散し、微粒子の再凝集が抑制される。ポリマーアニオンとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などのポリカルボン酸のアニオン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などのポリスルホン酸のアニオンを好適に使用することができる。
【0037】
ポリカルボン酸のアニオン、ポリスルホン酸のアニオンは、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と他の重合性モノマー、例えばアクリル酸エステル及びスチレンとの共重合体のアニオンであってもよい。ポリスチレンスルホン酸のアニオンが特に好ましい。ポリマーアニオンの数平均分子量は、1,000〜2,000,000、好ましくは10,000〜500,000である。数平均分子量が1,000未満では、得られる導電性高分子の導電性が不足するとともに、分散性が低下するため好ましくなく、数平均分子量が2,000,000を超えると、混合液の粘性が増加するため好ましくない。
【0038】
水不溶性導電性高分子の凝集体と水とを含み、有機高分子バインダーを含まない混合液は、公知の方法により製造したものを特に限定なく使用することができる。
【0039】
例えば、有機高分子バインダーを含まない水に、モノマーと、ドーパントを放出する酸又はそのアルカリ金属塩と、酸化剤とを添加し、化学酸化重合が完了するまで攪拌し、次いで、限外濾過、陽イオン交換、及び陰イオン交換などの精製手段により酸化剤及び残留モノマーを除去することにより、上記混合液を得ることができる。ポリマーアニオンを放出する酸又はそのアルカリ金属塩を使用する場合には、モノマー1モルに対してアニオン基が0.25〜10個になる量で一般に使用される。酸化剤としては、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、アントラキノンスルホン酸鉄(III)等の三価の鉄塩、若しくは、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等のペルオキソ二硫酸塩、などを使用することができ、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には10分〜30時間の範囲である。
【0040】
また、有機高分子バインダーを含まない水に、モノマーと、ドーパントを放出する酸又はそのアルカリ金属塩を添加し、攪拌しながら電解酸化重合し、次いで、限外濾過、陽イオン交換、及び陰イオン交換などの精製手段により残留モノマーを除去することにより、上記混合液を得ることもできる。ポリマーアニオンを放出する酸又はそのアルカリ金属塩を使用する場合には、モノマー1モルに対してアニオン基が0.25〜10個になる量で一般に使用される。電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には10分〜30時間の範囲である。
【0041】
さらに、上述した化学酸化重合法又は電解重合法により得られた液をろ過して凝集体を分離し、十分に洗浄した後、有機高分子バインダーを含まない水に添加することにより、混合液を調製しても良い。
【0042】
混合液中の水不溶性導電性高分子の凝集体の含有量は、1.0〜2.0質量%の範囲であり、好ましくは1.5質量%〜2.0質量%の範囲である。水不溶性導電性高分子の含有量が混合液全体の1質量%未満であると、以下の分散工程において、凝集体或いは微細化した微粒子の衝突の機会が不足するためであると思われるが、水不溶性導電性高分子の微粒子が高分散した分散液が得られにくく、得られる固体電解コンデンサのESRが増大する傾向がある。また、水不溶性導電性高分子の含有量が混合液全体の2.0質量%を超えると、以下の分散工程において、超音波照射により液がゲル化する傾向があるため好ましくない。水不溶性導電性高分子の凝集体の粒径には厳密な制限が無く、以下の分散工程において容易に微細化するが、凝集体の平均粒径は、一般的には400nm〜10μm、好ましくは400nm〜1μmの範囲である。
【0043】
(2)分散工程
調製工程において得られた混合液に、特定範囲の周波数を有する超音波を照射することにより、水不溶性導電性高分子の凝集体を微細化し、微細化した微粒子を水に高分散させる。
【0044】
この工程では、機械的作用が強い数百nm〜数μmのキャビテーションを発生させることができる15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射する。この範囲の周波数を有する超音波の出力は、4W/cm以上であるのが好ましい。上記混合液に、15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射すると、超音波によって発生したキャビテーションにより、混合液中の水不溶性導電性高分子の凝集体が分裂するとともに、分裂した微粒子が有機高分子バインダーに阻害されることなく衝突するため、水不溶性導電性高分子の凝集体が容易に分裂して微細化する。水不溶性導電性高分子の微粒子の平均粒径は、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜100nm、特に好ましくは50〜75nmの範囲である。そして、このような水不溶性導電性高分子の微粒子は、有機高分子バインダーに阻害されることなく、水中に分散し、再凝集が抑制される。その結果、水不溶性導電性高分子の微粒子が水中に安定に分散した分散液が得られる。また、得られた分散液は、高圧分散法により得られた分散液に比較して、高い粘度を示す。
【0045】
15〜100kHzの周波数を有する超音波の照射のために使用される超音波発振器としては、超音波洗浄機用、細胞粉砕機用等として従来から知られている超音波発振器を特に限定なく使用することができる。超音波の照射時間は、厳密な制限はなく、約1分程度であっても水不溶性導電性高分子の凝集体が微粒子に分割されるが、2〜10分の範囲であるのが好ましい。超音波照射時間が10分以上では、分散の効果が飽和する傾向が認められる。超音波照射時の混合液の温度は、液の組成変化が起こらず、安定な分散液が得られれば特に限定がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。
【0046】
15〜100kHzの周波数を有する超音波の照射は、1回、例えば、20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波を使用して1回行っても良いが、異なる周波数及び/又は出力の超音波を使用して複数回(例えば、20kHzの周波数及び10W/cmの出力を有する超音波に続いて50kHzの周波数及び20W/cmの出力を有する超音波を使用して)行うこともできる。
【0047】
調製工程において得られた水と水不溶性導電性高分子の凝集体とを含み、有機高分子バインダーを含まない混合液の中には、PEDOT/PSS複合体を含む混合液のように、pHが3未満の強い酸性を示すものがあるが、このような強い酸性を示す分散液を用いて固体電解コンデンサを製造しようとすると、陽極の酸化皮膜或いはコンデンサの周囲の電極部材等を腐食させる場合がある。そのため、超音波照射の前、超音波照射の途中、或いは超音波照射の後に、中和剤を添加して液のpHを4〜10の範囲に調整するのが好ましい。pHが4以上の範囲では、酸化皮膜等の腐食が抑制される上に、固体電解質層と酸化皮膜との密着性が増す。しかしながら、pHが10を超えると、ドーパントの脱離により固体電解質層の導電性が低下する。また、以下に示すが、本発明の分散液には高導電化剤を含有させるのが好ましく、ソルビトールは特に好ましい高導電化剤である。ソルビトールはpHが4〜10の範囲で安定であるため、ソルビトールの十分な効果を得るためには、pHを4〜10の範囲に調整するのが好ましい。
【0048】
使用可能な中和剤としては、アンモニア、エチルアミン及びジエチルアミンのような水溶性アルキルアミン、アニリン及びベンジルアミンのような水溶性アリールアミン、ピリジン及びイミダゾールのような水溶性複素環アミン、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、ナトリウムメトキシド及びカルシウムメトキシドのようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドなどを例示することができる。これらの中和剤は、単独で使用しても良く、2種以上の中和剤を併用しても良い。
【0049】
本発明の分散液には、固体電解質層の導電性を向上させ、固体電解コンデンサのESRを低下させるために、高導電化剤を液に添加するのが好ましい。高導電化剤は、超音波照射の前、超音波照射の途中、或いは超音波照射の後に添加されるが、超音波照射の後の分散液に添加するのが好ましい。高導電化剤の種類及びその濃度によっては、超音波照射時の水不溶性導電性高分子の凝集体或いは微細化した微粒子の衝突を阻害し、或いは再凝集を促進する場合があるからである。
【0050】
本発明では、公知の高導電化剤を特に限定なく使用することができる。以下に、高導電化剤として使用される化合物を例示する。
【0051】
まず、分子内にヒドロキシ基を有する水溶性化合物を高導電化剤として使用することができる。例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及び1,3−ブタンジオールなどの多価アルコール;グルコース、スクロース、フルクトース及びラクトースのなどの糖;酒石酸、グリセリン酸、クエン酸及びグルカル酸のようなヒドロキシ酸;ソルビトール、マンニトール、ダルシトール及びイジトールのような糖アルコール、が挙げられる。特に、ソルビトールは、固体電解質層の導電性を向上させる上に、固体電解コンデンサの耐電圧性を顕著に向上させるため、好ましい高導電化剤である。
【0052】
また、分子内にアミド基を有する水溶性化合物を高導電化剤として使用することができる。例としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。さらに、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンのようなラクトン基を有する水溶性化合物、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン及びカプロラクタムのようなラクタム基を有する水溶性化合物を高導電化剤として使用することができる。
【0053】
さらに、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジエチルエーテルのようなエーテル基を有する水溶性化合物、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン及びスルホランのような水溶性スルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドのような水溶性スルホキシドを高導電化剤として使用することができる。また、ピリジン、2−メチルピリジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−アミノ−ピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、ピラジン、2−メチルピラジン、1,3,5−トリアジン及び2−アミノ−1,3,5−トリアジンのような複素環アミンを高導電化剤として使用することができ、これらは中和剤と兼ねることができる。
【0054】
これらの高導電化剤は、単独で使用しても良く、2種以上の高導電化剤を併用しても良い。高導電化剤の添加量は、水不溶性導電性高分子の質量の一般には0.1〜20倍、好ましくは0.2〜10倍の範囲である。その他、分散液には、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の慣用の添加物を添加してもよい。
【0055】
上述した調製工程及び分散工程により、分散媒としての水と水不溶性導電性高分子の微粒子とを含み、有機高分子バインダーを含まない本発明の固体電解コンデンサ用分散液を得ることができる。
【0056】
B:固体電解コンデンサ及びその製造方法
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極の酸化皮膜に本発明の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥し、上記陽極の酸化皮膜上に水不溶性導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を実施することにより、上記陽極と、該陽極の酸化皮膜上に設けられた水不溶性導電性高分子を含む固体電解質層と、を備えた第1の形態の固体電解コンデンサを得ることができる。また、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、これらの間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る素子作成工程、及び、上記コンデンサ素子に本発明の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥し、上記陽極の酸化皮膜と上記陰極との間に水不溶性導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程、を実施することにより、上記陽極と、上記陰極と、これらの間に配置された水不溶性導電性高分子を含む固体電解質層を保持したセパレータと、を備えた第2の形態の固体電解コンデンサを得ることができる。以下、第1の形態の固体電解コンデンサと第2の形態の固体電解コンデンサのそれぞれについて説明する。
【0057】
(a)第1の形態の固体電解コンデンサ
第1の形態の固体電解コンデンサの製造では、陽極として、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。
【0058】
そして、陽極の少なくとも酸化皮膜に本発明の固体電解コンデンサ用分散液を刷毛塗り、滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等により適用し、酸化皮膜に上記分散液を浸透させた後、一般には150℃以上、好ましくは180℃以上の温度で乾燥することにより、陽極の少なくとも酸化皮膜上に、水不溶性導電性高分子と必要に応じて添加された高導電化剤とを含む固体電解質層を形成する。その後、カーボンペースト、銀ペースト等により固体電解質層上に導電層(見かけの陰極)を形成し、第1の形態の固体電解コンデンサを得る。固体電解質層に電解液を浸透させ、ハイブリッド型のコンデンサとすることも可能である。
【0059】
(b)第2の形態の固体電解コンデンサ
第2の形態の固体電解コンデンサの製造では、まず、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る素子作成工程を実施する。
【0060】
陽極としては、第1の形態の固体電解コンデンサの陽極と同様に、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。陰極としては、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面したものが使用される。セパレータとしては、マニラ紙、クラフト紙、合成繊維紙、ガラスペーパー、ガラスペーパーとマニラ紙、クラフト紙との混抄紙等を使用することができる。
【0061】
陽極及び陰極を、セパレータを介して巻回或いは積層することにより、コンデンサ素子を得る。次いで、本発明の固体電解コンデンサ用分散液を浸漬塗布、滴下塗布等によりコンデンサ素子に浸透させ、一般には150℃以上、好ましくは180℃以上の温度で乾燥することにより、少なくとも陽極の酸化皮膜と陰極との間に、水不溶性導電性高分子と必要に応じて添加された高導電化剤とを含む固体電解質層を形成し、第2の形態の固体電解コンデンサを得る。固体電解質層に電解液を浸透させ、ハイブリッド型のコンデンサとすることも可能である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0063】
(1)第1の形態の固体電解コンデンサ
実施例1
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。得られた液について、動的光散乱装置によりPEDOT/PSSの微粒子の平均粒径を測定したところ、74.7nmであった。また、振動式粘度計にて液の粘度を測定したところ、26.4mPa・sであった。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを2.5g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。得られた分散液の粘度は、27.0mPa・sであった。
【0064】
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧3Vに化成した後、投影面積1×1cmに打ち抜き、陽極とした。この陽極に上記分散液を100μL滴下した後、60℃で1時間、130℃で30分、さらには180℃で1時間乾燥することにより、陽極の酸化皮膜上にPEDOT/PSSとソルビトールとを含む固体電解質層を形成した。最後に、固体電解質層上にカーボンペーストを塗布して乾燥し、次いで銀ペーストを塗布して乾燥することにより、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
【0065】
得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例2
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の1.5質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。得られた液の粘度を測定したところ、12.4mPa・sであった。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを1.875g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0067】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の1.0質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。得られた液の粘度を測定したところ、8.8mPa・sであった。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを1.25g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0069】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例4
ソルビトール2.5gの代わりにソルビトール1.1675g(PEDOT/PSS:ソルビトール=30:70)を添加したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表1に示す。
【0071】
実施例5
ソルビトール2.5gの代わりにソルビトール0.75g(PEDOT/PSS:ソルビトール=40:60)を添加したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表1に示す。
【0072】
実施例6
ソルビトール2.5gの代わりにジメチルスルホキシド1.25gを添加したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表1に示す。
【0073】
実施例7
ソルビトール2.5gの代わりにエチレングリコール1.25gを添加したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表1に示す。
【0074】
実施例8
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌し、エチレングリコール1.25gを添加した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、アンモニア水を添加してpHを8に調整し、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0075】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0076】
実施例9
ソルビトール2.5gの代わりにソルビトール1g、エチレングリコール2.5g、及び分子量200のポリエチレングリコール0.25gを添加したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表1に示す。
【0077】
比較例1
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、液の粘度を測定したところ、88.8mPa・sであった。この液に、高導電化剤としてのソルビトール1g、エチレングリコール2.5g、及び分子量200のポリエチレングリコール0.25gを添加し、さらにアンモニア水を添加してpHを8に調整し、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0078】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0079】
比較例2
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数200kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトール1g、エチレングリコール2.5g、及び分子量200のポリエチレングリコール0.25gを添加した。この液にアンモニア水を添加してpHを8に調整し、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0080】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0081】
比較例3
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.5質量%の濃度で混合されている混合液を調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、高圧ホモジナイザー(製品名;スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製))に200MPaの条件下で20回流通させることにより、高圧分散処理を施した。さらに、得られた液を濃縮処理し、PEDOT/PSSが水に全体の2質量%の濃度で分散した液を得た。得られた液の粘度は、12mPa・sであった。次いで、得られた液25gに、高導電化剤としてのソルビトールを2.5g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。得られた分散液の粘度は、15mPa・sであった。
【0082】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0083】
比較例4
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.5質量%の濃度で混合されている混合液を調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、高圧ホモジナイザー(製品名;スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製))に100MPaの条件下で3回流通させることにより、高圧分散処理を施した。さらに、得られた液を濃縮処理し、PEDOT/PSSが水に全体の2質量%の濃度で分散した液を得た。得られた液の粘度は、25.4mPa・sであった。次いで、得られた液25gに、高導電化剤としてのソルビトールを2.5g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0084】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0085】
比較例5
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.5質量%の濃度で混合されている混合液を調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、高圧ホモジナイザー(製品名;スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製))に200MPaの条件下で20回流通させることにより、高圧分散処理を施した。さらに、得られた液を濃縮処理し、PEDOT/PSSが水に全体の1.5質量%の濃度で分散した液を得た。得られた液の粘度は、10.1mPa・sであった。次いで、得られた液25gに、高導電化剤としてのソルビトールを1.875g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0086】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0087】
比較例6
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.5質量%の濃度で混合されている混合液を調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、高圧ホモジナイザー(製品名;スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製))に200MPaの条件下で20回流通させることにより、高圧分散処理を施した。さらに、得られた液を濃縮処理し、PEDOT/PSSが水に全体の1.0質量%の濃度で分散した液を得た。得られた液の粘度は、7.5mPa・sであった。次いで、得られた液25gに、高導電化剤としてのソルビトールを1.25g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0088】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0089】
比較例7
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。得られた液の粘度は、26.4mPa・sであった。次いで、有機高分子バインダーとしてのポリビニルアルコールを0.75g添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。得られた分散液の粘度は、104mPa・sであった。
【0090】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0091】
比較例8
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、有機高分子バインダーとしてのポリビニルアルコールを0.75g添加し、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。得られた分散液の粘度は、112mPa・sであった。
【0092】
得られた分散液を用いて、実施例1における方法と同様の方法で皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
比較例7及び比較例8より、有機高分子バインダーであるポリビニルアルコールを含む分散液を用いると、ポリビニルアルコールを超音波分散の前に導入するか後に導入するかに係らず、極めて低いCRと極めて高いESRとを示す固体電解コンデンサしか得られないことがわかる。これに対し、有機高分子バインダーを含まない分散液を使用して製造した実施例1〜9及び比較例1〜6の固体電解コンデンサは、比較例7,8のコンデンサより高いCRと低いESRとを示した。
【0095】
比較例1と実施例9との比較より、混合液に20kHzの周波数を有する超音波を照射することにより、液中のPEDOT/PSSの微粒子の平均粒径が大幅に減少(300nm〜1μm→74.7nm)するとともに、液の粘度も大幅に低下(88.8mPa・s→26.4mPa・s)することがわかる。そして、20kHzの周波数を有する超音波の照射を行った分散液を使用すると、固体電解コンデンサのCRが大幅に上昇し、ESRが大幅に低下した。しかしながら、比較例1と比較例2の比較より、混合液に200kHzの超音波を照射した分散液を使用しても、固体電解コンデンサのCRの上昇及びESRの低下がほぼ認められないことがわかる。このことは、CRが高く、ESRが低い固体電解コンデンサの製造のためには、機械的作用が強いキャビテーションを発生させることができる15〜100kHzの周波数を有する超音波を混合液に照射することが重要であることを示している。
【0096】
混合液中のPEDOT/PSSの含有量が2.0質量%である分散液を用いた実施例1と比較例3、混合液中のPEDOT/PSSの含有量が1.5質量%である分散液を用いた実施例2と比較例5、混合液中のPEDOT/PSSの含有量が1.0質量%である分散液を用いた実施例3と比較例6との比較より、超音波分散処理を施した分散液を用いると、高圧ホモジナイザーによる分散処理を施した分散液を用いるよりも、分散液の粘度が高いにもかかわらず、高いCRと低いESRとを有するコンデンサが得られることがわかる。また、混合液中のPEDOT/PSSの含有量が2.0質量%である分散液を用いた実施例1と比較例4との比較では、ほぼ同じ粘度の分散液を使用しているにもかかわらず、超音波分散処理を施した分散液を用いたほうが、高圧ホモジナイザーによる分散処理を施した分散液を用いるよりも、高いCRと低いESRとを有するコンデンサが得られている。
【0097】
一般に、粘度が高い分散液を使用すると、コンデンサの製造において、1回あたりの陽極の酸化皮膜への分散液の浸透及び乾燥により酸化皮膜上に付着する固体電解質量が多くなるため、同じ厚さの固体電解質層を有する固体電解コンデンサを得るためには、高粘度の液を使用するほど、液への陽極の浸漬及び乾燥の繰り返し回数を減少させることができ、したがって迅速に固体電解コンデンサを得ることができる。超音波照射を施した分散液は、高圧ホモジナイザーによる分散処理を施した分散液よりも、高い粘度を有しているにもかかわらず、より高いCRとより低いESRとを有する固体電解コンデンサを与えるため、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、迅速にコンデンサを製造するのに適している。
【0098】
実施例1と実施例4〜9との比較より、混合液に周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した分散液であっても、高導電化剤の種類とその量によりCRとESRが変化することがわかる。ソルビトールを多く含む分散液がより高いCRとより低いESRとを有するコンデンサへと導いた。また、実施例7と実施例8との比較より、高導電化剤であるエチレングリコールを超音波処理の後に導入したほうが、超音波処理の前に導入するよりも、より高いCRを示すコンデンサが得られることがわかる。
【0099】
(2)第2の形態の固体電解コンデンサ
実施例10
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2.0質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを2.5g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0100】
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧130Vに化成したアルミニウム箔を陽極とし、エッチングを施したアルミニウム箔を陰極とし、これらを厚さ50μmのセパレータを介して巻回することにより、コンデンサ素子を得た。このコンデンサ素子を上記分散液に浸漬した後170℃で1時間乾燥する工程を3回繰り返すことにより、陽極の酸化皮膜と陰極との間にPEDOT/PSSとエチレングリコールとを含む固体電解質層を形成した。最後に、得られた素子を有底筒状のアルミニウムケース内に挿入し、封口して、固体電解コンデンサを得た。
【0101】
得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0102】
実施例11
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の1.5質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを1.875g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0103】
得られた分散液を用いて、実施例10における方法と同様の方法で皮膜耐圧130Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0104】
実施例12
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の1.0質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを1.25g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0105】
得られた分散液を用いて、実施例10における方法と同様の方法で皮膜耐圧130Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0106】
実施例13
ソルビトール2.5gの代わりにエチレングリコール1.25gを添加したことを除いて、実施例10の手順を繰り返した。得られた固体電解コンデンサについての120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを表2に示す。
【0107】
比較例9
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の2.5質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを3.125g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0108】
得られた分散液を用いて、実施例10における方法と同様の方法で皮膜耐圧130Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0109】
比較例10
化学重合により得たPEDOT/PSSの凝集体(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.8質量%の濃度で混合されている混合液25gを調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、周波数20kHz、出力50W/cmの超音波を5分間照射した。次いで、高導電化剤としてのソルビトールを1g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0110】
得られた分散液を用いて、実施例10における方法と同様の方法で皮膜耐圧130Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0111】
比較例11
化学重合により得たPEDOT/PSS(粒径;300nm〜1μm:平均粒径;450nm)が水に全体の0.5質量%の濃度で混合されている混合液を調製した。次いで、この混合液を攪拌ホモジナイザーにより攪拌した後、高圧ホモジナイザー(製品名;スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製))に200MPaの条件下で20回流通させることにより、高圧分散処理を施した。さらに、得られた液を濃縮処理し、PEDOT/PSSが水に全体の1.5質量%の濃度で分散した液を得た。次いで、得られた液25gに、高導電化剤としてのソルビトールを1.875g(PEDOT/PSS:ソルビトール=17:83)添加し、アンモニア水を添加してpHを8に調整して、固体電解質層を形成するための分散液を得た。
【0112】
得られた分散液を用いて、実施例8と同様の方法で皮膜耐圧130Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、120Hzにおける容量出現率及び100kHzにおけるESRを測定した。結果を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
実施例11と比較例11との比較から、第1の形態のコンデンサと同様に、第2の形態のコンデンサにおいても、超音波分散を行った分散液を用いた固体電解コンデンサは、高圧ホモジナイザーによる分散処理を施した同じPEDOT/PSS量を含む分散液を用いたコンデンサよりも、高いCRと低いESRとを示すことがわかる。
【0115】
実施例10〜12及び比較例9,10の比較より、PEDOT/PSS含有量の影響がわかる。得られる固体電解コンデンサのESRは、分散液におけるPEDOT/PSSの含有量が増加するにつれて低下するが、コンデンサのCRについては、PEDOT/PSSの含有量が0.77質量%(混合液におけるPEDOT/PSSの含有量が0.8質量%)である分散液を用いた比較例10のコンデンサは、PEDOT/PSSの含有量が0.95質量%(混合液におけるPEDOT/PSSの含有量が1.0質量%)である分散液を用いた実施例11のコンデンサ、PEDOT/PSSの含有量が1.40質量%(混合液におけるPEDOT/PSSの含有量が1.50質量%)である分散液を用いた実施例10のコンデンサ、PEDOT/PSSの含有量が1.82質量%(混合液におけるPEDOT/PSSの含有量が2質量%)である分散液を用いた実施例10のコンデンサより小さなCR値を示し、PEDOT/PSSの含有量が2.22質量%(混合液におけるPEDOT/PSSの含有量が2.5質量%)である分散液を用いた比較例9のコンデンサは、実施例11のコンデンサより大きく低下したCR値を示した。これは、PEDOT/PSSの分散液における含有量が低すぎても高すぎても、PEDOT/PSSの分散性が低下していることを反映したものであると考えられる。
【0116】
第1の形態のコンデンサ(実施例1〜3参照)より、第2の形態のコンデンサにおいて、PEDOT/PSSの分散液における含有量の影響が大きく認められるのは、第1の形態のコンデンサでは、分散液が比較的容易に陽極の酸化皮膜に浸透するのに対し、第2の形態のコンデンサでは、陽極の酸化皮膜に分散液が浸透するまでに、コンデンサ素子の周囲、陽極と陰極との間隙及びセパレータへの浸透を経なければならず、PEDOT/PSSの分散性が良好であれば、含有量が多いほど酸化皮膜への浸透が容易且つ迅速であるためであると考えられる。
【0117】
実施例10及び実施例13の固体電解コンデンサについて、電流−電圧曲線を得、故障が生じた電圧値により耐電圧性を評価した。表3にその結果を示す。
【0118】
【表3】

【0119】
高導電化剤としてのソルビトールを固体電解質層中に含む実施例10のコンデンサは、高導電化剤としてのエチレングリコールを固体電解質層中に含む実施例13のコンデンサに比較して、顕著に増加した耐電圧性を有することがわかる。なお、高導電化剤を含まない分散液を用いた固体電解コンデンサの耐電圧性についても評価したところ、60Vであった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサは、幅広い用途に好適に使用することができ、本発明の製造方法により、このような高いCRと低いESRとを有する固体電解コンデンサを簡便且つ迅速に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒としての水と、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子の微粒子と、を含み、有機高分子バインダーを含まない固体電解コンデンサ用分散液の製造方法であって、
有機高分子バインダーを含まない水に、前記導電性高分子の微粒子が、全体の1.0〜2.0質量%の量で混合されている混合液を得る調製工程、及び、
前記混合液に15〜100kHzの周波数を有する超音波を照射する分散工程
を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項2】
前記導電性高分子に、ドーパントとしてのポリマーアニオンが含まれている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項3】
前記モノマーが、3位と4位に置換基を有するチオフェンからなる群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項4】
前記モノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、前記ポリマーアニオンがポリスチレンスルホン酸アニオンである、請求項2又は3に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項5】
前記分散工程において、超音波照射後の前記分散液に、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物、アミド基を有する水溶性化合物、ラクトン基を有する水溶性化合物、ラクタム基を有する水溶性化合物、エーテル基を有する水溶性化合物、水溶性スルホキド及び水溶性スルホンからなる群から選択された少なくとも一種の化合物を高導電化剤として添加する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がソルビトールである、請求項5に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項7】
前記分散工程において、前記分散液のpHを4〜10の範囲に調整する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ用分散液の製造方法によって得られた、分散媒としての水と、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子の微粒子と、を含み、有機高分子バインダーを含まない固体電解コンデンサ用分散液。
【請求項9】
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極の酸化皮膜上に設けられたπ共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む固体電解層と、を備えた固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記陽極の酸化皮膜に、請求項8に記載の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥することにより、前記陽極の酸化皮膜上に前記導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程
を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む固体電解質層を保持したセパレータと、を備えた固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記陽極と、前記陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置されたセパレータと、を含むコンデンサ素子を得る素子作成工程、及び、
前記コンデンサ素子に、請求項8に記載の固体電解コンデンサ用分散液を浸透させて乾燥することにより、前記陽極の酸化皮膜と前記陰極との間に前記導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程
を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の固体電解コンデンサの製造方法によって得られた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極の酸化皮膜上に設けられたπ共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む固体電解質層と、を備えた固体電解コンデンサ。
【請求項12】
請求項10に記載の固体電解コンデンサの製造方法によって得られた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された、π共役二重結合を有するモノマーから誘導された水不溶性又は水難溶性の導電性高分子を含む固体電解質層を保持したセパレータと、を備えた固体電解コンデンサ。

【公開番号】特開2013−74212(P2013−74212A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213474(P2011−213474)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)