説明

固定装置、プレス機及びプレスライン

【課題】固定装置の張り出し部分の低減及びプレス機の省スペース化を図ることができる固定装置、プレス機及びプレスラインを提供する。
【解決手段】本発明の固定装置6は、金型交換台車5を昇降可能に支持するリフター部61と、リフター部61に連結されるとともに金型交換台車5と係合可能なクランプ部62と、リフター部61及びクランプ部62を昇降させる昇降装置63と、を有し、リフター部61は、ベッド4の側面に形成された切欠部43に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動台車を経路上に固定する際に用いられる固定装置、該固定装置を備えたプレス機及び該プレス機を備えたプレスラインに関し、特に、プレス機の金型交換台車の固定に適した固定装置、プレス機及びプレスラインに関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工は、金型の間に被加工材であるワーク(例えば、金属板)を載置し、金型を押し付けてワークを所望の形状に成型する方法である。かかるプレス加工には、ワークが載置される下型と該下型に上から押し付けられる上型とから構成される一対の金型を備えたプレス機が使用される。一般に、プレス機は、金型の下型が取り付けられるボルスタと、金型の上型が取り付けられるスライドと、前記ボルスタを下方から支えるベッドと、前記スライドを上下に往復運動させるスライド駆動機構と、該スライド駆動機構を前記スライドの上方で支持するクラウンと、該クラウンを支持するとともに前記スライドを案内するアプライトと、を有する。また、プレス機は、前記ベッドの内部に配置され上向きの圧力を発生させるダイクッション装置や前記スライドの内部に配置され上型に付着した成型品を下方に排出するノックアウト装置等を有する場合もある。なお、自動車用パネルのように複雑な形状をなした製品は、複数の成型工程を必要とするため、複数のプレス機が一列に配置されたトランスファプレスやタンデムプレスにより加工されることが多い。
【0003】
上述したプレス機において、種々の形状の製品を加工するためには金型を交換する必要がある。下型を交換する場合には、一般に、下型又はボルスタを水平方向に移動可能に構成し、プレス機から下型又はボルスタを引き出して金型を交換した後、下型又はボルスタをプレス機内に挿入してベッド上に固定することが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この金型交換時に下型又はボルスタをベッド上に固定する固定装置は、クランパ装置とも称されており、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが存在している。特許文献1に記載された固定装置は、金型をボルスタ上で移動可能に構成し、金型をボルスタ上に固定する装置であり、金型を搬送可能かつ上下動可能に構成されたダイリフタと、該ダイリフタの側面部に配置されたオートクランパと、を有する。また、特許文献2に記載された固定装置は、ボルスタをベッド上で移動可能に構成し、金型及びボルスタをベッド上に同時に固定する装置であり、ベッドの側面部に配置されたクランパ装置を有する。
【特許文献1】実開平3−18923号公報
【特許文献2】特公昭61−14899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び特許文献2に記載された固定装置は、金型に係合するクランプ部材(係合爪)を昇降させる油圧シリンダ等の昇降機構と、クランプ部材(係合爪)を回動させる回動機構と、を有しているため、固定装置をコンパクトに構成することができない。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載された固定装置では、ベッドの側面から固定装置が張り出す部分が大きいという問題が生じていた。また、かかる固定装置を備えたプレス機では、固定装置の幅分だけプレス機が大きくなってしまい、設置スペースが大きくなるという問題があった。この問題は、複数のプレス機を備えたトランスファプレスやタンデムプレスでは、より深刻な問題となる。また、プレス機が大きくなると、輸送時の積載制限によりプレス機を構成する一体部品を分割して出荷しなければならず、プレス機の輸送及び設置に時間と費用を要する、部品の分割を前提とした設計をしなければならないという問題が生ずる。特に、部品の分割を前提とした設計では、設計に時間を要するばかりか部品点数が増えてしまうという問題があった。なお、これらの問題は、金型交換台車を有するプレス機だけでなく、移動台車を経路上に固定する際に用いられる固定装置全般に共通する問題でもある。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、固定装置の張り出し部分の低減及びプレス機の省スペース化を図ることができる固定装置、プレス機及びプレスラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、移動台車の固定場所に配置された支床部の側面に配置され、前記移動台車を昇降可能かつ固定可能に支持する固定装置であって、前記移動台車を昇降可能に支持するリフター部と、該リフター部に連結されるとともに前記移動台車と係合可能なクランプ部と、前記リフター部及びクランプ部を昇降させる昇降装置と、を有し、少なくとも前記リフター部は、前記支床部の側面に形成された切欠部に挿入されている、ことを特徴とする固定装置が提供される。なお、前記切欠部には、前記リフター部のみではなく、前記リフター部及びクランプ部を挿入するようにしてもよいし、固定装置全体(前記リフター部、クランプ部及び昇降装置)を挿入するようにしてもよい。
【0008】
また、前記リフター部の軸芯は、前記昇降装置の軸芯とオフセットされていてもよい。かかる場合には、前記クランプ部に昇降方向に延びた軸部を設け、該軸部を前記支床部の側面に配置されたガイド部によりスライド可能に支持するようにしてもよい。また、前記固定装置をプレス機に用いる場合には、前記移動台車を金型交換台車とし、前記支床部をプレス機のベッドとすることが好ましい。
【0009】
なお、前記リフター部は、前記支床部の上面に形成された開口部により案内されていてもよいし、前記クランプ部は、前記支床部の上方に突出した爪部を有し、該爪部と前記支床部の上面とにより前記移動台車を挟持して固定するように構成されていてもよい。
【0010】
また、本発明によれば、金型が取り付けられるボルスタと、該ボルスタを下方から支えるベッドと、前記金型又は前記ボルスタを移動させる金型交換台車と、前記ベッドの側面に配置されるとともに前記金型交換台車を昇降可能かつ固定可能に支持する固定装置と、を有するプレス機において、前記固定装置は、前記金型交換台車を昇降可能に支持するリフター部と、該リフター部に連結されるとともに前記金型交換台車と係合可能なクランプ部と、前記リフター部及びクランプ部を昇降させる昇降装置と、を有し、少なくとも前記リフター部は、前記ベッドの側面に形成された切欠部に挿入されている、ことを特徴とするプレス機及びかかるプレス機を複数台有するプレスラインが提供される。なお、前記切欠部には、前記リフター部のみではなく、前記リフター部及びクランプ部を挿入するようにしてもよいし、固定装置全体(前記リフター部、クランプ部及び昇降装置)を挿入するようにしてもよい。
【0011】
また、前記リフター部の軸芯は、前記昇降装置の軸芯とオフセットされていてもよい。かかる場合には、前記クランプ部に昇降方向に延びた軸部を設け、該軸部を前記ベッドの側面に配置されたガイド部によりスライド可能に支持するようにしてもよい。
【0012】
なお、前記リフター部は、前記ベッドの上面に形成された開口部により案内されていてもよいし、前記クランプ部は、前記ベッドの上方に突出した爪部を有し、該爪部と前記ベッドの上面とにより前記金型交換台車を挟持して固定するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の固定装置及びプレス機によれば、支床部(ベッド)の側面に切欠部を形成し、該切欠部に少なくともリフター部を挿入したことにより、挿入した分だけ固定装置の支床部(ベッド)から張り出した部分を低減することができ、固定装置の設置スペースを低減することができ、固定装置を使用する機器(例えば、プレス機)の省スペース化を図ることができる。また、リフター部と昇降装置の軸芯をオフセットさせることにより、リフター部を効果的に切欠部に挿入することができる。さらに、クランプ部に軸部を形成してガイド部で支持するようにしたことにより、リフター部と昇降装置の軸芯をオフセットさせた場合に生じるモーメントを効果的に受けることができる。
【0014】
また、上述した本発明のプレス機によれば、プレス機の省スペース化を図ることができ、特に、複数のプレス機を備えたトランスファプレスやタンデムプレスの省スペース化を効果的に図ることができる。また、プレス機の輸送時の積載制限に抵触しないようにすることができる場合もあり、かかる場合には、プレス機を構成する一体部品を分割する必要がなく、プレス機の輸送及び設置に要する時間と費用を節約することができる、部品の分割を前提とした設計をする必要がない等の効果を奏する。特に、部品の分割を前提としない設計では、設計が容易になるばかりか部品点数を削減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るプレス機を示す正面図である。図2は、図1に示した固定装置の詳細図であり、(A)は側面断面図、(B)は図2(A)におけるB矢視図である。図3は、図1におけるZ−Z断面図である。図4は、固定装置の作用を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の降下状態、(C)は金型交換台車の固定状態、を示している。
【0016】
図1〜図3に示した本発明のプレス機1は、金型の下型2が取り付けられるボルスタ3と、ボルスタ3を下方から支えるベッド4と、金型の下型2又はボルスタ3を移動させる金型交換台車5と、ベッド4の側面に配置されるとともに金型交換台車5を昇降可能かつ固定可能に支持する固定装置6と、を有するプレス機1であって、固定装置6は、金型交換台車5を昇降可能に支持するリフター部61と、リフター部61に連結されるとともに金型交換台車5と係合可能なクランプ部62と、リフター部61及びクランプ部62を昇降させる昇降装置63と、を有し、リフター部61は、ベッド4の側面に形成された切欠部43に挿入されている。
【0017】
前記プレス機1は、図1に示したように、下型2に上から押し付けられる金型の上型11と、金型の上型11が取り付けられるスライド12と、スライド12を上下に往復運動させるスライド駆動機構13と、スライド駆動機構13をスライド12の上方で支持するクラウン14と、クラウン14を支持するとともにスライド12を案内するアプライト15と、を有する。
【0018】
前記下型2は、図1に示した上型11を上方から押し付けることによって、間に挟まれたワークを所定の形状に成型する。これらの金型(上型11及び下型2)は、1台のプレス機1で種々のプレス成型品を加工することができるように、交換可能にスライド12及びボルスタ3に固定される。
【0019】
前記ボルスタ3は、下型2が取り付けられる台座であり、金型交換台車5上に固定されている。このように金型交換台車5上に配置されて移動可能に構成されたボルスタ3をムービングボルスタと称することもある。かかるムービングボルスタには、ボルスタ3そのものに車輪等を配置して台車化したものも含まれる。したがって、本発明のプレス機1においても、ボルスタ3と金型交換台車5とを一体化したもの(ボルスタ3を台車化したもの)も含まれることは勿論である。
【0020】
前記ベッド4は、下型2及びボルスタ3を載置する台座であり、プレス時の加圧力を受ける基盤である。ベッド4は、図2に示したように、ベッド4の側面を構成するメインウェブ41と、ベッド4の上面の一部を形成するベッドフランジ42と、を有する。メインウェブ41の外側には固定装置6が配置される。そして、メインウェブ41の固定装置6を配置する部分には、所定の大きさの切欠部43が形成されている。ここでは、固定装置6のリフター部61及びクランプ部62を挿入できる大きさの切欠部43が形成されている。また、切欠部43は、例えば、図2(A)及び(B)に示すように、メインウェブ41に貫通した開口部を形成するようにメインウェブ41の一部を切り取ることによって形成される。さらに、ベッドフランジ42の上面には、固定装置6のリフター部61を案内する第一開口部44と、固定装置6のクランプ部62をベッド4の上方に突出させるための第二開口部45と、を有する。なお、ベッド4の内部には、図1において破線で示したように、上向きの圧力を発生させるダイクッション装置46が配置されていてもよい。
【0021】
前記金型交換台車5は、金型交換時等に下型2をプレス機1から引き出すための台車である。かかる金型交換台車5は、図4に示したように、ベッド4上を移動するための複数の車輪51を有する。ワーク搬送方向(図3参照)の片側における車輪51の外周には凸部52が環状に形成されている。かかる凸部52により、ワーク搬送方向の位置決めをすることができる。また、ベッド4の上面には、図3に示すように、凸部52を案内する溝形状のレール47が金型交換方向に延設されている。したがって、図示しない駆動装置により金型交換台車5に駆動力を付与すると、金型交換台車5はレール47上を金型交換方向に移動することができる。金型交換台車5の駆動装置には、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、ラック・ピニオン機構、電動モータ等が使用される。金型交換台車5の車輪51は、レール47上を円滑にスライド可能な滑走子等に置換してもよい。なお、下型2をプレス機1から引き出す際には、プレス機1の金型交換方向の側面にレール47が延設された補助台座を配置してもよいし、部分的に引き出された金型交換台車5と連結可能な補助台車を配置してもよい。
【0022】
前記固定装置6は、リフター部61により金型交換台車5を昇降させてベッド4上に着座させるとともに、クランプ部62により金型交換台車5をベッド4の上面に押し付けて固定する機能を有する。かかる固定装置6は、図1及び図3に示したように、金型交換方向に沿ってベッド4の側面に2箇所ずつ(合計4箇所)配置される。固定装置6は、後述するように、金型交換台車5の車輪51を昇降させるものであるため、金型交換台車5を固定場所に配置した場合に車輪51が停止する位置に合わせて配置される。したがって、固定装置6の配置個数は、金型交換台車5の車輪51の個数によって定められる。
【0023】
前記リフター部61は、金型交換台車5の車輪51をベッド4の第一開口部44内に収容する機能を有する。したがって、リフター部61は、図2(A)に示すように、ベッドフランジ42に形成された第一開口部44内にスライド可能に配置されている。また、凸部52を有する車輪51を載置するリフター部61の上面にはレール47の一部を形成する溝部611が形成されており、金型交換台車5がリフター部61上を移動できるように構成されている。溝部611はレール47の一部を形成するため、溝部611とレール47の向きが一致するようにリフター部61が第一開口部44内で回転しないようにしておくことが好ましい。このリフター部61の固定は、リフター部61とクランプ部62との連結部で調整してもよいし、リフター部61と第一開口部44との間にキー及びキー溝を形成して調整してもよい。そして、リフター部61は、後述する昇降装置63の作用により上下に往復運動可能に構成されている。したがって、リフター部61上に金型交換台車5の車輪51を載せた状態でリフター部61を降下させることにより、車輪51を第一開口部44に収容して金型交換台車5をベッド4上に着座させることができる。
【0024】
前記クランプ部62は、金型交換台車5をベッド4上で固定する機能を有する。したがって、クランプ部62は、ベッド4の第二開口部45から上方に突出した爪部621を有し、爪部621とベッド4の上面とにより金型交換台車5を挟持して固定することができるように構成されている。また、クランプ部62は、図2(A)に示すように、略L字形状の外形をなしており、L字横棒部はリフター部61を支持する台座622を構成している。リフター部61と台座622との接続は、平面形状又は窪み形状の台座622の上面にリフター部61を単に載置するだけでもよいし、台座622に形成した開孔部にリフター部61に形成されたピン又はネジを挿入又は螺合させるようにしてもよい。
【0025】
また、クランプ部62の下部には、リフター部61の軸芯と距離cだけオフセットされた昇降装置63が設けられている。ところで、リフター部61が支持する金型交換台車5は、台車自身の重量に加え、ボルスタ3や金型2の重量も付加されるため重量物となり易い。したがって、本発明のようにリフター部61の軸芯と昇降装置63の軸芯とをオフセットさせた場合には、昇降装置63の軸芯に対して距離cに応じたモーメントが生じ、無視できない大きさになることもある。そこで、昇降装置63の軸芯と同軸の軸部64をクランプ部62に設け、かかる軸部64をベッド4(メインウェブ41)の側面に配置されたガイド部48によりスライド可能に支持している。このようにモーメントに応じた軸部64及びガイド部48を形成することにより、過負荷による損傷等を生じることなく、昇降装置63に生じるモーメントを受けることができる。
【0026】
前記昇降装置63は、リフター部61を介して金型交換台車5を昇降させる機能と、クランプ部62により金型交換台車5をベッド4の上面に押し付ける機能とを有する。昇降装置63は、例えば、電動アクチュエータ、油圧シリンダ、エアシリンダ、ラック・ピニオン機構等である。また、昇降装置63は、ベッド4(メインウェブ41)の側面に接続された台座65上に載置されて固定されている。そして、昇降装置63の先端部は、上述したようにクランプ部62の軸部64に連結されている。したがって、昇降装置63を作動させると、軸部64、クランプ部62及びリフター部61を昇降させることができる。
【0027】
上述した固定装置6のように、リフター部61の軸芯と昇降装置63の軸芯とをオフセットさせた場合、従来のプレス機においては、オフセット分である距離cだけ固定装置6をベッド4の側面から離間させて配置しなければならない。したがって、ベッド4のメインウェブ41の外側にリフター部61が配置され、その上部に金型交換台車5の車輪51が配置され、その分だけ金型交換台車5の幅が大きくなり、アプライト15も外側にずらして配置されることとなり、図3において二点鎖線で示したように、プレス機1のワーク搬送方向の長さが長くなってしまう。しかしながら、本発明においては、メインウェブ41に切欠部43を形成し、この切欠部43にリフター部61を挿入することによりオフセット分を吸収している。したがって、本発明の固定装置6によれば、従来の固定装置と同様の機能を有しながら、ベッド4からの張り出し部分を低減することができ、固定装置6の設置スペースを低減することができ、プレス機1の省スペース化を図ることができる。具体的には、第一開口部44がメインウェブ41の延長線上にあるベッドフランジ42に被るように形成されており、この第一開口部44にリフター部61が挿入されるとともに、切欠部43に挿入されたクランプ部62の台座622により支持することによって、オフセット分の距離cを切欠部43で吸収している。
【0028】
以下、本発明のプレス機1を構成する他の部品について、図1を参照しつつ説明する。前記上型11は、スライド12の往復運動により、下型2に押し付けられ、間に挟まれたワークを所定の形状に成型する部品である。また、前記スライド12は、アプライト15により案内されて上下に往復運動する部品であり、スライド12の下面に上型11が接続される。なお、スライド12には、上型11に付着した成型品を下方に排出するノックアウト装置121を配置してもよい。
【0029】
前記スライド駆動機構13は、スライド12を往復運動させる駆動機構であり、クランク式、クランクレス式、ナックル式、摩擦式、スクリュー式等、種々のタイプのものが存在している。図1では、クランク式のスライド駆動機構13を図示している。クランク式のスライド駆動機構13は、例えば、スライド12に連結されたコネクティングロッド131と、回転軸の駆動によりコネクティングロッド131を往復運動させるクランクピン132と、を有する。
【0030】
前記クラウン14は、スライド駆動機構12やその圧力源(図示せず)を支持する構造物であり、主としてフレーム構造をなしている。なお、図1では、クラウン14の構造は、簡略化して図示している。
【0031】
前記アプライト15は、プレス機1の上部構造物(クラウン14等)を支える柱であり、プレス機1の四隅に配置されている。アプライト15の内部には、ベッド4とクラウン14を連結してプレス時の加圧力を支えるタイロッド(図示せず)が配置されている。また、上述したように、アプライト15は、スライド12の往復運動を案内するガイド機能を有する。
【0032】
次に、上述した本発明のプレス機1における固定装置6の作用について、図4を参照しつつ説明する。金型交換を終えた金型交換台車5をプレス機1に挿入する場合には、図4(A)に示すように、リフター部61の上面とベッド4の上面とが面一となるように、リフター部61及びクランプ部62は昇降装置63により上昇した位置に固定されている。したがって、リフター部61の溝部611はベッド4上のレール47と連結された状態にあり、金型交換台車5はレール47及び溝部611上を移動することができる。そして、金型交換台車5がベッド上の固定位置まで移動したとき、図4(A)に示すように、金型交換台車5の各車輪51はリフター部61上に載置された状態になっている。この状態で昇降装置63を作動させ、リフター部61を降下させると金型交換台車5を降下させることができる。
【0033】
図4(B)に示すように、リフター部61を降下させていくと、金型交換台車5の下面がベッド4の上面と接触し、金型交換台車5をベッド4上に着座させることができる。そして、さらにリフター部61及びクランプ部62を降下させていくと、図4(C)に示すように、金型交換台車5の外周に形成された鍔部53とクランプ部62の爪部621とが係合し、金型交換台車5の鍔部53はクランプ部62の爪部621によりベッド4の上面に押し付けられて挟持され、ベッド4上に固定される。
【0034】
プレス機1から金型交換するために金型交換台車5を引き出す場合は、上述した説明と逆の処理を行なえばよい。すなわち、図4(C)の状態から図4(A)の状態になるまで、昇降装置63を作動させてクランプ部62及びリフター部61を上昇させればよい。
【0035】
続いて、金型交換台車5が、下型2とボルスタ3の間に配置されている場合について説明する。ここで、図5は、下型とボルスタの間に金型交換台車が配置されている場合の固定装置を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の固定状態、を示している。なお、図1〜図4に示した部品と同じ構成部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0036】
図5(A)及び(B)に示すように、金型交換台車5が下型2とボルスタ3の間に配置されている場合には、ボルスタ3はベッド4上に固定されているため、ボルスタ3にベッド4の第一開口部44と連通する開口部31を形成し、ボルスタ3の開口部31及びベッド4の第一開口部44内でリフター部61を上下方向にスライドできるように構成している。また、リフター部61及びクランプ部62は、ボルスタ2の厚さ分だけ高く形成される。
【0037】
かかる構成により、金型交換を終えた金型交換台車5をプレス機1に挿入する場合には、図5(A)に示すように、リフター部61の上面とボルスタ3の上面とが面一となるように、リフター部61及びクランプ部62は昇降装置63により上昇した位置に固定されている。したがって、リフター部61の溝部611はボルスタ3上のレールと連結された状態にあり、金型交換台車5はレール及び溝部611上を移動することができる。そして、金型交換台車5がボルスタ3上の固定位置まで移動したとき、図5(A)に示すように、金型交換台車5の各車輪51はリフター部61上に載置された状態になっている。この状態で昇降装置63を作動させ、リフター部61を降下させると金型交換台車5を降下させることができる。
【0038】
リフター部61を降下させていくと、金型交換台車5の下面がボルスタ3の上面と接触し、金型交換台車5をボルスタ3上に着座させることができる。そして、さらにリフター部61及びクランプ部62を降下させていくと、図5(B)に示すように、金型交換台車5の外周に形成された鍔部53とクランプ部62の爪部621とが係合し、金型交換台車5の鍔部53はクランプ部62の爪部621によりボルスタ3の上面に押し付けられて挟持され、ボルスタ3上に固定される。
【0039】
最後に、上述した本発明の固定装置6の変形例について説明する。ここで、図6は、固定装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。なお、図1〜図3に示した固定装置6と同じ構成部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0040】
図6(A)に示した固定装置6の第一変形例は、図2に示した固定装置6の軸部64とガイド部48を除外した構成になっている。小型のプレス機1や金型交換台車5等の重量が比較的軽い場合であって、リフター部61と昇降装置63の軸芯のオフセットにより生ずるモーメントを昇降装置63で受けることができる場合に採用される。
【0041】
図6(B)に示した固定装置6の第二変形例は、リフター部61の軸芯と昇降装置63の軸芯とを同軸上に配置して、昇降装置63も切欠部43に挿入したものである。リフター部61の軸芯と昇降装置63の軸芯とを同軸上に配置した場合には、モーメントが生じないため、図2に示した固定装置6の軸部64とガイド部48を除外することができ、固定装置6の高さを低くすることができる。したがって、切欠部43を大きめに形成してもベッド4の強度上の問題が生ずることがなく、昇降装置63を切欠部43に挿入することができる。
【0042】
図6(C)に示した固定装置6の第三変形例は、図2に示したベッド4(メインウェブ41)の切欠部43を凹部形状に変更したものである。メインウェブ41が十分に厚い場合には、リフター部61と昇降装置63の軸芯のオフセット分を吸収するための空間を形成する際に、メインウェブ41を貫通させる必要はなく、メインウェブ41の側面を窪ませた凹部形状により構成するようにしてもよい。
【0043】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の固定装置6は、プレス機1以外の機器であって、所定の経路上を移動する移動台車を所定の場所に固定する場合にも使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るプレス機を示す正面図である。
【図2】図1に示した固定装置の詳細図であり、(A)は側面断面図、(B)は図2(A)におけるB矢視図である。
【図3】図1におけるZ−Z断面図である。
【図4】固定装置の作用を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の降下状態、(C)は金型交換台車の固定状態、を示している。
【図5】下型とボルスタの間に金型交換台車が配置されている場合の固定装置を示す図であり、(A)は金型交換台車の移動完了状態、(B)は金型交換台車の固定状態、を示している。
【図6】固定装置の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
【符号の説明】
【0045】
1 プレス機
2 下型
3 ボルスタ
4 ベッド
5 金型交換台車
6 固定装置
7 昇降機構
11 上型
12 スライド
13 スライド駆動機構
14 クラウン
15 アプライト
31 開口部
41 メインウェブ
42 ベッドフランジ
43 切欠部
44 第一開口部
45 第二開口部
46 ダイクッション装置
47 レール
48 ガイド部
51 車輪
52 凸部
53 鍔部
61 リフター部
62 クランプ部
63 昇降装置
64 軸部
65 台座
121 ノックアウト装置
131 コネクティングロッド
132 クランクピン
611 溝部
621 爪部
622 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動台車の固定場所に配置された支床部の側面に配置され、前記移動台車を昇降可能かつ固定可能に支持する固定装置であって、
前記移動台車を昇降可能に支持するリフター部と、該リフター部に連結されるとともに前記移動台車と係合可能なクランプ部と、前記リフター部及びクランプ部を昇降させる昇降装置と、を有し、少なくとも前記リフター部は、前記支床部の側面に形成された切欠部に挿入されている、ことを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記リフター部の軸芯は、前記昇降装置の軸芯とオフセットされている、ことを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記クランプ部は昇降方向に延びた軸部を有し、該軸部は前記支床部の側面に配置されたガイド部によりスライド可能に支持されている、ことを特徴とする請求項2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記移動台車は金型交換台車であり、前記支床部はプレス機のベッドである、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固定装置。
【請求項5】
金型が取り付けられるボルスタと、該ボルスタを下方から支えるベッドと、前記金型又は前記ボルスタを移動させる金型交換台車と、前記ベッドの側面に配置されるとともに前記金型交換台車を昇降可能かつ固定可能に支持する固定装置と、を有するプレス機において、
前記固定装置は、前記金型交換台車を昇降可能に支持するリフター部と、該リフター部に連結されるとともに前記金型交換台車と係合可能なクランプ部と、前記リフター部及びクランプ部を昇降させる昇降装置と、を有し、少なくとも前記リフター部は、前記ベッドの側面に形成された切欠部に挿入されている、ことを特徴とするプレス機。
【請求項6】
前記リフター部の軸芯は、前記昇降装置の軸芯とオフセットされている、ことを特徴とする請求項5に記載のプレス機。
【請求項7】
前記クランプ部は昇降方向に延びた軸部を有し、該軸部は前記ベッドの側面に配置されたガイド部によりスライド可能に支持されている、ことを特徴とする請求項6に記載のプレス機。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれかに記載の前記プレス機を複数台有する、ことを特徴とするプレスライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42429(P2010−42429A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208878(P2008−208878)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】