説明

土嚢及びそれに使用する土嚢袋

【課題】作業時の土嚢の重さを比較的軽くして作業性が良好であり、積み上げ施工後の吸水した土嚢個々の十分な重量を確保することができる土嚢を提供する。
【解決手段】土嚢(S)は通水性を有する土嚢袋(B)を備え、土嚢袋(B)の相対向する少なくとも二箇所には把持部(2)が設けられている。土嚢袋(B)内部には粒状充填物が充填されており、粒状充填物は所要の粒径を有するコンクリート破砕粒を含んでいる。土嚢袋(B)には相対向する二箇所に把持部材(2)が設けられている。土嚢袋(B)の閉塞部(1,1a)には、その一部を変形させることによって粒状充填物を充填する充填口が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土嚢及びそれに使用する土嚢袋に関するものである。更に詳しくは、一般砂を充填した従来の一般の土嚢と比較して軽量で作業性が良好であり、積み上げ施工後に吸水した土嚢の個々の十分な重量を確保することができるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば河川の決壊などによる災害を未然に防止するために、土嚢を壁状に積み上げて河岸の脆弱部の補強が行われる。土嚢は、麻布などの通水性を有する袋に一般砂や土を入れたものが一般に使用されている。このような従来のごく一般的な土嚢は、土嚢自体が非常に重い(一般砂の比重は2.5〜2.7である)ために、運搬作業や積み上げ作業における作業性が著しく悪い問題があった。さらに、土嚢の持ち方によっては、内部に充填されている砂や土が偏ってしまい、積み上げる際に偏りを均して平均化させる手間が余分にかかってしまう問題もあった。
【0003】
このような問題を解決し、保管性や作業性を向上させるものとして、例えば特許文献1記載の土嚢状物形成体がある。特許文献1に記載された土嚢状物形成体は、平面長方形状をなす麻布製の外袋内にポリアクリル酸ナトリウム系の高吸水性ポリマーの微粒子を収容密封水溶性ポリビニルアルコールフィルム製の袋状の包装体を収容し、外袋の開口部を縫合閉塞したものであり、土砂および土砂袋詰め作業なしに土嚢状物として使用できるとともに、自然環境下で漸次分解することができるというものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−279638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造の土嚢状物形成体は、保管性や作業性を向上させることは可能である。しかしながら、吸水性ポリマーに吸水させた場合の土嚢状物の比重は、90重量%以上が水であるために、ほぼ水の比重1に近似する。これでは、土嚢状物を使用する際に嵩は同じでも個々の重さが十分ではなく、軽すぎて、例えば大きな水圧がかかる河川の護岸などに使用すると流されやすく、使いにくいという問題があった。また、出水現場などで吸水性ポリマーに吸水させて土嚢状物とするには数分間を要するため、その間に流されてしまう心配もある。
【0006】
本願発明者は、上記課題を解決するために、土嚢に充填する充填物として様々なものを使用し試行を重ねた。その過程で、従来は産業廃棄物として埋め立てに使用するぐらいしか用途がなかったコンクリート塊に注目した。そして、コンクリート塊を破砕して粒状にしたところ、一般砂より比重が小さく、吸水率については一般砂よりすぐれていることが分かった。本発明は、このような知見に基づき完成したものである。
【0007】
そこで本発明の目的は、作業時の土嚢の重さを比較的軽くして作業性を良好にできるようにするとともに、積み上げ施工後の吸水したときの土嚢個々の十分な重量を確保することができるようにすることである。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、土嚢を作業者が運ぶ際に、内部の充填粒状物が偏りにくいようにして積み上げの際の偏りを均し平均化する作業を軽減または不要とし、作業性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
通水性を有する土嚢袋を備え、土嚢袋の少なくとも相対向する二箇所に把持部が設けられており、土嚢袋内部には粒状充填物が充填されており、粒状充填物は全部が所要の粒径を有するコンクリート破砕粒であるか、またはコンクリート破砕粒を含んでいる、土嚢である。
【0009】
本発明は、
本発明に係る土嚢に使用する土嚢袋であって、
土嚢袋の少なくとも相対向する二箇所に把持部が設けられている、土嚢袋である。
【0010】
本発明は、
本発明に係る土嚢に使用する土嚢袋であって、
土嚢袋の閉じ側の二箇所に閉じ側の端部を折り重ねた部分が形成され、該折り重ねた部分を縫製して開口部を有する袋状の把持部が形成されている、土嚢袋である。
【0011】
本発明は、
本発明に係る土嚢に使用する土嚢袋であって、
土嚢袋の少なくとも相対向する二箇所に穴が設けられており、穴の縁部に縫製による補強が施されて把持部が形成されている、土嚢袋である。
【0012】
本発明は、
本発明に係る土嚢に使用する土嚢袋であって、
土嚢袋の少なくとも相対向する二箇所に穴が設けられ、穴の縁部に縫製による補強が施されて把持部が形成されており、
把持部の近傍には、複数の穴が設けられ、穴の縁部に縫製による補強が施されて土嚢袋同士の連結のための通し部が形成されている、土嚢袋である。
【0013】
本発明に係る土嚢袋は、
土嚢袋の閉じ側の一部を変形させることによって形成可能であり、粒状充填物を土嚢袋内部に充填するための充填口を備えているのが好ましい。
【0014】
本発明に係る土嚢袋は、
土嚢袋の所要箇所に、土嚢袋内部に粒状充填物を充填するための充填口が設けられており、充填口を封止する封止体を備えているのが好ましい。
【0015】
土嚢袋に充填される粒状充填物は、全体がコンクリート破砕粒であってもよいし、他の一般砂や土などを主材として一部がコンクリート破砕粒であってもよい。なお、コンクリート破砕粒が粒状充填物全体に占める割合が多い方が、多孔性であり吸水率が高いというコンクリート破砕粒の特性をより顕著に現すことができるのはいうまでもない。
【0016】
把持部は、作業者が土嚢袋の内部に充填された粒状充填物が偏らないように、土嚢を両手で横にして持ちやすいようにするためのものであり、二箇所に限定されるものではない。
すなわち、三箇所または四箇所、さらには五箇所以上の複数箇所に設けることもできる。
【0017】
(作用)
本発明に係る土嚢の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0018】
土嚢(S)は、施工箇所に幅方向または長手方向に並べられ、必要に応じて、例えば連結具などを鳩目に通すなどして連結される。そして、土嚢(S)は必要な段数積み上げられて施工される。
土嚢袋(B)の把持部(2)は、相対向する少なくとも二箇所に設けられているので、土嚢(S)を運ぶ際に両手で各把持部(2)を掴めば、持ちやすいだけでなく、土嚢(S)を横にして水平に持つことができる。これにより、土嚢(S)の内部の充填粒状物(6)は偏りにくく、従来のような積み上げの際の充填物の偏りを均し平均化する作業が軽減され、または不要となり、作業性をより向上させることができる。
【0019】
土嚢(S)は、粒状充填物(6)として、多孔性物質であり比重が一般砂の比重と比較してやや小さいコンクリート破砕粒を使用しているので、粒状充填物(6)に吸水していない状態の土嚢(S)は、同じ容積の一般砂を充填した土嚢と比較して軽量であり、女性や子供でも取り扱いがしやすく、作業性にすぐれている。
【0020】
また、上記粒状充填物(6)は多孔性物質であるので、一般砂などと比較して吸水率は高い。したがって、土嚢(S)は、積み上げた後、吸水率の高い粒状充填物(6)に十分に吸水することによってさらに重くなり、一般砂を充填した土嚢が吸水した場合と同等またはそれ以上の重さになるので、大きな水圧がかかる河川の護岸などにも支障なく使用することができる。
【0021】
土嚢袋の閉じ側の二箇所に閉じ側の端部を折り重ねた部分が形成され、該折り重ねた部分を縫製して開口部を有する袋状の把持部が形成されている土嚢袋は、把持部が土嚢袋の素材そのもので形成されているので、例えば別体に形成された部材を装着する場合と比較して製造時の工程を簡略化することができ、製造コストも安価にすることができる。さらには、使用する素材の種類が少なくなることによって、土嚢袋を廃棄する際の分別が容易にできる。あるいは、単一の素材で形成することによって、分別する必要がなくなる。
【0022】
土嚢袋の少なくとも相対向する二箇所に穴が設けられており、穴の縁部に縫製による補強が施されて把持部が形成されている土嚢袋は、縫製する糸や紐を土嚢袋本体と同じ素材でつくることが可能になる。通し部を構成する穴の縁部を縫製により補強する場合も同様である。なお、縫製による補強としては、例えばかがり縫いによるものであるが、他の縫い方を採用することもできる。このようにすれば、前記と同様に例えば別体に形成された部材を装着する場合と比較して製造時の工程を簡略化することができ、製造コストも安価にすることができる。さらには、使用する素材の種類が少なくなることによって、土嚢袋を廃棄する際の分別が容易にできる。あるいは、単一の素材で形成することによって、分別する必要がなくなる。
【0023】
土嚢袋の所要箇所に、土嚢袋内部に粒状充填物を充填するための充填口が設けられており、充填口を封止する封止体を備えている土嚢袋は、まず、封止体を接着しない状態で充填口に充填管を差し込み、土嚢袋の内部に粒状充填物を適量充填する。そして、充填口を塞ぐように封止体を接着する。このように、比較的容易に粒状充填物の充填を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
(a)本発明に係る土嚢は、粒状充填物としてコンクリート破砕粒を使用しており、一般砂などと相違して多孔性物質であり、その比重は一般砂と比較してやや小さく吸水率は高い。したがって、粒状充填物に吸水していない状態の土嚢は、同じ容積の一般砂を充填した土嚢と比較して軽量であり、女性や子供でも取り扱いがしやすく、作業性にすぐれている。
【0025】
(b)土嚢は、積み上げた後、吸水率の高い粒状充填物に十分に吸水することによってさらに重くなり、一般砂を充填した土嚢が吸水した場合と同等またはそれ以上の重さになるので、大きな水圧がかかる河川の護岸などにも支障なく使用することができる。
【0026】
(c)土嚢袋の相対向する少なくとも二箇所に把持部が設けられているので、土嚢を運ぶ際に両手で各把持部を掴めば、持ちやすいだけでなく土嚢を横にして水平に持つことができる。これにより、土嚢の内部の充填粒状物は偏りにくく、従来のような積み上げの際の充填物の偏りを均し平均化する作業が軽減され、または不要となり、作業性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
図1は本発明に係る土嚢袋の平面視説明図、
図2は土嚢袋の底面視説明図、
図3は土嚢袋の正面視説明図、
図4は土嚢袋の図1におけるA−A断面図、
図5は土嚢袋に粒状充填物を充填する方法を示す説明図である。
【0029】
土嚢袋Bは、合成樹脂製の繊維でつくられた通水性シートで形成されている。通水性シートは、本実施の形態では、ポリプロピレン・1200デニール±10%、織布密度10×10本/インチのものを採用しているが、これに限定はされない。土嚢袋Bは、筒状に縫製したシートを所要長さに切断し、両切断部側を所要幅で折り曲げ、折り曲げた部分を縫製して閉塞し、平面視で長方形状とした構造を有している。
【0030】
土嚢袋Bの両側の閉塞部1、1aの中央部には、土嚢袋Bの二箇所に相対向して合成樹脂製の把持部材2が取り付けられている。把持部材2は、閉塞部1、1aに設けた穴を挟んで嵌着される一対の把持部構成体(符号省略)により構成されている。
【0031】
土嚢袋Bの両側の閉塞部1、1aの四隅部のうち、一方の閉塞部1の一隅部を除く三隅部には、鳩目3が取り付けられている。各鳩目3は、土嚢袋Bに粒状充填物を充填した土嚢S(後述、図6参照)を積み上げるときに、隣り合う土嚢S同士を連結するための連結具や紐などを通す通し部として使用されるものである。
【0032】
土嚢袋Bのうち、鳩目3が設けられていない一隅部には、一部縫製されていない部分が設けてあり、この部分が粒状充填物を充填する充填口4(後述、図5参照)となっている。充填口4は、図5に示すように通水性シートを変形させることによって充填する路として形成することができる。
【0033】
土嚢Sは、土嚢袋Bに粒状充填物を充填して形成される。土嚢袋Bに粒状充填物を充填する方法は次のとおりである。
まず、図5に示すように、鳩目3が設けられていない部分の通水性シートを変形させて形成した充填口4に充填装置(図示省略)の充填管5を差し込んで、粒状充填物6を適量充填する。粒状充填物6の充填量は、例えば土嚢袋Bが最大に膨らんだときの容量の90%であるが、適宜調節が可能であり、これに限定するものではない。本実施の形態では粒状充填物6の全量がコンクリート破砕粒である。
【0034】
粒状充填物6の充填が終了したら、充填口4から充填管5を抜き取り、通水性シートを変形させた部分をもとの折り曲げた形状に戻し、閉塞部1の一隅部に他の三隅部分と同じように鳩目3を取り付ける。これにより、充填口4を形成していた部分が閉じられ、この部分からの粒状充填物6の漏れ出しを防止することができる。
【0035】
なお、粒状充填物6は、コンクリートを使用した建物や道路などの構築物を解体した際に生じるコンクリート塊を破砕して粒状としたものである。粒状充填物6の粒径は特に限定するものではないが、土嚢袋Bから漏れ出すことがなく、充填管5を使用した充填作業にも支障がない程度、例えば1〜5mmである。また、このようにしてつくられた粒状充填物6は多孔性物質であり、比較的軽量であるが吸水性は高い。粒状充填物6の比重と吸水率の一例を一般砂と比較して表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
(考察)
表1から分かるとおり、粒状充填物6の比重は、一般砂と比較して9%程小さく、やや軽量である。また、粒状充填物6の吸水率は、一般砂と比較して、三倍以上ときわめて高い。つまり、粒状充填物6と一般砂を同じ重さで比較すれば、粒状充填物6は一般砂よりもより多くの水を吸収することができる。
なお、二枚の同じ土嚢袋に、それぞれ同じ容積の一般砂と粒状充填物6を充填して吸水させ、重さを比較したところ、吸水率にすぐれた粒状充填物6を充填した土嚢は、一般砂を充填した土嚢と比較して、約1.2倍の重さとなった。
【0038】
(作用)
図6は土嚢袋に粒状充填物を充填して形成した本発明に係る土嚢と、土嚢同士の連結構造を示す斜視説明図、
図7は土嚢の積み方を示す斜視説明図である。
図1ないし図7を参照して、本発明に係る土嚢Sの使用方法及び作用を説明する。
【0039】
土嚢Sは、図6、図7に示すように幅方向に並べて連結される。土嚢S同士の連結は、連結具7によって行われるが、他の連結手段(例えば紐など)を使用してもよい。
連結具7は柔軟性を有する合成樹脂製である。連結具7は、連結部70の両端に掛止部71、72を有するH形状であり、掛止部71、72をそれぞれ隣り合う土嚢Sの近接する鳩目3に掛止させて連結する。連結部70の長さは、土嚢Sを横に並べたときに、隣接する土嚢Sの鳩目3に届く長さに設定されている。また、掛止部71、72のそれぞれの長さは、直線状に伸びたときに鳩目3の穴の内径より長くなって鳩目3に掛止できる長さに設定されている。
【0040】
幅方向に並べて連結された土嚢Sは、各土嚢Sの幅方向の長さの二分の一ずつ横にずらして重ねるようにする。このようにして重ねると、各土嚢Sの間の低くなった部分に上部の土嚢Sが収まって位置するので、土嚢Sで構築される土嚢壁Wが安定し強固になる。
なお、土嚢Sは、上記のように幅方向に連結せずに長手方向に連結することもできる。
また、上下の土嚢Sをずらさないで重ねることもできる。
【0041】
なお、連結具7は、あらかじめ任意の鳩目3に取り付けておくこともできる。連結具7を取り付けておく鳩目3の位置は特に限定しないが、例えば土嚢Sの長手方向の一端側の二箇所、または幅方向の一端側の二箇所などである。
さらには、土嚢袋Bの表面に、土嚢Sの積み方の説明図を印刷して表しておくこともできる。これによると、土嚢を積む作業を経験したことがない作業者でも、正しく積み上げられた十分な強度の土嚢壁を構築することができる。
【0042】
土嚢Sは、粒状充填物6として、廃材である上記コンクリート塊を破砕して粒状としたもの(コンクリート破砕粒)を使用している。すなわち、コンクリート破砕粒は一般砂などと相違して多孔性物質であり、その比重は一般砂の比重2.5〜2.7と比較してやや小さいが吸水率は高い。したがって、粒状充填物6に吸水していない状態の土嚢Sは、同じ容積の一般砂を充填した土嚢と比較して軽量であり、高吸水性ポリマーを収容して吸水させた土嚢ほどではないが女性や子供でも取り扱いがしやすく、作業性にすぐれている。
【0043】
また、土嚢Sは、積み上げた後、吸水率の高い粒状充填物6に十分に吸水することによってさらに重くなり、一般砂を充填した土嚢が吸水した場合と同等またはそれ以上の重さになる(上記表1の考察参照)ので、大きな水圧がかかる河川の護岸などにも支障なく使用することができる。
【0044】
さらに、土嚢Sは、長手方向の両端部に相対向して把持部材2が設けられているので、土嚢Sを運ぶ際に両手で各把持部材2を掴めば、土嚢Sを横にして水平に持つことができる。これにより、土嚢Sの内部の充填粒状物6は偏りにくく、従来のような積み上げの際の充填物の偏りを均し平均化する作業が軽減され、または不要となり、作業性をより向上させることができる。
【0045】
図8は本発明に係る土嚢の他の実施形態を示す斜視図、
図9は図8に示す土嚢に使用する土嚢袋を示し、(a)は裏面側の把持部の要部斜視図、(b)は表面側の充填口と封止構造を示す説明図である。
【0046】
土嚢S1は、土嚢袋B1にコンクリート破砕粒等の粒状充填物6を適量充填して形成されている。土嚢袋B1は、前記土嚢袋Bと同様の素材で形成されている。
土嚢袋B1は、筒状に縫製したシートを所要長さに切断し、両切断部側を所要幅で二重に折り曲げ、折り曲げた部分を適宜縫製して閉塞し、平面視で長方形状とした構造を有している。
【0047】
図9(a)を参照する。
筒状に縫製したシートの両端側(両切断部側)は、裏面側(図8で下面側、図9(a)で上面側)に二重に、すなわち二回同じ幅に重ねて折り曲げられている。この折り曲げられた部分は、幅方向の両端側を縁部で四角形状に縫製し、さらにそれらの間(図9(a)で奥側縁)を縫製することにより、幅方向の中央部に所要幅で袋状となった把持部2aが形成されている。両把持部2aは、中央側に開いた開口部から指を入れ、引っ掛けることで把持部として使用できるものである。また、折り曲げられた部分の幅方向の両端側には、前記土嚢袋Bの鳩目3と同様の鳩目3がそれぞれ取り付けられている。
【0048】
図9(b)を参照する。
土嚢袋B1のシートが折り曲げられた部分より長手方向の中央側かつ幅方向の一端側には、幅方向に所要長さの切込を入れて、粒状充填物6を充填するための充填口4aが形成されている。充填口4aの形成は、熱溶断により行ってもよいし、切断により行ってもよい。なお、前者の場合では、充填口4a周囲の繊維や糸の解れが防止できる利点がある。
また、充填口4aは、粒状充填物6を充填したあとは、封止シール8を貼付することによって塞ぐことができる。封止シール8は、本実施の形態では一度貼付したら剥がれないようになっているが、これに限定せず、一度貼付したものを剥がすことができるタイプや貼付と剥離が繰り返しできるタイプを採用することもできる。
【0049】
土嚢S1と土嚢袋B1の作用については、前記把持部2aの使い方や充填口4aの封止の方法が異なるだけで、その他の作用は同様であるので、詳細な説明は省略する。
なお、土嚢袋B1の把持部2aは、前記土嚢袋Bの合成樹脂製の把持部材2とは違って、シートの素材そのもので形成されており、製造時の工程を簡略化し、製造コストを安価にできると共に廃棄する際の分別が容易にできる利点もある。
【0050】
図10は本発明に係る土嚢袋の他の実施形態を示す要部斜視図である。
土嚢袋B2は、筒状に縫製したシートを所要長さに切断し、両切断部側に合成樹脂製の補強板9を挟み込んで所要幅で折り曲げ、折り曲げた部分を縫製して閉塞し、平面視で長方形状とした構造を有している。
【0051】
シートを折り曲げた部分の中央部は補強板9ごと長円状に打ち抜かれ、その縁部を全周にわたりシートと同じ素材の紐でかがり縫いをして縁部に補強部20を設けることにより、把持部2bが形成されている。また、前記土嚢袋B1の鳩目3と同様の箇所には、長円状を小孔状としたことを除き、把持部2bと同様に小孔の縁部にかがり縫いをして通し部である通し孔3bが形成されている。通し孔3bは鳩目3と同様に使用される。また、土嚢袋B2は、前記土嚢袋B1と同様の充填口4a及び封止シール8を備えている。
【0052】
土嚢袋B2の作用については、前記土嚢袋Bの作用と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、土嚢袋B2の把持部2b及び通し孔3bは、前記土嚢袋Bの合成樹脂製の把持部材2や鳩目3とは違って、シートの素材そのもので形成されており、製造時の工程を簡略化し、製造コストを安価にできる利点がある。また、例えばシートを幾重にも折り曲げて補強板9を使用しない構造とすれば、さらに廃棄する際の分別が容易にできる利点もある。
【0053】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る土嚢袋の平面視説明図。
【図2】土嚢袋の底面視説明図。
【図3】土嚢袋の正面視説明図。
【図4】土嚢袋の図1におけるA−A断面図。
【図5】土嚢袋に粒状充填物を充填する方法を示す説明図。
【図6】土嚢袋に粒状充填物を充填して形成した本発明に係る土嚢と、土嚢同士の連結構造を示す斜視説明図。
【図7】土嚢の積み方を示す斜視説明図。
【図8】本発明に係る土嚢の他の実施形態を示す斜視図。
【図9】図8に示す土嚢に使用する土嚢袋を示し、(a)は裏面側の把持部の要部斜視図、(b)は表面側の充填口と封止構造を示す説明図。
【図10】本発明に係る土嚢袋の他の実施形態を示す要部斜視図。
【符号の説明】
【0055】
S 土嚢
B 土嚢袋
1、1a 閉塞部
2 把持部材
3 鳩目
4 充填口
5 充填管
6 粒状充填物
7 連結具
W 土嚢壁
S1 土嚢
B1 土嚢袋
2a 把持部
4a 充填口
8 封止シール
B2 土嚢袋
2b 把持部
20 補強部
3b 通し孔
9 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性を有する土嚢袋(B)を備え、
土嚢袋(B)の少なくとも相対向する二箇所に把持部(2,2a,2b)が設けられており、
土嚢袋(B)内部には粒状充填物(6)が充填されており、粒状充填物(6)は全部が所要の粒径を有するコンクリート破砕粒であるか、またはコンクリート破砕粒を含んでいる、
土嚢。
【請求項2】
請求項1記載の土嚢に使用する土嚢袋(B)であって、
土嚢袋(B)の少なくとも相対向する二箇所に把持部(2)が設けられている、
土嚢袋。
【請求項3】
請求項1記載の土嚢に使用する土嚢袋(B1)であって、
土嚢袋(B)の閉じ側(1,1a)の二箇所に閉じ側(1,1a)の端部を折り重ねた部分が形成され、該折り重ねた部分を縫製して開口部を有する袋状の把持部(2a)が形成されている、
土嚢袋。
【請求項4】
請求項1記載の土嚢に使用する土嚢袋(B2)であって、
土嚢袋(B2)の少なくとも相対向する二箇所に穴が設けられており、穴の縁部に縫製による補強が施されて把持部(2b)が形成されている、
土嚢袋。
【請求項5】
請求項1記載の土嚢に使用する土嚢袋(B2)であって、
土嚢袋(B2)の少なくとも相対向する二箇所に穴が設けられ、穴の縁部に縫製による補強が施されて把持部(2b)が形成されており、
把持部(2b)の近傍には、複数の穴が設けられ、穴の縁部に縫製による補強が施されて土嚢袋(B2)同士の連結のための通し部(3b)が形成されている、
土嚢袋。
【請求項6】
土嚢袋(B)の閉じ側(1,1a)の一部を変形させることによって形成可能であり、粒状充填物(6)を土嚢袋(B)内部に充填するための充填口(4)を備えている、
請求項2、3、4または5記載の土嚢袋。
【請求項7】
土嚢袋(B1,B2)の所要箇所に、土嚢袋(B1,B2)内部に粒状充填物(6)を充填するための充填口(4a)が設けられており、充填口(4a)を封止する封止体(8)を備えている、
請求項2、3、4または5記載の土嚢袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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