説明

固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法

【課題】折れて破損することにより、または使用により小さくなった固形描画材を再利用可能な、固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法を提供する。
【解決手段】重ねることの可能な2つの成形型(1)からなる、少なくとも一つの組、重り(2)、および水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器(3)を含む図形描画材成形玩具を提供する。この玩具を用いて、組の一方の成形型に細かくした固形描画材を入れ、他方の成形型をその上に重ねてその中に重りを入れた状態で、水を溜めた容器に配置し、当該容器ごと電子レンジで加熱することにより、水蒸気を加熱媒体にして、固形描画材を溶融させて成形型内で流動させ、冷却後に成形型に即した形状の固形描画部材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法に関し、特に、固形描画材としてクレヨンまたはオイルパステルを使用する、成形玩具および成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形描画材として、クレヨンおよびオイルパステル(代表的なものは、(株)サクラクレパス製のクレパス(登録商標))等が、広く知られ、幅広い年齢層の利用者が絵画のために、または筆記のために使用している。特に、クレヨンおよびオイルパステルは、幼稚園および小学校の図画工作の授業において、汎用されている。
【0003】
固形描画材は、一般に、単一の棒状体であって、理論的には、どんなに小さくなっても描画材としての機能を有する。しかし、使用中に折れてしまって小さな破片に分割された固形描画材、および使用している間に短くなってしまった固形描画材は、使いにくいものであるため、捨てられる、または使用されないまま保管されていることが多い。
【0004】
前記のように、固形描画材は、小さくなっても描画材としての機能を果たし得るものである。そのため、小さくなって使いづらい固形描画材を再利用する方法が予て提案されている。例えば、アルミホイルで円筒形の成形型を作製し、その中に小さくなったクレヨンを充填したものを、フライパンで温めると、円柱形のクレヨンを再度得られることが知られている。あるいは、Crayola社から、Crayon Maker(商品名)というクレヨンを再成形する器具も販売されている。Crayon Makerは、ホットプレートでクレヨンを加熱して溶融させた後、クレヨンの形をした型に溶融したクレヨンを流し込む器具である(非特許文献1)。
【0005】
また、クレヨンを再利用するものではないが、クレヨンを作製する玩具として、クツワ株式会社から、「おもしろいクレヨンをつくろう」(商品名)という玩具が販売されている。この玩具は、クレヨンの素となる粉状体と型とを含み、クレヨンの素となる粉状体を紙コップに入れて電子レンジで加熱して溶融させ、溶融したクレヨンの素を型に流しこんで、冷却することにより、クレヨンを作製する玩具である(非特許文献2)。
【0006】
さらに、最近、任意の形状(例えば、ケーキ等のお菓子、ハンバーガーなどの食品)または色の組み合わせを、粘土および消しゴムで作製する玩具も提案され(特許文献1および2)、上市されている。これらの玩具は、小さな部品または不定形の粉状体が、全く別の形状になる、または予想外の色を発生させるとともに、場合によっては、消しゴムとして実用可能であるという点で、子供の興味を引く玩具であるといえよう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4278707号公報
【特許文献2】実用新案登録第3142498号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://www.crayola.com/products/splash/crayon-maker/
【非特許文献2】http://www.kutsuwa.co.jp/products/view/675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
Crayon Maker(商品名)として販売されているクレヨン成形器具は、使用済みのクレヨンを1つの装置を用いて再度成形できるという点で、簡便なものである。しかし、この商品は決して安価ではなく、また、相当な寸法を有する。さらに、この商品は、熱源として所定ワット数の電球を使用者が用意する必要がある点で、手軽さにやや欠ける。また、この器具で成形されるクレヨンは、市販のクレヨンの形状(ペン形)を有し、この器具を用いて他の形状のクレヨンを作製することはできない。
【0010】
「おもしろいクレヨンをつくろう」(商品名)という玩具は、玩具中にセットされたクレヨンの素を使用しなければならず、クレヨンを再利用するという目的のものではない。また、この玩具は、紙コップ内にクレヨンの素を入れて、電子レンジで加熱した後、紙コップ内の溶融したクレヨンの素を型に流す作業を必要とする。そのような作業は、例えば就学前の子供では行いにくい。
【0011】
同様に、アルミホイルとフライパンを用いる再利用方法も、小さな子供が容易に行い得るものではない。
【0012】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、より手軽に固形描画材を再利用することを可能にする、固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の固形描画材成形玩具は、
重ねることの可能な2つの成形型からなる、少なくとも一つの組、
重り、および
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器(以下、単に「成形型収容容器」とも呼ぶ)
を含む。この固形描画材玩具は、2つの成形型の一方に固形描画材を細かくして入れ、必要に応じて他方の成形型を重ねた後、他方の成形型の上に重りを入れ、その状態で、水を溜めた成形型収容容器に入れて、成形型収容容器を電子レンジ内に入れて加熱することにより、成形型の形状を有する固形描画材を得ることを可能にする。
【0014】
したがって、本発明はまた、
細かくした固形描画材を成形型に入れること、
固形描画材を入れた成形型に別の成形型を重ねること、
重ねた別の成形型に重りを入れること、
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器に水を溜めること、
水を溜めた前記容器に、固形描画材および重りがそれぞれ入っている、重ねられた状態の2つの成形型を配置すること、ならびに
前記重ねられた状態の2つの成形型が配置された、前記容器を電子レンジで加熱すること
を含む、固形描画材成形方法を提供する。この成形方法において、別の成形型を重ねて重りを入れる工程は、場合により省略することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法は、電子レンジを使用して簡便に固形描画材を成形することを可能にする。また、成形型として種々の形状のものを用意することにより、従来の固形描画材にはない形の固形描画材を得ることができ、子供だけでなく大人も楽しめる玩具として提供され得る。さらに、成形に際して、加熱溶融および成形が電子レンジ内で行われるため、比較的低温で図形描画材を成形することができ、また、成形中に熱くなった固形描画材を型に注入する作業を要しない。よって、例えば、本発明の固形描画材成形玩具は、子供が大部分の作業を一人で行って、固形描画材の成形を行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の図形描画成形玩具を構成する成形型の一例を示す斜視図および底面図である。
【図2】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の図形描画成形玩具を構成する成形型の別の例を示す斜視図および底面図である。
【図3】本発明の図形描画成形玩具を構成する成形収容容器の一例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の図形描画成形玩具を構成する成形収容容器の別の例を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の図形描画成形玩具の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の固形描画材成形玩具(以下、単に「玩具」と呼ぶこともある)は、
重ねることの可能な2つの成形型からなる、少なくとも一つの組、
重り、および
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器
を含む。この玩具の一例を、図5に模式的に示す。図5において、1は成形型の組を、2は粒状体である重り、3は成形型収容容器を示す。
【0018】
本発明の玩具において成形の対象となる固形描画材は、クレヨン、オイルパステルおよびパステル等であり、特に、クレヨンおよびオイルパステル(代表的には、(株)サクラクレパス製のクレパス(登録商標))であることが好ましい。クレヨンおよびオイルパステルは、描画材として広く使用されており、再利用に対する潜在的な要求が大きいからである。
【0019】
本発明の玩具の好ましい形態において、固形描画材は利用者の側で用意してもらう。利用者の手元にある固形描画材を再利用することが、この玩具を手軽に使用することを可能にするからである。利用者が用意した固形描画材を細かくするための器具(例えば、固形描画部材を削るためのナイフ状物もしくは鉛筆削りのような器具、または破くための金槌のような器具)を本発明の玩具に含めてもよい。そのような器具が玩具に含まれている場合、利用者側で用意する器具を一つ減らすことができる。
【0020】
本発明の玩具の別の形態において、固形描画材を予め細かく砕いたものを、玩具に含めてよい。そのような形態の玩具は、利用者の手元にある固形描画材を再利用するものではないが、例えば、固形描画材の製造者側で発生した固形描画材の切れ端および成形不良品を再利用するという点において、広い意味で固形描画材の再利用に寄与し得る。また、本発明の玩具は、固形描画材を予め細かく砕いたものを含むとしても、利用者の手元にある固形描画材の再利用を妨げるものではなく、利用者が自身の固形描画材を使用することを可能にする。
【0021】
本発明の固形描画材玩具は、重ねることの可能な2つの成形型の組を少なくとも1つ含む。即ち、市販の紙コップの如く、重ねることの可能な、好ましくは同形状の2つの成形型からなる組が、本発明の玩具に含まれる。そのような型の組のうち、一つは細かした固形描画材を入れるための型であり、もう一つは必要に応じて固形描画材を入れた型の上に重ねて配置され、その中に重りを入れるための型である。
【0022】
型を重ねて重りを入れることにより、加熱溶融中の固形描画材から、空気を抜くことができるとともに、型の底面と接しない側の固形描画材の表面を平滑にすることができるので、きれいな仕上がりの成形品を得ることが可能となる。したがって、重りを入れるための成形型は、成形型に入れた固形描画材の表面をほぼ覆うことができるような形状および寸法を有している限りにおいて、固形描画材を入れる成形型とは異なる形状および寸法を有してよい。尤も、同じ形状の成形型を使用すれば、重りを入れる型と固形描画材を入れる型を区別することなく使用できるので、使用者にも玩具製造者にも便利である。
【0023】
尤も、成形型の形状および寸法ならびに固形描画材の種類によっては、重りを入れた型を重ねなくても、良好に成形できることがある。その場合には、組を構成する2つの成形型のうち一つだけを使用して成形を行ってよく、あるいは2つの成形型に固形描画材を入れて成形を実施してよい。
【0024】
成形型の組は2以上含まれていてよい。具体的には、1つの組を図1に示すように、うさぎの顔の成形型としてよく、別の組を図2に示すように、猫の顔の成形型としてよい。図1および2は、成形型の例示にすぎず、他の形状の成形型(例えば、花、星、三日月、動物の全体を表す形等)を使用してよい。
【0025】
成形型の材料は、
電子レンジで加熱するときの温度に耐えることができる耐熱性を有し、かつ水蒸気に曝されたときでも変質せず、繰り返し使用が可能である、
成形した固形描画材を型から取り出すときに、固形描画材の表面から剥離させやすい、
成形した固形描画材からめくることができるような可撓性を有する
といった性質を有することが好ましい。そのような素材としては、例えば、シリコーンが挙げられる。
【0026】
成形型の寸法は特に限定されず、例えば、その設置面積(型の底の面積)が1〜20cm程度であり、深さが2〜4cm程度であるものを用いることができる。そのような寸法を有する型は、取扱いが用意である。
【0027】
いずれの成形型を用いる場合にも、成形型には、成形に適した量の固形描画材および重りを正確に入れることができるよう、目安となる線または「しるし」を付しておくことが好ましい。そのような線または「しるし」まで、固形描画材および重りを入れることにより、成形型にどの程度固形描画材および重りを入れればよいかについて、例えば、子供が迷うことがなくなり、成形をより容易に実施することができる。
【0028】
重りは、固形描画材に均等に力を加えることができる限りにおいて、任意の形状および寸法のものを使用できる。本発明の玩具においては、ガラスもしくはプラスチック等からなる直径が0.1〜10mm程度である粒状体(例えばビーズ)、または長さまたは直径が10mm未満、好ましくは0.5〜5mm程度のペレット、ビーンズ、球状体(例えば、ビー玉)、円盤状体(例えば、おはじき)を重りとして好ましく使用することができる。これらの比較的小さい寸法の粒状態またはペレット等を重りとして使用すると、型の内部に均等に重りを入れることが可能となり、固形描画材に均等に力を加えることができる。あるいは、重りは、固形描画材に均等に力を加え得る限りにおいて、円柱形または角柱形等の単一体であってよい。
【0029】
重りを粒状体とする場合には、粒状体が誤ってばらまかれてしまうと、集めることが困難となることがある。また、重りは、比較的小さい部品であるため、紛失する可能性が高い。そのような不都合を回避するために、例えば、粒状体を耐熱性の材料から成り、加熱時に膨張した空気を逃すための空気孔を設けたやや大きめの袋に入れ、袋に入れた状態で成形型に入れるようにしてもよい。あるいはまた、成形型それ自体を、材料等を適宜選択して、重くなるように形成し、成形型それ自体を重りとして使用してもよい。
【0030】
重りはいずれの形態のものであっても、加熱溶融した固形描画材から空気を抜くことができ、かつ固形描画材の表面を平坦にするのに必要な量で、玩具に含まれる必要がある。具体的には、重りの量は、固形描画材に対し、1〜10Paの力を加えることができるように、成形型の寸法および成形型収容容器に一度に収容できる成形型の数等を考慮して決定される。
【0031】
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器は、調理器具として用いられる「蒸し器」のようなものである。具体的には、例えば、図3に示すように、成形型収容容器(30)は、水を溜めることができる底部(31a)を有する本体(31)、水蒸気を通過させることができ、かつ成形型を載せるための目皿であって、本体に設置するための脚部を有する目皿(32)、および水蒸気を容器内に充満させるための蓋(33)を含むものであってよい。あるいは、図4に示すように、成形型収容容器(40)は、図4に示すように、水を溜めることができる部分(41)が独立していて、その上に、底部に水蒸気を通過させるための開口部(44)が全体に設けられた成形型収容部分(42)が載せられ、成形型収容部分が蓋(43)で覆われる形態のものであってよい。
【0032】
あるいはまた、成形型収容容器は、固形描画材が加熱溶融されて成形されるのに十分な水を溜めることができる限りにおいて、目皿を有さず、水を張った容器の底部に、成形型を配置させるようなものであってもよい。その場合には、成形型が浮かず、かつ成形型内に水が侵入しないように、水の量を調節する必要がある。
【0033】
いずれの形態の成形型収容容器を用いる場合にも、適切な量の水を成形型収容容器に入れることができるように、成形型収容容器には、水量を示す線または「しるし」を付しておくことが好ましい。そのような線または「しるし」は、水蒸気の量が不足する、あるいは水の量が多くて水蒸気が発生するまでに時間を要し、加熱時間が長くなるという不都合を無くす。
【0034】
成形型収容容器がいずれの形態をとる場合においても、成形型収容容器は、少なくとも一組の成形型を収容でき、かつ電子レンジ、好ましくは家庭用電子レンジに収容できる寸法を有する。そのような寸法の容器は、例えば、直径10〜15cm程度の円形のものである。
【0035】
成形型収容容器は、電子レンジ、好ましくは家庭用電子レンジで使用することができ、かつ水蒸気に曝されたときに変質しない性質を有する材料で構成されることが好ましい。成形型収容容器は、レンジ用調理器具において一般的に使用されている材料、例えば、ポリプロピレン、シリコーン、ポリメチルペンテン、および高密度ポリエチレン等の重合体、陶器、または耐熱性ガラスで構成することができる。本発明の玩具においては、ポリプロピレン等の重合体からなる成形型収容容器が、軽くて取扱いやすく、また、破損しにくいことから、好ましく用いられる。
【0036】
本発明の成形玩具を用いて、固形描画材を成形することは、具体的には下記の手順に従って実施することができる。まず、固形描画材を細かくして成形型に入れる。固形描画材は、鉛筆削りまたはナイフ等を用いて細かくすることができ、あるいはガラス瓶または金槌などを用いて砕くことにより細かくすることができる。固形描画材は、大きくても小豆粒大程度の寸法となるように細かくすることが好ましい。成形型に入れる固形描画材の寸法が大きすぎると、後で、重りを入れる成形型を重ねるときに、上手く重ねることができなくなることがある。尤も、細かくした固形描画材は、その寸法において、多少のばらつきが生じても差し支えない。
【0037】
成形型には、異なる2以上の色の固形描画材を細かくして入れてよい。それにより、得られる成形品において、マーブル模様が得られ、あるいは、混色により新しい色が発現する。
【0038】
細かくした固形描画材は、成形型の形状および寸法に応じて、適切な量となるように成形型に入れる。一般的には、成形型の底が見えなくなり、成形型の底からほぼ15mmの高さまで固形描画材を入れることにより、型の形状が良好に反映された成形体を得ることができる。
【0039】
次に、固形描画材を入れた成形型に別の成形型を重ね、重ねた当該別の成形型に重りを入れる。この作業は、前述したように、重りを入れなくても、良好な成形体が得られる場合には省略してもよい。重りの量および重りの形態については、先に説明したとおりである。
【0040】
固形描画材を成形型に入れる前に、または成形型に入れて、別の成形型を重ねて、重りを入れた後に、成形型収容容器に水を入れる。そして、水を入れた成形型収容容器に、固形描画材および重りがそれぞれ入っている、重ねられた状態の2つの成形型を入れる。
【0041】
固形描画材および重りが入った重なった状態の2つの成形型を運ぶことが難しい場合には、成形型を先に成形型収容容器に入れて、その中に固形描画材を入れ、さらに別の成形型を重ねて、当該別の成形型に重りを入れてもよい。あるいは、固形描画材を入れた成形体を成形型収容容器に入れ、それから別の成形型を重ねて、重りを入れてもよい。即ち、電子レンジで加熱する前に、固形描画材および重りがそれぞれ入っている、重ねられた状態の2つの成形型が、成形型収容容器に配置される限りにおいて、成形型に固形描画材を入れる時期は特に限定されない。
【0042】
成形型収容容器に、固形描画材および重りがそれぞれ入っている、重ねられた状態の2つの成形型を配置した後、成形型収容容器を電子レンジに入れて、加熱する。電子レンジの加熱により、成形型収容容器に入れた水が水蒸気となって、固形描画材を加熱する媒体となり、固形描画材を溶融させる。溶融した固形描画材は、流動して成形型に即した形状となる。
【0043】
電子レンジによる加熱は、水蒸気が発生し、水蒸気によって固形描画材が十分に溶融して流動するのに、十分な出力および時間を用いて実施する。玩具に関連する説明において例示した寸法を有する成形型および成形型収容容器を使用する場合には、例えば、500Wの出力で、約3分間加熱することにより、または700Wの出力で、約2分半加熱することにより、固形描画材を十分に溶融させて、成形品を得ることができる。
【0044】
加熱終了後、成形型収容容器を電子レンジから取り出して、室温下で十分に冷却して、溶融した固形描画材を固化させる。それから、成形型収容容器から成形型を取り出し、成形型を固化した固形描画材から剥離させることにより、固形描画材の成形品を得ることができる。冷却は、加熱終了後、成形型収容容器を電子レンジ内に放置することにより、または扉を開いた状態の電子レンジ内に放置することにより実施してよい。それらの場合には、冷却時間が長くなるが、熱い成形型収納容器に触れる必要がなくなり、子供等には好都合である。
【0045】
得られた固形描画材の成形品は、成形型の形状に応じた形状を有する。そのような成形品は、市販の固形描画材とは異なる形状の固形描画材として、描画に利用することができる。あるいは、色合いおよび形状を楽しむための置物または装飾品として、利用することも可能である。
【0046】
この方法によれば、水蒸気を加熱媒体として固形描画材を溶融させるので、比較的低温で成形作業を実施することができる。また、溶けて熱い固形描画材を成形型に移す作業を要しないため簡便であるだけでなく、固形描画材を溶かすための容器が必要でないから、そのような容器を準備する必要がなく、また容器を洗浄する必要もない。さらに、本発明の方法においては、加熱溶融から冷却までの作業を、電子レンジ内で行うこともできるので、成形中に、熱い状態の容器等に触れる必要を無くすことができる。さらにまた、固形描画材それ自体に水を直接加える作業が不要であり、水蒸気が十分に発生する量の水を成形型収容容器に入れるだけでよく、固形描画材の量に応じた微妙な水加減を要しないという点でも、この方法は簡便である。
【0047】
さらに、本発明の方法にしたがって成形方法を実施したときに、電子レンジによる加熱時間が短い等の理由によって、良好な成形品を得られなかった場合には、固形描画材を成形型に入れたまま、再度、加熱時間を調整して、電子レンジで加熱することにより再成形することができる。即ち、失敗しても、再度成形することが容易である。
【0048】
本発明の玩具および成形方法は、ローソクの成形にも応用できる。固形描画材に代えてローソクを使用し、成形型に細かくしたローソクを入れた後、略中心に芯となるひもを入れて、重りを入れた成形型を重ねて、水を溜めた成形型収容容器に入れ、電子レンジで加熱することにより、成形型に応じた形状のローソクを得ることができる。成形に必要な成形型および重り、ならびに成形型収容容器は、本発明の固形描画材成形玩具のそれらと同じであり、また、ローソクの形成方法は、芯となるひもを入れることを除いては、本発明の固形描画材の成形方法と同じである。ローソクとともに固形描画材を入れると、固形描画材の色のローソクを得ることができる。
【0049】
ローソクについても、短くなって使えなくなったもの、ローソク立てに溶けて溜まったロウ、および家庭で使用されずに保管されているローソクを再利用する潜在的な要求はあると考えられる。したがって、本発明の玩具および成形方法は、ローソク成形用玩具およびローソク成形方法として利用することも可能である。本発明の玩具をローソク成形用玩具としても使用したい場合には、細かくしたローソクおよび/または芯となるひもを、玩具に予め含めておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の固形描画材成形玩具および固形描画材成形方法は、クレヨンおよびオイルパステル等を簡便な方法で新しい別の形にすることを可能にし、小さくなって使えなくなった固形描画材を楽しみながら再利用することができる、知育または工作玩具およびそれを用いる方法として有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 成形型の組
2 重り
3 成形型収容容器
30 成形型収容容器
31 本体
31a 底部(水を溜める部分)
32 目皿
33 蓋
40 成形型収容容器
41 水を溜める部分
42 成形型収容部分
43 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねることの可能な2つの成形型からなる、少なくとも一つの組、
重り、および
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器
を含む、固形描画材成形玩具。
【請求項2】
細かくした固形描画材を含む、請求項1に記載の固形描画材成形玩具。
【請求項3】
重りが組の成形型の一方に固着されている、請求項1または2に記載の固形描画材成形玩具。
【請求項4】
細かくした固形描画材を成形型に入れること、
固形描画材を入れた成形型に別の成形型を重ねること、
重ねた別の成形型に重りを入れること、
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器に水を溜めること、
水を溜めた前記容器に、固形描画材および重りがそれぞれ入っている、重ねられた状態の2つの成形型を配置すること、ならびに
前記重ねられた状態の2つの成形型が配置された、前記容器を電子レンジで加熱すること
を含む、固形描画材成形方法。
【請求項5】
細かくした固形描画材を成形型に入れること、
水を溜めることができ、電子レンジで加熱することにより、水蒸気を発生し得る、成形型を収容可能な容器に水を溜めること、
水を溜めた前記容器内に、固形描画材が入っている成形型を配置すること、ならびに
前記固形描画材が入っている成形型が配置された、前記容器を電子レンジで加熱すること
を含む、固形描画材成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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