説明

園芸鉢

【課題】 施肥機能を有する、樹脂系複合材料からなる園芸鉢の提供を目的とした。
【解決手段】樹脂25〜50重量%及び肥料成分を混合或いは含浸させた有機系充填剤50〜75重量%からなる複合材料を加熱成形することにより、施肥効果を有する園芸鉢を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に家庭用の観賞用植木、野菜栽培等に用いられる園芸鉢であり、家庭菜園、ガーディニング分野、ベランダ或いはインドアガーディニング分野に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭菜園やガーディニングにおいては、焼き物、素焼き、コンクリート、木製或いは樹脂製等各種園芸鉢が提供されている。
近年軽量で、製造し易いことを理由に各種樹脂製の園芸鉢が増加しており、環境保護の観点から廃プラスチックを利用したものも多くみられる。しかし、樹脂製の園芸鉢の多くは、形状を従来の鉢に合わせただけであり、素材としての特徴を強調したものはない。むしろ、樹脂は自然に分解し難く、ゴミとして残る、或いは廃プラスチックではその外観に問題が残る等の不都合が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1では、廃プラスチックの利用という観点から製品が製造されており、園芸鉢としての機能、外観にはあまり考慮が払われていない。特許文献2、特許文献3、特許文献4では、プラスチック材料の欠点を是正するため構造と組み合わせ素材に工夫があるが、本体のプラスチックそのものの特性を利用する点には何ら考慮を払われていない。
【特許文献1】特開2000−24620
【特許文献2】特開平10−56874
【特許文献3】特開2002−58349
【特許文献4】実用新案登録第3165724号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前記の現状を考慮し、プラスチック或いはプラスチック複合材料が有する他の材料或いは用途に合わせ適当な添加剤と組み合わせ用いることができるという利点を利用し、園芸鉢に新しい機能である施肥機能を付与することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、これまで廃棄物として捨てられていた間伐材、樹皮、竹材、麦芽粕、シルバースキン(コーヒーの捨て殻)等を粉砕、微粒子とし、これに肥料成分を混合或いは含浸させたものを樹脂に混入、成形することにより、前記課題を解決した。
即ち、廃棄物として処理されていた前記各種材料に肥料成分を混合或いは含浸させた後、樹脂に25〜50重量%対して50〜75重量%添加することにより、園芸鉢本体からの施肥を可能とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、有機系充填剤に主として窒素、リン、カリウムからなる肥料成分を混合或いは含浸させることにより、長期に渡り園芸鉢本体から土壌中に施肥可能という画期的な効果が認められた。この園芸鉢を使用して植物を栽培することにより、同条件下で植物の成長が大幅に促進できる。また同時に、施肥作業が省略されることとなり、特に家屋内の観賞用園芸鉢にとっては汚れのリスクを回避し、煩雑な操作を必要としないため極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】 本発明における園芸鉢の一実施例の側面概略説明図である。
【図2】 本発明における園芸鉢の一実施例の横断面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に本発明の実施例の1つの側面図を示す。なお、本発明は該実施例に限定されるものではない。
通常使用されている園芸鉢と類似の形状を選択でき、成形は、好ましくは射出成形による。充填剤には木粉、竹粉、麦芽粕、シルバースキン、お茶殻、紅茶殻、カカオ殻、梅干し種等の微粒子に塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、過リン酸石灰、熔成リン肥、塩化カリウム、硫酸カリウム等を混合或いは含浸させ、次いで樹脂と溶融混合する。樹脂は任意に選択可能であるが、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンが選択される。
成形は通常の条件に準じて実施できる。製品形状、製品寸法も特に制約はない。
基本的には、上部の開口部及び下部の水抜きの開口部が存在すればよく、これまでの園芸鉢と構造的に変わる所はない。
外観を重視する場合は、園芸鉢を二重構造とし、内側に複合材料層を、外側にプラスチック層を新たに設けることもできる。図2に本発明の実施例の1つの押断面図を示した。複合材層4をプラスチック層5が覆っている。この二重構造の成形体の成形は、二色成形が好ましい。
【実施例】
【実施例1】
【0009】
形状が図1に示す園芸鉢を選定し、ポリプロピレン100重量%で園芸鉢を成形した。これに赤玉土と腐葉土を7対3の割合で入れ、ケンタッキーグラスとレンゲを各5鉢ずつ3反復、播種した。播種は7月に行い、2カ月間、直射日光が当たらない日陰に設置し、適宜、潅水した。1ヶ月後及び2か月後に苗高を測定したところ夫々ケンタッキーグラスでは3.5cm、2.0cm、レンゲでは4.5cm、2.5cmであった。土壌を分析した結果、無機態窒素4.1mg/100g乾燥土、加給リン酸3.0mg/100g乾燥土、K20 13.9mg/100g乾燥土であった。結果を表1、表2に示す。
【実施例2】
【0010】
園芸鉢の材料がポリプロピレン30重量%、木粉100重量部に対し、硫酸アンモニウム5重量部、尿素5重量部、過リン酸石灰8重量部、塩化カリウム8重量部を混合した充填剤70重量%であること以外は、実施例1と同様に園芸鉢を成形し、同様の試験を実施した。苗高は夫々ケンタッキーグラスでは5.0cm、8.0cm、レンゲでは6.0cm、8.0cmであった。土壌を分析した結果、無機態窒素6.0mg/100g乾燥土、加給リン酸4.8mg/100g乾燥土、K20 35.0mg/100g乾燥土であった。結果を表1、表2に示す。
【実施例3】
【0011】
園芸鉢の材料がポリプロピレン30重量%、杉樹皮100重量部に対し、塩化アンモニウム5重量部、尿素5重量部、過リン酸石灰8重量部、硫酸カリウム8重量部を含浸させた充填剤70重量%であること以外は、実施例1と同様に園芸鉢を成形し、同様の試験を実施した。苗高は夫々ケンタッキーグラスでは6.1cm、7.5cm、レンゲでは4.5cm、6.0cmであった。土壌を分析した結果、無機態窒素7.0mg/100g乾燥土、加給リン酸4.0mg/100g乾燥土、K20 43.6mg/100g乾燥土であった。結果を表1、表2に示す。
【実施例4】
【0012】
園芸鉢の材料がポリプロピレン30重量%、山武杉木部70重量%であること以外は、実施例1と同様に園芸鉢を成形し、同様の試験を実施した。苗高は夫々ケンタッキーグラスでは3.5cm、2.0cm、レンゲでは4.5cm、2.5cmであった。土壌を分析した結果、無機態窒素3.7mg/100g乾燥土、加給リン酸3.1mg/100g乾燥土、K20 22.9mg/100g乾燥土であった。結果を表1、表2に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による園芸鉢は、例えば家庭菜園或いは観賞用鉢植えに応用することができる。施肥作業を省略できることは、特に屋内における観賞用鉢植えには煩雑な作業がない分有利である。軽量であるため、女性にも取り扱い易いことも大きな利点と言える。
【符号の説明】
【0016】
1. 園芸鉢上部開口部
2. 園芸鉢側面
3. 園芸鉢下部開口部
4. 二重構造の園芸鉢における複合材料層
5. 二重構造の園芸鉢におけるプラスチック外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂25〜50重量%及び肥料成分を含有する有機系充填剤50〜75重量%からなる複合材料を加熱成形して得る園芸鉢であって、有機系充填剤が木粉、竹粉、麦芽粕、シルバースキン(コーヒー皮粕)、コーヒー果実、茶葉、茶葉粕、紅茶粕、カカオ豆、カカオ豆粕、梅干し種から選択され、肥料成分が塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、過リン酸石灰、熔成リン肥、塩化カリウム、硫酸カリウムから選択される、植物成長養分が園芸鉢から土壌中に供給されることを特徴とする園芸鉢。
【請求項2】
第1項に記載の複合材料が内層に配置され、外層に他のプラスチック材料が配置された二重構造からなることを特徴とする園芸鉢。

【図1】
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【図2】
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