説明

園芸用ハウスの換気装置および換気制御方法

【課題】 駆動電力源として太陽電池による独立系電源装置を用いて安定した換気制御が行えるようにした園芸用ハウスの換気装置および換気制御方法を提供する。
【解決手段】 開口部13の開閉動作により園芸用ハウス20内を適正温度に調整する換気装置であって、太陽電池2と、太陽電池2の発電エネルギーを充電する蓄電池3と、園芸用ハウス20内の温度を検知する温度センサー4と、蓄電池3の蓄積エネルギーを駆動電力として開口部13の開閉動作を行うモーターM1、M2と、温度センサー4の感知温度に基づき、モーターM1、M2の駆動を制御する制御部1とを備えている。換気動作を行う時は、装備された複数のモーターM1、M2を同時に駆動せず、一台ずつ順次単独に駆動するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電をエネルギー源とした園芸用ハウスの換気装置および換気制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、温室やビニールハウス等の園芸用ハウスにおいて、天窓や側窓等の開口部(換気窓)をモーターにより開閉制御することにより、無人にてハウス内温度を常に植物(作物)育成の適温に調整・管理する自動換気装置が知られている。園芸用ハウスの側面における一般的な自動換気装置としては、園芸用ハウスの屋根側、または肩部から垂設したフィルムの下端をハウスの両サイドに取り付けたモーターの回転軸に連結した巻き取り軸に巻き付け、地上側から上方に向けてフィルムを巻き上げることにより、ハウスの側面に長手方向に沿った換気用の開口部を形成するものが知られている。
【0003】
このような自動換気装置として、例えば、特許文献1が開示されているが、この特許文献1を始め、従来公知の自動換気装置としては、ハウス内に温度センサーを設置し、この温度センサーの感知温度が作物の育成に好まし設定温度を越えた場合に換気窓を全開してハウス内の換気を行うと共に、ハウス内温度が設定温度以下に低下した場合は換気窓を全閉してハウス内の換気を遮断するという換気方式を採る構造が多かった。
【0004】
ところが、このように換気窓の全開動作と全閉動作を繰り返す換気方式は、以下のような問題点を有していた。
すなわち、ハウス内温度が僅かでも設定温度を越えると換気窓を全開するため、冷たい外気が大量にハウス内に流入し、特に外気温度が低い時はハウス内を急冷するため短時間で再び換気窓が全閉することになり、その結果、設定温度を基準にハウス内温度は大きく変動し、曳いては、このような急激な環境変化が作物の育成にも悪影響を与えてしまうという問題である。
加えて、この換気方式は、上述のように換気窓の開閉動作幅が大きい大掛かりな開閉動作を頻繁に繰り返すことから、この大負荷変動に対応できる大出力の交流モーターが必要なこともあり、通常は駆動電力として商用電源が用いられているが、これに関連して、停電に対処するための駆動用補助電源の確保、補助電源装置を設置することによる装置の大規模化や維持費の増大、或いは、商用電源施設の無い地域での当換気装置の設置の問題等、様々な問題を抱えている。
【特許文献1】特開平5−308858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み成されたもので、駆動電力源として太陽電池による独立系電源装置を用いて安定した換気制御が行えるようにした園芸用ハウスの換気装置および換気制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、開口部の開閉動作により園芸用ハウス内を適正温度に調整する換気装置であって、太陽電池と、太陽電池の発電エネルギーを充電する蓄電池と、前記園芸用ハウス内の温度を検知する温度センサーと、前記蓄電池の蓄積エネルギーを駆動電力として前記開口部の開閉動作を行うモーターと、前記温度センサーの感知温度に基づき、前記モーターの駆動を制御する制御部とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の換気装置において、前記制御部は、また、前記発電エネルギーの蓄電池への充電制御と負荷への放電制御を行うことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の換気装置による換気制御方法であって、前記温度センサーの感知温度が所定値を超えた時は、前記開口部を開方向に動作させると共に、前記温度センサーの感知温度が所定値以下の時は、前記開口部を閉方向に動作させるように前記モーターを駆動することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の換気制御方法において、前記モーターが複数台装備される場合は、各モーターを一台ずつ順次単独に駆動することを特徴としている。
【0010】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項3または請求項4の何れかに記載の換気制御方法において、前記モーターによる開口部の開動作および閉動作を、それぞれ多段階に分割して行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の換気装置によれば、電源設備として太陽電池と蓄電池とで成る独立系電源装置を装備することにより、商用電源設備のない無電源地域においても使用可能な園芸用ハウスの換気装置を提供することができる。
また、制御装置については、ハウス内の換気制御と独立系電源装置の制御(発電エネルギーの蓄電池への充電制御、および蓄電池からの放電制御)を一体的に行うものとして構成にすることにより、装置構成の単純化(コンパクト化)と部品削減による低コスト化を図ることができ、これにより、換気装置の電力消費を低減し、且つ、独立系電源装置の動作を安定化することができる。
【0012】
また、本発明の換気制御方法によれば、ハウス開口部の開閉動作のためにモーターを複数台装備している場合は、これらを並列駆動するのではなく、各モーターを順番に単独に駆動することにより、駆動電力源となる蓄電池に対する負荷が軽減されることになり、換気制御動作に伴う蓄電池電圧の降下を最小限に抑えることができ、モーターや制御部の動作の安定化を図ることができる。
また、ハウス開口部の開閉動作を行う際、開動作と閉動作をそれぞれ多段階に分割して行うことにより、すなわち、一換気動作での開口面積の調整幅を細かく設定することにより、換気制御の際のハウス内温度の変化幅を極力少なくしてハウス内温度を常に変動の少ない一定温度に保持することが可能となると共に、モーターの駆動動作そのものが最小限に抑えられて、電力消費が抑制されることから、独立電源装置の負担(負荷)が軽減され、安定した換気制御動作が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の換気装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る園芸用ハウスの換気装置の構成を示し、図2は当換気装置を装備した園芸用ハウスを示し、図3はモーター駆動による電源電圧の変動を示し、図4は本発明による換気制御方法を示し、図5は制御対象となる園芸用ハウスを示している。
【0014】
本実施形態による換気装置10は、図1に示すように、日射量に応じた発電量を出力する太陽電池2と、この太陽電池2の発電エネルギーを充電する蓄電池3と、園芸用ハウス20内の温度を検知する温度センサー4と、蓄電池3の蓄積エネルギーを駆動電力として園芸用ハウス20の開口部13(すなわち、換気窓)を開閉駆動する複数の直流モーターM1〜Mnと、これらモーターM1〜Mnの駆動制御に加え、発電エネルギーの蓄電池3への充電制御と負荷(モーターやその制御回路等)への放電制御を行う制御部1とで構成されている。
【0015】
本発明は、従来の商用電源に替わり、太陽電池2と蓄電池3により構成される独立系電源装置にて作動するように構成した換気装置10である。
【0016】
図2(a)に示すように、太陽電池2は園芸用ハウス20の外に立設した支柱11の上端に取り付けてあり、この太陽電池2からの発電エネルギーは電線12を経由してハウス内に設置された制御部1に供給されると共に、この制御部1を介して蓄電池3に充電されるようになっている。園芸用ハウス20の内部に温度センサー4が設置されており、その出力は制御部1に接続されている。
【0017】
また、図(b)に示すように、園芸用ハウス20の肩部(両肩部)から垂設したフィルム14の下端に巻上パイプ15を配すると共に、各巻上パイプ15の片端に直流モーターM1(M2)の回転軸を連結し、これらモーターの回転動作により、例えば、地上側から上方に向けて巻上パイプ15によりフィルム14を巻き上げて、その巻き端を上方に変位させていくことにより、園芸用ハウス20の側面に長手方向に沿った換気用の開口部13を形成するものである。
尚、上記モーターM1(M2)はそれぞれキャリッジ機構17に固定されていると共に、モーターによるフィルム14の巻き取り、巻き戻し動作に応じてこのキャリッジ機構17が園芸用ハウス20の一端側に垂直に突き立てたガイドバー16に沿って上下自在に移動する構造と成されている。
【0018】
これらモーターM1(M2)は制御部1に接続され、この制御部1を介して駆動制御されるものであり、太陽電池2や蓄電池3から供給される電力を駆動源としている。
【0019】
また、上述したように、制御部1は開口部13の開閉制御を行うことに加え、以下に示すような発電エネルギーの充放電制御機能を備えている。
すなわち、制御部1は、太陽電池2から蓄電池3への充電エネルギー経路を開閉するスイッチ回路6、および蓄電池3から各負荷(モーターM1〜Mn)への放電エネルギー経路を開閉するスイッチ回路7を備えており、制御部1は、蓄電池3の電圧を常時監視し、所定の上限電圧値を超えるとスイッチ回路6を切断して蓄電池3への充電を停止し、過充電による蓄電池3の損傷や破裂を防止すると共に、蓄電池電圧が所定の下限値以下に降下すると過放電を検知してスイッチ回路7を切断し、負荷への放電を停止するようになっている。
このように、 制御部1については、ハウス内の換気制御と伴に独立系電源装置の制御(発電エネルギーの蓄電池への充電制御や蓄電池からの放電制御)を一体的に行うものとして構成にすることにより、装置構成の単純化(コンパクト化)と部品削減による低コスト化を図ることができ、これにより、装置の電力消費を低減し、独立系電源装置の動作を安定化することができる。
【0020】
ところで、上記構成のような太陽電池2による独立系電源装置を電力源とする換気装置10においては、図3(a)に示すように、負荷であるモーターM1、M2の動作時に一時的に蓄電池3の電圧が降下する現象が起こる。この蓄電池電圧の降下はモーターの動作終了後に徐々に復帰し、数分から十数分程度で元の電圧レベルに復帰するが、特に、モーターを複数装備した換気装置10では(本図ではM1、M2の2個)、複数のモーターを同時に駆動すると電圧の降下が大きいために制御部1の制御動作が不安定な状態となり、曳いては、回路動作が停止して正常な換気動作が行えなくなることもある。
【0021】
そこで、本発明では、園芸用ハウス20に換気のためのモーターが複数台装備される場合は、図3(a)のように、複数のモーターを同時に駆動するのではなく、図3(b)に示すように、各モーターM1、M2を一台ずつ順次単独に駆動するようにして、モーター動作時に起こる蓄電池電圧の一時的な降下を最小限に抑えるようにした。これにより、駆動電力源となる蓄電池の負荷が軽減されることになり、換気制御動作に伴う蓄電池電圧の降下を最小限に抑えることができ、モーターや制御部の動作安定化を図ることができる。
【0022】
加えて、本実施形態では、モーターによる開口部13の開動作および閉動作(換気動作)を、それぞれ多段階に分割して間欠的に行うようにした。
すなわち、一回のモーター動作で成される開口面積の調整幅を細かく設定することにより、一回の換気動作によるハウス内温度の変化幅を極力少なくし、ハウス内温度を常に変動の少ない一定温度に保持することが可能となると共に、モーターの駆動動作そのものが最小限に抑えられ電力消費が抑制されることから、独立電源装置の負担(負荷)が軽減され、安定した蓄電池電圧の基で安定した換気制御動作が得られるようになる。また、このために必要な太陽電池2の発電容量を少なくすることもでき、装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0023】
以下、図4の制御フローチャートに基づいて、本発明の換気装置10による換気制御方法を説明する。本実施形態では、図5に示すように、2棟の園芸用ハウス20の換気制御を1台の換気装置10で行う場合を示し、且つ、これら園芸用ハウス20は、何れもハウス両側面に開口部13を設けた、図2に示したものと同様の構造を備えているものとする。尚、以下の換気制御は制御部1にて行われる。
【0024】
図4において、先ず、ステップ100で温度センサー4により、ハウス内の温度(T1)が測定される。ステップ101で、この温度センサー4の感知温度(T1)と予め設定された開動作設定温度(TO)が比較され、T1>TO、すなわち、ハウス内の温度が高く、換気の促進が必要である場合は、ステップ102にてモーターM1を駆動して開口部13を開方向に動作させ、ハウス内の換気が行われる。但し、この開動作は従来のように開口部13を一気に全開する動作ではなく、一回の換気動作は、全開時の開口部13の開口面積を数段階に細かく分割した狭い範囲の動作となる。
モーターM1による開動作終了後、順次ステップ103〜105が順次実行され、各ステップにおいてモーターM2〜M4による同様の開動作がそれぞれ単独で行われる。このような、モーターM1〜M4による一部開動作が終了すると、ステップ111のタイマ処理において、所定時間(例えば、5分程度)経過後、ステップ100において、再度、ハウス内の温度が測定される。
そして、センサ感知温度(T1)が開動作設定温度(TO)を下まわるまでステップ102〜105においてモーターM1〜M4による開動作(換気促進)が一定時間をおいて繰り返し行われ、2棟の園芸用ハウス20、20の換気促進が小規模に、且つ、段階的に行われていく。
【0025】
他方、ハウス内の換気が進み、ステップ106の判定において、ハウス内温度(T1)と予め設定された閉動作設定温度(TC)が比較され、T1≦TC、すなわち、ハウス内の温度が下がり過ぎて換気を抑制する必要が生じた場合は、先ず、ステップ107でモーターM1が換気促進時と逆の方向に駆動され、開口部13を閉方向に動作させてハウス内の換気の抑制が行われる。但し、この閉動作も、上述の開動作と同様に、開口部13の全開口面積を数段階に細かく分割した動作となる。
モーターM1による閉動作終了後、ステップ108〜110が順次実行され、モーターM2〜M4による同様の閉動作がそれぞれ単独で実行される。モーターM1〜M4による一部閉動作が終了すると、ステップ111のタイマ処理において、所定時間(例えば、5分程度)経過後、ステップ100において、再度ハウス内温度が測定される。
そして、センサ感知温度(T1)が閉動作設定温度(TC)以上に上昇するまでモーターM1〜M4による閉動作が一定時間間隔で段階的に繰り返し行われ、2棟の園芸用ハウス20、20における換気の抑制が小規模、且つ、段階的に行われる。
【0026】
このように、換気制御のための開口部13の開閉動作を各モーター1台ずつ単独で、且つ、多段階に分割して行うことにより、各モーターに対する換気動作の回数も時間当たりにおいて少なくすることができる。加えて、そのことにより、蓄電池3から各モーターへ供給される電力を節約することができ、太陽電池2を利用した独立系電源装置による換気装置10を安定的に動作させることができる。
【0027】
また、上記換気制御によってハウス内温度(T1)が開動作設定温度(TO)と閉動作設定温度(TC)の間に維持されている状態では、各モーターM1〜M4による開口部13の開閉動作は行われない。すなわち、開口部13は、ハウス内を植物(作物)育成の適温に維持する好適な開口面積に保持された状態となっており、この間、ステップ111による一定時間間隔でステップ100によるハウス内温度の測定が定期的に継続される。
【0028】
以上、本実施形態では、2棟の園芸用ハウス20の換気制御について述べたが、これに限定されるものではない。また、モーターとして直流モーターを用いたが、直流/交流変換器(図示せず)を通して交流電力にて動作する交流モーター等も勿論使用できる。
また、本実施形態では、太陽電池2を園芸用ハウス20の外に設置するようにしたが、この太陽電池2をハウス内に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る園芸用ハウスの換気装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の換気装置を装備した園芸用ハウスの説明図で、(a)は正面側を示し、(b)は側面側を示す。
【図3】モーター駆動による蓄電池電圧の変動を示す図で、(a)は複数のモーターを同時に駆動した場合を示し、(b)は複数のモーターを順次単独に駆動した場合を示す。
【図4】本発明の換気制御方法の制御フローを示す図。
【図5】図4の制御方法の制御対象となる園芸用ハウスの構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 制御部
2 太陽電池
3 蓄電池
4 温度センサー
5 開口部
10 換気装置
20 園芸用ハウス
M1・・Mn モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の開閉動作により園芸用ハウス内を適正温度に調整する換気装置であって、
太陽電池と、太陽電池の発電エネルギーを充電する蓄電池と、
前記園芸用ハウス内の温度を検知する温度センサーと、
前記蓄電池の蓄積エネルギーを駆動電力として前記開口部の開閉動作を行うモーターと、
前記温度センサーの感知温度に基づき、前記モーターの駆動を制御する制御部とを備えることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
前記制御部は、また、前記発電エネルギーの蓄電池への充電制御と負荷への放電制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れかに記載の換気装置による換気制御方法であって、前記温度センサーの感知温度が所定値を超えた時は、前記開口部を開方向に動作させると共に、前記温度センサーの感知温度が所定値以下の時は、前記開口部を閉方向に動作させるように前記モーターを駆動することを特徴とする換気制御方法。
【請求項4】
前記モーターが複数台装備される場合は、各モーターを一台ずつ順次単独に駆動することを特徴とする請求項3に記載の換気制御方法。
【請求項5】
前記モーターによる開口部の開動作および閉動作を、それぞれ多段階に分割して行うことを特徴とする請求項3または請求項4の何れかに記載の換気制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−296304(P2006−296304A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123176(P2005−123176)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】