説明

固体電解コンデンサ

【課題】 大容量且つ低ESRおよび低ESLである固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 アルミニウム箔の全体厚みが150μmであり残芯厚(アルミニウム箔全体の厚みからエッチングされた層の厚みを差し引いた厚み)が50μmである陽極体を用いた固体電解コンデンサ素子19bを実装側に備え、その上に、アルミニウム箔の全体厚みが350μmであり残芯厚が50μmである陽極体を用いた固体電解コンデンサ素子19aを積層してなる固体電解コンデンサ素子部を、導電性接着剤17により電極変換基板6に接続してなる固体電解コンデンサである。その電極変換基板6は、実装側に千鳥に(等ピッチで交互に)配置された外部陽極端子7および外部陰極端子8を備え、実装側の反対面には陽極ビア2および陰極ビア3を介してそれぞれ外部陽極端子7および外部陰極端子8に導通する陽極電極板4および陰極電極板5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電子機器の電源回路に用いられるデカップリングコンデンサ用の固体電解コンデンサに関し、特に3端子以上の実装端子を有する固体電解コンデンサに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化に伴って、電子機器を構成する半導体素子の多ピン化、高速化、高速伝送化が進んでいる。これら半導体素子を正常に動作させるために、半導体素子を搭載したパッケージを実装したプリント基板において、多数の受動部品を搭載したプリント基板が飛躍的に増加しており、部品点数が増加する傾向があった。
【0003】
これら多くの受動部品はコンデンサ素子であり、その役割は、1つは供給電圧に重畳されたスイッチングノイズ等の雑音を平滑化する役割であり、2つ目はプロセッサーで発生する高周波雑音がプリント基板全体に流出することを防止するデカップリングコンデンサの役割であり、3つ目がプロセッサーの動作モードが切り替わり短時間のうちに大量の電流を供給して電圧降下の発生を防ぐ役割である。これらのコンデンサの役割を効果的に果たすためには、等価直列インダクタンス(以下、ESLと称す)の値を小さく制御することが必須条件であり、通常、多数のコンデンサを並列に配線、実装することで対応していることが多い。
【0004】
大規模集積回路(以下、LSIと称す)においては、その動作周波数が数百MHz〜GHzオーダーとなり、クロックの立ち上がり時間が非常に短くなってきたため、LSIに急激な負荷がかかると、電源とLSIの配線間に存在する寄生抵抗と寄生インダクタンスにより電圧降下が生じ、それに伴う誤作動が問題となっている。この電圧降下を低減するために、デカップリングキャパシタとして、従来は積層セラミックコンデンサをLSIの近傍に実装し、それによってノイズ低減を図っている。
【0005】
この様に積層セラミックコンデンサが用いられることが多いが、これら積層セラミックコンデンサは、バイアス電圧が重畳された場合、あるいは使用動作環境温度が高くなった場合に、大幅に容量が低減してしまう傾向があり、大量の予備用の積層セラミックコンデンサを実装しておく必要があり、部品点数が増加する大きな要因になっていた。
【0006】
一方、上記電子機器に搭載される半導体素子から発生する電源ノイズを低減する方策としては、出来る限り半導体素子近傍にコンデンサ素子を形成することが知られているため、半導体パッケージを構成するインターポーザー基板にコンデンサ素子を内蔵することが提案されている(たとえば特許文献1)。
【0007】
ところで、ESLを増大させる原因として、デバイス内部の導電体の透磁率、デバイス内部から実装端子までの配線長・配線形状等があるが、正極および負極の実装端子の距離を近づけ、ループインダクタンスと呼ばれる正負の端子間に発生するインダクタンス成分を低減させ、さらに実装端子を増やし、正負の端子を一次元的に交互に配置する、または二次元的に千鳥に(千鳥格子状に)配置するという手法が近年多く採用されている。
【0008】
また、特許文献2には、母材金属の多孔質部に所要の数の貫通穴を設けた後、その貫通孔に絶縁樹脂を充填・硬化し、その硬化した樹脂部の中心に最初に設けた貫通孔の直径を超えない大きさの第2の貫通孔を設け、その内部をメッキ等で被覆・充填することにより導電体を形成する固体電解コンデンサが提案されている。
【0009】
また、特許文献3には、コンデンサ付き配線基板におけるコンデンサ素子が提案され、厚みが比較的薄く大容量であり、さらに素子のビルドアップが可能であるとされている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−216755号公報
【特許文献2】特開2002−343686号公報
【特許文献3】特開平10−97952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に開示されている公知技術の固体電解コンデンサは、母材金属の多孔質部に所要の数の貫通穴を設けた後、その貫通孔に絶縁樹脂を充填・硬化し、その硬化した樹脂部の中心に最初に設けた貫通孔の直径を超えない大きさの第2の貫通孔を設け、その内部をメッキ等で被覆・充填することにより導電体を形成しているが、貫通穴を設けた分だけ静電容量(以下、Cap.と称す)が減少する。しかし、上述した通りESLを低くするためは正負の端子を一次元的に交互に配置する、または二次元的に千鳥に配置する必要があり端子数が多い方がESLは低減する。従って、Cap.の確保とESLの低減はトレードオフの関係にある。
【0012】
また、特許文献3に開示されている公知技術のコンデンサ付き配線基板におけるコンデンサ素子は、厚みが比較的薄く大容量であり、さらに素子のビルドアップが可能であるが、ビルドアップにも基板の厚みとの兼ね合いがあり、素子を多く基板内に内蔵すると配線の取り回しの複雑化が懸念される。よって、前述のことより大容量化には限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上述した課題を解決する手段を提供するものであって、その構成は次の通りである。
【0014】
本発明の固体電解コンデンサは、弁作用金属を陽極とし、該陽極の拡面化した表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有し、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、前記弁作用金属が板状または箔状のアルミニウムであり、全体厚みが150μmを超え500μm以下であり、且つ残芯厚(アルミニウム全体の厚みからエッチングされた層の厚みを差し引いた厚み)が前記全体厚みの1/7〜1/5であり、ほぼ貫通する穴が格子状に等ピッチで配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏をほぼ貫通するように交互に設けられた第1の導体群および第2の導体群を千鳥に配置して有する基材の一方の面上で前記第1の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陽極部が接続され且つ前記第2の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陰極部が接続され、他方の面上では前記第1の導体群および第2の導体群とそれぞれ導通する外部陽極端子および外部陰極端子が設けられてなる電極変換基板を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の固体電解コンデンサは、弁作用金属を陽極とし、該陽極の拡面化した表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子層を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有しており、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解コンデンサ素子が板状または箔状のアルミニウムであって、全体厚みまたは残芯厚(アルミニウム全体の厚みからエッチングされた部分の厚みを差し引いた厚み)の少なくとも一方が異なる2種類の固体電解コンデンサ素子を積層した構造であることを特徴とする。
【0016】
ここで、前述した2種類の固体電解コンデンサ素子が、板状または箔状のアルミニウムを母材とし、ひとつはその厚みが150μmを超え400μm以下であり、且つ残芯厚がアルミニウムの厚みの1/7〜1/3であること、他方の厚みが150μm以下であり、且つ残芯厚がアルミニウムの厚みの1/7〜1/3であることが好ましい。
【0017】
また、2種類の固体電解コンデンサのうちアルミニウムの厚みが150μm以下であり、且つ残芯厚がアルミニウムの厚みの1/7〜1/3である方の固体電解コンデンサ素子を実装面側に配置した構造が好ましい。
【0018】
さらに、前述した固体電解コンデンサにおける前記固体電解コンデンサ素子の陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子へ接続する構成は、ほぼ貫通する穴が格子状に配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏を貫通する第1の導体層(陽極ビアとしての第1の導体群)と第2の導体層(陰極ビアとしての第2の導体群)を千鳥に配置して有する基材を有し、この基材のひとつの表面上で前記第1の導体層(陽極ビア)と前記固体電解コンデンサ素子陽極部が接続され、且つ前記第2の導体層(陰極ビア)と前記固体電解コンデンサ素子陰極部が接続されており、他方の面には前記第1の導体層(陽極ビア)および第2の導体層(陰極ビア)がそれぞれ接続された外部陽極端子および外部陰極端子が備えられることが好ましい。
【0019】
また、弁作用金属を陽極とし、前記陽極部の表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子層を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有しており、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、前記固体電解コンデンサ素子が、(1)板状または箔状のアルミニウムを母材として有するアルミニウム固体電解コンデンサ素子と、(2)タンタルもしくはニオブを母材として有するタンタル固体電解コンデンサ素子もしくはニオブ固体電解コンデンサ素子のいずれかとを積層したことを特徴とする固体電解コンデンサも前述した課題を解決する。
【0020】
ここで、前述した固体電解コンデンサにおいては、アルミニウム固体電解コンデンサ素子を実装面側に配置した方が好ましい。
【0021】
さらに、前述した固体電解コンデンサにおける前記固体電解コンデンサ素子の陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子へ接続される構成は、ほぼ貫通する穴が格子状に配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビアとしての第1の導体群)と第2の導体層(陰極ビアとしての第2の導体群)を千鳥に配置して有する基材を有し、この基材のひとつの表面上で前記第1の導体層(陽極ビア)と前記固体電解コンデンサ素子陽極部が接続され、且つ前記第2の導体層(陰極ビア)と前記固体電解コンデンサ素子陰極部がそれぞれ接続されており、他方の面では前記第1の導体層(陽極ビア)および第2の導体層(陰極ビア)にそれぞれ接続された外部陽極端子および外部陰極端子が備えられることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、端子の引き出し構造において外部陽極端子と外部陰極端子を等ピッチに交互配置とすること(千鳥に配置すること)や、固体電解コンデンサ素子部の母材におけるアルミニウム箔の残芯を厚くすることにより電荷供給に係るバイパスを太くすることが可能となり、さらに固体電解コンデンサ素子部を形成する際の積層工程においてアルミニウムの箔厚が薄いものを下部に配置することによって、低ESL化が可能となった。
【0023】
さらに、母材におけるアルミニウム箔のCap.に起因するエッチング層の体積を拡大することや、比誘電率はアルミニウム酸化皮膜よりタンタル酸化皮膜またはニオブ酸化皮膜の方が大きいのでタンタル固体電解コンデンサ素子またはニオブ固体電解コンデンサ素子を組み合わせることによって大容量化も可能となった。
【0024】
すなわち、数百μFの大容量、低ESR(低い等価直列抵抗)且つ低ESLの固体電解コンデンサを実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る固体電解コンデンサの端子配置を示す底面図であり、図2は本発明の実施の形態1に係り、図1のA−A面に対応する模式的断面図である。但し、複雑さを避けるために、断面の一部にのみハッチングを施した。尚、図1、図2は実装面側を上にして描いた。
【0026】
本発明の実施の形態1での固体電解コンデンサは、図2の様に、格子状に貫通穴を有する絶縁層1と前記貫通穴内部に絶縁層1の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビア2)と第2の導体層(陰極ビア3)とを千鳥に(千鳥格子状に等ピッチで交互に)配置し、陰極ビア3上および陽極ビア2上にそれぞれ銅などの金属板もしくは金属箔からなる陰極電極板5および陽極電極板4を有すると共に、実装面側では前記第1の導体層(陽極ビア2)および第2の導体層(陰極ビア3)に接続される外部陽極端子7および外部陰極端子8を千鳥に配置して備える電極変換基板6上に導電性接着銀17により接続された固体電解コンデンサ素子部20から構成されている。
【0027】
この固体電解コンデンサ素子部20は、アルミニウムからなる板状または箔状の弁作用金属の母材を陽極9とし、この陽極9の両側にレジスト帯10を設けて、陽陰極を分離しコンデンサ基体としたコンデンサ基体の積層体からなり、ひとつの固体電解コンデンサ素子19aとしては、陽極9において両側にレジスト帯10を設け、このレジスト帯10に挟まれた部分の誘電体皮膜層上に導電性高分子層11を形成し、グラファイト層12および銀ペースト層13を塗布・硬化することにより素子陰極部15を設ける。
【0028】
また、電極変換基板6の基材はガラスエポキシや液晶ポリマーなどから選ばれる絶縁基材であり、この電極変換基板6の基材を格子状に貫通する陽極ビア2および陰極ビア3は銅などを使ったメッキまたは導電性ペーストで形成されている。
【0029】
さらに、固体電解コンデンサ素子部20はエポキシ樹脂や液晶ポリマーなどの外装材18で被覆される。
【0030】
このとき用いる固体電解コンデンサ素子19aは、弁作用金属としてのアルミニウムの全体厚みが150μmを超え500μm以下であり、且つ残芯厚(アルミニウム全体の厚みからエッチングされた層の厚みを差し引いた厚み)が前記全体厚みの1/7〜1/5とすることができる。
【0031】
ところで、弁作用金属母材のアルミニウムの全体厚みが150μm以下の固体電解コンデンサ素子を積層する場合、製品の単位体積あたりにして大容量を得にくくなる。また、アルミニウムの全体厚みが500μmを超える場合、固体電解コンデンサ素子単体の作製が容易でない。さらに、残芯厚が全体厚みの1/7未満になると大電流を通過させるのが困難となり、1/5を超えると大容量を得にくくなる。
【0032】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について図面を参照して説明する。本実施の形態の固体電解コンデンサの模式的な底面図は、すでに説明した図1と同様である。図3に本発明の実施の形態2に係る固体電解コンデンサを示す。図1のA−A面に対応する模式的断面図である。但し、複雑さを避けるために、断面の一部にのみハッチングを施した。
【0033】
本実施の形態での固体電解コンデンサは、図3の様に、格子状に貫通穴を有する絶縁層1と前記貫通穴内部に絶縁層1の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビア2)と第2の導体層(陰極ビア3)とを千鳥に(千鳥格子状に等ピッチで交互に)配置し、陰極ビア3上および陽極ビア2上にそれぞれ銅などの金属板もしくは金属箔からなる陰極電極板5および陽極電極板4を有すると共に、実装側では前記第1の導体層(陽極ビア2)および第2の導体層(陰極ビア3)に接続される外部陽極端子7および外部陰極端子8を千鳥に配置して備える電極変換基板6上に導電性接着銀17により接続された固体電解コンデンサ素子部20から構成されている。
【0034】
ここで、上述した固体電解コンデンサ素子部20としてタンタル、ニオブ、アルミニウムまたはそれらの合金からなる板状または箔状の弁作用金属の母材を陽極9とし、この陽極9の両側にレジスト帯10を設けて、陽陰極を分離しコンデンサ基体としたコンデンサ基体の積層体からなる。このとき、固体電解コンデンサ素子19aと固体電解コンデンサ素子19bは弁作用金属の母材の厚みまたは酸化皮膜が形成される層の厚みが異なる。
【0035】
このとき、固体電解コンデンサ素子19a,19bとして、陽極9において両側にレジスト帯10を設け、このレジスト帯10に挟まれた部分の誘電体皮膜層上に導電性高分子層11を形成し、グラファイト層12および銀ペースト層13を塗布・硬化することにより素子陰極部15を設ける。尚、図3において、弁作用金属(陽極)9と、導電性高分子層11の間に酸化皮膜層25を表示した。実際には、細孔の内部まで、誘電体の酸化皮膜層や導電性高分子層11が入り込んでおり模式的な表現であるが、固体電解コンデンサ素子19aと19bでは酸化皮膜層(エッチング層)の厚みが異なることを表示した。
【0036】
また、電極変換基板6の基材はガラスエポキシや液晶ポリマーなどから選ばれる絶縁基材であり、この電極変換基板6の基材を格子状に貫通する陽極ビア2および陰極ビア3は銅などを使ったメッキまたは導電性ペーストで形成されている。
【0037】
さらに、固体電解コンデンサ素子部20はエポキシ樹脂や液晶ポリマーなどの外装材18で被覆される。
【0038】
このとき、用いる2種類の固体電解コンデンサ素子としては、アルミニウム板または箔を弁作用金属母材として用いる場合には、(1) 第1種の固体電解コンデンサ素子でのアルミニウムの全体厚みが150μmを超え400μm以下であり、且つ残芯厚が前記全体厚みの1/7〜1/3であって、(2)第2種の固体電解コンデンサ素子でのアルミニウムの全体厚みが150μm以下であり、且つ残芯厚が全体厚みの1/7〜1/3であることが好ましい。
【0039】
一方に、アルミニウムの全体厚みが150μmを超え400μm以下のものを用い、他方に、全体厚みが150μm以下のものを用いる組合せは、低ESLおよび低ESRと、大容量とを両立させるために有効である。また、残芯厚が全体厚みの1/7未満になると、大電流を通過させるのが困難となり、1/3を超えると大容量を得るのが困難になる。この様に、2種類の固体電解コンデンサ素子を組み合わせると、固体電解コンデンサ素子単体に要求される特性などの条件が緩和される。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3での固体電解コンデンサの模式的な底面図は、すでに説明した図1と同様である。図4に本実施の形態に係る固体電解コンデンサの模式的断面図を示す。但し、複雑さを避けるために、断面の一部にのみハッチングを施した。本実施の形態の構成を実施の形態2と比較して説明する。
【0041】
本実施の形態において、実施の形態2と異なる点は固体電解コンデンサ素子部20の構成である。本実施の形態の固体電解コンデンサ素子部20は、実施の形態2に示したアルミニウムを弁作用金属とするコンデンサ基体により作製した固体電解コンデンサ素子19bの上(図4では下側)に、タンタルまたはニオブを母材とする陽極9の誘電体皮膜層上に導電性高分子層11を形成しグラファイト層12および銀ペースト層13を塗布・硬化することにより素子陰極部15を設けたタンタル固体電解コンデンサ素子21もしくはニオブ固体電解コンデンサ素子22を超音波、抵抗溶接、導電性接着銀等により電気的接続を行い作製される。
【0042】
本実施の形態では実装側に配置されたアルミニウム固体電解コンデンサ素子が主として低RSRおよび低ESLに寄与し、タンタルまたはニオブ固体電解コンデンサが大容量に寄与する。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の固体電解コンデンサについて、幾つかの実施例を挙げて比較例と共に具体的に説明する。
【0044】
(実施例1)
実施例1の固体電解コンデンサの端子配置は既に説明した図1と同様であり、外部陽極端子7および外部陰極端子8が千鳥に配置されている。また、本実施例の固体電解コンデンサの断面構造は実施の形態1で説明した図2と同様である。
【0045】
まず、アルミ電解コンデンサ用として販売されている粗面化した(エッチングした)アルミエッチング箔において、箔の厚みが350μm且つ残芯の厚みが50μmであり単位平方センチメートル当たりの箔容量が950μFで誘電体を形成する際の化成電圧が4Vの箔を選択した。次に、アジピン酸水溶液中で化成し、誘電体皮膜層を形成する。しかる後、図2を参照して、素子陽極部14と素子陰極部15とを区分するためのレジスト帯10を設けて、固体電解コンデンサ素子基体とする。その後、固体電解コンデンサ素子基体の素子陰極部15に、導電性高分子層11、グラファイト層12、銀ペースト層13を順次形成し、素子陽極部14に対してレーザーを用いて、陽極9を露出させ、この陽極9と陽極リードフレーム16を溶接して固体電解コンデンサ素子19aとする。
【0046】
さらに、前記固体電解コンデンサ素子19aを導電性接着銀を用いて3枚積層体を作製し、固体電解コンデンサ素子部20とする。そして、前記固体電解コンデンサ素子部20を、電極変換基板6に接続する。
【0047】
その電極変換基板6は、図2を参照すると、貫通穴を有する絶縁層1と前記貫通穴内部に絶縁層1の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビア2)と第2の導体層(陰極ビア3)とを千鳥に配置し、陰極ビア3上および陽極ビア2上にそれぞれ銅などの金属板もしくは金属箔からなる陰極電極板5および陽極電極板4を有すると共に、実装側では前記第1の導体層(陽極ビア2)および第2の導体層(陰極ビア3)に接続された外部陽極端子7および外部陰極端子8を千鳥に配置して備える。
【0048】
次に、外装材18として液晶ポリマーの蓋を被せて本実施例の固体電解コンデンサとする。
【0049】
この様にして得られた固体電解コンデンサ5個を120kHzのCap.値および1MHzのESR値を交流インピーダンスブリッジ法で1Vrms・DCバイアス0Vの条件にて測定した。また、ESLは固体電解コンデンサを所定の評価基板にクリーム半田で接続し、ネットワークアナライザを用いてS21特性を測定し、等価回路のシミュレーションを行うことにより算出し、その結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
実施例2の固体電解コンデンサの断面構造は実施の形態2で説明した図3と同様である。本実施例の固体電解コンデンサについて、その製造工程を含めて具体的に説明する。
【0051】
まず、粗面化した(エッチングした)アルミエッチング箔において、箔の厚みが150μmおよび350μm且つ残芯の厚みがいずれも50μmであり単位平方センチメートル当たりの箔容量が400μFおよび950μFで誘電体を形成する際の化成電圧が4Vの箔を選択した。次に、アジピン酸水溶液中で化成し、誘電体皮膜層を形成する。しかる後、図3を参照して、素子陽極部14と素子陰極部15とを区分するためのレジスト帯10を設けて、固体電解コンデンサ素子基体とする。次に、固体電解コンデンサ素子基体の素子陰極部15に、導電性高分子層11、グラファイト層12、銀ペースト層13を順次形成し、前記箔の厚み150μmを用いた固体電解コンデンサ素子19bとする。さらに、前記箔の厚み150μmを用いた固体電解コンデンサ素子19b上に導電性接着銀を用いて、前記箔の厚み350μmを用いた固体電解コンデンサ素子19aを2枚積層し、固体電解コンデンサ素子部20とする。そして、この固体電解コンデンサ素子部20を、電極変換基板6に接続する。
【0052】
この電極変換基板6は実施例1と同様であり、格子状に貫通穴を有する絶縁層1と前記貫通穴内部に絶縁層1の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビア2)と第2の導体層(陰極ビア3)とを千鳥に配置し、陰極ビア3上および陽極ビア2上にそれぞれ銅などの金属板もしくは金属箔などからなる陰極電極板5および陽極電極板4を備えると共に、実装側では前記第1の導体層(陽極ビア2)および第2の導体層(陰極ビア3)に接続された外部陽極端子7および外部陰極端子8を千鳥に配置して備える。
【0053】
この電極変換基板6上に固体電解コンデンサ素子部20を導電性接着銀により接続した後、さらに外装材18として液晶ポリマーの蓋を被せて本実施例の固体電解コンデンサとする。
【0054】
この様にして得られた固体電解コンデンサ5個を120kHzのCap.値および1MHzのESR値を交流インピーダンスブリッジ法で1Vrms・DCバイアス0Vの条件にて測定した。また、ESLは固体電解コンデンサを所定の評価基板にクリーム半田で接続し、ネットワークアナライザを用いてS21特性を測定し、等価回路のシミュレーションを行うことにより算出し、その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
実施例3の固体電解コンデンサの断面構造は実施の形態3で説明した図4と同様である。本実施例の固体電解コンデンサについて、その製造工程を含めて具体的に説明する。
【0056】
まず、アルミ電解コンデンサ用として販売されている粗面化した(エッチングした)アルミエッチング箔において、箔の厚みが150μm且つ残芯の厚みが50μmであり単位平方センチメートル当たりの箔容量が400μFで誘電体を形成する際の化成電圧が4Vの箔を選択した。次に、アジピン酸水溶液中で化成し、誘電体皮膜層を形成する。しかる後、素子陽極部14と素子陰極部15とを区分するためのレジスト帯10を設けて、固体電解コンデンサ素子基体とする。その後、固体電解コンデンサ素子基体の素子陰極部15に、導電性高分子層11、グラファイト層12、銀ペースト層13を順次形成し、固体電解コンデンサ素子19bとする。
【0057】
さらに、前記固体電解コンデンサ素子19b上にタンタルまたはニオブの母材の陽極9の誘電体皮膜層上に導電性高分子層11を形成し、グラファイト層12および銀ペースト層13を塗布・硬化することにより素子陰極部15を設けたタンタル固体電解コンデンサ素子21またはニオブ固体電解コンデンサ素子22を導電性接着銀により電気的接続を行い固体電解コンデンサ素子部20とする。そして、この固体電解コンデンサ素子部20を、電極変換基板6に接続する。
【0058】
この電極変換基板6は、実施例2と同様であり、格子状に貫通穴を有する絶縁層1と前記貫通穴内部に絶縁層1の表裏をほぼ貫通する第1の導体層(陽極ビア2)と第2の導体層(陰極ビア3)とを千鳥に配置し、陰極ビア3上および陽極ビア2上にそれぞれ銅などの金属板もしくは金属箔などからなる陰極電極板5および陽極電極板4を備えると共に、実装側では前記第1の導体層(陽極ビア2)および第2の導体層(陰極ビア3)にそれぞれ接続される外部陽極端子7および外部陰極端子8を千鳥に配置して備える。
【0059】
この電極変換基板6上に固体電解コンデンサ素子部20を導電性接着銀により接続した後、さらに外装材18として液晶ポリマーの蓋を被せて本実施例の固体電解コンデンサを得る。
【0060】
タンタル固体電解コンデンサ素子21を用いて得られた固体電解コンデンサ5個について120kHzのCap.値および1MHzのESR値を交流インピーダンスブリッジ法で1Vrms・DCバイアス0Vの条件にて測定した。また、ESLは固体電解コンデンサを所定の評価基板にクリーム半田で接続し、ネットワークアナライザを用いてS21特性を測定し、等価回路のシミュレーションを行うことにより算出し、その結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
図5は比較例1での図1のA−A面に相当する模式的断面図である。本比較例の固体電解コンデンサについて、その製造工程を含めて具体的に説明する。
【0062】
まず、アルミ電解コンデンサ用として販売されている粗面化した(エッチングした)アルミエッチング箔において、箔の厚みが150μm且つ残芯の厚みが50μmであり単位平方センチメートル当たりの箔容量が400μFで誘電体を形成する際の化成電圧が4Vの箔を選択した。次に、アジピン酸水溶液中で化成し、誘電体皮膜層を形成する。しかる後、素子陽極部14と素子陰極部15とを区分するためのレジスト帯10を設けて、固体電解コンデンサ素子基体とする。その後、固体電解コンデンサ素子基体の素子陰極部15に、導電性高分子層11、グラファイト層12、銀ペースト層13を順次形成し、素子陽極部14に対してレーザーを用いて、陽極9を露出させ、この陽極9と陽極リードフレーム16を溶接して固体電解コンデンサ素子19bとする。さらに、前記固体電解コンデンサ素子19bを導電性接着銀を用いて4枚積層体を作製し、固体電解コンデンサ素子部20とし、導電性接着銀により電極変換基板6上に接続し、外装材18として液晶ポリマーの蓋を被せて本比較例の固体電解コンデンサとする。
【0063】
この様にして得られた固体電解コンデンサ5個を120kHzのCap.値および1MHzのESR値を交流インピーダンスブリッジ法で1Vrms・DCバイアス0Vの条件にて測定した。また、ESLは固体電解コンデンサを所定の評価基板にクリーム半田で接続し、ネットワークアナライザを用いてS21特性を測定し、等価回路のシミュレーションを行うことにより算出し、その結果を上述した実施例1〜3と共に表1に示す。尚、外装材18の液晶ポリマーの蓋の高さは、実施例1〜3および本比較例において共通である。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の様に、実施例1では、比較例1の2倍近いCap.値(120Hz)が得られ、3.1mΩ以下のESR(1MHz)および82pH(100MHz)以下のESLが得られている。また、実施例2はESR(1MHz)およびESL(100MHz)に優れ、実施例3では低ESR(1MHz)および低ESL(100MHz)を確保しながら、特に高いCap.値(120MHz)が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1〜3、実施例1〜3および比較例1の固体電解コンデンサの端子配置を示す模式的底面図。
【図2】本発明の実施の形態1および実施例1での図1のA―A面に相当する模式的断面図。
【図3】本発明の実施の形態2および実施例2での図1のA―A面に相当する模式的断面図。
【図4】本発明の実施の形態3および実施例3での図1のA―A面に相当する模式的断面図。
【図5】比較例1での図1のA−A面に相当する模式的断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 絶縁層
2 陽極ビア
3 陰極ビア
4 陽極電極板
5 陰極電極板
6 電極変換基板
7 外部陽極端子
8 外部陰極端子
9 陽極
10 レジスト帯
11 導電性高分子層
12 グラファイト層
13 銀ペースト層
14 素子陽極部
15 素子陰極部
16 陽極リードフレーム
17 導電性接着銀
18 外装材
19a,19b 固体電解コンデンサ素子
20 固体電解コンデンサ素子部
21 タンタル固体電解コンデンサ素子
22 ニオブ固体電解コンデンサ素子
25 酸化皮膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属を陽極とし、該陽極の拡面化した表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有し、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、
前記弁作用金属が板状または箔状のアルミニウムであり、全体厚みが150μmを超え500μm以下であり、且つ残芯厚(アルミニウム全体の厚みからエッチングされた層の厚みを差し引いた厚み)が前記全体厚みの1/7〜1/5であり、
ほぼ貫通する穴が格子状に等ピッチで配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏をほぼ貫通するように交互に設けられた第1の導体群および第2の導体群を千鳥に配置して有する基材の一方の面上で前記第1の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陽極部が接続され且つ前記第2の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陰極部が接続され、他方の面上では前記第1の導体群および第2の導体群とそれぞれ導通する外部陽極端子および外部陰極端子が設けられてなる電極変換基板を有することを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
弁作用金属を陽極とし、該陽極の拡面化した表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有し、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、
前記弁作用金属が板状または箔状のアルミニウムであり、全体厚みおよび残芯厚(アルミニウム全体の厚みからエッチングされた層の厚みを差し引いた厚み)の少なくとも一方について互いに異なる2種類の固体電解コンデンサ素子を積層してなることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記2種類の固体電解コンデンサ素子のうち、
第1種の固体電解コンデンサ素子でのアルミニウムの全体厚みが150μmを超え400μm以下であり、且つ残芯厚が前記全体厚みの1/7〜1/3であって、
第2種の固体電解コンデンサ素子でのアルミニウムの全体厚みが150μm以下であり、且つ残芯厚が全体厚みの1/7〜1/3であることを特徴とする請求項2記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記第2種の固体電解コンデンサ素子を実装面側に配置したことを特徴とする請求項3記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記固体電解コンデンサ素子の陽極の一部および陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子へ接続される構成が、ほぼ貫通する穴が格子状に配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏をほぼ貫通するように交互に設けられた第1の導体群および第2の導体群を千鳥に配置して有する基材の一方の面上で前記第1の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陽極部が接続され且つ前記第2の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陰極部が接続され、他方の面上では前記第1の導体群および第2の導体群とそれぞれ導通する外部陽極端子および外部陰極端子が設けられてなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
弁作用金属を陽極とし、前記弁作用金属の表面に酸化皮膜を誘電体として備え、該誘電体上に導電性高分子を陰極として備える固体電解コンデンサ素子を複数個積層して有し、前記陽極の一部および前記陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子に接続された固体電解コンデンサにおいて、
前記固体電解コンデンサ素子の積層体が、板状または箔状のアルミニウムを母材として有するアルミニウム固体電解コンデンサ素子と、
タンタルもしくはニオブを母材として有するタンタル固体電解コンデンサ素子もしくはニオブ固体電解コンデンサ素子のいずれかとを積層してなることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記アルミニウム固体電解コンデンサ素子を実装面側に配置したことを特徴とする請求項6記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
前記固体電解コンデンサ素子の陽極の一部および陰極の一部がそれぞれ導出されて外部陽極端子および外部陰極端子へ接続される構成が、ほぼ貫通する穴が格子状に配置された絶縁層および前記穴内部に前記絶縁層の表裏をほぼ貫通するように交互に設けられた第1の導体群および第2の導体群を千鳥に配置して有する基材の一方の面上で前記第1の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陽極部が接続され且つ前記第2の導体群と前記固体電解コンデンサ素子の陰極部が接続され、他方の面上では前記第1の導体群および第2の導体群とそれぞれ導通する外部陽極端子および外部陰極端子が設けられてなることを特徴とする請求項6または7記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−305825(P2008−305825A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148954(P2007−148954)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)