説明

固形描画材

【課題】分散性が良好で、強度も高くなり、外観および画線が顔料色を呈し、しかも従来のような刺激臭のない固形描画材を提供する。
【解決手段】少なくともワックスやゲル化剤、粘土からなる形成材と着色材とからなり、かつ前記素材の他に分散剤としてセピオライトを添加し、その他必要に応じて体質材や有機溶剤などを添加し、前記セピオライトの添加量が、固形描画材全量に対し0.005〜3重量%の範囲、特には0.1〜2重量%の範囲で好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度が高くなり、かつ均一な外観と鮮明な色調を呈し、画材として優れた固形描画材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレヨンなどの固形描画材に使用される成分としては、顔料などの着色材にワックスなどの形成材が基本主材として用いられ、この他必要に応じて体質材や、溶剤としての水や有機溶剤、また添加成分として分散剤、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤などが用いられている。しかるに、従来の構成においては画材として微妙な問題があり、例えばワックスなどで固めただけであるため強度的に問題があること、さらに固形描画材の外観や画線の色調が、本来の着色材の色からみると若干くすんでいるようにみえることである。この点につき、各構成材について種々検討したところ、分散剤の使用がこの問題の一端を荷っていることを見出した。つまり、各成分の分散性を向上させるためには分散剤の使用は不可欠であって、その材料としてはノニオン、カチオンなどの界面活性剤が主に用いられてきた。この界面活性剤により、ワックスなどの形成材中において顔料などが均一に分散され、画線色の安定した好ましい固形描画材が得られるのである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−206774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、界面活性剤を用いた場合次のような問題が生ずる。(1)界面活性剤自体が色を有しているために、上述したように画線や固形描画材の外観が着色材本来の色調よりもくすんだ色になり易い。(2)十分な分散効果をもたらすためには、特許文献1にも記載されているように例えば全体の5〜10重量%前後という添加が必要となるが、添加量が多いために強度低下は避けられない。逆に添加量を少なくすれば分散効果は劣ることになり、分散度合いは不均一になる。(3)さらに上記問題以外に、界面活性剤には特有の刺激臭があり、特に添加量が多い時には製品自体にかなり残ることになる。これは時間とともに消失するものであるが、当初しばらくはその刺激臭が、使用者に不快感を生じさせるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、強度が高くなり、均一な外観と鮮明な色調を呈する固形描画材に関するものであり、少なくとも着色材と形成材の他に、セピオライトを添加することを第1の要旨とする。
【0005】
また、セピオライトの添加量が、固形描画材全量に対し0.005〜3重量%の範囲内であることを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固形描画材は、従来と遜色ない分散度合いを示しつつ、強度が高くなり、固形描画材の外観、色調ともに着色材そのものの発色に近い鮮明な発色が得られ、しかも特有な刺激臭もなく、画材として優れた特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の固形描画材は、少なくとも形成材と着色材の他にセピオライトを添加することにより、分散効果はもとより、良好な発色、外観を確保するという目的を実現した。
【0008】
次に、本発明の固形描画材について具体的に説明する。形成材は、固形描画材としての形状を保持するためのもので、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などが挙げられる。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては水性ゲル化剤、油性ゲル化剤など従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。上記の材料を単独もしくは組み合わせて用いる。形成材の配合量としては、固形描画材全量に対し10〜50重量%の範囲が好ましい。10重量%未満では強度が低下し、50重量%以上では硬く描画性が劣ってしまう。
【0009】
着色材としては、従来公知の顔料、染料であればいずれも用いることができ、例えば顔料として無機顔料、有機顔料、白色顔料、パール顔料、金属顔料、蛍光顔料などが挙げられ、単独又は組み合わせて用いる。具体的には、無機顔料としてカーボンブラック、鉄黒、群青、弁柄などが、また有機顔料としてはアゾ系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料などが挙げられる。白色顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛などが、また蛍光顔料としては昼光蛍光顔料や蓄光顔料などが挙げられる。また染料としては、特に油溶性染料を好適に用いることができ、例えばフタロシアニン系染料、ピラゾロン系染料、ニグロシン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料など公知のものが挙げられる。着色材の配合量は、固形描画材全量に対し1〜50重量%が好ましい。なお顔料として、金属箔顔料やガラスフレーク顔料などの光輝性顔料を添加してもよい。
【0010】
本発明に用いるセピオライトは、多孔質の粘土鉱物で、その組成は含水マグネシウムシリケートであり、化学構造式はMg(OH)Si1230(HO)12として表される。セピオライトの大きな特徴として、多孔質でかつ針状様の粒子を形成しているため、優れた吸着性とレオロジー性とを有し、沈降防止効果ひいては分散効果に優れているという特徴を有する。特にセピオライトを用いることにより、微量の添加量でも従来の界面活性剤以上の優れた分散効果が得られるという特徴を有するのである。従って、配合上従来より強度の高い固形描画材の検討が可能となり、淡黄色ではあるが量が少なくても効果があることから、着色材自体の発色に殆ど影響を与えることはなく、しかも界面活性剤と比べ刺激臭の全くない優れた固形描画材が可能となるのである。
【0011】
この材料を用いることで、微量でも分散度に優れ、結果として良好な固形描画材が得られるのであるが、その好ましい特徴は、前記した光輝性顔料、つまり金属箔顔料やガラスフレーク顔料あるいはパール顔料や金属顔料などの比重の高い顔料を用いた時に、固形描画材中に偏りなく均一に分散されるなど性能上特に顕著に現れるのである。セピオライトの添加量は、固形描画材全量に対し0.005〜3重量%、特には0.1〜2重量%の範囲が好ましい。0.005重量%未満では分散効果が得られ難く、3重量%以上であると材料混合時の粘度が高くなって流動性が小さくなるため、固形描画材自体の製造が困難となり易い。
【0012】
上記成分以外に、体質材を添加してもよい。具体的にはタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ、チタン酸カリウム、ガラスフレーク、コーンスターチ、でんぷん、窒化硼素などが挙げられ、特にタルク、炭酸カルシウムが好適である。さらに粘着剤としての樹脂を添加してもよく、具体的には合成樹脂や天然樹脂などが用いられ、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ロジンエステル、テルペン、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアクリルアマイドなどが挙げられる。また、溶剤として水、有機溶剤等を用いることができる。この他、必要に応じて粘度調整剤、防黴剤、防腐剤、抗菌剤、香料などを添加してもよい。
【0013】
本発明の固形描画材の製造方法として、形成材と溶剤とを混合して加熱溶解し、つづいて着色材とセピオライトと必要に応じて体質材を加えてさらに溶解し、所定の型内に充填、冷却・固化させ、型内より取り出して円柱状の固形描画材とする。次に、本発明の実施例を述べる。なお、「部」は「重量部」である。
【実施例1】
【0014】
カルナバワックス 8部
12−ヒドロキシステアリン酸 28部
ポリプロピレングリコール(分子量1000) 48部
着色材(アゾ系顔料…黄色) 15部
セピオライト 1部
(PANGEL B−20:楠本化成(株)製)
上記材料を用い、95℃に加熱混合し、得られた液状物を内径8mmの型内に流し込み、冷却・固化させて直径8mm、長さ60mmの黄色の固形描画材を得た。この固形描画材は強度が高く、その外観および画線の色調は、ほぼ顔料そのものの鮮明な発色が得られ、さらに刺激臭も全くない。
【実施例2】
【0015】
実施例1の材料にさらに光輝性顔料である金属箔顔料10部を配合し、実施例1と同様の工程にて固形描画材を得た。この固形描画材は、実施例1での特徴の他に金属箔顔料が偏りなく均一に分散された。
【0016】
(比較例1)
実施例1のセピオライト1部の代わりに界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)10部を用いて黄色の固形描画材とした。この固形描画材は強度がやや低く、その外観および画線の色調は、顔料そのものの発色と比べるとくすんでおり、さらに特有の刺激臭を発する。
【0017】
(比較例2)
実施例2において、セピオライト1部の代わりに界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)10部を用いて黄色の固形描画材とした。この固形描画材は、比較例1での問題の他に、金属箔顔料が製造時において固形描画材の下部に不均一に偏ってしまった。
【0018】
(比較例3)
実施例1において、セピオライトの代わりに界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)1部を用いて黄色の固形描画材とした。この固形描画材は強度良好であるが、分散が充分ではなく顔料が不均一でやや偏りがあり、しかも若干の刺激臭がある。
【0019】
上記実施例1,2および比較例1,2,3について分散性、曲げ強度、外観、画線および刺激臭の有無の比較を行った。なお、分散性、固形描画材の外観および画線については目視で観察したもので、曲げ強度はJIS−S−6026に準じて測定した。単位はgである。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1から明らかなように、本発明の固形描画材は優れた分散性を示しつつ、強度が高くなり、外観および画線が顔料色を呈し、しかも刺激臭がないなど優れた特徴を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
色材として、外観および画線が顔料色を呈し、刺激臭がないなど安定した使用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも形成材と着色材とからなる固形描画材において、前記素材の他にセピオライトを添加したことを特徴とする固形描画材。
【請求項2】
セピオライトの添加量が、固形描画材全量に対し0.005〜3重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の固形描画材。

【公開番号】特開2008−56836(P2008−56836A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237299(P2006−237299)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000111904)パイロットプレシジョン株式会社 (42)
【Fターム(参考)】