説明

固形物包装体

【課題】保護性能が高められると共に易開封性を備えた固形物包装体の提供。
【解決手段】アルミとプラスチックとが層状に積層される積層シートから構成される成形材2と、プラスチックフィルムと透明金属酸化物が蒸着される蒸着フィルムとが層状に積層されて構成される蓋材3と、を有し、成形材2は、固形物10が収容される収容空間2aを画成する収容部2Aと、収容部2Aと一体で収容部2Aの周囲に位置する平面部2Cとから構成され、蓋材3は平面部2Cに接着されて収容空間2aを密閉すると共に、平面部2C上であって収容部2A近傍となる位置に収容部2Aの外周に沿って一連の切込み3aが形成された固形物包装体1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬の錠剤、固形食品、電気部品などを包装するための固形物包装体に関し、特に高防湿性・長期保存性を備えた固形物包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、健康食品、嗜好品の錠剤や電機部品等の固形物の長期保存に当たっては、目視可能な表面側を透明なプラスチックからなる固形物収納凹部を形成する成形材とし、裏面に接着層を介して蓋材を設ける構成を採る包装体が用いられている。
【0003】
このような包装体には、一般に成形材にはポリ塩化ビニリデンと塩化ビニルや他のプラスチックを五層以上で積層した複合材を用い、蓋材にはシール剤をコートしたアルミ箔が用いられている。成形材において多層化しているのは、防湿機能として透湿度0.3(g/m2,24hr)以下を得るためであるが、この多層化のためには反復繰り返し加工をする必要があり、包装体はコスト高になることが避けられなかった。
【0004】
これに対して、出願人らは、特許文献1に示されるように、成形材にアルミ箔を含む複合材を用い、被包装物が確認できる透明なハイバリア材を蓋材として用いることにより、多数回の反復繰り返し加工せずに低コストの包装体を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に包装体において固形物を取り出すには、成形体を介して固形物を蓋材側に押し、固形物が蓋材を突き破ることにより開封を行っている。しかし蓋材として上述のようなハイバリア材を用いた場合、内蔵する固形物に対する防湿性等の保護性能についてはきわめて優れた特性を示すが、商品を包装体から取り出し難い場合があった。よって本発明は、保護性能が高められると共に易開封性を備えた固形物包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、アルミとプラスチックとが層状に積層される積層シートから構成される成形材と、プラスチックフィルムと透明金属酸化物が蒸着される蒸着フィルムとが層状に積層されて構成される蓋材と、を有し、該成形材は、固形物が収容される収容空間を画成する収容部と、該収容部と一体で該収容部の周囲に位置する平面部とから構成され、該蓋材は該平面部に接着されて該収容空間を密閉すると共に、該収容部近傍であって該平面部に接着された位置に該収容部の外周に沿って一連の切込みが形成された固形物包装体を提供する。
【0008】
この様な構成によると、収容部側から固形物と共に蓋材を押しこむと、本来破れない蓋材も切り込みまで接着箇所を剥がして開封することができる。切込み部分は、固体物を収容空間から取り出す際の開封性を増す決め手になる。また収容部の外周から切込みまでの距離を好ましくは1〜3mmで最適値1.8mmに設定すること、及び成形材の厚さを好ましくは220μmから500μmで、最適値として315μmに設定することによって更に開封性を増すことができる。
【0009】
上記構成の固形物包装体において、該平面部には、該切込みを挟んで該収容部の反対側となる位置に該収容部の外周に沿って一連のリブが設けられていることが更に好ましい。
【0010】
この様な構成によると、平面部において、リブを設けることにより切込み位置周囲の剛性を増すことができる。切込み位置周囲の剛性が増しているので、収容部を押した際に、切込み位置の平面部が変形することが抑制され、蓋材を押し込んだときの力は蓋材の接着部分を引き剥がす力として作用し、より容易に切込み部分で蓋材を開封することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固形物包装体によれば、保護性能が高められ、かつ易開封性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る固形物包装体の平面図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】図2において、固形物を押し出した状態の図。
【図4】本発明の実施の形態に係る固形物包装体の変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る固形物包装体について図1〜図3に基づき説明する。図1に示される固形物包装体であるPTP(プッシュスルーパック)包装体1は、図2に示されるように、成形材2と、蓋材3とから主に構成されている。
【0014】
成形材2は、アルミ箔(AL)とプラスチックシートとが複数層積層されたシート材を基材として構成されており、具体的には表層から延伸フィルム、中間層にアルミ箔、内層フィルムから構成されており、防湿性、遮光性等に優れている。延伸フィルムとしては、ON(延伸ナイロン)、延伸ポリプロピレン、延伸ポリエステルなどが用いられ、内層にはPVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)などの冷間成形に用いられるフィルムまたはシートが用いられる。また成形材2には、上述のシート材を冷間成形によって加工することにより、図1に示されるように複数の収容部2Aと、環状のリブ2Bとが構成され、収容部2A及びリブ2Bが構成されていない部分には平板状の平面部2Cが規定されている。収容部2A内には図2に示されるように錠剤10が内蔵される収容空間2aが画成されている。リブ2Bは、図2に示されるように、平面部2Cに対して収容部2Aと同じ方向に突出し、図1及び図2に示されるように後述の切込み3aを挟んで収容部2Aの反対側となる位置に収容部2Aの外周に沿って一連に構成されている。このリブ2Bを設けることにより、平面部2Cにおいて、収容部2A周囲の剛性を増すことができる。
【0015】
図2に示されるように、蓋材3は、成形材2側からPET(ポリエステル)、VMPET(透明な金属酸化物の蒸着を延伸ポリエステルフィルムに施したもの)、PE(ポリエチレン)系シール材が層状に積層されて構成されるフィルム材であり、JIS規格に準拠した透湿度 0.3g/m2、24hr以下の性能を備えたハイバリアフィルムであり、熱接着により平面部2Cに接着され、収容空間2aの開口部分を覆っている。蓋材3には、平面部2Cに接着された状態で、リブ2Bより半径方向内方であって収容部2Aの開口部近傍となる位置に収容部2Aの外周に沿って一連の切込み3aが形成されている。切込み3aから収容部2A開口部となる周縁までの距離をシール幅Lと定義する。
【0016】
このPTP包装体1において収容部2Aを押すことにより、図3に示されるように、切込み3aから蓋材3が剥がれて錠剤10が収容空間2aから取り出される。収容部2Aの開口部近傍にはリブ2Bが設けられていることにより高剛性となっているので、収容部2Aを押した際に、切込み3a位置の平面部2Cが変形することが抑制され、収容部2Aを押し込んだときの力は、蓋材3の接着部分を引き剥がす力となって作用する。この様に蓋材3に力が作用することにより、より容易に切込み3a位置で蓋材3を開封することができる。
【0017】
上記構成のPTP包装体1において、上記の距離:L及び、成形材2の厚さ:tの最適値を求めるべく、比較試験を行った。この比較試験では、錠剤10について直径10.0mm、厚み2.8〜5.5mmとした。成形材2は、収容部2Aが、開口径12.0mm、深さ3.5mm及び6.0mm(構成にアルミ箔を含むときは3.5mm)とした。蓋材3は、PET12μm、VMPET12μm、PE系シール材30μmとした。成形材2と蓋材3との間の熱接着の剥離強度は、3N/15mmとし易剥離性とした。切込み3aは通常の線状切れ目を用いた。この切込み3aの深さは蓋材3を完全に貫通し、成形材2にわずかに入り込んでいる。判定基準としては、「開封性は錠剤の破損がなく容易に開封可能なこと」及び「気密性は切込みが安定に加工出来て、扱い時にシール部破損でリークせず長期にわたり気密保持ができるかどうか」とした。
【0018】
また距離:Lについて、1.0mm、1.8mm、2.3mm、2.8mmの4水準とし、厚さ:tは、以下のサンプル1〜6に基づいている。
サンプル1:ON25μm/AL40μm/PVC250μm(t=315μm)(リブ加工無)
サンプル2:ON25μm/AL40μm/PVC130μm(t=195μm)(リブ加工無)
サンプル3:ON25μm/AL40μm/PVC450μm(t=515μm)(リブ加工無)
サンプル4:PP単層、200μm(リブ加工無)
サンプル5:PVC130μm/PVDC(ポリ塩化ビニリデン)45μm/PE30μm/PVDC45μm/PVC130μm(t=380μm)(リブ加工無)
サンプル6:ON25μm/AL40μm/PVC250μm(t=315μm)(リブ加工有)
これらサンプル1〜3は、同一基材でPVCの厚みを変えている。サンプル4、5は比較例であり、異なる素材の基材を用いている。サンプル6は、サンプル1の構成に更にリブを備えており、実施の形態の構成と同じ構成である。性能比較結果を以下の表に示す。

【0019】
上記要因及び水準で試験を行ったところ、サンプル1では、開口部から切込みまでのシール幅が1.8mmで良好に開封できた。このシール幅Lは市販品で実績がある最低幅である。この値において気密性を保持することが出来て高防湿の保証ができた。
【0020】
サンプル2では、サンプル1の内層をPVC130μmとした。この例では切込みまでのシール幅Lが1.0mmで開封できるが、これではシール幅Lが狭すぎ加工中のずれでの保証ができず、扱い中の小さな衝撃でもシール部が剥がれてしまい好ましくない結果となった。また厚さtが薄いため収容部近傍の平面部の剛性が下がり、シール幅Lが2.3mm以上では開封性が劣る結果になった。
【0021】
サンプル3では、サンプル1の内層をPVC450μmとした。この例では、剛性が高すぎて硬く、シール幅Lが2.3mm以上においては、収容部の押し込みに多大な力が必要になり好ましくない。
【0022】
サンプル4は、比較例であり、単層PP200μmにした。これは公知の製品の値である。この素材及び値では薄く剛性が無いためシール幅Lが1.0mm程度でようやく開封できるが、この値ではサンプル1と同様に加工上また気密性保持の点で好ましくなく、さらにどうにかして力を入れて開封できても、錠剤を押し潰し破損する場合があった。
【0023】
サンプル5も比較例であり、この構成はアルミ箔を含まないものの剛性を確保でき、切込みまでの幅を1.8mmで開封できることで一応満足できるものであった。しかし五層構造であるため加工が煩雑でコスト高である。
【0024】
サンプル6は、サンプル1と同構成でありながら、リブ加工することにより収容部2Aの開口部周囲となる平面部2Cに適度に剛性が出るので、シール幅Lが2.3mmにおいても容易に開封することができ、気密性の点でも安心できる。
【0025】
上記の実験結果から、最適値として、成形材2の厚さtとしてサンプル1の値であるON25μm/AL40μm/PVC250μm(t=315μm)を採り、かつシール幅LをL=1.8mmとしたときに最もよい性能を示すことが解った。また少なくとも195μm≦t≦515μmの範囲で、1.0≦L≦2.8においては、易開封性を示すことが解った。またリブを設け、収容部近傍の平面部の剛性をあげることにより、より開封性が高まることが解った。
【0026】
本発明は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば、実施の形態においてはリブ2Bを設けることにより、収容部2A近傍の平面部2Cの強度を高めたが、図4に示されるように、実施の形態と同様の素材から構成され蓋材リブを設けない構造をとるPTP包装体101において、収容部102A近傍の平面部102Cの厚さを、収容部102Aの厚さより、収容部102A成型前の状態で蓋材103の厚みも含めてトータルで厚くしてもよい。この様な構成によると、収容部102Aを成型した後に、収容部102A近傍の平面部102Cの剛性が高まるため、リブを設けたことと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1・・包装体
2・・成形材
2A・・収容部
2B・・リブ
2C・・平面部
2a・・収容空間
3・・蓋材
3a・・切込み
10・・錠剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミとプラスチックとが層状に積層される積層シートから構成される成形材と、
プラスチックフィルムと透明金属酸化物が蒸着される蒸着フィルムとが層状に積層されて構成される蓋材と、を有し、
該成形材は、固形物が収容される収容空間を画成する収容部と、該収容部と一体で該収容部の周囲に位置する平面部とから構成され、
該蓋材は該平面部に接着されて該収容空間を密閉すると共に、該収容部近傍であって該平面部に接着された位置に該収容部の外周に沿って一連の切込みが形成されていることを特徴とする固形物包装体。
【請求項2】
該平面部には、該切込みを挟んで該収容部の反対側となる位置に該収容部の外周に沿って一連のリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固形物包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−168077(P2010−168077A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12192(P2009−12192)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(506054888)
【Fターム(参考)】