説明

固液分離装置及び固液分離方法

【課題】 濾過体の目詰まりを防止して固液分離を促進させることにより、あるいは、固形分の洗浄・排出を効率的に行うことにより、処理能力(固液分離能率)の低下を防止することのできる固液分離装置及び固液分離方法を提供する。
【解決手段】 固液分離装置100は、汚泥Mを収容する汚泥収容槽20と、その汚泥収容槽20の内部に上下方向に配置されて汚泥Mのうちの水分を分離水Wとして外部に流出させる円筒状の水分流出筒40と、汚泥収容槽20の水位WLに浮遊しつつ水分流出筒40の流入口41を上側から覆う吸水性で円形板状のフィルタ30とを備えている。フィルタ30にはシリカブラック粉末が定着されている。シリカブラックは、自身の発する共鳴波動により分離水Wの分子クラスタをフィルタ30の濾過隙間よりも小さくなるように微小化する機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性汚泥の固液分離装置及び固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水処理場等の処理施設や、畜舎、水産加工場、食品製造工場、製紙工場等の生産施設で大量に発生する流動性汚泥の処理方法として、高分子組成の凝集剤を添加して汚泥中の固形分(ケーキ)を凝集・沈殿させ、水分(液体分)と分離(固液分離)するのが一般的であった。このうち、固形分に対して、その後遠心分離(遠心分離機)、加圧(ベルトプレス)等の手段によってさらに水分を除去した後、堆肥化処理、乾燥・焼却処理等の後処理が行われる。他方、水分に対して、消臭・脱色等の浄水化処理が施された後、多くは河川等に放流される。
【0003】
また、縦型の袋状(又は有底筒状)に形成されたフィルタ(濾過体)を有底筒状の縦型処理槽(固液分離槽)の内部に収容するタイプもある。このタイプの一例として、フィルタの頭部開口から内部に流動性汚泥を入れ、汚泥の水分を主として筒状の周面部で濾過して外部に流出させる一方、固形分を底部に沈殿させることにより、水分と固形分とに分離する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−236595号公報
【0005】
特許文献1のような縦型沈殿分離装置によれば、凝集剤を添加しないため薬害発生のおそれがなく安全であり、無害化(無毒化)のための設備を要せず構造簡単で低コストで済む利点がある。ところが、縦型沈殿分離方式では、
(1)底部には固形分が沈殿するため、水分の濾過分離は主としてフィルタの筒状周面部で行われ濾過面積が相対的に小さいので、時間経過とともにフィルタが目詰まりすると処理能力(固液分離能率)が極端に低下するおそれがある;
(2)底部に沈殿した固形分の排出やフィルタの洗浄・交換に手間がかかり、それによって処理能力(固液分離能率)が極端に低下するおそれがある。
【0006】
特許文献1では、(1)に対して、汚泥に負圧を作用させている。しかし、そのために減圧吸引装置を要し、複雑で高価な構造となるおそれがある。また、(2)に対して、フィルタ底部中央を上方に持ち上げ裏返しにすることによって、固形分の排出とフィルタの洗浄とを行っている。しかし、形状不安定なため、持ち上げ途中でフィルタが周囲のものに引っ掛かったり傾いたりすると、排出・洗浄が滞るおそれがある。また、固形分の全重量をフィルタ底部中央1ヶ所で支えるためには、フィルタ全体の強度を高めておく必要があり不経済である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、濾過体の目詰まりを防止して固液分離を促進させることにより、あるいは、固形分の洗浄・排出を効率的に行うことにより、処理能力(固液分離能率)の低下を防止することのできる固液分離装置及び固液分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る固液分離装置は、
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容部と、
その汚泥収容部の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容部の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容部の底壁部を貫通する流出口に形成される筒状の液体分流出部と、
吸液性を有し、かつ前記汚泥収容部の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出部の流入口を上側から覆う濾過体とを備え、
前記汚泥収容部及び/又は濾過体には、液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、
前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出部の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容部内に残留することにより、前記汚泥収容部に収容された汚泥が液体分と固形分とに分離されることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る固液分離装置は、
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容部としての汚泥収容槽と、
その汚泥収容槽の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容槽の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容槽の底壁部を貫通する流出口に形成される筒状の液体分流出部としての液体分流出筒と、
吸液性を有し、かつ前記汚泥収容槽の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う濾過体とを備え、
前記濾過体には、液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、
前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出筒の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容槽内に残留することにより、前記汚泥収容槽に収容された汚泥が液体分と固形分とに分離されるとともに、
前記液体分流出筒の流出口から流出する液体分の少なくとも一部は、液体分循環径路を介して前記汚泥収容槽内に導入され、その汚泥収容槽内に残留する固形分を洗浄するために再使用されることを特徴とする。
【0010】
これらの固液分離装置では、汚泥収容部及び/又は濾過体(例えば濾過体)にクラスタ処理剤が付着されていることによって液体分(例えば水分)の分子クラスタが微小化され濾過隙間よりも小さくなる。これにより、液体分は濾過隙間(繊維間)を通り抜けやすく(流通性がよく)なる一方、固形分に対してはクラスタ微小化作用は及ばない。したがって、液体分は、濾過体内部を加減圧しなくても(すなわち、汚泥に加減圧を作用させなくても)、毛細管現象によって汚泥液面に浮遊する濾過体に吸液され浸透・濾過されて外部に流出しやすくなり、濾過体での目詰まりを防止して固液分離を促進させることができ、処理能力(固液分離能率)の低下を防止できる。さらに、このような毛細管現象を利用した浮遊吸液浸透方式によって流動性汚泥を濾過する(固液分離する)ので、特許文献1のような縦型沈殿分離方式と比べても固形分の濾過体への付着量自体が減少し、濾過体を頻繁に洗浄したり交換したりしなくても長期にわたり連続使用できる。
【0011】
しかも、濾過体から液体分流出筒(液体分流出部)を経て流出する液体分の少なくとも一部が、液体分循環径路を介して再び汚泥収容槽(汚泥収容部)内に導入されて残留固形分を洗浄するために再使用される場合には、再導入された液体分の分子クラスタはさらに微小化されて流通性がよくなる。したがって、液体分の循環を繰り返すことにより濾過体の目詰まりがさらに防止され、そのまま河川等への放流も可能となる。また、上記したような浮遊吸液浸透方式では、液体分から分離された固形分が汚泥収容槽(汚泥収容部)の内面全体に広く分布(付着)して残留する(取り残される)事態も想定されるが、循環する液体分で内面を洗浄する(洗い流す)ことによって残留固形分を集めることができ排出が容易になる。なお、固形分は、凝集剤を添加しなくても汚泥収容槽(汚泥収容部)内に残留させることができるから、薬害の発生を防止できる。
【0012】
これらの固液分離装置において、濾過体は、汚泥収容部(汚泥収容槽)の汚泥液面上に浮遊状態で平面的に配置されるリング状のフランジ部と、そのフランジ部の内周縁から下方に延びて液体分流出部(液体分流出筒)の流入口に挿入される筒状部とを有し、フランジ部で吸液されて筒状部へ浸透する液体分は、クラスタ処理剤で微小化されることによって濾過体の濾過隙間を通り分離・濾過されるように構成できる。このように、濾過体のフランジ部をあたかも海面上に浮かぶクラゲのように汚泥液面上に漂わせておけば、毛細管現象を利用した浮遊吸液浸透方式による能率的な固液分離操作が可能となる。なお、筒状部の形態は、底無し孔あき状、有底袋状のいずれであってもよい。
【0013】
ところで、本発明者は、天然鉱物として産出するセラミックス原料には、液体分(例えば水分)の分子クラスタを微小化する機能(クラスタ処理機能)を有するものが多く存在することを見出した。特に、本発明の濾過体には、黒鉛珪石、電気石、麦飯石、石英斑岩及び医王石のうちから選ばれた少なくとも1種を主成分として含むクラスタ処理剤が付着されて、自身の発する共鳴波動により液体分の分子クラスタを濾過隙間よりも小さくなるように微小化することができる。また、本発明の汚泥収容部(汚泥収容槽)の内面及び/又は外面には、黒鉛珪石、電気石、麦飯石、石英斑岩及び医王石のうちから選ばれた少なくとも1種を主成分として含むクラスタ処理剤が塗布されて、自身の発する共鳴波動により液体分の分子クラスタを濾過隙間よりも小さくなるように微小化することができる。
【0014】
つまり、クラスタ処理剤は、濾過体に付着されたり、汚泥収容部(汚泥収容槽)の内面に塗布されたときには、液体分に直接接することによってクラスタ処理剤自身の発する共鳴波動により液体分の分子クラスタを微小化することができる。他方で、クラスタ処理剤は、例えば汚泥収容部(汚泥収容槽)の外面にのみ塗布されたときに、液体分に直接接しなくてもクラスタ処理剤自身の発する共鳴波動により、濾過体内及び汚泥収容部(汚泥収容槽)内の液体分の分子クラスタを微小化することができる。このように、クラスタ処理剤は液体分との接触の有無とは無関係に液体分の分子クラスタを微小化できるため、クラスタ処理剤を種々の形態で用いることができる。例えば、濾過体にクラスタ処理剤が付着され、かつ汚泥収容部(汚泥収容槽)の内面及び/又は外面にクラスタ処理剤が塗布されている場合には、汚泥収容部(汚泥収容槽)側のクラスタ処理剤は、濾過体に吸液される前に液体分の分子クラスタを予め小さくなるように微小化するとともに、その臭いを減少又は消滅させることができる。なお、「主成分」とは全体に占める重量比が50%以上であることを意味する。
【0015】
ここで、クラスタ処理剤として例えばセラミックス原料を含有する次のような物質が推奨される。
(1)黒鉛珪石(グラファイトシリカ、シリカブラックともいう);
(2)電気石(トルマリンともいう);
(3)麦飯石(花崗斑岩ともいう);
(4)石英斑岩;
(5)医王石(戸室石、石英閃緑玲石ともいう)。
これらはいずれもケイ酸塩(無水ケイ酸、シリカ)を主たる成分として含有するセラミックス原料(非金属無機質原料)の一種であり、天然鉱物として産出されるので比較的容易かつ安価に入手できる利点がある。
【0016】
そして、液体分流出筒は、流出口が形成された下端部が汚泥収容槽の底壁部を上下方向に貫通する貫通孔に挿入され、濾過体は、液体分流出筒の流入口を上側から覆う状態で、汚泥液面の上下変動に応じ貫通孔に沿って液体分流出筒とともに昇降変位するように構成できる。このように、汚泥収容槽側の貫通孔に液体分流出筒を挿入することによって、濾過体を汚泥液面の上下変動に応じて容易に昇降変位(例えば追従移動)させることができ、毛細管現象を利用した浮遊吸液浸透方式による一層能率的な固液分離操作が可能となる。
【0017】
その際、液体分流出筒と濾過体との少なくとも一方には、液体分流出筒の流入口を汚泥収容槽の汚泥液面に対して上下方向の所定範囲内に位置させるために、浮力を付与する浮き及び重力を付与する錘のうちの少なくともいずれかが装着可能となるように構成することができる。浮きや錘によって、例えば濾過体及び液体分流出筒の流入口が常時汚泥液面と一致する状態あるいは常時汚泥液面から所定距離上方に位置する状態で流動性汚泥の固液分離ができるので、汚泥液面が高低に変動しても安定した固液分離操作が可能となる。
【0018】
また、液体分流出筒は、ウィンチ等の昇降機構により汚泥収容槽の底壁部よりも上昇して流出口が露出する位置まで変位可能とされ、流出口が露出する位置まで液体分流出筒を上昇変位させたとき、汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分が貫通孔から外部へ排出可能となるように構成することができる。これによって、浮遊吸液浸透方式で固液分離され汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分を貫通孔から外部へスムーズに排出できる。しかも、液体分流出筒の下端部を上下移動させるために汚泥収容槽の底壁部に形成された貫通孔をそのまま利用できるので、固形分の排出のために特別な排出口等を設ける必要がない。
【0019】
しかもそのとき、汚泥収容槽の底壁部には、貫通孔を含む部分が液体分流出筒とともに昇降機構により上昇変位して、汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分を外部へ排出するための排出口が形成されるようにすれば、貫通孔よりもさらに大きな断面積を有する排出口を汚泥収容槽の底壁部に開口形成させることができる。したがって、そのような排出口を利用することで汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分の排出が容易になり、排出作業を短時間で終えることができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するために、本発明に係る固液分離方法は、
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容槽と、その汚泥収容槽の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容槽の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容槽の底壁部を上下方向に貫通する貫通孔に挿入される流出口に形成され、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って昇降変位する液体分流出筒と、吸液性を有するとともに、液体分の分子クラスタを濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、かつ前記汚泥収容槽の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う濾過体とを備える固液分離装置を用いた固液分離方法であって、
前記濾過体が、前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う状態で、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って該液体分流出筒とともに昇降変位する間に、前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出筒の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は、前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容槽内に残留することにより、前記汚泥収容槽に収容された流動性の汚泥を液体分と固形分とに分離する固液分離処理工程と、
ウィンチ等の昇降機構により前記液体分流出筒を前記汚泥収容槽の底壁部よりも上昇させて前記流出口が露出する位置まで変位させ、前記汚泥収容槽内に残留する固形分を前記貫通孔から外部へ排出する固形分排出処理工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
この固液分離方法では、濾過体にクラスタ処理剤が付着されていることによって液体分(例えば水分)の分子クラスタが微小化され濾過隙間よりも小さくなる。これによって、濾過体での目詰まりを防止して固液分離を促進させることができ、固液分離装置の処理能力(固液分離能率)の低下を防止できる。また、このような毛細管現象を利用した浮遊吸液浸透方式によって流動性汚泥を濾過する(固液分離する)ので、濾過体を頻繁に洗浄したり交換したりしなくても長期にわたり連続使用できる。さらに、汚泥収容槽内に残留する固形分の排出作業が貫通孔を利用して容易に行なえる。
【0022】
その際、固液分離処理工程において、液体分流出筒の流出口から流出する液体分の少なくとも一部は、液体分循環径路を介して汚泥収容槽内に導入され、その汚泥収容槽内に残留する固形分を洗浄するために再使用される場合には、再導入された液体分の分子クラスタはさらに微小化されて流通性がよくなり、濾過体の目詰まりがさらに防止される。また、循環する液体分で汚泥収容槽の内面を洗浄する(洗い流す)ことによって残留固形分を集めることができ排出が容易になる。
【0023】
また、固形分排出処理工程において、昇降機構により汚泥収容槽の底壁部のうち貫通孔を含む部分を液体分流出筒とともに上昇変位させて排出口を形成させ、その排出口から汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分を外部へ排出する場合には、貫通孔よりもさらに大きな断面積を有する排出口が汚泥収容槽の底壁部に開口形成される。したがって、そのような排出口を利用することによって固形分の排出作業を短時間で終えることができる。
【0024】
ところで、上記したような固液分離装置を用いて汚泥処理システムを構築する場合、その汚泥処理システムは、例えば、
下水処理場等の処理施設、又は畜舎、水産加工場、食品製造工場、製紙工場等の生産施設で発生し液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を貯留する汚泥貯留手段と、
その流動性の汚泥を前記汚泥貯留手段から移行して収容する汚泥収容槽と、その汚泥収容槽の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容槽の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容槽の底壁部を上下方向に貫通する貫通孔に挿入される流出口に形成され、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って昇降変位する液体分流出筒と、吸液性を有するとともに、液体分の分子クラスタを濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、かつ前記汚泥収容槽の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う濾過体とを有する固液分離装置と、
堆肥化処理、乾燥・焼却処理等の固形分の後処理を行う後処理装置とを備え、
前記濾過体が、前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う状態で、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って該液体分流出筒とともに昇降変位する間に、前記汚泥収容槽に収容された流動性の汚泥のうち前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出筒の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は、前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容槽内に残留することにより、液体分と固形分とに分離されるとともに、
前記液体分流出筒の流出口から流出する液体分の少なくとも一部は、液体分循環径路を介して前記汚泥収容槽内に導入され、その汚泥収容槽内に残留する固形分を洗浄するために再使用され、
前記汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分は、ウィンチ等の昇降機構により前記液体分流出筒を前記汚泥収容槽の底壁部よりも上昇させて前記流出口が露出する位置まで変位させることによって、前記貫通孔から前記後処理装置側へ排出されるように構成される。
【0025】
このような汚泥処理システムでは、クラスタ処理剤が付着された濾過体を用い、上記した毛細管現象を利用した浮遊吸液浸透方式によって流動性汚泥を濾過する(固液分離する)ので、濾過体の洗浄や交換を頻繁に行わなくても、濾過体での目詰まりが発生しにくい。また、汚泥収容槽内に残留する固形分の排出作業が貫通孔を利用して容易にかつ短時間で行なえる。したがって、固液分離の処理能力(固液分離能率)を低下させずに長期にわたり連続稼動可能な汚泥処理システムを構築することができる。
【0026】
なお、クラスタ処理剤によって液体分(例えば水分)の分子クラスタのみが微小化され、流動性汚泥の固形分が濾過体を透過する確率は極めて低く抑えられている。そこで、固液分離され液体分流出筒の流出口から流出する液体分のうち、汚泥収容槽内に洗浄液として循環(導入)される液体分を除いた残りの液体分は、所定の浄水化処理が施された後河川等に放流することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施例)
次に、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る固液分離装置を含む汚泥処理システムの一例を示す概略説明図である。図1に表わされた汚泥処理システム1000では、固液分離装置100を備える汚水処理施設500と、豚(家畜)を飼育する図示しない養豚場(畜舎;生産施設)と、堆肥化処理を行うための堆肥化処理装置400(後処理装置)とが隣接して配置され、養豚場で発生する糞尿等の流動性の汚泥Mが汚水処理施設500の汚泥貯留槽200(汚泥貯留手段)に貯留されている。汚泥Mは、水分(液体分)と固形分(ケーキ)とがスラリー状に混合された流動性の高い性状をしている。
【0028】
固液分離装置100では、汚泥貯留槽200の汚泥Mが汚水用ポンプ201によって汚泥収容槽20(汚泥収容部)に移行され、後述するように汚泥収容槽20内に配置された水分流出筒40(液体分流出筒;液体分流出部)とフィルタ30(濾過体)とを用いて分離水W(水分;液体分)とケーキC(固形分)とに濾過(固液分離)される。このうちケーキCは、汚泥収容槽20から堆肥化処理装置400側へ排出されて、堆肥製造に用いられる。
【0029】
一方、分離水Wは水分流出筒40から流出して、一旦沈殿槽300に集められ、その一部は分離水用ポンプ301及び分離水循環径路K(水分循環径路;液体分循環径路)を介して汚泥収容槽20内の洗浄機構60に導入され、汚泥収容槽20内に残留するケーキCを洗浄する(洗い流す)ために再使用される。また、沈殿槽300内の分離水Wの残りは、脱色・消臭等の所定の浄水化処理と水質検査とが実施された後、浄化水W’として河川Rに放流される。なお、図1の501は、固液分離装置100の点検や作業のために汚水処理施設500に出入りするドア502へ続く階段を示す。また、汚泥貯留槽200及び沈殿槽300は、汚水処理施設500の地表面GLよりも低位(地下)に設置されている。
【0030】
次に、固液分離装置100の具体的構造を説明する。図2は本発明に係る固液分離装置の正面図、図3は図2のA矢視平面図、図4は図2のB矢視平面図、図5は図2のC矢視側面図である。図2に示すように、固液分離装置100は、汚泥Mを収容する汚泥収容槽20と、その汚泥収容槽20の内部に上下方向に配置されて汚泥Mのうちの水分を分離水Wとして外部に流出させる円筒状の水分流出筒40と、汚泥収容槽20の水位WL(汚泥液面)上で浮遊しつつ水分流出筒40の流入口41を上側から覆う吸水性で円形板状のフィルタ30とを備えている。
【0031】
汚泥収容槽20は、鉄骨製の枠組29に載置され、コンクリートパネル製の側壁部21と底壁部22とで囲まれて上方に開口した箱状に形成されている。底壁部22は、図2の一端側(例えば左側)から他端側(例えば右側)に向う長手方向に沿って緩やかな勾配で下向き傾斜する緩傾斜部22aと、その先端において急な勾配で下向き傾斜する急傾斜部22bと、他端部(例えば右端部)においてほぼ水平状に保たれる水平部22cとが一連に形成されている。
【0032】
水分流出筒40は、塩化ビニル製で円筒状に形成され、汚泥収容槽20の内部に上下方向に配置されている。水分流出筒40の上端部は、汚泥収容槽20の水位WLよりもやや上方に開口して汚泥Mの分離水Wの流入口41に形成され(図6,図8参照)、その下端部は、汚泥収容槽20の底壁部22(水平部22c)を貫通して分離水Wの流出口42に形成されている。
【0033】
具体的には、図6及び図7に示すように、汚泥収容槽20の水平部22cを構成する矩形状の固定板26には、円形状の貫通孔23が上下方向に貫通形成され、その貫通孔23には塩化ビニル製で円筒状の案内筒24が嵌合固定されている。そして、案内筒24の内周面と水分流出筒40の外周面との間に合成樹脂等の円環状の摺動部材27を介装させることによって、水分流出筒40の下端部は案内筒24(貫通孔23)に対して上下方向に相対移動(相対摺動)可能に挿入されている。したがって、汚泥収容槽20の水位WLが上下変動すると、水分流出筒40は案内筒24(貫通孔23)に沿って追従移動(昇降変位)する。
【0034】
さらに、図8及び図9に示すように、フィルタ30は、汚泥収容槽20の水位WL上に浮遊状態で平面的に配置されるリング状のフランジ部31と、そのフランジ部31の内周縁から下方に延びて水分流出筒40の流入口41に所定長さで挿入される底無し孔あき状の筒状部32とを有している。したがって、汚泥収容槽20の水位WLが上下変動すると、フィルタ30(フランジ部31)は、水分流出筒40の流入口41を上側から覆いながら、水分流出筒40とともに案内筒24(貫通孔23)に沿って追従移動(昇降変位)する。
【0035】
図8及び図9に示すように、フィルタ30のフランジ部31の外周縁には、水分流出筒40の流入口41の高さ(上端)が常時汚泥収容槽20の水位WLよりもやや上方に位置するように、フィルタ30及び水分流出筒40に浮力を付与するために、周方向に沿って複数(例えば4個)の合成樹脂製の浮き33が装着されている。一方、図5及び図6に示すように、水分流出筒40の上端縁には、流入口41の高さ(上端)が常時汚泥収容槽20の水位WLよりもやや上方に位置するように、フィルタ30及び水分流出筒40に重力を付与する錘43が装着(載置)されている。これらの浮き33と錘43とは、浮力や重力の異なるものを複数種類準備しておき、流入口41の高さレベルと汚泥収容槽20の水位WLとが所定の位置関係を維持するように、汚泥Mの比重等に応じて適宜組み合わせて使用するとよい。
【0036】
また、図10に示すように、水分流出筒40は、チェン、ワイヤ等の第一吊り部材71を有するウィンチ等の巻上式昇降機構70(昇降機構;図5参照)によって、汚泥収容槽20の水平部22c(底壁部22)よりも上昇し、その下端部の流出口42が露出する位置まで変位可能とされている。同様に、汚泥収容槽20の案内筒24は、貫通孔23を含む形で、固定部26及びチェン、ワイヤ等の第二吊り部材72を有するウィンチ等の巻上式昇降機構70(昇降機構)によって、汚泥収容槽20の水平部22c(底壁部22)よりも上昇し、案内筒24の下端縁が露出する位置まで変位可能とされている。なお、28は固定部26での水漏れを防止するためのパッキンである。
【0037】
そこで、昇降機構70によって第一吊り部材71及び第二吊り部材72を引き上げると、汚泥収容槽2の水平部22cには、固定部26が上方移動したことによって、貫通孔23(案内筒24)よりも大きく矩形状に開口する排出口25(図4参照)が形成される。したがって、汚泥収容槽2の水平部22cに大きく開口形成される排出口25から、汚泥収容槽20内に堆積・残留するケーキCを外部へ短時間で排出できる。
【0038】
図3〜図5に示すように、汚水処理施設500には複数(例えば2連)の固液分離装置100を各々の汚泥収容槽20の長手方向が平行状になるように所定間隔で並設されている。そして、各汚泥収容槽20の水平部22cには、長手方向と直交する方向(奥行方向)に沿って複数(例えば3組)のフィルタ30と水分流出筒40との組が配設されている。なお、図3の503は固液分離装置100(汚泥収容槽20)の間及びドア502の内側に設けられた点検通路である。
【0039】
ところで、フィルタ30には、所定粒径(例えば平均粒径0.5〜2μm)のシリカブラック(黒鉛珪石)粉末(クラスタ処理剤)が、酢酸ビニル、塩化ビニル、ウレタン等の定着剤(繋ぎ剤)によって定着(付着)されている。クラスタ処理剤(シリカブラック)は、自身の発する共鳴波動により分離水Wの分子クラスタをフィルタ30の濾過隙間よりも小さくなるように微小化する機能を有している。
【0040】
ここで、フィルタ30は木綿、ポリエステル繊維(PET;商品名テトロン)、木綿とポリエステルとの混紡等の非腐食素材製で吸水性を有する不織布で構成され、例えば図11に示す方法により製作される。図11(a)に示す定着剤(繋ぎ剤;例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、ウレタン)溶液Fの中に所定粒径(例えば平均粒径0.5〜2μm)のシリカブラック(黒鉛珪石)粉末S(クラスタ処理剤)を添加し、同図(b)に示すように不織布N(布帛)を浸漬する。そして、シリカブラック粉末Sが定着した不織布N’を同図(c)に示すように乾燥させた後、円形板状等の所定形状に成形すれば、フィルタ30が完成する。なお、シリカブラック粉末Sが定着した不織布N’を複数枚(例えば2枚)重ねてフィルタ30としてもよい。
【0041】
一方、汚泥収容槽20の側壁部21及び底壁部22を構成するコンクリートパネルの内面20A及び外面20B(図2参照)には、所定粒径(例えば平均粒径0.5〜2μm)のシリカブラック(黒鉛珪石)粉末(クラスタ処理剤)が、酢酸ビニル、塩化ビニル、ウレタン等の定着剤(繋ぎ剤)とともに所定厚さ(例えば平均50〜70μm)に塗布(付着)されている。このように、フィルタ30にクラスタ処理剤が定着(付着)され、かつ汚泥収容槽20の内面20A及び外面20Bにもクラスタ処理剤が塗布(付着)されている場合には、汚泥収容槽20側のクラスタ処理剤は、汚泥貯留槽200から移行された汚泥Mの水分Wの分子クラスタを予め小さくなるように微小化するとともに、その臭いを減少又は消滅させる機能を有している。
【0042】
図1に戻り、フィルタ30及び汚泥収容槽20に付着されたクラスタ処理剤で微小化された分離水Wは、汚泥収容槽20の水位WLで毛細管現象によりフィルタ30に吸水されて浸透・濾過され、水分流出筒40の流入口41を通り流出口42から流出する。一方、汚泥M中のケーキCはフィルタ30を通過せずに汚泥収容槽20内に残留する。これにより、汚泥収容槽20に収容された汚泥Mが分離水WとケーキCとに分離される。換言すれば、フランジ部31(図9参照)で吸水されて筒状部32(図9参照)へ浸透する分離水Wは、フィルタ30や汚泥収容槽20に付着されたクラスタ処理剤で微小化されることによってフィルタ30の濾過隙間を通り分離・濾過されることになる。そして、水分流出筒40の流出口42から流出し沈殿槽300に貯留される分離水Wの一部は、分離水用ポンプ301及び分離水循環径路Kを介して汚泥収容槽20内の洗浄機構60に導入され、汚泥収容槽20内に残留するケーキCを洗浄するために再使用される。
【0043】
具体的には、図3に表わされているように、分離水用ポンプ301及び分離水循環径路Kを介して循環される分離水Wは、汚泥収容槽20の長手方向と直交する方向に配置された洗浄筒62(洗浄機構60)内に導入される。洗浄筒62は、緩傾斜部22a及び急傾斜部22bの長手方向両側において汚泥収容槽20内に配置された固定レール61に沿って移動しながら、洗浄筒62の周面に貫通形成される多数の噴出孔(図示せず)から汚泥収容槽20の内面20A(側壁部21及び底壁部22)に向けてシャワー状に分離水Wを噴射し、内面20Aに残留・付着するケーキCを洗浄する(洗い流す)。
【0044】
再び図1に戻り、汚泥貯留槽200の内面200A及び外面200Bと、沈殿槽300の内面300A及び外面300Bとには、所定粒径(例えば平均粒径0.5〜2μm)のシリカブラック(黒鉛珪石)粉末(クラスタ処理剤)が、酢酸ビニル、塩化ビニル、ウレタン等の定着剤(繋ぎ剤)とともに所定厚さ(例えば平均50〜70μm)に塗布(付着)されている。
【0045】
また、汚泥貯留槽200に設けられる第一濾過フィルタ210(クラスタ処理体)及び沈殿槽300に設けられる第二濾過フィルタ310(クラスタ処理体)にも所定粒径(例えば平均粒径0.5〜2μm)のシリカブラック(黒鉛珪石)粉末(クラスタ処理剤)が、酢酸ビニル、塩化ビニル、ウレタン等の定着剤(繋ぎ剤)によって定着(付着)されている。クラスタ処理剤(シリカブラック)は、自身の発する共鳴波動により分離水Wの分子クラスタをさらに小さくなるように微小化するとともに、その臭いを減少又は消滅させる機能を有している。第一濾過フィルタ210と第二濾過フィルタ310とは木綿、ポリエステル繊維(PET;商品名テトロン)、木綿とポリエステルとの混紡等の非腐食素材製の不織布で構成され、例えば図11に示す方法によりフィルタ30と同様に製作される。なお、汚泥貯留槽200内に空気供給管(図示せず)を配設し、空気供給管からの空気により、汚泥収容槽20に移行する前の汚泥Mに曝気処理を行ってもよい。
【0046】
次に、このような固液分離装置を用いた固液分離方法について、図1,図9及び図10により説明する。
【0047】
(1)固液分離処理工程(図9,図1)
汚泥貯留槽200及び第一濾過フィルタ210のクラスタ処理剤によりクラスタ処理がなされた汚泥Mを、汚水用ポンプ201によって汚泥収容槽20に移行させる。フィルタ30及び汚泥収容槽20に付着されたクラスタ処理剤で微小化された分離水Wは、汚泥収容槽20の水位WLで毛細管現象によりフィルタ30のフランジ部31に吸水されて筒状部32へ浸透・濾過され、水分流出筒40の流入口41を通り流出口42から流出する。一方、汚泥M中のケーキCはフィルタ30を通過せずに汚泥収容槽20内に残留する。これにより、汚泥収容槽20に収容された汚泥Mが分離水WとケーキCとに分離される。そして、水分流出筒40の流出口42から流出し沈殿槽300に貯留される分離水Wの一部は、分離水用ポンプ301及び分離水循環径路Kを介して汚泥収容槽20内の洗浄機構60に導入され、汚泥収容槽20内に残留するケーキCを洗浄する。また、沈殿槽300内の分離水Wの残りは、脱色・消臭等の所定の浄水化処理と水質検査とが実施された後、浄化水W’として河川Rに放流される。
【0048】
(2)固形分排出処理工程(図10,図1)
その後、昇降機構70によって第一吊り部材71及び第二吊り部材72を引き上げると、汚泥収容槽2の水平部22cには、固定部26が上方移動したことによって、貫通孔23(案内筒24)よりも大きく開口する排出口25が形成される。汚泥収容槽2の水平部22cに排出口25が大きく開口形成され、汚泥収容槽20内に堆積・残留するケーキCを排出口25から堆肥化処理装置400側へ排出する。
【0049】
このように、毛細管現象を利用した浮遊吸水浸透方式によって流動性汚泥Mを濾過する(固液分離する)ので、フィルタ30を頻繁に洗浄したり交換したりしなくても長期にわたり連続使用できる。さらに、排出口25を利用することによって、汚泥収容槽20内に残留するケーキCの排出作業が短時間で終了する。
【0050】
(変形例)
図6の変形例を図12に示す。図12では、水分流出筒40の流入口41内周面に、周方向に所定間隔で上向き固定された複数(例えば4枚)の連結板73(連結部材)を介して、矩形状、円形状等の座板74が水平状に取り付けられている。第一吊り部材71’は、座板74に形成された雌ねじ部74aと螺合する雄ねじ部71a’を有するねじ軸であり、モータ等を駆動源とする回転式昇降機構70’(昇降機構)を構成する。また、チェン、ワイヤ等で構成される複数(例えば2本)の第二吊り部材72’が、固定部26と連結板73(水分流出筒40)との間に介装されている。
【0051】
図12において、汚水用ポンプ201(図1参照)の駆動や固液分離処理の進行によって汚泥収容槽20の水位WLが上下変動する際には、昇降機構70’を回転駆動して水分流出筒40(座板74)を昇降変位させる。このとき、第二吊り部材72’はたるみ(遊び)を有しているので、水位WLの変動範囲内において固定部26(案内筒24)が持ち上げられることはない。なお、汚泥収容槽20に設けた水位センサ(図示せず)によって水位WLの上下変動を検知して昇降機構70’を正逆回転切換させたり、汚水用ポンプ201の駆動や固液分離処理の開始とともに昇降機構70’を所定回転数で正逆回転させたりすることができる。
【0052】
次に、ケーキCの排出処理を行う際には、昇降機構70’によって水位WLの最高位を超えて水分流出筒40(座板74)を上昇変位させると、第二吊り部材72’を介して固定部26(案内筒24)が持ち上げられ、排出口25を大きく開口させることができる(図10参照)。
【0053】
また、昇降機構70’の第一吊り部材71’として、図12に示すねじ軸の代わりに、
(1)モータで駆動されるウォームホイールと噛み合うウォームが形成されたウォーム軸;
(2)モータで駆動されるピニオンと噛み合うラックが形成されたラック板;
等を用いることができる。なお、図12において、図6と共通する機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
以上の実施例では、水分流出筒40が汚泥収容槽20の底壁部22に対して上下移動する場合について説明したが、水分流出筒40は汚泥収容槽20に固定され一体化されていてもよい。また、フィルタ30の筒状部32を有底で袋状に形成するとともに、水分流出筒40の流入口41の高さ(上端)が常時汚泥収容槽20の水位WLと一致するように位置させてもよい。
【0055】
その他に、例えば次のような変更も可能である。
(1)クラスタ処理剤として、シリカブラック粉末のみについて説明したが、他の成分を含むことや粉末状以外の形態を排除するものではなく、水(溶媒)分子クラスタを微小化する作用のある他の材料を用いてもよい。
(2)固液分離方法において、他の工程を付加してもよい。
(3)昇降機構70,70’によって汚泥収容槽20側を上下移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る固液分離装置を含む汚泥処理システムの一例を示す概略説明図。
【図2】本発明に係る固液分離装置の正面図。
【図3】図2のA矢視平面図。
【図4】図2のB矢視平面図。
【図5】図2のC矢視側面図。
【図6】図5の部分拡大図。
【図7】図6のD矢視平面図。
【図8】図6の部分拡大図。
【図9】本発明に係る固液分離処理工程の一例を示す説明図。
【図10】本発明に係る固形分排出処理工程の一例を示す説明図。
【図11】固液分離装置に用いられる濾過体の製造方法の一例を示す説明図。
【図12】図6の変形例を示す説明図。
【符号の説明】
【0057】
20 汚泥収容槽(汚泥収容部)
22 底壁部
23 貫通孔
24 案内筒
25 排出口
26 固定板
30 フィルタ(濾過体)
31 フランジ部
32 筒状部
33 浮き
40 水分流出筒(液体分流出筒;液体分流出部)
41 流入口
42 流出口
43 錘
60 洗浄機構
70 巻上式昇降機構(昇降機構)
70’ 回転式昇降機構(昇降機構)
100 固液分離装置
200 汚泥貯留槽(汚泥貯留手段)
300 沈殿槽
400 堆肥化処理装置(後処理装置)
500 汚水処理施設
1000 汚泥処理システム
M 汚泥
W 分離水(水分;液体分)
C ケーキ(固形分)
K 分離水循環径路(水分循環径路;液体分循環径路)
WL 水位(汚泥液面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容部と、
その汚泥収容部の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容部の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容部の底壁部を貫通する流出口に形成される筒状の液体分流出部と、
吸液性を有し、かつ前記汚泥収容部の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出部の流入口を上側から覆う濾過体とを備え、
前記汚泥収容部及び/又は濾過体には、液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、
前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出部の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容部内に残留することにより、前記汚泥収容部に収容された汚泥が液体分と固形分とに分離されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容部としての汚泥収容槽と、
その汚泥収容槽の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容槽の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容槽の底壁部を貫通する流出口に形成される筒状の液体分流出部としての液体分流出筒と、
吸液性を有し、かつ前記汚泥収容槽の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う濾過体とを備え、
前記濾過体には、液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、
前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出筒の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容槽内に残留することにより、前記汚泥収容槽に収容された汚泥が液体分と固形分とに分離されるとともに、
前記液体分流出筒の流出口から流出する液体分の少なくとも一部は、液体分循環径路を介して前記汚泥収容槽内に導入され、その汚泥収容槽内に残留する固形分を洗浄するために再使用されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
前記濾過体は、前記汚泥収容部の汚泥液面上に浮遊状態で平面的に配置されるリング状のフランジ部と、そのフランジ部の内周縁から下方に延びて前記液体分流出部の流入口に挿入される筒状部とを有し、
前記フランジ部で吸液されて前記筒状部へ浸透する液体分は、前記クラスタ処理剤で微小化されることによって前記濾過体の濾過隙間を通り分離・濾過される請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記濾過体には、黒鉛珪石、電気石、麦飯石、石英斑岩及び医王石のうちから選ばれた少なくとも1種を主成分として含むクラスタ処理剤が付着され、
自身の発する共鳴波動により液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化する請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記汚泥収容部の内面及び/又は外面には、黒鉛珪石、電気石、麦飯石、石英斑岩及び医王石のうちから選ばれた少なくとも1種を主成分として含むクラスタ処理剤が塗布され、
自身の発する共鳴波動により液体分の分子クラスタを前記濾過体の濾過隙間よりも小さくなるように微小化する請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記液体分流出筒は、前記流出口が形成された下端部が前記汚泥収容槽の底壁部を上下方向に貫通する貫通孔に挿入され、
前記濾過体は、前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う状態で、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って該液体分流出筒とともに昇降変位する請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項7】
前記液体分流出筒と前記濾過体との少なくとも一方には、該液体分流出筒の流入口を前記汚泥収容槽の汚泥液面に対して上下方向の所定範囲内に位置させるために、浮力を付与する浮き及び重力を付与する錘のうちの少なくともいずれかが装着可能である請求項6に記載の固液分離装置。
【請求項8】
前記液体分流出筒は、ウィンチ等の昇降機構により前記汚泥収容槽の底壁部よりも上昇して前記流出口が露出する位置まで変位可能とされ、
前記流出口が露出する位置まで前記液体分流出筒を上昇変位させたとき、前記汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分が前記貫通孔から外部へ排出可能とされている請求項6に記載の固液分離装置。
【請求項9】
前記汚泥収容槽の底壁部には、前記貫通孔を含む部分が前記液体分流出筒とともに前記昇降機構により上昇変位して、前記汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分を外部へ排出するための排出口が形成される請求項8に記載の固液分離装置。
【請求項10】
液体分と固形分とがスラリー状に混合された流動性の汚泥を収容する汚泥収容槽と、その汚泥収容槽の内部に上下方向に配置され、上端部が該汚泥収容槽の汚泥液面又はその上方に開口して液体分の流入口に形成されるとともに、下端部が該汚泥収容槽の底壁部を上下方向に貫通する貫通孔に挿入される流出口に形成され、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って昇降変位する液体分流出筒と、吸液性を有するとともに、液体分の分子クラスタを濾過隙間よりも小さくなるように微小化するクラスタ処理剤が付着され、かつ前記汚泥収容槽の汚泥液面に浮遊しつつ前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う濾過体とを備える固液分離装置を用いた固液分離方法であって、
前記濾過体が、前記液体分流出筒の流入口を上側から覆う状態で、汚泥液面の上下変動に応じ前記貫通孔に沿って該液体分流出筒とともに昇降変位する間に、前記クラスタ処理剤で微小化された液体分は、汚泥液面から前記濾過体に吸液されて浸透・濾過され、前記液体分流出筒の前記流入口を通り前記流出口から流出する一方、汚泥中の固形分は、前記濾過体を通過せずに前記汚泥収容槽内に残留することにより、前記汚泥収容槽に収容された流動性の汚泥を液体分と固形分とに分離する固液分離処理工程と、
ウィンチ等の昇降機構により前記液体分流出筒を前記汚泥収容槽の底壁部よりも上昇させて前記流出口が露出する位置まで変位させ、前記汚泥収容槽内に残留する固形分を前記貫通孔から外部へ排出する固形分排出処理工程と、
を含むことを特徴とする固液分離方法。
【請求項11】
前記固液分離処理工程において、前記液体分流出筒の流出口から流出する液体分の少なくとも一部は、液体分循環径路を介して前記汚泥収容槽内に導入され、その汚泥収容槽内に残留する固形分を洗浄するために再使用される請求項10に記載の固液分離方法。
【請求項12】
前記固形分排出処理工程において、前記昇降機構により前記汚泥収容槽の底壁部のうち前記貫通孔を含む部分を前記液体分流出筒とともに上昇変位させて排出口を形成させ、その排出口から前記汚泥収容槽内に堆積・残留する固形分を外部へ排出する請求項10に記載の固液分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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