説明

固相抽出による電解質浴の分析を伴う電気的析出方法

電解質浴から金属層を電気的に析出する方法であって、該電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度を下記の工程を行うことによりモニターする前記方法に関する:(a)電解質浴から試料を採取する工程;(b)該試料を、固相吸着材料を充填した固相抽出カラムに供給する工程;(c)次いで、該カラムを、少なくとも該2種の成分は該カラム上に残存するが不要の成分は該カラムから溶出する第一の溶出媒を用いる洗浄手順に供する工程;(d)第二の溶出手段により該カラムから該少なくとも2種の成分を溶出させる工程;(e)前記工程(d)で得られた溶出液中の該少なくとも2種の成分の濃度を、各成分を分離することなく定量する工程。本方法において、ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)を固相抽出へ使用することが特に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質浴から金属層を電気的に析出する方法であって、該電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度を固相抽出のためのカラム手段によってモニターする前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電解質浴からの金属層の電気的析出については、種々の工業的応用が見い出されている。電解質浴には、一般に、析出する金属または複数の金属のほか、析出方法の遂行に必要な、および析出金属層の品質を向上するための、さらなる成分が含有されている。これらの物質は有機化合物である。かかる化合物の例としては、粒子微細化剤、湿潤剤、光沢剤、錯化剤および抑制剤(inhibitor)が挙げられる。一般にこれらの成分は、析出方法が実施された場合に、より速くまたはより遅く消費され、破壊され、あるいはエントレインメントによって浴から除去される。従って、これらの成分の濃度は、時間の経過とともに、より速くまたはより遅く減少する。より長い時間にわたって析出方法の理想的な実施を可能とするために、電解質浴中の1種または2種以上の成分の濃度をモニターし、必要なときに追加の成分を浴に加えることによって該成分の消費または破壊された量を補充することが必要である。
【0003】
電解質浴中の成分濃度のモニタリングには、該成分の電解質浴中における濃度を一定時間ごとに定量することが必要である。今まではこのことを、電解質浴から単一の試料を手作業でサンプリングし、次いで該試料を、任意的に濃縮および精製した後に、化学的および/または物理的に分析することにより行っていた。そのため、添加剤を分離し、精製し、そして濃度を定量する分析工程は、それぞれ独立して行われている。さらに、この目的のために余計な時間がかかってコストの増加を来たし、評価のための結果は有意の時間が経過した後にしか得られない。プロセス保障の向上を確実とし、電解質中の添加剤の濃度もしくは濃度比が変化し、または分解生成物の濃度が増大した場合に迅速に介入することを可能とするとの目的は、達成できるとしてもごく限られた範囲でしか達成できていない。生産現場、および従ってサンプリング現場では、多くの場合、それぞれの浴分析を迅速に遂行する可能性がないのである。このように、プロセス制御および彼の製品の品質にとって極めて重要な分析の実行については、彼が適切な分析装備および適格な人員への投資を望まないならば、製造現場の作業員が、第三者の補助およびタイムスケジュールに定期的に頼ることが必要となる。
【0004】
従来技術の概要
固相抽出(SPE)は、試料を濃縮し、精製するために、最も広く用いられている方法である。すなわち、近年の液体クロマトグラフィー分野における試料調製のための方法である。これは、特に薬学領域における活性本体の分析および環境技術の水性分析において定量すべき物質を濃縮するために適用されている。
この目的のために、抽出される成分は、特定の吸着剤上に濃縮され、次いで溶媒とともに溶出する。この目的のために使用されるカートリッジは、任意的に減圧とされる。
固相抽出は、より少ない溶媒量で行うことができ、それによって高い分析物濃度をより短い時間で実現することができる点で、液−液抽出(LLE)に対して極めて有利である。さらに、吸着剤および溶出媒の選択によってより広い極性範囲および溶液中の所望の成分の理想的な抽出が可能となるため、LLEと比べて分離はより完全である。
かかる技術の現状によると、関心のある物質を実際に分離および定量する前に、上述の試料の濃縮および精製が各別の工程として実施されている。この分離および定量は、よく(HPLC、UPLCの如き)液体クロマトグラフィーに引き続いて行われている。すなわち、試料の調製と実際の定量とは、数次の工程として行われているのである。
【0005】
D’Urzoら(Journal of the Electrochemical Society, 152, 2005, p.C243およびp.C697)には、酸性の銅浴中の有機添加剤2種類を固相抽出およびHPLC分析手段によってモニタリングする、下記の工程からなる方法が記載されている:
(a)銅層を析出するための浴の試料の採取工程、
(b)スチレン/ジビニルベンゼンカラム材料を用いて一段階で行う、定量すべき2種類の添加剤の固相抽出工程、
(c)HPLC手段による上記2種類の添加剤の分離工程、および
(d)UV分光手段による上記添加剤の定量分析工程。
【0006】
Johnsonら(Metal Finishing, October 1985, p.49)には、下記による酸性のスズ浴に使用される3種の有機成分の定量が記載されている。
(a)試料の採取工程、
(b)固相抽出工程、
(c)HPLC分離工程、および
(d)UV検出工程。
有機化合物定の定量分析に先行してこれらを分離するために精密なHPLC工程を使用することは、不利益な方法である。
電気析出プロセスを擬似連続的にモニタリングすることは、プロセスおよび/または浴の状態の変化が、従来の手動分析および自動的な方法によって記録しうる状態よりも急激であった場合に有益であろう。この方法は、特に、狭い濃度範囲、小さな浴容量および高いスループット(高い析出速度、長い継続時間および物質のエントレインメントが大きい場合)を有するプロセスに適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある目的は、電解質浴から金属層を電気的に析出する方法であって、電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度を簡単な手段によってモニターしうる方法を提供することである。特に、少なくとも2種の成分の濃度の定量を、少量の溶媒を使用することにより短時間で行うことを可能とすることである。その結果、少なくとも2種の成分の濃度の擬似連続的なモニタリングを可能とすることである。さらに、より多くの成分の濃度をほぼ同時にモニターすることを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、電解質浴から金属層を電気的に析出する方法であって、該電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度を下記の工程を行うことによりモニターする前記方法によって解決される:(a)電解質浴から試料を採取する工程;(b)該試料を、固相吸着材料を充填した固相抽出カラムにアプライする工程;(c)次いで、該カラムを、該少なくとも2種の成分は該カラム上に残存するが不要の成分は該カラムから溶出する第一の溶出媒を用いる洗浄手順に供する工程;(d)第二の溶出手段により該カラムから該少なくとも2種の成分を溶出させる工程;(e)前記工程(d)で得られた溶出液中の該少なくとも2種の成分の濃度を、各成分を分離することなく定量する工程。
【0009】
本発明は、定量すべき成分(特に有機添加剤)の自動擬似連続的固相抽出およびこれに引き続いて各成分を予め分離することを要せずに濃度を直接に定量する方法を初めて提供するものである。
成分濃度の直接定量は、分光分析手段、特にUV検出、または電気化学的検出手段、特にポーラログラフィーまたは屈折率分析、により行うことができる。
本発明は、特にスズ、スズ/鉛、銅およびニッケル電解質ならびに貴金属電解質、特にパラジウムおよび金電解質、の添加剤の分析を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方法のある実施態様に従った試料のアプライ、固相抽出カラムの洗浄および溶出工程の概念図である。
【図2】本発明の方法の別の実施態様に従った試料のアプライ、固相抽出カラムの洗浄および溶出工程の概念図である。
【図3】本発明の方法の別の実施態様に従った試料のアプライ、固相抽出カラムの洗浄および溶出工程の概念図である。
【図4】試料または洗浄溶液をカラム上の順方向に通過させる制御バルブならびに任意的に収集および混合用容器を有する、本発明の方法に従った分析システムの概念図である。
【図5】溶出液をカラム上の逆方向に通過させる制御バルブならびに任意的に収集および混合用容器を有する、本発明の方法による分析システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電解質浴から金属層を電気的に析出するための方法を提供する。析出する金属は特に限定されない。金属としては、特にスズ、スズ/鉛、亜鉛、銅、ニッケル、およびパラジウムもしくは金の如き貴金属、またはこれらの組み合わせもしくはこれらと他の金属との組み合わせを挙げることができる。
本発明の方法は、電解質浴中の少なくとも2種の成分のモニタリングを可能とする。これらの成分は、好ましくは電解質浴の有機成分である。特に、フラボン、カルコン、マルトール、ナフトールおよびUV活性を有するイオン性または非イオン性界面活性剤が、その濃度をモニターしうる成分の例である。粒子微細化剤も濃度をモニターしうる成分であることがある。粒子微細化剤としては、特に、例えばスズ層の電気的析出のための電解質浴に用いられるモリンであることができる。かかる成分としては、さらに、スズ層の析出のための電解質浴に使用される通常の添加剤であることができる。
その濃度をモニターすべき成分は、特に非極性物質である。
【0012】
すでに述べたように、その濃度をモニターすべき成分は、UV活性を有するイオン性または非イオン性の界面活性剤であることができる。200〜800nmの範囲の波長を吸収する発色性基を有する非イオン性界面活性剤が好ましい。例えばエトキシ化アルキルフェノール誘導体、エトキシ化ビスフェノールの如きエトキシ化芳香族化合物およびエトキシ化縮合芳香族化合物がさらに好ましい。
【0013】
本発明の方法では、電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度をモニターすることができる。ここで、サンプリング工程、固相抽出、洗浄手順およびモニターすべき成分の溶出が、好ましくは同時にまたは並行して行われる。成分の濃度の定量は、各成分を分離することなく行われる。しかし、特定成分の濃度の定量は同時に行う必要はなく、通常はその後に行われる。しかしながら、該特定成分の濃度の定量は、一つの測定サイクル中で行われることが好ましい。
その後に分析工程において成分の定量を行う場合には、モニターすべき各成分について、当該成分の濃度および採用する検出方法の感度に応じて、相異なる試料容量を採用することができる。
【0014】
本発明の方法は、特に電解質浴中における濃度および/または吸光係数εが互いに大きく異なり、ならびに従って、従来の方法によっては同時に定量することができなかった複数成分のモニタリングを可能とする。
【0015】
本発明の方法において、先ず電解質浴から試料が採取される。このことは、特に電解質浴の一部である小容量をポンプで汲み出すことによって行うことができる。
次いで、試料は、固相吸着材料を充填した固相抽出カラムへ供給される。この固相抽出材は、分離される物質の溶解性、極性、親水性および親油性に応じて選択される。抽出材の高分子骨格は、ジビニルベンゼンとN−ビニルピロリドンとの共重合体または架橋ポリスチレン(スチレンとジビニルベンゼンとの共重合により得られる)が好ましい。吸着材料は、シリカ(シリカゲル)からなっていてもよい。
特にジビニルベンゼンとN−ビニルピロリドンとの共重合体(すなわちポリ(ジビニルベンゼン)−co−N−ビニルピロリドン)の場合に、定量する成分の電解質浴の水性マトリクスからの分離効果が極めて良好であった。さらに、この共重合体は、親水性および親油性の保持特性の双方について、極めて識別的であり、従って、分析物の抽出のために、水性、極性および非極性溶媒の使用が可能である。このように、極めて広範囲の適用が網羅される。
【0016】
吸着材料の例として使用されるポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の平均細孔直径は好ましくは約82Åであり、比表面積は好ましくは約831m/gであり、細孔容積は好ましくは約1.4cm/gであり、平均粒子直径は好ましくは約31.4μmであり、そして微細粒子(<10μm)の含有割合は好ましくは約0.1%である。これらの特性を有するポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)は市販されている(例えばWaters Corporationから)。
ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)を電気的堆積の分野に適用した例は、今までに見られない。
【0017】
さらなる好適なカラム材料は、シリカベースのもの、特にRP18(親油性)である。RP18とは、側鎖に炭素数18を有する「逆相」の意味である。この名称は、液体クロマトグラフィーの特定の固定相に使用されている。RP相の場合には、極性の関係が通常の相と比べて逆転している。シリカゲル骨格または重合体に非極性の側鎖が結合している。一般に、シリカベースのカラム材料は、8〜18の炭素数が適用される。
カラムのインレット開口部の近傍には、モニターすべき成分が高濃度で固相抽出される。
【0018】
次いで、該カラムを、該少なくとも2種の成分は該カラム上に残存するが不要の成分は該カラムから溶出する第一の溶出媒を用いる洗浄手順に供する。この目的のための第一の溶出媒としては、特に以下のものを用いることができる:水、希酸、メタンスルホン酸、酢酸塩、炭酸塩、塩基もしくはその混合物、アルコールと硫酸との混合物またはアルコールと水との混合物。これらの溶出媒は、分離される物質の溶解性、極性、親水性および親油性に応じて選択される。
【0019】
この洗浄手順は、さらに、水性マトリクスを有するカラムを通過することのできない不純物および大粒子を洗い出しまたはろ別することにも資する。さもなければこのような粒子が次の溶出工程において測定チャンバーに到達し、測定チャンバーにおける測定に悪影響を及ぼすことがある。
【0020】
次いで、第二の溶出手段により該カラムから該少なくとも2種の成分を溶出させる。第二の溶出媒としては、特に以下のものを用いることができる:水、メタノール、水とメタノールとの混合物、アルカン、塩化メチル、アルコール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルまたはこれらの混合物。上記溶出媒は、分離される物質の溶解性、極性、親水性および親油性に応じて選択される。
第二の溶出媒は、第一の溶出媒よりも極性の低いものであることが好ましい。第二の溶出媒は、特にその極性がモニターすべき2種の成分をカラムから溶出するのに十分であるように選択される。
【0021】
第一の溶出媒および第二の溶出媒は、先に電解質浴の試料を供給したのと同じ方向からカラムに供給することができる(図1参照)。この方向を、以下、「順」方向という。
あるいは、第一の溶出媒および/または第二の溶出媒は、反対の方向からカラムに供給することができる(図2および3参照)。この方向を、以下、「逆」方向という。
【0022】
溶出方向の逆転は、図4および5に示した制御バルブ手段による単純な方法で実現することができる。該バルブを流れ方向に適合するように合わせる。この態様の方法が好ましい。この態様では特に、溶出液の濃度が高すぎる場合に、これを測定前に希釈するための収集および混合用容器を備えることができる。
溶出方向を逆転することにより、溶出中の流れ方向を維持した場合におけるカラム中の長距離の移送を回避することができる。これにより、モニターすべき成分または不要の成分の排出経路が短縮され、分析時間が大幅に短縮される。さらにこのことにより、測定値の再現性が顕著に向上する。
【0023】
最後に、第二の溶出媒を用いた溶出により得られた溶出液中の、モニターすべき少なくとも2種の成分の濃度を定量する。溶出液中の濃度から、電解質溶液中の成分濃度を計算することができる(溶出液の容量および最初にアプライした試料の容量に基づいて)。
濃度の定量は、分光的に行うことができる。この場合、第二の溶出媒を使用した溶出により得られた溶出液は、好ましくはUV光を外側光源から流れに対して直角方向に照射し、光度計により検出し、そしてコンピュータープログラムを介して記録するための測定セルに供給される。該少なくとも2種の成分は、この目的のためにそれぞれ分離する必要はない。異なる波長の光を使用して、各成分を分離することなく異なる複数の成分の濃度をそれぞれに定量することも可能である。特定の複数成分の濃度測定を連続的に行うことができる。特定の複数成分の濃度の定量を、異なる装置中で異なる試料容量により行うことができる。しかしながら、本発明の方法においては、モニターすべき少なくとも2種の成分を、その濃度定量に先んじて公知の方法、好ましくはクロマトグラフィー手段、により分離することを要しない。
そうではなくて、本発明の方法においては、少なくとも2種の成分の物理的パラメータが各成分を分離せずに定量を行いうるほどに相異なる物理的測定方法が選択されるのである。
【0024】
この目的のために特に適当な物理的測定方法は、以下を包含する:
−2種の成分が、吸光係数εにおいて互いに異なる場合の分光分析、
−2種の成分が、支持電解質中の減極剤(分析物)のタイプを示す固有パラメータである半波電位において互いに異なる場合のポーラログラフィー、
−2種の成分が、屈折率ηにおいてい互いに異なる場合の屈折率分析
濃度を定量するさらなる好ましい測定方法は、電量分析、電圧電流分析の如き電気分析的方法を包含する。さらに質量分析法が濃度の定量に好適である。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、カラムは、電解質浴の試料を供給する前に状態調整処理に供される。状態調整のための手段としては、特に以下を適用することができる:メタノールまたは酸含有溶液。
酸含有の状態調整溶液の使用は、溶解困難な物質を沈殿させ、および従って、カラムの閉塞を避けるために特に有利である。状態調整ないし活性化の後、電解質浴の試料を供給する前に、カラムを水により平衡化する。
【0026】
本発明の方法において、電解質浴中の少なくとも2種の成分を擬似連続的にモニターする。ここで「擬似連続的」との用語は、濃度の定量が比較的短い時間間隔で規則的に繰り返して行われることを意味するものとして使用される。時間間隔は、例えば10時間、5時間、2時間、1時間、30分、10分または1分であることができる。電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度をモニターする本発明の方法は、好ましくは自動的に行うことができる。ここで「自動的」との用語は、本方法の全部の工程が手動による介入なしに行われることを意味するものとして使用される。
【0027】
本発明の方法の好ましい実施態様において、少なくとも2種の成分のモニタリングは、析出方法を実施する時間のすべてにおいてモニターしている成分をほぼ一定の濃度に維持するための要求に応じて消費ないし分解した成分の追加分を電解質浴に供給する添加システムの制御と結合される。理想的な場合には、その濃度が減少したすべての構成成分が適当な添加システムによって補充され、濃度が増大した構成成分がこれに対応する再生手段によって除去されるような定常状態に達する。
【0028】
本発明の方法は、後に試料を濃縮して最後に濃度の定量を伴う手動のサンプリング方法およびモニターする成分の分離を伴う公知の方法に換わる、容易に操作することができて且つ費用効率の高い代替手段を提供するものである。本発明のモニタリングにより、費用効率、品質、ならびに製造を実施する際の品質保証およびトラブルシュートのための予防措置が明らかに向上する。
本発明は、電気的析出分野における電解質浴中の少なくとも2種の成分についての、効率が高く、費用効率が高く、操作が容易であり、且つ再現性の高いモニタリングを初めて可能にするものである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について非限定的な実施例によりさらに説明する。
スズ層を析出するための電解質浴(Atotech Deutschland GmbH製、StannoPure HSM)中の下記成分:
1. 粒子微細化剤(モリン)
2. 添加剤(重合体、非イオン性界面活性剤としてのエトキシ化ビスフェノール)
の濃度をモニターした。
上記目的のための固相抽出用として、Oasis HLB−Plusカラム(Waters Corporation製、カラムサイズ:4.6×21mm、粒子直径:25μm)を使用した。
【0030】
粒子微細化剤濃度のモニターには、以下の工程を実施した。
1. メタノール2.5mLによるカラムの状態調整
2. VE水(完全脱イオン水)2.5mL/3.25mL/LのMSA(70%メタンスルホン酸)による平衡化
3. 試料のアプライ(試料容積:1.0mL)
4. VE水5mL/3.25mL/LのMSA(70%)による洗浄
5. メタノール1.0mLによる溶出
6. 416〜550nmにおける分光分析
【0031】
添加剤濃度のモニターには、以下の工程を実施した。
1. メタノール2.5mLによるカラムの状態調整
2. VE水2.5mL/3.25mL/LのMSA(70%)による平衡化
3. 試料のアプライ(試料容積:0.05mL)
4. VE水5mL/3.25mL/LのMSA(70%)による洗浄
5. メタノール10mLによる溶出、溶出液9mLの廃棄およびメタノール2mLの追加
6. 226nmにおける分光分析

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質浴から金属層を電気的に析出する方法であって、該電解質浴中の少なくとも2種の成分の濃度を下記の工程を行うことによりモニターする前記方法:
(a)電解質浴から試料を採取する工程;
(b)該試料を、固相吸着材料を充填した固相抽出カラムに供給する工程;
(c)次いで、該カラムを、該少なくとも2種の成分は該カラム上に残存するが不要の成分は該カラムから溶出する第一の溶出媒を用いる洗浄手順に供する工程;
(d)第二の溶出手段により該カラムから該少なくとも2種の成分を溶出させる工程;および
(e)前記工程(d)で得られた溶出液中の該少なくとも2種の成分の濃度を、各成分を分離することなく定量する工程。
【請求項2】
金属がスズ、亜鉛、銅、ニッケルまたは貴金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
貴金属がパラジウムまたは金である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
モニターする成分がフラボン、カルコン、マルトール、ナフトールまたはUV活性を有する非イオン性界面活性剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
モニターする成分が粒子微細化剤または添加剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子微細化剤がモリンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
固相吸着材料がジビニルベンゼンとN−ビニルピロリドンとの共重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第一に溶出媒が水、希酸、アルコールと硫酸との混合物またはアルコールと水との混合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第二の溶出媒が水、メタノール、水とメタノールとの混合物またはアセトニトリルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)におけるカラムへの第一の溶出媒の供給が、工程(b)において試料を供給したのと同じ方向から行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)におけるカラムへの第一の溶出媒の供給が、工程(b)において試料を供給したのと反対の方向から行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)におけるカラムへの第二の溶出媒の供給が、工程(b)において試料を供給したのと同じ方向から行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)におけるカラムへの第二の溶出媒の供給が、工程(b)において試料を供給したのと反対の方向から行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)における濃度の定量が、分光分析、ポーラログラフィー、屈折率分析によるものである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)〜(e)の一連の工程を1分〜10時間の規則的間隔で繰り返す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2種の成分の濃度のモニタリングが、濃度の定量結果に応じて該成分または該複数成分の対応する追加分を電解質浴に供給する添加システムと結合されて行われる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)の前に、メタノールまたは酸含有溶液によるカラムの状態調整処理およびこれに引き続いて水によるカラムの平衡化を行う、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポリ(ジビニルベンゼン−co−N−ビニルピロリドン)の、電解質浴中の成分の固相抽出への使用。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−512504(P2010−512504A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539668(P2009−539668)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010753
【国際公開番号】WO2008/071371
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH