固体電解コンデンサ
【課題】ハウジングとリードフレームの境目から水分がコンデンサ素子に達することを防ぐ。
【解決手段】陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、陽極部に接続された陽極端子と、陰極部に接続された陰極端子と、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子を被覆するハウジングとを備え、陽極端子の一部と陰極端子の一部とがハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、陰極端子は、ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、第1部分より厚みが薄く、ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、第2部分および第3部分は、第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【解決手段】陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、陽極部に接続された陽極端子と、陰極部に接続された陰極端子と、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子を被覆するハウジングとを備え、陽極端子の一部と陰極端子の一部とがハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、陰極端子は、ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、第1部分より厚みが薄く、ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、第2部分および第3部分は、第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサ素子を並列に配列した固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図9に示すチップ型の固体電解コンデンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固体電解コンデンサ(1)は、下面にリードフレーム(9)(90)が取り付けられたコンデンサ素子(2)を具え、該コンデンサ素子(2)は合成樹脂製のハウジング(70)にて覆われる。コンデンサ素子(2)は、図10に示すように、弁金属の箔である陽極体(20)に、誘電体酸化被膜(21)を形成し、該誘電体酸化被膜(21)の一部上に、陰極層(3)、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に設け、これを複数枚重ねて形成される。即ち、陽極体(20)上にて陰極層(3)を形成した部分が陰極部(2b)、残りの部分が陽極部(2a)となる。陽極体(20)(20)は複数枚重ねられて、陽極部(2a)が抵抗溶接により陽極側リードフレーム(9)に、陰極部(2b)が導電性接着剤により陰極側リードフレーム(90)に取り付けられる。これによって、静電容量を大きくしている。
【0004】
コンデンサ素子(2)の製造方法を示す。先ずアルミニウム箔のシートを切り出して帯状の陽極体(20)を形成し、この陽極体(20)の一部を0.01〜0.02wt%の燐酸水溶液又はアジピン酸水溶液内に浸して電解酸化処理し、誘電体酸化被膜(21)を形成する。次に、ブタノールを溶媒とした3,4−エチレンジオキシチオフェン、P−トルエンスルホン酸第2鉄の溶液に、陽極体(20)の誘電体酸化被膜(21)の形成部分を浸漬し、ポリチオフェンである導電性高分子から成る陰極層(3)を形成する。この陰極層(3)上に、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に形成する。複数枚の陽極体(20)(20)を重ね、陽極部(2a)(2a)を溶接して、コンデンサ素子(2)が完成する。
【0005】
尚、陰極層(3)を形成する材料には、前記ポリチオフェンの他に、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン等の導電性高分子、TCNQ(7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン)錯塩等が挙げられる。陰極層(3)に抵抗値の低い導電体高分子等を用いることにより、ESRを小さくして、高周波特性に優れたコンデンサを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO00/74091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、斯種コンデンサは高周波領域で用いられることが多く、コンデンサの特性としてESR(等価直列抵抗)のみならず、ESL(等価直列インダクタンス)を低くすることが求められている。図9に示す構造では、陽極側及び陰極側リードフレーム(9)(90)の間隔が空いているから、ESLが大きくなる。また、静電容量の増加及びESRの低減を目的として、積層する陽極体(20)(20)の枚数を多くすると、コンデンサを低くすることを求めている市場の要求を満たすことができない可能性もある。
【0008】
この点を解決すべく、図11に示すように、コンデンサが実装される基板(4)上のパターン(40)にてコンデンサ(1)(1)を並列に接続することが考えられる。図12は、図11の等価回路図である。例えば、コンデンサ(1)の容量をC1とし、ESLをL1とすると
、2つのコンデンサ(1)(1)を並列接続した場合の合成容量は2×C1であり、合成ESLはL1/2となる。これにより、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、且つESLを低減できるとも考えられる。
【0009】
しかし、これでは各コンデンサ(1)のリードフレーム(9)(90)を個別に基板(4)に実装するから、基板(4)とリードフレーム(9)(90)の接触抵抗が大きくなり、実際はESLも増加する。また、隣り合うコンデンサ(1)(1)間に隙間(図11のP)ができるため、余分な実装スペースが必要となる。
【0010】
本発明の目的は、コンデンサを低くしつつ、ESLを小さくし、余分な実装スペースをなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、陽極部に接続された陽極端子と、陰極部に接続された陰極端子と、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子を被覆するハウジングとを備え、陽極端子の一部と陰極端子の一部とがハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、陰極端子は、ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、第1部分より厚みが薄く、ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、第2部分および第3部分は、第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0012】
互いに対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)が、1つの陽極側リードフレーム(9)に取り付けられることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長(図12のS)を短くすることができる。これにより、ESLを低減することができる。
【0013】
また、従来は静電容量を大きくし、ESRを低減するには、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を増やしていた。しかし、本例では複数のコンデンサ素子(2)(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置し共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けるから、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、コンデンサを低くすることができる。
【0014】
また、陽極側リードフレーム(9)と2つの陰極側リードフレーム(90)(90)を有しているため、陽極体(20)の積層数が異なるコンデンサ素子(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置することにより、陽極側リードフレーム(9)と、1:一方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、2:他方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、3:両方の陰極側リードフレーム(90)(90)を接続した場合に夫々異なる3種類の静電容量を取り出すことが可能になり、回路基板等に配置するコンデンサの数を減らすことができる。
【0015】
更に、陽極部(2a)(2a)を対向させたコンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、複数設け、アレイ状に配列することもできる。これにより、複数のコンデンサ素子(2)(2)が1つの陽極側リードフレーム(9)を共有するから、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】固体電解コンデンサの断面図である。
【図2】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図3】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図4】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図5】本例の固体電解コンデンサ、及び従来の固体電解コンデンサのインピーダンス特性を比較して示すグラフである。
【図6】別の固体電解コンデンサの斜視図である。
【図7】図6に示す固体電解コンデンサの製造工程を示す平面図である。
【図8】図6に示す固体電解コンデンサの製造工程を示す平面図である。
【図9】従来の固体電解コンデンサの断面図である。
【図10】コンデンサ素子を構成する陽極体の断面図である。
【図11】基板上にコンデンサを並列に配置した平面図である。
【図12】図11の等価回路図である。(第1実施例) 以下、本発明の一例を図を用いて詳述する。
【0017】
図1は、固体電解コンデンサ(1)の断面図である。固体電解コンデンサ(1)は、複数枚の陽極体(20)(20)を重ねて、陽極部(2a)を互いに溶接したコンデンサ素子(2)を具えている。陰極部(2b)は、誘電体酸化被膜(21)上に、陰極層(3)、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に設けて形成される点は、従来と同様である。コンデンサ素子(2)は合成樹脂製のハウジング(70)にて覆われ、ハウジング(70)の下面からは陽極側リードフレーム(9)及び陰極側リードフレーム(90)(90)が露出している。
【0018】
図1に示すように、コンデンサ素子(2)(2)は、リードフレーム(9)(90)の配列方向、即ち横方向に沿って2つ設けられ、互いの陽極部(2a)(2a)を内側に向けて対向させている。ハウジング(70)の下面にて、リードフレーム(9)(90)の配列方向に沿う中央部に、陽極側リードフレーム(9)が設けられ、該陽極側リードフレーム(9)を挟んで、2つの陰極側リードフレーム(90)(90)が設けられる。陽極側リードフレーム(9)と各陰極側リードフレーム(90)は開口(92)を挟んで位置する。
【0019】
両コンデンサ素子(2)(2)の陽極部(2a)(2a)は、共通の陽極側リードフレーム(9)に抵抗溶接により取り付けられる。即ち、コンデンサ素子(2)(2)は並列接続される。互いに反対側を向いた陰極部(2b)(2b)は導電性接着剤により各陰極側リードフレーム(9)(90)に取り付けられる。各リードフレーム(9)(90)には凹面(91)(91)が形成され、該凹面(91)(91)をハウジング(70)を構成する樹脂で充填することにより、陽極側リードフレーム(9)の抵抗溶接跡を隠している。また、凹面(91)(91)と両リードフレーム(9)(90)の境目から水分が進入して、コンデンサ素子(2)に達することを防いでいる。
【0020】
本例では、互いに対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)が、1つの陽極側リードフレーム(9)に取り付けられ、並列配置されることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長(図12のS)を短くすることができる。これにより、ESLを低減することができる。
【0021】
また、従来は静電容量を大きくし、ESRを低減するには、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を増やしていた。しかし、本例では複数のコンデンサ素子(2)(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置し共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けるから、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、コンデンサを低くすることができる。
【0022】
また、陽極側リードフレーム(9)と2つの陰極側リードフレーム(90)(90)を有しているため、陽極体(20)の積層数が異なるコンデンサ素子(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置することにより、陽極側リードフレーム(9)と、1:一方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、2:他方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、3:両方の陰極側リードフレーム(90)(90)を接続した場合に夫々異なる3種類の静電容量を取り出すことが可能になり、回路基板等に配置するコンデンサの数を減らすことができ
る。
【0023】
図5は、本例の固体電解コンデンサ(1)、及び図9に示す従来の固体電解コンデンサ(1)のインピーダンス特性を比較して示すグラフである。グラフの縦軸にインピーダンス(単位:Ω)を、横軸に周波数(単位:kHz)を夫々示す。図5から判るように、従来の固体電解コンデンサ(1)に比して、図1の固体電解コンデンサ(1)は、共振点より高い周波数でのESLが低減している。これは、コンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)を、共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができ、その結果、ESLを低減することができた。
【0024】
尚、図2に示すように、対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)を互いに重ね合わせて溶接しても良い。更に、図3に示すように、コンデンサ素子(2)(2)は、互いの陰極部(2b)(2b)を内側に向けて対向させてもよく、図4に示すように、対向するコンデンサ素子(2)の陰極部(2b)を互いに重ね合わせて接合しても良い。
【0025】
更に、コンデンサ素子(2)は、複数枚の陽極体(20)(20)を積層して形成されるとしたが、これに代えて、弁金属の焼結体から形成してもよい。
(第2実施例)
図6は、別の固体電解コンデンサ(1)の斜視図である。これは、図1に示した互いに陽極部(2a)(2a)が対向して並列配置されたコンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向(図6のA)に沿って、複数設けて、アレイ状にしたものである。コンデンサ素子(2)(2)はハウジング(70)にて覆われている。図6の点線に沿って、ダイシングソー等にてハウジング(70)を切断することにより、顧客のニーズに応じて、所望の静電容量のコンデンサを得ることができる。
【0026】
本例にあっては、上記の効果に加え、複数のコンデンサ素子(2)(2)が、1つの陽極側リードフレーム(9)を共有しているから、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができ、また、コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができる。
【0027】
図6の固体電解コンデンサ(1)の製造方法を示す。以下の記載では、コンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、2つ設けているが、これは図示の便宜上であり、3つ以上でもよい。
【0028】
先ず、図7に示すように、リードフレーム(9)(90)となる金属板(8)を打ち抜いて、開口(92)となる2本の溝孔(80)(80)を略平行に開設する。金属板(8)上にて溝孔(80)(80)間が陽極側リードフレーム(9)となり、溝孔(80)(80)の外側が陰極側リードフレーム(90)となる。陽極側及び陰極側リードフレーム(9)(90)となる箇所の裏面には、予め凹面(91)が形成されている。金属板(8)上には、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、透孔(81)(81)が略等間隔に開設され、該透孔(81)(81)及び前記溝孔(80)はハウジング(70)を形成する樹脂にて充填される。
【0029】
金属板(8)上にて溝孔(80)(80)間に、2つのコンデンサ素子(2)(2)の陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて載置し、抵抗溶接により取り付ける。金属板(8)上にて溝孔(80)(80)の外側に、コンデンサ素子(2)の陰極部(2b)が載置され、該陰極部(2b)は導電性接着剤により金属板(8)上に取り付けられる。即ち、コンデンサ素子(2)は溝孔(80)に跨って取り付けられる。
【0030】
金属板(8)の隅部には、治具受け孔(82)が開設されており、コンデンサ素子(2)を取り付けた金属板(8)の治具受け孔(82)を受け治具(図示せず)に嵌める。図8に示すように、溶融樹脂の射出成型又はスクリーン印刷にて、コンデンサ素子(2)の周囲を樹脂塊(7)に
て被覆する。該樹脂塊(7)を、図8のD−D線、E−E線を含む面にて破断して、ハウジング(70)を形成し、図5の固体電解コンデンサ(1)を得る。
【0031】
出願人は、図6に点線で示すカット位置により、ハウジング(70)を切り分け、表1に示す静電容量(単位:μF)、ESR(単位:mΩ)、ESL(単位:nH)の値を得た。ここで、1P〜4Pとあるのは、陽極部(2a)が対向したコンデンサ素子(2)(2)のペアの数を指す。尚、定格電圧は2Vである。
【0032】
【表1】
【0033】
上記の如く、コンデンサ素子(2)をアレイ状に並列することにより、静電容量を大きくしつつ、ESR及びESLを低減させることができた。また、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができ、また、コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができる。
【0034】
図6では、互いに陽極部(2a)(2a)を対向させたコンデンサ素子(2)を示しているが、互いに陰極部(2b)(2b)を対向させてもよい。また、上記記載に於いて、コンデンサ素子(2)(2)は、横方向に沿って2つ設けられているとしたが、3つ以上でもよい。
【0035】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
(1)固体電解コンデンサ
(2)コンデンサ素子
(9)リードフレーム
(20)陽極体
(70)ハウジング
(90)リードフレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサ素子を並列に配列した固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図9に示すチップ型の固体電解コンデンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固体電解コンデンサ(1)は、下面にリードフレーム(9)(90)が取り付けられたコンデンサ素子(2)を具え、該コンデンサ素子(2)は合成樹脂製のハウジング(70)にて覆われる。コンデンサ素子(2)は、図10に示すように、弁金属の箔である陽極体(20)に、誘電体酸化被膜(21)を形成し、該誘電体酸化被膜(21)の一部上に、陰極層(3)、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に設け、これを複数枚重ねて形成される。即ち、陽極体(20)上にて陰極層(3)を形成した部分が陰極部(2b)、残りの部分が陽極部(2a)となる。陽極体(20)(20)は複数枚重ねられて、陽極部(2a)が抵抗溶接により陽極側リードフレーム(9)に、陰極部(2b)が導電性接着剤により陰極側リードフレーム(90)に取り付けられる。これによって、静電容量を大きくしている。
【0004】
コンデンサ素子(2)の製造方法を示す。先ずアルミニウム箔のシートを切り出して帯状の陽極体(20)を形成し、この陽極体(20)の一部を0.01〜0.02wt%の燐酸水溶液又はアジピン酸水溶液内に浸して電解酸化処理し、誘電体酸化被膜(21)を形成する。次に、ブタノールを溶媒とした3,4−エチレンジオキシチオフェン、P−トルエンスルホン酸第2鉄の溶液に、陽極体(20)の誘電体酸化被膜(21)の形成部分を浸漬し、ポリチオフェンである導電性高分子から成る陰極層(3)を形成する。この陰極層(3)上に、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に形成する。複数枚の陽極体(20)(20)を重ね、陽極部(2a)(2a)を溶接して、コンデンサ素子(2)が完成する。
【0005】
尚、陰極層(3)を形成する材料には、前記ポリチオフェンの他に、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン等の導電性高分子、TCNQ(7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン)錯塩等が挙げられる。陰極層(3)に抵抗値の低い導電体高分子等を用いることにより、ESRを小さくして、高周波特性に優れたコンデンサを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO00/74091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、斯種コンデンサは高周波領域で用いられることが多く、コンデンサの特性としてESR(等価直列抵抗)のみならず、ESL(等価直列インダクタンス)を低くすることが求められている。図9に示す構造では、陽極側及び陰極側リードフレーム(9)(90)の間隔が空いているから、ESLが大きくなる。また、静電容量の増加及びESRの低減を目的として、積層する陽極体(20)(20)の枚数を多くすると、コンデンサを低くすることを求めている市場の要求を満たすことができない可能性もある。
【0008】
この点を解決すべく、図11に示すように、コンデンサが実装される基板(4)上のパターン(40)にてコンデンサ(1)(1)を並列に接続することが考えられる。図12は、図11の等価回路図である。例えば、コンデンサ(1)の容量をC1とし、ESLをL1とすると
、2つのコンデンサ(1)(1)を並列接続した場合の合成容量は2×C1であり、合成ESLはL1/2となる。これにより、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、且つESLを低減できるとも考えられる。
【0009】
しかし、これでは各コンデンサ(1)のリードフレーム(9)(90)を個別に基板(4)に実装するから、基板(4)とリードフレーム(9)(90)の接触抵抗が大きくなり、実際はESLも増加する。また、隣り合うコンデンサ(1)(1)間に隙間(図11のP)ができるため、余分な実装スペースが必要となる。
【0010】
本発明の目的は、コンデンサを低くしつつ、ESLを小さくし、余分な実装スペースをなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、陽極部に接続された陽極端子と、陰極部に接続された陰極端子と、コンデンサ素子、陽極端子及び陰極端子を被覆するハウジングとを備え、陽極端子の一部と陰極端子の一部とがハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、陰極端子は、ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、第1部分より厚みが薄く、ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、第2部分および第3部分は、第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0012】
互いに対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)が、1つの陽極側リードフレーム(9)に取り付けられることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長(図12のS)を短くすることができる。これにより、ESLを低減することができる。
【0013】
また、従来は静電容量を大きくし、ESRを低減するには、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を増やしていた。しかし、本例では複数のコンデンサ素子(2)(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置し共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けるから、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、コンデンサを低くすることができる。
【0014】
また、陽極側リードフレーム(9)と2つの陰極側リードフレーム(90)(90)を有しているため、陽極体(20)の積層数が異なるコンデンサ素子(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置することにより、陽極側リードフレーム(9)と、1:一方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、2:他方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、3:両方の陰極側リードフレーム(90)(90)を接続した場合に夫々異なる3種類の静電容量を取り出すことが可能になり、回路基板等に配置するコンデンサの数を減らすことができる。
【0015】
更に、陽極部(2a)(2a)を対向させたコンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、複数設け、アレイ状に配列することもできる。これにより、複数のコンデンサ素子(2)(2)が1つの陽極側リードフレーム(9)を共有するから、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】固体電解コンデンサの断面図である。
【図2】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図3】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図4】別の固体電解コンデンサの断面図である。
【図5】本例の固体電解コンデンサ、及び従来の固体電解コンデンサのインピーダンス特性を比較して示すグラフである。
【図6】別の固体電解コンデンサの斜視図である。
【図7】図6に示す固体電解コンデンサの製造工程を示す平面図である。
【図8】図6に示す固体電解コンデンサの製造工程を示す平面図である。
【図9】従来の固体電解コンデンサの断面図である。
【図10】コンデンサ素子を構成する陽極体の断面図である。
【図11】基板上にコンデンサを並列に配置した平面図である。
【図12】図11の等価回路図である。(第1実施例) 以下、本発明の一例を図を用いて詳述する。
【0017】
図1は、固体電解コンデンサ(1)の断面図である。固体電解コンデンサ(1)は、複数枚の陽極体(20)(20)を重ねて、陽極部(2a)を互いに溶接したコンデンサ素子(2)を具えている。陰極部(2b)は、誘電体酸化被膜(21)上に、陰極層(3)、カーボン層(6)、銀ペースト層(60)を順に設けて形成される点は、従来と同様である。コンデンサ素子(2)は合成樹脂製のハウジング(70)にて覆われ、ハウジング(70)の下面からは陽極側リードフレーム(9)及び陰極側リードフレーム(90)(90)が露出している。
【0018】
図1に示すように、コンデンサ素子(2)(2)は、リードフレーム(9)(90)の配列方向、即ち横方向に沿って2つ設けられ、互いの陽極部(2a)(2a)を内側に向けて対向させている。ハウジング(70)の下面にて、リードフレーム(9)(90)の配列方向に沿う中央部に、陽極側リードフレーム(9)が設けられ、該陽極側リードフレーム(9)を挟んで、2つの陰極側リードフレーム(90)(90)が設けられる。陽極側リードフレーム(9)と各陰極側リードフレーム(90)は開口(92)を挟んで位置する。
【0019】
両コンデンサ素子(2)(2)の陽極部(2a)(2a)は、共通の陽極側リードフレーム(9)に抵抗溶接により取り付けられる。即ち、コンデンサ素子(2)(2)は並列接続される。互いに反対側を向いた陰極部(2b)(2b)は導電性接着剤により各陰極側リードフレーム(9)(90)に取り付けられる。各リードフレーム(9)(90)には凹面(91)(91)が形成され、該凹面(91)(91)をハウジング(70)を構成する樹脂で充填することにより、陽極側リードフレーム(9)の抵抗溶接跡を隠している。また、凹面(91)(91)と両リードフレーム(9)(90)の境目から水分が進入して、コンデンサ素子(2)に達することを防いでいる。
【0020】
本例では、互いに対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)が、1つの陽極側リードフレーム(9)に取り付けられ、並列配置されることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長(図12のS)を短くすることができる。これにより、ESLを低減することができる。
【0021】
また、従来は静電容量を大きくし、ESRを低減するには、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を増やしていた。しかし、本例では複数のコンデンサ素子(2)(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置し共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けるから、従来と同じ静電容量を得る場合には、積層すべき陽極体(20)(20)の枚数を減らすことができ、コンデンサを低くすることができる。
【0022】
また、陽極側リードフレーム(9)と2つの陰極側リードフレーム(90)(90)を有しているため、陽極体(20)の積層数が異なるコンデンサ素子(2)を陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて並列に配置することにより、陽極側リードフレーム(9)と、1:一方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、2:他方の陰極側リードフレーム(90)を接続した場合、3:両方の陰極側リードフレーム(90)(90)を接続した場合に夫々異なる3種類の静電容量を取り出すことが可能になり、回路基板等に配置するコンデンサの数を減らすことができ
る。
【0023】
図5は、本例の固体電解コンデンサ(1)、及び図9に示す従来の固体電解コンデンサ(1)のインピーダンス特性を比較して示すグラフである。グラフの縦軸にインピーダンス(単位:Ω)を、横軸に周波数(単位:kHz)を夫々示す。図5から判るように、従来の固体電解コンデンサ(1)に比して、図1の固体電解コンデンサ(1)は、共振点より高い周波数でのESLが低減している。これは、コンデンサ素子(2)の陽極部(2a)(2a)を、共通の陽極側リードフレーム(9)に取り付けることにより、各コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができ、その結果、ESLを低減することができた。
【0024】
尚、図2に示すように、対向するコンデンサ素子(2)の陽極部(2a)を互いに重ね合わせて溶接しても良い。更に、図3に示すように、コンデンサ素子(2)(2)は、互いの陰極部(2b)(2b)を内側に向けて対向させてもよく、図4に示すように、対向するコンデンサ素子(2)の陰極部(2b)を互いに重ね合わせて接合しても良い。
【0025】
更に、コンデンサ素子(2)は、複数枚の陽極体(20)(20)を積層して形成されるとしたが、これに代えて、弁金属の焼結体から形成してもよい。
(第2実施例)
図6は、別の固体電解コンデンサ(1)の斜視図である。これは、図1に示した互いに陽極部(2a)(2a)が対向して並列配置されたコンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向(図6のA)に沿って、複数設けて、アレイ状にしたものである。コンデンサ素子(2)(2)はハウジング(70)にて覆われている。図6の点線に沿って、ダイシングソー等にてハウジング(70)を切断することにより、顧客のニーズに応じて、所望の静電容量のコンデンサを得ることができる。
【0026】
本例にあっては、上記の効果に加え、複数のコンデンサ素子(2)(2)が、1つの陽極側リードフレーム(9)を共有しているから、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができ、また、コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができる。
【0027】
図6の固体電解コンデンサ(1)の製造方法を示す。以下の記載では、コンデンサ素子(2)(2)を、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、2つ設けているが、これは図示の便宜上であり、3つ以上でもよい。
【0028】
先ず、図7に示すように、リードフレーム(9)(90)となる金属板(8)を打ち抜いて、開口(92)となる2本の溝孔(80)(80)を略平行に開設する。金属板(8)上にて溝孔(80)(80)間が陽極側リードフレーム(9)となり、溝孔(80)(80)の外側が陰極側リードフレーム(90)となる。陽極側及び陰極側リードフレーム(9)(90)となる箇所の裏面には、予め凹面(91)が形成されている。金属板(8)上には、リードフレーム(9)(90)の配列方向と略直交する水平方向に沿って、透孔(81)(81)が略等間隔に開設され、該透孔(81)(81)及び前記溝孔(80)はハウジング(70)を形成する樹脂にて充填される。
【0029】
金属板(8)上にて溝孔(80)(80)間に、2つのコンデンサ素子(2)(2)の陽極部(2a)(2a)を互いに対向させて載置し、抵抗溶接により取り付ける。金属板(8)上にて溝孔(80)(80)の外側に、コンデンサ素子(2)の陰極部(2b)が載置され、該陰極部(2b)は導電性接着剤により金属板(8)上に取り付けられる。即ち、コンデンサ素子(2)は溝孔(80)に跨って取り付けられる。
【0030】
金属板(8)の隅部には、治具受け孔(82)が開設されており、コンデンサ素子(2)を取り付けた金属板(8)の治具受け孔(82)を受け治具(図示せず)に嵌める。図8に示すように、溶融樹脂の射出成型又はスクリーン印刷にて、コンデンサ素子(2)の周囲を樹脂塊(7)に
て被覆する。該樹脂塊(7)を、図8のD−D線、E−E線を含む面にて破断して、ハウジング(70)を形成し、図5の固体電解コンデンサ(1)を得る。
【0031】
出願人は、図6に点線で示すカット位置により、ハウジング(70)を切り分け、表1に示す静電容量(単位:μF)、ESR(単位:mΩ)、ESL(単位:nH)の値を得た。ここで、1P〜4Pとあるのは、陽極部(2a)が対向したコンデンサ素子(2)(2)のペアの数を指す。尚、定格電圧は2Vである。
【0032】
【表1】
【0033】
上記の如く、コンデンサ素子(2)をアレイ状に並列することにより、静電容量を大きくしつつ、ESR及びESLを低減させることができた。また、コンデンサの余分な実装スペースをなくすことができ、また、コンデンサ素子(2)(2)間を繋ぐ配線長を短くすることができる。
【0034】
図6では、互いに陽極部(2a)(2a)を対向させたコンデンサ素子(2)を示しているが、互いに陰極部(2b)(2b)を対向させてもよい。また、上記記載に於いて、コンデンサ素子(2)(2)は、横方向に沿って2つ設けられているとしたが、3つ以上でもよい。
【0035】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
(1)固体電解コンデンサ
(2)コンデンサ素子
(9)リードフレーム
(20)陽極体
(70)ハウジング
(90)リードフレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、前記陽極部に接続された陽極端子と、前記陰極部に接続された陰極端子と、前記コンデンサ素子、前記陽極端子及び前記陰極端子を被覆するハウジングとを備え、前記陽極端子の一部と前記陰極端子の一部とが前記ハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極端子は、前記ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、前記第1部分より厚みが薄く、前記ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、
前記第2部分および前記第3部分は、前記第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項1】
陽極部と陰極部とを有するコンデンサ素子と、前記陽極部に接続された陽極端子と、前記陰極部に接続された陰極端子と、前記コンデンサ素子、前記陽極端子及び前記陰極端子を被覆するハウジングとを備え、前記陽極端子の一部と前記陰極端子の一部とが前記ハウジングの下面から露出している固体電解コンデンサにおいて、
前記陰極端子は、前記ハウジングの下面から露出する面を有する第1部分と、前記第1部分より厚みが薄く、前記ハウジングで被覆された第2部分および第3部分を有し、
前記第2部分および前記第3部分は、前記第1部分から相反方向に突出していることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−9012(P2013−9012A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224122(P2012−224122)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2012−176857(P2012−176857)の分割
【原出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000171768)佐賀三洋工業株式会社 (116)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2012−176857(P2012−176857)の分割
【原出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000171768)佐賀三洋工業株式会社 (116)
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