説明

固定化生物学的実体

哺乳類血液と相互作用し、凝固又は血栓形成を防止することができる実体を含む生体適合性組成物であるコーティング層を含む表面を有するメディカルデバイスであって、該実体は1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって前記表面に共有結合されている、メディカルデバイスがとりわけ記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定化生物学的実体、かかる実体によりコーティングされたメディカルデバイスなどの表面、ならびに、その製造のための方法及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
メディカルデバイスを体内に配置し又は体液と接触させるときに、多くの異なる反応が始まり、その幾つかはデバイス表面との接触時に血液の凝固をもたらす。この重大な有害作用を打ち消すために、メディカルデバイスを体内に入れる前に又はメディカルデバイスを体液と接触させるときに、抗血栓性効果を提供するために、よく知られた抗凝固性化合物であるヘパリンを患者に全身投与することが長年にわたって行われてきた。
【0003】
トロンビンは幾つかの凝固因子の1つであり、そのすべてが一緒になって、血液と接触した表面において血栓を形成させるように機能する。アンチトロンビン(アンチトロンビンIIIとしても知られている)(AT)は最も顕著な凝固抑制剤である。アンチトロンビンはトロンビン及び他の凝固因子の作用を中和し、このため、血液凝固を抑制し又は制限する。へパリンは、アンチトロンビンが凝固因子を抑制する速度を劇的に向上させる。
【0004】
しかしながら、高用量のヘパリンによる全身治療は出血が顕著になるという重大な副作用にしばしばつながる。ヘパリン治療の別の、稀ではあるが、重大な合併症は、血栓症(静脈及び動脈の両方)をもたらしうるヘパリン誘発性血小板減少症と呼ばれるアレルギー応答の発生である。手術の間などにおける高用量全身ヘパリン治療も活性化凝固時間の頻繁なモニタリングを必要とし(ヘパリン治療をモニタリングしそしてガイドするために使用)、そして必要に応じて対応する用量調節が必要である。
【0005】
それゆえ、患者の全身ヘパリン化の必要性がないか又は限定されうる解決策が模索されてきた。このことは、ヘパリンの抗凝固特性を用いたメディカルデバイスの表面改質によって達成されうるものと考えられてきた。このようにして、ヘパリンの層をメディカルデバイスの表面に付着させ、それにより、表面非血栓形成性を追求しようとする多少の成功技術が開発されてきた。長期生体活性が要求されるデバイスでは、ヘパリンは望ましくは浸出及び分解に対して耐性であるべきである。
【0006】
ヘパリンは負に帯電したスルフェート及びカルボン酸基をサッカリド単位上に有するポリサッカリドである。このため、ポリカチオン性表面へのヘパリンのイオン結合が試みられてきたが、これらの表面改質は安定性の欠如に悩まされ、ヘパリンが表面から浸出するので、機能の欠如をもたらすことになる。
【0007】
その後、表面上の基とヘパリンを共有結合させる種々の表面改質が調製されてきた。
【0008】
従来技術
メディカルデバイスを非血栓形成性とするための最もうまくいっている方法の1つは、ヘパリンフラグメントをデバイスの改質表面に共有結合させることであった。一般法及びその改良法は欧州特許:EP-B-0086186、EP-B-0086187、EP-B-0495820及びUS 6,461 ,665に記載されている。
【0009】
これらの特許は、たとえば、末端アルデヒド基の生成をもたらす亜硝酸分解を用いた、ヘパリンポリサッカリド鎖の選択的開裂を第一に行うことによる表面改質された基材の調製を記載している。第二に、メディカルデバイスの表面上に第一級アミノ基を有する1層以上の表面改質層を導入し、その後、ポリサッカリド鎖上のアルデヒド基を表面改質層上のアミノ基と反応させ、次いで、中間体シッフ塩基の還元により、安定な第二級アミン結合を形成させる。
【0010】
しかしながら、より容易に操作され、製造がより単純でかつ効率的であり、及び/又は、ヘパリン部分の生体利用能がより高い表面改質がなおも必要とされている。
【0011】
BaskinらのQSAR Comb. Sci. 26, 2007, No. 11-12, 1211 - 1219は細胞及び生物体内の生体分子の共有結合ラベル化のためのアジ化物とアルキンとの反応の使用を記載しているが、反応を触媒するため使用される銅の毒性のために、その使用が抑えられている。
【0012】
米国特許出願第20070020620号、第20050032081号及び第 20050222427号は種々の他の分子に生体分子を結合させるための同様の反応の使用に関する。
【0013】
WO2007/003054 (Shoichet)はポリマー上の生体分子の固定化を開示している。詳細には、生分解性ポリマーが記載されている (第1頁第13行)。 アルキンをアジ化物と反応させることで、トリアゾールを生成することを例示している。しかしながら、抗凝固機能を有する組成物の調製への応用については想定していない。さらに、メディカルデバイスの表面に生体分子を結合させるためのトリアゾールの使用についても想定していない。
【0014】
EP1806373 (Cordis)はメディカルデバイスをコーティングするための中性の3枝分かれポリマーを記載している。ポリマーは、通常、いかなる方法によっても予備処理されていないデバイス上にディップコートされ又はスプレイコートされる。使用に好ましいヘパリンは低分子量(すなわち、分解された)ヘパリンである。その開示は推測のようであり、そして、ヘパリンをポリマー骨格に結合する方法はスキーム1に示されているが、提案されている生成物(構造IIIとして示している)は生成されそうにない。というのは、ヘパリンと反応される分子のNHS部分はヒドロキシル基でなく第一級アミノ基によって置換されるはずであるからである。ヘパリンは化学処理により生成させないかぎり非常に少量の第一級アミノ基しか含まず、そして分子の末端点には全く存在しない。
【0015】
本出願で請求される優先日よりも後に公開されたUS2009/0018646 (Zhao)は、1,2,3−トリアゾールによって結合したヘパリン部分を有する生分解性又は生体吸収性中性ポリマーを記載している。そのポリマーは、通常、デバイス上にディップコートされ又はスプレイコートされる。そのデバイスは第一の薬剤保有ポリマー層を有することができるが、それ以外はいかなる予備処理もなされていない。使用されるヘパリンは、通常、低分子量ヘパリン(請求項3を参照されたい)又は脱硫酸ヘパリン(請求項4を参照されたい)のいずれかであり、それにより、ポリマーへの結合点として使用されるアミノ基(分子の末端点ではない)を露出させる。この反応は第一級アミノ基をほとんど含まない天然ヘパリンでの使用に実際上適切ではない。
【0016】
今回、哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体、たとえば、ヘパリン、特に、従来技術の分解ヘパリンでなく、完全長ヘパリンを表面に共有結合させる単純な方法を発見した。
【発明の概要】
【0017】
発明の要旨
本発明によると、とりわけ、哺乳類血液と相互作用して、凝固又は血栓形成を防止することができる実体(ここで、「実体」(entity又はentities)又は「抗凝固性実体」(anti-coagulant entity又はanti-coagulant entities))を含む生体適合性組成物であるコーティング層を含む表面を有するメディカルデバイスが提供され、その実体は1,2,3−トリアゾールを含む結合によって前記表面に共有結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面の簡単な説明
【図1】図1は例1.5aに記載されるとおりの本発明に係る種々の条件下において管腔側が亜硝酸分解されたヘパリン又は天然ヘパリンによりコーティングされたPVCチューブの例の写真を示す。
【図2】図2は例1.5bに記載されるとおりに管腔側が処理されたPVCチューブの例の写真を示し、これらのチューブは亜硝酸分解されたヘパリンによっては適切にコーティングされないことを例示する。
【図3】図3は例1.6に記載されるとおりに本発明により亜硝酸分解されたヘパリンによってコーティングされた種々の異なる基材の例の写真を示す。
【0019】
発明の詳細な説明
このような実体は当業者によく知られており、そしてその多くがオリゴサッカリド又はポリサッカリドである。ある実体はグリコサミノグリカンであり、たとえば、グルコサミン、ガラクトサミン及び/又はウロン酸が挙げられる。好ましいグリコサミノグリカンは「ヘパリン部分」であり、そして特に全長ヘパリン(すなわち、天然ヘパリン)である。
【0020】
用語「ヘパリン部分」はヘパリン分子、ヘパリン分子のフラグメント、又は、ヘパリンの誘導体もしくは類似体を指す。ヘパリン誘導体はヘパリンのいずれかの機能的又は構造的変種であることができる。代表的な変種としては、ヘパリンのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、たとえば、ナトリウムヘパリン(たとえば、Hepsal又はPularin)、カリウムヘパリン(たとえば、Clarin)、リチウムヘパリン、カルシウムヘパリン(たとえば、Calciparine)、マグネシウムヘパリン(たとえば、Cutheparine)、及び、低分子量ヘパリン(酸化脱重合又は脱アミノ化開裂により調製、たとえば、アドレパリン(Ardeparin)ナトリウム又はDalteparin)が挙げられる。他の例としては、ヘパランスルフェート、ヘパリノイド、ヘパリンをベースとする化合物、及び、疎水性対イオンを有するヘパリンが挙げられる。他の望ましい実体としては、因子Xaのアンチトロンビン−III媒介抑制に関与する「fondaparinux」組成物とも呼ばれる合成ヘパリン組成物が挙げられる。ヘパリンの追加の誘導体としては、ヘパリン及び、過ヨウ素酸酸化(米国特許第6,653,457号)及び他の当該技術分野で知られた反応などの手段により改質されたヘパリン部分が挙げられる。また、ヘパリン部分としては、下記のとおりのリンカー又はスペーサに結合したこのような部分が挙げられる。脱硫酸化ヘパリンは他の形態のヘパリンと比較して低い生体活性であるから、より好ましくない。
【0021】
ヘパリン部分が単一点で結合していることが好ましい。その単一点が末端結合であることが好ましい。また、その末端で結合したヘパリンが還元性末端(時折、還元性末端の位置C1と本明細書中で呼ばれる)により結合されていることが好ましい。末端点での結合の利点、特に、還元性末端点での結合の利点は、ヘパリン部分の他の位置での結合と比較してトロンビン相互作用部位の利用能が改良されるので、ヘパリン部分の生体活性が最大化されることが期待されることである。
【0022】
複数の実体、たとえば、ヘパリン部分が存在する場合には、その一部又はすべてが異なるタイプのものであることができるが、すべてが同一のものであることが好ましい。
【0023】
最も単純には、リンクはトリアゾール環のみからなる。しかしながら、より通常には、トリアゾール環は表面又はヘパリン部分のいずれか又はその両方からスペーサによって分離されているであろう。リンクのMw(分子量)は適切には10〜10Daである。リンクの長さは適切には10〜10Åである。リンク及び/又はスペーサーは直鎖であることが好ましい。幾つかの、すなわち、1より多くの、たとえば、2〜100、好ましくは30〜100の実体(たとえば、ヘパリン部分)が単一のリンクに結合し、このようにして、幾つかのヘパリン部分側鎖が存在する枝分かれリンクを形成することも可能である(より好ましくはないが)。ある実施形態において、リンカーは1個以上の芳香環を含む。他の実施形態において、リンカーはトリアゾール環以外の芳香環を全く含まない。ある実施形態において、リンカーは親水性であり、たとえば、それはPEG鎖を含むことができる。1つの態様において、リンクは3つの部分を有するものと見ることができる−表面とトリゾール部分との間の「リンクA」、トリアゾール部分、及び、トリアゾール部分と実体との間の「リンクB」。1つの実施形態において、リンクAの分子量は10〜10Daである。別の実施形態において、リンクBの分子量は10〜10Daである。1つの実施形態において、リンクAは1個以上の芳香環を含む。別の実施形態において、リンクAは芳香環を全く含まない。1つの実施形態において、リンクBは1個以上の芳香環を含む。別の実施形態において、リンクBは芳香環を全く含まない。1つの実施形態において、リンクAは親水性である。別の実施形態において、リンクBは親水性である。1つの実施形態において、リンクAはPEG鎖を含む。別の実施形態において、リンクBはPEG鎖を含む。1つの実施形態において、リンクA及びBは両方とも親水性であり、たとえば、それらは各々PEG鎖を含む。本明細書中で使用する際に、PEG鎖はエチレンオキシドの重合によって得ることができるポリマー鎖を指し、通常、10〜10Daの分子量である。別の態様において、リンクは2個以上のトリアゾール環を含むことができる。たとえば、実施例において記載されるとおり、二官能リンカー部分(たとえば、ビス−アジド)の使用は、各末端で、アルキン官能化実体及びアルキン官能化表面にそれぞれ結合して、2個のトリアゾール環を含むリンクをもたらすことができる。又は、ビス−アルキンリンカーの使用は、各末端で、アジド官能実体及びアジド官能表面にそれぞれ結合して、2個のトリアゾール環を含むリンクをもたらすことができる。このため、別の実施形態において、リンクは5つの部分を有するものと見ることができる:表面と第一のトリアゾール部分との間の「リンクA」、第一のトリアゾール部分、第一のトリアゾール部分と第二のトリアゾール部分との間の「リンクB」、第二のトリアソール部分、及び、そのトリアゾール部分と実体との間の「リンクC」。1つの実施形態において、リンクAの分子量は10〜10Daである。1つの実施形態において、リンクBの分子量は10〜10Daである。1つの実施形態において、リンクCの分子量は10〜10Daである。1つの実施形態において、リンクA及び/又はリンクB及び/又はリンクCは親水性であり、たとえば、それらはPEG鎖を含む。たとえば、リンクB(少なくとも)はPEG鎖を含むことができる。
【0024】
このように、適切には、ヘパリン部分などの抗凝固性実体と表面との間のリンクは、枝分かれされていない結合であり、特に、疎水性もしくは親水性ポリマー部分の枝分かれを含まない。もし、枝分かれを含ませようとするならば、その枝分かれはヘパリン部分などの別の抗凝固性実体を含む枝分かれのみである。リンクは生分解性であっても又は非生分解性であってもよい。コーティングされたメディカルデバイスが長期間にわたって非血栓形成性となるためには、リンクは非生分解性であることが好ましい。
【0025】
複数のリンクが存在する場合には、その一部又はすべてが異なるタイプのものであることができるが、すべてが同一のものであることが好ましい。
【0026】
表面は固体物体、たとえば、デバイスなどの造形物体、より特定的にはメディカルデバイス上にコーティング層を含むことができる。その固体物体はボイド空間又は孔を含む1つ以上の部分を有することができる。孔は物体内に存在し及び/又は物体の少なくとも1つの表面を含むことができる。多孔性物体の例は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。
【0027】
固体物体は1層以上、たとえば、2層以上、又は、3層又は4層又は5層の、たとえば、20層以下のコーティング層を有することができ、それにより、望ましくは、物体の(非血栓形成性とすることが望まれている)表面の一部又は物体の表面の全体が覆われる(多層薄膜ISBN:987−527−30440−0)。最適数の層は固体物体を製造している材料のタイプ及び考慮している表面の使用によって決まるであろう。表面は、所望ならば、層ごとに構成されうる。表面の完全な被覆を提供するのに必要な層の数及び性質は当業者によって容易に決定されうる。コーティング層は、固体物体の表面上に、高平均分子量のカチオンポリマー、たとえば、ポリアミン(たとえば、BASFから入手可能なPolyminとして知られているもの、EP 0086187 Larsson及びGolanderも参照されたい)を吸着させ、そして必要ならば、クロトンアルデヒド及び/又はグルタルアルデヒドなどのアルデヒド架橋剤などによりポリアミンを架橋し、次いで、アニオンポリマー、たとえば、アニオン性ポリサッカリド、たとえば、デキストランスルフェートの溶液を塗布し、少なくとも1層の吸着されたポリサッカリドの層を得ることにより形成されうる。このため、表面は高平均分子量ポリアミンの層及びアニオン性ポリサッカリドの層を含むことができる。より一般には、表面はカチオンポリマー(たとえば、ポリアミン)及びアニオンポリマー(たとえば、アニオン性ポリサッカリド)の1つ以上のコーティングバイレイヤーを含むことができ、その最内層はカチオンポリマーの層であり、そして最外層は実体に共有結合したカチオンポリマーの層である。このコーティング手順は本質的にEP-B-10495820に記載されるとおりに行われる。このため、実体に結合しているのは外側コーティング層のみである。通常、実体に結合している外側コーティングは、その後、架橋されない。
【0028】
EP-B-0495820の手順は、しかしながら、外側層がアニオン性ポリサッカリドであり、それが、その後、下記に記載されるとおり、実体又はアジドもしくはアルキンが結合されたポリアミンと反応されるように変更されうる。
【0029】
第一のコーティング層を適用する前に、固体物体、たとえば、メディカルデバイスの表面を洗浄し、それにより、付着性及び表面被覆性を改良することができる。適切な洗浄剤としては、エタノール又はイソプロパノール(IPA)などの溶剤、アルコール及び水酸化物化合物(たとえば、水酸化ナトリウム)の水溶液の混合物を含む溶液、水酸化ナトリウム溶液などの高pHを有する溶液、たとえば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含む溶液、Piranha(硫酸と過酸化水素との混合物)などの酸性溶液、及び、他の酸化剤、たとえば、硫酸及び過酸化マンガンカリウム又は種々のタイプのペルオキシ硫酸もしくはペルオキシ二硫酸(アンモニウム、ナトリウム及びカリウム塩も含む)の組み合わせが挙げられる。
【0030】
このため、本発明の態様は、表面がカチオンポリマー及びアニオンポリマーの1つ以上のコーティングバイレイヤを含み、その最内層がカチオンポリマーの層であり、そして最外層が実体に共有結合したカチオンポリマーの層である、上記表面を有するメディカルデバイスである。
【0031】
本発明の別の態様は、官能化されたカチオンポリマー外側層を含む表面を有する非血栓形成性メディカルデバイスであり、ここで、非凝固性実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによってカチオンポリマー外側層に結合している。
【0032】
本発明の別の態様は下記の方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイスであり、その方法は、
(a)アジド基を有するように官能化されたカチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b) アジド基を有するように官能化された上記カチオンポリマー表面層を、アルキン基を有するように官能化された非凝固性実体と反応させること、
を含み、それにより、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって、上記の非凝固性実体をデバイスに結合させる。
【0033】
本発明の別の態様は下記の方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイスであり、その方法は、
(a)アルキン基を有するように官能化されたカチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)アルキン基を有するように官能化された上記カチオンポリマー表面層を、アジド基を有するように官能化された非凝固性実体と反応させること、
を含み、それにより、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって、上記の非凝固性実体をデバイスに結合させる。
【0034】
本発明の別の態様は下記の方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイスであり、その方法は、
(a)カチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)ヘパリン部分などの複数の負に帯電した非凝固性実体を有し、その実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって結合された、官能化されたカチオンポリマーであって、複数の負に帯電した非凝固性実体を有するそのカチオンポリマーは正味で負の電荷を有する、官能化されたカチオンポリマーを、上記カチオンポリマー表面層と結合させること、
を含む。
【0035】
上記のとおり、カチオンポリマー表面は、ポリアミンなどの高平均分子量カチオンポリマーでデバイスを処理し、そして必要ならば、たとえば、アルデヒド架橋剤で架橋することにより調製されうる。場合により、さらなる層は下記の順次の工程により形成されてよい:(i)アニオンポリマー(たとえば、アニオン性ポリサッカリド)の溶液を適用し、アニオンポリマーの吸収された層を得ること、及び、 (ii) その後、それを、ポリアミンなどの官能化されたカチオンポリマーでさらに処理し、官能化されたカチオンポリマーの吸収された外側層を提供し、最外層はアジド基又はアルキン基を有するように官能化されたものとすること。
【0036】
通常、高平均分子量カチオンポリマーでデバイスを処理する第一工程の前に、適切な洗浄剤(たとえば、上記のもの)でデバイスの表面を洗浄する工程又は当該技術分野で知られている他の表面予備処理の方法を行ない、第一の層、たとえば、ポリアミン層の付着性及び被覆性を改良する。
【0037】
本発明の別の態様は下記の方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイスであり、その方法は、
(a)アニオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)ヘパリン部分などの複数の負に帯電した非凝固性実体を有し、その実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって結合された、官能化されたカチオンポリマーであって、複数の負に帯電した非凝固性実体を有するその官能化されたカチオンポリマーは正味で正の電荷を有する、官能化されたカチオンポリマーを、上記アニオンポリマー表面層と結合させること、
を含む。
【0038】
上記のとおり、アニオンポリマー表面層を呈するデバイスは、通常、場合により架橋を有するポリアミンなどの高平均分子量カチオンポリマーでデバイスを処理し、次いで、そのポリアミン表面を、アニオンポリマー(たとえば、アニオン性ポリサッカリド)の溶液で処理し、アニオンポリマーの吸収された外側層を得ることにより調製される。さらなる層は下記の順次の工程により形成されてよい:(i)カチオンポリマー(場合により架橋を有する)の溶液を適用し、カチオンポリマーの吸収された層を提供すること、及び、 (ii) その後、それを、アニオンポリマー(たとえば、アニオン性ポリサッカリド)の溶液で処理し、アニオンポリマーの吸収された外側層を提供すること。
【0039】
適切には、アニオンポリマーはポリサッカリド、たとえば、デキストランスルフェート又はその誘導体である。
【0040】
本明細書中に使用されるときに、「ポリアミン」は複数(たとえば、10、100、1000又はそれ以上)の遊離ペンダントアミノ基を有する分子であり、好ましくは少なくともある量の第一級アミノ基を含む。ポリアミンは、通常、高平均分子量、たとえば、平均分子量が10〜10Daである、ポリマー分子である。例示のポリアミンはポリエチレンイミンであり、BASFから入手可能なPolyminとして知られるものである。
【0041】
カチオンポリマーは当該技術分野において知られた技術を用いて官能化されうる。下記の実施例において例示されるとおり、ポリアミン上の第一級アミノ基はアルキン又はアジド基についての結合点として使用されうる。しかしながら、当業者は、アルキン又はアジド基についての結合点としてポリアミン上の第二級アミノ基を使用するように化学現象をどのように応用するかの知見を有するであろう。このため、ポリアミンは、従来の手段によって、たとえば、ポリアミン上のペンダント第一級アミノ基を、アルキン又はアジド基を有する活性化カルボン酸(たとえば、カルボン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体)と反応させることによって、アルキン又はアジド基を有するように官能化されることができる。別の方法は、カルボジイミド化学を用いて第二級アミンをカルボン酸と反応させ、又は、カルボン酸塩化物と反応させることである(カルボン酸部分はアルキン又はアジド基を有する)。
【0042】
アルキン又はアジド基を有する実体、たとえば、ヘパリンは本質的に既知の従来法によって製造できる。たとえば、アルキン基を有する実体、たとえば、ヘパリンは本質的に既知の従来技術を用いて、実体上のアルデヒド又はヘミアセタール基と、アルキン基又はアジド基を有するアルコキシアミン(すなわち、式R−O−NHの分子)とを反応させること、又は、実施例に与えられた方法と類似の方法によって製造されうる。結合はオキシイミン官能基(R−O−N=R’、R’はヘパリンである)により形成される。亜硝酸分解されたヘパリンはアルデヒド基を有し、そして天然ヘパリンは還元性末端においてヘミアセタール基を含み、それはこのようにして結合されうる。アジド基を有する実体、たとえば、ヘパリンは、また、アルキン官能性ヘパリン部分を、過剰量の二官能アジド(たとえば、PEGジアジド)と反応させることにより製造されうる。当業者は、炭水化物鎖の還元性末端にアジドもしくはアルキン官能基を導入するための他の方法を設計することができるであろう。
【0043】
コーティング層を用いる際に、哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体を続いて結合させるために、同一の官能化された外側表面を呈するようにすべての固体物体の表面を転化させる。そのため、本明細書中に記載された方法の特定の利点は、ほぼ非常に均一な非血栓性表面が形成されることである(図1及び3を参照されたい)。
【0044】
固体物体は、たとえば、合成又は天然由来の有機もしくは無機ポリマーもしくは材料であることができ、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルケトン(PEEK)、セルロース、シリコーン又はゴム(ポリイソプレン)、プラスチック材料、金属、ガラス、セラミック、その他の既知の医療材料又はこのような材料の組み合わせである。他の適当な基材材料としては、フルオロポリマー、たとえば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロカーボンコポリマー、たとえば、テトラフルオロエチレンペルフルオロアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)コポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)及びペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)のコポリマー、及び、上記の組み合わせで、ポリマー鎖間に架橋を有するもの及び有しないものが挙げられる。
【0045】
適切な金属としては、ニッケルチタン合金(ニチノール:Nitinol)、ステンレススチール、チタン、コバルトクロム、金及び白金が挙げられる。ニチノール及びステンレススチールは好ましい。チタンも好ましい。
【0046】
固体物体は適切にはメディカルデバイスである。メディカルデバイスはインプラント可能であっても又はインプラント可能でなくてもよい。インプラント可能な又はインプラント可能でないメディカルデバイスの例としては、カテーテル、ステント、ステント−グラフト、人工血管、血液留置モニタリングデバイス、人工心弁、ペースメーカー電極、ガイドワイヤ、心肺バイパスサーキット、カニューレ、バルーン、組織パッチデバイス、血液ポンプ、体外デバイス、たとえば、体外血液処理デバイス及び輸血デバイスが挙げられる。
【0047】
実体(たとえば、ヘパリン又は他のヘパリン部分)が結合しているコート化表面は酸化エチレン(EO)無菌化などの無菌化の後にも非血栓形成性を維持するようなものであることが好ましい。
【0048】
無菌化は当業者によく知られた手段によって行うことができる。無菌化の好ましい方法は酸化エチレンガスを使用することである。又は、e−ビーム又はγ−線などの放射線などの他の方法も用いることができ、かかる放射線は物体もしくはコーティング又はその両方を分解しない。
【0049】
本発明の好ましい実施形態は解剖学的部位での移植、たとえば、永久移植又は他の留置のためのコート化メディカルデバイスに関する。他の好ましい実施形態としては、カテーテル及び体外サーキットなどの一時使用デバイスが挙げられる。その例はボイド空間又は管腔を区切る解剖学的構造の内部に留置され、それにより、解剖学的構造を補強し又はボイド空間を維持する無菌(たとえば、無菌化)メディカルデバイスである。適切には、結合された実体、たとえば、ヘパリン又は他のヘパリン部分はいかなる実質的な程度にも溶離せず、デバイスに付着したままである。たとえば、残存AT結合活性は適切なままであり(たとえば、2又は4又は5又は10pmol/cm2を超える)、そして健康なドナーからの新鮮な血液で試験する前に、15時間のNaCl(0.15M)リンスを行い、血液ループ評価試験(例1.5aを参照されたい)で試験した際に、試験後の血液の血小板計数の減少は未コートの対照物よりもコート化表面に暴露された血液で実質的に低い(たとえば、コート化表面に暴露した血液に対する試験後の血小板計数の減少は20%未満であり、好ましくは15%未満であり、そしてより好ましくは10%未満である)。
【0050】
適切には、本発明の生体適合性組成物は生分解性又は生体吸収性でない。生分解性又は生体吸収性組成物では、非血栓形成性が時間とともに制限されることが一般に期待されうる。
【0051】
本発明に係るデバイスの非血栓形成性は幾つかの方法により試験されうる。たとえば、非血栓形成性は、特に、未処理の表面を有するデバイスと比較したときに、高アンチトロンビン結合活性を有することと関係があるだろう。
【0052】
たとえば、メディカルデバイスなどの表面が、少なくとも2、たとえば、少なくとも5ピコモルAT/平方センチメートル表面(pmol/cm2)のアンチトロンビン(AT)結合活性を有することが好ましい。他の実施形態において、AT結合活性は少なくとも6pmol/cm2、少なくとも7pmol/cm2、少なくとも8pmol/cm2、少なくとも9pmol/cm2、又は少なくとも10pmol/cm2表面である。ある実施形態において、AT結合活性は少なくとも100pmol/cm2表面である。AT結合活性は当該技術分野で知られた方法によって測定されることもでき、それらの方法は、たとえば、Pasche.らの"Binding of antithrombin to immobilized heparin under varying flow conditions" Artif.- Organs 15:481-491 (1991)及びUS 2007/0264308に記載されている。比較により、およそ2.7〜4.8pmol/cm2(実験的設定による)又はそれ以上のAT結合値では血漿との接触時に有意な血栓形成性酵素活性を生じさせないものとSanchezら (1997) J. Biomed. Mater. Res. 37(1 ) 37-42,Fig.1から結論付けることができる。
【0053】
別には、又は、追加的には、例1.5aに記載された血液ループ評価試験において凝固又は他の防御システムを抑制する高い能力のために、表面が非血栓形成性であることが好ましい。その試験によると、調べるべき表面をPVCチュービングに適用し、それを、新鮮な血液での試験の前に、0.15MのNaClで15時間リンスする。非血栓形成性は試験後に測定される血液の血小板計数の減少により示され、それは本明細書中に記載される方法により調製された表面に暴露された血液では、未コートの対照物よりも実質的に低い(コート化表面に暴露された血液では試験後に血小板計数の減少は20%未満であり、好ましくは15%未満であり、そしてより好ましくは10%未満である)。
【0054】
血液ループモデルとは異なる他の同様の血液評価方法は当業者によって行うことができ、それにより、血栓形成性/非血栓形成性を評価することができる。
【0055】
特定の表面領域に結合される実体の量は、たとえば、組成物の合成において使用される試薬の量を調節することにより、制御及び調節されることができる。
【0056】
表面上の実体の分布は本質的に知られている従来の染色技術によって決定でき、たとえば、ヘパリンの分布はトルイジンブルーを用いて決定されうる。
【0057】
本発明によると、哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体の製造方法も提供され、ここで、その実体は1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって表面に共有結合されている。その方法はアジド基を有する対応する表面と、アルキン基を有する対応する実体とを反応させること、又は、アルキン基を有する対応する表面と、アジド基を有する対応する実体とを反応させることを含む。
【0058】
この方法は本質的に知られている手順を用いて実施されうる。
【0059】
アジド基又はアルキン基を有する表面は本質的に知られている従来法により製造でき、たとえば、負に帯電したスルフェート基を有する表面、たとえば、EP-B-0086186 又はEP- B-0086187に記載された表面を、アジド基又はアルキン基のいずれかをそれぞれ有する適切なポリアミンと反応させることにより製造されうる。
【0060】
本発明によると、1,2,3−トリアゾールを含むリンクを介して実体を有するポリアミンも提供される。
【0061】
反応を用いる1つの実施形態において、表面はアジド基を有する。反応を用いる別の実施形態において、実体はアジド基を有する。
【0062】
反応はヒュスゲン環化付加(Huisgen cycloaddition) (1,2,3−トリアゾールを形成するためのアジド及び末端アルキンの1,3−双極性環化付加)において従来から使用されている反応条件を用いて、金属触媒、たとえば、銅触媒、たとえば、Cu(I)触媒の存在下に行うことができる。Cu(I)触媒は、所望ならば、たとえば、アスコルビン酸ナトリウムを用いた対応するCu(II)化合物の還元により、現場で製造されうる。反応は、また、所望ならば、流動条件下に行うことができる。
【0063】
Baskinの開示の関連で従来技術の欄で記載したとおり、この反応を触媒するために使用されるCu(I)触媒が毒性がある可能性があることが他の人によりコメントされた。しかしながら、例1.8に示すとおり、我々のコーティングは無毒性であると思われる。理論に制限されることはないが、いかなる残留Cu(I)触媒も表面から洗い流され又はポリアミン表面がそれと錯化し、それにより、いかなる毒性効果をも発揮することができなくなっている可能性がある。
【0064】
たとえば、反応は約5〜80℃の温度、好ましくは約室温で行うことができる。反応において使用されるpHは約2〜12であり、好ましくは約4〜9であり、そして最も好ましくは約7である。適切な溶剤としては、アジド又はアルキンに結合した実体が可溶性である溶剤、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが挙げられ、そして、好ましくは、水、又は水と上記の1つとの混合物である。表面に対する実体の割合は、表面上に所望の密度の実体が提供されるように調節されうる。得られる表面上に遊離アジド基又はアルキン基が残らないような試薬の割合を用いることが好ましい。
【0065】
この新規の方法により、実体、たとえば、ヘパリンは、有利なことには、表面被覆物の形成に関与しない表面基によって表面に結合されうる。対照的に、EP-B-0086186、EP-B-0086187及びEP-B-0495820に記載される従来技術はヘパリンをコーティングに結合するために使用される基と同一のタイプの基(第一級アミン)を層間表面コーティング法において使用する。
【0066】
この新規の方法は、従来技術の方法よりもpHに対して感受性が低い傾向があり、そのことも有利である。
【0067】
本発明によると、アルキン又はアジド基を有する実体、たとえば、ヘパリン又は他のヘパリン部分も提供される。凝固又は血栓形成を防止するように哺乳類血液と相互作用することができる、アルキン又はアジド基を有するヘパリン部分をも提供し、そのアルキン基又はアジド基はリンカーに結合しており、そのリンカーはヘパリン部分に末端点結合している。このヘパリン部分は、適切には、全長ヘパリン部分(すなわち、天然ヘパリン)である。
【0068】
本発明によると、官能化されたポリアミン表面も提供され、たとえば、EP-B-0086186、 EP-B-0086187及びEP-B-0495820に記載されているとおりに本質的に調製される表面であるが、ポリアミンの最外層上に1つ以上のアジド又は1つ以上のアルキン基をさらに有する表面が提供される。
【0069】
本発明によると、アジド基又はアルキン基を有するポリアミン表面、たとえば、リンクによりポリアミン表面のアミノ基に結合されるアジド基又はアルキン基を有するポリアミン表面を有するメディカルデバイスが提供される。
【0070】
本発明のさらなる特徴によると、哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体の製造方法も提供され、その実体は1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって表面に共有結合され、その表面は1層以上のポリサッカリド(すなわち、アニオン性ポリサッカリド)及びポリアミンを含み、その方法はポリサッカリド(すなわち、アニオン性ポリサッカリド、たとえば、負に帯電したスルフェート基を有する)の外側層を有する対応する表面を、1,2,3−トリアゾールを含むリンクを介して対応する実体を有するポリアミンと反応させること、又は、ポリサッカリド(すなわち、アニオン性ポリサッカリド、たとえば、負に帯電したスルフェート基を有する)の外側層を有する対応する表面を、アジド又はアルキン基を有するポリアミンと反応させ、得られた生成物を、アルキン又はアジド基をそれぞれ有する実体と反応させること、を含む。
【0071】
ポリサッカリド及びポリアミンの層を堆積させるためのこの方法は本質的に知られている手順を用いて行うことができ、たとえば、EP- B-0495820に記載されているのと類似の手順により行うことができる。
【0072】
本発明によると、官能化されたポリアミン、たとえば、リンカーなどにより1つ以上のアジド基又は1つ以上のアルキン基を有するポリアミンも提供される。
【0073】
本発明によると、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって結合された実体を有する官能化ポリアミンも提供される。このポリアミンは本質的に知られている手順、たとえば、本明細書中の他の箇所に記載されているのと類似の手順により製造されうる。
【0074】
本発明の生成物は下記の1つ以上の有利な性質を有することができる。
表面上での実体の置換度が制御できる。
実体、たとえば、ヘパリンの末端点(特に還元性末端点)での結合が好ましいけれども、末端点(1点)での結合及び複数点での結合の両方を行うことができる。
実体と表面との間のリンカーの長さを制御することができる。
全長ヘパリンを用いることができ、そのため、従来技術のヘパリンの亜硝酸分解に伴うヘパリンの開裂及び開裂生成物の部分の廃棄を回避することができる。ヘパリンを開裂する際に、アンチトロンビン結合シーケンスはフラグメントの一部で破壊されることがあり、それゆえ、全長ヘパリン又はスペーサを介して結合されたへパリンを使用することは、また、結合ヘパリンの生体利用能を改良することができる。
表面上の実体の均一分布を達成することができる。
たとえば、異なるリンク(長さ、タイプ)の使用により、実体の生体利用能を制御することができる。
ヘパリンを浸出せず、それゆえ、長寿命を有する非血栓形成性表面を得ることができる。
【0075】
本発明の他の態様は、哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体であって、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって表面に共有結合される実体を含む生体適合性組成物を含む。
【0076】
当業者は生体適合性組成物が任意の固体物体に適用されてよく、メディカルデバイスはそのうちの1例にすぎないものと評価するであろう。それゆえ、本発明の別の態様によると、このような生体適合性組成物を含む(たとえば、該組成物でコーティングされた)表面を有する固体物体が提供される。
【実施例】
【0077】
本発明は下記の実施例により例示されるが、決して限定されない。
例1.1:金の上での非血栓形成性表面の調製
官能化アミン化ポリマー外側層を有する、アミン化ポリマー及び硫酸化ポリサッカリドの層を含む表面は官能化ヘパリンと結合し、それにより、トリアゾール環を形成する。
【0078】
金の表面(石英結晶マイクロバランス(QCB)結晶上)を、LarmらによりEP-B-0086186 及びEP-495820に記載された方法(層ごと、多価電解質の電荷相互作用)を用いて予備処理し、硫酸化ポリサッカリドの層で終わりにした。
【0079】
金の表面を最初にエタノールで洗浄した。正に帯電したポリアミン(Polymin)及び負に帯電した硫酸化ポリサッカリド(デキストランスルフェート)の交互の吸着によってプライミングを堆積させた。ポリアミンを二価のアルデヒド(クロトンアルデヒド)で架橋させた。ポリアミン及び硫酸化ポリサッカリドの各対すべてを1つのバイレイヤと呼ぶ。金の表面を3つのバイレイヤでプライミングし、硫酸化ポリサッカリドで終わりにした。
【0080】
Polymin SN(Lupasol SN; LupasolはPolyminの別の商品名)を水で希釈し、原料溶液を調製した(5gのPolymin SNを20mLの精製水に添加した)(Polymin はBASFより入手可能なポリエチレンイミンカチオン性界面活性剤である)。
【0081】
完全なプロセスはぜん動ポンプ(Ismatec IPC-N 4)を有するQ-Sense E4 (http://www.q- sense.se/) 装置において、500 μL/minの流速で行った。
【0082】
アジド官能化ポリアミンの5%溶液(調製については例2aを参照)100 μLを、0.04 M/0.04 M ボレート/ホスフェート緩衝剤100 mLに、pH 8.0で添加した。アジド官能化ポリアミンのスルフェート表面への吸着を室温で10分間行った。過剰ポリマーを濯ぎ落とすために、吸着後に2分の水による濯ぎを行った。
【0083】
還元性末端のC1でのアルキン官能化がなされた、亜硝酸分解ヘパリン(例3aと同様に調製)50mgを、脱イオン水200mL中に溶解させ、CuSO4・5H2O 25mg、アスコルビン酸ナトリウム50 mg及びNaCl2.9 gを添加した。pHは4.4と測定された。
【0084】
アルキン官能化ヘパリンの溶液と、アジド官能化表面との反応を室温において1時間行った。pH8.0で、0.04 M/0.04 M ボレート/ホスフェート緩衝剤を用いて、10分間、非共有結合ヘパリンを濯ぎ落とすことにより精製を行った。2分間の脱イオン水による最終の濯ぎは緩衝剤の塩残留物を洗い落とすために行った。
【0085】
【化1】

【0086】
分析結果
結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性:21pmol/cm2
結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性を、本質的に、Pascheらの"Binding of antithrombin to immobilized heparin under varying flow conditions" Artif.- Organs 15:481-491 (1991)に記載されるとおりに測定した。
【0087】
例1.2:金の上での非血栓形成性表面の調製
官能化アミン化ポリマー外側層を有する、アミン化ポリマー及び硫酸化ポリサッカリドの層を含む表面は官能化ヘパリンと結合し、それにより、トリアゾール環を形成する。
【0088】
パラメータを若干変更して下記のとおりに例1.1のプロセスを繰り返した。
アジド官能化ポリアミンの5%溶液(例2aと同様に調製)200 μL(2mL/L)を用いた。アジド官能性ポリアミンのスルフェート表面への吸着を室温で20分間行った。
【0089】
CuSO4・5H2O 50mg(250mg/L)及びアスコルビン酸ナトリウム100 mg(500mg/L)を用いた。pHは4.8と測定された。
【0090】
最終的に、コート化された金表面の結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性は30pmol/cm2であった。
【0091】
例1.3(比較)
別の同一の金の表面を例1.2に記載したとおりに全く同一の方法でコーティングしたが、ヘパリンカップリング工程においてCuSO4を触媒として添加しなかった。結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性は無視できるほどであった。共有結合カップリングが起こらないならば、ヘパリンは最終の緩衝剤濯ぎ工程において濯ぎ落とされることを示す。
【0092】
例1.4:金の上での非血栓形成性表面の調製
還元性末端のC1でのアルキン官能化がなされた、天然ヘパリン(例3bと同様に調製)を用いて、pH4.8及びpH7(pHはそれぞれ1 M HCl及び1 M NaOHで調整)にて、例1.2と同様に金の表面をコーティングした。
【0093】
コート化された金の表面への結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性はpH4.8で調製した表面では25pmol/cmと測定され、調製がpH7で行われた場合には44pmol/cm2であった。
【0094】
例1.5a:PVC上での非血栓形成性表面の調製
PVCチュービングの管腔表面(I.D.3mm)をイソプロパノール及び酸化剤で洗浄した。その後、それを例1.1のようにプライミングし、3つのバイレイヤを有し、硫酸化ポリサッカリドで終わりにした。その後、例1.2のように、プライミングを最初にアジド官能化ポリアミン(例2aと同様に調製)と反応させ、次いで、pH4.8にて還元性末端のC1でのアルキン官能化がなされた亜硝酸分解ヘパリン(例3aと同様に調製)と反応させ、そして、それとは別に、pH4.8及びそれとは別にpH7にて還元性末端のC1でのアルキン官能化がなされた天然ヘパリン(例3bと同様に調製)と反応させた。例1.1と同一の緩衝剤及び水による濯ぎを用いて精製を行った。両方の実験において、全体のプロセスの間に使用される流速を100mL/分に設定した。サンプルについての結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性を試験し、許容できることが判明した(すなわち、2pmol/cm2を超える)。
【0095】
サンプルをトルイジンブルー(TB)(水中200mg/L)の溶液に浸漬することによりTBにより染色し、次いで、長時間の水での濯ぎを行った。TBはイオン相互作用によりヘパリンに結合する。図1に示すとおり、染色は均一であり、ヘパリンは表面上で均一に分布されていることを示す。
【0096】
コーティングの安定性を示すために、デシカントを含むアルミニウムホイルバッグ中で室温で貯蔵した後に(8ヶ月を超える)、コート化されたサンプルを再び分析した。エージング後のサンプルについての結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性を試験し、許容できることが判明した(すなわち、2pmol/cm2を超える)。
【0097】
血液ループ評価試験
血液ループ試験をこれらの貯蔵されたサンプルに対して行い、非血栓形成性表面のヘパリン生体活性が保持されていることが示された。最初に、コート化されたチュービングの管腔側を0.15MのNaClにより15時間、1mL/分の速度で洗浄し、すべてのゆるく結合したヘパリンを濯ぎ落とし、安定な表面とした。その後、洗浄されたチュービングを、20 rpmで Andersonら (Andersson, J.;Sanchez, J.; Ekdahl, K. N.; Elgue, G.; Nilsson, B.; Larsson, R. J Biomed Mater Res A 2003, 67(2), 458-466)により本質的に実施されるチャンドラーループモデルでインキュベートした。新鮮な血液及びループから回収される血液からの血小板を細胞計数計で計数し、血栓症の指標となる血小板の減少を測定した。参照として、非血栓形成性対照(すなわち、EP-B-0495820に記載されたとおりに本質的に調製された、PVC に適用したCarmeda BioActive Surface)(登録商標)、未コートのPVCチューブ及び血栓形成性対照(すなわち、アンチトロンビンを結合していない硫酸化ポリサッカリドの外側表面を有する3つのバイレイヤコーティング)を含めた。
【0098】
下記の表から判るように、本例(例1.5a)において調製された、貯蔵後の分解へパリンコーティング及び天然ヘパリンコーティングを用いて調製された被膜では本質的に血小板損失は実質的に見られない(血小板損失は血栓症を示す)。未コートのPVCチュービング及び硫酸化ポリサッカリド(アンチトロンビンを結合していない)の外側層を有する表面はこの実験において有意な血栓症を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
これらの結果は本発明により調製される安定な表面の非血栓形成性を示している。
【0101】
例1.5b(比較例)
例1.5aにおいて記載されたプロセスの変更を行った。今回はアジドにより官能化されていないポリアミン及びアルキンを有しない亜硝酸分解ヘパリンを用いた。上記の手順を用いて、サンプルをTB及びポンソーS(Ponceau S)で染色した。PS水溶液は200mg/LのPS及び5.75mL/Lの酢酸を含んだ。図2(上段パネル)に示されるとおり、この代わりの手順の後にTB染色は見られなかった。しかしながら、図2(下段パネル)では、PSによる赤色染色が見られ、外側アミン化層が生じていることを示している。このことはこの代わりの手順の後に、ヘパリンが結合しなかったことを示し、そしてすべての非共有結合ヘパリンは緩衝剤リンスの間に洗い落とされたことを示す。
【0102】
例1.6:種々の異なる基材上の非血栓形成性表面の調製
異なる基材(FEP、PTFE、シリコーンポリマー、ポリウレタン(PU)、ステンレススチール及びチタン)をイソプロパノール及び酸化剤で洗浄した。その後、例1.1と同様に4つのバイレイヤでプライミングし、硫酸化ポリサッカリドで終えた。そのプライミングされたものを例1.2と同様に、最初にアジドにより官能化したポリアミン(例2aと同様に調製)と、次いで、還元性末端のC1にてアルキンにより官能化した亜硝酸分解ヘパリン(例3aと同様に調製)と、pH7(1M HCl及び1M NaOHにより調整)にて反応させた。例1.1と同一の緩衝剤及び水リンスを用いて精製を行った。材料をコーティング溶液中に浸漬することによりコーティングを行った。
【0103】
図3から判るように、TBによる染色(例1.5aにおいて記載されるとおり)はすべての基材においてヘパリンの均一な分布を示す(小さい未染色スポットは材料の固定によるものである)。
【0104】
エチレンオキシド(EO)による無菌化後に測定した種々のコート化基材についての結合ヘパリンのアンチトロンビン結合活性を下記の表に示す。EO−無菌化はメディカルデバイスに対して用いる標準無菌化技術を用いて行った。
【0105】
【表2】

【0106】
データは、激しい無菌化条件への暴露にもかかわらず、保持される活性はなおも許容できることを示す。
【0107】
例1.7a:メディカルデバイス上の非血栓形成性表面の調製
Gore-Tex Vascular graft (薄壁、5 mm直径、カタログ番号: VT05070L)の管腔側をイソプロパノールで洗浄した。その後、例1.1と同様にして、2つのバイレイヤでプライミングし、硫酸化ポリサッカリドで終わりにした。その後、そのプライミングされたものを例1.2と同様に、最初にアジドにより官能化したポリアミン(例2aと同様に調製)と、次いで、還元性末端のC1にてアルキンにより官能化した亜硝酸分解ヘパリン(例3aと同様に調製)と、pH7(1M HCl及び1M NaOHにより調整)にて反応させた。例1.1と同一の緩衝剤及び水リンスを用いて精製を行った。全体のプロセスの間に使用される流速は30mL/分に設定した。EO−無菌化後のヘパリンのアンチトロンビン吸収活性(例1.6と同様の条件)は8.7pmol/cm2と測定された。データは、激しい無菌化条件への暴露にもかかわらず、保持される活性はなおも許容できることを示す。
【0108】
例1.7b:メディカルデバイス上での非血栓形成性表面の調製
還元性末端のアルキン官能化により改質された天然ヘパリン(例3b又は3cと同様に調製)を用いて例1.7aの方法を繰り返し、改質天然ヘパリンを含む非血栓形成性表面でコート化されたグラフトを提供することができる。
【0109】
例1.8:HDPE(高密度ポリエチレン)上での生体適合性表面の調製
HDPEシート(30cm、米国薬局方標準(USP reference standard)を、EP 0086186 (Larmら)の方法により、2分間、濃HCO中の濃KMnO(2g/L)の溶液中に浸漬することにより洗浄した。このシートを、その後、例1.1と同様に、3つのバイレイヤでプライミングし、硫酸化ポリサッカリドで終わりにした。その後、そのプライミングされたものを例1.2と同様に、最初にアジドにより官能化したポリアミン(例2aと同様に調製)と、次いで、還元性末端のC1にてアルキンにより官能化した亜硝酸分解ヘパリン(例3aと同様に調製)と、pH7(1M HCl及び1M NaOHにより調整)にて反応させた。例1.1と同一の緩衝剤及び水リンスを用いて精製を行った。コーティングは材料をコーティング溶液中に浸漬することにより行った。ISO10993に記載されるとおりにミネラルエッセンシャルメジウム(MEM)溶出試験を用いた細胞毒性試験において無毒であることが判った。
これらの結果は評価された表面の生体適合性を示す。
【0110】
例1.9:PVC上での生体適合性表面の調製(逆官能性及びPEGスペーサー)
PVCチュービングの管腔表面(内径3mm)をイソプロパノール及び酸化剤で洗浄した。それを、その後、正に帯電したポリアミン(Polymin)及び負に帯電した硫酸化ポリサッカリド(デキストランスルフェート)の4つのバイレイヤでプライミングし、硫酸化ポリサッカリドで終わりにした。
その後、次のコーティング工程は、アルキン官能化ポリアミン(例2bと同様に調製)の5%溶液2mLの、0.04M/0.04Mボレート/ホスフェート緩衝剤1000mL中の溶液を用いた。アジド官能ポリアミンの硫酸化表面への吸着を室温において15分間行った。吸着後に2分の水リンスを行い、過剰のポリマーを濯ぎ落とした。
その後、還元性末端のC1にアジド官能化を行いそしてポリエチレングリコール(PEG)スペーサを有するヘパリン250mg、CuSO4・5H2O250mg、アスコルビン酸ナトリウム50mg及びNaCl2.9gの脱イオン水1000mL中の溶液を用いた。pHを7に調整した(1M HCl及び1M NaOHにより調整)。
【0111】
例1.9aは例4aにより調製された、アジド官能基及び短PEGスペーサを有する亜硝酸分解ヘパリンを用いた。
【0112】
例1.9bは例4bにより調製された、アジド官能基及び長PEGスペーサを有する亜硝酸分解ヘパリンを用いた。
【0113】
例1.9cは例4cにより調製された、アジド官能基及び短PEGスペーサを有する天然ヘパリンを用いた。
【0114】
例1.9dは例4dにより調製された、アジド官能基及び長PEGスペーサを有する天然ヘパリンを用いた。
【0115】
アジド官能化ヘパリンを含む溶液と、アルキン官能化表面との間の反応は室温にて1時間行った。pH8.0で、0.04Mボレート/0.04Mホスフェート緩衝剤を用いて、非共有結合ヘパリンを10分間濯ぎ落とすことにより精製を行った。脱イオン水による2分間の最終のリンスを行い、緩衝剤の塩残留物を洗い落とした。
【0116】
例2a:Polymin SNのアジド官能化
【化2】

【0117】
Polymin SN(Lupasol SN; Lupasolは Polyminの別の商品名である)を水で希釈し、原料溶液(20mLの精製水に5gのPolymin SNを添加した)を調製した(PolyminはBASFから入手可能なポリエチレンイミンカチオン界面活性剤)。
【0118】
N−ヒドロキシスクシンイミド−アジドブチレート(Khoukhi; Vaultier; Carrie, - Synthesis and reactivity of methyl [gamma]-azido butyrates and ethyl [sigma]-azido valerates and of the corresponding acid chlorides as useful reagents for the aminoalkylation, Tetrahedron 1987, 43, (8), 1811-1822及びMalkoch, M.; Schleicher, K.; Drockenmuller, E.; Hawker, C. J.; Russell, T. P.; Wu, P.; Fokin, V. V., Structurally Diverse Dendritic Libraries: A Highly Efficient Functionalization Approach Using Click Chemistry, Macromolecules 2005, 38, (9), 3663-3678を参照されたい(R. Kumar, A. El-Sagheer, J. Tumpane, P. Lincoln, L. M. Wilhelmsson, T. Brown, Journal of the American Chemical Society, 2007, 129(21) 6859 - 6864も参照されたい) (1.7g, 7.5 mmol)の10mLの精製水中の溶液を、Polymin SN24mL(水溶液中約5ミリモルの第一級アミンとなる)と混合し、そして70℃で一晩反応させた。その後、ポリマーが沈殿するまで反応混合物を水及びイソプロパノール(Min99%, PhEur品質、Merck)で希釈した。イソプロパノールをデカントし、得られたスラリーの残留イソプロパノールを留去した。官能化したポリマーをNMR及びFTIRにより分析した。FTIRは2100cm−1で−Nの典型的なシグナルを示した。
【0119】
例2b:Polymin SNのアルキン官能化
【化3】

【0120】
アルキン官能性ポリアミンを例2aと本質的に同様に調製したが、N−ヒドロキシスクシンイミド−アジドブチレートの代わりに、N−ヒドロキシスクシンイミド−(4−ペンチノエート)(Salmain, M.; Vessieres, A.; Butler, I. S.; Jaouen, G. Bioconjugate Chemistry 1991 , 2(1), 13-15を参照)を用いた。
【0121】
例3a:アルキン官能化亜硝酸分解ヘパリンの調製
【化4】

【0122】
試薬:
(i)アルデヒド基を有する亜硝酸分解ヘパリン(USP 4,613,665の例2と本質的に同様に調製)3.25g乾燥重量(0.65ミリモル)
(ii)O−(プロプ−2−イニル)−ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(Xu, R.; Sim, M. K.; Go, M. L., Synthesis and pharmacological characterization of O-alkynyloximes of tropinone and N-methylpiperidinone as muscarinic agonists, J Med Chem 1998, 41 , (17), 3220-3231を参照) 0.70g、乾燥重量 (6.5ミリモル)
(iii)酢酸(100%Merck)、3mL
(iv)精製水50mL
【0123】
化合物を混合溶剤中に溶解させ、そしてpHを4M NaOHにより4.5に調整した。反応を室温にて3日間続けた。得られた生成物を、SpectraPor透析膜MWCO(分子量カットオフ)1kD(フラット幅45mm)を用いて精製水に対して透析した。
官能化生成物をFTIRにより分析した。それは3100cm−1でのアルキンからの典型的なシグナルを示した。
官能化ヘパリンの活性は96IU/mgであった。それは官能化ヘパリンの活性が実質的に官能化によって影響を受けないことを示す。
【0124】
例3b:アルキン官能化天然ヘパリンの調製
【化5】

【0125】
天然ヘパリン(SPL、Scientific Protein Laboratories, lot. no. 1037)を例3aに記載される手順によって官能化した。
官能化ヘパリンの活性は211IU/mgであった。それは官能化ヘパリンの活性が実質的に官能化によって影響を受けないことを示す。
【0126】
例3c:芳香族スペーサを有するアルキン官能化天然ヘパリンの調製
【化6】

【0127】
天然ヘパリン(SPL、Scientific Protein Laboratories, lot. no. 1037)(20mg)を250μLの酢酸(100%Merck)中に溶解し、そして250μLの精製水及び原料溶液からの6μLのN−(4−(2−アミノオキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド(下記の例5を参照されたい)を添加した。反応を室温において16時間行った。反応生成物を濃縮し、そしてトルエン(3×2mL)とともに共蒸発させ、黄色固形分を提供した(約20mg)。
【0128】
例4:PEG鎖リンクを有する、アジド官能化した亜硝酸分解ヘパリン及び天然ヘパリンの調製
【化7】

【0129】
中間体の調製
N−ヒドロキシスクシンイミジル4−アジドブチレート
刊行物に記載された手順(N. Khoukhi, M. Vaultier, R. Carrie, Tetrahedron, 1987, 43(8) 1811 - 1822)によって4−アジド酪酸誘導体を調製し、次いで、N- ヒドロキシスクシンイミド活性化を行った(R. Kumar, A. El-Sagheer, J. Tumpane, P. Lincoln, L. M. Wilhelmsson, T. Brown, Journal of the American Chemical Society, 2007, 129(21 ) 6859 - 6864)。
【0130】
ω-アジド二官能化長PEG-スペーサ (×約40、上記を参照されたい)
ジアミノ官能化PEG (O,O'-ビス (2-アミノプロピル)ポリエチレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリプロピレングリコール1900) (7.2g; 約3.8 mmol;×約40)の15 mLのジクロロメタン (DCM)中の溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミジル4−アジドブチレート (2.0 g, 約8.85 mmol)を添加した。反応混合物を室温にて一晩攪拌し、その後、DCMにより希釈し、そして次いで、1 M HCl、NaHCO3 (飽和)及びブラインで洗浄した。乾燥 (MgSO4)、濃縮及び真空下での乾燥により、約8 gの若干黄色の固形分を生成した。反応生成物のTLC及びMALDIによる同定は期待される結果を示した。
【0131】
ω-アジド二官能化短PEG-スペーサ (×約11、上記を参照されたい)
ジアミノ官能化PEG (O,O'-ビス (2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール- ブロック-ポリエチレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコール500) (2.4 g; 約3.9 mmol;×約11)の10 mLのジクロロメタン (DCM)中の溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミジル4−アジドブチレート (2.0 g,約8.85 mmol)を添加した。反応混合物を室温にて一晩攪拌し、その後、DCMで希釈し、そして次いで、1 M HCl、NaHCO3 (飽和)及びブラインで洗浄した。乾燥 (MgSO4)、濃縮及び真空下での乾燥により、約3.1 gの油性生成物が提供された。反応生成物のTLC及びMALDIによる同定は期待される結果を示した。
【0132】
スペーサを有するアジド官能化ヘパリンの調製(逆官能)
例4a:ω−アジド二官能化短PEG(800mg、約1.0ミリモル)を脱イオン水(35mL)中に溶解させ、その後、アルキン官能化亜硝酸分解ヘパリン(500mg、約0.1ミリモル)(例3aを参照されたい)をCuSO4・5H2O (100 mg)及びアスコルビン酸ナトリウム(160 mg)とともに添加した。その後、反応混合物を2日間攪拌し、次いで、SpectraPor透析膜MWCO 1kD(フラット幅45mm、長さ50cm)を用いて精製水に対して透析を行った。約200mLの水中の透析された生成物を20μmフィルタープレート上でろ過し、そして凍結乾燥して620mgを提供した。短PEGスペーサを有するアジド官能化亜硝酸分解ヘパリンの活性は96IU/mgであった(炭水化物部分を基礎に計算)。それは官能化ヘパリンが官能化によって実質的に影響を受けないことを示す。
【0133】
例4b:ω−アジド二官能化長PEG (2.0 g, 約1.0 mmol)を脱イオン水 (20 mL)中に溶解させ、その後、アルキン官能化亜硝酸分解ヘパリン (500 mg, 約0.1 mmol)(例3aを参照されたい)をCuSO4・5H2O (100 mg)及びアスコルビン酸ナトリウム (160 mg)とともに添加した。その後、反応混合物を2日間攪拌し、SpectraPor 透析膜MWCO 1 kD (フラット幅45mm、長さ50 cm)を用いて、精製水に対して3日間透析した。約600mLの水中の透析した生成物を凍結乾燥して、1.8 gを得た。長PEGスペーサを有するアジド官能化亜硝酸分解ヘパリンの活性は93 IU/mgであった(炭水化物部分を基礎に計算)。それは官能化ヘパリンが官能化によって実質的に影響を受けないことを示す。
【0134】
例4c:ω-アジド二官能化短PEG (800 mg, 約1.0 mmol)を脱イオン水 (35 mL)中に溶解し、その後、アルキン官能化天然ヘパリン (1.0 g, 約0.1 mmol)(例3bを参照されたい)をCuSO4・5H2O (100 mg)及びアスコルビン酸ナトリウム (160 mg)とともに添加した。その後、反応混合物を2日間攪拌し、SpectraPor 透析膜MWCO 1 kD (フラット幅45mm、長さ50 cm)を用いて、精製水に対して3日間透析した。200mLの水中の透析した生成物を20μmフィルタープレート上でろ過し、そして凍結乾燥して、900mgを得た。短PEGスペーサを有するアジド官能化天然ヘパリンの活性は測定されなかった。
【0135】
例4d:ω-アジド二官能化長PEG (1.0 g, 約0.5 mmol)を脱イオン水 (15 mL)中に溶解させ、その後、アルキン官能化天然ヘパリン (450 mg, 約0.05 mmol)(例3bを参照されたい)をCuSO4・5H2O (50 mg)及びアスコルビン酸ナトリウム (80 mg)とともに添加した。その後、反応混合物を2日間攪拌し、SpectraPor透析膜MWCO 1 kD (フラット幅45mm、長さ40 cm)を用いて精製水に対して3日間透析した。約100 mLの水中の透析した生成物を凍結乾燥して840 mgを得た。長PEGを有するアジド官能化天然ヘパリンの活性は181 IU/mgであった(炭水化物部分を基礎に計算)。それは官能化ヘパリンが官能化によって実質的に影響を受けないことを示す。
【0136】
例5:二官能リンカー
5a)N−(4−(2−(ヒドロキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド
N−ヒドロキシスクシンイミド−(4−ペンチノエート) (Malkoch, M.; Schleicher, K.; Drockenmuller, E.; Hawker, C. J.; Russell, T. P.; Wu, P.; Fokin, V. V., Structurally Diverse Dendritic Libraries: A Highly Efficient Functionalization Approach Using Click Chemistry. Macromolecules 2005, 38, (9), 3663-3678.) (200 mg, 1.0 mmol)及びp−アミノフェニルエタノール (125 mg, 0.9 mmol)を2 mLのジクロロメタン中にトリエチルアミン(140 μL, 1.0 mmol)及び5滴のジメチルホルムアミドとともに溶解させた。反応混合物を室温にて2時間攪拌した。粗反応生成物を濃縮し、10 mLの酢酸エチル中に溶解させ、そして5 mLの水、次いで、5 mLの0.5 M HCl (水溶液), 5 mLの10 NaHCO3 (水溶液)そして最後に5 mLの水で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、ろ過し、そして溶剤を蒸発させた。トルエン(T)及び酢酸エチル(E)の4:1〜1:2 (T:E)の勾配液により溶離させ、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって生成物をさらに精製した。生成物であるN−(4−(2−(ヒドロキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミドをNMR及びMALDI-TOFにより特性化した。
【0137】
5b)N−(4−(2−(メタンスルホネート)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド
N−(4−(2−(ヒドロキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド(210 mg, 1.0 mmol)を4 mLのピリジン中に溶解させた。メタンスルホニルクロリド(MsCl) (100 μL, 1.3 mmol)をO0Cで添加した。攪拌されている反応混合物を室温に戻し、室温で5分間反応させた。溶剤を蒸発させ、そして残留物を10 mLの酢酸エチル中に再溶解させ、そして5 mLの水、次いで、5 mLの0.1 M HCl (水溶液)そして最後に5 mLの水で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、そして溶剤を蒸発させ、生成物であるN−(4−(2−(メタンスルホネート)エチル)フェニル)ペント−4−インアミドを生じた。
【0138】
5c)N−(4−(2−(N−オキシフタルイミド)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド
N−(4−(2−(メタンスルホネート)エチル)フェニル)ペント−4−インアミドを6 mLのアセトニトリル中に溶解させ、そしてN−ヒドロキシフタルイミド(200 mg, 0.9 mmol)及びトリエチルアミン (250 μl, 1.8 mmol)の2 mLのアセトニトリル中の溶液に加えた。反応混合物を50 0Cで2日間攪拌した。反応混合物を、その後、40 mLの酢酸エチルにより希釈し、そして、20 mLの0.5 M HCl (水溶液)、5x30 mLの10 NaHCO3 (水溶液)で洗浄し、赤色をなくし、最終的に5 mLの水で洗浄した。有機相を、MgSO4で洗浄し、ろ過し、そして溶剤を蒸発させた。粗生成物を10 mLのトルエンから結晶化させ、N−(4−(2−(N−オキシフタルイミド)エチル)フェニル)ペント−4−インアミドを得た。それをNMR及びMALDI- TOFにより特性化した。
【0139】
5d)N−(4−(2−(アミノオキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド
N−(4−(2−(N−オキシフタルイミド)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド (20 mg, 5.5 μmol)及びエチレンジアミン (200 μL, 3,0 mmol)を2 mLのエタノール中で溶解させた。反応混合物を75 0Cで2時間攪拌した。溶剤を蒸発させ、そして粗生成物を、トルエン(T)及び酢酸エチル(E)の2:1〜1:3 (T:E)の勾配液により溶離させ、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物であるN−(4−(2−(アミノオキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミドをNMR及びMALDI- TOFにより特性化した。
【0140】
【化8】

【0141】
原料溶液の調製
N−(4−(2−(アミノオキシ)エチル)フェニル)ペント−4−インアミド(2.5 mg)をメトリックフラスコに入れ、そしてリンカーを溶解させるためにアセトニトリル (1000μl)を添加した。
【0142】
本明細書及び次の特許請求の範囲をとおして、文脈から別のことが要求されないかぎり、用語「含む」及びその変更形は記載した整数、工程、整数の群又は工程の群を包含するが、他のいかなる整数、工程、整数の群又は工程の群を排除しないことを意味するものと理解されるであろう。
【0143】
本発明の明細書を通して言及されたすべての特許及び特許出願を参照により本明細書中に取り込む。
【0144】
本発明は好ましい群及びより好ましい群ならびに適切な群及びより適切な群ならびに上記の群の実施形態のすべての組み合わせを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を含む表面を有するメディカルデバイスであって、該コーティング層は哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができる実体を含む生体適合性組成物であり、前記実体は1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって前記表面に共有結合されている、メディカルデバイス。
【請求項2】
前記実体はヘパリン部分である、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記実体は末端点で結合したヘパリン部分である、請求項1又は2記載のデバイス。
【請求項4】
前記末端点で結合したヘパリン部分は還元性末端により結合されている、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記実体は全長ヘパリンである、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項6】
前記表面は2層以上のコーティング層を含み、外側コーティング層のみが前記実体に結合している、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項7】
カチオンポリマー及びアニオンポリマーのコーティングバイレイヤを1つ以上含み、最内層はカチオンポリマーの層であり、そして最外層は前記実体に共有結合したカチオンポリマーの層である、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項8】
同一のタイプの複数のリンクを含む、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項9】
同一のタイプの複数の実体を含む、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項10】
1つより多くの実体が各リンクに結合している、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項11】
前記コーティングはカチオンポリマーとしてポリアミンを含む、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項12】
前記コーティングは高平均分子量ポリアミンの層及びアニオンポリマーとしてアニオン性ポリサッカリドの層を含む、請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
前記ポリアミンは架橋されている、請求項11又は12記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは金属又は合成もしくは天然由来の有機もしくは無機ポリマーを含む、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは解剖学的部位での移植又はその他の留置のための無菌メディカルデバイスである、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスは少なくとも2ピコモルアンチトロンビンIII毎平方センチメートル表面(pmol/cm2)のアンチトロンビンIII結合活性を有する、先行の請求項のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項17】
前記メディカルデバイスは少なくとも5ピコモル、たとえば、少なくとも10ピコモルアンチトロンビンIII毎平方センチメートル表面(pmol/cm2)のアンチトロンビンIII結合活性を有する、請求項16記載のデバイス。
【請求項18】
官能化カチオンポリマー外側層を含み、非凝固性実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって前記カチオンポリマー外側層に結合している、非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項19】
(a)アジド基を有するように官能化されたカチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)アジド基を有するように官能化された前記カチオンポリマー表面層を、アルキン基を有するように官能化された非凝固性実体と反応させること、
を含み、それにより、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって前記非凝固性実体を前記デバイスに結合させる、方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項20】
(a)アルキン基を有するように官能化されたカチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)アルキン基を有するように官能化された前記カチオンポリマー表面層を、アジド基を有するように官能化された非凝固性実体と反応させること、
を含み、それにより、1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって前記非凝固性実体を前記デバイスに結合させる、方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項21】
(a)カチオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)ヘパリン部分などの複数の負に帯電した非凝固性実体を有し、該実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって結合された、正味で負の電荷を有する、官能化されたカチオンポリマーを、前記カチオンポリマー表面層と結合させること、
を含む、方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項22】
(a)アニオンポリマー表面層を呈するようにメディカルデバイスを処理すること、
(b)ヘパリン部分などの複数の負に帯電した非凝固性実体を有し、該実体が1,2,3−トリアゾールを含むリンクによって結合された、正味で正の電荷を有する、官能化されたカチオンポリマーを、前記アニオンポリマー表面層と結合させること、
を含む、方法により得ることができる非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項23】
前記アニオンポリマーはデキストランスルフェート又はその誘導体である、請求項22記載の非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項24】
前記カチオンポリマーはポリアミンである、請求項18〜23のいずれか1項記載の非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項25】
前記実体は末端点で結合したヘパリン部分である、請求項18〜24のいずれか1項記載の非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項26】
前記ヘパリン部分は全長ヘパリン部分である、請求項25記載の非血栓形成性メディカルデバイス。
【請求項27】
アルキン基を有する対応する実体を、アジド基を有する対応する表面と反応させること、又は、アジド基を有する対応する実体を、アルキン基を有する対応する表面と反応させることを含む、請求項1〜26のいずれか1項記載のメディカルデバイスの製造方法。
【請求項28】
1層以上のポリサッカリド及びポリアミンの層を含む表面を有する、請求項1〜26のいずれか1項記載のデバイスの製造方法であって、
ポリサッカリドの外側層を有する対応する表面を、1,2,3−トリアゾールを含むリンクにより対応する実体を有するポリアミンと反応させること、又は、ポリサッカリドの外側層を有する対応する表面を、アジド基又はアルキン基を有するポリアミンと反応させ、得られた生成物を、それぞれ、アルキン基又はアジド基を含む実体と反応させること、を含む、製造方法。
【請求項29】
アジド基又はアルキン基を有するポリアミン表面を有するメディカルデバイス。
【請求項30】
前記アジド基又はアルキン基はポリアミン表面のアミノ基とリンクにより結合されている、請求項29記載のメディカルデバイス。
【請求項31】
哺乳類血液と相互作用して凝固又は血栓形成を防止することができるヘパリン部分であって、該実体はアルキン基又はアジド基を有し、該アルキン基又はアジド基はリンカーに結合されており、該リンカーは前記ヘパリン部分に末端点で結合している、ヘパリン部分。
【請求項32】
全長ヘパリンである、請求項31記載のヘパリン部分。
【請求項33】
1つ以上のアジド基又は1つ以上のアルキン基を有する官能化ポリアミン。
【請求項34】
哺乳類血液と相互作用し、凝固又は血栓形成を防止することができる実体を、1,2,3−トリアゾールを含むリンクを介して有する、官能化ポリアミン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−502678(P2012−502678A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526514(P2011−526514)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061981
【国際公開番号】WO2010/029189
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511067857)カルメダ アクティエボラーグ (2)
【Fターム(参考)】