説明

固定多孔質金属フィルタ体

【課題】
排気ガスを浄化処理する際、フィルタ材料は、特に厳しい熱的および動的条件に曝されるので、そのフィルタ材料は永続的に安定した複合体の形で採用されなければならない。また、洗浄・再生時の高温、高圧スプレによる衝撃等の熱的および動的条件にもフィルタ材料は永続的に安定した複合体の形を維持していることを提案する。
【解決手段】
ガス透過領域であるフィルタ部分とスチフナ領域を持つ部分とを備え、気体透過性の材料から成る多孔質金属繊維からなるフィルタ体であって、このフィルタ体が、スチフナ領域より、透過領域のフィルタ部分と異なった層厚さにしているフィルタ体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に流体が貫流できる材料から成る多孔質金属フィルタ層、少なくとも1つの前記多孔質金属フィルタ層を備えたフィルタ体に関する。このフィルタ体は、特に、厨房の調理に伴い発生する排気ガスおよび高温の排気ガスを浄化するために使用される。
【背景技術】
【0002】
従来より厨房の調理に伴い発生する排気ガスおよび高温の排気ガスを浄化する際、多くのフィルタ材料及びその製造方法が提案されている。
アルミ繊維より成る不織布をアルミニウム系エキスパンドメタルによって包み込むことにより、使用時に金属製などのフレームを必要とせず、かつ洗浄時にアルミニウム繊維のこぼれ落ちがないフィルタ用多孔質金属板を提供する(特許文献1参照)。
【0003】
アルミ繊維の脱落の恐れがないフィルタを提供するに当り、金属繊維を用いて構成したフィルタであって、このフィルタは、圧潰薄肉部からなる領域と、前記圧潰薄肉部の表面より突出した膨出部からなる領域とを具備したものが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
耐熱フィルタ層、フィルタ体およびその製造方法が公知である。この繊維層が厚さ0.5〜3mm、フィルタ層は少なくとも1つの金属層を有し厚さ0.015〜0.05mm、フィルタ層がサンドイッチ構造であり少なくとも1つの繊維層と少なくとも1つの金属層を有するフィルタ層である。層が、少なくとも1つの組織化された薄板と少なくとも1つの平滑なフィルタ層とを含み、その両層が、少なくとも1つの結合部分において互いに接合技術的に接合され、特に半田付け或いは溶接されたことを特徴とするフィルタ体である。
【0005】
少なくとも1つの結合部分が、フィルタ層の少なくとも1つの縁部領域に配置されたフィルタ層である。排気ガスが貫流できる通路を備えたハニカム体を形成すべく、少なくとも1つのフィルタ層と少なくとも1つの組織化された薄板を重ね合わせおよび/又は巻き回ししてハニカム体を形成するように、フィルタ体およびその製造方法が提案された。(特許文献3参照)
【0006】
前記フィルタ層単体では、薄くて捕獲粒子径も小さく、捕獲容量も小さいことから、多孔質プレート状の金属複合材の製造方法が提案された。そこでは、金属繊維を1作業工程で加圧し互いに溶接することを提案している。溶接法を実施すべく、金属繊維はそれ用に設けた溶接装置に持ち込まれる。繊維を溶接するため、金属繊維集合体が2つの平面的に形成された電極の間に配置され、電極は集合体に関して十分な加圧力を提供する。溶接法としてインパルス溶接法、好適にはコンデンサ放電溶接法が提案されている。(特許文献4参照)
【0007】
このような金属フリースを製造するための公知の溶接法は確かに十分に実証されたが、連続生産を考慮して一部では、幅全体にわたり溶接条件を一様に維持できないところがあり、最終的にフリースは特定の材料特性値に関し望ましくない変動を示すことが有る。
【0008】
前記多孔質プレート状の金属複合材の製造方法に関して指摘した技術的諸問題を少なくとも部分的に解決する装置を提供することが提案された。特に、連続生産の枠内でも高品質の金属繊維編物の製造を保証する装置を提供することが提案された。加えてこの装置は単純に構成され、高い溶接速度を可能とする。(特許文献5参照)
【0009】
このように、連続生産の枠内でも高品質の金属繊維編物の製造を保証する装置を提供することが提案された。加えてこの装置は単純に構成され、高い溶接速度を可能とする装置と方法は十分に実証された。編物の多孔率50〜85%では、溶接品質又は生成した溶接継手の数と特性を表示すべく、複合材料から編物にかけての強度上昇を明示するとよい。
【0010】
これは、繊維からなる複合材料が既に一定程度引張荷重を受け得ることを意味する。溶接時にこの「引張強度」が高まり、ここでは少なくとも3倍とのことである。しかし、局部的な圧縮荷重、衝撃荷重には耐えられず編物が容易に潰れてしまい、さらに繊維の片寄り、毛羽立ち、断線、脱落等が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−198420号
【特許文献2】特開平10−216431号
【特許文献3】特表2005−507307
【特許文献4】特表2006−504878
【特許文献5】特表2009−523199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、厨房の調理に伴い発生する排気ガスおよび高温の排気ガスを浄化するためにそのようなフィルタ体の実現に関し、それに伴う要件に対し、特に良好に適用される多孔質金属フィルタ体を提供することにある。その限りで、フィルタ体は例えば自動車内燃機関の排気装置における極めて高温の排気ガスの脈動的噴出に起因する大きな熱的および動的負荷に耐えねばならない。
【0013】
更に、厨房の排気装置において空隙率を上げて、通気性を高めたにも関わらず油粒子を著しく減少すべく適用可能なフィルタ体を提供する。
加えて該フィルタ体の洗浄・再生時、特に温水、高圧スプレによるリンス洗浄の局部的な衝撃荷重に耐えて、繊維の片寄り、毛羽立ち、断線、脱落等のいわゆる繊維の動きを止め、永続的に安定したフィルタ体を提供する。また、前記フィルタ体製造時、曲げ加工等によりフィルタ層が剥離することのない一体となったフィルタ体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題は、請求項1から8に記載の特徴を備えた排気ガス浄化用フィルタ体で解決される。本発明の有利な実施態様は従属請求項に示し、そこに記載した特徴事項は、個々に或いは任意の意味ある組合せで生じる。
【0015】
本発明の観点に応じ厨房および高温の排気ガスを浄化するフィルタ体を提案する。該フィルタ体は、排気ガスが貫流できる通路を形成すべく、少なくとも1つが重ね合わされ、曲げられ又は巻回され、少なくとも部分的に組織化された多孔質金属フィルタ層を持つ。該フィルタ体は、多孔質金属フィルタ層を部分的に透過し、フィルタ材料内における粒子の収容ないし蓄積が生じる。
【0016】
多孔質金属フィルタ層は、少なくとも部分的に流体透過性の材料から成り、少なくとも1つのフィルタ部分と少なくとも1つのスチフナ(強め材)領域を持つ。本発明に基づく多孔質金属フィルタ層は、該層が少なくとも1つのスチフナ領域において、少なくとも1つのフィルタ部分と異なる層厚さを持つことを特徴とする。
【0017】
その限りで、多孔質金属フィルタ層は、各々異なった機能を持つ別個の領域を有する。多孔質金属フィルタ層は一次的に、排気ガス内に含まれる粒子等を除去し、空洞、空孔等の中又はフィルタ材料自体に少なくとも一時的に収容或いは蓄積するために用いられるが、少なくとも1つのスチフナ領域は、接合技術的結合部を形成すべく機能する。
【0018】
なお、多孔質金属フィルタ層に関する少なくとも1つのスチフナ領域と、少なくとも1つのフィルタ部分の空間的配置のために、フィルタ部分は、好適には多孔質金属フィルタ層の中央領域に配置されている。少なくとも1つのスチフナ領域は、好適には少なくとも1つの縁の近くに形成され、しかし、事情によっては、スチフナ領域を、少なくとも1つのフィルタ部分の周囲を取り囲むように形成することもできる。
【0019】
その限りで、中央に配置された少なくとも1つのスチフナ領域と周囲の少なくとも1つのスチフナ領域で取り囲まれた大きな面積のフィルタ部分を形成できる。時には、複数のフィルタ部分を設けることも意味があり、この結果、その複数のフィルタ部分は、各々水玉模様のように、少なくとも1つのスチフナ領域で境界づけられる。
【0020】
少なくとも1つのスチフナ領域は、少なくとも1つのフィルタ部分と同じ材料から成り、その際、これは、圧縮、緻密化され或いは溶融凝固された繊維複合体を有するとよい。少なくとも1つのフィルタ部分の領域におけるフィルタ材料は、流体、特に排気ガスは貫流できるが、少なくとも1つのスチフナ領域は、流体が透過できないようにするとよい。これは、繊維材料の多数の空洞、開口、空孔、貫通路等を閉鎖すべく少なくとも部分的な圧縮を行うことを意味する。その点で、減少した層厚さは、フィルタ材料の圧縮過程の結果である。
【0021】
フィルタ材料の少なくとも1つのスチフナ領域における不透過性に基づき、例えば結合材料や補助材(半田材、溶接補助材等)を少なくとも1つのスチフナ領域の表面に的確に設け得る。該結合材や補助材の加熱時に、それらの材料が繊維材料の内部に収容され、この結果隣接する多孔質金属フィルタ層の結合に利用されなくなるのを防止できる。接合技術的結合部の形成に必要な結合材に関係して、適切な圧縮が必要であり、少なくとも1つのスチフナ領域における層厚さの減少は、80%〜30%行われる。その際、少なくとも1つのスチフナ領域において、3〜1mmの層厚さが生ずる。
【0022】
他の実施態様では、少なくとも1つのスチフナ領域は、少なくとも1つのフィルタ部における多孔質金属フィルタ層が、少なくとも1つの結合部分で互いに接合技術的に結合され、特に半田付け又は溶接される。これは、少なくとも1つのフィルタ層が、圧縮、緻密化され或いは溶融凝固されたことを意味する。
【0023】
大きな熱的および動的負荷の下でもフィルタ体の層の相対移動を防止すべく、それら層を、互いに接合技術的に結合せねばならない。そのため、既に自動車工業で触媒担体としての金属ハニカム体の製造で公知の半田継手や溶接継手が適する。これは、その領域が脈動的排気ガス流により負荷されるので、特に有利である。多孔質金属フィルタ層のスチフナ領域部を、フィルタ材料を非常に強く圧縮して形成すると、そこでは繊維のかなり強固な複合が生じる故、分離現象の発生を防止できる。
【0024】
フィルタ部の多孔質金属フィルタ層の少なくとも1つのスチフナ領域が3mm2から30mm2で少なくとも1つのフィルタ部における多孔質金属フィルタ層において少なくとも1つの金属層と少なくとも1つの金属繊維層とが少なくとも1つの結合部分で接合技術的に結合され、特に半田付け或いは溶接される。
【0025】
半田付けの場合、少なくとも1つの結合部分に半田材を供給し、少なくとも1つの結合部分に半田継手を形成すべく加熱する。半田継手の形成に関し、自動車の排気装置における触媒担体としての金属ハニカム体を製造するための既知の技術を参照されたい。その際、半田材としてニッケル基の粉末状半田材を用いるとよく、ハニカム体を保護ガス雰囲気又はほぼ完全な真空中で加熱する。
【0026】
溶接の場合、好適には圧接のうち抵抗溶接に分類されるスポット溶接が適用される。少なくとも1つの結合部分にナゲット径を形成すべく、両側の電極加圧により荷重がかけられ、通電され、冷却後開放される。スポット溶接継手の形成に関し、電子部品の組み立てにおける接合箇所の50%以上に多用される既知の技術を参照されたい。その際、欠陥を避け、強度のばらつきが少ない溶接部を得るためには、溶接条件として金属層表面の油脂などの汚れや酸化皮膜の除去あるいは均一で低い接触抵抗が重要である。
【0027】
更に、多孔質金属フィルタ層が少なくとも1つの金属繊維層を有し、該層が20mm〜1mmの金属繊維層厚さを持つことを提案する。該厚さは、特に浄化すべき排気ガス流やその中に含まれる粒子を考慮して決めねばならない。また大きな金属繊維層厚さに伴い、大きな蓄積体積や多数の繊維数が用意されることを考慮せねばならない。この結果、この多孔質金属フィルタ層を頻繁に再生する必要がなくなる。
【0028】
多孔質金属フィルタ層の有利な実施態様では、多孔質金属フィルタ層は少なくとも1つの金属層を有し、該層は、好適にはフィルタ層を外側に対し境界づけ、1.0〜0.1mmの金属層厚さを有する。この金属層が、少なくとも1つのフィルタ部分において流体が透過できる開口、貫通路等を有するとよい。
【0029】
金属層は、好適には、少なくとも1つのスチフナ領域迄或いはそれを越えて延び、少なくとも1つのスチフナ領域において流体が透過不能に形成されているとよい。この金属層の材料として、特に排気ガスを浄化するための触媒担体としての金属ハニカム体の製造で公知のアルミニウムクロム合金および/又はアルミニウム合金が採用できる。この金属層は、被膜或いは別個の薄膜、薄板として形成できる。
【0030】
多孔質金属フィルタ層がサンドイッチ構造であり、少なくとも1つの金属繊維層と少なくとも1つの金属層とを持つと特に有利である。該金属層は金属繊維層を取り囲む被覆を形成し、その結果金属繊維層が少なくとも1つの金属層の内部に紛失しないように配置されると好ましい。
【0031】
ここで被覆とは、少なくとも1つの金属層が少なくとも部分的に金属繊維層の境界部も越えて延び、特に金属繊維層を完全に取り囲んでいる少なくとも1つの金属層の配置を意味する。その限りにおいて、少なくとも部分的に被覆が金属繊維層の全周に形成されている。金属層により金属繊維層の境界部をこのように囲い込んだ結果、金属繊維層と少なくとも1つの金属層との少なくとも1つの方向における相対運動を、かみ合い結合的に防止できる。
【0032】
更に相応したフィルタ体のスチフナ領域において隣接する多孔質金属フィルタ層が互いに結合し、その結果、この領域における振動或いはばたつきを防止できる。そのスチフナ領域部の配置は使用中に生ずる動的負荷に関係して設計せねばならず、その際多孔質金属フィルタ層の熱膨張挙動も考慮せねばならない。その点で、多孔質金属フィルタ層が適度な動的負荷および高い熱的負荷迄の適度な熱的負荷を受けるよう、できるだけ狭い、密なスチフナ領域の配置とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0033】
各々少なくとも1つのスチフナ領域で取り囲まれた複数のフィルタ部分を備えた多孔質金属フィルタ層の形成は、フィルタ部分の中央領域にも配置された多数のスチフナ領域における多孔質金属フィルタ層の結合が、一様に分布した平面的な領域を形成するので、相応した領域のフィルタ体の内部における非常に強固な結合を可能にする。
【0034】
多孔質金属フィルタ層の他の実施態様では、少なくとも1つのスチフナ領域における層厚さは、少なくとも1つのフィルタ部分より小さく、80%〜30%である。多孔質金属フィルタ層のかかる構成は、厚肉に形成した少なくとも1つのフィルタ部分が大きな容積を提供するという利点を示す。
【0035】
その結果、この少なくとも1つのフィルタ部分に、例えば煤粒子を収容又は蓄積するのに役立つ十分な空孔、空洞等を用意できる。そのような大きな空孔には、特に粒子直径300〜5000nmの粒子が収容される。多孔質金属フィルタ層は、例えば繊維から成るかなり緩い材料複合体である繊維材料から成るとよい。この材料複合体は、例えば金属繊維から成る繊維織物や編物であるが、その代わりに或いはそれに加えて、金属繊維不織布、焼結金属、金網等も利用できる。
【0036】
かかるサンドイッチ構造の形成は、特にこのフィルタ層のエンジン近傍への配置に際し価値がある多数の利点を示す。少なくとも1つの金属層は、内側に位置する金属繊維層を、発生した圧力衝撃やピーク温度から保護する保護被覆として働く。金属繊維層は金属層に比べて、繊維から成るかなり緩い材料複合体である。
【0037】
金属繊維層はこれを保護する金属層の存在により強度についてさほど考慮する必要がない故、その金属繊維層は非常に高い多孔性にできる。その限りでは、金属繊維層内に特に大きな自由空間、空孔等が形成できる。これは特に、少なくとも1つの金属層をテープ又はフィルム状とし、即ち大きな接触設置面を与えることで支援される。その結果、例えば多孔質金属フィルタ層の形状安定性を保つために従来採用されていた公知の金網よりもかなり緩く詰め込まれた金属繊維材料が採用できる。
【0038】
このサンドイッチ構造は、従来フィルタ材料の両側に各々支持構造(特に金網)を配置し、該サンドイッチ構造を続いて所望の形状に湾曲又は変形させることで形成していた。このサンドイッチ構造は排気ガス流の中に、フィルタ材料の境界部(又は端面)が保護されずに脈動する排気ガス流に曝されるように配置されていた。
【0039】
このため、その端面部に分離現象が生じた。繊維材料を長期間にわたり金網間に固定するため、サンドイッチ構造を大きな面積にわたり、それどころか部分的に全表面にわたり高圧で圧縮せねばならなかった。その結果、これに伴う小さな空孔又は自由空間に粒子が集合するため、フィルタ材料の効率がかなり悪化し、且つフィルタにより不所望の大きな圧力損失が生じていた。これは、ここに提案するサンドイッチ構造の場合、少なくとも1つの金属層が金属繊維層の縁を囲い込み、金属繊維層を内部に直接紛失しないように配置しているので、簡単に防止できる。
【0040】
以下、本発明に基づく金属多孔質フィルタ体の特に有利で優れた実施例を示す図を参照して本発明を詳細に説明する。更に、その図は上述した本発明に基づく方法を明瞭にするためにも用いる。なお、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に基づく金属多孔質フィルタ層の第1実施例の概略斜視図。
【図2】サンドイッチ構造としてのフィルタ層の異なった実施例の側面図。A:断面図 B:側面図
【図3】エキスパンドメタルの斜視図。
【図4】エキスパンドメタルの詳細説明図。A:平面図 B:側面図SW:メッシュ短目方向の中心間距離 LW:メッシュ長目方向の中心間距離T:板厚 W:刻み幅
【図5】厨房排気ダクトの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲はこの実施形態によって限定されるものではない。
【0043】
図1は、少なくとも1つのフィルタ部分2を流体が(流れ方向35に)貫流する本発明に基づく多孔質金属フィルタ層1の実施例を概略的に斜視図で示す。該フィルタ層1は、少なくとも部分的に多孔性材料からなり(点模様範囲2参照)、少なくとも1つの縁5の近くに各々スチフナ領域3を持つ。それらスチフナ領域3は、圧縮力29(矢印で図示)で圧縮され、そのためフィルタ部分2に比べて、図2のAで示す薄い層厚さ4を持つ。その圧縮を、空孔又は空洞の断面形状で表し、該空孔又は空洞は、スチフナ領域3にフィルタ部分2におけるよりもかなり小さく示している。
【0044】
図2のAは、サンドイッチ構造10として形成した多孔質金属フィルタ層1の異なった実施例を断面図で示す。この層1は、金属繊維層6の周囲に被覆を形成する両側の金属層8を持つ。該金属層8は少なくとも1つのスチフナ領域3を有し、該スチフナ領域3で互いに接合技術的に結合されている。
【0045】
ここでは、接合技術的結合はスポット溶接ナゲット26で保証され、スチフナ領域3は金属層8の縁5から、好適には芯位置で4〜25mm離れている。材料厚さについて図2のAを参照して説明する。金属層8は例えばエキスパンドメタルとして形成され、1.0mm以下の金属層厚さ9を持つ。更に、金属繊維層6が繊維層厚さ7を持つことが明らかに分かる。この金属層厚さ9は、好適には0.1〜1.0mmの範囲にある。
【0046】
図2、3、4から、流れ案内面41として作用するエキスパンドメタル12が理解できる。図2のAでこの案内面41は、特にミクロ組織として形成されている。図3でエキスパンドメタル12は、図4のA:平面図、B:側面図で詳細が示される通り、ねじれ部分13を持ち、図示の実施例において、ミクロ組織、即ち流れ案内面41で、2つの機能が果たされる。即ち、一方で流れる排気ガスが転向ないし乱され、その結果、部分ガス流が、隣接する多孔性壁、特に本発明に基づく金属多孔質フィルタ層に向けて転向され、これを透過する。
【0047】
他方で、自明のように、かかるミクロ組織により、内側に位置する金属繊維層6に対する締付け作用も生じる。これは金属多孔質フィルタ層1の安定性を向上する。またこれは、追加的に加えられた締付け力が既に金属繊維層6の考え得る分離現象を十分に防止するので、金属繊維層6の多孔率を高めることを可能にする。
【0048】
図2のAでサンドイッチ構造10として形成された金属多孔質フィルタ層1は異なる2つの層厚さ4、4′を有し、そのスチフナ領域3の範囲の層厚さ4は、フィルタ部分2の範囲の層厚さ4′よりかなり薄い。ここでは、図2のBで繊維層6が縁5迄延びている、金属層が金属繊維層の縁を囲い込み、金属繊維層を外部に直接紛失しないように配置している特別な実施例となっている。
【0049】
図5で本発明に係わる厨房の調理に伴い発生する排気ガスを浄化するダクト21を示す。天井に一体的に設置されたダクト21の前面には開口部22が形成され、この開口部22の内側には周囲の額縁状フレーム23内に、本発明に係わるフィルタ体11を収納する縦横に均一な間隔で多数の比較的大径の孔が形成された多孔性金属板24で構成されたフィルタ25が嵌合されている。
【0050】
このような構成から成る排気用ダクトの前記フィルタ25の直下では、通常厨房の調理器具や機械工場の切削作業場等のオイルを多量に使用する機器が使用される。調理器具等により発生するオイル等の汚染物質は、ファン等により調理ガスとともに前記フィルタ25に導かれ、該フィルタ25の前面の多孔性金属板24によりオイル物質等の主要物質以外の径の大きな不純物質を除去された後、前記フィルタ体11に達し、汚染物質は各繊維に接触して付着する。付着したオイル等の汚染物質は各繊維の方向つまり下向きに移動し各繊維の下端から滴下してダクト21の底板に達し、排出口26を介して前記汚染物質受け27に達して貯留される。
【実施例1】
【0051】
溶融紡糸法によって直径180μmのアルミニウム繊維(JIS H4000 A1070相当品)を得た。当該アルミニウム繊維の集合体を均一に850g/mとなるように層状に散布した後に、上下にアルミニウムのエキスパンドメタル(EXP t0.3 4x8)を敷きプレス加工してフィルタ部分5.0mm、縁部分1.4mmの層状体に成形した。
【0052】
スポット溶接を定格容量50KVAの単層整流式抵抗溶接機(松下電器産業株式会社製)を使用し、電極先端の径φ5で平坦にドレッシングした物で、45°千鳥のパターンの配置で500x500mmのサイズで53ヶ所実施した。ナゲット径φ5で、ナゲット部厚さ3mmとした。フッ素系コーティング液を含浸させ180℃の熱風により乾燥させた。次いで、縁部をアルミニウム板でヘムカバーを取り付け、本発明の固定多孔質金属フィルタ体を得た。上記のフィルタ体について、下記の方法により、繰り返し洗浄試験を実施し、それらの結果を表1に示した。
【表1】

【0053】
繰り返し洗浄試験の方法は、ジョンソン・プロフェッショナル(株)製の油脂専用強力クリーナー『ブレークアップS』を3%濃度に希釈した80℃の温水槽に、試験体を1hr浸漬し、その後温水スプレー(圧力5MPa)ですすぎ洗浄する。水切り後、試験体を150℃に保持した箱型乾燥炉に入れて15分間乾躁後、取り出し、室温まで温度低下させる。繊維落ちの評価方法は、試験体を表面がゴムシートの卓上へ、50〜60mmの高さから3回自由落下させ、試験体から繊維落ちの有無をゴムシート上の繊維片を目視により確認し、繊維片が見つけられれば、繊維落ちの発生と繊維片本数の記録をする。浸漬から繊維落ち評価までを1回とカウントし、これを洗浄回数と呼ぶ。この操作を繰り返す。繊維落ちが発生し出すとひどくなることはあっても、繊維落ちが自然に止まることは少ないので、測定誤差の防止の意味も含めて、繊維落ちが発生し出してからも数回続ける。記録を見て、何回で繊維落ちが発生したか、判定し、試験を終了する。
【比較例1】
【0054】
スポット溶接の代わりに、縁部分は同じでフィルタ部分に同部分を幅方向に4等配に分け帯状に15mmの幅で厚さ3mmの圧着部を設けた以外は、実施例1と全く同様にしてフィルタ体を作製した。このようにして得たフィルタ体について、前記の方法により、繰り返し洗浄試験を実施し、それらの結果を表1に示した。
【実施例2】
【0055】
目付けが1350g/mで、厚さ5.7mm、空孔率91%と変更した以外は実施例1と全く同様にして本発明の固定多孔質金属フィルタ体を得た。このようにして得たフィルタ体について、前記の方法により、繰り返し洗浄試験を実施し、それらの結果を表1に示した。
【比較例2】
【0056】
スポット溶接の換わりに、比較例1と同様に縁部分は同じでフィルタ部分に幅方向に4等配に分け帯状に15mmの幅で厚さ3mmの圧着部を設けた以外は、実施例2と全く同様にしてフィルタ体を作製した。このようにして得たフィルタ体について、前記の方法により、繰り返し洗浄試験を実施し、それらの結果を表1に示した。
【0057】
表1により、繊維径、上下EXP、コーティング、目付け、厚さ、多孔率は同じ条件で、本発明の実施例1のスポット溶接と比較例1の帯状圧着したフィルタ体で洗浄試験を実施した結果、前記の方法で繊維が脱落し始める繰り返し洗浄回数は、実施例1及び比較例1でそれぞれ80回と20回であった。
【0058】
さらに、繊維目付け、厚さを上げ、多孔率を実施例1及び比較例1の83%より大きく採った実施例2及び比較例2の91%においても、洗浄試験を実施した結果は、繊維が脱落し始める繰り返し洗浄回数は、それぞれ80回と20回であった。
【0059】
以上の結果より、実施例1は繊維が固定され局部的な衝撃荷重に耐えて、比較例1の約4倍の耐洗浄回数を得た。さらに、実施例2は多孔率を実施例1の83%より91%に大きく、強度的に不利な条件に係わらず繊維が固定され局部的な衝撃荷重に耐えて、比較例2の約4倍の耐洗浄回数を得た。繊維落ちに起因するフィルタ体が継続使用に耐えない、いわゆる耐用年数は、概ね洗浄回数で決まることから、本発明の効果がフィルタ体の寿命延長に寄与することは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の固定多孔質金属フィルタ体は、多孔率が大きくても熱的、動的でかつ局部荷重に耐える永続的に形状安定なフィル体である。従って、バインダーに頼る事無く、長寿命の厨房の排気ガス及び高温の排気ガスを浄化するためのフィルタ体として使用でき、その産業上の効果は大である。
【符号の説明】
【0061】
1 多孔質金属フィルタ層、2フィルタ部分、3 スチフナ領域、5 縁、6 金属繊維層、
8 金属層、 10 サンドイッチ構造、11 フィルタ体、12 エキスパンドメタル
13 ねじれ部分
21 ダクト 22 開口部 23 フレーム 24 多孔性金属板 25 フィルタ
26 排出口 27 汚染物質受け 28 ナゲット 29 圧縮力
35 流れ方向 41 流れ案内面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが貫流できる通路が形成されるように、多孔質金属フィルタ層を少なくとも1つが重ね合わされたもの、曲げられたもの、又は巻回されたもの、いずれかを部分的に組織化されたフルター層で、排気ガスを浄化するためのフィルタ体において
該多孔質金属フィルタ層が、一つの部分的に流体透過性の材料から成っていて、フィルタ部分の一つの透過領域と固定させる部分の一つのスチフナ領域とを含み、前記フィルタ層の層厚が、スチフナ領域と異なる層厚さを持っていることを特徴とする多孔質金属フィルタ体。
【請求項2】
前記多孔質金属フィルタ層である透過領域とスチフナ領域とからなるフィルタ体において、スチフナ領域の層厚さは、フィルタ部分の透過領域の層厚さより小さく、30%〜80%であることを特徴とする請求項1記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項3】
前記多孔質金属フィルタ層におけるスチフナ領域は、透過領域であるフィルタ部分の一部分を接合技術的で結合させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項4】
前記多孔質金属フィルタ層が金属繊維層であって、この金属繊維層を1mm〜20mmの厚さにしていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項5】
前記多孔質金属フィルタ層において、スチフナ領域の金属層を有し、該金属層を透過領域のフィルタ層に対して厚さ0.1mm〜1mmの薄さにしていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項6】
前記多孔質金属フィルタ層をサンドイッチ構造にして、フィルタ体の表面に金属ネット領域をもって金属繊維層と金属層とを有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項7】
前記多孔質金属フィルタ層内のスチフナ領域を持つ部分が、3mm2から30mm2であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の多孔質金属フィルタ体。
【請求項8】
前記多孔質金属フィルタ層内のスチフナ領域を持つ部分が、透過領域のフィルタ部分における平面的位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の多孔質金属フィルタ体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−91113(P2012−91113A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240621(P2010−240621)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(710012139)
【Fターム(参考)】