説明

固形製剤及びその製造方法

【課題】活性成分の配置及び濃度を精密に設計できる固形製剤を提供する。
【解決手段】活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に活性成分を配置してなる固形製剤に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達の最適化を目的とするドラッグデリバリーシステム(DDS)では、例えば薬物標的化、薬物吸収制御等のための様々な技術が提案されている。その中の一つとして活性成分(薬剤成分又は有効成分)の放出を制御するための技術がある。この薬物放出制御技術によれば、活性成分の放出速度が制御された徐放性製剤のほか、一定の時間が経過した後に活性成分を放出する時限放出型製剤が提供される。そして、これらの製剤の提供により、服用回数を減らすことで患者の負担を軽減したり、血中の活性成分濃度の急激な上昇の抑制等により副作用の軽減を図ることができる。
【0003】
徐放性製剤としては、放出制御機構で分類するとリザーバー型とマトリックス型に分類される。リザーバー型は、薬物を含有する錠剤又は顆粒を高分子皮膜で被覆したものであり、前記皮膜の厚み、組成等により薬物の放出速度か制御される。マトリックス型は、薬物を高分子、ワックス等の基剤中に分散させたものであり、薬物分子のマトリックス内の拡散速度により放出速度が決まる。
【0004】
このような機能を有する錠剤タイプの製剤としては、例えば塩酸アンブロキソールと水不溶性高分子及び添加物を含有する組成物が圧縮成型されてなる小型徐放性錠剤が知られている(特許文献1)。また、脂質マトリックスおよび有機酸と組み合わせてミゾラスチンを含有する徐放性錠剤から形成されたコアを含有し、錠剤がコーティングされていることを特徴とする、ミゾラスチンを含有する徐放性医薬製剤がある(特許文献2)。その他にも、例えば(1)(a)薬物がワックスマトリックス中に包含される顆粒、及び/又は(b)薬物含有顆粒を水溶性高分子又は水不溶性高分子皮膜により被覆した顆粒と(2)賦形剤を混合し(3)溶媒を加えて練合し(4)湿潤した粉体を鋳型に入れ成形した、徐放性口腔内速崩性錠剤も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−201706
【特許文献2】特開2007−182451
【特許文献3】特開2008−273989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの錠剤タイプの製剤においても、さらに放出制御の高精度化という点で改良する余地が残されている。すなわち、薬学的に許容される活性成分(以下、単に「活性成分」ともいう。)を非活性成分でコーティングしたり、混合することにより放出速度等の制御がなされているが、製剤中の活性成分の存在位置あるいは濃度を細かく制御することができれば、より高精度で放出制御することが可能となる。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、薬学的に許容される活性成分の配置及び濃度を精密に設計できる固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、固体製剤の製造に粉末積層造形法を適用し、活性成分等を所定の位置に配置した製剤組成層を一層ずつ積層することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の固形製剤及びその製造方法に係る。
1. 薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に前記活性成分を配置してなる固形製剤。
2. 1)薬学的に許容される活性成分からなる区画、2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分からなる区画及び3)非活性成分からなる区画の2つ以上の組み合わせにより構成されている、前記項1に記載の固形製剤。
3. 固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけて連続的に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
4. 固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけずに連続的に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
5. 固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけて不連続に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
6. 固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけずに不連続に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
7. 固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけて連続的に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
8. 固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけずに連続的に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
9. 固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけて不連続に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
10. 固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけずに不連続に前記活性成分が配置されてなる、前記項1に記載の固形製剤。
11. 薬学的に許容される活性成分が2種以上含まれる、前記項1に記載の固形製剤。
12. 当該配置により、薬学的に許容される活性成分の放出速度、放出濃度、放出方向、放出開始時間及び放出持続時間の少なくとも1つが制御されている、前記項1に記載の固形製剤。
13. 非活性成分が生体組織と親和性を有する、前記項1に記載の固形製剤。
14. 粉末積層造形法により製造される、前記項1に記載の固形製剤。
15. 薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に前記活性成分を配置してなる固形製剤を製造する方法であって、
(1)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して粉末層を形成した後、前記粉末層の特定の領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程、
(2)液体を散布した後の粉末層上に、薬学的に許容される活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して上部粉末層を形成した後、前記上部粉末層の特定の平面領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程、及び
(3)前記(2)の工程を1回又は2回以上繰り返して前記散布領域の積層体からなる固形製剤を形成する工程、
を含み、
かつ、前記粉末及び液体の少なくとも一方に薬学的に許容される活性成分が含まれている、
ことを特徴とする固形製剤の製造方法。
16. 粉末が、接着成分を含む、前記項15に記載の製造方法。
17. 粉末が、1)薬学的に許容される活性成分からなる粉末及び2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含み、かつ、前記活性成分が所定濃度に調整されている粉末の少なくとも1種である、前記項15に記載の製造方法。
18. 1)薬学的に許容される活性成分からなる粉末、2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含み、かつ、前記活性成分が所定濃度に調整されている粉末、3)接着成分を含む粉末のいずれかの粉末を2種以上組み合わせて平面展開することにより、固体製剤中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整される、前記項15に記載の製造方法。
19. 液体が、1)薬学的に許容される活性成分を含む液体、2)接着成分を活性化する液体及び3)接着成分を含む液体の少なくとも1種である、前記項15に記載の製造方法。
20. 接着成分を含む液体が、少なくとも乾燥時に接着性を発現し得る接着成分が水に溶解した水溶液である、前記項19に記載の製造方法。
21. 液体中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整されている、前記項19に記載の製造方法。
22. 1)薬学的に許容される活性成分を含む液体、2)接着成分を活性化する液体、3)接着成分を含む液体及び4)前記1)〜3)のいずれかの液体を2種以上組み合わせて散布することにより、液体中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整される、前記項19に記載の製造方法。
23. 非活性成分が生体組織と親和性を有する、前記項15に記載の製造方法。
24. 前記項15〜23のいずれかに記載の製造方法により得られる固形製剤であって、薬学的に許容される活性成分の放出速度、放出濃度、放出方向、放出開始時間及び放出持続時間の少なくとも1つが制御されている固形製剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、粉末側及び/又は液体側に活性成分(例えば医薬有効成分)を用いる粉末積層造形法を利用し、かつ、固形製剤中に含まれる活性成分の立体的配置を区画化して設計することにより、活性成分を所望の位置に所定の濃度で精密に配置することができる。
【0011】
本発明の固形製剤は、上記の通り、活性成分を所望の位置に所定の濃度で配置できることから、その活性成分の放出速度、放出濃度、放出方向、放出開始時間及び放出持続時間の少なくとも1つを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の固形製剤の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の固形製剤の活性成分の配置状態の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の固形製剤の活性成分の配置状態の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の固形製剤の活性成分の配置状態の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の固形製剤の活性成分の配置状態の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の固形製剤の活性成分の配置状態の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の固形製剤を区画化した例を示す図である。図7(a)は平面図、図7(b)は断面図である。
【図8】本発明の固形製剤を区画化した例を示す図である。図8(a)は平面図、図8(b)は断面図である。
【図9】本発明の固形製剤を区画化した例を示す図である。図9(a)は平面図、図9(b)は断面図である。
【図10】本発明の固形製剤の製造方法の工程例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.固形製剤
本発明の固形製剤は、薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に活性成分を配置してなる。好ましくは、本発明の固形製剤は、1)活性成分からなる区画、2)活性成分及び非活性成分からなる区画及び3)非活性成分からなる区画の2つ以上の組み合わせにより構成されている。
【0014】
特定の位置又は領域は、固形製剤を水平方向及び垂直方向に分けて特定される。これにより、特定の区画に活性成分を三次元的に配置することができる。
【0015】
区画の設定方法は制限されず、固形製剤の使用目的、用法、用量等に応じて任意に決めることができる。例えば、1区画の位置(大きさ)、区画数等を適宜設定することができる。例えば、図1に示すようなタブレット形状の固形製剤では、垂直方向にはL1、L2及びL3の3層に区分される。もちろん、本発明では3層に限定されることなく、L1、L2、L3、L4、L5・・・Lnと多層化することができる。そして、各層は、図7(a)に示すように、平面方向にC0を中心とした同心円状にC1、C2及びC3の3領域に分けられている。この場合も同様に、本発明では3領域に限定されず、C1、C2、C3、C4、C5・・・Cnと多数の領域に区分することができる。また、本発明では、同心円状に限定されず、例えば楕円状、放物線状等の他の形状を採用することもできる。
【0016】
また、図7ではL1〜L3のいずれもが同様の平面区画C1〜C3を有しているのに対し、図8に示すように、L2のみがL1及びL3と異なる平面区画を有するような形態も採用することができる。また、各層のいずれもが異なる平面区画を有していても良い。さらに、図9に示すように、L1〜L3そのものの大きさ(面積又は容積)又は形状が異なるような構成を適宜採用することもできる。
【0017】
このように、本発明では、特に垂直方向及び平面方向に区分することにより、図7(b)のように例えば(L3−C2)が具体的に位置が特定され、その位置に所望の活性物質を所望の濃度で配置することができる。これにより、固形製剤中の活性成分について連続的又は不連続な濃度勾配を付与することができる。例えば、図7において、(L2−C0)を起点とし、活性成分の濃度に関して(L2−C1)>(L2−C2)>(L2−C3)=(L1−C1)=(L1−C2)=(L1−C3)=(L3−C1)=(L3−C2)=(L3−C3)という濃度分布を形成することができる。濃度勾配(傾斜)の付け方は限定されず、例えば1)濃度勾配自体を一定とする方法、2)固形製剤の外部表面の濃度を一定値として固定した上で起点から濃度勾配をつける方法等が挙げられる。また、濃度勾配も、直線的な勾配のほか、曲線的(例えば対数曲線的)な勾配であっても良いし、あるいはこれらの組み合わせであっても良い。また、一部に勾配のない部分(すなわち均一な部分)を含んでいても良い。
【0018】
これらの濃度勾配は、前記の区画数を増やすことによりその設計の自由度をより高めることができる。特に、区画数を増やす場合には、曲線的な勾配を付与しやすくなるので好ましい。
【0019】
このように、本発明では、上記の区画を利用することにより、任意の状態で活性成分を配置することができる。例えば、図2に示すように、固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的(線状)に活性成分を配置することができる。図2では、ペレット状の固形製剤の中心付近を起点とし、そこから外部表面に向かって直線状の活性成分領域22が形成されている。活性成分領域22は、起点から外部表面に向かうに従って活性成分の濃度が低くなるように(又は高くなるように)濃度勾配をつけて連続的に配置することができる。また、濃度勾配をつけずに(すなわち、一定濃度)で活性成分領域22を形成することもできる。さらに、図2では活性成分領域22が連続的に形成されているが、図3に示すように濃度勾配の有無を伴った不連続状態で活性成分領域22を形成することもできる。図2においては、活性成分領域22は、外部表面に到達しているが、外部表面まで到達せずに、前記起点から固体製剤内部にとどまっている場合も本発明に包含される。
【0020】
図2では一次元的に活性成分が配置されているのに対し、図5に示すように二次元的(平面的)に活性成分領域を形成することもできる。この場合も、活性成分領域を連続的に形成することも可能であり、また不連続的に形成することもできる。さらに、濃度勾配をつけても良いし、濃度勾配をつけなくても良い。図5においては、活性成分領域22は、外部表面に到達しているが、外部表面まで到達せずに、前記起点から固体製剤内部にとどまっている場合も本発明に包含される。
【0021】
図6に示すように、活性成分を三次元的に配置することもできる。図6では、固形製剤の内部の中心付近を起点とし、その起点から外部表面に向かって三次元的に筒状体(点線部分)の活性成分領域22が形成されている。この場合も、活性成分領域を連続的に形成することも可能であり、また不連続的に形成することもできる。さらに、濃度勾配をつけても良いし、濃度勾配をつけなくても良い。図6においては、活性成分領域22は固体製剤内部にとどまっているが、例えば前記筒状体の上底部及び/又は下底部が固形製剤の外部表面に到達していても良い。
【0022】
また、本発明では、固形製剤の外部表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って活性成分を配置することもできる。すなわち、活性成分を固体製剤の表面のみに配置されてなる固形製剤も本発明に包含される。例えば、図4に示すように、ペレット状の固形製剤の上底部表面の中心付近を起点とし、そこから表面に沿って直線状の活性成分領域22が形成されている。活性成分領域22は、起点から外部表面に向かうに従って活性成分の濃度が低くなるように(又は高くなるように)濃度勾配をつけて連続的に配置することができる。また、濃度勾配をつけずに(すなわち、一定濃度)で活性成分領域22を形成することもできる。さらに、図4では活性成分領域22が連続的に形成されているが、図3の場合と同様、不連続状態で活性成分領域22を形成することもできる。図4においては、活性成分領域22は、上底部にとどまっているが、必要に応じて固形製剤の全周(側面又は下底部)にわたって形成しても良い。また、固形製剤の表面の一部又は全部にわたり、二次元的に活性成分領域を形成することもできる。このように固形製剤の表面のみに活性成分領域を形成することもできるので、従来のコアシェルタイプ(核剤の表面に活性成分がコートされたもの)の製剤も設計・作製することができる。
【0023】
本発明の固形製剤の側面形状は制限されず、図7(b)に示すような長方形のほか、例えば正方形、円形、楕円形、菱形、平行四辺形、三角形、台形、不定形、ドーナツ状等のいずれの形態も採用することができる。また、本発明の固形製剤の平面形状は限定的でなく、図7(a)に示すような円形のほか、例えば正方形、円形、楕円形、菱形、平行四辺形、三角形、星形、多角形、不定形等のいずれの形状であっても良い。本発明の固形製剤の立体的形状も任意の形状を採用することができ、例えば球形、ラグビーボール形状、円筒形、立方体、直方体、アレイ形状、中空状、棒状等の形状を挙げることができる。
【0024】
本発明の固形製剤において、各区画は、基本的には1)活性成分を含む区画又は2)活性成分を含まない区画のいずれかであり、これらの組合せも任意に行うことができる。
【0025】
活性成分を含む区画にあっては、1種又は2種以上の活性成分が含まれていても良い。2種以上の活性成分を含有させる場合は、各活性成分の濃度も任意に調整することができる。活性成分としては、固形製剤として使用されるものであれば特に限定されず、例えば高脂血症薬、抗潰瘍薬、降圧剤、抗うつ薬、向精神薬、抗不安薬、催眠鎮静薬、抗喘息薬、鎮咳去痰剤、抗てんかん薬、歯科口腔用薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン剤、抗菌薬、抗がん剤、滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮痛薬、抗炎症薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、糖尿病薬、代謝拮抗薬、骨粗鬆症薬、抗リウマチ薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、骨格筋弛緩薬、鎮けい剤、抗血小板薬、制酸剤、制吐剤、ホルモン剤、抗潰瘍剤、麻酔剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、利尿薬、血圧降下剤、呼吸促進剤、強心剤、不整脈用剤、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、糖尿病用剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤等が挙げられる。
【0026】
より具体的には、高脂血症用薬としては、例えばプラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、ピタバスタチンカルシウム、シンバスタチン、アトルバスタチンカルシウム水和物等が挙げられる。向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピン等が挙げられる。抗うつ薬としては、例えばイミプラミン、塩酸マプロチリン、アンフェタミン等が挙げられる。抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム等が挙げられる。催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペルラピン、フェノバルビタールナトリウム等が例示される。鎮痙薬としては、例えば臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリン等が挙げられる。鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメルトファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、リン酸コデイン等が挙げられる。抗アレルギー薬としては、例えばアンレキサノクス、セラトロダスト等が挙げられる。抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸イソチペンジル、dl-マレイン酸クロルフェニラミン等が挙げられる。抗がん剤としては、例えばウラシル、5−フルオロウラシル、マイトマイシン、塩酸マニジピン、ボグリボース、カンデサルタンシレキセチル、塩酸ピオグリタゾン等が挙げられる。解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシン等が挙げられる。血管収縮剤としては、例えば塩酸フェニレフリン等が挙げられる。冠血管拡張剤としては、例えば塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ペラパミル等が挙げられる。末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジン等が挙げられる。糖尿病薬としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、塩酸ピオグリタゾン、グリベンクラミド、トログリダゾン等が挙げられる。利胆剤としては、例えばトレピプトン、デヒドロコール酸等が挙げられる。骨粗鬆症用剤としては、例えばイプリフラボン等が挙げられる。骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモール等が挙げられる。中枢神経作用薬としては、例えばシチコリン等が例示される。鎮けい剤としては、例えばジメンヒドリナート、塩酸メクリジン等が挙げられる。抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミン等が挙げられる。脳代謝改善剤としては、例えば塩酸メクロフェニキセート等が挙げられる。脳循環改善剤としては、例えばビンポセチン等が挙げられる。抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピン等が挙げられる。交感神経興奮剤としては、例えば塩酸イソプロテレノール等が挙げられる。胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油等の健胃消化剤;耐性乳酸菌、塩化ベルベリン、ビフィズス菌等の整腸剤等が挙げられる。制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。サルファ剤としては、例えばスルフィソミジン、スルファメチゾール等が挙げられる。抗生物質としては、例えばセファドロキシル、セフィキシム、セファレキシン、セファクロル、アモキシシリン、塩酸ピプメシリナム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチル等のセフェム系;アジスロマイシン、クラリスロマイシン、アンピシリン、シクラシン、ナリジクス酸、エノキサシン等の合成抗菌剤;カルモナムナトリウム等のモノバクタム系;ペネム系及びカルバペネム系抗生物質等が挙げられる。ホルモン剤としては、例えば酢酸リュープロレリン、リオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン等が挙げられる。アルカロイド系麻薬としては、例えば塩酸アヘンアルカロイド、塩酸コカインアヘン、塩酸モルヒネ、トコン、塩酸オキシコドン等が挙げられる。抗潰瘍剤としては、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ベンズイミダゾール、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジン等が挙げられる。制吐剤としては、例えば塩酸ジフェニドール、メトクロプラミド等が挙げられる。呼吸促進剤としては、例えば酒石酸レバロルファン等が挙げられる。気管支拡張剤としては、例えばテオフィリン、硫酸サルブタモール等が挙げられる。歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカイン等が例示される。強心剤としては、例えばカフェイン、ジゴキシン等が挙げられる。不整脈用剤としては、例えば塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロール等が含まれる。利尿薬としては、例えばイソソルピド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド等が挙げられる。血圧降下剤としては、例えば塩酸デラプリル、カプトプリル、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、塩酸マニジピン、カンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ペリンドプリルエルブミン等が挙げられる。痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチン等が挙げられる。血液凝固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。化学療法剤としては、例えばスルファメチゾール等が挙げられる。滋養強壮保健薬としては、例えばビタミンA、ビタミンC(アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム等)ビタミンD、ビタミンE(酢酸d−αトコフェロール等)、ビタミンB1(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩等)、ビタミンB2(酪酸リボフラビン等)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン等)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン等)のビタミン;カルシウム、マグネシウム、鉄等のミネラル;アミノ酸、タンパク、オリゴ糖、生薬等が挙げられる。
【0027】
また、活性成分を含まない区画は、非活性成分から構成されることになるが、非活性成分は活性成分以外の成分であれば限定されない。例えば、公知又は市販のものから適宜選択することができる。より具体的には、賦形剤、崩壊剤、防湿剤、安定化剤、結合剤、コーティング剤、帯電防止剤、糖衣剤、乳化剤、軟化剤、溶剤等の医薬品添加物を例示することができる。また、例えばアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、リン酸ジルコニウム、ガラス(シリカガラス、ケイ酸塩ガラス等)、ガラスセラミックス(結晶化ガラス、リン酸塩ガラス等)、多孔質ガラス等のバイオセラミックスも使用することができる。医薬品添加物の含有量は、その添加剤の種類、医薬有効成分の含有量等に応じて適宜設定することができる。
【0028】
本発明の固形製剤の投与方法も限定でなく、公知の固形製剤と同様の方法を採用することができる。例えば、経口、経鼻、経皮等のほか、局所用(インプラント用)等にも好適に用いることができる。例えば、骨治療用として、本発明の固形製剤を骨に埋め込んで使用することもできる。より具体的には、骨の病変部を切削した後、その切削部分の形状と同じ形状を有する所定の固形製剤(成形体)を作製し、その固形製剤を切削部分に埋め込むことにより固形製剤による治療を実施することができる。この場合、非活性成分として、例えば非置換型材料としてアパタイト、吸収置換型材料としてβ−TCP、硬化型材料としてα−TCP等を好適に用いることができる。
【0029】
2.固形製剤の製造方法
本発明の固形製剤は、例えば次の方法により好適に製造することができる。
すなわち、薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に活性成分を配置してなる固形製剤を製造する方法であって、
(1)活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して粉末層を形成した後、前記粉末層の特定の領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程(工程a)、
(2)液体を散布した後の粉末層上に、活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して上部粉末層を形成した後、前記上部粉末層の特定の平面領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程(工程b)、及び
(3)前記(2)の工程を1回又は2回以上繰り返して前記散布領域の積層体からなる固形製剤を形成する工程(工程c)、
を含み、
かつ、前記粉末及び液体の少なくとも一方に薬学的に許容される活性成分が含まれている、
ことを特徴とする固形製剤の製造方法により好適に製造することができる。
【0030】
工程a
工程aでは、活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して粉末層を形成した後、前記粉末層の特定の領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める。
【0031】
前記粉末は、活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む。活性成分及び非活性成分は、前記で例示したものと同様のものを採用することができる。これらの含有量は、用いる活性成分・非活性成分の種類、用途等に応じて適宜設定することができる。両者を併用する場合は、両者の合計100重量%として活性成分は1〜90重量%、特に1〜50重量%の範囲内で適宜設定することができる。
【0032】
本発明では、これらの成分のほかにも、例えば薬学的に非活性な成分として接着成分(好ましくは薬学的に許容される接着成分)を含有していても良い。これにより、本発明の固形製剤の強度、硬度等をより高めることが可能となる。接着成分としては、例えば 水分の存在下で粉末粒子どうしを接着させる性質を有するものであれば良く、公知の粉末積層造形法で使用されている接着成分等も使用することができる。例えば、水溶性有機系高分子成分を好適に用いることができる。水溶性有機系高分子成分としてより具体的には、1)ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムとマレイン酸とのコポリマー、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、2)セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等)、3)アラビアゴム、ハリエンジュゴム、ゼラチン、澱粉、スクロース、デキストロース、フルクトース、ラクトース、小麦粉、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等、4)クエン酸、コハク酸等の少なくとも1種を例示することができる。これらの中でも、粉末どうしの固結を防ぐ分散性を有し、かつ、流動性を改善する特性を有し、粉末の平面展開性をより高めることができるという点で、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0033】
接着成分を用いる場合、その含有量は限定的ではないが、通常は前記粉末中0.1〜30重量%、特に0.5〜15重量%とすることが好ましい。上記範囲内に設定することによって、造形物の強度をより高めることが可能であり、型崩れしにくい造形物をより確実に得ることができる。
【0034】
活性成分及び非活性成分を含む場合は、1)活性成分からなる粒子及び非活性成分からなる粒子から構成される混合粉末である場合、2)1粒子中に活性成分及び非活性成分を含む混成粒子から構成される場合、3)前記1)の混合粉末と前記2)の混成粒子粉末との混合物である場合を包含する。
【0035】
本発明では、前記2)の場合は、1つの粒子中に各成分が含有される粒子からなる粉末が得られる限りその製造方法は限定されない。特に、スプレードライ法によって本発明の造形用粉末を好適に得ることができる。より具体的には、活性成分及び非活性成分(例えば、水溶性有機系高分子成分等の接着成分あるいは無機成分)を含む原料液を噴霧乾燥することによって本発明の造形用粉末を製造することができる。
【0036】
原料液の調製は、溶媒中に活性成分及び非活性成分(両者をまとめて「添加成分」ともいう。)を溶解又は分散させることにより実施することができる。この場合、溶媒が水であり、添加成分が水溶性であれば、両成分が溶解した水溶液を得ることができる。添加成分が水不溶性である場合は、水中に添加成分が分散した懸濁液を得ることができる。原料液の調製に際し、溶媒としては、添加成分が溶解又は分散できるものであればいずれも使用できるが、通常は水を使用すれば良い。
【0037】
原料液の濃度(固形分)は、効率的にスプレードライを行える濃度に適宜調整すれば良いが、通常は5〜30重量%程度とすれば良い。
【0038】
スプレードライは、公知又は市販のスプレードライヤーを使用すれば良く、その装置における運転条件の範囲内で適宜設定することができる。一般的な装置であれば、例えばディスク型スプレードライヤーを用いる場合、ディスク回転数10000〜40000rpm、入口温度150〜500℃、出口温度70〜300℃とすれば良い。
【0039】
得られた粉末は、必要に応じて公知の方法により分級等を行うことによって粒度を調整することもできる。ただし、得られた粉末は、流動性、平面展開性等の見地より、略球状の粒子形状を変える加工処理(例えば粉砕等)を施さずに造形用として用いることが好ましい。
【0040】
本発明造形用粉末の平均粒径は、所定の造形物の形状、所望の再現精度等に応じて適宜設定することができるが、通常は350μm以下、特に0.1〜150μmとすることが好ましい。また、成形体の密度をより高めるために、造形用粉末が平面展開面内において最密充填として成形体の密度をより高めるために、平均粒子径が異なる2種類以上の粉末を組み合わせて用いても良い。
【0041】
本発明造形用粉末の粒子形状は、通常は略球状であるが、流動性等の点で支障を及ぼさない限りは他の形状の粒子が微量に含まれていても良い。
【0042】
平面展開に際しては、例えばテーブル、平面板等の平面部を有する部材上に展開すれば良い。上記部材の材質は造形用粉末が接着しないものであれば限定されず、例えば金属製部材、セラミックス製部材等を用いることができる。
【0043】
平面展開して粉末層(上部粉末層)を形成する場合、当該粉末層の厚みは所望の再現精度等に応じて適宜調整することができる。通常は1層当たり0.1〜200μm程度の範囲内とすれば良い。
【0044】
平面展開に際しては、異なる組成を有する複数の粉末を予め用意し、それらを別々の粉末タンクに充填し、これらの粉末タンクから同時又は交互に粉末を展開できるようにすることもできる。これにより、1つの粉末層に異なる種類又は濃度の活性成分及び/又は非活性成分を含む粉末層を形成することができる。例えば、同心円状、ストライプ状等をはじめ、その他の複雑な形状も1つの粉末層に描くことができる。
【0045】
前記液体としては、溶媒としては水混和性有機溶媒及び水の少なくとも1種を用いることができる。特に、水混和性有機溶媒及び水の少なくとも1種を溶媒として含む散布液を用いる。本発明では、展開された粉末層(上部粉末層)に散布した際に散布領域が滲んだり、拡散することを抑制ないしは防止できる機能を有するものが好ましい。このような水混和性有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0046】
水混和性有機溶媒は水との混合溶液として用いることもできる。この場合の混合比率としては、重量比で水混和性有機溶媒:水=5:95〜75:25の範囲内とすることが好ましい。
【0047】
本発明では、液体中に活性成分が含まれていても良い。活性成分は、前記1.で例示したものと同様のものを使用することができる。活性成分を含む場合は、活性成分が溶媒に溶解した溶液又は活性成分粒子が溶媒中に分散した分散液のいずれでも良い。これらの溶液又は分散液における溶媒としても、水混和性溶媒及び水の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0048】
また、本発明では、液体に非活性成分が含まれていても良い。例えば、前記のような医薬品添加物、色素等が含まれていても良い。色素を含有させる場合は、これを粉末層(上部粉末層)に散布した場合、散布領域が着色されるため、a)散布領域と非散布領域との識別性を向上できる、b)ノズル散布の停止状態を目視できるため、ノズルの故障を早期に発見できる、c)型抜き時の非散布領域を除去するための作業性を向上することができる、d)型抜き後の型(造形物)の寸法精度を高めることができる等の効果を得ることができる。また、色素を含有させる場合の一態様として、液体による散布をカラープリントの形態で実施することができる結果、見本となる三次元形状の形状のみならず、色も再現することができる。
【0049】
散布方法としては、特に限定されず、例えば印刷方法による方法が挙げられる。より具体的には、インクジェットプリンターを用いる方法を好適に採用することができる。このようなプリンターを搭載した市販の造形装置を使用することも可能である。インクジェットプリンターを使用する場合は、複数のインクタンクに互いに組成の異なる液体を充填しておけば、複数のノズルからそれぞれ異なる液体を噴霧できるので、1つの粉末層上に異なる組成の領域を形成することができる。例えば、図7(a)に示すように、L1、L2及びL3の各粉末層ごとにC1、C2及びC3が互いに異なる活性成分濃度をもつ領域として形成することができる。
【0050】
また、上記のような印刷装置(造形装置)において、一定濃度の活性成分を含む液体を充填した液体タンクとは別に当該液体と混ざり合う溶媒を充填した溶媒タンクを用意し、これらのタンクからの流量を制御しながら混合した状態でノズルに供給することによって、異なる活性成分濃度を有する液体を散布することできる。このようにすることにより、少ないタンクの数で種々の活性成分濃度の液体を調製・散布することができるので、装置を簡略化・小型化することも可能である。また、上記の場合、活性成分を含む液体として、実際の散布濃度よりも高い濃縮タイプの液体とすることもできる。
【0051】
工程aにおける液体の散布量は特に制限されないが、散布領域の粉末粒子どうしが結合するのに十分な量(但し、以下の工程においては、散布領域の粉末粒子どうしが結合し、なおかつ、上層の粉末粒子と下層の粉末粒子とが結合するのに十分な量も含む。)とすれば良い。
【0052】
工程aでは、液体を粉末層の所定領域に散布することにより散布領域の粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める。特に、非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度は、散布領域から形成される積層体(造形物)の型抜きができる程度であれば制限されないが、非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度が発現されないことが好ましい。
【0053】
また、工程aでは、必要に応じて、液体を散布した後にその散布領域を加熱乾燥しても良い。これにより得られる造形物の寸法精度をより高めることができる。この場合、加熱乾燥は、当該活性成分の活性が低下しない程度の温度及び時間とすることが好ましい。
【0054】
工程b
工程bでは、液体を散布した後の粉末層上に、活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して上部粉末層を形成した後、前記上部粉末層の特定の平面領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める。
【0055】
前記工程aで形成された粉末層の上にさらに造形用粉末を平面展開して上部粉末層を形成する。この場合、前記の粉末層(下層)と上部粉末層(上層)との厚みは、適宜設定することができる。
【0056】
工程bでは、必要に応じて、散布液を散布した後にその散布領域を加熱乾燥しても良い。これにより得られる造形物の寸法精度をより高めることができる。この場合、加熱乾燥は、当該活性成分の活性が低下しない程度の温度及び時間とすることが好ましい。
【0057】
工程c
工程cでは、前記(2)の工程(工程b)を1回又は2回以上繰り返して前記散布領域の積層体からなる固形製剤を形成する。
【0058】
すなわち、工程cでは、上部粉末層の上に造形用粉末を平面展開して第2段の上部粉末層を形成し、散布液を当該上部粉末層の所定領域に散布することにより散布領域の粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高め、同様に第3段の上部粉末層、第4段の上部粉末層、・・・第n段の上部粉末層というように所望の積層体が得られるまで工程bを繰り返して粉末層を積層していく。
【0059】
前記工程a〜工程cの積層造形において、液体のノズル散布は、例えば三次元CADを利用して作製されたデータから所望の厚さにスライスして断面データに変換し、この底部(最下部)の断面データに基づいてノズルを有する三次元プリンタにより液体を平面展開された粉末層に散布し、さらに前記底部の上層の断面データに基づいて上部粉末層に液体を散布するという工程を順次行うことにより、粉末層の積層体からなる造形物を形成することができる。
【0060】
工程d
本発明では、必要に応じて型抜きをして積層体からなる造形物(固形製剤)を取り出す工程dを含んでいても良い。例えば、非散布領域の粉末と造形物とを分離することによって造形物を回収することができる。
【0061】
回収された造形物は、そのまま固形製剤として使用することができるが、必要に応じて加工等を行うことができる。例えば、硬度、強度等を高める加工を施しても良い。このような硬度、強度等を高める加工として、例えば一軸加圧成形、等方圧成形等の加圧処理のほか、コーティング処理を適宜行うことができる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0063】
実施例1
本実施例においては、図1及び図7に示すようなタブレット状の固形製剤を作製する例を示す。
【0064】
固形製剤の作製に先立って、固形製剤における活性成分等の配置をコンピューター等を用いて3次元的に設計する。
【0065】
まず、前記のように、固形製剤を平面方向及び垂直方向に区分して各区画をつくる。この場合、1回の平面展開で形成される粉末層の厚みt1と各区分の最小厚みt2との関係をt1≦t2とすることが好ましい。前記で区分された各区画においては、区画ごとに目的とする組成を定める。すなわち、用いる活性成分の種類及び濃度、非活性成分を含有させる場合は非活性成分の種類及び濃度を決める。各区画は、例えば特定の組成が1つの色に対応するように設定し、それをコンピューター上(画像処理上)色分けすることにすれば良い。そして、1層の区画ごとに所定の組成で色分けされた二次元的なデータ(断層データ)を作成し、これらの断層データを三次元的に積み上げることにより、所望の固体製剤の画像データを作成する。得られた画像データをCTスキャン等と同じ要領により、1層ごとに出力し、描画パターンを印画し、積層造形を行う。このときの1層の厚みは、平面展開する際の厚みと実質的に同じ厚みとすることが好ましい。この2次元的なデータは、区画ごとの色分けデータが含まれるので、それに基づいて散布する液体の種類が特定される。例えば、図7(a)のような2次元的データのC1の領域は赤色、C2の領域は黄色、C3の領域は緑色とし、液体を噴霧する印刷装置(例えばインクジェットプリンタ)にそれぞれの色に対応する液体を装填し、その色の信号を受けた印刷装置は所定の色の領域に所定の液体を散布することができる。
【0066】
次いで、図10(1)に示すように、フラットなテーブル等の上に粉末を平面展開して粉末層L1を形成する。ここでは、粉末としてリン酸カルシウム等の粉末と接着成分(例えばデキストリン)の粉末を含む混合粉末を用いることができる。
【0067】
続いて、図10(2)に示すように、前述した断面データに基づいて、ノズルを有する三次元プリンタ(図示せず)により活性成分が水に溶解してなる水溶液を用いて所望のパターン(例えば円形)をプリント(散布)する。このとき、前記粉末層L1の散布領域L1(a)に存在する粉末粒子どうしの結合強度は、非散布領域L1(b)に存在する粉末粒子どうしの結合強度よりも高くなる。プリントとしては、1つ又は2つ以上のインクタンク及び1つ又は2つ以上のノズルを有するインクジェットプリンターを使用する。特に、複数のインクタンク及びノズルを有するインクジェットプリンターを用いる場合は、液体(散布液)として、前記水溶液のほか、活性成分を含まない溶媒を使用することができるので、1つの散布領域において活性成分を含む領域と活性成分を含まない領域を形成することができる。また、前記水溶液としても、活性成分の種類及び/又は濃度が互いに異なる2種以上の水溶液を使用することができるため、1つの散布領域において、活性成分の種類及び/又は濃度が異なる領域を形成することも可能である。これらの制御は、次の層(上部層)以降においても同様に実施することができる。
【0068】
次いで、図10(3)に示すように、前記散布後の粉末層L1上に前記粉末をさらに平面展開して上部粉末層L2を形成する。上部粉末層L2に対し、前述した断面データ(底部よりひとつ(一層)上の断面データ)に基づいてノズルを有する三次元プリンタにより前記散布液をプリント(散布)する。このとき、前記上部粉末層L2の散布領域L2(a)に存在する粉末粒子どうしの結合強度は、非散布領域L2(b)に存在する粉末粒子どうしの結合強度よりも高くなる。同時に、散布領域L2(a)はその下の散布領域L1(a)と結合される。
【0069】
さらに、図10(4)に示すように、前記散布後の粉末層L2上に前記粉末をさらに平面展開して上部粉末層L3を形成する。上部粉末層L3に対し、前述した断面データ(底部より2つ(2層)上の断面データ)に基づいてノズルを有する三次元プリンタにより前記散布液をプリント(散布)する。このとき、このとき、前記上部粉末層L3の散布領域L3(a)に存在する粉末粒子どうしの結合強度は、非散布領域L3(b)に存在する粉末粒子どうしの結合強度よりも高くなる。同時に、散布領域L3(a)はその下の散布領域L2(a)と結合される。
【0070】
このような積層造形により、図10(4)に示すように複数回の散布による散布領域で形付けられたタブレット状の円形造形物が得られる。その後、非散布領域(L1(b)〜L3(b))の粉末を除去して(型抜きをして)、図1に示すような固形製剤を取り出すことができる。得られた固形製剤は、所望の位置(例えば、図7(b)においてL2−C1、L2−C3)に所定の濃度の活性成分が非連続的(又は連続的)に配置されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に前記活性成分を配置してなる固形製剤。
【請求項2】
1)薬学的に許容される活性成分からなる区画、2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分からなる区画及び3)非活性成分からなる区画の2つ以上の組み合わせにより構成されている、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけて連続的に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項4】
固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけずに連続的に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項5】
固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけて不連続に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項6】
固形製剤の内部の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤中心部又は外部表面に向かって一次元的、二次元的又は三次元的に濃度勾配をつけずに不連続に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項7】
固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけて連続的に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項8】
固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけずに連続的に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項9】
固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけて不連続に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項10】
固形製剤の表面の特定の位置を起点とし、当該起点から固形製剤の表面に沿って濃度勾配をつけずに不連続に前記活性成分が配置されてなる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項11】
薬学的に許容される活性成分が2種以上含まれる、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項12】
当該配置により、薬学的に許容される活性成分の放出速度、放出濃度、放出方向、放出開始時間及び放出持続時間の少なくとも1つが制御されている、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項13】
非活性成分が生体組織と親和性を有する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項14】
粉末積層造形法により製造される、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項15】
薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含む固形製剤であって、1つの固形製剤における特定の位置又は領域に前記活性成分を配置してなる固形製剤を製造する方法であって、
(1)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して粉末層を形成した後、前記粉末層の特定の領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程、
(2)液体を散布した後の粉末層上に、薬学的に許容される活性成分及び非活性成分の少なくとも1種を含む粉末を平面展開して上部粉末層を形成した後、前記上部粉末層の特定の平面領域に液体を選択的に散布することにより、当該散布領域における粉末粒子どうしの結合強度を非散布領域の粉末粒子どうしの結合強度よりも高める工程、及び
(3)前記(2)の工程を1回又は2回以上繰り返して前記散布領域の積層体からなる固形製剤を形成する工程、
を含み、
かつ、前記粉末及び液体の少なくとも一方に薬学的に許容される活性成分が含まれている、
ことを特徴とする固形製剤の製造方法。
【請求項16】
粉末が、接着成分を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
粉末が、1)薬学的に許容される活性成分からなる粉末及び2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含み、かつ、前記活性成分が所定濃度に調整されている粉末の少なくとも1種である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
1)薬学的に許容される活性成分からなる粉末、2)薬学的に許容される活性成分及び非活性成分を含み、かつ、前記活性成分が所定濃度に調整されている粉末、3)接着成分を含む粉末のいずれかの粉末を2種以上組み合わせて平面展開することにより、固体製剤中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
液体が、1)薬学的に許容される活性成分を含む液体、2)接着成分を活性化する液体及び3)接着成分を含む液体の少なくとも1種である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
接着成分を含む液体が、少なくとも乾燥時に接着性を発現し得る接着成分が水に溶解した水溶液である、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
液体中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整されている、請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
1)薬学的に許容される活性成分を含む液体、2)接着成分を活性化する液体、3)接着成分を含む液体及び4)前記1)〜3)のいずれかの液体を2種以上組み合わせて散布することにより、液体中における前記活性成分及び/又は接着成分が所定濃度に調整される、請求項19に記載の製造方法。
【請求項23】
非活性成分が生体組織と親和性を有する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれかに記載の製造方法により得られる固形製剤であって、薬学的に許容される活性成分の放出速度、放出濃度、放出方向、放出開始時間及び放出持続時間の少なくとも1つが制御されている固形製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−74015(P2011−74015A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227145(P2009−227145)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】