説明

固定具及びこれを備えた結束具

【課題】 汎用の環状の弾性体を用いて被結束物を円滑に十字結束することの可能な固定具及びこれを備えた結束具を提供すること。
【解決手段】各弾性体3a,3bを包囲すると共に環方向に移動可能に保持する一対の保持部材20a,20bを備える。この一対の保持部材20a,20bは相対回転可能に互いに連結されると共に、各保持部材20a,20bの一部を開放して各弾性体3a,3bを着脱可能である。この連結により、一対の保持部材20a,20bは被結束物の平面に対し略平行に相対回転する。保持部材20a,20bを相対回転させて互いに交差させる。これらの弾性体3a,3bをそれぞれ被結束物に結束させるために用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具及びこれを備えた結束具に関する。さらに詳しくは、一対の環状の弾性体を交差させて被結束物を結束させるための固定具及びこれを備えた結束具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の環状の弾性体を用いて被結束物を十字に結束させるための結束具として、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。特許文献1の結束具は、2本の輪ゴムを溶着等することで直接連結されている。長辺に二本の輪ゴムを掛け、そのうち一本の輪ゴムを環方向に回転させ短辺の対向する辺に掛ける。そのため、二本の輪ゴムが交差している部分に負荷が集中して引きつり、被結束物の十字結束を円滑に行えないおそれがあった。また、輪ゴムの交差部分に掛かった負荷は、その交差部分の強度上の問題となる。
【0003】
紐を用いて被結束物を十字に結束させるための結束具として、例えば特許文献2に記載の如きものが知られている。特許文献2の結束具は、紐を切り込みに掛けて使用するため、留め具から紐が離脱する可能性あり、被結束物の十字結束を円滑に行えない場合があった。
【0004】
一方、被結束物を十字に結束させるための固定具として、例えば特許文献3,4に記載の如きものが知られている。これらの文献に記載の固定具は、貫通孔に長尺状のベルトを挿入する構成であり、長尺状のワイヤー等の結束に使用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−14657号公報
【特許文献2】特開平11−321919号公報
【特許文献3】特開2008−133052号公報
【特許文献4】特開2006−56574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、汎用の環状の弾性体を用いて被結束物を円滑に十字結束することの可能な固定具及びこれを備えた結束具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る固定具の特徴は、一対の環状の弾性体を交差させて被結束物を結束させるための固定具において、各弾性体を包囲すると共に環方向に移動可能に保持する一対の保持部材を備え、この一対の保持部材は相対回転可能に互いに連結されると共に、各保持部材の一部を開放して前記各弾性体を着脱可能であり、この連結により、前記一対の保持部材は前記被結束物の平面に対し略平行に相対回転し、前記保持部材を相対回転させて互いに交差させ、これら各弾性体をそれぞれ前記被結束物に結束させるために用いることにある。
【0008】
上記構成によれば、一対の保持部材は各弾性体を包囲しているため、弾性体が保持部材から離脱しない。さらに、汎用の一対の環状の弾性体の一方を被結束物に掛け、他方の弾性体を相対回転させ弾性体を交差方向、例えば90度向きを変える動作において、弾性体の回転に合わせて保持部材はスムーズに回転する。よって、一方の弾性体の向きを変える動作を円滑に行うことができ、被結束物を円滑に十字結束することができる。
【0009】
しかも、各弾性体は保持部材により環方向に移動可能に保持されているので、保持部材を相対回転させた後、他方の弾性体を被結束具に掛ける際には、一方の弾性体の動作に追従するように保持部材が移動する。よって、保持部材は一方の弾性体に沿って被結束物の上面に対して略平行に移動することができるので、被結束物を円滑に十字結束することが可能となる。さらに、汎用の弾性体に過剰な負荷がかからずにすむ。加えて、保持部材は一部を開放して着脱可能に連結されているので、汎用の弾性体を使用することができる。
【0010】
前記保持部材は、前記一対の保持部材は断面視コ字状であり、これらの開放部側を貫通する連結手段により相対回転可能且つ着脱可能に互いに連結されているとよい。連結手段により相対回転が行えるので被結束物の十字結束がより円滑に行える。また、保持部材の構造を簡略化することができる。
【0011】
前記一対の保持部材の少なくとも一方は、前記弾性体近傍より連結部分近傍を幅狭にして連結されるとよい。連結部材を中心に保持部材を略90度相対回転させると、積層した一対の保持部材の幅が連結部材の円筒部の高さより大きくなり、それ以上保持部材が回転しにくくなるため、被結束物を十字結束するときに交差の角度が略90度に落ち着きやすい。
【0012】
前記保持部材は可撓性を有するとよい。さらに、前記弾性体はバンド状のゴム部材からなることが望ましい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る結束具の特徴は、上記いずれかに記載の固定具を備えた構成において、前記一対の保持部材は前記各弾性体を包囲すると共に環方向に移動可能に保持することにある。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る固定具の特徴によれば、汎用の環状の弾性体を用いて被結束物を円滑に十字結束することの可能な固定具及びそれを用いる結束具を提供することが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る固定具の分解斜視図である。
【図2】(a)(b)(c)は結束具の結束手順を示す模式図である。
【図3】(a)は保持部材の展開図であり、(b)は保持部材の断面図である。
【図4】保持部材回転前における固定具を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図5】保持部材回転後における固定具を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B端面図である。
【図6】(a)(b)は保持部材の回転を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、適宜図面を参照しながら、本発明に係る固定具についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る結束具1は、図1に示すように、固定具2と、固定具2に保持される一対の環状の弾性体3a,3bとから構成される。固定具2は、各弾性体3a,3bを保持する一対の保持部材20a,20bと、これらを貫通連結する連結部材30とを備えている。環状の弾性体3a,3bとして、例えばバンド状のゴム部材である汎用のゴムバンドを用いる。この固定具2は、図2に示すように、例えば書籍等の束である被結束物100を十字に結束するためにゴムバンド3a,3bを十字状に交差させるものである。以下の実施形態の説明において「結束」とは、被結束物を環状の弾性体で束ねることをいう。
【0018】
保持部材20aは、図1,3に示すように、一枚の可撓性の薄板を略コ字形状に折り曲げ一方を開放して形成される。保持部材20aの上面21a及び下面22aには、連結部材30の円筒部37を挿通する貫通孔24a,24aが略コ字状の開放部25a側で互いに対向して形成されている。貫通孔24aは円筒部37の外径より大きく形成している。これにより、図4(b)に示すように、上面21a及び下面22bが傾斜しても円筒孔37を挿通できる。なお、保持部材20bは、保持部材20aと同様の構造である。
【0019】
連結手段30Aは、第一部材31と第二部材35とからなる連結部材30で構成される。第一部材31は、円盤状で書籍等100の平面に接する基部32と、基部32の略中央部において円錐台形状で上方に向かって先細りの形状である突起部33とから構成される。この突起部33の基部32側には、凹部34が形成され円錐台の下縁に角部33aが形成される。
【0020】
第二部材35は、ドーナッツ形状の基部36と、基部36の略中央部で中空形状の円筒部37とを備える。この円筒部37の端部には、凹部34とこれに圧入して係合する凸部38が形成されている。凸部38は円筒部37の内側に突出し、その突出側の端部は鉛直方向に対し傾斜している。凸部38を突起部33の凹部34に圧入して角部33aと係合することで、第一部材31と第二部材35とが連結する。凸部38と凹部34との係合は第一,第二部材31,35を引き離す方向に引っ張ることで解除可能である。これによって、保持部材20a,20bは着脱可能となり、汎用のゴムバンド3a,3bを上述した保持部材20a,20bの開放部25a,25b側から容易に交換することができる。
【0021】
次に、固定具2の使用方法について説明する。
図1に示すように、まず、保持部材20a,20bの側面23a,23b近傍にそれぞれゴムバンド3a,3bを位置させる。そして、上述のように、貫通孔24a,24bに円筒部37を貫通させ、第二部材35に第一部材31を係合させる。これにより、図4(b)に示すように、一対の保持部材20a,20bはそれぞれ側面視略三角形となり、ゴムバンド3a,3bは保持部材20a,20bの上面21a,21b、下面22a,22b及び側面23a,23bでそれぞれ包囲され、ゴムバンド3a,3bと保持部材20a,20bとの間に隙間Mが形成される。この隙間Mにより、ゴムバンド3a,3bはそれぞれ環方向への移動が可能な状態で保持される。また、保持部材20aの下面22aと保持部材20bの上面21bが傾斜して接する。ゴムバンド3a,3bは、連結部材30により保持部材20a,20bにそれぞれ保持されて相対回転するため、ゴムバンド3a,3bの向きを変える動作が円滑に行える。
【0022】
次に、上述の如く組み立てた結束具1を書籍等100の平面の略中央に配置させる。図2(a)に示すように、保持部材20bに保持されているゴムバンド3bを書籍等100の短辺に掛ける。他方、保持部材20bの上方に位置する保持部材20aに保持されているゴムバンド3aは、書籍等100に掛けないままにする。そして、ゴムバンド3aをゴムバンド3bに対して略90度相対回転させる。このとき、保持部材20aはスムーズに回転するので、ゴムバンド3aの向きを変える動作を円滑に行える。
【0023】
そして、図2(b)に示すように、書籍等100の長辺にゴムバンド3aを掛ける。保持部材20aとゴムバンド3aとの間に隙間Mが形成されるため、ゴムバンド3aの弾性に追従するように矢印方向に移動する。ゴムバンド3aを書籍等100の長辺の略中央に掛け直すと、図2(c)に示すように保持部材20a,20bは矢印方向に移動し、書籍等100の略中央部に配置される。このように、保持部材20bは、ゴムバンド3bの位置を移動させることなく、ゴムバンド3aに沿って書籍等100の上面を略平行に移動することが可能となる。よって、書籍等100を円滑に十字結束することが可能となる。さらに、汎用のゴムバンド3a,3bの交差部分に過剰な負荷がかからない。
【0024】
ここで、図6を例に相対回転による保持部材20a,20bの状態を順次説明する。
保持部材20bの上面21bと保持部材20aの下面22aが重なる位置をS0〜S3とする。S1〜S3はS0を基準に保持部材20aを45度ずつ反時計回りに回転させた位置である。図6(b)に示すように、各位置S0〜S3における保持部材20aの上面21aと下面22aとの距離(厚み)をL0a〜L3a、各位置S0〜S3における保持部材20bの上面21bと下面22bとの距離をL0b〜L3bとする。また、連結部材30の円筒部37の高さをhとする。
【0025】
図6(b)に示すように、回転前の状態であるS0において、積層している保持部材20aの上面21aと保持部材20bの下面22bとの距離(厚み)はL0a+L0b<hである。そして、連結部材30を中心に保持部材20aを保持部材20bに対し反時計回りに相対回転させる。S1においても距離はL1a+L1b<hであるため、スムーズに回転可能である。さらに回転させたS2では、距離がL2a+L2b>hとなるため抵抗が生じる。しかし、保持部材20a,20bは可撓性の薄板からなるので、図5(b)に示すように部分Gが撓み、90度回転させた状態で保持することができる。S2からさらに回転させると、S3では距離がL3a+L3b>L2a+L2b>hとなるので、S2よりもさらに保持部材20a,20bへの抵抗が強くなる。そのため、略90度より相対回転させにくくなる。よって、保持部材20a,20bを90度回転させた状態で保持することができ、書籍等100を十字結束するのときゴムバンド3a,3bの交差角度が90度に落ち着きやすい。したがって、保持部材20a,20bの回転の動作を円滑に行うことが可能となる。
【0026】
最後に、本発明のその他の実施形態の可能性について言及する。なお、以下の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、汎用の環状の弾性体としてバンド状のゴム部材であるゴムバンド3a,3bを用いた。しかし、必ずしもゴムバンドである必要はなく、環状の弾性体であれば構わない。また、一対のゴムバンド3a,3bの形状は必ずしも同一でなくてもよく、例えば被結束物の形状に合わせて長さや太さや色等を異ならせても構わない。
【0027】
上記実施形態において、保持部材20a,20bは一枚の薄板を折り曲げて形成させた。しかし、例えば一枚の薄板を湾曲させたものや複数部材を組み合わせたものなど、環状の弾性体を包囲すると共に環方向に移動可能に保持できるものであれば構わない。さらに、保持部材20a,20bとして可撓性の薄板を用いた。しかし、可撓性は材料により付与してもよく、形状により付与しても構わない。
【0028】
上記実施形態において、連結手段30Aとして凹部34とこれに圧入して係合する凸部38で構成した。しかし、連結手段30Aはこれに限られず、例えば螺合等その他の連結手段を用いても構わない。但し、通常使用で回転によっても係合が解除されない点で、上記実施形態の構成が優れている。また、一対の保持部材を連結部材30で連結させずに、一対の保持部材に連結手段30Aを設けて相対回転可能に連結させてもよい。
【0029】
上記実施形態において、連結部材30の形状はあくまで例示にすぎず、着脱可能に保持部材20a,20bを連結するものであれば、適宜変形可能である。例えば基部32,36をハートや星等の形状に形成してもよく、装飾を付しても構わない。
【0030】
上記実施形態において、ゴムバンド3a,3bをそれぞれ保持部材20a,20bで隙間を設けて包囲した。しかし、保持部材20a,20bは環方向に移動可能であればよく、例えば保持部材20a,20bが環方向に移動可能な加工を施したものであっても構わない。
【0031】
上記実施形態において、ゴムバンド3aを被結束物100の短辺に掛けた後、ゴムバンド3bを被結束物100の長辺に掛けた。しかし、ゴムバンド3a,3bを平行にして短辺に掛けた後、いずれか一方のゴムバンドを長辺に掛け直しても構わない。
【0032】
上記実施形態において、被結束物100として書籍等を用いて説明した。しかし、被結束物100は書籍等のような直方体に限られず、例えば立方体や楕円体等の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、一対の環状の弾性体を交差させて被結束物を結束させるための固定具及びこれを備えた結束具として利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:結束具、2:固定具、3a,3b:弾性体(ゴムバンド)、20a,20b:保持部材、21a,21b:上面、22a,22b:下面、23a,23b:側面、24a,24b:貫通孔、25a,25b:開放部、30A:連結手段、30:連結部材、31:第一部材、32:基部、33:突起部、33a:角部、34:凹部、35:第二部材、36:基部、37:円筒部、38:凸部、100:被結束物(書籍等)、h:高さ、G:部分、L0a〜L3a,L0b〜L3b:距離、M:隙間、S0〜S3:位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の環状の弾性体を交差させて被結束物を結束させるための固定具であって、
各弾性体を包囲すると共に環方向に移動可能に保持する一対の保持部材を備え、この一対の保持部材は相対回転可能に互いに連結されると共に、各保持部材の一部を開放して前記各弾性体を着脱可能であり、この連結により、前記一対の保持部材は前記被結束物の平面に対し略平行に相対回転し、前記保持部材を相対回転させて互いに交差させ、これら各弾性体をそれぞれ前記被結束物に結束させるために用いる固定具。
【請求項2】
前記一対の保持部材は断面視コ字状であり、これらの開放部側を貫通する連結手段により相対回転可能且つ着脱可能に互いに連結されている請求項1記載の固定具。
【請求項3】
前記一対の保持部材の少なくとも一方は、前記弾性体近傍より連結部分近傍を幅狭にして連結される請求項1又は2記載の固定具。
【請求項4】
前記保持部材は可撓性を有する請求項1〜3のいずれかに記載の固定具。
【請求項5】
前記弾性体はバンド状のゴム部材からなる請求項1〜4のいずれかに記載の固定具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の固定具を備えた結束具であって、
前記一対の保持部材は前記各弾性体を包囲すると共に環方向に移動可能に保持する結束具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−51629(P2011−51629A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202665(P2009−202665)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(391049219)ホリアキ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】