説明

固定化イミダゾールおよびルテニウム触媒

本発明はN,N’−二置換イミダゾリウム塩、N−複素環カルベンリガンドおよび複素環カルベンリガンドを有するルテニウム触媒、換言すると一般式(I)及び(II)で表される化合物、一般式(III)及び(IV)で表される化合物並びに一般式(V)及び(VI)で表される化合物、無機酸化物担体上に固定化された(I−VI)の製造方法に関する。本発明はさらに固定化された一般式(I−VI)で表される化合物の、有機、金属有機又は遷移金属触媒合成への使用及び一般式(V)及び(VI)で表される化合物の有機、金属有機合成、特にオレフィンメタセシス等のC−Cカップリング反応における触媒としての使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N’−二置換イミダゾール塩、N−複素環カルベンリガンド及びN−複素環カルベンリガンドを含有するルテニウム触媒、すなわち、無機酸化物支持体上に固定化された、一般式(I)及び(II)で表される化合物、一般式(III)及び(IV)で表される化合物、並びに一般式(V)及び(VI)で表される化合物の調製方法に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
本発明はさらに、一般式(I〜IV)で表される固定化された化合物の有機、有機金属又は遷移金属−触媒合成における使用、並びに一般式(V)及び(VI)で表される化合物の有機及び有機金属合成、特にC−Cカップリング反応、例えばオレフィンメタセシスにおける触媒としての使用に関する。
【0004】
1.本発明の先行技術及び目的
トリアルコキシ基を含有する、立体的要求性のないイミダゾリウム及び4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩の例が、国際公開第01/32308号、国際公開第02/098560号及びJ. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12932; Topics in Catalysis 2001, 14, 139; Journal of Catalysis 2000, 196, 86; J. Mol. Cat. A: Chem. 2002, 184, 31に記載されている。
【0005】
【化2】

【0006】
該化合物は無機酸化物上に直接固定化されるか、式A及びBにより、ゾル−ゲル法を用いて対応する修飾シリカ表面に転化される。しかし、これらの化合物は、A及びBのリガンド前駆体としての使用、例えば同様に触媒におけるリガンドとして使用される、固定化NHC(N−複素環カルベン)リガンドとしての使用に関しては、それらから得られるNHCリガンドが熱的に安定でなく、かつそれに加えてカルベンの炭素原子が立体的に十分な範囲に選別されていないことから二量化反応する傾向があるため、適当ではない。立体的要求性のある基、例えば置換芳香族基、例えばメシチル基、アダマンチル、シクロヘキシル等をアルキル基の代わりにA及びBの窒素原子に導入することにより、これらの不利益を克服することを可能にする必要がある。無機酸化物に固定化されたN−複素環カルベンリガンドはこれまで知られていない。
【0007】
N−複素環カルベンリガンドを含有するルテニウム触媒の例としては、例えば国際公開第00/15339号、国際公開第00/71554号、国際公開第 99/51344号、EP 0721953、及び例えばChem. Eur. J. 2001, 7, 3236; J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 2674; Organic Letters 1999, 1(6), 953 及び J. Organomet. Chem. 2000, 606, 49における例が記載されている。しかし、記載された化合物は均一系触媒としてのみ使用できるにすぎない。反応混合物からの均一系触媒の分離は高価であり、かつ操作が複雑であるため、触媒プロセスにおいて均一系触媒を担体に固定化することは主要な利点となる。これらの固定化触媒は、ろ過により反応混合物から非常に簡単に分離することができる。特に、触媒が非常に高価であり、かつ次の触媒プロセスにおいて再利用及び再使用する場合、又は触媒プロセスの反応生成物が、錯体化合物中に存在する遷移金属により汚染されてはならない場合に重大な関心事となる。
【0008】
このことは特に医薬応用の製品に対して適用される。N−複素環リガンドを含有するルテニウム触媒の有機担体、例えばポリスチレンへの固定化は、Angew. Chem. 2000, 112, 4062に記載されている。しかし、有機担体材料は非常に強固な無機担体材料に比べると多くの不利益、例えば使用する媒体に依存する膨張又は収縮性を有し、それらは予測不可能な態様において触媒活性を低下させ得る。これらの触媒の無機酸化物上への固定化は、Buchmeiser等によりAngew. Chem. 2000, 112, 4062, Designed Monomers and Polymers 2002, 5(2,3), 325及びAdv. Synth. Catal. 2002, 344, 712において記載されている。固定化方法は非常に複雑であり、触媒は有機共重合体により無機酸化物から分離され、すなわち、最終的に有機担体(C)上に固定化される。
【0009】
【化3】

【0010】
Hoveyda et al. in Angew. Chem. 2001, 113, 4381は、N−複素環カルベンリガンドを含有するルテニウム触媒の酸化物材料への小さなリンカーを用いた固定化を報告している。しかし、触媒はここではベンジリデンリガンドを介して固定される。しかし、触媒によるメタセシス反応の間に、ベンジリデンリガンドとルテニウム中心との間の結合が壊れ、触媒が担体から切り離され、反応溶液中に移行する。このことは担体上のかなりの触媒が損失(かなりの触媒が溶出)する結果となり、適切な変換による再生を不可能にする。
【0011】
本発明の目的は、固定化可能な立体的な要求性のあるイミダゾリウム及び4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩、固定化可能なN−複素環カルベンリガンド、及び無機酸化物上のN−複素環カルベンリガンドを含有する固定化可能なルテニウム触媒を固定化することである。同時に、イミダゾリウム及び4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩、固定化されたN−複素環カルベンリガンド及び固定化されたルテニウム触媒を簡単な方法で調製できるようにすることであり、それらは無機担体に共有結合し、適用する反応のために担体表面に十分多量に結合できるのが望ましい。それらは表面に強力に結合し、溶出を示さないのが望ましい。
【0012】
2. 本発明の説明
上記目的は、一般式(I−VI)で表される化合物を一般式(Ia〜VIa)で表される形態により無機酸化物上に固定化する方法及び対応する新規な担体結合生成物を提供することにより達成される。
【化4】

【0013】
Rは、総炭素原子数が30以下のA、Ar、A−Ar、A−Ar−A、Het、AHetまたはAHetAであり、ここで
Aは直鎖、分枝または飽和C〜C20アルキル基、総炭素原子数4〜30のシクロアルキルまたは1個または2個のアルキル基を介して結合したシクロアルキルであり、ここでアルキル基中およびシクロアルキル基中の両方の1個のCHまたはCH基がN、NH、NA、Oおよび/またはSにより置き換えられていてもよく、およびH原子がOA、NAおよび/またはPAにより置き換えられていてもよく、
Arは、総炭素原子数が20以下の−置換もしくは多置換または非置換の芳香族炭化水素であり、ここで置換基はA、Hal、OA、NA、PA、COOA、COA、CN、CONHA、NO、=NHまたは=Oであってよく、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環または二環、飽和または芳香族の複素環基であり、Halおよび/またはA、OA、COOA、COA、CN、CONHA、NA、PA、NO、=NHまたは=Oにより非置換または一置換、二置換もしくは三置換されていてもよく、ここで
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
R’は、分子内の位置から独立して、炭素原子数1〜12のAまたはArであり、
R3は、炭素原子数6〜18のA、Ar、AAr、AArA、Het、AHetまたはAHetAであり、
R3’は、総炭素原子数4〜30の直鎖または分枝したシクロアルキルまたは1個もしくは2個のアルキル基を介して結合したシクロアルキル、A、AAr、AArA、Het、AHetまたはAHetAであり、
R1およびR2は互いに独立してH、Cl、BrまたはR3として定義された基であり、
R4はH、Cl、Brまたは直鎖、分枝、飽和またはモノ−もしくはポリ不飽和C〜C−アルキル基であり、ここでアルキル基中の1個または2個以上のHがZにより置き換えられていてもよく、
R5はA、ArまたはAArであり、
R6およびR7は、H、AまたはArであり、ここでAまたはAr中のH原子はアルケニルまたはアルキニル基により置換されていてもよく、
Xは、互いに同一または異なる陰イオン性リガンドであり、および
nは0、1または2である。
【0014】
【化5】

【0015】
式中、R、R1、R2、R3、R3’、R4、R5、R6、R7及びXは上記の意味を有することができる。
【0016】
一般式(I)〜(VI)で表される化合物は、化合物(I)〜(VI)と無機金属酸化物の無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中における反応により固定化される。アルコールR’OHが反応における副生成物として形成される。生成物(Ia)〜(VIa)は溶媒及びR’OHからろ過により分離することができ、必要であれば、適切な溶媒で洗浄することにより精製することができる。固定化はバッチプロセス又は連続プロセスのいずれにおいても行うことができる。
【0017】
一般式(Ia)及び(IIa)で表される化合物は、固定化反応媒体、固定化イオン性流動体、固定化リガンド又は触媒前駆体として、並びに有機、有機金属及び遷移金属触媒合成における固定化触媒として用いることができる。一般式(IIIa)及び(IVa)で表される化合物は、固定化N−複素環カルベン−金属錯体調製用の出発物質として、及び触媒反応における固定化リガンドとして用いることができる。一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物は、有機及び有機金属合成における固定化触媒として用いることができる。特に、それらはC−Cカップリング反応、水素化及びヒドロホルミル化における触媒として用いることができる。
【0018】
3.発明の詳細な説明
一般式(I)〜(VI)で表される化合物は、化合物(I)〜(VI)と無機金属酸化物の無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中における反応により固定化される。化合物の添加順序は要望どおり選択することができる。出発化合物は適切な溶媒中にあらかじめ溶解するか懸濁させることができる。
【0019】
使用する溶媒は好ましくはハロゲン化されているかまたは純粋な炭化水素及び環状エーテルである。ハロゲン化された炭化水素のうち、塩化メチレン、クロロベンゼン又はトリクロロトルエンの使用が好ましく、塩化メチレンが非常に好ましい。純炭化水素のうち、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン又はトルエンの使用が好ましく、ヘプタン及びトルエンが非常に好ましい。環状エーテルのうち、テトラヒドロフランの使用が好ましい。
【0020】
保護ガス雰囲気は窒素またはアルゴンを使用することができる。一般式(I)〜(VI)で表される出発化合物は、酸化物表面上の活性OH基に対して0.01〜100倍に、好ましくは0.1〜50倍に、非常に特に好ましくは0.5〜10倍に添加する。
【0021】
反応は−20℃〜+150℃、好ましくは0℃〜+120℃の温度範囲において行うことができる。反応時間は30分〜10日間。好ましくは1時間〜2日間、非常に好ましくは1時間〜1日間である。
【0022】
生成物(Ia)〜(VIa)はろ過による簡単な方法により分離することができ、必要に応じて、上記の溶媒で洗浄することにより精製し、次いで乾燥する。
【0023】
本発明による固定化は、バッチプロセス又は連続プロセスのいずれにおいても行うことができる。連続プロセスにおいて、化合物(I)〜(VI)の上記溶液は、対応する物質が対応する温度に加温される間、モノリシック又は粒子状物質を通してポンプで注入される。(I)〜(VI)の該溶液は場合によって循環し、モノリシック又は粒子状物質を通して何度も流れることができる。流速は所望どおりに選択することができる。次に、官能基化された担体を上記の溶媒により洗浄し、適用する反応に用いることができる。
【0024】
本発明による方法をバッチ様式で行うために、酸化物を一般式(I)〜(VI)で表される化合物の溶液と細分化した形態で混合し、保護ガス雰囲気中で適切な反応温度で反応させてもよい。この目的のために、個々の反応物質を所望の順序で添加することができる。
【0025】
反応を如何に実施するかは、これ自体は限定されず、バッチ様式又は連続様式のいずれでも、行うことができる。反応は、反応物質と接触するすべての部品及びデバイスが用いる化学物質に対して不活性であり、かつ腐食又は溶出現象が起きない装置において簡単な方法により行うことができる。重要なファクターは使用する装置が温度管理でき、反応物質及び反応生成物の安全な供給及び排出ができ、必要に応じて反応混合物を激しく撹拌する手段を有することである。装置はさらに不活性ガス雰囲気中で稼動でき、揮発性物質の安全な排出が可能であるのが望ましい。したがって、反応は撹拌、供給及び場合によって排出装置、還流冷却器又は排出装置を有する冷却器(この装置が不活性ガスで覆うこともできるようにする場合)を備えたガラス製の装置中でも行うことができる。しかし、適切な場合、ステンレススチール及び他の適切な不活性材料で製造され、かつ温度制御、出発物質及び生成物の供給及び排出のために必要な装置を有する工業的な装置で反応を行うこともできる。
【0026】
反応は、特に反応が緩やかに進む場合、通常バッチ様式で行う。一般式(Ia)〜(VIa)で表される所望の生成物を比較的大量に製造する場合、及び反応させる出発物質が反応性の化合物である場合には、反応を連続操作用に設計された対応する装置で行うのが適切である。
【0027】
本発明による一般式(Ia)及び(IIa)で表される化合物はそれぞれ固定化されたイミダゾリウム及び4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩である。(Ia)は単一荷電アニオンを有する固定化された1,3−二置換イミダゾリウムカチオンを含有し、及び(IIa)は同様に単一荷電アニオンを有する固定化された1,3−二置換4,5−ジヒドロイミダゾリウムカチオンを含有する。
【0028】
本発明による一般式(IIIa)及び(IVa)で表される化合物は、それぞれ固定化された1,3−二置換イミダゾール−2−イリデン及び固定化された1,3−二置換イミダゾリン−2−イリデンである。(IIIa)は4,5−不飽和2窒素複素環を含有し、及び(IVa)は飽和2窒素複素環を含有する。複素環の2位の炭素原子(2つの窒素原子の間)は、遊離の電子対を有する2価のカルベン炭素原子である。
【0029】
本発明による一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物は、ルテニウム原子が酸化状態2であり、及びルテニウム原子に中性N−複素環カルベンリガンド、中性ホスフィンリガンド、中性アルキリデンリガンド及び2つの単一荷電アニオンが結合している固定化されたルテニウム化合物である。N−複素環カルベンリガンドは、親構造としてイミダゾール又は4,5−ジヒドロイミダゾールから誘導された1,3−二置換イミダゾール−2−イリデン及び1,3−二置換イミダゾリン−2−イリデンである。両方のタイプのリガンドにおいて、複素環基の2つの窒素原子間の炭素原子は、遊離電子対によりルテニウム原子に配位結合したカルベン炭素原子である。アルキリデンリガンドもルテニウム中心に結合したカルベン炭素原子を含有する。
【0030】
化合物(Ia)〜(VIa)は、炭化水素基Rに対応するスペーサーRを介して担体表面に結合し、炭化水素基Rを介して一般式(I)〜(VI)で表される化合物のSiR’n(OR’)3-n基が複素環の窒素原子に結合している。したがって、スペーサーRはこの炭化水素基と同じ意味を有する。
【0031】
SiR’n(OR’)3-n単位のR’は炭化水素基であり、nは0、1又は2、好ましくは0又は1であり、非常に好ましくは0である。この炭化水素基R’は分子中の位置に独立して異なる意味を採用することができ、直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和、環(A)、芳香族(Ar)又はアルキル芳香族(AAr又はAArA)であってよく、及び場合によって一置換又は多置換されている。A及びArは以下のすべての意味を採用することができる。
【0032】
R’は好ましくは直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノ又はポリ不飽和、あるいは環状の飽和又はモノもしくはポリ不飽和の炭素原子数1〜12のアルキル基である。R’は特に好ましくは炭素原子数1〜7の直鎖又は分枝飽和アルキル基、すなわち、アルキル基Aの下位の基であり、以下により詳細に定義される。
【0033】
R’は好ましくはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、1−,2−又は3−メチルブチル(−C10−)、1,1−、1,2−又は2,2−ジメチルプロピル(−C10−)、1−エチルプロピル(−C10−)、ヘキシル(−C12−)、1−,2−,3−又は4−メチルペンチル(−C12−)、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−又は3,3−ジメチルブチル(−C12−)、1−又は2−エチルブチル(−C12−)、1−エチル−1−メチルプロピル(−C12−)、1−エチル−2−メチルプロピル(−C12−)、1,1,2−又は1,2,2−トリメチルプロピル(−C12−)、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル又はドデシルの意味を採用することができる。
【0034】
R’は非常に特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルからなる群からのC〜Cのアルキル基である。
【0035】
SiR’n(OR’)3-nにおいて、R’は代わりに
アルケニル ビニル、プロペニル、1,2−プロパジエニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、1,2−、1,4−又は1,3−ペンタジエニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、ヘキセニル、1,5−ヘキサジエニル、2−メチル−1,3−ブタジエニル、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル又はイソペンテニル、
シクロアルケニル シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル又はメチルシクロペンタジエニル、及び
アルキニル エチニル、1,2−プロピニル、2−ブチニル、1,3−ブタジニル、ペンチニル又はヘキシニルであってよい。
【0036】
SiR’n(OR’)3-n基におけるアルコキシ基の数が多ければ多いほど、したがってnが小さければ小さいほど、固定化後の金属酸化物と一般式(I)及び(II)で表される化合物との間の共有結合の数が多くなる。SiR’n(OR’)3-n基は炭化水素基Rを介して複素環基の窒素原子に結合している。
【0037】
炭化水素基Rは好ましくは炭素原子数1〜30の基である。この炭化水素基は直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和、環(A)もしくは芳香族(Ar)、複素環又は芳香族複素環(Het)であり、及び場合によって一置換又は多置換されている。
【0038】
炭化水素基RはA、Ar、A−Ar、A−Ar−A、Het、A−Het又はA−Het−A基であってよく、ここで各基A、Ar及びHetは後述の意味を採用することができる。Rは好ましくは炭素原子数20以下のA、Ar、A−Ar又はA−Ar−A基である。
【0039】
Aは炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30、好ましくは炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和、又は環状アルキル基Aである。
【0040】
Aは好ましくは直鎖又は分枝、飽和C〜C12−アルキル基又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル又は1つ又は2つのアルキル基を介して結合したC〜C20−シクロアルキルである。
【0041】
アルキレンはAにおいて示した意味と同じ意味を有するが、ただし、アルキルからさらに結合する最隣接物への結合が存在する。
【0042】
Aは、例えばメチレン(−CH−)、エチレン(−C−)、プロピレン(−C−)、イソプロピレン(−C−)、ブチレン(−C−)、イソブチレン(−C−)、sec−ブチレン(−C−)及びtert−ブチレン(−C−)、さらにまたペンチレン、1−,2−又は3−メチルブチレン(−C10−)、1,1−、1,2−又は2,2−ジメチルプロピレン(−C10−)、1−エチルプロピレン(−C10−)、ヘキシレン(−C12−)、1−,2−,3−又は4−メチルペンチレン(−C12−)、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−又は3,3−ジメチルブチレン(−C12−)、1−又は2−エチルブチレン(−C12−)、1−エチル−1−メチルプロピレン(−C12−)、1−エチル−2−メチルプロピレン(−C12−)、1,1,2−又は1,2,2−トリメチルプロピレン(−C12−)、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン又はドデシレンである。
【0043】
Aは炭素原子数3〜30のシクロアルキレン基、好ましくはC〜Cのシクロアルキレンであってもよい。ここで、シクロアルキルは飽和又は不飽和であってよく、場合によって分子中の1個又は2個のアルキル基を介してイミダゾール窒素及びSiR’n(OR’)3-n基に結合してもよい。シクロアルキレン基の1個又は2個以上のH原子は他の置換基によって置き換えられていてもよい。シクロアルキルは好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロへプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、3−メチル又はカンファー−10−イル(二環性テルペン)、デカリン又はビシクロヘプタンであり、ここでこれらの基は分子中の1個又は2個以上のアルキル基を介してイミダゾール窒素及びSiR’n(OR’)3-n基に結合していてもよい。この場合、シクロアルキルは好ましくは1,2−シクロプロピル、1,2−又は1,3−シクロブチル、1,2−又は1,3−シクロペンチル、又は1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキシル、さらに1,2−、1,3−又は1,4−シクロへプチルである。しかし、上記基はまた、R3として、置換又は非置換の形態で第2のイミダゾール窒素に結合してもよい。
【0044】
Aは炭素原子数2〜20の不飽和アルケニル基又はアルキニル基であってよく、イミダゾール窒素又はイミダゾール炭素及びSiR’n(OR’)3-n基の両方に結合することができる。
【0045】
アルケニル基は、直鎖、分枝又は環状のC〜C30−アルケニル基、好ましくは直鎖、分枝又は環状のC〜C−アルケニル基、特に好ましくはビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル及びヘキセニルからなる群からの直鎖又は分枝のC〜C−アルケニル基であってよい。
【0046】
シクロアルケニル基は直鎖又は分枝状のC〜C30−シクロアルケニル基、好ましくはC〜C−シクロアルケニル基、特に好ましくはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニル及びメチルシクロペンタジエニルからなる群からのC〜C−シクロアルケニル基であってよい。
【0047】
アルキニル基は、直鎖又は分枝状のC〜C30−アルキニル基、好ましくは直鎖又は分枝状のC〜C−アルキニル基であり、特に好ましくはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルからなる群からの直鎖又は分枝状のC〜C−アルキニル基であってよい。
【0048】
アルケニル、シクロアルケニル又はアルキニルが炭化水素基Rの一部である場合、それはもちろん同じ意味を有する、ただし、アルケニル又はアルキニルからさらに分子中の結合する最隣接物への結合が存在する。
【0049】
Arは炭素原子数6〜30の単環又は多環状芳香族炭化水素であり、一置換もしくは多置換又は非置換であってよい。
【0050】
Arは好ましくは一置換又は多置換フェニル又はナフチルであり、ここで置換基はAの意味を採用することができ、Arは総炭素原子数20以下である。
【0051】
アリール基は好ましくはC〜C10のアリール基、好ましくはフェニル又はナフチルであってよい。アルキルアリール基はC〜C18−アルキルアリール基、好ましくはトリル又はメシチルであってよい。
【0052】
Arは好ましくは置換又は非置換のフェニル、ナフチル、アントリル又はフェナントリルであり、それぞれAOA、CO−AOH、COOH、COOA、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アセチル、プロピオニル、トリフルオロメチル、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ベンジルオキシ、スルホンアミド、メチルチオ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、メチルスルホンアミド、エチルスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、ブチルスルホンアミド、ジメチルスルホンアミド、フェニルスルホンアミド、カルボキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル又はアミノカルボニルにより一置換、二置換又は三置換されていてもよい。ここで、Aにより置換されているか及び/又はAに結合している場合、Arは炭素原子数20以下である。
【0053】
Arは好ましくは非置換又は一置換もしくは多置換されたフェニル、及び特に好ましくはフェニル、o−、m−又はp−トリル、o−、m−又はp−エチルフェニル、o−、m−又はp−プロピルフェニル、o−、m−又はp−イソプロピルフェニル、o−、m−又はp−tert−ブチルフェニル、o−、m−又はp−シアノフェニル、o−、m−又はp−メトキシフェニル、o−、m−又はp−エトキシフェニル、o−、m−又はp−フルオロフェニル、o−、m−又はp−ブロモフェニル、o−、m−又はp−クロロフェニル、o−、m−又はp−メチルチオフェニル、o−、m−又はp−メチルスルフィニルフェニル、o−、m−又はp−メチルスルホニルフェニル、o−、m−又はp−アミノフェニル、o−、m−又はp−メチルアミノフェニル、o−、m−又はp−ジメチルアミノフェニル、o−、m−又はp−ニトロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−又は3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−又は3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−又は3,5−ジブロモフェニル、2−クロロ−3−メチル、2−クロロ−4−メチル、2−クロロ−5−メチル、2−クロロ−6−メチル、2−メチル−3−クロロ、2−メチル−4−クロロ、2−メチル−5−クロロ、2−メチル−6−クロロ、3−クロロ−4−メチル、3−クロロ−5−メチル又は3−メチル−4−クロロフェニル、2−ブロモ−3−メチル、2−ブロモ−4−メチル、2−ブロモ−5−メチル、2−ブロモ−6−メチル、2−メチル−3−ブロモ、2−メチル−4−ブロモ、2−メチル−5−ブロモ、2−メチル−6−ブロモ、3−ブロモ−4−メチル、3−ブロモ−5−メチル又は3−メチル−4−ブロモフェニル、2,4−又は2,5−ジニトロフェニル、2,5−又は3,4−ジメトキシフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−又は3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、4−ヨードフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、4−フルオロ−3,5−ジメチルフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、2,4−ジクロロ−5−メチルフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、2−メトキシ−5−メチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、ベンゾチアジアゾール−5−イル又はベンゾキサジアゾール−5−イル又はナフチルである。
【0054】
アリーレンはArについて示された意味と同じ意味を有する、ただし、芳香族系からさらに結合する最隣接物への結合が存在する。具体的にHetで表される基は以下の意味を採用することができる。
【0055】
Hetは1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環もしくは二環、飽和、不飽和または芳香族複素環基であり、非置換あるいはHalおよび/またはA、OA、CO−AOH、COOH、COOA、COA、OH、CN、CONHA、NA、PA、NO、=NHまたは=Oにより一置換、二置換または三置換されていてもよく、ここでHalは、F、Cl、BrまたはIである。
【0056】
Hetは好ましくはクロメン−2−オニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピペリジニル、1−メチルピペリジニル、インドリル、チオフェニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チエニル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チオピラニル、ピリダジニル、ピラジル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、2,1,3−ベンゾチアジアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、キノリル、イソキノリルまたはシノリニルであり、それぞれ非置換あるいはHalおよび/またはAにより一置換または二置換されている。ここで、置換基はA、OA,CO−AOH、COOH、COOA、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であってよい。
【0057】
Hetは特に好ましくは2−又は3−フリル、2−又は3−チエニル、1−、2−又は 3−ピロリル、1−、2−、4−又は5−イミダゾリル、1−、3−、4−又は5−ピラゾリル、2−、4−又は5−オキサゾリル、3−、4−又は5−イソオキサゾリル、2−、4−又は5−チアゾリル、3−、4−又は5−イソチアゾリル、2−、3−又は4−ピリジル、1−メチルピペリジン−4−イル又はピペリジン−4−イル、又は2−、4−、5−又は6−ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、4−又は5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、3−又は5−イル、1−又は5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−又は−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−又は−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−又は−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−又は−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−又は−5−イル、2−、3−、4−、5−又は6−2H−チオピラニル、2−、3−又は4−H−チオピラニル、3−又は4−ピリダジニル、ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−又は7−インドリル、1−、2−、4−又は5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−又は7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−又は7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−又は7−ベンズイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−又は7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−又は7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−又は7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−又は8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−又は8−シノリニル、2−、4−、5−、6−、7−又は8−キナゾリニル、4−又は5−イソインドリル、5−又は6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−又は8−2H−ベンゾ[1,4]オキサジニルであり、より好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−又は−5−イル、2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イル又はクロメニルである。
【0058】
複素環基は部分的に又は完全に水素化されていてもよく、以下の意味を採用することができる:
Hetは、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−又は−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−又は−5−フリル、テトラヒドロ−2−又は−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−又は−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−又は−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−又は−5−ピロリル、−1−、−2−又は−3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−又は−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−又は−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−又は−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−又は−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−又は−6−ピリジル、1−、2−、3−又は4−ピペリジニル、2−、3−又は4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−又は−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−又は−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−又は−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−又は−5−ピリミジニル、1−、2−又は3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−又は−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−又は−8−イソキノリル、又は3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジニルであり、より好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−又は−6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニル又は代わりに3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−又は−7−イル、より好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニル又は2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルである。複素環アルキレン又は複素環アリーレンはHetについて示した意味と同じ意味を有する。ただし、複素環系からさらに結合する最隣接物への結合が存在する。
【0059】
複素環アルキレンは好ましくは1,2−、2,3−又は1,3−ピロリジニル、1,2−、2,4−、4,5−又は1,5−イミダゾリジニル、1,2−、2,3−又は1,3−ピラゾリジニル、2,3−、3,4−、4,5−又は2,5−オキサゾリジニル、1,2−、2,3−、3,4−又は1,4−イソオキサゾリジニル、2,3−、3,4−、4,5−又は2,5−チアゾリジニル、2,3−、3,4−、4,5−又は2,5−イソチアゾリジニル、1,2−、2,3−、3,4−又は1,4−ピペリジニル、あるいは1,4−又は1,2−ピペラジニル、より好ましくは1,2,3−トリヒドロトリアゾール−1,2−又は−1,4−イル、1,2,4−トリヒドロトリアゾール−1,2−又は−3,5−イル、1,2−又は2,5−ジヒドロテトラゾリル、1,2,3−トリヒドロオキサジアゾール−2,3−、−3,4−、−4,5−又は−1,5−イル、1,2,4−トリヒドロオキサジアゾール−2,3−、−3,4−又は−4,5−イル、1,3,4−トリヒドロチアジアゾール−2,3−、−3,4−、−4,5−又は−1,5−イル、1,2,4−トリヒドロチアジアゾール−2,3−、−3,4−、−4,5−又は−1,5−イル、1,2,3−チジアゾール−2,3−、−3,4−、−4,5−又は−1,5−イル、2,3−又は3,4−モルホリニル、又は2,3−、3,4−又は2,4−チオモルホリニルである。
【0060】
炭化水素基Rは、非常に特に好ましくは炭素原子数20以下の基であり、C〜C12−アルキレン基、C〜C10−シクロアルキレン基、又はC〜C20−シクロアルキレン基、C〜C14−アリーレン基又はC〜C20−アルキルアリーレン基、1つ又は2つのアルキル基を介して結合しており、及びこれらの特に好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン及びブチレンからなる系からのC〜C4−アルキレン鎖又は−C−及び−CMe−からなる系からのC〜C−アリーレン鎖又は−CH−、−CHMe−、−CHCH−及び−CHMeCH−からなる系からのC〜C−アルキルアリール鎖の中から挙げられる化合物から選択される意味を採用する。
【0061】
R3は、A、Ar、AAr、AArA、Het、AHet又はAHetAのすべての意味を採用することができ、ここでH原子は官能基Zにより置き換えられていてもよい。この炭化水素基は直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和、環状(A)もしくは芳香族(Ar)、複素環もしくは芳香族複素環(Het)であり、及び場合によって一置換又は多置換されている。炭化水素基R3は特に一般式(I)及び(II)で表される化合物のカルベンの機能について安定化作用を発揮する基である。特にR3中のH原子は後述する官能基Zにより置き換えられていてもよい。
【0062】
R3は好ましくは脂肪族、芳香族又は芳香族複素環炭化水素基であり、より詳細には、上記のように、脂肪族基A、上に挙げた基からの芳香族炭化水素Ar、又は上で定義した複素環置換基Hetである。R3は非常に好ましくは脂肪族、すなわち、直鎖、非分枝(直線状)、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和の、炭素原子数1〜18の環状脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である。化合物のこの基から、フェニル、トリル、2,6−ジメチルフェニル、メシチル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル又はシクロヘキシルが特に安定であり、調製された化合物の特に有利な特性をもたらす。
【0063】
R1及びR2は、互いに独立してHであってよく、又は上記のようにHal、A、Ar及びAArのすべての意味を採用してもよく、ここで、A及びAr中のH原子は官能基Zにより置き換えられていてもよく、及びHalはF、Cl、Br又はIであってよい。R1及びR2は、特に好ましくはR3の意味を採用するか、又はH、Cl又はBrである。R1及びR2は、特に好ましくは互いに独立してH、Cl、Br、直鎖、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和のC〜Cのアルキル基であり、ここでアルキル基中の1個又は2個以上のHがZにより置き換えられていてもよい。
【0064】
すでに述べたように、すべての炭化水素基R、R1、R2及びR3、特にR3中のH原子は、官能基Zにより置き換えられていてもよく、N、P、O又はS原子を保有してもよい。それらは1個又は2個以上のアルコール、アルデヒド、カルボキシル、アミン、アミド、イミド、ホスフィン、エーテル又はチオエーテルの官能基を有する基、すなわち、とりわけOA、NHA、NAA’、PAA’、CN、NO、SA、SOA、SOA又SOArの意味を有する基であってよく、ここで、A、A’及びA’’は互いに独立して、与えられた定義によるAの意味を採用することができる。それらは1個又は2個以上のアルコール(OA)、アルデヒド、カルボキシル、アミン、アミド、イミド、ホスフィン、エーテル又はチオエーテルの官能基を有する基であってよい。Z基は好ましくはOA、NHA、NAA’又はPAA’の意味を有する。
【0065】
したがって、R1及びR2は、例えばSOH、F、Cl、又はヒドロキシル、アルカノイル又はシクロアルカノイル基であってもよい。R1、R2及びR3は、メトキシ、エトキシ、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル又はオクタデカノイルであってよい。
【0066】
R1、R2及びR3はアシル基であってもよい。R1、R2及びR3は、好ましくは炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10のアシル基、及び例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル又はナフトイルであってよい。R1、R2及びR3は、さらにアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルチオ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル又はフェニルスルホニル基であってもよい。
【0067】
さらに、アルキル、アルキレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、アルカノイル及びシクロアルカノイルのR1、R2及びR3中の1個、2個又は3個のメチレン基は、N、O及び/又はSにより置き換えられていてもよい。
【0068】
R1、R2及びR3の炭化水素基は、A、Ar又はAArの意味を採用することができ、上で定義したアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール又はアルキニル基であってよく、その1個又は2個以上のH原子は上記の官能基Zにより置き換えられていてもよい。
【0069】
R3’は、先行技術と比較し、一般式(I)及び(II)で表される化合物における安定化作用を有する環状炭化水素である。R3’中のH原子は官能基Zにより置き換えられていてもよい。R3’は上記のように、好ましくは環状脂肪族炭化水素基A、上で挙げた群からの芳香族炭化水素Ar又は上で定義した複素環置換基Hetである。R3’は非常に好ましくは、炭素原子数6〜18の環状脂肪族又は芳香族炭化水素基である。この化合物の群から、メシチル、トリイソプロピルフェニル及びシクロヘキシルが特に適しており、調製された化合物の特に有利な性質が得られる。
【0070】
基R3’及びR4において、官能基ZはH原子により置き換えられていてもよい。これらの官能基ZはSi、N、P、O又はS原子を保有することができ、とりわけOA、NHA、NAA’、PAA’、CN、NO、SA、SOA、SOA又はSOArの意味を有することができ、ここでA、A’及びA’’は与えられた定義により互いに独立してAの意味を採用することができる。それらは1個又は2個以上のアルコール(OA)、アルデヒド、カルボキシル、アミン、アミド、イミド、ホスフィン、エーテル又はチオエーテルの官能基を有する基であってよい。Z基は好ましくはOA、NHA、NAA’又はPAA’の意味を有する。
【0071】
したがって、R4は、例えばSOH、F、Cl、ヒドロキシル、アルカノイル又はシクロアルカノイル基であってもよい。それらはメトキシ、エトキシ、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル又はオクタデカノイルであってよい。
【0072】
R4はアシル基であってもよい。R4は好ましくは炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアシル基であってよく、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、トリフルオロアセチル、ベンゾイルまたはナフトイルであってよい。R1、R2およびR4はさらにアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルチオ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル又はフェニルスルホニル基であってもよい。
【0073】
基R3’及びR4におけるアルキル、アルキレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、アルカノイルおよびシクロアルカノイルの1個、2個又は3個のメチレン基が、それぞれN、O及び/又はSにより置き換えられていてもよい。
【0074】
したがって、R4中の炭化水素基は、A、Ar又はAArの意味を採用することができ、したがって、上で定義したアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール又はアルキニル基であってよく、その1個又は2個以上のH原子は上記の官能基Zにより置き換えられていてもよい。
【0075】
R4はH原子であるか、又は上記のようにHal、A、Ar及びAArの意味を採用することができ、ここでA及びAr中のH原子は官能基Zにより置き換えられていてもよく、HalはF、Cl、Br又はIであってよい。R4中のHalは好ましくはCl又はBrである。R4は特に好ましくは、互いに独立してH、Cl、Br、又は直鎖、分枝、飽和、モノもしくはポリ不飽和のC〜Cのアルキル基であり、ここでアルキル基中の1個又は2個以上のHはZにより置き換えられていてもよい。
【0076】
R5は、上記のように互いに独立してA、Ar又はAArであってよく、特に炭素原子数10までのアルキル、シクロアルキル又はアリール基であってよい。R5は好ましくはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル又はC〜C10−アリールであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、1−,2−又は3−メチルブチル(−C10−)、1,1−、1,2−又は2,2−ジメチルプロピル(−C10−)、1−エチルプロピル(−C10−)、ヘキシル(−C12−)、1−,2−,3−又は4−メチルペンチル(−C12−)、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−又は3,3−ジメチルブチル(−C12−)、1−又は2−エチルブチル(−C12−)、1−エチル−1−メチルプロピル(−C12−)、1−エチル−2−メチルプロピル(−C12−)、1,1,2−又は1,2,2−トリメチルプロピル(−C12−)、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、フェニル、o−、m−又はp−トルイル、o−、m−又はp−エチルフェニル、o−、m−又はp−プロピルフェニル、o−、m−又はp−イソプロピルフェニル、o−、m−又はp−ter−ブチルフェニル又はナフチルの意味を有してもよい。R5は非常に好ましくはシクロヘキシル、シクロペンチル、イソプロピル又はフェニルである。
【0077】
R6及びR7は、互いに独立してH、A又はArであってよく、ここでA又はAr中のH原子は、炭素原子数30以下のアルケニル又はアルキニル基であってよい。したがって、R6及びR7は、互いに独立してH、炭素原子数30までのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル又はアルキニルであってよい。R6及びR7は、好ましくはH、C〜C10−アルキル、C〜C10−アリール、C〜C10−アルケニル又はC〜C−アルキニルである。したがって、R6及びR7は好ましくはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、1−,2−又は3−メチルブチル(−C10−)、1,1−、1,2−又は2,2−ジメチルプロピル(−C10−)、1−エチルプロピル(−C10−)、ヘキシル(−C12−)、1−,2−,3−又は4−メチルペンチル(−C12−)、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−又は3,3−ジメチルブチル(−C12−)、1−又は2−エチルブチル(−C12−)、1−エチル−1−メチルプロピル(−C12−)、1−エチル−2−メチルプロピル(−C12−)、1,1,2−又は1,2,2−トリメチルプロピル(−C12−)、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニル及びメチルシクロペンタジエニル、フェニル、o−、m−又はp−トルイル、o−、m−又はp−エチルフェニル、o−、m−又はp−プロピルフェニル、o−、m−又はp−イソプロピルフェニル、o−、m−又はp−ter−ブチルフェニル、ナフチル、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル又はヘキセニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル又はヘキシニルである。R6及びR7は、非常に好ましくはH、メチル、フェニル又はC〜C−アルケニルであり、例えばビニル、−C=CMe又は−C=CPhである。
【0078】
Xは各場合において一価のアニオンであり、荷電を均等化する。それは一般式(V)、(VI)、(Va)及び(VIa)で表される化合物において、リガンドとして2価の陽荷電ルテニウム中心原子に結合している。アニオンXの電気陰性度により、この結合はアニオンの自由電子対により形成された配位結合、又はイオン結合であってよい。
【0079】
化合物(I)及び(II)又は(V)及び(VI)において存在するアニオンXは、互いに独立して、Br、Cl、I及びFからなる群からのハライド(Hal)、偽ハライド(pseudohalide)、例えばシアニド(CN)及びチオシアニド(SCN)、アルコキシド、アリールオキシド、アルキル、アリール、カルボキシル等である。Xは好ましくはハライド、非常に好ましくはCl又はBrである。
【0080】
一般式(V)及び(VI)で表される化合物は、基本的に2つの異なる方法により調製することができ、それは方法A及び方法Bとして以下に参照される。
【0081】
一般式(V)及び(VI)で表される化合物の調製は、それぞれ(V)及び(VI)の脱プロトン化が可能な塩基、例えば金属アルコキシド、MOR、金属水素化物、MH、金属アミドMNH又はアンモニア、及び 無水[P(R5)Ru= CR6R7、不活性、非プロトン性の、有機溶媒を保護ガス雰囲気中に有する式1及び式2の反応における、それぞれ一般式(I)及び(II)で表される化合物の反応よる方法Aにより行うことができる。副生成物を分離した後、一般式(V)及び(VI)で表される化合物を得ることができる。
【0082】
方法A
【化6】

【0083】
一般式(V)及び(VI)で表される化合物の調製は、無水[P(R5)Ru= CR6R7、不活性、非プロトン性の、有機溶媒をそれぞれ有する式3及び式4の反応と同じように、それぞれ一般式(III)及び(IV)で表される化合物の反応よる方法Bにより行うことができる。副生成物を分離した後、一般式(I)及び(II)で表される化合物を得ることができる。
【0084】
方法B
【化7】

【0085】
方法Bの場合も、反応は保護ガス雰囲気中で行う。ここで、同様に窒素及びアルゴンは保護ガスとして好ましい。反応を遂行するために、出発物質を無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中に溶解し、懸濁させることができる。
【0086】
一般式(I)、(III)及び(V)で表される化合物の調製に用いる出発物質として必要な置換イミダゾールのイミダゾール親構造は、以下の一般的な反応式に従う米国特許出願公開第6,177,575号明細書に記載されている合成方法と同様にして調製することができる。
【0087】
【化8】

【0088】
一般式(II)、(IV)及び(VI)で表される化合物の親構造(置換4,5−ジヒドロイミダゾール)は、Tetrahedron Lett. 1980, 21, 885, Chem. Ber. 1965, 98, 1342 及び DE‑A‑11 89 998に記載されている方法により合成することができる。
【0089】
【化9】

【0090】
イミダゾール環の2番目の窒素原子上がシリル基により置換された、一般式(I)及び(II)で表される化合物の調製は、R3−置換イミダゾール又は置換4,5−ジヒドロイミダゾールと、塩素、臭素又はヨウ素を含有するアルコキシシラン
Hal−R−SiR’(OR’)3−n
との反応による簡単な方法により、保護雰囲気中でさらに溶媒を添加することなく行うことができる。
【0091】
しかし、不活性、非プロトン性の有機溶媒中で反応を行うこともできる。
【化10】

【0092】
採用された一般式で表されるイミダゾールの反応性に基づいて、反応を短時間又は必要とする日数、反応温度を維持して行う。反応温度は20〜+200℃の範囲、好ましくは20〜100℃、及び非常に好ましくは60から100℃の間である。反応終了後、得られた生成物(I)及び(II)は公知の方法により安定な物質として純粋な形態で単離することができ、さらに方法Aにより一般式(V)及び(VI)で表される化合物に転化し又は担体上に固定化することができる。
【0093】
一般式(III)及び(IV)で表される化合物は、保護雰囲気中、無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中、適切な塩基を用いアルコキシシリル官能基化イミダゾリウム塩(I)又はアルコキシシリル官能基化4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩(II)との反応により調製する。
【0094】
【化11】

【0095】
反応は、必要に応じてイミダゾリウム塩(I)又は4,5−ジヒドロイミダゾリウム塩(II)の調製後、予め精製することなく直接行うことができる。この反応に適している塩基は、無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中、一般式MORで表される金属アルコキシド又は金属水素化物MH、金属アミドMNH及びアンモニアからなる群から選択される塩基である。NH/NaH、塩基としては金属水素化物又は金属アルコキシドの使用が好ましい。カリウムt−ブトキシド(KOBu)及び水素化カリウム(KH)が種々の反応に非常に適していることが判明している。反応に関し、すべての反応物質は反応容器中に一緒に投入することができる。成分の添加順序は所望により選択することができる。
【0096】
一般式(I)及び(II)で表される出発物質は、適当な溶媒、例えばエーテル中に予め溶解又は懸濁させることができる。保護ガス雰囲気としては窒素又はアルゴンを用いることができる。この反応は−78℃〜+100℃、好ましくは−40℃〜+60℃の温度範囲で、1分〜6時間の反応時間で行うことができる。一般式(III)及び(IV)で表される生成物は、固体副生成物の除去及び揮発性成分の除去後が適切であるが、抽出及び結晶化により簡単な手段において純粋な形態で単離するか、一般式(V)又は(VI)で表される化合物に直接転化するか、又は担体として無機酸化物上に固定化することができる。
【0097】
使用することのできる担体は、表面に活性OH基を含有し、したがって出発化合物(I)〜(VI)との反応が可能な無機酸化物である。使用することのできる無機酸化物は、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムの天然もしくは化学的に調製された粒子状もしくはモノリシック酸化物または別の酸化物混合物である。好ましくはケイ素もしくはアルミニウムの粒子状もしくはモノリシック酸化物またはそれらの混合酸化物及びゼオライトの使用である。特に好ましくはケイ素の粒子状もしくはモノリシック酸化物の使用である。ケイ素含有物質は、鎖状、リボン状、層状形態のケイ酸から誘導されるシリカゲルまたは天然のケイ酸塩であってもよい。
【0098】
従来技術と比較した一般式(Ia)及び(IIa)で表される化合物の利点は、それらがR3’基の立体的要求により顕著に安定であり、及びこのような熱に非常に敏感なN−複素環カルベンリガンドの合成のための安定な前駆体及びそれから合成できる金属錯体であることである。従来技術と比較した一般式(IIIa)及び(IVa)で表される化合物の利点は、それらが初めて使用可能であること、及び他の非担持の類似物に比べ熱的に安定なことである。このように安定な固定化N−複素環カルベンリガンドは、初めて利用可能であり、及び遷移金属の多様性により、有機及び有機金属合成において有効に用いることのできる非常に活性な触媒を形成する。従来技術と比較した一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物の利点は、N−複素環カルベンリガンドを含有する、無機酸化物上に直接固定化されかつ熱的に安定なルテニウム触媒が初めて使用可能であることである。(Ia)〜(VIa)で表される化合物は無機酸化物上に共有結合により固定化されている。それらは適用する反応の反応溶液又は反応生成物から非常に簡単に分離することができる。
【0099】
一般式(Ia)〜(VIa)で表される化合物は再生し、適用する反応において再使用することができる。このことは、多くの固定化触媒が非常に高価であり、このように多数回使用できるため、特に化合物(Va)及び(VIa)の場合に有利である。このことはすべての適用する反応、特に高価な遷移金属触媒を用いる触媒反応においてプロセス費用を節約する結果となる。固定化可能なSiR’(OR’)3−n基がN−複素環カルベンリガンドに結合しており、後者がまだ存在しているP(R5)に比べルテニウム原子により強く結合しているため、触媒溶出のない固定化ルテニウム触媒が初めて使用可能である。触媒反応中、比較的弱く結合しているホスフィンリガンドは、溶液中で触媒活性ルテニウム中心から解離し、触媒活性種は触媒作用の間支持体に結合して残り、したがって溶出による触媒の喪失は発生しない。一般式(Ia)〜(VIa)で表される化合物は非常に簡単に、かつ定量的収量で使用可能である。さらに、粒子もしくはモノリスのいずれかからなる無機担体が存在する。したがって、すべての適用する反応はバッチ法又は連続法において行うことができる。
【0100】
一般式(Ia)及び(IIa)で表される化合物は、固定化反応媒体、固定化イオン性流動体、固定化リガンドまたは触媒前駆体として、および有機、有機金属および遷移金属触媒による合成における固定化触媒として使用できる。一般式(IIIa)及び(IVa)で表される化合物は、固定化N−複素環カルベン−金属錯体の調製の出発物質として、及び触媒反応、特にルテニウム触媒メタセシス反応、パラジウム触媒によるHeckまたはSuzuki反応、ロジウム触媒による水素化、フラン合成、ヒドロホルミル化、異性化またはヒドロシリル化における固定化リガンドとして使用できる。一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物は、有機又は有機金属合成における固定化触媒として使用できる。特に、それらはC−Cカップリング反応、水素化、異性化、シリル化およびヒドロホルミル化における触媒としての使用できる。該新規化合物は、C−Cカップリング反応、例えばオレフィンメタセシス、および水素化反応の固定化触媒として特に適している。該新規化合物は、オレフィンメタセシス反応、例えば交差メタセシス(CM)、閉環メタセシス(RCM)、開環メタセシス重合(ROMP)、非環状ジエンメタセシス(ADMET)及びエン−インメタセシスにおいて特に有利である。
【0101】
4.例
本発明のよりよい理解及び明確化のため、本発明の保護範囲内である以下の例を示す。しかし、記載した本発明原理の一般的な有効性のために、本発明の保護範囲を単にこれらの例に減縮して解釈するのは妥当ではない。
【0102】
(A)N,N’−二置換イミダゾリウム塩の固定化
1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドの、CHCl中、シリカゲル60上への固定化
2.64gのシリカゲル60及び2.68g(6.3mmol)の1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライド及び50mlのCHClをアルゴン雰囲気中、還流冷却器を取り付けたフラスコ中に導入する。混合物を一晩還流し、次いでシリカゲルをろ別し、洗浄液が無色となるまでCHClで洗浄する。固体を減圧下で乾燥し、淡褐色粉末として生成物を得る。
【0103】
【化12】

【0104】
1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドの、トルエン中、シリカゲル60上への固定化
3.07gのシリカゲル60及び5.38g(12.6mmol)の1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライド及び50mlのトルエンをアルゴン雰囲気中、還流冷却器を取り付けたフラスコ中に導入する。混合物を一晩還流する。シリカゲルをろ別し、洗浄液が無色となるまでCHClで洗浄し、次いで固体を減圧下で乾燥し、淡褐色粉末として生成物を得る。
【0105】
【化13】

【0106】
1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾリウムクロライドの、CHCl中、シリカゲル60上への固定化
3.00g(6.94mmol)の1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾリウムクロライド、2.69gのシリカゲル60及び25mlのCHClをアルゴン雰囲気中、窒素フラスコ中に導入する。混合物を一晩還流する。シリカゲルを溶液からろ別し、CHClで3回洗浄し、次いで減圧下で乾燥し、褐色粉末として生成物を得る。
【0107】
【化14】

【0108】
1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾリウムクロライドの、トルエン中、シリカゲル60上への固定化
3.00g(6.94mmol)の1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾリウムクロライド、2.71gのシリカゲル60及び25mlのトルエンをアルゴン雰囲気中、窒素フラスコ中に導入する。混合物を一晩還流する。シリカゲルを溶液からろ別し、CHClで3回洗浄し、次いで減圧下で乾燥し、褐色粉末として生成物を得る。
【0109】
【化15】

【0110】
1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドの、フラスコ中、シリカモノリスへの固定化
624mg(1.46mmol)の1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドを還流冷却器を取り付けた窒素フラスコ中、5mlのCHClに溶解する。この溶液中にモノリスを設置し、満たされるまで液体を徐々に吸い上げる。混合物を一晩還流する。溶液を除去する。モノリスを洗浄液が無色となるまでCHClで洗浄し、淡褐色のモノリス棒として生成物を得る。
【0111】
【化16】

【0112】
1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドの、連通(through-flow)中、クロモリスへの固定化
乾燥庫中、80℃で予め一晩乾燥したモノリスを連通装置中に挿入し、オーブンを30℃に設定する。それを流速0.05ml/分で1時間CHClによりリンスする。50mlのCHCl中に溶解した1.03g(2.00mmol)の1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリウムクロライドを試料環(sample loop)中に10mlずつ導入し、モノリスを通して流速0.3ml/分でポンプにより注入する。リンスは流速0.1ml/分でCHClにより一晩行った。
【0113】
【化17】

【0114】
(B)N−複素環カルベンの固定化
1−[3−(トリメトキシシリル)ベンジル]−3−(メシチル)イミダゾール−2−イリデンの、シリカゲル60上への固定化
1.5g(3.77mmol)の1−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]−3−(メシチル)イミダゾリウムクロライド、403mg(3.60mmol)のKOBu及び15mlのTHFをアルゴン雰囲気中、シュレンク管中に導入し、RTで1時間撹拌する。揮発性成分を減圧下で除去する。残渣を25mlのヘプタン中に回収する。溶液をろ過により残存する固体から分離し、カニューレを介して1.44gのシリカゲル60を充填した第2のシュレンク管に移す。シリカゲルは次いでフリットにより分離し、ヘプタンで洗浄し、高真空中で乾燥し、流動性粉末として生成物を得る。
【0115】
【化18】

【0116】
(C)ルテニウム触媒の固定化
{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhの、ヘプタン中、シリカゲル60上への固定化
380mgの{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhをアルゴン雰囲気中、15mlのCHClに溶解し、100mgのシリカゲル60を加える。混合物を25℃で18時間撹拌する。シリカゲル60をろ過により溶液から分離し、ヘプタン及びテトラヒドロフランを用いて繰り返し洗浄する。官能基化したシリカゲルを高真空中で乾燥する。
【0117】
【化19】

【0118】
{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhの、連通中、SiOモノリス上への固定化
SiOモノリスを乾燥庫中、120℃で一晩乾燥し、次いで連通装置のサーモスタットに接続する。クロモリスを流速0.5ml/分のCHClで1時間リンスする。950mgの{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}−(PCy)ClRu=CHPhをアルゴン雰囲気中、フラスコ中で30mlのCHClに溶解し、連通装置の試料管中に注入する。固定化は流速0.03ml/分で行う。次いでリンスを30mlのテトラヒドロフラン及び20mlのCHClにより行う。
【0119】
{1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhの、塩化メチレン中、シリカゲル60上への固定化
212mgの{1−メシチル−3−[4−(トリメトキシシリル)ベンジル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhをアルゴン雰囲気中、5mlのジクロロメタン中に溶解し、この溶液を70mgのシリカゲル60に加え、24時間還流する。上清をカニューレを用いて分離し、沈殿をヘプタンで3回、THFで3回、ジクロロメタンで1回洗浄する。高真空中で乾燥し、褐色粉末を得る。
【0120】
【化20】

【0121】
(D)固定化ルテニウム触媒の触媒作用試験
シリカゲル60上に固定化した{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhを用いるメタセシス
シリカゲル60(100mg)上に固定化した、40μmolの{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPh、86.4ml(4mmol)の1,7−オクタジエン及び50mlのCHClをアルゴン雰囲気中、三径フラスコ中に導入する。混合物を還流下で撹拌し、ガスクロマトグラフィー用に試料を採取する。GC: 1,7−オクタジエン:シクロヘキセン比: 1:4.4(81%転化)。
【0122】
シリカゲル60上に固定化した{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhによる触媒溶出試験
シリカゲル60(100mg)上に固定化した、40μmolの{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPh及び50mlのCHClをアルゴン雰囲気中、三径フラスコ中に導入する。触媒を分離し、86.4ml(4mmol)の1,7−オクタジエンを溶液に加える。混合物を還流下で撹拌し、ガスクロマトグラフィー用に試料を採取する。GCにおいてシクロへキセンは検出することができない。したがって、固定化触媒は溶液中に移行していない。
【0123】
SiOモノリス上に固定化した{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhを用いるメタセシス
{1−メシチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾール−2−イリデン}(PCy)ClRu=CHPhにより官能基化したSiOモノリスを連通装置内に挿入する。8ml(53mmol)の1,7−オクタジエンを試料環中に導入し、室温、流速0.5ml/分でポンプにより一度クロモリスに注入する。得られた反応溶液はGCにより分析する。GC: 1,7−オクタジエン:シクロヘキセン比: 1.00:1.67(62%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N’−二置換イミダゾリウム塩の固定化方法であって、N−複素環カルベンリガンドおよびルテニウム触媒が無機酸化物担体に担持されたN−複素環カルベンリガンドを含有し、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)
【化1】

式中、
Rは、総炭素原子数30以下のA、Ar、A−Ar、A−Ar−A、Het、AHetまたはAHetAであり、ここで
Aは直鎖、分枝または飽和C〜C20アルキル基、総炭素原子数4〜30のシクロアルキルまたは1個または2個のアルキル基を介して結合したシクロアルキルであり、ここでアルキル基中およびシクロアルキル基中の両方の1個のCHまたはCH基がN、NH、NA、Oおよび/またはSにより置き換えられていてもよく、およびH原子がOA、NAおよび/またはPAにより置き換えられていてもよく、
Arは、総炭素原子数20以下の−置換もしくは多置換または非置換の芳香族炭化水素であり、ここで置換基はA、Hal、OA、NA、PA、COOA、COA、CN、CONHA、NO、=NHまたは=Oであってよく、
Hetは、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環または二環、飽和または芳香族複素環基であり、非置換あるいはHalおよび/またはA、OA、COOA、COA、CN、CONHA、NA、PA、NO、=NHまたは=Oにより一置換、二置換または三置換されていてもよく、ここで
Halは、F、Cl、BrまたはIであり、
R’は、分子内の位置から独立して、炭素原子数1〜12のAまたはArであり、
R3は、炭素原子数6〜18のA、Ar、AAr、AArA、Het、AHetまたはAHetAであり、
R3’は、総炭素原子数4〜30の直鎖または分枝シクロアルキルまたは1個もしくは2個のアルキル基を介して結合したシクロアルキル、Ar、AAr、AArA、Het、AHetまたはAHetAであり、
R1およびR2は互いに独立してH、Cl、BrまたはR3として定義された基であり、
R4はH、Cl、Brまたは直鎖、分枝、飽和またはモノ−もしくはポリ不飽和C〜C−アルキル基であり、ここでアルキル基中の1個または2個以上のHがZにより置き換えられていてもよく、
R5はA、ArまたはAArであり、
R6およびR7は、H、AまたはArであり、ここでAまたはAr中のH原子はアルケニルまたはアルキニル基により置換されていてもよく、
Xは、互いに同一または異なる陰イオン性リガンドであり、および
nは0、1または2である、
で表される化合物を、保護ガス雰囲気中、アルコールR’OHの形態を有する無水、不活性、非プロトン性の有機溶媒中で表面に活性OH基を含有する無機金属酸化物と反応させ、生成物(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)
【化2】

式中、R、R1、R2、R3、R3’、R4、R5、R6、R7およびXは上記の定義と同じであり、「−support」は無機酸化物を示す、
を分離し、必要に応じて精製することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
使用する保護ガス雰囲気が窒素またはアルゴンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られた生成物をろ過により分離し、必要に応じて適切な溶媒を用いた洗浄により精製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
バッチ法により行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
連続法により行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
使用する無機酸化物が、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムの天然もしくは化学的に調製された粒子状もしくはモノリシック酸化物またはそれらの混合酸化物、あるいはゼオライトであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
使用する無機酸化物が、ケイ素もしくはアルミニウムの粒子状もしくはモノリシック酸化物またはそれらの混合酸化物である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
使用する無機酸化物が、ケイ素の粒子状もしくはモノリシック酸化物であり、鎖状、リボン状、層状形態のケイ酸から誘導されるシリカゲルまたは天然のケイ酸塩であってもよいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
使用する溶媒が、炭化水素、ハロゲン化炭化水素または環状エーテルであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
使用する溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロベンゼン、トリクロロトルエン、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
一般式(I)〜(VI)で表される出発化合物を、酸化物表面の活性OH基に対して0.01〜100倍、好ましくは0.1〜50倍および特に非常に好ましくは0.5〜10倍加えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
反応を−20℃〜+150℃、好ましくは0℃〜+120℃の間の温度で、反応時間30分〜10日間、好ましくは1時間〜2日間および非常に好ましくは1時間〜1日間行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
反応が完結したときに、生成物(Ia)〜(VIa)をろ過により分離し、場合によってペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロベンゼン、トリクロロトルエン、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒により洗浄し、次いで乾燥することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
一般式(I)〜(VI)で表される化合物の溶液を、モノリシック材料を通して連続的に供給し、モノリスを−20℃〜+150℃の間の温度に設定し、反応が完結したときに、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロベンゼン、トリクロロトルエン、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物からなる群から選ばれた溶媒により官能基化されたモノリスを洗浄することを特徴とする、請求項1、3および5のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
一般式(I)〜(VI)で表される化合物の溶液を、ポンプにより連続的に循環させ、モノリスを通した繰り返しの流れをもたらすことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
無機酸化物を混合し、一般式(I)〜(VI)で表される化合物の溶液を用いて反応を行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
無機酸化物担体上に固定された、一般式(Ia)および(IIa)で表されるN,N’−二置換イミダゾリウム塩、一般式(IIIa)および(IVa)で表されるN−複素環カルベンリガンド、ならびに一般式(Va)および(VIa)で表されるN−複素環カルベンリガンドを含有するルテニウム触媒。
【請求項18】
一般式(Ia)および(IIa)で表される化合物の、固定化反応媒体、固定化イオン性流動体、固定化リガンドまたは触媒前駆体として、および有機、有機金属および遷移金属触媒による合成における固定化触媒としての使用。
【請求項19】
一般式(IIIa)および(IVa)で表される化合物の、固定化N−複素環カルベン−金属錯体を調製するための出発物質としての使用。
【請求項20】
一般式(IIIa)および(IVa)で表される化合物の、触媒反応、特にルテニウム触媒によるメタセシス反応、パラジウム触媒によるHeckまたはSuzuki反応、ロジウム触媒による水素化、フラン合成、ヒドロホルミル化、異性化またはヒドロシリル化における固定化リガンドとしての使用。
【請求項21】
一般式(Va)および(VIa)で表される化合物の、有機または有機金属合成における固定化触媒としての使用。
【請求項22】
一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物の、C−Cカップリング反応、水素化、異性化、シリル化およびヒドロホルミル化における触媒としての使用。
【請求項23】
一般式(Va)及び(VIa)で表される化合物の、C−Cカップリング反応、例えばオレフィンメタセシス、および水素化反応、オレフィンメタセシス反応、例えば交差メタセシス(CM)、閉環メタセシス(RCM)、開環メタセシス重合(ROMP)、非環状ジエンメタセシス(ADMET)に対する固定化触媒としての使用。

【公表番号】特表2007−501695(P2007−501695A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522921(P2006−522921)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007939
【国際公開番号】WO2005/016524
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】