説明

固体高分子型燃料電池

【課題】固体高分子型燃料電池の導電性セパレータ板の分解を容易にする。
【解決手段】固体高分子膜の両面に触媒層を含む一対の電極をそれぞれ配置してなる電極電解質膜接合体11と、電極電解質膜接合体11を挟持する複数種類の導電性セパレータ板12,14,16より成る単位電池を複数積層した構成で、導電性セパレータ板12,14,16の角部に四角形状の切り欠きを施し、切り欠きにコイン状の冶工具を入れひねることで、導電性セパレータ板を容易に分解することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル電源、電気自動車用電源、家庭内コージェネシステム等に使用する高分子電解質を用いた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の固体高分子型燃料電池は、小型軽量で出力密度が高く、しかも構造が簡単なことから注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、特許文献1に記載された従来の固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図を示したものである。図3に示すように、電極電解質膜接合体1と、アノード側導電性セパレータ板2と、燃料ガスを供給排出するための流通溝3と、カソード側導電性セパレータ板4と、酸化ガスを供給排出するための流通溝5と、冷却水側導電性セパレータ板6から構成され、アノード側導電性セパレータ板2、電極電解質膜接合体1、カソード側導電性セパレータ板4、冷却水側導電性セパレータ板6は積層し、部品同士が密着シールされている。
【特許文献1】特開2000−294254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、アノード側導電性セパレータ板2、電極電解質膜接合体1、カソード側導電性セパレータ板4、冷却水側導電性セパレータ板6を積層し、部品同士を密着シールされているため、一部の電極電解質膜接合体1に不具合等が生じた場合,容易に分解することができず、部分的に部品を交換することが容易にできないという課題や、廃棄の際の分解が容易にできないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、アノード側導電性セパレータ板2とカソード側導電性セパレータ板4と冷却水側導電性セパレータ板6とを容易に分解できることを可能とした固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、固体高分子膜の両面に触媒層を含む一対の電極をそれぞれ配置してなる電極電解質膜接合体を挟持する複数種類の導電性セパレータ板を有する単位電池を複数積層し、前記導電性セパレータ板の外周部の一部に切り欠きを設けたことを特徴とする固体高分子型燃料電池とするものであり、これによって、密着シールされた導電性セパレータ板を容易に分解することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固体高分子型燃料電池は、密着シールされた導電性セパレータ板の分離することが容易になるので、部分的な部品の交換を容易にし、また、廃棄の際の分解も容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
請求項1に記載の発明は、固体高分子膜の両面に触媒層を含む一対の電極をそれぞれ配置してなる電極電解質膜接合体を挟持する複数種類の導電性セパレータ板を有する単位電池を複数積層し、前記導電性セパレータ板の外周部の一部に切り欠きを設けたことを特徴とする固体高分子型燃料電池とすることにより、切り欠き部分にコイン状の冶工具やのみなどの工具を差し込むことで、前期導電性セパレータ板を容易に分解できるようになり、部分的な部品交換や廃棄の際の分解を容易にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記導電性セパレータ板の角部に四角形状の切り欠きを設けたことにより、切り欠き部分にコイン状の冶工具で前記導電性セパレータ板を容易に分解できるようになり、部分的な部品交換や廃棄の際の分解を容易にすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記導電性セパレータ板の外周部中央近傍前記導電性セパレータ板の上面側を二等辺三角形の一辺とする二等辺三角形状の断面をもつ切り欠きを設けたことにより、切り欠き部分にのみなどの工具を差し込むことで、前期導電性セパレータ板を容易に分解できるようになり、部分的な部品交換や廃棄の際の分解を容易にすることができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図を示すものである。本発明の固体高分子型燃料電池はこの単位電池を複数積層したものである。
【0013】
図1において、電極電解質膜接合体11は高分子電解質膜の両面に白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒反応層とこの触媒反応層の外面に燃料ガスである水素ガスや酸化ガスである酸素や空気の通気性と電子導電性を併せ持つ拡散層より形成される。アノード側導電性セパレータ板12は燃料ガスを供給排出するための流通溝13を有し、カソード側導電性セパレータ板14は酸化ガスを供給排出するための流通溝15を有し、冷却水側導電性セパレータ板16は冷却水が流動するための流通溝17を有する。
【0014】
電極電解質膜接合体11は、アノード側導電性セパレータ板12とカソード側導電性セパレータ板14と冷却水側導電性セパレータ板16で挟持され単位電池を形成する。また、電極電解質膜接合体11、アノード側導電性セパレータ板12、カソード側導電性セパレータ板14、冷却水側導電性セパレータ板16には、燃料ガス、酸化ガス、冷却水の供給用の孔11a、11b、11c、12a、12b、12c、14a、14b、14c、16a、16b、16cと排出用の孔11d、11e、11f、12d、12e、12f、14d、14e、14f、16d、16e、16fを構成している。
【0015】
以上のように構成された固体高分子型燃料電池について、以下その動作、作用を説明する。
【0016】
まず、電極電解質膜接合体11の一方の面に燃料ガス、他の面に酸化ガスが流れることで、電気化学反応により、電気が発生する。電気化学反応により発生した熱は冷却水により冷却され、電極電解質膜接合体11の温度を一定に保つことができる。
【0017】
以上のように、本実施の形態においては、これら単位電池を10〜200セル積層した後、集電板と絶縁板を介し、端板でこれを挟み、締結ボルトで両端から固定する構造とすることにより、アノード側導電性セパレータ板12、電極電解質膜接合体11、カソード側導電性セパレータ板14、冷却水側導電性セパレータ板16は部品同士が密着シールされる。アノード側導電性セパレータ板12の角部18と、カソード側導電性セパレータ板14の角部19、冷却水側導電性セパレータ板16の角部20にコインの厚み程の四角形状の切り欠きを設け、切り欠きにコイン状の冶工具を入れねじることにより、テコの原理によって容易に必要な導電性セパレータ板を分解することが可能になり、部分的な部品交換や廃棄の際の分解を容易にすることができる。
【0018】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2における固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図を示すものである。
【0019】
実施の形態1と同様の構成であるが、図2において、アノード側導電性セパレータ板12、カソード側導電性セパレータ板14、冷却水側導電性セパレータ板16の切り欠きの位置を導電性セパレータ板12,14,16の外周部中央近傍で導電性セパレータ板12,14,16の上面側を二等辺三角形の一辺とする二等辺三角形状の断面をもつ切り欠き21,22,23を設けたことにより、のみなどの工具を差し込むことで、容易に必要な導電性セパレータ板を分解することが可能になり、部分的な部品交換や廃棄の際の分解を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明にかかる固体高分子型燃料電池は、ポータブル電源、電気自動車用電源、家庭内コージェネシステム等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図
【図2】本発明の実施の形態2における固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図
【図3】従来の固体高分子型燃料電池の単位電池構成分解斜視図
【符号の説明】
【0022】
11 電極電解質膜接合体
12 アノード側導電性セパレータ板
14 カソード側導電性セパレータ板
16 冷却水側導電性セパレータ板
18,19,20,21,22,23 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子膜の両面に触媒層を含む一対の電極をそれぞれ配置してなる電極電解質膜接合体を挟持する複数種類の導電性セパレータ板を有する単位電池を複数積層し、前記導電性セパレータ板の外周部の一部に切り欠きを設けたことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
前記導電性セパレータ板の角部に四角形状の切り欠きを設けたことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項3】
前記導電性セパレータ板の外周部中央近傍前記導電性セパレータ板の上面側を二等辺三角形の一辺とする二等辺三角形状の断面をもつ切り欠きを設けたことを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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