説明

固形医薬品を自動的に挿入するための装置

【課題】 固形医薬品のペグ(3)を皮膚(4)に挿入するための装置を提供する。
【解決手段】 この装置は、医薬品のペグ(2)が貯留されるバーレル(2)を有しており、ペグ(3)を挿入しようとするところで皮膚(4)に押し当てられたバーレル(2)の端部を通してペグを押出すために、前記ペグ(2)の背後のプランジャ(8)を移動させることができる。このプランジャ(8)は、これがその前方に医薬品のペグ(3)用の空間を残す位置までバーレル(2)内に引っ込められる第1の非直線配置から、プランジャ(8)がバーレル(2)の端部から突出する直線配置まで、更にプランジャ(8)がバーレル(2)内に引っ込められる新しい非直線位置まで移行されることができる可撓性ロッド構成体(6、7、8)の一部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品ペグを皮膚に自動的に挿入するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの医薬品は、溶媒に懸濁された可溶の重結晶または粒子として注入される。可溶の重医薬品は、注入されると、或る時間の間、組織の液体により溶解される。医薬品を溶媒に懸濁したり或いは溶解したりする代わりに、乾医薬品が、小さい針状のペグに押付けられてもよく、このペグは、組織の挿入されることができ、そこで医薬品が、或る時間の間、組織の液体により溶解される。
【0003】
ハウジングに設けられたバーレルにペグが貯留されており、ボタンを押すことによってバーレルの中に通されることができるプランジャによりペグをバーレルから皮膚に押し入れることができる装置が、米国特許第5542920号から知られている。或いは、ばねにより、或いはバーレル内のペグの背後にガス圧を加えることによってペグを皮膚に押し入れることができる。
【0004】
挿入が望まれるところで皮膚にバーレルの他端部が押付けられて、このバーレルにその一端から押し入られるプランジャによってペグを皮膚に押し入れるとき、ペグが皮下位置まで挿入されることを確保するために、ペグに面した方のプランジャの端部が皮膚の中に数ミリ通される位置までプランジャを押さなければならない。従って、挿入により汚染されるかも知れないプランジャの端部がバーレル内に隠されるようにプランジャがバーレル内に引き戻されることが望まれる。これは、ハウジングと、プランジャをバーレルに押入れるためのボタンとの間にばねを設けることによって達成されてもよい。ボタンの挿入移動により、このばねが圧縮され、ボタンを放すと、このばねは、ボタンを押し戻し、これにより、ペグを皮下に挿入したままにして、プランジャをその挿入位置から引き戻す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、固形医薬品のペグが自動的に挿入され得る小型の扱い易い装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、医薬品のペグが貯留されるバーレルを有しており、前記ペグを挿入しようとする位置で皮膚に押付けられる方のバーレルの端部を通してペグを押出すために前記ペグの背後のプランジャを移動させることができる、医薬品ペグを皮膚に自動的に挿入するための装置において、本発明によれば、前記プランジャは、これが医薬品ペグ用の空間を残す位置までバーレル内に引っ込められる第1の非直線配置から、プランジャがバーレルの端部から突出する直線配置まで移行されることができるように設計されている可撓性ロッド構成体の一部であることを特徴とする医薬品のペグを皮膚に自動的に挿入するための装置によって達成される。
【0007】
本発明によれば、ロッド構成体は、第1および第2の端部を有する単一の可撓性バーであってもよく、前記第1の端部は、ハウジング内に固定されており、第2の端部は、バーレル内の医薬品のペグの背後に設置されており、可撓性バーは、前記第1および第2の端部の間にその軸線と直交する第1の方向の撓みを有しており、この撓みに、これをまっすぐにし且つこの第1の撓みと反対の方向に第2の撓みを与える方向に作用するばね機構が設けられている。
【0008】
このばね機構は、可撓性バーにおける固有のばね力により設けられてもよく、この可撓性バーは、前記第2の方向の撓みが形成され、そして前記第1の方向の撓みを有するようにその固有のばね力に抗して押されている。
【0009】
このバーは、解放機構が作動されて直線位置ないし前記第2の方向の撓みを有する位置にわたってバーを押すばね力を解放するまで、前記第1の方向の撓みを有するその位置に保持される。バーがその直線位置に向かって移動しているとき、バーレルの外端部が皮膚に押付けられると、プランジャを構成しているバーの端部は、医薬品のペグをバーレルから皮膚に押入れる。バーがその直線位置に達すると、プランジャは、バーレルの端部から短い距離、突出し、それによりペグが皮膚の表面の下の同じ距離のところの位置まで押されることが確保される。第2の方向の撓みを有する位置までのバーの更なる移動により、いずれの引掻きの恐れもなしに皮膚との接触状態から装置を取り外すことができるように、プランジャの端部が皮膚から引き抜かれる。
【0010】
他の実施の形態では、ばね機構は、ハウジングと可撓性ロッドとの間に設けられたばねよりなってもよく、このばねは、可撓性ロッドがその第1の非直線位置にあるとき、ハウジングと可撓性ロッドとの間で圧縮されて、可撓性ロッドをその直線位置に向けて押すようになっている。
【0011】
他の実施の形態では、可撓性ロッド構成体は、3つの直線ロッドにより構成されてもよく、これらのロッドは、1つのロッドがプランジャを構成し、第1のロッドが、これとプランジャロッドの軸線の延長部に位置するハウジング内の箇所との間に連結された第2のロッドとプランジャとの間に連結されることによって、ナックルリンク機構が構成されるように、リンクを介して直列に連結されている。ばねは、ナックルリンクがまっすぐにされるような方向で、第1のロッドが第2のロッドに連結されるところでナックルリンク機構に作用する。ばねの更なる作用によりナックルリンク機構を新しい曲がり位置まで移動させると、プランジャは、バーレルから引き戻される。
【0012】
初めの位置から最終位置までの移動中、第2のロッドは、ハウジング内に固定されたピンのまわりに回転する。最終位置に向かう前記第2のロッドの回転を助けることができるフライホイールを設けることは魅力的である。これは、第2のロッドの代わりに、ハウジング内に固定された前記ピンのまわりに回転するディスクを使用することにより達成されることができる。ディスクの回転は、前記ピンのまわりにトルクを与えるようにディスクに作用するばねにより支持されることができる。
【0013】
前述のロッド構成体は、小さい力により与えられる移動、すなわち、ばね機構により与えられる撓みの移動を、強い力による短い移動、すなわち、ペグを皮膚に押入れるプランジャの移動に変換する伝導装置を非常に簡単な方法で設けると言う利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
添付図面を参照して本発明を以下に説明する。
【0015】
図1には、バーレル2を備えたハウジング1が示されており、このハウジング1には、患者の皮膚4に貫通されるのが容易なバーレル2の出口のところに固形医薬品のペグ3が設置されている。バーレル2には、ロッド状プランジャ8が、ペグ3の背後に設置されており、このプランジャは、第1のロッド(5)および第2のロッド(6)によりハウジング(1)内のピボットピン7に連結されている。第1のロッド(5)は、その一端がリンク9によりプランジャの内端部に連結されており、この他端部がリンク10により第2のロッド(6)に連結されている。プランジャ8およびロッド5、6の長さは、上記プランジャがバーレル2内のペグ3の背後のその位置にあるとき、プランジャ8およびロッド5、6がピン7とプランジャ8の内端部との間にナックルリンク機構を構成するように調整されている。第2のロッド(6)は、ピボットピン7のまわりに回転されることができ、この回転は、図2および図3に示されるように第2のロッドが一体化されることができるフライホイール11により支持されることができる。
【0016】
図2においては、フライホイール11は、プランジャ8、リンク9、10およびピボットピン7が1つの直線状に位置する程度、すなわち、ナックルリンク機構のロッドが直線位置にもたらされる程度に、矢印12により示される方向に回転されている。プランジャ8および第1および第2のロッド5、6の長さは、この位置におけるプランジャがバーレルの外端部から短い距離突出するように調整されている。それにより、ペグ3が皮膚4の表面の下の短い距離のところに位置決めされることが確保される。この距離は、ロッド5、6およびプランジャ8の長さの選択により設定されている。一体化された第2のロッドの長さは、ピボットピン7とリンク10との間の距離により定められている。
【0017】
図3においては、フライホイール11およびその一体化された第2のロッドは、プランジャ8および第1および第2のロッドがもはや直線配置を達成しない位置まで更に回転されている。それにより、プランジャ8は、バーレル2から突出するその位置から引っ込められ、ペグ3を皮膚4の下の適当な距離のところに放置する。
【0018】
この装置は、ハウジングとフライホイール11または第2のロッド6との間で作用する図示していないばねにより第2のロッド6およびフライホイールの回転が誘発される使い捨て装置であることができる。装置を保管するとき、この装置は、ばねが圧縮された状態の図1に示される位置にある。装置を使用しようとするとき、バーレルの開口部が皮膚に押付けられ、圧縮されたばねが解放される。この結果、第2のロッドは、図2に矢印12で示される方向に回転される。このロッドは、図2に示される位置を通ってプランジャがバーレルの中へ引き戻される図3に示される位置まで回転される。皮膚の貫通により汚染されるかも知れない、バーレル内に隠されたプランジャは、だれとも接触することがない。
【0019】
図4、図5および図6は、本発明による装置の他の実施の形態を示している。この実施の形態では、ナックルリンク機構のプランジャおよび第1および第2のロッドの代わりに、一端がバーレル2内に案内され、他端部がピン14によりハウジング内に回転可能に固定されている単一の可撓性ロッド13が使用されている。この可撓性ロッドは、図1においては、ロッド13の自由端部がバーレル2の入口から距離をおいて位置決めされてペグをその入口に隣接してバーレル内の設置し得る曲げられた位置に保持される直線ロッドであることができる。
【0020】
ロッド13は、これを解放すると、これ自身の固有のばね力により、或いは自由端部とハウジング1内に固定された端部との間で軸線と直交するロッドに作用するばね15の力により直線位置に移行する。可撓性ロッドは、その直線位置から、ロッドがその突出位置から引っ込められる図6に示される新しい曲げられた位置まで図5に矢印16で示される方向に更に移動する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ロッド構成体がその初めの非直線位置にある本発明による装置を概略的に示している図である。
【図2】ロッド構成体がその直線位置にある図1の装置を示している図である。
【図3】ロッド構成体がその最終の非直線位置にある図1および図2の装置を示している図である。
【図4】ロッド構成体が初めの非直線位置にある1つの一体の可撓性ロッドにより表されている本発明による装置の他の実施の形態を概略的に示している図である。
【図5】ロッドがその直線位置にある図4の装置を示している図である。
【図6】ロッドがその最終の非直線位置にある図4および図5の装置を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品のペグが中に貯留されるバーレルを有しており、前記ペグを挿入しようとする位置で皮膚に押付けられる方のバーレルの端部を通してペグを押出すために前記ペグの背後にあるプランジャを移動させることができるる、医薬品ペグを皮膚に自動的に挿入するための装置において、前記プランジャは、これが医薬品ペグ用の空間を残す位置までバーレル内に引っ込められる第1の非直線配置から、プランジャがバーレルの端部から突出する直線配置まで移行されることができるように設計されている可撓性ロッド構成体の一部であることを特徴とする装置。
【請求項2】
ハウジングと前記可撓性ロッド構成体との間にばねが設けられており、このばねは、これが可撓性ロッド構成体をその直線配置に向けて押すように、可撓性ロッド構成体がその第1の非直線配置を占めるとき、前記ハウジングと可撓性ロッド構成体との間に圧縮されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ばねは、可撓性ロッド構成体をその直線配置を通り越して第2の非直線配置まで押すことができるように寸法決めされていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記可撓性ロッド構成体は、3つの直線ロッドにより構成されており、これらのロッドは、1つのロッドがプランジャを構成し、第1のロッドが、これとプランジャロッドの軸線の延長部に位置するハウジング内のピンとの間に連結された第2のロッドとプランジャとの間に連結されることによって、ナックルリンク機構が構成されるように、リンクを介して直列に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ばねが設けられており、このばねは、ハウジングに連結された第2のロッドに作用してこの第2のロッドを、第1および第2のロッドおよびプランジャが非直線配置を構成する位置から、このような直線配置が構成される位置を通して更に第2の非直線配置まで回転させるように、圧縮されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジング内で前記ピンのまわりに回転するフライホイールが設けられており、このフライホイールは、前記ピンのまわりの前記第2のロッドの回転を支持するように前記第2のロッドに連結されていることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のロッドは、前記フライホイールに一体化されており、前記第1のロッドは、前記ピンから間隔を隔てた箇所で前記フライホイールに連結されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−514555(P2006−514555A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−577997(P2003−577997)
【出願日】平成15年3月11日(2003.3.11)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000149
【国際公開番号】WO2003/080173
【国際公開日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】