説明

固定障子を有する開口部装置

【課題】固定障子の下枠の取り付けに際して簡易に排水通路を確保することができる開口部装置を提供する。
【解決手段】建物開口部の4辺に沿って設けられ、一対の縦枠と上横枠5と下横枠6とを枠状に組み合わせることにより形成される枠体、及び枠体内に配置される固定障子10を備える開口部装置であって、下横枠上面と、固定障子の下端面との間に配置され、室内外に貫通する流路を形成する排水部材30を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定障子を有する開口部装置に関し、詳しくは簡易に排水構造を得ることができる固定障子を有する開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物開口部に配置される引戸式の開口部装置において、例えば室外側に配置される外引き違い障子(以下「外障子」と記載することがある。)をスライドできないように固定障子とし、室内側に配置される内引き違い障子(以下「内障子」と記載することがある。)を引戸式に移動させることができる可動障子とするものが知られている。
【0003】
従来において、このように固定障子を備える開口部装置であっても、当該固定障子の下横枠への取り付けは可動障子と同様、下横枠の長手方向に沿って立設されたレールに固定障子の横框を差し込む等しておこなっていた。しかし、このような場合には立設されたレールの室内側に水が溜まったとき、これを何らかの方法により排出する必要がある。
【0004】
このため従来では所定の間隔でレールの厚さ方向に貫通する孔を開ける対策がとられてきた。また、このような下横枠の排水手段として特許文献1のような構成も開示されている。これによれば、下横枠の上面に下方へ貫通する孔を設けてこれを介して室外に水を排出する。
【特許文献1】特開2003−176673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来におけるレールに孔を設ける方法、及び特許文献1に記載されたように下横枠の上面に孔を設ける方法のいずれの方法であっても、下枠自体に孔を開ける必要があり、加工、生産性の観点から改善することが望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、かかる問題に鑑み、固定障子の下枠の取り付けに際して簡易に排水通路を確保することができる開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、建物開口部の4辺に沿って設けられ、一対の縦枠(3、4)と上横枠(5)と下横枠(6)とを枠状に組み合わせることにより形成される枠体(2)、及び枠体内に配置される固定障子(10)を備える開口部装置(1)であって、下横枠上面と、固定障子の下端面との間に配置され、室内外に貫通する流路を形成する排水部材(30)を備える開口部装置を提供することにより前記課題を解決する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開口部装置(1)における排水部材が、下横枠(6)の長さ方向に沿って所定の間隔で配置される複数の突起を形成する凸部材(30、30、…)であり、固定障子(10)の下端面が凸部材の上に乗せられて下横枠に固定されることにより、固定障子の下端面と前記下横枠の上面とが接触しないことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の開口部装置(1)における固定障子(10)の下端面には下方に開口する凹部(15a)が設けられ、該凹部内に凸部材(30)の上端が挿入されることを特徴とする。
【0011】
ここで固定障子の下端面に設けられる「凹部」は、固定障子の下端面に沿って設けられる溝状であってもよく、凸部材が配置される位置に合わせて、当該位置のみに設けられる孔状であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下横枠の上面と固定障子の下端面との間に排水部材を取り付けるのみで排水通路を形成することができる。これにより下横枠には孔等を設ける必要がないので加工の手間が省くことが可能であり、生産性も向上させることができる。
【0013】
また、固定障子の下端面に下方に開口させて凹部を設け、これに凸部材の上端を挿入するように構成した場合にはさらに固定障子の枠体への取り付け安定性を向上させることが可能である。
【0014】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は第一実施形態に係る本発明の開口部装置1を模式的に示した室外視正面図である。図2は開口部装置1の水平断面図、図3は同垂直断面図である。図2では紙面上が室内側、紙面下が室外側である。図3では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。以下、図1〜図3及び適宜示す図を参照しつつ開口部装置1について説明する。
【0017】
開口部装置1は、建物開口部の4辺の縁に沿って備えられる枠体2と、該枠体2の内側に配置される固定障子である外障子10と、枠体2の内側に配置される可動障子である内障子20とを備えている。
【0018】
枠体2は、建物開口部の4辺に沿って設けられる長尺の型材である縦枠3、4、上横枠5、及び下横枠6が枠状に組み合わされて形成されている。縦枠3、4の断面形状は図2に、上横枠5、下横枠6の断面形状は図3に表されている。また、図4には、図3のうち下部に配置される下横枠6に注目し、さらに外障子10及び内障子20を分離した図を示した。
【0019】
縦枠3は図2からわかるように、室外側の角部が切り欠かかれた矩形の中空断面を有して鉛直方向(紙面奥/手前方向)に延在する。当該切り欠かれた部分に外障子10の端部が取り付けられる。また、縦枠3は、その他中空である内側に配置されるしきり片3aや建物への取り付けのために見付方向外側に延在する取付片3b等を備えている。縦枠4は、見付方向内側に開口するコ字状の断面を有して鉛直方向(紙面奥/手前方向)に延在する。当該コ字状である断面の開口から内障子20の戸先側端部を受け入れるように構成されている。また、縦枠4には見付方向外側に延在する取付片4aが設けられ、これにより縦枠4を建物に取り付ける。
【0020】
上横枠5は建物開口部上縁に沿って配置される枠材で、その断面は図3からわかるように複数の片が組み合わされて所定の形状とされている。当該上横枠5には外障子10及び内障子20の上端が取り付けられる。特に、上横枠5は見付方向内側(紙面下方)に延在するガイド5aが設けられ、内障子20が枠体2内を移動する際に該内障子20の上端をガイドする。また、上横枠5は見付方向外に延在する片5bが設けられ、これにより上横枠5が建物に固定される。
【0021】
下横枠6は建物開口部下縁に沿って配置される枠材で、その断面は図3及び図4からわかるように複数の片が組み合わされて所定の形状とされている。下横枠6は室外側に配置される室外側下横枠7及び該室外側下横枠7より室内側に配置される室内側下横枠8が連結されるように形成されている。室内側下横枠8には内障子20の車輪26を受けてガイドするレール8aが設けられている。
【0022】
また、室外側下横枠7の上面7aは室内側下横枠8の上端に表れるいずれの面よりも低く形成されている。そして該上面7aは室内側から室外側へ向けて(紙面右から左へ向けて)全体として下がるように構成されている。これにより上面7aには水が溜まることなく室外側へ該水を排出することができる。そして下横枠6も建物への取り付けのために見付方向外側に延在する取付片7b等を備えている。
【0023】
さらに室外側下横枠7の上面7aには、排水部材としての複数の凸部材30、30…が取り付けられている。図5には1つの凸部材30の斜視図、図6には凸部材30、30が室外側下横枠7に取り付けられた場面における下横枠6端部近傍の平面図を示した。図3〜図6からわかるように凸部材30、30、…は、幅広のベース31と該ベース31の上面から突出する幅が狭い突起32とを備えた凸状断面を具備して所定の長さを有する部材である。そして当該凸部材30が室外側下横枠7の上面7aに該室外側下横枠7の長手方向に沿って所定の間隔で並べられている。凸部材30、30、…の室外側下横枠7への取り付けは凸部材30の長手方向略中央に上下に貫通する孔33を介してねじ留めされることにより行われる。凸部材30、30、…の長さ及び配置されるピッチは特に限定されるものではないが、排水性向上や部品点数を減らす観点からできるだけ短く、大きいピッチであることが望ましい。例えば該長さを30〜100mm、ピッチを500〜700mmとすることを挙げることができる。ただし、後述するように、外障子10を保持する観点からの所定の強度を確保することは必要とされる。
【0024】
図1〜図4に戻り開口部装置1の他の構成について説明する。外障子10は、ガラスにより形成された面材であるガラスパネル11、戸先框12、外召し合わせ框13、上横框14、下横框15を備えている。本実施形態のガラスパネル11は複層ガラスであり2枚の平行に配置されたガラス面材が備えられている。
【0025】
戸先框12はガラスパネル11の4辺のうち戸先側に配置される辺に沿って具備される縦框であり、図2に示したような所定の断面を有して長手方向(図2の紙面奥/手前方向)に延在する。また、外召し合わせ框13は、ガラスパネル11の縦縁の1つに沿って設けられ、召し合わせ部分となる縦框であり、やはり図2に示したような所定の断面を有して長手方向(図2の紙面奥/手前方向)に延在する。
【0026】
上横框14はガラスパネル11の上縁に沿って配置される框、下横框15はガラスパネル11の下縁に沿って配置される框である。上横框14、及び下横框15も図3に示した所定の断面を有して長手方向(図3の紙面奥/手前方向)に延在する。ここで、下横框15の下端には、図4からわかるように凹部15aが形成されている。凹部15aは下方に開口した凹状の部位であり、該凹部15aの幅(図4における紙面左右方向大きさ)は上記した凸部材30の突起32の幅と略同一である。また、凹部15aの深さ(図4における紙面上下方向大きさ)は、凸部材30の突起32の高さより大きく形成されている。
【0027】
内障子20は、ガラスパネル21、戸先框22、内召し合わせ框23、上横框24、及び下横框25を有している。ここで内障子20は枠体2の内側を見付方向に引戸式に移動させることができるいわゆる引戸である。ガラスパネル21は、図2、図3に表れているように、複層ガラスであり2枚の平行に配置されたガラス面材が備えられている。戸先框22はガラスパネル21の戸先側縁に沿って配置される長尺部材で、図2に示した断面を有している。内召し合わせ框23は、ガラスパネル21の戸先と対向する縦縁に沿って設けられ、召し合わせ部分となる縦框である。上横框24、及び下横框25はガラスパネル21の上下縁のそれぞれに沿って配置される長尺の型材である。ここで、上横框24は上方に開口した凹部24aを備え、下横框25は凹部25a及び該凹部25aの内側に配置される車輪26を具備している。これにより、後述するように内障子20は引戸式の可動障子として、スライド可能に枠体2内側を移動することができる。
【0028】
また、開口部装置1には図2に示したようにストッパー9が設けられてもよい。ストッパー9は、移動可能である内障子20の移動を制限する部材で、下横枠6うち内障子20が移動する軌道上に配置された部材である。これにより内障子20が移動しすぎないように制限することができる。
【0029】
さらに開口部装置1には通常の開口部装置に備えられる部材を備えてもよい。これには例えば施錠装置や網戸を挙げることができる。また、上記した縦枠3、4、上横枠5、下横枠6、戸先框12、22、外召し合わせ框13、内召し合わせ框23、上横框14、24、下横框15、25の断面形状は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で変更することが可能である。
【0030】
以上のような各構成は例えば次のよう組み合わされて開口部装置1とされる。すなわち外障子10の戸先框12は縦枠3に取り付けられる(図2参照)。上横框14は上横枠5に、下横框15は下横枠6にそれぞれ固定される。このとき、下横框15は、該下横框15の凹部15aの内側に下横枠6に設置された凸部材30の突起32を差し込むようにして取り付けられる。これにより、図3からわかるように、凹部15aの開口を形成する側壁の端面が凸部材30のベース31の上面に乗せられるように配置されて安定する。当該配置により下横框15と下横枠6とは直接に接することなく安定して固定される。
【0031】
図7は開口部装置1の凸部材30が設けられていない部分の垂直断面のうち下横枠6及び下横框15の周辺に注目した図である。このように上記外障子10と下横枠6との固定により、図7にAで示した矢印のような排水通路を確保することができる。従って外障子10の室内側に侵入した水は当該排水通路を介して室外に排出される。
【0032】
このように本発明の開口部装置1は、凸部材30を取り付けるのみでよく、下横枠に孔等を設ける必要がないので加工の観点、及び生産上の観点から有利な効果を奏するものとなる。
【0033】
内障子20の枠体2への取り付けは、図3からわかるように上横框24の凹部24aの内側に上横枠5のガイド5aに挿入する。そして下横框25の車輪26を下横枠6のレール8aに乗せるように配置する。これにより内障子20は枠体2内を引戸式に移動することができるようになる。
【0034】
図8は開口部装置1の変形例を示す開口部装置1’を説明するための図である。図8は上記した図4に相当する図である。また、開口部装置1’の各構成は以下に説明する凸部材30’以外は開口部装置1と同じなので、符号も共通とし、説明を省略する。
【0035】
開口部装置1’に備えられる凸部材30’は、凸部材30と異なり、断面形状が凸状でなく矩形である。このような凸部材30’であっても該凸部材30’の高さ(図8の紙面上下方向大きさ)を下横框15の凹部15aの深さ(図8の紙面上下方向大きさ)より大きく形成すれば、上記した排水通路を適切に形成することが可能である。具体的には、凸部材30’を図8に破線で示したように凹部15aに挿入する。これにより凸部材30’の上面と凹部15aの底面とが接触して安定し、外障子10が下横枠6に固定されるとともに、下横框15の下端面は下横枠6の上面に直接接触することなく排水通路を確保することが可能となる。
【0036】
図9には他の変形例にかかる本発明の開口部装置のうち排水部材30’’を示した。他の構成は上記した説明に共通するので、ここでは説明を省略する。排水部材30’’は、凸部材30’についてさらに室内外方向に貫通するスリット32’’、32’’、…を備えている。これによりさらに排水性を向上させることが可能となる。また、排水部材30’’であれば、下横枠6の上面に沿って全長に亘って配置しても適切に排水通路を確保することが可能である。排水部材30’’によれば、排水通路を確保することができるとともに、外障子10の取り付け強度を向上させることができる。
【0037】
本発明は固定障子を有する開口部装置であれば適用することができ、実施形態で示したような可動障子を必ずしも備えている必要はない。例えば図10には第二実施形態にかかる開口部装置51の縦断面を示した。当該開口部装置51は開口部装置1に備えられていた内障子20を備えておらず、固定障子60のみが障子として配置されている。かかる場合であっても開口部装置1と同様に上横框64が上横枠55に固定されるとともに下横框65が下横枠56に凸部材80を介して固定される。従って上記した説明と同様に適切に排水通路を確保することができる。
【0038】
また、各実施形態において用いられたガラスパネルは必ずしも複層ガラスである必要はなく、単層ガラスであってもよい。
【0039】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第一実施形態にかかる本発明の開口部装置の室外視正面図である。
【図2】開口部装置の水平断面図である。
【図3】開口部装置の垂直断面図である。
【図4】開口部装置の垂直断面図のうち下部に備えられる横枠、及び横框周辺に注目し、これらを分離して示した図である。
【図5】凸部材の斜視図である。
【図6】凸部材が下横枠に配置される態様を説明する図である。
【図7】排水通路を説明するための図である。
【図8】変形例を説明する図である。
【図9】他の変形例にかかる排水部材の斜視図である。
【図10】第二実施形態にかかる本発明の開口部装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 開口部装置
2 枠体
3 縦枠
4 縦枠
5 上横枠
6 下横枠
10 外障子(固定障子)
11 ガラスパネル
12 戸先框
13 召し合わせ框
14 上横框
15 下横框
15a 凹部
20 内障子
21 ガラスパネル
22 戸先框
23 召し合わせ框
24 上横框
25 下横框
26 車輪
30 凸部材(排水部材)
30’ 凸部材(排水部材)
30’’ 排水部材
51 開口部装置
55 上横枠
56 下横枠
60 固定障子
64 上横框
65 下横框
80 凸部材(排水部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部の4辺に沿って設けられ、一対の縦枠と上横枠と下横枠とを枠状に組み合わせることにより形成される枠体、及び前記枠体内に配置される固定障子を備える開口部装置であって、
前記下横枠上面と、前記固定障子の下端面との間に配置され、室内外に貫通する流路を形成する排水部材を備える開口部装置。
【請求項2】
前記排水部材が、前記下横枠の長さ方向に沿って配置される少なくとも1つの突起を形成する凸部材であり、
前記固定障子の下端面が前記凸部材の上に乗せられて前記下横枠に固定されることにより、前記固定障子の下端面と前記下横枠の上面とが接触しないことを特徴とする請求項1に記載の開口部装置。
【請求項3】
前記固定障子の下端面には下方に開口する凹部が設けられ、該凹部内に前記排水部材の上端が挿入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35923(P2009−35923A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200601(P2007−200601)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】