説明

固定装置、プレス機及びプレスライン

【課題】固定装置の小型化、組付けやメンテナンスの容易化、固定装置を有する機械設備の省スペース化を図ることができる固定装置、プレス機及びプレスラインを提供する。
【解決手段】本発明のプレス機1に使用される固定装置6は、金型交換台車5の車輪51を支持するリフター部61と、リフター部61を昇降可能に支持する昇降装置62と、昇降装置62を支持するとともにリフター部61の昇降を案内する外筒部63と、を有し、リフター部61は、金型交換台車5の車輪51を走行可能に支持するレール面61aと、金型交換台車5と係合するクランプ部61bと、を備え、リフター部61を下降させてクランプ部61bにより金型交換台車5を経路R1,R2上に挟持して固定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動台車を経路上に固定する際に用いられる固定装置、該固定装置を備えたプレス機及び該プレス機を備えたプレスラインに関し、特に、プレス機の金型交換台車の固定に適した固定装置、プレス機及びプレスラインに関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工は、金型の間に被加工材であるワーク(例えば、金属板)を載置し、金型を押し付けてワークを所望の形状に成型する方法である。かかるプレス加工には、ワークが載置される下型と該下型に上から押し付けられる上型とから構成される一対の金型を備えたプレス機が使用される。一般に、プレス機は、金型の下型が取り付けられるボルスタと、金型の上型が取り付けられるスライドと、前記ボルスタを下方から支えるベッドと、前記スライドを上下に往復運動させるスライド駆動機構と、該スライド駆動機構を前記スライドの上方で支持するクラウンと、該クラウンを支持するとともに前記スライドを案内するアプライトと、を有する。また、プレス機は、前記ベッドの内部に配置され上向きの圧力を発生させるダイクッション装置や前記スライドの内部に配置され上型に付着した成型品を下方に排出するノックアウト装置等を有する場合もある。なお、自動車用パネルのように複雑な形状をなした製品は、複数の成型工程を必要とするため、複数のプレス機が一列に配置されたトランスファプレスやタンデムプレスにより加工されることが多い。
【0003】
上述したプレス機において、種々の形状の製品を加工するためには金型を交換する必要がある。下型を交換する場合には、一般に、下型又はボルスタを水平方向に移動可能に構成し、プレス機から下型又はボルスタを引き出して金型を交換した後、下型又はボルスタをプレス機内に挿入してベッド上に固定することが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この金型交換時に下型又はボルスタをベッド上に固定する固定装置は、クランパ装置とも称されており、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが存在している。特許文献1に記載された固定装置は、金型をボルスタ上で移動可能に構成し、金型をボルスタ上に固定する装置であり、金型を搬送可能かつ上下動可能に構成されたダイリフタと、該ダイリフタの側面部に配置されたオートクランパと、を有する。また、特許文献2に記載された固定装置は、ボルスタをベッド上で移動可能に構成し、金型及びボルスタをベッド上に同時に固定する装置であり、ベッドの側面部に配置されたクランパ装置を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−18923号公報
【特許文献2】特公昭61−14899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び特許文献2に記載された固定装置は、金型に係合するクランプ部材(係合爪)を昇降させる油圧シリンダ等の昇降機構と、クランプ部材(係合爪)を回動させる回動機構と、を有しているため、固定装置をコンパクトに構成することができない。したがって、かかる固定装置では、ベッドの側面から固定装置が張り出す部分が大きく、その分だけプレス機が大きくなってしまい、設置スペースが大きくなるという問題があった。この問題は、複数のプレス機を備えたトランスファプレスやタンデムプレスでは、より深刻な問題となる。また、ベッドの上面にクランプ部材(係合爪)が配置され、ベッドの側面に昇降機構や回動機構が配置されているため、固定装置の構成部品が分散しており、部品点数が多くなってしまう、組付けに手間がかかってしまう等の問題もあった。さらに、ベッドの側面に配置された油圧シリンダのメンテナンス等のために、プレス機の外周に足場やプラットホームを配置しなければならず、設置スペースが大きくなってしまう、設置に手間がかかってしまう等の問題もあった。
【0007】
なお、これらの問題は、金型交換台車を有するプレス機だけでなく、移動台車を経路上に固定する際に用いられる固定装置全般に共通する問題でもある。
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、固定装置の小型化、組付けやメンテナンスの容易化、固定装置を有する機械設備の省スペース化を図ることができる固定装置、プレス機及びプレスラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、移動台車を所定の経路上に固定する固定装置であって、前記移動台車の車輪を支持するリフター部と、該リフター部を昇降可能に支持する昇降装置と、該昇降装置を支持するとともに前記リフター部の昇降を案内する外筒部と、を有し、前記リフター部は、前記移動台車の車輪を走行可能に支持するレール面と、前記移動台車と係合するクランプ部と、を備え、前記リフター部を下降させて前記クランプ部により前記移動台車を経路上で挟持して固定する、ことを特徴とする固定装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、金型が取り付けられるボルスタと、該ボルスタを下方から支えるベッドと、前記ボルスタを移動させる金型交換台車と、該金型交換台車を所定の経路上に固定する固定装置と、を有するプレス機であって、前記固定装置は、前記金型交換台車の車輪を支持するリフター部と、該リフター部を昇降可能に支持する昇降装置と、該昇降装置を支持するとともに前記リフター部の昇降を案内する外筒部と、を有し、前記リフター部は、前記金型交換台車の車輪を走行可能に支持するレール面と、前記移動台車と係合するクランプ部と、を備え、前記リフター部を下降させて前記クランプ部により前記移動台車を経路上で挟持して固定する、ことを特徴とするプレス機が提供される。
【0011】
上述した固定装置及びプレス機において、前記昇降装置は、動力源を前記外筒部の下面側から供給できるように構成されていることが好ましい。また、前記外筒部は、前記クランプ部の昇降を案内するように延出されたクランプガイド部を有していることが好ましい。さらに、前記プレス機を複数台配置してプレスラインを構成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明の固定装置及びプレス機によれば、移動台車又は金型交換台車の経路上に昇降装置に接続されたリフター部を配置するとともにリフター部の昇降により移動台車又は金型交換台車を固定可能に構成したことにより、ベッドの側面部に固定装置を配置する必要がなく、固定装置の小型化やプレス機等の固定装置を有する機械設備の省スペース化を図ることができる。
【0013】
また、固定装置は外筒部によりユニット化されており、組付けやメンテナンスの容易化を図ることができる。特に、リフター部と昇降装置を別体に構成していることから、移動台車又は金型交換台車の昇降時に生じる拗れを昇降装置に伝達し難くすることができ、昇降装置の故障やメンテナンスの原因となる拗れを低減することができる。また、リフター部のみを交換することもできるため、移動台車又は金型交換台車の種類や大きさに合った固定装置を容易に準備することができる。
【0014】
さらに、リフター部にクランプガイド部を形成することにより、移動台車又は金型交換台車の昇降時に生じる拗れも低減することができる。また、昇降装置(例えば、油圧シリンダ)の動力源(例えば、作動油)を外筒部の下面側から供給することにより、油抜き等のメンテナンスを昇降装置の下側から行うことができ、ベッドの側面からのメンテナンスを不要にすることができ、足場やプラットホームを縮小又は削除することができる。
【0015】
上述した本発明のプレス機によれば、プレス機の省スペース化を図ることができ、特に、複数のプレス機を備えたトランスファプレスやタンデムプレス等のプレスラインの省スペース化を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプレス機を示す正面図である。
【図2】図1に示した固定装置の詳細図であり、(A)は側面断面図、(B)は上面図、である。
【図3】図1におけるZ−Z断面図である。
【図4】固定装置の作用を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の降下状態、(C)は金型交換台車の固定状態、を示している。
【図5】本発明に係る固定装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
【図6】本発明に係るプレスラインを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るプレス機を示す正面図である。図2は、図1に示した固定装置の詳細図であり、(A)は側面断面図、(B)は上面図、である。図3は、図1におけるZ−Z断面図である。図4は、固定装置の作用を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の降下状態、(C)は金型交換台車の固定状態、を示している。
【0018】
図1〜図3に示した本発明のプレス機1は、金型の下型2が取り付けられるボルスタ3と、ボルスタ3を下方から支えるベッド4と、ボルスタ3を移動させる金型交換台車5と、金型交換台車5を経路R1,R2上に固定する固定装置6と、を有し、固定装置6は、金型交換台車5の車輪51を支持するリフター部61と、リフター部61を昇降可能に支持する昇降装置62と、昇降装置62を支持するとともにリフター部61の昇降を案内する外筒部63と、を有し、リフター部61は、金型交換台車5の車輪51を走行可能に支持するレール面61aと、金型交換台車5と係合するクランプ部61bと、を備え、リフター部61を下降させてクランプ部61bにより金型交換台車5を経路R1,R2上に挟持して固定するように構成されている。
【0019】
前記プレス機1は、図1に示したように、下型2に上から押し付けられる金型の上型11と、金型の上型11が取り付けられるスライド12と、スライド12を上下に往復運動させるスライド駆動機構13と、スライド駆動機構13をスライド12の上方で支持するクラウン14と、クラウン14を支持するとともにスライド12を案内するアプライト15と、を有する。
【0020】
前記下型2は、図1に示した上型11を上方から押し付けることによって、間に挟まれたワークを所定の形状に成型する。これらの金型(上型11及び下型2)は、1台のプレス機1で種々のプレス成型品を加工することができるように、交換可能にスライド12及びボルスタ3に固定される。
【0021】
前記ボルスタ3は、下型2が取り付けられる台座であり、金型交換台車5上に固定されている。このように金型交換台車5上に配置されて移動可能に構成されたボルスタ3をムービングボルスタと称することもある。かかるムービングボルスタには、ボルスタ3そのものに車輪等を配置して台車化したものも含まれる。したがって、本発明のプレス機1においても、ボルスタ3と金型交換台車5とを一体化したもの(ボルスタ3を台車化したもの)も含まれることは勿論である。
【0022】
前記ベッド4は、下型2及びボルスタ3を載置する台座であり、プレス時の加圧力を受ける基盤である。ベッド4は、ベッド4の側面を構成するメインウェブ41と、ベッド4の上面の一部を形成するベッドフランジ42と、を有する。図3に示すように、固定装置6は、金型交換台車5の経路R1,R2上に配置されるため、ベッドフランジ42には固定装置6を挿着する取付孔42aが形成される。この取付孔42aにより形成される空間に上方(ベッドフランジ42の上面側)から固定装置6が挿入され、ベッド4に固定される。また、ベッド4(ベッドフランジ42)の上面には、金型交換台車5の経路R1,R2を構成するレールが配置されている。金型交換方向に延設されたレールの一方(例えば、経路R1)には車輪51を案内する凹部が形成されている。ここでは、金型交換台車5の経路R1,R2を特定するためにレールを用いたが、金型交換台車5の他の部分(例えば、側面部)を案内することにより経路R1,R2を特定するようにしてもよい。また、図1に示したように、ベッド4の内部には、上向きの圧力を発生させるダイクッション装置44を配置するようにしてもよい。
【0023】
前記金型交換台車5は、金型交換時に下型2をプレス機1から引き出すための移動台車である。かかる金型交換台車5は、図2において破線で示したように、ベッド4上を移動するための複数の車輪51を有する。車輪51を案内する凹部が形成されたレール(例えば、経路R1)上を走行する車輪51の外周には、凸部52が環状に形成されている。したがって、図示しない駆動装置により金型交換台車5に駆動力を付与すると、車輪51の凸部52がレールの凹部により案内され、金型交換台車5を所定の経路R1,R2を通過するように金型交換方向に走行させることができる。金型交換台車5の駆動装置には、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、ラック・ピニオン機構、電動モータ等が使用される。下型2をプレス機1から引き出す際には、プレス機1の金型交換方向の側面にレールが延設された補助台座を配置してもよいし、部分的に引き出された金型交換台車5と連結可能な補助台車を配置してもよい。また、車輪51は、レール上を円滑にスライド可能な滑走子に変更してもよく、本発明において車輪とはかかる滑走子も含む意味である。
【0024】
また、車輪51の車軸は、金型交換台車5に設けられた内側支持部53及び外側支持部54により支持されている。図2(A)に示したように、外側支持部54は、断面略L字状に形成されており、外側に突出した突部54aを有する。かかる突部54aは、リフター部61のクランプ部61bと係合可能に形成されている。また、図2(B)に示すように、外側支持部54は、進行方向の幅がリフター部61の径よりも大きく、好ましくはレール面61aの幅よりも大きく形成されており、クランプ部61bにより突部54aを下方に引き込んだときに、外側支持部54がレール面61aと接触するように構成されている。
【0025】
前記固定装置6は、リフター部61により金型交換台車5を昇降させてベッド4上に着座させるとともに、クランプ部61bにより金型交換台車5をベッド4の上面に押し付けて固定する機能を有する。かかる固定装置6は、例えば、図1及び図3に示したように、金型交換方向に沿ってベッド4の側面に2箇所ずつ(合計4箇所)配置される。固定装置6は、金型交換台車5の車輪51を昇降させるものであるため、金型交換台車5を固定場所に配置した場合に車輪51が停止する位置に合わせて配置される。したがって、固定装置6の配置個数は、金型交換台車5の車輪51の個数によって定められる。
【0026】
また、図2(A)及び(B)に示したように、固定装置6は、リフター部61、昇降装置62及び外筒部63により構成されている。外筒部63の内部には昇降装置62が配置され、昇降装置62の先端部にはリフター部61が接続される。このように、リフター部61と昇降装置62とを別体に構成することにより、金型交換台車5の昇降時に生じる拗れを昇降装置62に伝達し難くすることができ、昇降装置62の故障やメンテナンスの原因となる捩れを低減することができる。また、リフター部61のみを交換することもできるため、金型交換台車5の種類や大きさに合った固定装置6を容易に準備することができる。
【0027】
前記リフター部61は、略円筒形状をなしており、上面に金型交換台車5の経路R1,R2の一部を構成するレール面61aを有する。図2(A)に示したように、凸部52を有する車輪51が形成する経路R1の一部を構成するレール面61aには、凹部61cが形成されている。なお、凸部52を有しない車輪51が形成する経路R2の一部を構成するレール面61aには、凹部61cを形成する必要はないが、凹部61cを有するリフター部61を使用することにより部品の共通化を図るようにしてもよい。
【0028】
また、レール面61aの外端部には上方に突出した断面略L字状のクランプ部61bが金型交換台車5の外側支持部54と係合可能に立設されている。かかるクランプ部61bは、図2(A)及び(B)に示したように、略弓型柱状をなしており、レール面61a側の一部が切り欠かれて断面略L字状に形成されている。ここでは、クランプ部61bがレール面61aよりも上方に突出させた場合を示しているが、クランプ部61bは、リフター部61内に穿設することにより、レール面61aよりも下方に形成するようにしてもよい。かかる構成により、突起物のない固定装置6を形成することができる。なお、クランプ部61bをレール面61aよりも下方に形成した場合には、クランプ部61bと係合する金型交換台車5の突部54aがベッド4と干渉しないように、ベッド4に溝を形成したり、ベッド4の上面をレール面61aより低く配置したりすればよい。
【0029】
また、リフター部61の側面部には軸方向に延びたキー61dが形成されている。かかるキー61dの一部は、クランプ部61bの側面にも延設されていることが好ましい。キー61dの個数は、図示したものに限定されず、リフター部61に負荷される荷重に応じて放射状に形成される。
【0030】
前記昇降装置62は、例えば、油圧シリンダにより構成され、油圧シリンダの作動油(動力源)は固定装置6(外筒部63)の下面6a側から供給できるように構成されている。具体的には、昇降装置62は、油圧シリンダの上室に作動油を供給する給油ライン62aと下室に作動油を供給する給油ライン62bとを有し、各給油ライン62a,62bは、固定装置6(外筒部63)の下面6a側からそれぞれ上室・下室に接続されている。なお、昇降装置62は、エアシリンダ、電動アクチュエータ、ラック・ピニオン機構等の駆動装置であってもよく、これらの動力源である空気や電気を駆動装置に伝達する給気ラインやハーネス等も、固定装置6(外筒部63)の下面6a側から供給できるように構成される。
【0031】
前記外筒部63は、リフター部61及び昇降装置62を収容してユニット化する容器としての機能を有する。具体的には、外筒部63は、略角柱形状をなしており、略中心部にリフター部61を挿入するための開口部63aが形成され、開口部63aの一部に昇降方向に延びたキー溝63bが形成されている。かかる開口部63aによりリフター部61の昇降を案内し、キー溝63bによりリフター部61のキー61dを案内してリフター部61の回転を抑制している。キー溝63bは、キー61dの個数及び配置に合わせて形成される。
【0032】
また、外筒部63の上端側の一部は切り欠かれており、リフター部61のレール面61aが露出するように構成されている。さらに、外筒部63は、リフター部61のクランプ部61bの背面に突出して配置されたクランプガイド部63cを有し、クランプ部61bの昇降を案内している。クランプガイド部63cには、キー溝63bが延設されており、クランプ部61bの背面に形成されたキー61dを案内している。かかるクランプ部61bをクランプガイド部63cで案内することにより、リフター部61の昇降時に生じる荷重を効果的に支持することができ、リフター部61に生じる拗れを低減することができる。また、外筒部63の上部には、金型交換台車5の経路R1,R2の方向に延びるとともに、リフター部61のレール面61aと面一に連接可能なレール面63dが形成されたフランジ部63eが形成されている。かかるフランジ部63eのレール面63dには、リフター部61の凹部61cと連接可能な凹部63fが形成されている。なお、フランジ部63eの四隅にはボルト等の締結具を差し込む締結孔63gが形成されている。
【0033】
上述した固定装置6のように、金型交換台車5の経路R1,R2上に昇降装置62に接続されたリフター部61を配置するとともにリフター部61の昇降により金型交換台車5を固定可能に構成したことにより、図3に示すように、ベッド4の側面部に固定装置6を配置する必要がなく、固定装置6の小型化やプレス機1等の固定装置6を有する機械設備の省スペース化を図ることができる。また、強度部材であるベッド4のメインウェブ41やベッドフランジ42に形成される切り欠き部を少なくすることができ、ベッド4の強度低下を抑制することもできる。
【0034】
以下、本発明のプレス機1を構成する他の部品について、図1を参照しつつ説明する。前記上型11は、スライド12の往復運動により、下型2に押し付けられ、間に挟まれたワークを所定の形状に成型する部品である。また、前記スライド12は、アプライト15により案内されて上下に往復運動する部品であり、スライド12の下面に上型11が接続される。
【0035】
前記スライド駆動機構13は、スライド12を往復運動させる駆動機構であり、クランク式、クランクレス式、ナックル式、摩擦式、スクリュー式等、種々のタイプのものが存在している。図1では、クランク式のスライド駆動機構13を図示している。クランク式のスライド駆動機構13は、例えば、スライド12に連結されたコネクティングロッド131と、回転軸の駆動によりコネクティングロッド131を往復運動させるクランクピン132と、を有する。
【0036】
前記クラウン14は、スライド駆動機構13やその動力源(図示せず)を支持する構造物であり、主としてフレーム構造をなしている。なお、図1では、クラウン14の構造は、簡略化して図示している。
【0037】
前記アプライト15は、プレス機1の上部構造物(クラウン14等)を支える柱であり、プレス機1の四隅に配置されている。アプライト15の内部には、ベッド4とクラウン14を連結してプレス時の加圧力を支えるタイロッド(図示せず)が配置されている。また、上述したように、アプライト15は、スライド12の往復運動を案内するガイド機能を有する。
【0038】
次に、上述した本発明のプレス機1における固定装置6の作用について、図4を参照しつつ説明する。金型交換を終えた金型交換台車5をプレス機1に挿入する場合には、図4(A)に示すように、リフター部61のレール面61aとベッド4の上面とが面一となるように、リフター部61は昇降装置62により上昇した位置に配置されている。したがって、リフター部61の凹部61cはベッド4上のレールと連結された状態にあり、金型交換台車5はレール及び凹部61c上を移動することができ、経路R1,R2に沿って走行される。そして、金型交換台車5がベッド4上の固定位置まで移動したとき、図4(A)に示すように、金型交換台車5の各車輪51はリフター部61上に載置された状態になっている。この状態で昇降装置62を作動させ、リフター部61を降下させると金型交換台車5を降下させることができる。
【0039】
図4(B)に示すように、リフター部61を降下させると、金型交換台車5の下面がベッド4の上面と接触し、金型交換台車5をベッド4上に着座させることができる。このとき、外側支持部54の下面も外筒部63の上面と接触した状態となっている。そして、さらにリフター部61を降下させていくと、図4(C)に示すように、クランプ部61bと外側支持部54の突部54aとが接触して係合し、外側支持部54は外筒部63の上面とクランプ部61bの下面との間で挟持され、金型交換台車5はベッド4上に固定される。
【0040】
プレス機1から金型交換するために金型交換台車5を引き出す場合は、上述した説明と逆の処理を行なえばよい。すなわち、図4(C)の状態から図4(A)の状態になるまで、昇降装置62を作動させてリフター部61を上昇させればよい。
【0041】
続いて、固定装置6の変形例について説明する。ここで、図5は、本発明に係る固定装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。なお、図2に示した固定装置6と同じ部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0042】
図5(A)に示した固定装置6の第一変形例は、車輪51を両側から押えるように構成したものである。具体的には、金型交換台車5の内側支持部53に突部53aを形成し、リフター部61の両端部に対峙するクランプ部61b,61bを形成し、突部53a,54aとクランプ部61b,61bとを係合させることによって、金型交換台車5をベッド4上に固定している。
【0043】
図5(B)に示した固定装置6の第二変形例は、外筒部63を複数のブロックにより構成したものである。具体的には、外筒部63は、本体部63h、中間部材63i及び蓋部材63jにより構成される。かかるブロック構造にすることにより、固定装置6を組み立て易くすることができるとともに、メンテナンスし易くすることができる。なお、ブロックの分割方法は図示したものに限定されるものではない。
【0044】
続いて、上述した本発明のプレス機1を使用したプレスラインについて説明する。ここで、図6は、本発明に係るプレスラインを示す概略構成図である。なお、図1に示したプレス機1と同じ部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0045】
図6に示したプレスラインは、図1に示したプレス機を3台配置したプレスラインである。各プレス機1は、例えば、工場の床面100に形成されたピット101内に配置され、ベッド4が床面100から高くなり過ぎないように調整されている。各プレス機1の下部には、図1に示したダイクッション装置44の他に、スクラップシュートやスクラップコンベヤ等(図示せず)が配置される。また、各プレス機1の間にはワーク搬送装置102が配置されており、各プレス機1でプレスされたワークを順次搬送できるように構成されている。かかるプレスラインによれば、油抜き等のメンテナンスを固定装置6の下側から行うことができ、ベッド4の側面からのメンテナンスを不要にすることができ、足場やプラットホームを縮小又は削除することができる。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の固定装置6は、プレス機1以外の機械設備であって、所定の経路上を移動する移動台車を所定の場所に固定する場合にも使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 プレス機
2 下型
3 ボルスタ
4 ベッド
5 金型交換台車
6 固定装置
6a 下面
11 上型
12 スライド
13 スライド駆動機構
14 クラウン
15 アプライト
41 メインウェブ
42 ベッドフランジ
42a 取付孔
44 ダイクッション装置
51 車輪
52 凸部
53 内側支持部
53a 突部
54 外側支持部
54a 突部
61 リフター部
61a レール面
61b クランプ部
61c 凹部
61d キー
62 昇降装置
62a,62b 給油ライン
63 外筒部
63a 開口部
63b キー溝
63c クランプガイド部
63d レール面
63e フランジ部
63f 凹部
63g 締結孔
63h 本体部
63i 中間部材
63j 蓋部材
100 床面
101 ピット
102 ワーク搬送装置
131 コネクティングロッド
132 クランクピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車を所定の経路上に固定する固定装置であって、
前記移動台車の車輪を支持するリフター部と、該リフター部を昇降可能に支持する昇降装置と、該昇降装置を支持するとともに前記リフター部の昇降を案内する外筒部と、を有し、前記リフター部は、前記移動台車の車輪を走行可能に支持するレール面と、前記移動台車と係合するクランプ部と、を備え、前記リフター部を下降させて前記クランプ部により前記移動台車を経路上で挟持して固定する、ことを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、動力源を前記外筒部の下面側から供給できるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記外筒部は、前記クランプ部の昇降を案内するように延出されたクランプガイド部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項4】
金型が取り付けられるボルスタと、該ボルスタを下方から支えるベッドと、前記ボルスタを移動させる金型交換台車と、該金型交換台車を所定の経路上に固定する固定装置と、を有するプレス機であって、
前記固定装置は、前記金型交換台車の車輪を支持するリフター部と、該リフター部を昇降可能に支持する昇降装置と、該昇降装置を支持するとともに前記リフター部の昇降を案内する外筒部と、を有し、前記リフター部は、前記金型交換台車の車輪を走行可能に支持するレール面と、前記移動台車と係合するクランプ部と、を備え、前記リフター部を下降させて前記クランプ部により前記移動台車を経路上で挟持して固定する、ことを特徴とするプレス機。
【請求項5】
前記昇降装置は、動力源を前記外筒部の下面側から供給できるように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のプレス機。
【請求項6】
前記外筒部は、前記クランプ部の昇降を案内するように延出されたクランプガイド部を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のプレス機。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれかに記載の前記プレス機を複数台有する、ことを特徴とするプレスライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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