説明

固体電解コンデンサ

【課題】付加的な部材を適用することなく、コンデンサ素子をリードフレームに精度よく確実に取り付けることのできるとともに、等価直列抵抗の低減が図られる固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】固体電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2a,2b、陽極リードフレーム10、陰極リードフレーム20およびモールド樹脂40を備えている。陽極リードフレーム10は、陽極端子部11と立ち上がり部12を備えている。立ち上がり部12は陽極端子部11と一体的に形成され、陽極端子部11からモールド樹脂40内を陽極部4へ向かって延在して陽極部4に接続されている。立ち上がり部12には、陽極部4を下方から支持するように受ける受部17と、陽極部4が受部17に受けられた状態で陽極部4の外周面を取り囲むようにして保持する囲み部18が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解コンデンサに関し、特に、所定のリードフレームにコンデンサ素子を搭載してモールド樹脂で封止した固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等に対して表面実装が可能な電子部品の一つに、固体電解コンデンサがある。図41あるいは図42に示すように、この種の固体電解コンデンサ101は、コンデンサ素子102、陽極リードフレーム110、陰極リードフレーム120およびこれらを封止するモールド樹脂140を備えている。コンデンサ素子102では、ほぼ柱状(直方体)の陽極体103から突出するように陽極部104が形成され、陽極体103の外周面に陰極部105が形成されている。陽極リードフレーム110は、まくら材180を介して陽極部104に電気的に接続され、陰極リードフレーム120は、直接陰極部105に電気的に接続されている。なお、まくら材の他に、所定の形状に成型された異形材を適用したものもある。
【0003】
この種の固体電解コンデンサ101は、以下のようにして製造される。まず、リードフレームを所定の形状に打ち抜くことによって、陽極リードフレームとなる部分および陰極リードフレームとなる部分が形成される。次に、陽極リードフレームとなる部分に導電性のまくら材が溶接される。次に、コンデンサ素子の陽極部を溶接されたまくら材に対して所定の位置に位置決めをするとともに、陰極部を陰極リードフレームとなる部分に対して所定の位置に位置決めをして、コンデンサ素子をリードフレームに取り付ける。
【0004】
次に、陽極リードフレームとなる部分、陰極リードフレームとなる部分およびコンデンサ素子を所定の金型を用いて囲い込み、その金型にモールド樹脂を注入することによって、コンデンサ素子等が封止される。その後、コンデンサ素子等を封止したモールド樹脂をリードフレームの所定の位置から切り離すことによって、固体電解コンデンサが完成する。固体電解コンデンサでは、陽極リードフレームの一部と陰極リードフレームの一部とがそれぞれ端子としてモールド樹脂から突出している。
【0005】
一方、陽極リードフレームとなる部分にまくら材を溶接する他に、コンデンサ素子の陽極部にまくら材を溶接する手法も提案されている。なお、この種の固体電解コンデンサを開示した文献の例として、特許文献1および特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−319113号公報
【特許文献2】特開2002−367862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の固体電解コンデンサ101では次のような問題点があった。上述したように、コンデンサ素子102の陽極部104と陽極リードフレーム110とを電気的に接続するために、陽極部104と陽極リードフレーム110との間にまくら材180を介在させている。そのため、コンデンサ素子102のリードフレームへの取り付けに際して付加的な部材が必要とされ、また、そのようなまくら材180のリードフレームへの溶接のための工程が増えて、製造コストの低減を阻害する要因の一つになった。
【0008】
また、まくら材180をコンデンサ素子102の陽極部104に溶接する際の溶接箇所や強度等のばらつきによって、コンデンサ素子102をリードフレームに精度よく取り付けることができず、固体電解コンデンサ101としての歩留まりが低下することがあった。さらに、陽極部104とまくら材180との接触面積が限られ、コンデンサ素子102の等価直列抵抗を低減するのに限界があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、付加的な部材を適用することなく、コンデンサ素子をリードフレームに精度よく確実に取り付けることのできるとともに、等価直列抵抗の低減が図られる固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極部および陰極部を有する複数のコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を封止するモールド樹脂と、前記モールド樹脂の内部において、前記コンデンサ素子の前記陽極部の下方から前記陽極部に接続された陽極リードフレームと、前記陰極部に接続される陰極リードフレームとを有し、複数の前記コンデンサ素子のそれぞれの前記陽極部は、同じ向きに配設されて前記陽極リードフレームに接続され、前記陽極リードフレームは、前記モールド樹脂の底面に沿って露出した陽極端子部と、前記陽極端子部と一体的に形成されて前記陽極部に接続される立ち上がり部とを備え、前記立ち上がり部は、前記陽極部を下方から支持するように受ける受部と、前記陽極部が前記受部に受けられた状態で、前記陽極部を取り囲むようにして保持する囲み部と、を備え、複数の前記コンデンサ素子のうち、互いに隣接する一のコンデンサ素子の一の陽極部と、他のコンデンサ素子の他の陽極部とに対して、前記囲み部は、前記一の陽極部では、前記他の陽極部の側から前記他の陽極部とは反対の側に向かって前記一の陽極部を取り囲むように形成され、前記他の陽極部では、前記一の陽極部の側から前記一の陽極部とは反対の側に向かって前記他の陽極部を取り囲むように形成された、固体電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、コンデンサ素子の陽極部は、モールド樹脂の外部から内部に一体的に延在する陽極リードフレームに下方から接続される。これにより、まくら材をリードフレームと陽極部との間に介在させていた固体電解コンデンサの場合と比べて、そのような付加的なまくら材が不要となり、また、そのようなまくら材をリードフレームに溶接する工程が不要となって、製造コストの削減を図ることができる。さらに、陽極部を受部に受けさせてこれを囲み部で保持することで、コンデンサ素子を陽極リードフレームに精度よく取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す固体電解コンデンサの正面図である。
【図3】同実施の形態において、図1に示す固体電解コンデンサの側面図である。
【図4】同実施の形態において、図1に示す固体電解コンデンサの上面図である。
【図5】同実施の形態において、固体電解コンデンサに適用されるリードフレームの一部を示すとともに、固体電解コンデンサの製造方法の一工程を示す部分斜視図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分斜視図である。
【図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分斜視図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分斜視図である。
【図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分正面図である。
【図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分正面図である。
【図11】同実施の形態において、図10に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分正面図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分正面図である。
【図13】同実施の形態において、図12に示す工程における部分斜視図である。
【図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分斜視図である。
【図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行なわれる工程を示す部分斜視図である。
【図16】同実施の形態において、立ち上がり部の作用効果を説明するための部分斜視図である。
【図17】同実施の形態において、立ち上がり部の作用効果を説明するための、立ち上がり部を模式的に示す部分斜視図である。
【図18】比較例に係る立ち上がり部を模式的に示す部分斜視図である。
【図19】同実施の形態において、立ち上がり部の作用効果を説明するための部分側面図である。
【図20】同実施の形態において、陰極リードフレームの側面部の変形例を示す側面図である。
【図21】同実施の形態において、図20に示す固体電解コンデンサを示す上面図である。
【図22】比較例に係る固体電解コンデンサのモールド樹脂による封止工程を示す部分断面図である。
【図23】同実施の形態において、固体電解コンデンサのモールド樹脂による封止工程を示す部分断面図である。
【図24】同実施の形態において、陽極リードフレームの第1の変形例を示す正面図である。
【図25】同実施の形態において、図24に示す陽極リードフレームの囲み部を傾ける前の状態を示す正面図である。
【図26】同実施の形態において、陽極リードフレームの第2の変形例に適用されるリードフレームを示す部分平面図である。
【図27】同実施の形態において、図26に示すリードフレームを適用した固体電解コンデンサを示す正面図である。
【図28】同実施の形態において、図26に示すリードフレームを適用した固体電解コンデンサを示す側面図である。
【図29】同実施の形態において、陽極リードフレームの第3の変形例に適用されるリードフレームを示す部分平面図である。
【図30】同実施の形態において、図29に示すリードフレームを適用した固体電解コンデンサを示す正面図である。
【図31】同実施の形態において、図29に示すリードフレームを適用した固体電解コンデンサを示す側面図である。
【図32】同実施の形態において、陽極リードフレームの第4の変形例を適用した固体電解コンデンサを示す平面図である。
【図33】同実施の形態において、図32に示す固体電解コンデンサを示す側面図である。
【図34】同実施の形態において、図32に示す固体電解コンデンサを示す上面図である。
【図35】同実施の形態において、図32に示す固体電解コンデンサを示す後面図である。
【図36】同実施の形態において、陽極リードフレームの第5の変形例を適用した固体電解コンデンサを示す正面図である。
【図37】同実施の形態において、図36に示す固体電解コンデンサを示す側面図である。
【図38】同実施の形態において、図37に示す固体電解コンデンサを示す上面図である。
【図39】同実施の形態において、搭載されるコンデンサ素子が1つの場合の固体電解コンデンサを示す正面図である。
【図40】同実施の形態において、搭載されるコンデンサ素子が3つの場合の固体電解コンデンサを示す正面図である。
【図41】従来の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【図42】従来の他の固体電解コンデンサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
固体電解コンデンサ
本発明の実施の形態に係る固体電解コンデンサについて説明する。図1〜図4に示すように、固体電解コンデンサ1は、2つのコンデンサ素子2,2a,2b、陽極リードフレーム10、陰極リードフレーム20およびこれらを封止するモールド樹脂40を備えている。コンデンサ素子2では、ほぼ柱状(直方体)の陽極体3から突出するように陽極部4が形成され、陽極体3の外周面に陰極部5が形成されている。また、2つのコンデンサ素子2a,2bは、それぞれの陽極部4が同じに向きになるように配設されている。
【0014】
陽極リードフレーム10は、陽極端子部11と立ち上がり部12を備えている。陽極端子部11は、モールド樹脂40の底面に沿って露出している。陽極端子部11の上面11aは、モールド樹脂40の底面40aに直接接しており、上面11aと底面40aとはほぼ同一平面上に位置している(図2および図3参照)。立ち上がり部12は陽極端子部11と一体的に形成されている。その立ち上がり部12は、陽極端子部11におけるコンデンサ素子3の陰極部5に近い側の端からモールド樹脂40内を陽極部4へ向かって延在し、2つのコンデンサ素子2a,2bのそれぞれの陽極部4の下方から陽極部4に接続されている。
【0015】
その立ち上がり部12には、陽極部4を下方から支持するように受ける受部17が形成されている。受部17は、陽極部4の外周面に接触(面接触)するように外周面に対応した形状に形成されている。また、陽極部4が受部17に受けられた状態で陽極部4の外周面を取り囲むようにして保持する囲み部18が形成されている。この囲み部18は、立ち上がり部12の上端部において上方に向けて角状に突出した突起を、陽極部4を取り囲むように傾けることによって形成されている。
【0016】
さらに、立ち上がり部12では、陽極端子部11から立ち上がり部12が延在する方向と直交する方向の一方と他方のそれぞれの側端部12bが、コンデンサ素子2の陰極部5から遠ざかる方向へ曲げられている(図1および図4参照)。
【0017】
陰極リードフレーム20は、陰極端子部21、一対の側面部22および段差部23を備えている。陰極端子部21は、モールド樹脂40の底面に沿って露出している。陰極端子部21の上面21aは、モールド樹脂40の底面40aに直接接しており、上面21aと底面40aとはほぼ同一平面上に位置している(図3参照)。一対の側面部22は、その陰極端子部21から段差部23を介してモールド樹脂40内に延在し、コンデンサ素子2の陽極体3を挟み込むように互いに対向するように立設されている。その側面部22には、陽極部4が位置する側とは反対の側に向かって延在する延在部24が設けられている。
【0018】
リードフレーム
次に、固体電解コンデンサ1の陽極リードフレーム10および陰極リードフレーム20となるリードフレームについて説明する。図5に示すように、リードフレーム30は、所定の幅(矢印92に示す方向)を有して帯状に延びる(矢印93に示す方向)薄い板金を、所定の形状に打ち抜くことによって形成される。なお、矢印92に示す方向は短手方向とされ、矢印93に示す方向は長手方向とされる。陽極リードフレームとなる部分31は、リードフレーム30の短手方向の一端側から短手方向の中央付近に向かって延在する部分30aに形成されている。その部分30aでは、陽極端子部11および立ち上がり部12が平面的に展開された形状に打ち抜かれている。陽極端子部11と立ち上がり部12とが繋がっている部分では、立ち上がり部12を上方に向けて曲げる際の曲げ精度を確保するために、湾状に打ち抜かれたくびれが形成されている。さらに、陽極リードフレームとなる部分31の近傍には、完成した固体電解コンデンサをプリント配線基板等へはんだ付けするためのフィレット孔33が形成されている。
【0019】
一方、陰極リードフレームとなる部分32は、リードフレーム30の短手方向の他端側から短手方向の中央付近に向かって延在する部分30bに形成されている。その部分30bでは、陰極端子部21、側面部22および段差部23が平面的に展開された形状に打ち抜かれている。側面部22に設けられる延在部24は、陽極リードフレームとなる部分31との接触を避けるために、陽極リードフレームとなる部分31が形成されている側とは反対側に向かって形成されている。また、側面部22と陰極端子部21とが繋がっている部分では、側面部22を上方に向けて曲げる際の曲げ精度を確保するために、湾状に打ち抜かれたくびれが形成されている。さらに、陰極リードフレームとなる部分32の近傍には、完成した固体電解コンデンサをプリント配線基板等へはんだ付けするためのフィレット孔34が形成されている。
【0020】
固体電解コンデンサの製造方法
次に、固体電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。まず、図5に示すように、陽極リードフレームとなる部分31および陰極リードフレームとなる部分32を平面的に展開した形状に打ち抜いたリードフレーム30が形成される(プレス打ち抜き工程)。次に、リードフレーム30が所定のリール(図示せず)に巻き取られて、所定のめっき処理が施される(めっき工程)。このめっき処理は、次のプレス曲げ工程の前に行うことで、リールにより多くのリードフレームを巻き取って、効率よくめっき処理を施すことができる。
【0021】
次に、図6に示すように、リードフレーム30にプレス曲げ加工が施される(プレス曲げ工程)。陽極リードフレームとなる部分31では、陽極端子部11に対して立ち上がり部12が上方に向けて曲げられる。また、立ち上がり部12の側端部12bが、陰極リードフレームとなる部分32が位置する側とは反対の側に曲げられる。陰極リードフレームとなる部分32では、陰極端子部21に対して段差部23が形成され、側面部22が上方に向けて曲げられる。このとき、曲げられる部分にくびれが形成されていることで、立ち上がり部12等を所定の位置で所定の角度だけ精度よく曲げることができる。
【0022】
次に、コンデンサ素子2がリードフレーム30に載置される(載置工程)。図7に示すように、まず、2つのコンデンサ素子2のうちの一方のコンデンサ素子2aの陽極部4が受部17に受けられ、陰極部5が1対の側面部22のうちの一方の側面部22に接触するように、リードフレーム30に載置される。次に、他方のコンデンサ素子2bの陽極部4が受部17に受けられ、陰極部5が1対の側面部22のうちの他方の側面部22に接触するように、リードフレーム30に載置される。こうして、図8に示すように、2つのコンデンサ素子2がリードフレーム30の所定の位置に載置される。この段階では、囲み部1
8は、立ち上がり部12の上端部から上方に角状に突出した状態にある。
【0023】
次に、各コンデンサ素子2a,2bの陽極部4をリードフレームに保持する処理が行なわれる(保持工程)。図9に示すように、所定角度の先端部を有する治具55を、角状に突出した一方の囲み部18と他方の囲み部18との間に先端部が位置するように囲み部18に接触させる。次に、図10に示すように、その治具55を下降させることによって、2つの囲み部18は、上方から間隔を徐々に広げながら傾けられる。次に、図11に示すように、治具55に代わって、台形状の治具56を囲み部18に接触させる。次に、図12に示すように、治具56を下降させることによって、2つの囲み部18は陽極部4を取り囲むように倒される。こうして、図13に示すように、2つのコンデンサ素子2の陽極部4が立ち上がり部12に保持される。
【0024】
次に、モールド樹脂による封止が行なわれる(封止工程)。コンデンサ素子2が保持されたリードフレーム30は、所定の金型に装着される。金型は、上金型と下金型からなり、上金型および下金型の少なくとも一方には、モールド樹脂が注入されるキャビティが形成されている。そのキャビティ内にモールド樹脂が充填される。こうして、図14に示すように、リードフレーム30に溶接されたコンデンサ素子2、陽極リードフレームとなる部分および陰極リードフレームとなる部分が、モールド樹脂40によって封止されることになる。
【0025】
次に、コンデンサ素子2を封止したモールド樹脂40が、リードフレーム30から切り離される。このとき、陽極リードフレームとなる部分に形成されたフィレット孔33の開口側壁面33aの一部が残される所定の位置(点線参照)でリードフレーム30が切断され、同様に、陰極リードフレームとなる部分に形成されたフィレット孔34(図5等参照)の開口側壁面の一部が残される所定の位置でリードフレーム30が切断される。残された開口側壁面33a等の部分に施されためっきは、固体電解コンデンサをプリント配線基板等に実装する際にはんだを導く機能を果たすことになる。こうして、図15に示すように、コンデンサ素子2等がモールド樹脂40によって封止された固体電解コンデンサ1が完成する。
【0026】
上述した固体電解コンデンサ1では、コンデンサ素子2の陽極部4は、リードフレーム30を曲げ加工することによって、陽極端子部11と一体的に形成された立ち上がり部12に溶接される。これにより、まくら材等をリードフレームと陽極部との間に介在させていた従来の固体電解コンデンサの場合と比べて、そのような付加的なまくら材等が不要となり、また、そのようなまくら材等をリードフレームに溶接する工程が不要となって、製造コストの削減を図ることができる。
【0027】
また、図15に示すように、その立ち上がり部12には、受部17および囲み部18が形成されている。保持工程(図9〜図12参照)では、所定の治具55,56を用い、一方の囲み部18がコデンサ素子2aの陽極部4aを取り囲み、他方の囲み部18がコンデンサ素子2bの陽極部を取り囲む態様で、一対の囲み部18を上方から徐々に間隔を広げながら傾けることによって、各陽極部4を囲み部18に保持させることができる。これにより、溶接によって陽極部4を陽極リードフレーム10に取り付ける場合と比較して、そのような溶接に伴う熱歪が陽極リードフレーム10に生じることがない。
【0028】
さらに、図16に示すように、陽極部4の外周面を取り囲むように囲み部18を傾けることによって、陽極部4と陽極リードフレーム10との接触面積(面接触)を確保することができる。また、導電性ペースト(図示せず)を用いて、陽極リードフレーム10と陽極部4との隙間を埋めることで、接触面積をさらに広げることができる。その結果、コンデンサ素子2が有する抵抗成分である等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resist
ance)を低減することができる。なお、導電性ペーストには、温度約100℃〜200℃のもとで熱処理が施されることになるが、この熱処理に伴う熱歪は、溶接に伴う熱歪と比べて無視しうる程度に小さい。
【0029】
そして、コンデンサ素子2の陽極部4が受部17に受けられた状態で、陽極部4が囲み部18によって保持されることになる。これにより、コンデンサ素子2をリードフレーム30における所定の位置に精度よく保持することができる。
【0030】
さらに、立ち上がり部12では、側端部12bがコンデンサ素子2の陰極部5から遠ざかる方向へ曲げられている。これにより、所定の治具55,56により一対の囲み部18を傾ける際の押圧力によって立ち上がり部12が変形したり、倒れようとするのを確実に阻止することができる。また、側端部12が曲がっていることで、モールド樹脂40との密着性も向上する。
【0031】
また、図17に示すように、立ち上がり部12は、陽極端子部11におけるコンデンサ素子2の陰極部5に近い側の端からコンデンサ素子2の陽極部4へ向かって延在するように形成されている。これにより、図18に示すように、陽極端子部111の一部を切り起こして陽極部104に接触する立ち上がり部112が形成されている比較例の場合と比べて、図19に示すように、陽極端子部11から立ち上がり部12が立ち上げられる位置を、距離Lだけコンデンサ素子2の側に接近させることができる。その結果、陽極部4と陽極端子11間の抵抗を下げることができる。さらに、コンデンサ素子を距離Lだけ大きくすることができて、体積効率を向上させることができる。
【0032】
また、図4等に示すように、上述した固体電解コンデンサ1の陰極リードフレーム20では、互いに対向するように一対の側面部22が設けられている。これにより、コンデンサ素子2をリードフレーム30に載置する際に、一方の側面部22と他方の側面部22との間の領域にコンデンサ素子2を載置すればよく、リードフレーム30に対するコンデンサ素子2の位置合わせが容易になる。
【0033】
また、その側面部22に延在部24を設けることで、コンデンサ素子2の陰極部5と陰極リードフレーム20との接触面積を増やすことができる。これにより、コンデンサ素子2が有するESRを低減することができる。
【0034】
さらに、図20に示すように、側面部22にスリット25を設けて、側面部22aと側面部22bとに分けてもよい。これにより、側面部22を陰極部5に確実に接触させることができる。陰極部5には、陰極部5を銀ペーストに浸漬して引き上げることによって銀ペーストがコーティングされている。そのため、陰極部5では、銀ペーストの溜り6ができることがある。このとき、図21に示すように、側面部22を側面部22aと側面部22bとに分けることで、銀ペーストの溜り6がある部分には側面部22bを接触させ、銀ペーストの溜り6がない部分には側面部22aを接触させることができ、スリットが形成されていない側面部の場合と比較して、側面部22と陰極部5との接触面積を確保することができる。
【0035】
また、上述した固体電解コンデンサ1では、モールド樹脂40の底面40aは、陽極端子部11の上面11aおよび陰極端子部21の上面21aに直接接触している。すなわち、底面40aと上面11a,21aとはほぼ同一平面上に位置している。これにより、金型のキャビティーの端部をフィレット孔により接近させて、キャビティーの容積をより多く確保することができる。このことについて、比較例に係る固体電解コンデンサとの関係で説明する。
【0036】
まず、比較例に係る固体電解コンデンサでは、モールド樹脂の底面は、陽極端子部の下面および陰極端子部の下面とほぼ同じ位置になるように形成される。図22に示すように、モールド樹脂を充填する工程では、モールド樹脂が陽極リードフレームとなる部分131あるいは陰極リードフレームとなる部分132の表面上に漏れ出ないように、リードフレームの表面にポリイミド等からなる絶縁テープ170が貼り付けられる。また、この絶縁テープ170は、リードフレーム130に形成されたフィレット孔133,134を塞ぐように貼り付けられる。モールド樹脂の注入圧力によって、絶縁テープ170とリードフレーム130との間にモールド樹脂が流れ込んでフィレット孔133,134に漏れ出ないように、キャビティ162aの端部とフィレット孔133,134とは所定の距離Sだけ隔てられている。
【0037】
上金型161には、この絶縁テープ170の厚みを考慮した凹み161aが形成されている。上金型161と下金型162とは、絶縁テープ170が貼り付けられている部分以外の部分において締め付け力(矢印190,191)が付与され、下金型162に形成されたキャビティー162aにモールド樹脂が注入されて、コンデンサ素子等が封止されることになる。なお、矢印164は、上金型161と下金型162の割り面(合わせ目)の位置を示す。
【0038】
これに対して、上述した固体電解コンデンサ1では、モールド樹脂の底面は、陽極端子部の上面および陰極端子部の上面とほぼ同じ位置になるように形成される。図23に示すように、モールド樹脂を充填する工程では、リードフレームに絶縁テープを貼り付ける必要がないため、上金型61と下金型62とは、キャビティー62aのごく近傍において締め付け力(矢印90,91)を付与することができる。すなわち、キャビティ62aの端部とフィレット孔33,34との距離を距離Sから距離Tに縮めることができる。また、リードフレーム(陽極端子部11、陰極端子部21)がモールド樹脂40から突出する距離が短くなることで、梱包時や輸送時に起こり得る引っ掛かり等による不良の発生を低減することができる。なお、矢印64は、上金型61と下金型62の割り面(合わせ目)の位置を示す。
【0039】
このように、上述した固体電解コンデンサでは、上金型61と下金型62とを、キャビティー62aのごく近傍において締め付けることができるため、キャビティー62aをフィレット孔33,34のごく近傍にまで接近させることができる。これにより、同じフィレット孔33,34の位置に対して、キャビティーの容積をより多く確保することができて、モールド樹脂40に封止されるコンデンサ素子として、サイズのより大きなコンデンサ素子を搭載することができる。また、陽極端子部11および陰極端子部21が、モールド樹脂40から突出する距離がより短くなって、梱包時や輸送時に起こり得る引っ掛かり等による不良の発生を低減することができる。なお、2点鎖線は比較例に係る下金型のキャビティの端を示す。
【0040】
また、上金型61がリードフレーム(裏面)に直接接触した状態で、上金型61と下金型62とでリードフレームを挟み込むことで、陽極端子部11の裏面や陰極端子部21の裏面にモールド樹脂が流れ込むのを確実に阻止することができる。
【0041】
陽極リードフレームの変形例
固体電解コンデンサ1の陽極リードフレームの立ち上がり部12に形成される囲み部18として、図2等に示される囲み部18の他に、図24に示すように、たとえば、一つの陽極部4に対して2つの囲み部18a,18bを設けるようにしてもよい。この場合には、図25に示すように、立ち上がり部12の上端部に角状に突出する囲み部18a,18bを互いに陽極部4の側に傾けることによって、陽極部4が保持される。そして、この場合には、2つの囲み部18a,18bが陽極部4に接触することで、ESRをさらに低減
することができる。
【0042】
また、上述した固体電解コンデンサ1の囲み部18では、囲み部18における打ち抜き断面の部分がコンデンサ素子2の陽極部4に接触している。この他に、所定の幅を有する部分が、陽極部に接触するような囲み部としてもよい。この場合には、図26に示すように、リードフレームとして、陽極リードフレームとなる部分31に、所定の幅Wを有する囲み部18が平面的に展開された形状に打ち抜かれたリードフレーム30が適用される。保持工程では、幅Wの囲み部18をコンデンサ素子2の陽極部4に巻き付けることで、コンデンサ素子2が陽極リードフレームに保持されることになる。図27および図28に示すように、この固体電解コンデンサ1では、陽極部4が幅Wの囲み部18によって保持されて、陽極部4と囲み部18とを複数箇所で幅Wに相当する長さの線接触をさせることができる。これにより、囲み部18と陽極部4との接触面積が確保されて、ESRの低減に寄与することができる。
【0043】
また、リードフレームとしては、図26に示されるリードフレーム30の他に、図29に示すように、立ち上がり部12により大きな抜きのパターンを形成したリードフレーム30でもよい。図30および図31に示すように、このようなリードフレームを適用した固体電解コンデンサ1においても、陽極部4と囲み部18とを複数箇所で幅Wに相当する長さの線接触をさせることができて、ESRの低減に寄与することができる。
【0044】
さらに、固体電解コンデンサ1の囲み部として、所定の幅を有する部分が陽極部に線接触するような囲み部の他に、その所定の幅を有する部分が陽極部に面接触するような囲み部としてもよい。この場合には、図32、図33および図34に示すように、囲み部18が陽極部4に面接触することで、ESRの低減をさらに図ることができる。また、図33、図34および図35に示すように、側面部22にスリット25を設けて側面部22aと側面部22bとすることで、陰極部5において銀ペーストの溜り6がある部分には側面部22bを接触させ、銀ペーストの溜り6がない部分には側面部22aを接触させることができ、スリットが形成されていない側面部の場合と比較して、側面部22と陰極部5との接触面積を確保することができる。
【0045】
また、所定の幅を有する部分が陽極部に接触する囲み部において、その所定の幅を有する部分に幅方向に複数の折り目を入れるようにしてもよい。この場合には、図36、図37および図38に示すように、所定の幅を有する部分が折り目18aに沿って容易に折り曲げられて、囲み部18を陽極部4に確実に接触(線接触)させることができる。折り目18aの数を増やすことで、所定の幅を有する部分と陽極部4との線接触箇所を増やすことができ、ESRの低減に寄与することができる。
【0046】
コンデンサ素子の数のバリエーション
上述した固体電解コンデンサ1では、2つのコンデンサ素子2を搭載した固体電解コンデンサ1を例に挙げて説明した(図1等参照)。コンデンサ素子2の数としては、2つのものに限られるものではなく、図39に示すように、1つのコンデンサ素子2を搭載した固体電解コンデンサ1でもよい。また、図40に示すように、3つのコンデンサ素子2を搭載した固体電解コンデンサ1としてもよい。さらには、4つ以上のコンデンサ素子を搭載した固体電解コンデンサ(図示せず)としてもよい。図41および図42では、図2に示す固体電解コンデンサ1と同一部材には同一符号が付されている。
【0047】
なお、上述した固体電解コンデンサの製造方法では、曲げ加工によって囲み部によって、コンデンサ素子の陽極部を立ち上がり部へ保持させる方法を例に挙げて説明したが、この後に、導電性ペーストを使用して陽極部と立ち上がり部等との隙間を埋めるようにしてもよい。この場合には、陽極部と立ち上がり部との接続がより強固になるとともに、陽極
部と立ち上がり部との接触面積も増えて、ESRを低減することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 固体電解コンデンサ、2,2a,2b コンデンサ素子、3 陽極体、4 陽極部、5 陰極部、6 銀ペーストの溜り、10 陽極リードフレーム、11 陽極端子部、12 立ち上がり部、12a 上端部、12b 側端部、17 受部、18,18a,18b 囲み部、20 陰極リードフレーム、21 陰極端子部、22 側面部、23 段差部、24 延在部、25 スリット、30 リードフレーム、31 陽極リードフレームとなる部分、32 陰極リードフレームとなる部分、33 開口部、33a 開口側壁面、34 開口部、40 モールド樹脂、40a 底面、55,56 治具、60 金型、61 上金型、62 下金型、62a キャビティ、63 樹脂注入口、64 割り面、90、91、95 矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部および陰極部を有する複数のコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を封止するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂の内部において、前記コンデンサ素子の前記陽極部の下方から前記陽極部に接続された陽極リードフレームと、
前記陰極部に接続される陰極リードフレームと
を有し、
複数の前記コンデンサ素子のそれぞれの前記陽極部は、同じ向きに配設されて前記陽極リードフレームに接続され、
前記陽極リードフレームは、
前記モールド樹脂の底面に沿って露出した陽極端子部と、
前記陽極端子部と一体的に形成されて前記陽極部に接続される立ち上がり部と
を備え、
前記立ち上がり部は、
前記陽極部を下方から支持するように受ける受部と、
前記陽極部が前記受部に受けられた状態で、前記陽極部を取り囲むようにして保持する囲み部と、
を備え、
複数の前記コンデンサ素子のうち、互いに隣接する一のコンデンサ素子の一の陽極部と、他のコンデンサ素子の他の陽極部とに対して、
前記囲み部は、
前記一の陽極部では、前記他の陽極部の側から前記他の陽極部とは反対の側に向かって前記一の陽極部を取り囲むように形成され、
前記他の陽極部では、前記一の陽極部の側から前記一の陽極部とは反対の側に向かって前記他の陽極部を取り囲むように形成された、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極リードフレームは、
前記モールド樹脂の底面に沿って露出した陽極端子部と、
前記陽極端子部と一体的に形成されて前記陽極部に接続される立ち上がり部と
を含み、
前記立ち上がり部に、前記受部および前記囲み部が形成された、請求項1記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記受部は、前記陽極部の表面に面接触する面接触部を含む、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記受部は、前記陽極部の表面に線接触する線接触部を含む、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記陽極部は前記コンデンサ素子の本体からワイヤー状に突出し、
前記囲み部は、前記陽極部が突出する方向と交差する方向の一方から前記陽極部を取り囲むように形成された、請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
前記囲み部は、前記陽極部が突出する方向と交差する方向の一方と他方とから前記陽極を挟み込む態様で形成された、請求項5記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2012−156567(P2012−156567A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118344(P2012−118344)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2007−317415(P2007−317415)の分割
【原出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)