説明

土壌処理工程選択装置

【課題】汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することを可能にする。
【解決手段】汚染土壌を浄化する処理工程を選択する土壌処理工程選択装置100であって、浄化され分級された汚染土壌の細粒を搬送する搬送経路に設けられ、細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに対応する測定値を測定する含有レベル測定部102と、汚染物質の含有レベルの測定値に対応する管理基準値を記憶する管理基準値記憶部104と、細粒の処理工程を選択する処理工程選択部105と、測定値の分析値(次回の予測最確値)と管理基準値とを対比して、処理工程選択部105による細粒の処理工程の選択を制御する判定制御部103とを備える土壌処理工程選択装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油や重金属等で汚染された汚染土壌の浄化に係り、汚染物質の含有レベルに応じて処理工程を選択する土壌処理工程選択装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンスタンド周辺の市街地や工場跡地、射撃場等において、漏出油、有機溶剤または重金属等で土壌が汚染され、用水、河川に有害物質が漏出したり、土地の再利用に支障をきたす例が各所で顕在化している。このような汚染土壌の処理には、産業廃棄物として処分場に埋めて廃棄する方法、汚染物質を焼却で取り除いて土壌を修復し再利用する方法、汚染物質を洗浄で取り除いて土壌を修復し再利用する方法が一般的に用いられている。しかしながら、これらの中で、処分場に埋めて廃棄する方法は、環境保全等の観点から処分場の確保が難しくなってきていると共に処理コストが高いという問題を有しており、また、汚染物質を焼却で取り除いて土壌を修復する方法も、処理コストが高いという問題点がある。そのため、近年では環境保全の面で優れ、低コストで処理できる洗浄方法を採用する例が多くなっている。
【0003】
汚染土壌の洗浄による浄化方法では、例えば図8に示すように、受入れホッパー1からドラムウオッシャー2に汚染土壌を投入して洗浄水を注水しながら解砕・混錬した後、湿式振動篩3で粗粒と細粒に分級しながらスプレーで洗浄し、汚染物質の付着が殆どない篩上の粗粒をそのまま再利用する。また、篩下の分級した細粒については、さらに細粒処理設備20で分級されると共に、必要な洗浄処理が施された上で、再利用されるか、あるいは産業廃棄物として廃棄されこととなる。なお、このような洗浄により汚染土壌を浄化する方法としては、重金属で汚染された土壌に対して加水し、分級することによって重金属分を多く含む所定の粒径の土壌粒子を分離すると共に、表面に付着している重金属汚染物質を剥離することを特徴とする浄化方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、洗浄による汚染土壌の浄化では、その処理コストを低減するために、洗浄後の土壌を出来るだけ多く再利用し、産業廃棄物として廃棄する量を減少させることが望ましいが、そのためには、汚染物質が濃縮して残留する細粒の再利用率を向上させることが重要となる。そして、細粒の再利用率を向上するためには、細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択して行うことが求められる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することを可能にする土壌処理工程選択装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の土壌処理工程選択装置は、汚染土壌を浄化する処理工程を選択する土壌処理工程選択装置であって、浄化され分級された汚染土壌の細粒を搬送する搬送経路に設けられ、前記細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに対応する測定値を測定する含有レベル測定部と、前記汚染物質の含有レベルの測定値に対応する管理基準値を記憶する管理基準値記憶部と、細粒の処理工程を選択する処理工程選択部と、前記測定値若しくは前記測定値の分析値と前記管理基準値とを対比して、前記処理工程選択部による細粒の処理工程の選択を制御する判定制御部とを備えることを特徴とする。
前記構成により、例えば洗浄後に残留する汚染物質濃度を測定し、その測定値を予め設定した管理基準値と対比し、その汚染度合いによって再利用するか、細粒を洗浄する工程で再洗浄するか、或いは産業廃棄物として廃棄するかの処理工程を選択する等、洗浄・分級後の汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することが可能となる。また、土壌浄化設備の運転中に途中の汚染土壌の洗浄結果を常時監視することが可能になるので、汚染土壌の浄化が不十分な場合には再洗浄の選択等を適宜行うことができ、再利用する土壌を常に清浄に保つことができる。
【0008】
さらに、本発明の土壌処理工程選択装置は、前記含有レベル測定部が、前記搬送経路で搬送される汚染土壌の細粒の一定通過重量毎若しくは一定時間毎に前記測定値を測定し、前記判定制御部が、直近の複数の前記測定値から最新の最確値を算出し、前記最新の最確値を含む直近の複数の最確値からスプライン関数を取得し、前記スプライン関数に基づき予測した次回の予測最確値を前記分析値として取得し、前記次回の予測最確値と前記管理基準値とを対比して、前記処理工程選択部による細粒の処理工程の選択を制御することを特徴とする。
前記構成により、洗浄・分級後の細粒に対してオンライン分析を行い、現在の測定値と過去の測定値に基づく分析結果から次回の汚染濃度等など汚染物質の含有レベルの予測最確値を予測し、事前に処理工程を振分けることができる。また、洗浄後の細粒の汚染度合いを予測しながら土壌浄化設備を運転することが可能となるので、通常時にはミキサー等の大電力を消費する後工程を停止し、洗浄不十分な土壌の搬送が予測された時にだけミキサー等を起動することにより、消費電力を大幅に節減することができる。加えて、次回の測定箇所或いは測定時刻に対応する土壌の汚染度合いを予測し、洗浄不十分な土壌が搬送されてくる時に事前に次工程を切り替えておくことが可能となるので、分析の遅れにより一時的に清浄土壌に汚染土壌が混入することを未然に防止することができる。
【0009】
また、本発明の土壌処理工程選択装置は、前記判定制御部が、前記処理工程選択部による細粒の処理工程として汚染物質の含有レベルが高い場合の処理工程が選択されている際に、前記次回の予測最確値と前記管理基準値との対比で前記次回の予測最確値が前記管理基準値以下であり、且つ前記次回の予測最確値に対応する測定時点の次回の測定値と前記管理基準値との対比で前記次回の測定値が前記管理基準値以下の場合に、汚染物質の含有レベルが低い場合の処理工程を選択するように処理工程選択部の処理工程の選択を制御することを特徴とする。
前記構成により、次回の予測が汚染物質の含有レベルが低い場合の処理工程を選択可能としている場合にも、前記予測時点に対応する現実の測定値が同様の結果を示している場合にのみ、汚染物質の含有レベルが低い場合の処理工程を選択するようにし、管理基準値を超える汚染物質を含有する土壌が再利用可能な浄化土壌に混入することをより確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明の土壌処理工程選択装置は、前記処理工程選択部を、シャトルコンベア若しくはコンベアを可逆運転する構成とすることを特徴とする。
前記構成により、2工程、3工程などの2工程以上の複数の処理工程に対して、土壌を適切に選択して供給することができる。
【0011】
また、本発明の土壌処理工程選択装置は、浄化され分級された汚染土壌の細粒を更に分級するスパイラル分級機と前記処理工程選択部との間の搬送経路に、前記含有レベル測定部を備えることを特徴とする。
前記構成により、スパイラル分級機を備える土壌浄化設備で、スパイラル分級機で分級された汚染物質の高含有レベルの可能性が高い細粒について適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を一層向上して汚染土壌からより多くの土壌を再利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の土壌処理工程選択装置は、洗浄・分級後の汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて、再利用、再浄化または廃棄など適切な処理工程を選択することが可能であり、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することを可能にする。また、予期しない高濃度の汚染土壌が投入された場合にも、再利用する浄化土壌に管理基準値を超える濃度の土壌が混入することを防止できる。さらに、土壌浄化設備の運転中に途中の汚染土壌の洗浄結果を常時監視することが可能になるので、汚染土壌の浄化が不十分な場合には再洗浄の選択等を適宜行うことができ、再利用する土壌を常に清浄に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による実施形態の土壌処理工程選択装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態の土壌処理工程選択装置が用いられる土壌浄化設備の処理工程を示すフローチャート。
【図3】実施形態の土壌処理工程選択装置による土壌処理工程の選択制御処理を示すフローチャート。
【図4】シャトルコンベアの例を示す模式図。
【図5】可逆コンベアの例を示す模式図。
【図6】洗浄後の汚染物質の含有濃度の変化を模式的に示した説明図。
【図7】最確値を3次スプラインで補間して取得したスプライン関数を示す説明図。
【図8】従来例の土壌処理工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態の土壌処理工程選択装置]
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明による実施形態の土壌処理工程選択装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態の土壌処理工程選択装置100は、汚染土壌を浄化する処理工程を選択する装置であり、図1に示すように、汚染物質の含有レベルを測定するサンプル土壌を土壌の中からサンプリングするオートサンプラー101と、オートサンプラー101でサンプリングしたサンプル土壌における汚染物質の含有レベルを測定する含有レベル測定部102と、CPU等の演算処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成され、汚染物質の含有レベルの測定値から分析値を取得し、その分析値と管理基準値とを対比して汚染物質の含有レベルを判定し、その判定結果に応じて汚染土壌の細粒の処理工程選択の制御を行う判定制御部103と、ハードディスク等の記憶部で構成され、汚染物質の含有レベルの測定値に対応する管理基準値を記憶する管理基準値記憶部104と、判定制御部103の制御に応じて細粒の処理工程を選択する処理工程選択部105とを備える。前記含有レベル測定部102、判定制御部103、管理基準値記憶部104は、汚染物質の含有レベルを測定して汚染物質の含有レベルを判定する自動分析計を構成する。
【0016】
含有レベル測定部102は、汚染物質の含有濃度等の含有レベルを測定する測定機器であり、蛍光X線測定器など必要に応じて適宜の測定機器を用いることが可能である。含有レベル測定部102は、一度浄化され、分級して粗粒が除去された汚染土壌の細粒の搬送経路に設けられ、細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに対応する測定値を測定して取得する。また、含有レベル測定部102は、搬送経路で搬送される汚染土壌の細粒の一定通過重量毎若しくは一定時間毎に前記測定値を測定するように構成される。前記一定通過重量毎の測定では、細粒の通過重量を計量計で計測し、その計測値が所定の設定量に達したら測定を行う構成等、又、前記一定時間毎の測定では、前回の測定時から一定時間をタイマーで計測し、一定時間が経過したら測定を行う構成等とすることが可能である。また、含有レベル測定部102の測定は、含有レベル測定部102自体を、CPU等の演算処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成し、自身の制御で測定を行う構成、或いは判定制御部103の制御に応じて含有レベル測定部102が測定を行う構成とすることが可能であり、この場合に、前記計量計やタイマーの計測結果は制御を行う部分に入力される。
【0017】
判定制御部103は、特定元素の含有レベルの測定値を含有レベル測定部102から取得し、その測定値から分析値を取得し、分析値と管理基準値の対比結果に応じて処理工程選択部105による細粒の処理工程の選択を制御する。分析値を取得する際には、判定制御部103は、含有レベル測定部102から取得した最新の測定値及びその記憶部に記憶している最新の測定値を除く直近の複数の測定値、即ち最新の測定値を含む直近の複数の測定値として用い、この最新の測定値を含む直近の複数の測定値から最新の最確値を算出する。その後、算出した最新の最確値及びその記憶部に記憶している最新の最確値を除く直近の複数の最確値、即ち最新の最確値を含む直近の複数の最確値からスプライン関数を取得し、このスプライン関数から予測して次回の予測最確値を分析値として取得し、更に分析値である次回の予測最確値と管理基準値記憶部104の管理基準値とを対比して、処理工程選択部105を制御して細粒の処理工程を選択させる。
【0018】
処理工程選択部105には、例えば図4のシャトルコンベア6又は図5の可逆コンベア6a等が用いられる。図4のシャトルコンベア6は、車輪62を有する台車61と、台車62上に設けられるベルトコンベアであるコンベア部63とから構成される。台車62は台車駆動モーター64の駆動で基台68上を移動し、コンベア部63はコンベア駆動モーター65の駆動で可動するようになっており、台車駆動モーター64とコンベア駆動モーター65の駆動とその停止、換言すれば台車62とコンベア部63の移動・可動とのその停止は、判定制御部103の制御で行われる。シャトルコンベア6にはシュート66が取り付けられ、シュート66は台車62及びコンベア部63と共に移動するようになっている。コンベア部66には、中継ホッパー5から排出される洗浄された土壌が載せられ、コンベア部66の可動によって搬送し、シュート66から排出されるようになっている。その排出時にはシュート66の落口が判定制御部103の判定結果に応じて搬送コンベア671、672、673の何れかの上側に選択的に配置され、シュート66から排出される土壌は搬送コンベア671、672、673の何れかで搬送される。尚、本例では、シャトルコンベア6が洗浄後の土壌の汚染物質の含有レベルに応じて複数の処理方法を選択可能にしており、所定の場所以外に土壌が落下しないように台車62の移動の際にはコンベア駆動モーター65を停止してコンベア部63を停止すると共に、台車62の移動時には中継ホッパー5内に土壌が一時滞留するようになっている。
【0019】
図5の可逆コンベア6aは、基台68aの上にベルトコンベアであるコンベア部63aが設けられ、判定制御部103の制御に応じてコンベア駆動モーター65が駆動し、正回転又は逆回転でコンベア部63aが可動するようになっている。コンベア部63aの一方の端部側にはシュート661とその落口下側に搬送コンベア674が設けられ、その他方の端部側にはシュート662とその落口下側に搬送コンベア675が設けられている。そして、中継ホッパー5から排出された土壌は、判定制御部103の制御に応じて正回転又は逆回転するコンベア部63aでシュート661又はシュート662に排出され、シュート661又は662を介して搬送コンベア674又は675に排出され搬送される。処理工程の選択が3経路以上である場合にはシャトルコンベア6を用いると好適であるが、処理工程の選択が2経路である場合には可逆コンベア6aを用いると、構成を簡素化してコストを低減することができるので好ましい。
【0020】
次に、本実施形態の土壌処理工程選択装置100を土壌浄化設備に設置して用いる場合について説明する。図2は実施形態の土壌処理工程選択装置が用いられる土壌浄化設備の処理工程を示すフローチャート、図3は実施形態の土壌処理工程選択装置による土壌処理工程の選択制御処理を示すフローチャートである。
【0021】
図2の土壌浄化処理設備は、投入される汚染土壌を送り込む受入れホッパー1と、ドラムウオッシャー2と、湿式振動篩3と、スパイラル分級機4と、中継ホッパー5と、土壌処理工程選択装置100と、ミキサー7と、脱水装置8と、凝集沈殿装置9と、排水処理装置10と、脱水固化装置11とを備え、スパイラル分級機4、中継ホッパー5、土壌処理工程選択装置100、ミキサー7、脱水装置8、凝集沈殿装置9、排水処理装置10、脱水固化装置11は汚染土壌から粗粒が除去された後の細粒を処理する細粒処理設備20を構成する。
【0022】
ドラムウオッシャー2は、受入れホッパー1から投入される汚染物質を含有する汚染土壌に洗浄水を注水し、攪拌して汚染土壌を解砕・混錬する。また、湿式振動篩3は、ドラムウオッシャー2から投入される汚染土壌に洗浄水のスプレー洗浄を施しながら、汚染土壌を所定粒径超の粗粒と所定粒径以下の細粒とに篩目で分級する。前記粗粒と細粒を区分する所定粒径には、再利用する粗粒を抽出可能な粒径を適宜設定することが可能であり、例えば2mm〜10mm等とすることが可能である。尚、汚染物質は土壌粒子の表面積に比例して付着し、汚染物質の濃度等の含有レベルは土壌の重量との対比で管理されるため、洗浄後にも細粒に汚染物質が濃縮して残留することになる。このため、ドラムウオッシャー2の洗浄及び湿式振動篩3のスプレー洗浄後に大径の粗粒で汚染物質の含有レベルが管理基準値を超えることがなく、湿式振動篩3で振動篩上に残留する汚染物質の付着が殆ど無い粗粒はそのまま再利用することが可能である。
【0023】
スパイラル分級機4は、湿式振動篩3を通過した篩下の洗浄後である汚染土壌の細粒を更に分級し、所定粒径超の大きい細粒と所定粒径以下の小さい細粒とに分級する。スパイラル分級機4で掻き揚げられた所定粒径超の大きい細粒は、図示省略する脱水スクリーンで脱水後搬送されて小容量の中継ホッパー5に送られる。中継ホッパー5は、スパイラル分級機4で分級された所定粒径超の大きい細粒を一時的に貯留し、処理工程選択部105が搬送先を選択している極短時間だけ細粒を貯留する容量を有する。
【0024】
土壌処理工程選択装置100のシャトルコンベア6或いは可逆コンベア6a等で構成される処理工程選択部105は、中継ホッパー5から排出される所定粒径以上の大きい細粒の搬送経路を判定制御部103の判定結果に応じて選択し、汚染物質の含有レベルが管理基準値以下で汚染度が低い場合には再利用する細粒の搬送経路に送られ、汚染物質の含有レベルが管理基準値超で汚染度が高い場合にはミキサー7への搬送経路に送られる。土壌処理工程選択装置100のオートサンプラー101と汚染物質の濃度等を測定する含有レベル測定部102は、スパイラル分級機4と処理工程選択部105との間の搬送経路、本例ではスパイラル分級機4と中継ホッパー5との間の搬送経路に設けられ、含有レベル測定部102の測定結果が判定制御部103に取り込まれる。前記位置に含有レベル測定部102等を設けることにより、スパイラル分級機4で分級された汚染物質の高含有レベルの可能性が高い細粒について適切な処理工程を選択することが可能となる。
【0025】
ミキサー7は、搬入された汚染土壌の細粒に加水し、再度攪拌・混錬して洗浄を行う。脱水装置8には、ミキサー7で洗浄された土壌の細粒が搬入され、脱水処理を施す。前記脱水処理が施された土壌の細粒は再度スパイラル分級機4に投入され、スパイラル分級機4は前記投入された土壌の細粒について上記と同様に分級し、土壌処理工程選択装置100が上記と同様に処理工程を選択する。脱水装置8の脱水処理で生じた汚染微粒スラリーは後述する凝集沈澱装置9に送られる。
【0026】
凝集沈澱装置9には、スパイラル分級機4でオーバーフローする汚染微粒スラリーと脱水装置8で発生する汚染分級スラリーが投入され、投入された汚染分級スラリーについて凝集沈澱処理を施す。凝集沈澱装置9の沈澱処理で発生した沈殿物の濃縮スラリーは脱水固化装置11に送られ、脱水固化装置11は前記沈殿物の濃縮スラリーを脱水ケーキにして産業廃棄物として系外に排出する。また、凝集沈澱装置9のオーバーフロー水の浄澄水は浄化処理工程の洗浄水として再利用され、残りは排水処理装置10に送られて排水用の処理を施され、系外に排水される。
【0027】
上記土壌浄化設備で土壌浄化処理を行う際には、先ず、受入れホッパー1に汚染土壌を投入して受入れホッパー1からドラムウオッシャー2に汚染土壌を送り込む。ドラムウオッシャー2では、汚染土壌に洗浄水を注水し、攪拌して汚染土壌を解砕・混錬し、その後、湿式振動篩3で、投入される汚染土壌に洗浄水のスプレー洗浄を施しながら、汚染土壌を所定粒径超の粗粒と所定粒径以下の細粒とに篩目で分級する。ここで分級された粗粒はそのまま再利用され、又、細粒はスパイラル分級機4に送られる。スパイラル分級機4では、洗浄後の汚染土壌の細粒を更に分級し、所定粒径超の大きい細粒と所定粒径以下の小さい細粒とに分級し、所定粒径超の大きい細粒を中継ホッパー5に送り、所定粒径以下の小さい細粒を汚染微粒スラリーとして凝集沈澱装置9に送る。
【0028】
スパイラル分級機4から中継ホッパー5に至る搬送経路には、土壌処理工程選択装置100のオートサンプラー101と含有レベル測定部102が設けられており、図3に示すように、前記搬送経路で搬送される所定粒径以上の大きい細粒が中継ホッパー5に貯留される前に、処理工程選択部105の上側又は中継ホッパー5の入口シュートからオートサンプラー101で測定用或いは分析用サンプルを採取し、その汚染物質の含有濃度など含有レベルを測定する(S101、S102)。
【0029】
ここで、オートサンプラー101で汚染土壌のサンプルを採取し、含有レベル測定部102で汚染物質の含有レベルを測定する測定間隔は、汚染土壌の一定通過重量毎又は一定時間毎とする。尚、オートサンプラー101より上流工程で汚染土壌を洗浄するドラムウオッシャー2、湿式振動篩3、スパイラル分級機4は、投入する汚染物質の濃度等の含有レベルに対して或る一定の滞留時間と時定数を有し、投入する土壌の汚染物質の含有レベルが急に高含有レベルになった場合にも、洗浄後の汚染濃度は機器固有の滞留時間の後、時定数に従って徐々に応答する含有レベルとなるため、時定数に対応して測定間隔を決めておけば、事前に汚染物質の濃度等の含有レベルの到達点を近時予測することが可能であり、この近時予測した含有レベルを管理基準値に従って監視すれば、後工程の処理方法を汚染土壌が高含有レベルになる前に選択することができる。前記時定数は、基本的には機器の容積と投入物の量によって決まるため、測定間隔を汚染土壌の通過重量毎に設定するか、通過重量がほぼ一定の場合には一定時間毎に設定する。
【0030】
判定制御部103は、含有レベル測定部102の測定値を取得し、図3に示すように、取得した最新の測定値を含む直近の複数の測定値から最新の最確値を算出する(S103)。前記測定値は、測定用サンプルの粒子径や、水分や含有レベル測定部102に起因する誤差でもばらつく可能性があると考えられるため、最新の測定値を含む直近の複数の測定値から汚染物質の含有レベルの最新の最確値を算出する。前記複数の測定値から最新の最確値を算出する際には、後述の如く測定間隔毎の測定値を使って最小2乗法を用い、所定の間隔値を取得すると共に、所定の間隔値から最新の最確値を算出する。
【0031】
更に、判定制御部103は、例えば後述する次回の予測最確値Mn+1を取得するように、最新の最確値を含む直近の複数の最確値からスプライン関数を取得し(S104)、このスプライン関数から予測して次回の測定時点における汚染物質の含有レベルに対応する次回の予測最確値を分析値として取得し(S105)、更に分析値である次回の予測最確値と管理基準値記憶部104の管理基準値とを対比して(S106)、処理工程選択部105を制御して細粒の処理工程を選択させる(S107)。前記次回の予測最確値が予め設定されている管理基準値を超える場合には、後処理工程を再度細粒を洗浄する経路に設定或いは変更するよう選択制御し、又、前記次回の予測最確値が予め設定されている管理基準値以下の場合には、後処理工程を再利用する土壌の経路に設定或いは変更するよう選択制御し、再利用する正常浄化土壌に汚染土壌が混入することを防止して適切な経路に土壌が搬送されるようにする。
【0032】
尚、後工程が汚染物質が高含有レベルである処理を選択している際に、次回の測定時点に対応する次回の予測最確値が管理基準値を下回る結果が出た場合には、その結果に応じて後処理工程を選択するように制御することも可能であるが、この場合には、判定制御部103が、含有レベル測定部102から次回の測定値を取得し、その測定値と管理基準値を対比して、前記測定値が管理基準値以下の場合に汚染物質が低含有レベルである場合の後工程処理を選択するように制御する構成とすると、管理基準値を超える汚染物質を含有する土壌が再利用可能な浄化土壌に混入することをより確実に防止できて好適である。
【0033】
ここで、汚染物質の含有レベルを汚染物質の濃度とする例で上記判定制御部103の処理の理論について説明する。図6は洗浄後の汚染物質の含有濃度の変化を模式的に示した説明図であり、時刻t=0に投入した土壌の汚染物質の濃度がステップ状に増加した際の、測定地点における洗浄後の残留汚染物質の濃度の変化を示している。図6の変曲点に引いた点線の接線が交わる最終到達濃度m1の交点と初期濃度m0と交わる交点との差をこの洗浄系の近時時定数Tとすると、図6に示すように、この洗浄系は滞留時間Lと時定数Tで表現することができる。この時のサンプル間隔を△t=T/6とする。尚、一般的には処理工程を安定に運転するために汚染土壌を定量投入する事が多いので、この場合は、前述のようにサンプル採取による測定間隔を一定時間としても、一定通過重量毎に測定することと同意であるため、この例では一定時間間隔で測定する例について説明する。
【0034】
あるn点の測定濃度mとし、測定間隔△t毎のmn−5まで6個の測定値を使って最小2乗法によって所定の間隔値Xを下記(1)式で求める。
=(5(m−mn−5)+3(mn−1−mn−4)+(mn−2−mn−3))/35 … (1)
そして、このときの最確値Mを間隔値Xから下記(2)式を使って求める。
=mn−1+X …(2)
【0035】
次いで、図7に示すように、各サンプル毎に計算した最確値Mを3次スプラインで補間し、(n−1)点で得たスプライン関数を下記(3)式とする。
n−1=F(n−1) …(3)
この式を使って次回2△t後の(n+1)測定時点の最確値を下記(4)式で計算して予測する。
n+1=F(n+1) …(4)
こうして、次回の予測最確値であるMn+1を取得する。
【0036】
土壌処理工程選択装置100の処理工程選択部105は、中継ホッパー5から排出される所定粒径以上の大きい細粒の搬送経路を判定制御部103の判定結果に応じて選択し、汚染物質の含有レベルが管理基準値以下の場合には埋め戻しなどに再利用される細粒の搬送経路に送り、汚染物質の含有レベルが管理基準値超の場合にはミキサー7への搬送経路に送る。本例での前記判定結果は、最新の測定値の一つ前の測定値に基づく予測最確値によるものであり、基本的に前記予測最確値と管理基準値との対比による判定結果に応じて処理工程が選択される。ミキサー7では搬入された汚染土壌の細粒に加水し、再度攪拌・混錬して洗浄を行い、脱水装置8で脱水処理を施す。前記脱水処理が施された土壌の細粒は再度スパイラル分級機4に投入され、同様の処理が施される。脱水装置8の脱水処理で生じた汚染微粒スラリーは凝集沈澱装置9に送られる。
【0037】
凝集沈澱装置9では、スパイラル分級機4でオーバーフローする汚染微粒スラリーと脱水装置9で発生する汚染分級スラリーについて凝集沈澱処理を施し、沈殿物の濃縮スラリーを脱水固化装置11で脱水ケーキにして産業廃棄物として系外に排出する。また、凝集沈澱装置9のオーバーフロー水の浄澄水は浄化処理工程の洗浄水として再利用し、残りは排水処理装置10で排水用の処理を施して系外に排水する。
【0038】
上記土壌処理工程選択装置100により、汚染物質を管理基準値内に押えながら出来るだけ細粒部まで分級し、洗浄・分級後の汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することが可能となる。また、予期しない高濃度の汚染土壌が投入された場合にも、再利用する浄化土壌に管理基準値を超える濃度の土壌が混入することを防止できる。また、土壌浄化設備の運転中に途中の汚染土壌の洗浄結果を常時監視することが可能になるので、汚染土壌の浄化が不十分な場合には再洗浄の選択等を適宜行うことができ、再利用する土壌を常に清浄に保つことができる。また、搬送経路の含有レベル測定部102で搬送する土壌の一定通過重量毎或いは一定時間毎に汚染物質の含有レベルを測定し、その測定値に基づき処理工程を選択することで、土壌の汚染濃度が場所によって異なるように分布している場合にも、確保すべき土壌処理能力の余裕を少なくすることができ、装置構成を小型化し、製造コストを低減することができる。
【0039】
また、洗浄・分級後の細粒に対してオンライン分析を行い、現在の測定値と過去の測定値に基づく分析結果から次回の汚染濃度等など汚染物質の含有レベルの予測最確値を予測するので、事前に処理工程を振分けることができる。また、洗浄後の細粒の汚染度合いを予測しながら土壌浄化設備を運転することが可能となるので、通常時にはミキサー7等の大電力を消費する後工程を停止し、洗浄不十分な土壌の搬送が予測された時にだけミキサー7等を起動することにより、消費電力を大幅に節減することができる。また、次回の測定箇所或いは測定時刻に対応する土壌の汚染度合いを予測し、洗浄不十分な土壌が搬送されてくる時に事前に次工程を切り替えておくことが可能となるので、分析の遅れにより一時的に清浄土壌に汚染土壌が混入することを未然に防止することができる。
【0040】
[実施形態の変形例等]
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0041】
例えば土壌処理工程選択装置100において、判定制御部103が含有レベル測定部102の測定値から分析値である次回の予測最確値を取得し、次回の予測最確値と管理基準値とを対比して処理工程の選択を制御する構成に代え、判定制御部103が、特定元素の含有レベルの測定値を含有レベル測定部102から取得し、その測定値を管理基準値記憶部104の管理基準値と対比し、前記測定値と管理基準値の対比結果に応じて処理工程選択部105による細粒の処理工程の選択を制御する構成としてもよい。前記構成によっても、洗浄・分級後の汚染土壌の細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに応じて適切な処理工程を選択でき、細粒の再利用率を向上して汚染土壌から多くの土壌を再利用することが可能となると共に、汚染土壌の浄化が不十分な場合には再洗浄の選択等を適宜行うことができ、再利用する土壌を常に清浄に保つことができる。
【0042】
また、上記土壌浄化設備において、汚染度の高い細粒をミキサー7、脱水装置8に投入して処理する構成に代え、ミキサー7と脱走装置8を省略して、前記管理基準値以上の汚染度の高い細粒を再度受入れホッパー1に戻して処理する構成としてもよい。前記構成により、工程を簡素化することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば油や重金属等で汚染された汚染土壌を浄化する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100…土壌処理工程選択装置 101…オートサンプラー 102…含有レベル測定部 103…判定制御部 104…管理基準値記憶部 105…処理工程選択部 1…受入れホッパー 2…ドラムウオッシャー 3…湿式振動篩 4…スパイラル分級機 5…中継ホッパー 6…シャトルコンベア 61…台車 62…車輪 63…コンベア部 64…台車駆動モーター 65…コンベア駆動モーター 66…シュート 671、672、673…搬送コンベア 68…基台 6a…可逆コンベア 63a…コンベア部 65a…コンベア駆動モーター 661、662…シュート 674、675…搬送コンベア 7…ミキサー 8…脱水装置 9…凝集沈澱装置 10…排水処理装置 11…脱水固化装置 20…細粒処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌を浄化する処理工程を選択する土壌処理工程選択装置であって、
浄化され分級された汚染土壌の細粒を搬送する搬送経路に設けられ、前記細粒に含まれる汚染物質の含有レベルに対応する測定値を測定する含有レベル測定部と、
前記汚染物質の含有レベルの測定値に対応する管理基準値を記憶する管理基準値記憶部と、
細粒の処理工程を選択する処理工程選択部と、
前記測定値若しくは前記測定値の分析値と前記管理基準値とを対比して、前記処理工程選択部による細粒の処理工程の選択を制御する判定制御部と、
を備えることを特徴とする土壌処理工程選択装置。
【請求項2】
前記含有レベル測定部が、前記搬送経路で搬送される汚染土壌の細粒の一定通過重量毎若しくは一定時間毎に前記測定値を測定し、
前記判定制御部が、
直近の複数の前記測定値から最新の最確値を算出し、
前記最新の最確値を含む直近の複数の最確値からスプライン関数を取得し、
前記スプライン関数に基づき予測した次回の予測最確値を前記分析値として取得し、
前記次回の予測最確値と前記管理基準値とを対比して、前記処理工程選択部による細粒の処理工程の選択を制御することを特徴とする請求項1記載の土壌処理工程選択装置。
【請求項3】
前記判定制御部が、
前記処理工程選択部による細粒の処理工程として汚染物質の含有レベルが高い場合の処理工程が選択されている際に、
前記次回の予測最確値と前記管理基準値との対比で前記次回の予測最確値が前記管理基準値以下であり、
且つ前記次回の予測最確値に対応する測定時点の次回の測定値と前記管理基準値との対比で前記次回の測定値が前記管理基準値以下の場合に、
汚染物質の含有レベルが低い場合の処理工程を選択するように処理工程選択部の処理工程の選択を制御することを特徴とする請求項2記載の土壌処理工程選択装置。
【請求項4】
前記処理工程選択部を、シャトルコンベア若しくはコンベアを可逆運転する構成とすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の土壌処理工程選択装置。
【請求項5】
浄化され分級された汚染土壌の細粒を更に分級するスパイラル分級機と前記処理工程選択部との間の搬送経路に、前記含有レベル測定部を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の土壌処理工程選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−269275(P2010−269275A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124812(P2009−124812)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】