説明

固定具、接続部材及び医療用具

【課題】2つのコネクタを接続固定する管状の固定具において、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたときに、従来よりもさらに緩みにくい固定具を提供する。
【解決手段】第1コネクタ挿入口52と、第2コネクタ挿入口54と、オスコネクタと係合する係合部58と、メスコネクタと螺合する螺合部60とを備える固定具50。螺合部60は、固定具の内面に螺旋状に設けられ、固定具の管中心軸50axに向けて突出する突起部62と、突起部62を構成する突起の間に位置する非突起部64とを有する。非突起部64の内径寸法は、第2コネクタ挿入口54側から第1コネクタ挿入口52側に向かうにしたがって狭くなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液の体外循環回路、カテーテル類、輸液・輸血セット、注射器等の医療用具に用いる固定具(ロックナットともいう。)及び接続部材並びに当該接続部材を備える医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
オスコネクタと係合するとともにメスコネクタと螺合することにより、オスコネクタ及びメスコネクタを接続固定する管状の固定具として、従来、オスコネクタを挿入するためのオスコネクタ挿入口近傍に、突起を設けた固定具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の固定具によれば、オスコネクタとメスコネクタとを接続させて固定具で締め付けたときに、オスコネクタ挿入口近傍に設けられた突起がオスコネクタの外周面(オスコネクタに接続されたチューブの外周面)に食い込むこととなるため、固定具を緩みにくくすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3120990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような固定具を扱う業界においては、オスコネクタとメスコネクタとを接続させて固定具で締め付けたときに、固定具をさらに緩みにくくしたいという要求がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、2つのコネクタを接続固定する管状の固定具において、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたときに、従来よりもさらに緩みにくい固定具を提供することを目的とする。また、2つのコネクタが従来よりも強固に接続固定された接続部材を提供することを目的とする。さらに、そのような優れた接続部材を備える医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の発明者は、上記目的を達成するため、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたときの固定具の緩みにくさを向上させるための手段について鋭意研究を重ねた。その結果、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたとき、つまり、固定具と他方のコネクタとを螺合させたときの、固定具の内面と他方のコネクタの外面との接触面積を従来よりも大きくすれば、従来よりも大きな回転抵抗力(螺合部に望ましくない回転力が加わった場合に、その回転力に対し抵抗する力)を得ることができ、結果として、固定具の緩みにくさを向上することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の固定具(50)は、2つのコネクタのうち一方のコネクタ(30)と係合するとともに他方のコネクタ(40)と螺合することにより、当該2つのコネクタを接続固定する管状の固定具であって、前記固定具(50)は、前記固定具の一方側端部に設けられ、前記一方のコネクタ(30)を挿入するための第1コネクタ挿入口(52)と、前記固定具の他方側端部に設けられ、前記他方のコネクタ(40)を挿入するための第2コネクタ挿入口(54)と、前記一方のコネクタ(30)と係合する係合部(58)と、前記固定具の内面に設けられ、前記他方のコネクタ(40)と螺合する螺合部(60)とを備え、前記螺合部(60)は、前記固定具の内面に螺旋状に設けられ、前記固定具の管中心軸(50ax)に向けて突出する突起部(62)と、前記突起部(62)を構成する突起の間に位置する非突起部(64)とを有し、前記非突起部(64)の内径寸法は、前記第2コネクタ挿入口(54)側から前記第1コネクタ挿入口(52)側に向かうにしたがって狭くなるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の固定具は、上記のように、非突起部の内径寸法が、第2コネクタ挿入口側から第1コネクタ挿入口側に向かうにしたがって狭くなるように設定されている。すなわち、螺合部のうち非突起部の部分の形状(内面形状)に注目すると、第2コネクタ挿入口から奥に向かうにしたがって徐々に狭くなるようなテーパ状になっているため、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたときに、固定具の内面と他方のコネクタの外面とが従来よりも広い面積で接触することとなる。このため、従来よりも大きな回転抵抗力を得ることができ、結果として、固定具の緩みにくさを向上することが可能となる。
【0010】
したがって、本発明の固定具は、2つのコネクタを接続させて固定具で締め付けたときに、従来よりもさらに緩みにくい固定具となる。
【0011】
[2]上記[1]に記載の固定具(50)においては、前記固定具の管中心軸(50ax)を含む仮想平面で切断したときの、前記非突起部(64)をつないだ仮想直線(P)と前記固定具の管中心軸(50ax)とが交差する角度θは、2.7度≦θ≦3.5度に設定されていることが好ましい。
【0012】
上記角度θが2.7度よりも小さいと、固定具の内面と他方のコネクタの外面との接触面積がそれほど大きなものとならず、結果として、所定の緩み防止効果を得ることが容易ではない。
一方、上記角度θが3.5度よりも大きいと、次の2点の理由により、固定具と他方のコネクタとを螺合させるのが容易ではなくなる。1点目は、螺合部の内径のうち第1コネクタ挿入口側の位置での螺合部の内径が、他方のコネクタの外径に対して狭くなりすぎてしまう場合があるからである。螺合部の内径が他方のコネクタの外径に対して狭くなりすぎると、第2コネクタ挿入口から挿入した他方のコネクタを奥まで進ませるのが容易ではなくなるので、結果として、固定具と他方のコネクタとを螺合させるのが容易ではなくなる。2点目は、螺合部の突起部を構成する突起のうち最も第2コネクタ挿入口側に位置する突起の位置での、螺合部の内径が広くなりすぎる結果、第2コネクタ挿入口から挿入した他方のコネクタが傾いてしまう場合があるからである。第2コネクタ挿入口から挿入した他方のコネクタが傾いてしまうと、固定具の螺合部(突起部)と他方のコネクタの螺合される部分とがうまく噛み合わなくなるので、結果として、固定具と他方のコネクタとを螺合させるのが容易ではなくなる。
これに対し、本発明の固定具によれば、上記角度θが、2.7度≦θ≦3.5度に設定されているため、所定の緩み防止効果を得ることができるとともに、固定具と他方のコネクタとを比較的容易に螺合させることが可能な固定具となる。
以上の観点から言えば、上記角度θは、2.9度≦θ≦3.3度に設定されていることがより好ましい。
【0013】
[3]上記[1]又は[2]に記載の固定具(50)においては、前記固定具(50)の内面のうち前記第2コネクタ挿入口(54)近傍の内面であって、前記突起部(62)を除いた部分の内面の形状は、前記固定具の管中心軸(50ax)を含む仮想平面で切断したとき、前記固定具の管中心軸(50ax)に対して当該内面が略平行となるように構成されていることが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、第2コネクタ挿入口に他方のコネクタを挿入したときに、他方のコネクタが傾いてしまうのを抑制することが可能な固定具となる。このため、本発明の固定具を用いれば、固定具と他方のコネクタとを比較的容易に螺合させることが可能となる。
【0015】
[4]上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の固定具(50)においては、前記固定具(50)は、プラスチック材料からなることが好ましい。
【0016】
プラスチック材料からなる固定具は、金属材料からなる固定具に比べて剛性が低いことから、上述の緩み防止効果を確保しつつ、過度の締め付けによる固定具又はコネクタの破損を抑制することが可能となる。
【0017】
[5]本発明の接続部材(20)は、オスコネクタ(30)と、前記オスコネクタ(30)と接続可能に構成されたメスコネクタ(40)と、前記オスコネクタ(30)と係合するとともに前記メスコネクタ(40)と螺合することにより、前記オスコネクタ(30)及び前記メスコネクタ(40)を接続固定する管状の固定具(50)とを備える接続部材であって、前記固定具(50)は、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の固定具であり、前記オスコネクタ(30)は、前記一方のコネクタであって、かつ、前記固定具(50)の前記係合部(58)と係合する被係合部(36)を有し、前記メスコネクタ(40)は、前記他方のコネクタであって、かつ、前記メスコネクタ(40)の外面の一部に形成され、前記固定具(50)の前記螺合部(60)と螺合する被螺合部(46)を有することを特徴とする。
【0018】
このため、本発明の接続部材によれば、上述したように、従来よりもさらに緩みにくい固定具を備えているため、オスコネクタとメスコネクタとの接続をより強固に維持することが可能となる。
したがって、本発明の接続部材は、2つのコネクタが従来よりも強固に接続固定された接続部材となる。
【0019】
[6]上記[5]に記載の接続部材(20)においては、前記被螺合部(46)が設けられた位置における前記メスコネクタ(40)の外径寸法(D)は、前記螺合部(60)が設けられた位置における前記固定具(50)の内径寸法のうち最も前記第1コネクタ挿入口(52)側の位置での内径寸法(d)以上に設定されていることが好ましい。
【0020】
このように構成することにより、固定具の内面とメスコネクタの外面とが確実に接触することとなるため、十分な回転抵抗力を得ることができ、結果として、オスコネクタとメスコネクタとの接続を確実に維持することが可能となる。
【0021】
[7]本発明の医療用具(1)は、上記[5]又は[6]に記載の接続部材を備えることを特徴とする。
【0022】
このため、本発明の医療用具は、コネクタが接続されている部分の緩みの少ない優れた医療用具となる。
【0023】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る医療用具1を説明するために示す図。
【図2】実施形態に係る接続部材20を説明するために示す図。
【図3】実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【図4】実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【図5】実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【図6】実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【図7】実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【図8】固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する方法の一例を示す図。
【図9】固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する方法の他の例を示す図。
【図10】比較例に係る固定具950を説明するために示す図。
【図11】被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dと、第2コネクタ挿入口954の内径寸法d1との関係を説明するために示す図。
【図12】比較例に係る固定具950及び実施形態に係る固定具50を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の固定具、接続部材及び医療用具について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0026】
[実施形態]
まず、実施形態に係る医療用具1及び接続部材20の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る医療用具1を説明するために示す図である。
図2は、実施形態に係る接続部材20を説明するために示す図である。図2(a)は接続部材20を示す側面図であり、図2(b)はオスコネクタ30を示す側面図であり、図2(c)はメスコネクタ40を示す側面図である。なお、図2(a)においては、固定具50及びメスコネクタ40の一部を断面で図示している。
【0027】
実施形態に係る医療用具1は、患者の体に薬液等を供給するための輸液セットであって、図1に示すように、点滴筒10と、ローラークランプ12と、三方活栓13と、チューブ11,14,15と、チューブ14とチューブ15とを接続するための接続部材20とを備える。
【0028】
点滴筒10は、筒内に薬液等を一時的に溜めるとともに、チューブ11を介してその薬液等を所定量ずつ下流のローラークランプ12に送るための部材である。ローラークランプ12は、チューブ11内を流れる薬液等の流量を調整するために用いられる。三方活栓13は、点滴筒10から送られる薬液等を下流側に流したりその流れを停止させたりするために用いられるとともに、他の薬液等を輸液ライン内に注入するために用いられる。
【0029】
接続部材20は、図1及び図2に示すように、チューブ14の端部に配置されたオスコネクタ30と、オスコネクタ30と接続可能に構成され、チューブ15の端部に配置されたメスコネクタ40と、チューブ14に取付けられ、オスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する固定具50とを備える。
【0030】
オスコネクタ(一方のコネクタ)30は、図2(a)及び図2(b)に示すように、後述するメスコネクタ40の嵌合孔42と嵌合する嵌合部32と、チューブ14と接続されるチューブ接続部34と、嵌合部32とチューブ接続部34との間であってオスコネクタ30の外周面全面にわたって設けられ、後述する固定具50の係合部58と係合するための段状の被係合部36とを有する。オスコネクタ30は、図示による説明は省略するが、中空の管状部材である。オスコネクタ30は、チューブ14内にチューブ接続部34を差し込むことにより、チューブ14とオスコネクタ30との接続が確保されている。
【0031】
メスコネクタ(他方のコネクタ)40は、図2(a)及び図2(c)に示すように、オスコネクタ30の嵌合部32と嵌合可能に構成された嵌合孔42と、チューブ15と接続されるチューブ接続部44と、嵌合孔42の近傍であってメスコネクタ40の外面の一部に形成され、後述する固定具50の螺合部60と螺合する被螺合部46とを有する。メスコネクタ40は、図示による説明は省略するが、中空の管状部材である。メスコネクタ40は、チューブ接続部44内にチューブ15を差し込むことにより、チューブ15とメスコネクタ40との接続が確保されている。
【0032】
なお、チューブ14とオスコネクタ30との接続及びチューブ15とメスコネクタ40との接続については、上記の構成に限定されるものではない。例えば、チューブ接続部34内にチューブ14を差し込むことにより、チューブ14とオスコネクタ30との接続が確保されていてもよいし、チューブ15内にチューブ接続部44を差し込むことにより、チューブ15とメスコネクタ40との接続が確保されていてもよい。
【0033】
固定具50は、オスコネクタ30と係合するとともにメスコネクタ40と螺合することにより、オスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定するための管状部材であって、例えばポリカーボネイト樹脂などのプラスチック材料からなる。
【0034】
次に、実施形態に係る固定具50の構成について、図3〜図7を用いて詳細に説明する。
図3〜図7は、実施形態に係る固定具50を説明するために示す図である。図3(a)は固定具50の拡大側面図であり、図3(b)は固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの固定具50の拡大断面図である。
図4(a)は固定具50の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの固定具50の拡大端面図であり、図4(b)は図4(a)の破線の丸で囲んだ部分を拡大して示す図である。
図5(a)は固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、非突起部64をつないだ仮想直線Pと固定具の管中心軸50axとが交差する角度θを説明するために示す図であり、図5(b)は固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、ストレート部66をつないだ仮想直線Bと固定具の管中心軸50axとの関係を説明するために示す図である。なお、図5(a)に示す直線Aは、固定具の管中心軸50axと平行関係にある直線であって、補助的に示したものである。
図6は、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、突起部62を構成する突起の頂部をつないだ仮想直線Cと固定具の管中心軸50axとの関係を説明するために示す図である。
図7は、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dと、螺合部60が設けられた位置における固定具50の内径寸法のうち最も第1コネクタ挿入口52側の位置での内径寸法dとの関係を説明するために示す図である。
【0035】
固定具50は、図3及び図4に示すように、固定具50の一方側端部に設けられ、オスコネクタ30を挿入するための第1コネクタ挿入口52と、固定具50の他方側端部に設けられ、メスコネクタ40を挿入するための第2コネクタ挿入口54と、固定具50の外周面に設けられた溝部56と、固定具50の内面に設けられ、オスコネクタ30の被係合部36と係合する段状の係合部58と、固定具50の内面に設けられ、メスコネクタ40の被螺合部46と螺合する螺合部60とを備える。溝部56は、管中心軸50axに沿って複数形成された溝からなり、全周にわたって設けられている。係合部58は、第1コネクタ挿入口52の近傍部分において、全周にわたって設けられている。
【0036】
螺合部60は、固定具50の内面に螺旋状に設けられ、固定具の管中心軸50axに向けて突出する突起部62と、突起部62を構成する突起の間に位置する非突起部64とを有する。
【0037】
非突起部64の内径寸法は、図3(b)及び図4(a)などから分かるように、第2コネクタ挿入口54側から第1コネクタ挿入口52側に向かうにしたがって狭くなるように設定されている。言い換えれば、螺合部60のうち非突起部64の部分の形状(内面形状)は、第2コネクタ挿入口54から奥(第1コネクタ挿入口52)に向かうにしたがって徐々に狭くなるようなテーパ状になっている。
【0038】
固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、非突起部64をつないだ仮想直線Pと固定具の管中心軸50axとが交差する角度をθ(図5(a)参照。)とすると、当該角度θは、2.7度≦θ≦3.5度に設定されている。
【0039】
この角度範囲「2.7度≦θ≦3.5度」を満たすためには、例えば、第2コネクタ挿入口54の部分での固定具50の内径寸法をφ8.00mmとし、螺合部60が設けられた位置における固定具50の内径寸法のうち最も第1コネクタ挿入口52側の位置での内径寸法(後述するd)をφ7.21mmとし、螺合部60が設けられた部分の長さ(固定具の管中心軸50axに沿った長さ)Lを9.1mmとし(図4(a)参照。)、螺合部60が設けられた部分のうち後述するストレート部66の部分の長さL1を1.8mmとし、螺合部60が設けられた部分のうちストレート部66を除いた部分の長さL2を7.3mmとすると、角度θの値は約3.1度となり、上述の角度範囲を満たす。
仮に、第2コネクタ挿入口54の部分での固定具50の内径寸法がφ8.00mmであり、上記長さLが9.1mmであり、上記長さL1が1.8mmであるならば、螺合部60が設けられた位置における固定具50の内径寸法のうち最も第1コネクタ挿入口52側の位置での内径寸法(後述するd)は、φ7.11mm〜φ7.31mmの範囲で設定可能である。
【0040】
非突起部64は、固定具50の内面のうち第2コネクタ挿入口54近傍の内面に形成されたストレート部66を有する(図4(b)参照。)。ストレート部66は、全周にわたって形成されている。ストレート部66の内面形状は、図5(b)に示すように、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したとき、固定具の管中心軸50axに対して当該内面が略平行となるように構成されている。なお、ストレート部66の部分の長さL1は、1mm〜2mm程度であることが好ましい。
【0041】
突起部62は、図6から分かるように、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、突起部62を構成する突起の頂部をつないだ仮想直線Cと固定具の管中心軸50axとが平行関係となるように、突起部62の突出高さ(内面から突出する長さ)が揃えられている。言い換えれば、固定具の管中心軸50axを間にして対向する突起間の距離(すなわち、突起部分での固定具50の内径)が略同一となるように、突起部62の突出高さが設定されている。
【0042】
図7に示すように、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dは、螺合部60が設けられた位置における固定具50の内径寸法のうち最も第1コネクタ挿入口52側の位置での内径寸法dよりも大きく設定されている。
【0043】
次に、固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する方法について、図8及び図9を用いて説明する。
図8は、固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する方法の一例を示す図である。図8(a)〜図8(d)は固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する流れを順に示す図である。
図9は、固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する方法の他の例を示す図である。図9(a)〜図9(d)は固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定する流れを順に示す図である。
【0044】
例えば図8に示す方法では、まず、図8(a)に示すように、固定具50をメスコネクタ40方向に移動させて、固定具50の係合部58(図3(b)参照。)をオスコネクタ30の被係合部36に係合させる。その状態で、図8(b)及び図8(c)に示すように、オスコネクタ30の嵌合部32をメスコネクタ40の嵌合孔42に嵌合させつつ、固定具50を回転させることで螺合部60とメスコネクタ40の被螺合部46とを螺合させる。これにより、図8(d)に示すように、オスコネクタ30とメスコネクタ40とを接続固定することができる。
【0045】
また、図9に示す方法では、まず、図9(a)に示すように、オスコネクタ30の嵌合部32をメスコネクタ40の嵌合孔42に嵌合させる。次に、図9(b)に示すように、固定具50をメスコネクタ40方向に移動させて、図9(c)に示すように、固定具50を回転させることで螺合部60とメスコネクタ40の被螺合部46とを螺合させる。このとき、固定具50の係合部58とオスコネクタ30の被係合部36とが係合するまで、固定具50をメスコネクタ40方向に回転移動させる。これにより、図9(d)に示すように、オスコネクタ30とメスコネクタ40とを接続固定することができる。
【0046】
次に、比較例に係る固定具950をもとにして、実施形態に係る固定具50をさらに詳細に説明する。
【0047】
図10は、比較例に係る固定具950を説明するために示す図である。図10(a)は固定具950の管中心軸950axを含む仮想平面で切断したときの固定具950の拡大断面図であり、図10(b)は固定具の管中心軸950axを含む仮想平面で切断したときの固定具950の拡大端面図である。
図11は、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dと、固定具950の第2コネクタ挿入口954の内径寸法d1との関係を説明するために示す図である。
図12は、比較例に係る固定具950及び実施形態に係る固定具50を説明するために示す図である。図12(a)は比較例に係る固定具950を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定したときの様子を示す図であり、図12(b)は螺合部960の突起部962及び非突起部964並びに被螺合部46の周辺部分を拡大して示す図であり、図12(c)は実施形態に係る固定具50を用いてオスコネクタ30及びメスコネクタ40を接続固定したときの様子を示す図であり、図12(d)は螺合部60の突起部62及び非突起部64並びに被螺合部46の周辺部分を拡大して示す図である。
【0048】
比較例に係る固定具950は、基本的には実施形態に係る固定具50と同様の構成を有するが、螺合部の形状が実施形態に係る固定具50とは異なる。
【0049】
比較例に係る固定具950においては、図10に示すように、螺合部960は、固定具950の内面に螺旋状に設けられ、固定具の管中心軸950axに向けて突出する突起部962と、突起部962を構成する突起の間に位置する非突起部964とを有する。
【0050】
図10(b)に示すように、非突起部964をつないだ仮想直線Qは、固定具の管中心軸950axと平行である。つまり、非突起部964の内径寸法は、第2コネクタ挿入口954側から第1コネクタ挿入口952側の間で同じ値となるように設定されている。
【0051】
このとき、図11に示すように、第2コネクタ挿入口954の内径寸法d1(すなわち、非突起部964の内径寸法)は、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dよりも若干ではあるが大きく設定されている。なぜなら、第2コネクタ挿入口954の内径寸法d1が、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法D以下であると、第2コネクタ挿入口954にメスコネクタ40を挿入することができないからである。
【0052】
このように構成された比較例に係る固定具950によれば、上述のように、非突起部964の内径寸法が、第2コネクタ挿入口954側から第1コネクタ挿入口952側の間で同じ値となるように設定されており、d1>Dの関係にあることから、図12(b)に示すように、固定具950の内面とメスコネクタ40の外面との間に生じる隙間(図12(b)の符号g部分参照。)が比較的大きくなってしまう。このため、当該隙間に起因して固定具950に緩みが生じやすくなってしまう。
【0053】
これに対し、実施形態に係る固定具50は、上記のように、非突起部64の内径寸法が、第2コネクタ挿入口54側から第1コネクタ挿入口52側に向かうにしたがって狭くなるように設定されている。すなわち、螺合部60のうち非突起部64の部分の形状(内面形状)に注目すると、第2コネクタ挿入口54から奥に向かうにしたがって徐々に狭くなるようなテーパ状になっているため、2つのコネクタ(オスコネクタ30及びメスコネクタ40)を接続させて固定具50で締め付けたときに、固定具50の内面とメスコネクタ40の外面とが従来よりも広い面積で接触することとなり(図12(d)参照。)、固定具950の内面とメスコネクタ40の外面との間に生じる隙間を極力小さくすることが可能となる。このため、従来よりも大きな回転抵抗力を得ることができ、結果として、固定具の緩みにくさを向上することが可能となる。
【0054】
したがって、実施形態に係る固定具50は、2つのコネクタ(オスコネクタ30及びメスコネクタ40)を接続させて固定具で締め付けたときに、従来よりもさらに緩みにくい固定具となる。
【0055】
実施形態に係る固定具50においては、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、非突起部64をつないだ仮想直線Pと固定具の管中心軸50axとが交差する角度θは、2.7度≦θ≦3.5度に設定されている。これにより、所定の緩み防止効果を得ることができるとともに、固定具50とメスコネクタ40とを比較的容易に螺合させることが可能な固定具となる。
【0056】
実施形態に係る固定具50においては、固定具50の内面のうち第2コネクタ挿入口54近傍の内面であって、突起部62を除いた部分の内面、すなわちストレート部66の内面形状は、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したとき、固定具の管中心軸50axに対して当該内面が略平行となるように構成されている。これにより、第2コネクタ挿入口54に例えばメスコネクタ40を挿入したときに、メスコネクタ40が傾いてしまうのを抑制することが可能な固定具となる。このため、実施形態に係る固定具50を用いれば、固定具50とメスコネクタ40とを比較的容易に螺合させることが可能となる。
【0057】
実施形態に係る固定具50においては、固定具50は、プラスチック材料からなる。プラスチック材料からなる固定具は、金属材料からなる固定具に比べて剛性が低いことから、実施形態に係る固定具50によれば、固定具50とメスコネクタ40とを螺合させたときに、固定具50とメスコネクタ40との接触状態を保ったまま、固定具50が周方向に若干拡張することとなる。その結果、上述の緩み防止効果を確保しつつ、過度の締め付けによる固定具又はコネクタ(オスコネクタ30若しくはメスコネクタ40)の破損を抑制することが可能となる。
【0058】
実施形態に係る接続部材20は、オスコネクタ30と、メスコネクタ40と、上記した固定具50とを備えているため、オスコネクタ30とメスコネクタ40との接続をより強固に維持することが可能となる。
したがって、実施形態に係る接続部材20は、2つのコネクタ(オスコネクタ30及びメスコネクタ40)が従来よりも強固に接続固定された接続部材となる。
【0059】
実施形態に係る接続部材20においては、被螺合部46が設けられた位置におけるメスコネクタ40の外径寸法Dは、螺合部60が設けられた位置における固定具50の内径寸法のうち最も第1コネクタ挿入口52側の位置での内径寸法d以上に設定されている。これにより、固定具50の内面とメスコネクタ40の外面とが確実に接触することとなるため、十分な回転抵抗力を得ることができ、結果として、オスコネクタ30とメスコネクタ40との接続を確実に維持することが可能となる。
【0060】
実施形態に係る医療用具1は、上記した接続部材20を備えるため、コネクタが接続されている部分の緩みの少ない優れた医療用具となる。
【0061】
以上、本発明の固定具、接続部材及び医療用具を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
(1)本発明の固定具は、上述した点滴筒10、ローラークランプ12及び三方活栓13を備える輸液セットとしての医療用具1に限らず、点滴筒、ローラークランプ及び三方活栓のうち少なくとも1つを備えていない輸液セットや、これら各部材に加えて他の部材を備える輸液セットに用いることができる。また、輸液セットに限らず、他の医療用具(例えば、血液の体外循環回路、カテーテル類、輸血セット、注射器等)に用いることもできる。
【0063】
(2)上記実施形態においては、図6に示したように、固定具の管中心軸50axを含む仮想平面で切断したときの、突起部62を構成する突起の頂部をつないだ仮想直線Cと、固定具の管中心軸50axとが平行関係となるように、突起部62の突出高さ(内面から突出する長さ)が揃えられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、突起部62を構成する突起の頂部をつないだ仮想直線と、非突起部64をつないだ仮想直線Pとが平行関係となるように、つまり、突起部62の部分での内径寸法が徐々に狭くなるように、突起部62の突出高さ(内面から突出する長さ)が揃えられていてもよい。
【0064】
(3)上記実施形態においては、溝部56が、固定具50の外周面全面にわたって設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定具50の外周面の一部にのみ溝部が設けられていてもよいし、溝部を備えていない固定具にも本発明を適用することができることは言うまでもない。また、溝部56に代えて、外側に向けて突出する複数の突起を備えていてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態においては、係合部58が、固定具50の内面全面にわたって設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定具50の内面の一部にのみ係合部が設けられていてもよい。オスコネクタ30の被係合部36についても同様に、オスコネクタ30の外周面の一部にのみ被係合部が設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、係合部58及び被係合部36がともに段状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、両者が係合可能であれば、他の構成からなっていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 医療用具
10 点滴筒
11,14,15 チューブ
12 ローラークランプ
13 三方活栓
20 接続部材
30 オスコネクタ
32 嵌合部
34 チューブ接続部
36 被係合部
40 メスコネクタ
42 嵌合孔
44 チューブ接続部
46 被螺合部
50,950 固定具
50ax,950ax 固定具の管中心軸
52,952 第1コネクタ挿入口
54,954 第2コネクタ挿入口
56 溝部
58 係合部
60,960 螺合部
62,962 突起部
64,964 非突起部
66 ストレート部
θ 非突起部64をつないだ仮想直線Pと固定具の管中心軸50axとが交差する角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのコネクタのうち一方のコネクタ(30)と係合するとともに他方のコネクタ(40)と螺合することにより、当該2つのコネクタを接続固定する管状の固定具(50)であって、
前記固定具(50)は、
前記固定具の一方側端部に設けられ、前記一方のコネクタ(30)を挿入するための第1コネクタ挿入口(52)と、
前記固定具の他方側端部に設けられ、前記他方のコネクタ(40)を挿入するための第2コネクタ挿入口(54)と、
前記一方のコネクタ(30)と係合する係合部(58)と、
前記固定具の内面に設けられ、前記他方のコネクタ(40)と螺合する螺合部(60)とを備え、
前記螺合部(60)は、
前記固定具の内面に螺旋状に設けられ、前記固定具の管中心軸(50ax)に向けて突出する突起部(62)と、
前記突起部(62)を構成する突起の間に位置する非突起部(64)とを有し、
前記非突起部(64)の内径寸法は、前記第2コネクタ挿入口(54)側から前記第1コネクタ挿入口(52)側に向かうにしたがって狭くなるように設定されていることを特徴とする固定具(50)。
【請求項2】
請求項1に記載の固定具において、
前記固定具の管中心軸(50ax)を含む仮想平面で切断したときの、前記非突起部(64)をつないだ仮想直線(P)と前記固定具の管中心軸(50ax)とが交差する角度θは、
2.7度≦θ≦3.5度に設定されていることを特徴とする固定具(50)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固定具において、
前記固定具(50)の内面のうち前記第2コネクタ挿入口(54)近傍の内面であって、前記突起部(62)を除いた部分の内面の形状は、前記固定具の管中心軸(50ax)を含む仮想平面で切断したとき、前記固定具の管中心軸(50ax)に対して当該内面が略平行となるように構成されていることを特徴とする固定具(50)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の固定具において、
前記固定具(50)は、プラスチック材料からなることを特徴とする固定具(50)。
【請求項5】
オスコネクタ(30)と、
前記オスコネクタ(30)と接続可能に構成されたメスコネクタ(40)と、
前記オスコネクタ(30)と係合するとともに前記メスコネクタ(40)と螺合することにより、前記オスコネクタ(30)及び前記メスコネクタ(40)を接続固定する管状の固定具(50)とを備える接続部材(20)であって、
前記固定具(50)は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定具であり、
前記オスコネクタ(30)は、
前記一方のコネクタであって、かつ、
前記固定具(50)の前記係合部(58)と係合する被係合部(36)を有し、
前記メスコネクタ(40)は、
前記他方のコネクタであって、かつ、
前記メスコネクタ(40)の外面の一部に形成され、前記固定具(50)の前記螺合部(60)と螺合する被螺合部(46)を有することを特徴とする接続部材(20)。
【請求項6】
請求項5に記載の接続部材において、
前記被螺合部(46)が設けられた位置における前記メスコネクタ(40)の外径寸法(D)は、前記螺合部(60)が設けられた位置における前記固定具(50)の内径寸法のうち最も前記第1コネクタ挿入口(52)側の位置での内径寸法(d)以上に設定されていることを特徴とする接続部材(20)。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の接続部材を備えることを特徴とする医療用具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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