説明

土壌改良剤の製造方法

【課題】取扱性が良く、かつ、効能に優れた土壌改良剤を大量に得るために、殆ど水気のない状態で粒状乃至小塊状の形状を保持する性状の有機物質を素材に用いて、これを、放線菌の接種により堆肥醗酵させ、放線菌堆肥に熟成させるのが、短時日で速成し得るようにして、このように仕上げた放線菌堆肥を母材として良好な土壌改良剤を造成することにある。
【解決手段】放線菌を接種した籾殻を、醗酵槽内に投入し堆積せしめて放線菌醗酵させることにより多量の活動する放線菌が籾殻よりなる培地に保持された菌元を作り、この菌元を、放線菌堆肥の基材に対し、1〜3割程度に添加し、これら菌元と基材とを、大型の醗酵槽に投入し、放線菌醗酵を48時間(2日)程度行わせ、次いで、基材を醗酵槽から取り出し、堆肥ヤードに山積みに堆積して、数日放置して完熟させて放線菌堆肥に仕上げ、これを素材として土壌改良剤に生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施用により耕土の性状を改善する土壌改良剤のうちで、木屑・おが屑・籾殻等の有機物に放線菌を接種して好気醗酵させた有機質の腐植をベースとして生成する土壌改良剤の製造方法及び製造する土壌改良剤についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
作物を栽培し育成する栽培床または圃場の耕土は、水を保有する保水力に富み、作物の生育に要する栄養分を多く含み、かつ、その栄養分の保持力が大きく、しかも、土中の有機物の腐敗分解を抑えるよう通気性の良い性状であることが要求される。
【0003】
水はけが良すぎてすぐに乾燥し、また、施用した肥料が流亡してしまうような性状の劣悪な土壌、または、水はけが悪く、湿潤に過ぎて、通気性が不良で、有機物の腐敗をもたらす土壌には、その性状を改善する土壌改良剤の施用が必要である。
【0004】
このように、作物を栽培する耕土(作土)の土性を改善するように用いられる土壌改良剤は、通常、有機物の分解途上の腐植質を主体としこれに石灰・苦土等の無機物を添加して作られる。耕土を、保水力が大きく、通気性のよい、団粒構造のものとするには、有機物が微生物により分解されて生成される腐植質の施用が効果的であるからである。
【0005】
このように、作物を栽培する栽培床の作土に対し、それの土性を改善するように用いる土壌改良剤は、普通、作土10立に対し500cc程度と、大量に施用する。このことから、通常、袋詰めして、納屋・物置に収納して用意しておき、これを、圃場・栽培床の場所へ袋詰めの状態で運搬し、施用する場所において、袋から取り出して、圃場または栽培床の作土に施用するようにしている。このため、袋詰めができ、かつ、袋からの取り出しおよび作土に対する施用と作土への混合が容易であるように、サラッとした顆粒状乃至砂粒状になっていること、しかも、汚臭・悪臭のないことが望まれている。
【0006】
耕土の性状の改善は、草藁等を堆積して堆肥醗酵させて造成した堆肥の施用によっても行われる。堆肥が、作物の栄養分を含むとともに、多量の有機物の分解途上の腐植質を含むからである。そして、このように用いる堆肥は、放線菌の接種により堆肥醗酵させた放線菌堆肥が、効能がよいとされている。堆肥床に多量に含まれる放線菌が、栽培作物の根腐れ、萎ちう病、青枯病などを引き起こすフザリウム菌や、イネのイモチ病を抑制する抗菌作用を有し、しかも、汚臭・悪臭のもととなる低級脂肪酸の分解酵素を持ち、悪臭を消し去るようにして、生成する堆肥を悪臭の無いものとするからである。
【0007】
このことから、この放線菌により堆肥醗酵させた放線菌堆肥を、そのまま、または、これに、石灰などを添加して土壌改良剤を生成するようにすれば、放線菌を多量に含むことで、施用により土中の有害微生物の繁殖を抑えて土性を改善する効能のある土壌改良剤が得られることになるが、そのようにしようとすると、母材の放線菌堆肥が草・藁等を堆積して放線菌により堆肥醗酵させ生成した通常の堆肥で、水分を多く含み、かつ、取り扱いの悪い性状をもつことから、これにより生成する土壌改良剤の性状を、取り扱いの悪いものとすることと、堆肥を造成するときの堆肥醗酵が全体に均一に進むことがなく、堆積した堆肥床の芯の部分だけがよく醗酵するようになることで、造成途上に切り返しを行っても、周辺部位に、醗酵しない生のままの未熟な部分を生ずるようになることから、堆肥をもって土壌改良剤に生成するには、完熟した部分と未熟な部分とに選り分けなければならず、これに、作業手間と時間を要する問題がでてくる。
【0008】
また、放線菌堆肥が、それに接種した放線菌により堆肥床を醗酵させるだけで、通常の堆肥と同様の製造工程で作られることから、放線菌の生育が堆肥床の全体に進み、全体が堆肥に熟成してくるまでに数ヶ月と、かなりの時日を要することで、これをベースとして作る土壌改良剤の生産を制約する問題がでてくる。
【0009】
また、放線菌堆肥の造成を普通の堆肥造成と同様に自然の環境下において行うことから、汚臭の発生をもたらす腐敗菌を抑えて放線菌だけで堆肥醗酵させることがむずかしい問題がでてくる。
【0010】
さらに、堆肥原料に、なまの草やなまの野菜屑を用いることで、生成した堆肥が水分の多いものとなっていることを避けるため、手近に得られるウッドチップ・おが屑等の含水分の少ないパラッとした性状の有機物を用いると、これに放線菌を接種して堆肥醗酵させるときに、接種した放線菌が堆肥床の全体に着床して生育繁茂し醗酵が旺んに行われるようになるまでに、長い時間を要するようになる問題がでてくる。
【0011】
ところで、放線菌と腐植質を多く含むものには、台所等の厨房に生ずる野菜屑等の生ごみを分解処理するよう開発された生ごみ処理装置に用いられて、該装置から取り出される使用済みの醗酵床がある。
【0012】
この生ごみ処理装置は、出願人が実願2008−001681として出願し、実用新案登録第3142148号として登録されているもので、図1にあるように、内容量が50立程度の機筐状に形成した醗酵槽1の内部に、放線菌を接種した籾殻Hを、8分目程に填め、これを、生ごみ醗酵分解させる発酵床とし、醗酵槽1内に設けた攪拌翼2により、所定の時間毎に間欠攪拌させるようにしている装置であり、日々に発生する厨芥類を、籾殻Hよりなる醗酵床の中に投入し、籾殻Hに接種してある放線菌により醗酵させて、炭酸ガスと水とに分解するよう処理する装置である。
【0013】
この装置に用いる放線菌を接種した籾殻よりなる醗酵床は、醗酵槽内に填め込んだ当初にあっては、籾殻が殆ど生の籾殻の形状・外観を保持したものであるが、数ヶ月位の使用により、籾殻が放線菌による分解を受けて黒く炭化し、籾殻の形状が崩れたものになってくる。このようになってきたとき、これを使用済みの醗酵床として、取り出し、新しい籾殻と入れ替える。このとき、取り出す使用済みの醗酵床を一割程度を槽内に残しておくことで、新たに填め込んだ籾殻に対する放線菌の接種着床が行われるようにしている。
【0014】
この使用済みの醗酵床として生ごみ処理装置から取り出される醗酵床は、籾殻の形状は残しているが、着床した放線菌による分解が進んで放線菌の培地となっている籾殻の塊であり、多量の有機質の分解物を含み、かつ、放線菌を多量に含むものであるから、この醗酵床を素材として土壌改良剤を生成すれば、効能のよい土壌改良剤が得られることになる。しかし、使用済みの醗酵床であることから、これを得るのに長い時日を要することと、得られる量に制約がある問題がでてくる。
【0015】
生ごみのようには多量の水分を含まず、殆ど乾いた状態でサラッとした状態にある有機物で、手近に、大量に得られるものとして、茸を栽培して収穫した後に、廃棄される使用済みの菌床がある。この茸栽培用の菌床は、通常、おが屑70、コーンの芯の破砕物15、ふすま10、豆皮4、石灰1位の割合で混ぜて調整し、これを、図2に示しているように、径が100ミリ高さ150ミリ程度の広口瓶状の器3の中に填めることで、菌床に形成し、これに、茸の菌を接種して茸4を育生し、生長した茸を菌床の上面から欠き取るように収穫した後は、使用済みの菌床として廃棄される。この廃棄は、通常、器3を逆さにして、ドリル状の破砕刃を挿入し破砕しながら器3から排出させ、所定の場所に堆積させることで行っている。
【0016】
この廃棄された使用済みの菌床は、組成の殆どが茸の菌による分解を受けた有機物であることと、手近に大量に得られることから、土壌改良剤の母材として恰好なものとなる。
【0017】
しかし、これを、放線菌堆肥の堆肥床とし、放線菌を接種して放線菌による堆肥醗酵を行わせ、土壌改良剤のベースに仕立てようとすると、接種した放線菌が堆肥床の全体にむらなく繁茂するように培養醗酵させることがむずかしい問題がでてくる。
【0018】
この問題は、使用済みの菌床の主体を組成するおが屑または、前述のごみ処理装置に用いる醗酵床の主体を組成する籾殻を、生のままストレートに用いて、大量に堆積し、放線菌の接種により放線菌堆肥に醗酵造成する場合にも、同様に生じてくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明において解決しようとする課題は、取扱性が良く、かつ、効能に優れた土壌改良剤を大量に得るために、木屑・おが屑・籾殻・使用済みの菌床等の、手近に大量に得られ、かつ、殆ど水気のない状態で粒状乃至小塊状の形状を保持する性状の有機物質を素材に用いて、これを、放線菌の接種により堆肥醗酵させ、放線菌堆肥に熟成させるのが、短時日で速成し得るようにして、このように仕上げた放線菌堆肥を母材として良好な土壌改良剤を造成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題を解決するための手段として、本発明においては、放線菌を接種した籾殻を、醗酵槽内に投入し堆積せしめて放線菌醗酵させることにより多量の活動する放線菌が籾殻よりなる培地に保持された菌元を作り、この菌元を、木屑・おが屑・使用済みの菌床の破砕片・籾殻等の、生成しようとする放線菌堆肥の基材に対し、菌元10〜30%、基材90〜70%となる割合で添加し、これら菌元と基材とを、内部に攪拌装置を備える大型の醗酵槽に投入し、攪拌装置の作動により混和し、次いでこの状態に放置して攪拌装置を6時間(半日)程度の時間をおいて10分程度の間欠作動させて攪拌により通気しながら放線菌醗酵を48時間(2日)程度行わせ、次いで、基材を醗酵槽から取り出し、堆肥ヤードに山積みに堆積して、数日放置して完熟させた後、堆積した基材の山を崩して、放冷と水分蒸発を行って、放線菌堆肥に仕上げ、これを素材として土壌改良剤に生成することを特徴とする土壌改良剤の製造方法を提起するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明手段は、放線菌堆肥の堆肥床とするウッドチップ・木屑・おが屑・使用済みの茸の菌床の破砕片等の、堆肥床の基材に対する放線菌の接種を、まず、放線菌の着床が容易に、かつ、確実に行われる籾殻を培地として放線菌を培養し、この籾殻よりなる放線菌の培地をもって多量の放線菌を保持する菌元を作り、この菌元を、ウッドチップ等の堆肥床の基材に対し、10〜30%程度の割合で、添加し混合することで行っているのだから、堆肥床の基材の全体に対する放線菌の接種・着床が、極く短い時間で、確実に行われ、堆肥床の全体の放線菌醗酵が短時日で得られるようになる。
【0022】
そして、堆肥床の放線菌醗酵を、加熱装置と攪拌装置を有する大型の堆肥醗酵槽内において、攪拌装置の間欠的な作動により通気し、加熱装置により、品温を昇温させた状態で2日程度行わせ、次いで、堆肥醗酵槽から取り出し、堆肥ヤードに1日〜2日程堆積して完熟させ、これを、崩して放冷と水分蒸発を行わせて、堆肥に仕上げているのだから、仕上げた堆肥は、水気が殆どない、サラッとした性状のものとなる。このため、これをそのまま、または適宜に肥料成分を添加することで、取り扱いのよい、しかも効率がよく、かつ、汚臭のない土壌改良剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明手段の実施の態様を説明する。
まず、造成しようとする土壌改良剤のベースとする放線菌堆肥の堆肥床の基材を用意する。この基材は、サラッとした粒状乃至小塊状の形態の有機物であればよく、手近に、大量にかつ容易に得られるものとして、木屑・おが屑・茸栽培に菌床として用いた使用済みの菌床から取り出されて廃棄されるウッドチップ等から、所望のものを選択して、または、それらを適宜に混合して、堆肥床の基材として用意する。
【0024】
そして、この基材とは別に、この基材に対し接種する放線菌の種母を、増殖・繁茂させて増量させた放線菌の菌元を用意する。
【0025】
この放線菌を増殖増量させた菌元は、多量の堆肥床の基材に対して放線菌を接種するときに、この菌元を介して接種することで、堆肥床の基材の全体に対する放線菌の着床が短時間でむらなく適確に行われるようにするためのものである。
【0026】
放線菌の種母は、通常、休止状態の放線菌を塊めて顆粒状に成形してあり、使用するときは、これを砕いて粉末状にして、接種とする基材に散布することで行っている。このことから、多量の堆肥床の全体に粉末状の放線菌をむらのない状態に散布して接種をするのは殆ど不可能なほどむずかしくなっている。そこで、この放線菌の接種を、まず、放線菌の着床・繁茂させるのが容易な基材を培地としてこれに接種して増殖・繁茂させて、活動して増殖・繁茂している状態の放線菌を多量に含む培地を菌元とし、この培地よりなる菌元を、堆肥床に混合・添加することで、堆肥床の全体に対する放線菌の接種・着床が、たやすく、かつ、確実に行われるように用いるものである。
【0027】
この放線菌の菌元は、籾殻が、前述のごみ処理装置に用いられていることで知られているように、放線菌を接種したときの放線菌の着床と生育繁茂が良好なことから、この籾殻をベースにし、これに放線菌を接種して培養し、増殖繁茂させることで、生成できる。
【0028】
籾殻に接種した放線菌の培養増殖は、前述の生ごみ処理装置の醗酵槽を利用し、これに、放線菌を接種した籾殻を投入して槽内に堆積させ、槽内に装備せる攪拌装置により6時間程度の時間をおいて10分間程度の攪拌を行うことで、数日で全体の籾殻に放線菌が繁茂して放線菌により好気醗酵してくるようになってくることにより得られる。このとき、槽内に籾殻を投入して堆積させたばかりの当初の間、加熱装置で品温が50度C程度となるよう、ヒーターにより加温することで、放線菌の活動が良くなり、さらに短い時間で醗酵が進行してくるようになる。
【0029】
このようにして得られる菌元は、それの、放線菌を着床させた籾殻が、培地となって放線菌を増殖・繁茂させている状態のものであるから、放線菌を活動状態として、その菌の量を莫大に増大させ、かつ、菌を保持する坦体・培地を著しく増大させたものとなっている。このため、この菌元を用いて堆肥床に接種するときは、菌元を堆肥床に所定の割合で添加して混和することで、堆肥床の全体に放線菌を略均一に接種し得るようになる。
【0030】
この籾殻に対し放線菌を接種して培養することで行う菌元の生成は、当初にあっては、放線菌の種母を籾殻に着床させることで行うが、それにより菌元を得た後は、例えば、前述の醗酵槽内に、生成した菌元の一部を残しておき、これに略10倍程度に新たな籾殻を加えて混合し、醗酵させることで、加えた籾殻と合わせた全体が菌元になるようになることから、生成した菌元を種母として新たな籾殻を菌元に生成していけるようになる。
【0031】
また、この菌元は、堆肥床に放線菌を接種するときに、その放線菌を予め増量・増大させておくように機能させるものであるから、前述の生ごみ処理装置において、生ごみを醗酵分解させるように用いた籾殻よりなる醗酵床が、使用により籾殻の分解が進んで、使用済み醗酵床として醗酵槽から取り出される醗酵床も、菌元として使用できるものである。
【0032】
次いで、このようにして用意した菌元を、用意しておいた堆肥床に添加して混合する。添加する割合は、用意した堆肥床の基材が、籾殻・おが屑等である場合には、菌元を基材に対し10%位の割合で添加し、堆肥床の基材が、ウッドチップ、茸栽培の使用済みの菌床の破砕片である場合には、20〜30%程度の割合と多い目に添加する。ウッドチップ、使用済み菌床の破砕片の、放線菌による醗酵分解が、籾殻の場合よりも遅いから、放線菌の量を多くするためである。
【0033】
なお、堆肥基材にウッドチップ・木屑・おが屑等の木質部の多いものを使用するときは、さらに、1割程度の割合で、茸を培養した菌床を添加する。これは、茸の菌と放線菌とが馴染み合い、木質部の放線菌醗酵を助長するようになるからである。
【0034】
菌元を添加した基材は攪拌して菌元と混ぜ合わせ、堆積して放線菌醗酵を行わせ、堆肥に完熟させるが、この菌元と堆肥床の基材との混合及び堆積・醗酵の工程は、槽内に攪拌装置を具備せる大型の醗酵槽を用いて行う。
【0035】
即ち、1ロットで生成しようとする堆肥の基材の全量に略対応する容量の醗酵槽を用意し、それに、投入した堆肥床の基材の略全体を攪拌する攪拌装置を装備せしめておいて、この醗酵槽内に、生成した菌元と、堆肥に生成する基材とを投入していき、攪拌装置の作動により両者を攪拌混合し、菌元が堆肥基材に対し均一に混合していくようにする。この醗酵槽に投入したときの堆肥床の基材は、含水率が60%を目安とし、この水分値よりも少ないときは、加水して調整しておく。
【0036】
混ぜ合わせのための攪拌は、菌元と基材とを槽内に投入したときに、攪拌装置を10分程度作動させることで足ることから、以後は、攪拌装置を停止させておいて、槽内の基材を堆積した状態に保持して、添加した菌元を介して接種した放線菌による醗酵を進行させる。
【0037】
このとき、堆肥基材の、放線菌による好気醗酵が確実に進行していくようにするため、6時間程度の時間をおいて攪拌装置を10分程度作動させ、槽内に集積している堆肥床の切り返しを行い、堆肥床の内部にエアーが行き渡るようにして通気する。
【0038】
放線菌醗酵は、放線菌の活動が旺んになれば、堆肥床の品温を、70度〜80度程度に昇温させるよう醗酵熱を発生するが、その活動が不充分のときは発熱は見られない。このため、醗酵槽には、それの底部に加熱装置を組み込んでおき、槽内に基材を張り込み堆積させた始動当初の間は、この加熱装置により、50度C程度を目安として加熱し、品温を上昇させ、放線菌の活動を促進させる。
【0039】
これにより、槽内の堆肥床の醗酵は旺んになり、1日(24時間)程度を経たところで、品温が60度C程度に上昇してくるから、この状態となったときに、加熱装置の作動を停め、放線菌の醗酵熱だけで品温の昇温が行われるようにする。これにより槽内の堆肥床は、品温の昇温により他の微生物の発育が抑えられることで、放線菌だけが良く活動繁殖して堆肥基材の醗酵分解が進行し、さらに24時間(1日)程度を経ると、完熟状態となってくる。基材鋳の籾殻について見れば、籾殻の形状は認められるが簡単に崩れるように炭化が進み、殆ど真っ黒い状態のものになってくる。この醗酵分解の工程の間においても、所定の時間おいての攪拌装置を作動させての攪拌は、放線菌に対する通気のために行う。この攪拌装置の作動により行う通気により、槽内の堆肥床は放冷により降温するので、この醗酵分解の工程の間、堆肥床は60度C程度の品温に保持される。
【0040】
この略48時間(2日)の醗酵工程により、醗酵槽内の堆肥床は、略完熟してくる。そこで、これを醗酵槽から取り出し、覆いのある温室内等に設定した堆肥ヤードに山に堆積して、1日乃至2日程度放置し、熟成させる。これにより堆肥床は、放線菌醗酵がさらに進み、品温は70度乃至80度程度に昇温し、堆肥に完熟してくる。
【0041】
次いで、この状態となったところで、堆積した堆肥の山を崩しながら切り通して、内部に蓄った醗酵熱を放散させて放冷し、同時に水分を蒸発飛散させて、ばらした状態の堆肥に仕上げる。
【0042】
このようにして仕上げた堆肥は、それの基材とした木屑・おが屑・籾殻等が、堆肥醗酵により真っ黒く炭化したように分解され、かつ、最終の工程の放冷の際の水分の蒸発飛散により、含水率が40%程度のものとなってくることで、握れば、細かい粒状に崩れてこぼれていく小塊状の性状をなし、しかも、活きている放線菌を多量に保持しているものとなっている。
【0043】
従って、この仕上げた堆肥は、そのままで、取り扱いが容易で、効能の優れた土壌改良剤となるものである。これに、石灰・肥料を添加して土壌改良とすることは適宜に行ってよい。
【実施例1】
【0044】
次に実施の1例を説明する。
この実施例は、前述した生ごみ処理装置の醗酵槽1に、放線菌を接種した籾殻Hを投入して生成した醗酵床を菌元に用い、これを、堆肥基材に添加して、大型の堆肥醗酵槽に投入し、醗酵処理を行い、次いで、堆肥醗酵槽から取り出し、堆積して完熟させることで生成する例である。
【0045】
図3は、この本発明の実施例手段において、2次醗酵槽として用いる大型の堆肥醗酵槽Aの縦断した正面視の概要図で、同図において、aは槽本体、bは該槽本体aを支持する台枠、cは槽本体aの内部の中心部位に軸架した竪方向の回転軸、dは回転軸cから放射方向に突出させたアームeに、それぞれ垂下するように設けた攪拌翼、fは台枠b内に配設したモーター、gはモーターfにより回転軸cを減速回転させるよう台枠b内に配設した減速機構、hは槽本体aの床板の下面側に設けた電熱ヒーターよりなる加熱装置、iは槽本体aの下部に開閉自在に設けた排出口、jは槽本体aの上部に開閉自在に設けた投入口である。
【0046】
槽本体aは、それの内容量が、前述の生ごみ処理装置の醗酵槽1の容量約50立に対し遙かに大きい250立程度の容量のものに形成してある。
【0047】
まず、籾殻をそれに放線菌を接種して生ごみ処理装置の醗酵槽1内に、略8分目程に投入する。このとき、籾殻は、乾いている場合には、水分値が約60%程度になるよう加水して水分値を調整しておく。
【0048】
投入を終えた後、その状態に保持して、籾殻を放線菌により醗酵させる。このとき、醗酵槽1内に装備せる攪拌翼2を、6時間毎に10分程度作動させて、攪拌することで、醗酵槽内に堆積している籾殻層の内部に通気を行う。2日程度で、籾殻は着床した放線菌による放線菌醗酵が進み、その放線菌の活動により発生する醗酵熱によって品温を60度C程度に昇温させてくる。
【0049】
この状態となったところで、籾殻を醗酵槽1から取り出し、これを菌元とする。
【0050】
次に、この菌元を、生成しようとする堆肥の基材として用意しておく、ウッドチップまたは使用済みの菌床から取り出した菌床の破砕片に対し、菌元3に菌床の破砕片7の程度の割合で添加混合し、2次醗酵槽とする大型の堆肥醗酵槽Aに投入して張込み該堆肥醗酵槽A内に堆積して放置し、該槽A内において放線菌醗酵を行わす。このとき攪拌翼dの作動による攪拌を、6時間毎に10分位行って、通気し、放線菌による好気醗酵を促進する。また、菌元と堆肥とする基材とを張り込んだ直後における菌元に保持された放線菌の、堆肥の基材への着床が不充分な間は、堆肥醗酵槽Aの底部に付設の加熱装置gの作動で、張り込んで混合した菌元と基材の品温を、約50度Cを目安に昇温させて、他の微生物の活動を抑え、昇温により旺んになる放線菌の活動を促すコントロールを行う。
【0051】
これにより48時間(2日)程の経過で、基材の、放線菌醗酵が完熟に近くなったところで、堆肥醗酵槽Aから取り出し、堆肥ヤードに山積みに堆積して、2〜3日醗酵を続けさせて完熟させ、70度〜80度程度に昇温してきたところで、堆肥の山を崩して、放冷と水分の蒸発を行って、堆肥に仕上げる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】籾殻を培地とする放線菌の菌元の生成に用いる生ごみ処理装置の縦断正面図である。
【図2】茸の培養に用いる菌床の使用状態の斜視図である。
【図3】本発明手段における堆肥床の2次醗酵槽として用いる堆肥醗酵槽の縦断正面視の概要図である。
【符号の説明】
【0053】
A 堆肥醗酵槽
H 籾殻
a 槽本体
b 台枠
c 回転軸
d 攪拌翼
e アーム
f モーター
g 減速機構
h 加熱装置
i 排出口
j 投入口
1 醗酵槽
2 攪拌翼
3 器
4 茸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放線菌を接種した籾殻を、醗酵槽内に投入し堆積せしめて放線菌醗酵させることにより多量の活動する放線菌が籾殻よりなる培地に保持された菌元を作り、この菌元を、木屑・おが屑・使用済みの菌床の破砕片・籾殻等の、生成しようとする放線菌堆肥の基材に対し、菌元10〜30%、基材90〜70%となる割合で添加し、これら菌元と基材とを、内部に攪拌装置を備える大型の醗酵槽に投入し、攪拌装置の作動により混和し、次いでこの状態に放置して攪拌装置を6時間(半日)程度の時間をおいて10分程度の間欠作動させて攪拌により通気しながら放線菌醗酵を48時間(2日)程度行わせ、次いで、基材を醗酵槽から取り出し、堆肥ヤードに山積みに堆積して、数日放置して完熟させた後、堆積した基材の山を崩して、放冷と水分蒸発を行って、放線菌堆肥に仕上げ、これを素材として土壌改良剤に生成することを特徴とする土壌改良剤の製造方法。
【請求項2】
醗酵槽内に菌元と基材を投入して堆積させた直後から槽内に堆積せる基材が醗酵による醗酵熱で60度C程度に昇温してくるまでの間醗酵槽を外部からの給熱により加熱し、槽内の基材の品温を約50度Cを目安に昇温させ、この間における他の微生物の活動を抑えるとともに、放線菌の活動を促進させることを特徴とする請求項1記載の土壌改良剤の製造方法。
【請求項3】
醗酵槽に菌元と共に投入する基材に、茸菌を培養した菌床を1割程度添加しておくことを特徴とする土壌改良剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138275(P2010−138275A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315589(P2008−315589)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508086586)株式会社キクイチ (3)
【出願人】(508365908)
【Fターム(参考)】