土壌浄化システム及び土壌浄化方法
【課題】地下水に含まれる汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを迅速に除去することが可能な土壌浄化システム及び土壌浄化方法を提供すること。
【解決手段】汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸2を有する浄化装置1を備え、回収井戸に漏れ出す汚染物質が気化した気体及び回収井戸に浸出する汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムと土壌浄化方法。土壌浄化システムは、回収井戸周囲の汚染域内に掘削される複数の予熱穴21と、各予熱穴内に設置され、予熱穴内に浸出する地下水を予熱するヒータ3とを有した予熱装置20を備え、ヒータ3が、予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって地下水の回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする。
【解決手段】汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸2を有する浄化装置1を備え、回収井戸に漏れ出す汚染物質が気化した気体及び回収井戸に浸出する汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムと土壌浄化方法。土壌浄化システムは、回収井戸周囲の汚染域内に掘削される複数の予熱穴21と、各予熱穴内に設置され、予熱穴内に浸出する地下水を予熱するヒータ3とを有した予熱装置20を備え、ヒータ3が、予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって地下水の回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌浄化システム及び土壌浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染された土壌を浄化する場合、例えば、ジクロロエタンやトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)で汚染された汚染域に井戸を掘削し、井戸内に浸出した地下水を汲み上げると共に、井戸内の空気を減圧吸引し、気化した前記VOCガスや地下水に含まれるVOCを処理することによって土壌を浄化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−10130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汲み上げた地下水や土壌から気化したガス中に含まれる汚染物質を除去する従来の汚染土壌の浄化方法は、汚染域の土壌が粘土等の難透水性土壌の場合、地下水の浸出速度が遅く、揚水量が少ないことから、汚染物質の除去に膨大な時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地下水に含まれる汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを迅速に除去することが可能な土壌浄化システム及び土壌浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌浄化システムは、汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸を有する浄化装置を備え、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムであって、前記回収井戸周囲の前記汚染域内に掘削される複数の予熱穴と、前記各予熱穴内に設置され、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱する予熱手段と、を有した予熱装置を備え、前記予熱手段が、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって前記地下水の前記回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸内に設けられ、当該回収井戸に浸出する地下水を加熱する加熱手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記予熱装置は、各予熱穴内の前記地下水の温度を検知する水温検知手段と、検知した水温をもとに前記予熱手段による前記地下水の予熱温度を制御する予熱温度制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に掘削される注水井戸と、用水を加熱して加熱水とする加熱槽と、前記加熱水を当該注水井戸に注水する注水手段と、を有する注水装置を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸に浸出した前記地下水の水位を検知する水位検知手段と、前記回収井戸に漏れ出した前記汚染物質が気化した気体の濃度を検知する濃度検知手段と、検知した前記地下水の水位と前記気体の濃度とをもとに前記気体及び前記汚染物質を含む地下水の回収を制御する回収制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸に浸出した地下水の温度を検知する水温検知手段と、検知した水温をもとに前記加熱手段による前記地下水の加熱温度を制御する温度制御手段と、をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記注水装置は、前記注水井戸に注水される加熱水の水位を検知する水位検知手段と、検知した加熱水の水位をもとに前記加熱槽又は前記注水手段の作動を制御する注水制御手段と、をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明の請求項8に係る土壌浄化方法は、汚染物質による汚染域に設けた回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化方法であって、前記回収井戸周囲の前記汚染域内に存在する地下水を予熱し、前記回収井戸への前記地下水の浸出を促進させる工程と、予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出した前記汚染物質を含む地下水を回収し、浄化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9に係る土壌浄化方法は、上記の発明において、前記土壌浄化方法は、前記回収井戸に浸出した地下水を加熱する浸出水加熱工程をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項10に係る土壌浄化方法は、上記の発明において、前記土壌浄化方法は、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に加熱水を注水する注水工程をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、回収井戸周囲の汚染域内に設けた複数の予熱穴内の地下水を予熱して地下水の動粘性係数を低下させ、土壌の透水係数が高くなることから、予熱した地下水が土壌中を流動し易くなり、回収井戸への浸出が促進される。従って、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水に含まれる汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを汚染域の土壌から迅速に除去、浄化することができ、特に、粘土等の難透水性土壌に適用すると、汚染物質を迅速に除去、浄化することができる。また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって汚染域の土壌から汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを流下させて回収井戸で回収する。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水中の汚染物質の濃度が低濃度から環境基準の1万倍を超える高濃度の広い範囲に亘って適用することができ、例えば、局部的に高濃度に汚染された汚染域の浄化の他、汚染物質が拡散した広範囲に亘る低濃度の汚染域の汚染域の浄化にも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る土壌浄化システム及び土壌浄化方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる土壌浄化方法を用いた土壌浄化システムを示す断面図である。図2は、図1の土壌浄化システムを構成する回収井戸、予熱穴及び注水井戸の配置の一例を示す平面図である。図3は、図2のC−C線に沿った断面図である。
【0018】
土壌浄化システムは、図1に示すように、汚染物質、例えば、揮発性有機化合物(VOC)で汚染された汚染域Apoに設置され、浄化装置1、予熱装置20及び注水装置30を備えている。
【0019】
浄化装置1は、回収井戸2、気水分離器8、曝気処理装置9、回収ポンプ10、濃度センサ11、ガス処理装置12回収制御装置13及び温度制御装置14を有している。
【0020】
回収井戸2は、汚染域Apoに設けてVOCが気化したVOCガスを含む気体及びVOCを含む地下水を回収する井戸であり、図2に示すように、汚染域Apoの水平方向の広がりに応じて適宜の数が掘削される。回収井戸2は、図1に示すように、下部にスリット2aが設けられ、上部に蓋2bを有する筒体を埋設して形成されている。回収井戸2は、スリット2aを通って周囲の土壌から浸出した地下水を加熱するヒータ3、地下水の温度を検知する熱電対4及び地下水の水位を検知する水位計5が内部に設けられている。
【0021】
このとき、回収井戸2は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとし、地下水の水位は、図中、符号Wで示す位置にある。また、回収井戸2は、吸引管6と揚水管7を介して気水分離器8と接続されている。気水分離器8は、それぞれ曝気処理装置9と接続されると共に、回収ポンプ10を介してガス処理装置12と接続され、分離したVOCガスを含む気体をガス処理装置12で浄化し、地下水に含まれるVOCを曝気処理装置9で浄化する。
【0022】
ここで、吸引管6及び揚水管7は、それぞれ図示しない弁が設けられ、前記弁の開閉を切り替えることによって回収ポンプ10によるVOCガスを含む気体の吸引とVOCを含む地下水の吸引とを個別に実行し、或いは双方同時に実行することができる。また、曝気処理装置9は、VOCを含む地下水をエアレーションしてVOCを気化させた後、気化したVOCを活性炭に吸着処理させることによって浄化する。ガス処理装置12は、VOCガスを、活性炭による吸着処理、触媒を用いた分解処理、或いは燃焼による焼却処理等によって浄化する。
【0023】
吸引管6は、周囲の土壌から回収井戸2の内部に漏れ出したVOCガスを含む気体を回収する。揚水管7は、浸出した地下水を回収井戸2から回収する。回収ポンプ10は、VOCガスを含む気体とVOCを含む地下水を気水分離器8によって分離回収するポンプであり、VOCを含む地下水は曝気処理装置9へ搬送され、VOCガスを含む気体はガス処理装置12へ搬送される。また、回収ポンプ10とガス処理装置12との間には、回収したVOCガスの濃度を検知する濃度センサ11が設けられている。回収制御装置13は、熱電対4が検知した地下水の温度と、水位計5が検知した地下水の水位と、濃度センサ11が検知したVOCガスの濃度とをもとにVOCガスを含む気体とVOCを含む地下水の回収を制御する。温度制御装置14は、熱電対4が検知した地下水の温度をもとにヒータ3による地下水の加熱温度を制御する。
【0024】
このとき、回収制御装置13及び温度制御装置14は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力される。回収制御装置13は、予め上限水位,下限水位及びVOCガスの目標濃度が記憶されている。上限水位は、例えば、回収井戸2の通常の水位が設定され、下限水位は、地下水を揚水可能な下限値が設定される。VOCガスの目標濃度は、回収井戸2内でモニタされるVOCガスの濃度をもとに、回収サイクルの最適化の観点から決定する。一方、温度制御装置14は、予め回収井戸2内に浸出する地下水の目標温度が記憶され、熱電対4が検知した地下水の温度情報が入力されると共に、その温度情報を回収制御装置13に出力する。
【0025】
予熱装置20は、予熱穴21内に浸出するVOCを含む地下水を加熱して土壌の透水係数を高くするもので、予熱穴21と予熱接続装置24を有している。予熱穴21は、回収井戸2と同様に構成され、図1に示すように、下部にスリット21aが設けられ、上部に蓋21bを有する筒体を埋設して形成される。予熱穴21は、図2に示すように、汚染域Apoに回収井戸2よりも密に設けられる。予熱穴21は、浸出するVOCを含む地下水を予熱するヒータ22と地下水の温度を検知する熱電対23が内部に設けられている。また、予熱穴21は、熱電対23が検知した地下水の温度をもとにヒータ22による地下水の加熱温度を制御する予熱制御装置24が設けられている。予熱制御装置24は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力され、これらの信号に基づいてヒータ22による予熱や水温のモニタの開始及び停止を制御する。また、予熱制御装置24には、予めヒータ22によって予熱する地下水の目標温度が記憶されている。予熱穴21は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとする。
【0026】
ここで、予熱穴21に浸出した地下水をヒータ22によって予熱すると、予熱穴21内の地下水の温度が上昇する結果、地下水の動粘性係数が低下し、土壌の透水係数が高くなる。このため、予熱された地下水は、土壌中を流動し易くなり、汚染土壌中のVOCを巻き込んだ回収井戸2への浸出が促進される。このため、地下水をヒータ22によって予熱すると、汚染土壌中のVOCの回収効率が高くなる。また、予熱穴21内の地下水を予熱することによって、対流伝熱によって予熱穴21の周囲の土壌も加熱され、副次的効果として予熱穴21周囲の土壌を汚染しているVOCが気化する。この結果、気化したVOCガスは、土壌中を移動し易くなり、回収井戸2への漏れ出しが促進される。
【0027】
従って、回収井戸2の地下水の加熱温度や予熱穴21内の地下水の予熱温度は、動粘性係数の低下及びVOCの気化の双方を考慮して決定する。但し、汚染域Apoに存在する地下水や土壌の比熱の違いによって伝熱効率が相違することから、地下水の加熱温度を高く設定し過ぎると、伝熱効率の違いによって加熱エネルギーが無駄になる場合があるので、汚染域Apo毎に予熱温度や加熱温度を設定することが望ましい。
【0028】
注水装置30は、回収井戸2における揚水によって地下水の量が減少した回収井戸2や予熱穴21に地下水を補充するもので、注水井戸31,注水ポンプ34、加熱槽35及び注水接続装置36を有している。
【0029】
注水井戸31は、回収井戸2と同様に構成され、図1に示すように、下部にスリット31aが設けられ、上部に蓋31bを有する筒体を埋設して形成される。注水井戸31は、図2に示すように、矢印Aで示す地下水の流動方向から見て汚染域Apoの上流側に設けられる。注水井戸31は、地下水の水位を検知する水位計32が内部に設けられている。このとき、注水井戸31は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとする。
【0030】
また、注水井戸31は、注水ポンプ34との間が注水管33を介して接続され、加熱槽35内の加熱水が注水ポンプ34によって注水される。注水制御装置36は、水位計32が検知した地下水の水位をもとに注水ポンプ34又は加熱槽35の作動を制御する。注水制御装置36は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力される。注水制御装置36は、これらの信号に基づいて水位のモニタ開始及び停止とモニタした水位に基づく加熱水の注水開始及び停止を制御する。注水制御装置36には、加熱水の注水を開始する目標水位が予め記憶されている。
【0031】
以上のように構成される土壌浄化システムは、汚染域Apoの土壌を以下のようにして浄化する。先ず、土壌浄化システムの電源をオンすると、浄化装置1、予熱装置20及び注水装置30が起動する。このとき、浄化装置1は、温度接続装置14の制御の下に、図4に示すように、回収井戸2内のヒータ3が地下水を加熱する。これと共に、予熱装置20は、予熱制御装置24の制御の下に、予熱穴21内のヒータ22が地下水を予熱する。ここで、図4以降の説明で使用する図においては、地下水の水位をWで示している。
【0032】
次に、熱電対4によって検知された回収井戸2内の地下水の水温が目標温度まで加熱されたら、浄化装置1は、回収制御装置13が、温度制御装置14から出力される温度情報に基づいて起動信号を出力し、回収ポンプ10を起動する。これにより、ヒータ3によって地下水を加熱した状態で、回収ポンプ10は、図5に示すように、吸引管6によって回収井戸2の上部に漏れ出したVOCガスを含む気体を吸引し、ガス処理装置17へ導入する。このとき、回収制御装置13は、濃度センサ11から入力される濃度信号によってVOCガスの濃度をモニタし、予め設定した目標濃度になるまでVOCガスを含む気体を吸引する。また、吸引したVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12によって浄化処理される。
【0033】
VOCガスを含む気体の吸引によって回収井戸2内のVOCガスの濃度が目標濃度まで低下したら、回収制御装置13は、ヒータ3による地下水の加熱停止を濃度制御装置19に指令すると共に、揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水に切り替え、気水分離器8を介して曝気処理装置9へ地下水を導入する。これにより、VOCを含む地下水は、曝気処理装置9で浄化処理される。一方、回収井戸2は、地下水の揚水によって、図6に示すように、地下水の水位Wがヒータ3による加熱ができない下限水位WLまで低下する。この地下水の揚水により、回収井戸2は、内部の圧力が低下し、周囲の土壌から地下水が浸入し易くなる。また、地下水の水位Wが下限水位WLまで低下した場合、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、回収ポンプ10に制御信号を出力して停止させると共に、水位情報を温度制御装置14に出力する。これにより、温度制御装置14は、ヒータ3に制御信号を出力し、加熱を停止させる。
【0034】
次いで、回収制御装置13は、温度制御装置14及び回収ポンプ10に制御信号を出力し、図7に示すように、吸引管6によるVOCガスを含む気体の吸引と、ヒータ3による地下水の加熱を再開する。これにより、回収井戸2は、更に内部の圧力が低下し、地下水の予熱によって予熱穴21及びその周囲の土壌の温度が上昇し、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に透水係数が高くなった周囲の土壌から矢印で示すように強制的に吸い寄せられる。このため、回収井戸2は、地下水の水位WとVOCガスの濃度が上昇してゆく。但し、この場合の水位Wの上昇速度やVOCガス濃度の上昇速度は、予熱穴21内の地下水を予熱しない場合に比べると数倍速くなっている。
【0035】
そして、周囲からの地下水の浸入によって回収井戸2内の水位が上昇するのに伴い、地下水の流動方向から見て回収井戸2の上流側に位置する予熱穴21や注水井戸31では、地下水の水位が下がってゆく。このため、図8に示すように、注水制御装置36の制御の下に、加熱槽35の加熱水が注水管33から注水井戸31に注入される。このようにして注水井戸31に注入された加熱水は、VOCを巻き込みながら低温の水に比べて速い速度で透水係数が高くなった土壌中を浸透し、予熱穴21を経由するか、或いは直接回収井戸2に浸出する。従って、地下水をヒータ3やヒータ22によって加熱或いは予熱することにより、汚染土壌中のVOCの回収効率が高くなる。このとき、加熱水によって気化したVOCガスも土壌中を気体と共に速やかに移動し、回収井戸2に漏れ出す。
【0036】
そして、回収井戸2の地下水が上限水位まで上昇した後、再び、上述のVOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返すことによって、汚染域の土壌を浄化してゆく。本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、このようなVOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返しながら、地下水を予熱し、回収井戸2にVOCを含む地下水とVOCガスを含む気体を高い回収効率の下に迅速に集めて回収し、VOCを浄化する。このとき、図4に示すように、ヒータ22によって各予熱穴21内の地下水の予熱をしていれば、図5に示す回収井戸2におけるVOCガスを含む気体の吸引とヒータ3による地下水の加熱、図6に示す揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水、並びに図7に示す吸引管6によるVOCガスを含む気体の再吸引とヒータ3による地下水の再加熱、の各操作は、適宜順序を入れ替えて行ってもよい。
【0037】
次に、図9に示すフローチャートを参照して本発明の土壌浄化システムの洗浄装置1におけるVOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順について説明する。
【0038】
土壌浄化システムの電源をオンすると、温度制御装置14は、図9に示すように、回収井戸2内のVOCを含む地下水をヒータ3によって目標温度まで加熱する温度制御処理を実行する(ステップS102)。
【0039】
次に、温度制御装置14は、熱電対4から入力された温度情報をもとに回収井戸2内の地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS104)。地下水が目標温度以上でない場合(ステップS104,No)、温度制御装置14は、ステップS102に戻り、地下水が目標温度以上になるまで温度制御処理を実行する。一方、回収井戸2内の地下水が目標温度以上の場合(ステップS104,Yes)、回収制御装置13は、起動信号を出力して回収ポンプ10を起動する(ステップS106)。
【0040】
次いで、回収制御装置13は、VOCガスを含む気体の前吸引処理を実行する(ステップS108)。VOCガスを含む気体の前吸引処理においては、吸引管6を通って吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12に導入され、浄化される。
【0041】
その後、回収制御装置13は、濃度センサ11に検知された吸引した気体中のVOCガスの濃度が目標濃度以下か否かを判断する(ステップS110)。VOCガスの濃度が、目標濃度を超えている場合(ステップS110,No)、回収制御装置13は、ステップS108に戻り、VOCガスの濃度が目標濃度以下になるまでVOCガスを含む気体の前吸引処理を実行する。一方、VOCガスの濃度が目標濃度以下の場合(ステップS110,Yes)、回収制御装置13は、揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水処理を実行する(ステップS112)。揚水管7によって揚水されたVOCを含む地下水は、気水分離器8を介して曝気処理装置9へ導入され、VOCを浄化した清浄な地下水が曝気処理装置9から排出される。
【0042】
次に、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、地下水の水位が下限水位か否かを判断する(ステップS114)。地下水の水位が下限水位でない場合(ステップS114,No)、回収制御装置13は、ステップS112に戻り、地下水の水位が下限水位になるまで揚水処理を実行する。一方、地下水の水位が下限水位の場合(ステップS114,Yes)、回収制御装置13は、VOCガスを含む気体の後吸引処理を実行する(ステップS116)。
【0043】
このVOCガスを含む気体の後吸引処理は、地下水の揚水による回収井戸2内部の圧力が低下し、予熱及び加熱によって地下水の温度が上昇し、土壌の透水係数が高くなった状態で実行される。このため、後吸引処理は、ステップS108の前吸引処理に比べると、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に周囲の土壌から回収井戸2へ強制的に吸い出される。このため、後吸引処理においては、回収井戸2の地下水の水位が下限水位からゆっくりと上昇しながら、VOCガス濃度が上昇してゆく。このとき、吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12に導入されてVOCガスが浄化される。
【0044】
次いで、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、地下水の水位が上限水位以上か否かを判断する(ステップS118)。地下水の水位が上限水位を超えていない場合(ステップS118,No)、回収制御装置13は、ステップS116に戻り、地下水の水位が上限水位以上になるまでVOCガスを含む気体の後吸引処理を実行する。一方、地下水の水位が上限水位以上の場合(ステップS118,Yes)、地下水の水位が元の状態に回復しているので、回収制御装置13は、停止信号を出力して回収ポンプ16を停止する(ステップS120)。
【0045】
その後、回収制御装置13は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS122)。電源がオフされたか否かは、入力される土壌浄化システムの電源のオフ信号から回収制御装置13が判断する。電源がオフされていない場合(ステップS122,No)、回収制御装置13は、ステップS102に戻って、VOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順を繰り返す。一方、電源がオフされている場合(ステップS122,Yes)、回収制御装置13は、回収制御を終了する。
【0046】
次に、図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理について説明する。図10は、図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0047】
温度制御装置14は、図10に示すように、起動信号を出力してヒータ3をオンする(ステップS202)。次に、温度制御装置14は、熱電対4が検知した地下水の温度に関する水温情報を取得する(ステップS204)。
【0048】
次に、温度制御装置14は、取得した水温情報から地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS206)。回収井戸2の地下水が目標温度を超えていない場合(ステップS206,No)、温度制御装置14は、ステップS204に戻り、地下水が目標温度以上になるまで水温情報を取得する。一方、地下水が目標温度以上の場合(ステップS206,Yes)、温度制御装置14は、停止信号を出力してヒータ3をオフにする(ステップS208)。これにより、回収井戸2は、ヒータ3による地下水の加熱が停止し、予熱されている予熱穴21内のVOCを含む地下水が浸出し、気化したVOCガスが漏れ出してくる。
【0049】
その後、温度制御装置14は、再び地下水の温度情報を取得し(ステップS210)、地下水の温度制御処理を終了する。
【0050】
次に、図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理について説明する。図11は、図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【0051】
回収制御装置13は、図11に示すように、吸引管6からVOCガスを含む気体を吸引させる(ステップS222)。このVOCガスを含む気体の吸引は、回収制御装置13が作動信号を出力し、信号吸引管6の弁を開き、揚水管7の弁を閉じ、吸引管6から回収井戸2内上部の気体を吸引することによって達成される。これにより、回収井戸2内上部の気体が、吸引管6から気水分離器8、回収ポンプ10及び濃度センサ11を経てガス処理装置12へ導入される。ガス処理装置12は、VOCガスを浄化処理した清浄な気体(空気)を排出する。
【0052】
次いで、回収制御装置13は、濃度センサ11が検知したVOCガスの濃度情報を取得し(ステップS224)、VOCガスを含む気体の前吸引処理を終了する。
【0053】
次に、図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理について説明する。図12は、図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
回収制御装置13は、図12に示すように、揚水管7からVOCを含む地下水を揚水する(ステップS242)。この地下水の揚水は、回収制御装置13が作動信号を出力し、吸引管6の弁を閉じると共に、揚水管7の弁を開き、揚水管7によって回収井戸2内の地下水を吸引することによって達成される。揚水管7を通って揚水されたVOCを含む地下水は、気水分離器8でVOCガスを含む気体と分離された後、曝気処理装置9へ導入され、VOCを浄化した清浄な地下水が曝気処理装置9から排出される。
【0055】
その後、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報を取得し(ステップS244)、地下水の揚水処理を終了する。
【0056】
次に、図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理について説明する。図13は、図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
回収制御装置13は、図13に示すように、吸引管6からVOCガスを含む気体を吸引させる(ステップS262)。このVOCガスを含む気体の吸引は、地下水の揚水による回収井戸2内部の圧力が低下し、予熱及び加熱によって地下水の温度が上昇し、土壌の透水係数が高くなった状態で実行される。このため、VOCガスを含む気体の吸引に伴って、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に周囲の土壌から回収井戸2へ強制的に吸い出される。従って、回収井戸2は、地下水が下限水位からゆっくりと上昇すると共に、VOCガス濃度も緩慢に上昇してゆく。このようにして吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12でVOCガスが浄化され、清浄な気体となってガス処理装置12から排出される。
【0058】
その後、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報を取得し(ステップS264)、VOCガスを含む気体の後吸引処理を終了する。
【0059】
次に、本発明の土壌浄化システムの予熱装置20における予熱制御装置24によるVOCを含む地下水の予熱制御について説明する。図14は、予熱制御装置24によるVOCを含む地下水の予熱制御の手順を示すフローチャートである。
【0060】
土壌浄化システムの電源をオンすると、予熱制御装置24は、図14に示すように、ヒータ22をオンし(ステップS302)、予熱穴21内のVOCを含む地下水の予熱を開始する。次に、予熱制御装置24は、熱電対23が検知した地下水の温度に関する水温情報を取得する(ステップS304)。
【0061】
次いで、予熱制御装置24は、取得した水温情報から地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS306)。予熱穴21の地下水が目標温度を超えていない場合(ステップS306,No)、予熱制御装置24は、ステップS304に戻り、地下水が目標温度以上になるまで水温情報を取得する。一方、地下水が目標温度以上の場合(ステップS306,Yes)、予熱制御装置24は、停止信号を出力してヒータ22をオフにする(ステップS308)。これにより、ヒータ22は、予熱穴21内の地下水の予熱を停止する。
【0062】
その後、予熱制御装置24は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS310)。電源がオフされたか否かは、入力される土壌浄化システムの電源のオフ信号から予熱制御装置24が判断する。電源がオフされていない場合(ステップS310,No)、予熱制御装置24は、ステップS302に戻って、ヒータ22をオンし、地下水の予熱を開始する。一方、電源がオフされている場合(ステップS310,Yes)、予熱制御装置24は、地下水の予熱制御を終了する。
【0063】
次に、本発明の土壌浄化システムの注水装置30における注水制御装置36による加熱水の注水制御について説明する。図15は、注水制御装置36による加熱水の注水制御の手順を示すフローチャートである。
【0064】
土壌浄化システムの電源をオンすると、注水制御装置36は、図15に示すように、水位計32が検知した地下水の水位に関する水位情報を取得する(ステップS322)。
【0065】
次に、注水制御装置36は、取得した水位情報から地下水が目標水位以下か否かを判断する(ステップS324)。注水井戸31の水位が目標水位以下でない場合(ステップS324,No)、注水制御装置36は、ステップS322に戻り、地下水が目標水位以下になるまで水位情報を取得する。一方、地下水の水位が目標水位以下の場合(ステップS324,Yes)、注水制御装置36は、注水井戸31に注水する(ステップS326)。この注水は、注水制御装置36が起動信号を出力し、注水ポンプ34を起動することにより行う。これにより、注水井戸31は、加熱槽35の加熱水が注水管33から注水され、水位がゆっくりと上昇してゆく。この水位の上昇に伴って、注水された加熱水が注水井戸31から浸出し、土壌内を地下水の流下方向に沿って流下する。この流下の際に、加熱水は、汚染域Apoの土壌からVOCを巻き込み、隣接する予熱穴21や回収井戸2に浸出してゆく。このため、地下水は、汚染土壌中のVOCを高い効率の下に回収する。
【0066】
次いで、注水制御装置36は、加熱水の注水によって注水井戸31の水位が目標水位を超えたか否かを判断する(ステップS328)。注水井戸31の水位が目標水位を超えていない場合(ステップS328,No)、注水制御装置36は、ステップS326に戻り、地下水が目標水位以上になるまで水位情報を取得する。一方、地下水の水位が目標水位を超えている場合(ステップS328,Yes)、注水制御装置36は、停止信号を出力して注水ポンプ34を停止し、注水井戸31への注水を停止する(ステップS330)。注水井戸31への注水を停止しても、回収井戸2は、VOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返しているので、VOCを含む地下水とVOCガスを含む気体を回収し、浄化している。
【0067】
その後、注水制御装置36は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS332)。電源がオフされていない場合(ステップS332,No)、注水制御装置36は、ステップS322に戻って、水位情報の取得を開始する。一方、電源がオフされている場合(ステップS332,Yes)、注水制御装置36は、加熱水の注水制御を終了する。
【0068】
本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、回収井戸周囲の汚染域内に設けた複数の予熱穴内の予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する。このため、予熱された地下水は、動粘性係数が低下し、土壌の透水係数が高くなることから、土壌中を流動し易くなり、回収井戸への浸出が促進される。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、汚染土壌中の汚染物質の回収効率が高く、汚染物質を前記汚染域から迅速に除去し、浄化することができ、特に、粘土等の難透水性土壌に適用すると、汚染物質を迅速に除去、浄化することができる。
【0069】
また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって汚染域の土壌から汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを流下させて回収井戸で回収する。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水中の汚染物質の濃度が低濃度から環境基準の1万倍を超える高濃度の広い範囲に亘って適用することができ、例えば、局部的に高濃度に汚染された汚染域の浄化の他、汚染物質が拡散した広範囲に亘る低濃度の汚染域の汚染域の浄化にも適用することができる。
【0070】
ここで、上述の実施の形態は、汚染物質がVOCの場合について説明した。しかし、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって流下する汚染物質であれば、浄化対象としてVOCに限定されるものではなく、例えば、重金属やガソリン,軽油等の油など、水溶性,非水溶性を問わず種々の汚染物質の浄化に対して適用することが可能である。
【0071】
また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、汚染域の地下水を予熱し、予熱した地下水によって汚染物質を流下するが、予熱穴の地下水に、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩の水溶液を中和調整して注入してもよい。この場合、中和調整した亜硫酸水素塩の水溶液は、汚染物質であるVOCを還元的脱塩素反応によって還元分解する還元剤として作用し、VOCを浄化するため、汚染物質を含む地下水を回収する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかる土壌浄化方法を用いた土壌浄化システムを示す断面図である。
【図2】図1の土壌浄化システムを構成する回収井戸、予熱穴及び注水井戸の配置の一例を示す平面図である。
【図3】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図4】図1の土壌浄化システムにおいて、回収井戸内のヒータが地下水を加熱すると共に、予熱穴内のヒータが地下水を予熱する様子を模式的に示す断面図である。
【図5】回収井戸の地下水が目標温度まで加熱され、ヒータによって地下水を加熱した状態で、吸引管からVOCガスを含む気体を吸引する様子を模式的に示す断面図である。
【図6】揚水管によって地下水を揚水することで、地下水の水位が下限水位まで低下した様子を模式的に示す断面図である。
【図7】図6において、吸引管による吸引と、ヒータによる地下水の加熱を再開した様子を模式的に示す断面図である。
【図8】図6の回収井戸の水位が上昇するのに伴い、上流側の注水井戸の地下水の水位が下がり、注水井戸に加熱水を注入する様子を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の土壌浄化システムの洗浄装置におけるVOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順について説明するフローチャートである。
【図10】図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の土壌浄化システムの予熱装置における予熱制御装置によるVOCを含む地下水の予熱制御の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の土壌浄化システムの注水装置における注水制御装置による加熱水の注水制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 浄化装置
2 回収井戸
2a スリット
2b 蓋
3 ヒータ
4 熱電対
5 水位計
6 吸引管
7 揚水管
8 気水分離器
9 曝気処理装置
10 回収ポンプ
11 濃度センサ
12 ガス処理装置
13 回収制御装置
14 温度制御装置
20 予熱装置
21 予熱穴
21a スリット
21b 蓋
22 ヒータ
23 熱電対
24 予熱制御装置
30 注水装置
31 注水井戸
31a スリット
31b 蓋
32 水位計
33 注水管
34 注水ポンプ
35 加熱槽
36 注水制御装置
Af 不透水層
Apo 汚染域
Lu 不飽和層
Lp 透水層
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌浄化システム及び土壌浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染された土壌を浄化する場合、例えば、ジクロロエタンやトリクロロエチレン等の揮発性有機化合物(VOC)で汚染された汚染域に井戸を掘削し、井戸内に浸出した地下水を汲み上げると共に、井戸内の空気を減圧吸引し、気化した前記VOCガスや地下水に含まれるVOCを処理することによって土壌を浄化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−10130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汲み上げた地下水や土壌から気化したガス中に含まれる汚染物質を除去する従来の汚染土壌の浄化方法は、汚染域の土壌が粘土等の難透水性土壌の場合、地下水の浸出速度が遅く、揚水量が少ないことから、汚染物質の除去に膨大な時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地下水に含まれる汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを迅速に除去することが可能な土壌浄化システム及び土壌浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌浄化システムは、汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸を有する浄化装置を備え、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムであって、前記回収井戸周囲の前記汚染域内に掘削される複数の予熱穴と、前記各予熱穴内に設置され、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱する予熱手段と、を有した予熱装置を備え、前記予熱手段が、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって前記地下水の前記回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸内に設けられ、当該回収井戸に浸出する地下水を加熱する加熱手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記予熱装置は、各予熱穴内の前記地下水の温度を検知する水温検知手段と、検知した水温をもとに前記予熱手段による前記地下水の予熱温度を制御する予熱温度制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に掘削される注水井戸と、用水を加熱して加熱水とする加熱槽と、前記加熱水を当該注水井戸に注水する注水手段と、を有する注水装置を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸に浸出した前記地下水の水位を検知する水位検知手段と、前記回収井戸に漏れ出した前記汚染物質が気化した気体の濃度を検知する濃度検知手段と、検知した前記地下水の水位と前記気体の濃度とをもとに前記気体及び前記汚染物質を含む地下水の回収を制御する回収制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記浄化装置は、前記回収井戸に浸出した地下水の温度を検知する水温検知手段と、検知した水温をもとに前記加熱手段による前記地下水の加熱温度を制御する温度制御手段と、をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に係る土壌浄化システムは、上記の発明において、前記注水装置は、前記注水井戸に注水される加熱水の水位を検知する水位検知手段と、検知した加熱水の水位をもとに前記加熱槽又は前記注水手段の作動を制御する注水制御手段と、をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明の請求項8に係る土壌浄化方法は、汚染物質による汚染域に設けた回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化方法であって、前記回収井戸周囲の前記汚染域内に存在する地下水を予熱し、前記回収井戸への前記地下水の浸出を促進させる工程と、予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出した前記汚染物質を含む地下水を回収し、浄化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9に係る土壌浄化方法は、上記の発明において、前記土壌浄化方法は、前記回収井戸に浸出した地下水を加熱する浸出水加熱工程をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項10に係る土壌浄化方法は、上記の発明において、前記土壌浄化方法は、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に加熱水を注水する注水工程をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、回収井戸周囲の汚染域内に設けた複数の予熱穴内の地下水を予熱して地下水の動粘性係数を低下させ、土壌の透水係数が高くなることから、予熱した地下水が土壌中を流動し易くなり、回収井戸への浸出が促進される。従って、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水に含まれる汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを汚染域の土壌から迅速に除去、浄化することができ、特に、粘土等の難透水性土壌に適用すると、汚染物質を迅速に除去、浄化することができる。また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって汚染域の土壌から汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを流下させて回収井戸で回収する。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水中の汚染物質の濃度が低濃度から環境基準の1万倍を超える高濃度の広い範囲に亘って適用することができ、例えば、局部的に高濃度に汚染された汚染域の浄化の他、汚染物質が拡散した広範囲に亘る低濃度の汚染域の汚染域の浄化にも適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る土壌浄化システム及び土壌浄化方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明にかかる土壌浄化方法を用いた土壌浄化システムを示す断面図である。図2は、図1の土壌浄化システムを構成する回収井戸、予熱穴及び注水井戸の配置の一例を示す平面図である。図3は、図2のC−C線に沿った断面図である。
【0018】
土壌浄化システムは、図1に示すように、汚染物質、例えば、揮発性有機化合物(VOC)で汚染された汚染域Apoに設置され、浄化装置1、予熱装置20及び注水装置30を備えている。
【0019】
浄化装置1は、回収井戸2、気水分離器8、曝気処理装置9、回収ポンプ10、濃度センサ11、ガス処理装置12回収制御装置13及び温度制御装置14を有している。
【0020】
回収井戸2は、汚染域Apoに設けてVOCが気化したVOCガスを含む気体及びVOCを含む地下水を回収する井戸であり、図2に示すように、汚染域Apoの水平方向の広がりに応じて適宜の数が掘削される。回収井戸2は、図1に示すように、下部にスリット2aが設けられ、上部に蓋2bを有する筒体を埋設して形成されている。回収井戸2は、スリット2aを通って周囲の土壌から浸出した地下水を加熱するヒータ3、地下水の温度を検知する熱電対4及び地下水の水位を検知する水位計5が内部に設けられている。
【0021】
このとき、回収井戸2は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとし、地下水の水位は、図中、符号Wで示す位置にある。また、回収井戸2は、吸引管6と揚水管7を介して気水分離器8と接続されている。気水分離器8は、それぞれ曝気処理装置9と接続されると共に、回収ポンプ10を介してガス処理装置12と接続され、分離したVOCガスを含む気体をガス処理装置12で浄化し、地下水に含まれるVOCを曝気処理装置9で浄化する。
【0022】
ここで、吸引管6及び揚水管7は、それぞれ図示しない弁が設けられ、前記弁の開閉を切り替えることによって回収ポンプ10によるVOCガスを含む気体の吸引とVOCを含む地下水の吸引とを個別に実行し、或いは双方同時に実行することができる。また、曝気処理装置9は、VOCを含む地下水をエアレーションしてVOCを気化させた後、気化したVOCを活性炭に吸着処理させることによって浄化する。ガス処理装置12は、VOCガスを、活性炭による吸着処理、触媒を用いた分解処理、或いは燃焼による焼却処理等によって浄化する。
【0023】
吸引管6は、周囲の土壌から回収井戸2の内部に漏れ出したVOCガスを含む気体を回収する。揚水管7は、浸出した地下水を回収井戸2から回収する。回収ポンプ10は、VOCガスを含む気体とVOCを含む地下水を気水分離器8によって分離回収するポンプであり、VOCを含む地下水は曝気処理装置9へ搬送され、VOCガスを含む気体はガス処理装置12へ搬送される。また、回収ポンプ10とガス処理装置12との間には、回収したVOCガスの濃度を検知する濃度センサ11が設けられている。回収制御装置13は、熱電対4が検知した地下水の温度と、水位計5が検知した地下水の水位と、濃度センサ11が検知したVOCガスの濃度とをもとにVOCガスを含む気体とVOCを含む地下水の回収を制御する。温度制御装置14は、熱電対4が検知した地下水の温度をもとにヒータ3による地下水の加熱温度を制御する。
【0024】
このとき、回収制御装置13及び温度制御装置14は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力される。回収制御装置13は、予め上限水位,下限水位及びVOCガスの目標濃度が記憶されている。上限水位は、例えば、回収井戸2の通常の水位が設定され、下限水位は、地下水を揚水可能な下限値が設定される。VOCガスの目標濃度は、回収井戸2内でモニタされるVOCガスの濃度をもとに、回収サイクルの最適化の観点から決定する。一方、温度制御装置14は、予め回収井戸2内に浸出する地下水の目標温度が記憶され、熱電対4が検知した地下水の温度情報が入力されると共に、その温度情報を回収制御装置13に出力する。
【0025】
予熱装置20は、予熱穴21内に浸出するVOCを含む地下水を加熱して土壌の透水係数を高くするもので、予熱穴21と予熱接続装置24を有している。予熱穴21は、回収井戸2と同様に構成され、図1に示すように、下部にスリット21aが設けられ、上部に蓋21bを有する筒体を埋設して形成される。予熱穴21は、図2に示すように、汚染域Apoに回収井戸2よりも密に設けられる。予熱穴21は、浸出するVOCを含む地下水を予熱するヒータ22と地下水の温度を検知する熱電対23が内部に設けられている。また、予熱穴21は、熱電対23が検知した地下水の温度をもとにヒータ22による地下水の加熱温度を制御する予熱制御装置24が設けられている。予熱制御装置24は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力され、これらの信号に基づいてヒータ22による予熱や水温のモニタの開始及び停止を制御する。また、予熱制御装置24には、予めヒータ22によって予熱する地下水の目標温度が記憶されている。予熱穴21は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとする。
【0026】
ここで、予熱穴21に浸出した地下水をヒータ22によって予熱すると、予熱穴21内の地下水の温度が上昇する結果、地下水の動粘性係数が低下し、土壌の透水係数が高くなる。このため、予熱された地下水は、土壌中を流動し易くなり、汚染土壌中のVOCを巻き込んだ回収井戸2への浸出が促進される。このため、地下水をヒータ22によって予熱すると、汚染土壌中のVOCの回収効率が高くなる。また、予熱穴21内の地下水を予熱することによって、対流伝熱によって予熱穴21の周囲の土壌も加熱され、副次的効果として予熱穴21周囲の土壌を汚染しているVOCが気化する。この結果、気化したVOCガスは、土壌中を移動し易くなり、回収井戸2への漏れ出しが促進される。
【0027】
従って、回収井戸2の地下水の加熱温度や予熱穴21内の地下水の予熱温度は、動粘性係数の低下及びVOCの気化の双方を考慮して決定する。但し、汚染域Apoに存在する地下水や土壌の比熱の違いによって伝熱効率が相違することから、地下水の加熱温度を高く設定し過ぎると、伝熱効率の違いによって加熱エネルギーが無駄になる場合があるので、汚染域Apo毎に予熱温度や加熱温度を設定することが望ましい。
【0028】
注水装置30は、回収井戸2における揚水によって地下水の量が減少した回収井戸2や予熱穴21に地下水を補充するもので、注水井戸31,注水ポンプ34、加熱槽35及び注水接続装置36を有している。
【0029】
注水井戸31は、回収井戸2と同様に構成され、図1に示すように、下部にスリット31aが設けられ、上部に蓋31bを有する筒体を埋設して形成される。注水井戸31は、図2に示すように、矢印Aで示す地下水の流動方向から見て汚染域Apoの上流側に設けられる。注水井戸31は、地下水の水位を検知する水位計32が内部に設けられている。このとき、注水井戸31は、図3に示すように、汚染域Apo表層の不飽和層Luから少なくとも透水層Lpと不透水層Afとの境界までの深さを有するものとする。
【0030】
また、注水井戸31は、注水ポンプ34との間が注水管33を介して接続され、加熱槽35内の加熱水が注水ポンプ34によって注水される。注水制御装置36は、水位計32が検知した地下水の水位をもとに注水ポンプ34又は加熱槽35の作動を制御する。注水制御装置36は、CPUなどによって実現され、土壌浄化システムの電源のオン,オフ信号が入力される。注水制御装置36は、これらの信号に基づいて水位のモニタ開始及び停止とモニタした水位に基づく加熱水の注水開始及び停止を制御する。注水制御装置36には、加熱水の注水を開始する目標水位が予め記憶されている。
【0031】
以上のように構成される土壌浄化システムは、汚染域Apoの土壌を以下のようにして浄化する。先ず、土壌浄化システムの電源をオンすると、浄化装置1、予熱装置20及び注水装置30が起動する。このとき、浄化装置1は、温度接続装置14の制御の下に、図4に示すように、回収井戸2内のヒータ3が地下水を加熱する。これと共に、予熱装置20は、予熱制御装置24の制御の下に、予熱穴21内のヒータ22が地下水を予熱する。ここで、図4以降の説明で使用する図においては、地下水の水位をWで示している。
【0032】
次に、熱電対4によって検知された回収井戸2内の地下水の水温が目標温度まで加熱されたら、浄化装置1は、回収制御装置13が、温度制御装置14から出力される温度情報に基づいて起動信号を出力し、回収ポンプ10を起動する。これにより、ヒータ3によって地下水を加熱した状態で、回収ポンプ10は、図5に示すように、吸引管6によって回収井戸2の上部に漏れ出したVOCガスを含む気体を吸引し、ガス処理装置17へ導入する。このとき、回収制御装置13は、濃度センサ11から入力される濃度信号によってVOCガスの濃度をモニタし、予め設定した目標濃度になるまでVOCガスを含む気体を吸引する。また、吸引したVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12によって浄化処理される。
【0033】
VOCガスを含む気体の吸引によって回収井戸2内のVOCガスの濃度が目標濃度まで低下したら、回収制御装置13は、ヒータ3による地下水の加熱停止を濃度制御装置19に指令すると共に、揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水に切り替え、気水分離器8を介して曝気処理装置9へ地下水を導入する。これにより、VOCを含む地下水は、曝気処理装置9で浄化処理される。一方、回収井戸2は、地下水の揚水によって、図6に示すように、地下水の水位Wがヒータ3による加熱ができない下限水位WLまで低下する。この地下水の揚水により、回収井戸2は、内部の圧力が低下し、周囲の土壌から地下水が浸入し易くなる。また、地下水の水位Wが下限水位WLまで低下した場合、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、回収ポンプ10に制御信号を出力して停止させると共に、水位情報を温度制御装置14に出力する。これにより、温度制御装置14は、ヒータ3に制御信号を出力し、加熱を停止させる。
【0034】
次いで、回収制御装置13は、温度制御装置14及び回収ポンプ10に制御信号を出力し、図7に示すように、吸引管6によるVOCガスを含む気体の吸引と、ヒータ3による地下水の加熱を再開する。これにより、回収井戸2は、更に内部の圧力が低下し、地下水の予熱によって予熱穴21及びその周囲の土壌の温度が上昇し、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に透水係数が高くなった周囲の土壌から矢印で示すように強制的に吸い寄せられる。このため、回収井戸2は、地下水の水位WとVOCガスの濃度が上昇してゆく。但し、この場合の水位Wの上昇速度やVOCガス濃度の上昇速度は、予熱穴21内の地下水を予熱しない場合に比べると数倍速くなっている。
【0035】
そして、周囲からの地下水の浸入によって回収井戸2内の水位が上昇するのに伴い、地下水の流動方向から見て回収井戸2の上流側に位置する予熱穴21や注水井戸31では、地下水の水位が下がってゆく。このため、図8に示すように、注水制御装置36の制御の下に、加熱槽35の加熱水が注水管33から注水井戸31に注入される。このようにして注水井戸31に注入された加熱水は、VOCを巻き込みながら低温の水に比べて速い速度で透水係数が高くなった土壌中を浸透し、予熱穴21を経由するか、或いは直接回収井戸2に浸出する。従って、地下水をヒータ3やヒータ22によって加熱或いは予熱することにより、汚染土壌中のVOCの回収効率が高くなる。このとき、加熱水によって気化したVOCガスも土壌中を気体と共に速やかに移動し、回収井戸2に漏れ出す。
【0036】
そして、回収井戸2の地下水が上限水位まで上昇した後、再び、上述のVOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返すことによって、汚染域の土壌を浄化してゆく。本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、このようなVOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返しながら、地下水を予熱し、回収井戸2にVOCを含む地下水とVOCガスを含む気体を高い回収効率の下に迅速に集めて回収し、VOCを浄化する。このとき、図4に示すように、ヒータ22によって各予熱穴21内の地下水の予熱をしていれば、図5に示す回収井戸2におけるVOCガスを含む気体の吸引とヒータ3による地下水の加熱、図6に示す揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水、並びに図7に示す吸引管6によるVOCガスを含む気体の再吸引とヒータ3による地下水の再加熱、の各操作は、適宜順序を入れ替えて行ってもよい。
【0037】
次に、図9に示すフローチャートを参照して本発明の土壌浄化システムの洗浄装置1におけるVOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順について説明する。
【0038】
土壌浄化システムの電源をオンすると、温度制御装置14は、図9に示すように、回収井戸2内のVOCを含む地下水をヒータ3によって目標温度まで加熱する温度制御処理を実行する(ステップS102)。
【0039】
次に、温度制御装置14は、熱電対4から入力された温度情報をもとに回収井戸2内の地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS104)。地下水が目標温度以上でない場合(ステップS104,No)、温度制御装置14は、ステップS102に戻り、地下水が目標温度以上になるまで温度制御処理を実行する。一方、回収井戸2内の地下水が目標温度以上の場合(ステップS104,Yes)、回収制御装置13は、起動信号を出力して回収ポンプ10を起動する(ステップS106)。
【0040】
次いで、回収制御装置13は、VOCガスを含む気体の前吸引処理を実行する(ステップS108)。VOCガスを含む気体の前吸引処理においては、吸引管6を通って吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12に導入され、浄化される。
【0041】
その後、回収制御装置13は、濃度センサ11に検知された吸引した気体中のVOCガスの濃度が目標濃度以下か否かを判断する(ステップS110)。VOCガスの濃度が、目標濃度を超えている場合(ステップS110,No)、回収制御装置13は、ステップS108に戻り、VOCガスの濃度が目標濃度以下になるまでVOCガスを含む気体の前吸引処理を実行する。一方、VOCガスの濃度が目標濃度以下の場合(ステップS110,Yes)、回収制御装置13は、揚水管7によるVOCを含む地下水の揚水処理を実行する(ステップS112)。揚水管7によって揚水されたVOCを含む地下水は、気水分離器8を介して曝気処理装置9へ導入され、VOCを浄化した清浄な地下水が曝気処理装置9から排出される。
【0042】
次に、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、地下水の水位が下限水位か否かを判断する(ステップS114)。地下水の水位が下限水位でない場合(ステップS114,No)、回収制御装置13は、ステップS112に戻り、地下水の水位が下限水位になるまで揚水処理を実行する。一方、地下水の水位が下限水位の場合(ステップS114,Yes)、回収制御装置13は、VOCガスを含む気体の後吸引処理を実行する(ステップS116)。
【0043】
このVOCガスを含む気体の後吸引処理は、地下水の揚水による回収井戸2内部の圧力が低下し、予熱及び加熱によって地下水の温度が上昇し、土壌の透水係数が高くなった状態で実行される。このため、後吸引処理は、ステップS108の前吸引処理に比べると、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に周囲の土壌から回収井戸2へ強制的に吸い出される。このため、後吸引処理においては、回収井戸2の地下水の水位が下限水位からゆっくりと上昇しながら、VOCガス濃度が上昇してゆく。このとき、吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12に導入されてVOCガスが浄化される。
【0044】
次いで、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報をもとに、地下水の水位が上限水位以上か否かを判断する(ステップS118)。地下水の水位が上限水位を超えていない場合(ステップS118,No)、回収制御装置13は、ステップS116に戻り、地下水の水位が上限水位以上になるまでVOCガスを含む気体の後吸引処理を実行する。一方、地下水の水位が上限水位以上の場合(ステップS118,Yes)、地下水の水位が元の状態に回復しているので、回収制御装置13は、停止信号を出力して回収ポンプ16を停止する(ステップS120)。
【0045】
その後、回収制御装置13は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS122)。電源がオフされたか否かは、入力される土壌浄化システムの電源のオフ信号から回収制御装置13が判断する。電源がオフされていない場合(ステップS122,No)、回収制御装置13は、ステップS102に戻って、VOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順を繰り返す。一方、電源がオフされている場合(ステップS122,Yes)、回収制御装置13は、回収制御を終了する。
【0046】
次に、図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理について説明する。図10は、図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0047】
温度制御装置14は、図10に示すように、起動信号を出力してヒータ3をオンする(ステップS202)。次に、温度制御装置14は、熱電対4が検知した地下水の温度に関する水温情報を取得する(ステップS204)。
【0048】
次に、温度制御装置14は、取得した水温情報から地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS206)。回収井戸2の地下水が目標温度を超えていない場合(ステップS206,No)、温度制御装置14は、ステップS204に戻り、地下水が目標温度以上になるまで水温情報を取得する。一方、地下水が目標温度以上の場合(ステップS206,Yes)、温度制御装置14は、停止信号を出力してヒータ3をオフにする(ステップS208)。これにより、回収井戸2は、ヒータ3による地下水の加熱が停止し、予熱されている予熱穴21内のVOCを含む地下水が浸出し、気化したVOCガスが漏れ出してくる。
【0049】
その後、温度制御装置14は、再び地下水の温度情報を取得し(ステップS210)、地下水の温度制御処理を終了する。
【0050】
次に、図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理について説明する。図11は、図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【0051】
回収制御装置13は、図11に示すように、吸引管6からVOCガスを含む気体を吸引させる(ステップS222)。このVOCガスを含む気体の吸引は、回収制御装置13が作動信号を出力し、信号吸引管6の弁を開き、揚水管7の弁を閉じ、吸引管6から回収井戸2内上部の気体を吸引することによって達成される。これにより、回収井戸2内上部の気体が、吸引管6から気水分離器8、回収ポンプ10及び濃度センサ11を経てガス処理装置12へ導入される。ガス処理装置12は、VOCガスを浄化処理した清浄な気体(空気)を排出する。
【0052】
次いで、回収制御装置13は、濃度センサ11が検知したVOCガスの濃度情報を取得し(ステップS224)、VOCガスを含む気体の前吸引処理を終了する。
【0053】
次に、図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理について説明する。図12は、図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
回収制御装置13は、図12に示すように、揚水管7からVOCを含む地下水を揚水する(ステップS242)。この地下水の揚水は、回収制御装置13が作動信号を出力し、吸引管6の弁を閉じると共に、揚水管7の弁を開き、揚水管7によって回収井戸2内の地下水を吸引することによって達成される。揚水管7を通って揚水されたVOCを含む地下水は、気水分離器8でVOCガスを含む気体と分離された後、曝気処理装置9へ導入され、VOCを浄化した清浄な地下水が曝気処理装置9から排出される。
【0055】
その後、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報を取得し(ステップS244)、地下水の揚水処理を終了する。
【0056】
次に、図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理について説明する。図13は、図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
回収制御装置13は、図13に示すように、吸引管6からVOCガスを含む気体を吸引させる(ステップS262)。このVOCガスを含む気体の吸引は、地下水の揚水による回収井戸2内部の圧力が低下し、予熱及び加熱によって地下水の温度が上昇し、土壌の透水係数が高くなった状態で実行される。このため、VOCガスを含む気体の吸引に伴って、VOCを含む地下水がVOCガスを含む気体と共に周囲の土壌から回収井戸2へ強制的に吸い出される。従って、回収井戸2は、地下水が下限水位からゆっくりと上昇すると共に、VOCガス濃度も緩慢に上昇してゆく。このようにして吸引されたVOCガスを含む気体は、ガス処理装置12でVOCガスが浄化され、清浄な気体となってガス処理装置12から排出される。
【0058】
その後、回収制御装置13は、水位計5から入力される水位情報を取得し(ステップS264)、VOCガスを含む気体の後吸引処理を終了する。
【0059】
次に、本発明の土壌浄化システムの予熱装置20における予熱制御装置24によるVOCを含む地下水の予熱制御について説明する。図14は、予熱制御装置24によるVOCを含む地下水の予熱制御の手順を示すフローチャートである。
【0060】
土壌浄化システムの電源をオンすると、予熱制御装置24は、図14に示すように、ヒータ22をオンし(ステップS302)、予熱穴21内のVOCを含む地下水の予熱を開始する。次に、予熱制御装置24は、熱電対23が検知した地下水の温度に関する水温情報を取得する(ステップS304)。
【0061】
次いで、予熱制御装置24は、取得した水温情報から地下水が目標温度以上か否かを判断する(ステップS306)。予熱穴21の地下水が目標温度を超えていない場合(ステップS306,No)、予熱制御装置24は、ステップS304に戻り、地下水が目標温度以上になるまで水温情報を取得する。一方、地下水が目標温度以上の場合(ステップS306,Yes)、予熱制御装置24は、停止信号を出力してヒータ22をオフにする(ステップS308)。これにより、ヒータ22は、予熱穴21内の地下水の予熱を停止する。
【0062】
その後、予熱制御装置24は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS310)。電源がオフされたか否かは、入力される土壌浄化システムの電源のオフ信号から予熱制御装置24が判断する。電源がオフされていない場合(ステップS310,No)、予熱制御装置24は、ステップS302に戻って、ヒータ22をオンし、地下水の予熱を開始する。一方、電源がオフされている場合(ステップS310,Yes)、予熱制御装置24は、地下水の予熱制御を終了する。
【0063】
次に、本発明の土壌浄化システムの注水装置30における注水制御装置36による加熱水の注水制御について説明する。図15は、注水制御装置36による加熱水の注水制御の手順を示すフローチャートである。
【0064】
土壌浄化システムの電源をオンすると、注水制御装置36は、図15に示すように、水位計32が検知した地下水の水位に関する水位情報を取得する(ステップS322)。
【0065】
次に、注水制御装置36は、取得した水位情報から地下水が目標水位以下か否かを判断する(ステップS324)。注水井戸31の水位が目標水位以下でない場合(ステップS324,No)、注水制御装置36は、ステップS322に戻り、地下水が目標水位以下になるまで水位情報を取得する。一方、地下水の水位が目標水位以下の場合(ステップS324,Yes)、注水制御装置36は、注水井戸31に注水する(ステップS326)。この注水は、注水制御装置36が起動信号を出力し、注水ポンプ34を起動することにより行う。これにより、注水井戸31は、加熱槽35の加熱水が注水管33から注水され、水位がゆっくりと上昇してゆく。この水位の上昇に伴って、注水された加熱水が注水井戸31から浸出し、土壌内を地下水の流下方向に沿って流下する。この流下の際に、加熱水は、汚染域Apoの土壌からVOCを巻き込み、隣接する予熱穴21や回収井戸2に浸出してゆく。このため、地下水は、汚染土壌中のVOCを高い効率の下に回収する。
【0066】
次いで、注水制御装置36は、加熱水の注水によって注水井戸31の水位が目標水位を超えたか否かを判断する(ステップS328)。注水井戸31の水位が目標水位を超えていない場合(ステップS328,No)、注水制御装置36は、ステップS326に戻り、地下水が目標水位以上になるまで水位情報を取得する。一方、地下水の水位が目標水位を超えている場合(ステップS328,Yes)、注水制御装置36は、停止信号を出力して注水ポンプ34を停止し、注水井戸31への注水を停止する(ステップS330)。注水井戸31への注水を停止しても、回収井戸2は、VOCガスを含む気体の吸引と地下水の揚水サイクルを繰り返しているので、VOCを含む地下水とVOCガスを含む気体を回収し、浄化している。
【0067】
その後、注水制御装置36は、土壌浄化システムの電源がオフされたか否かを判断する(ステップS332)。電源がオフされていない場合(ステップS332,No)、注水制御装置36は、ステップS322に戻って、水位情報の取得を開始する。一方、電源がオフされている場合(ステップS332,Yes)、注水制御装置36は、加熱水の注水制御を終了する。
【0068】
本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、回収井戸周囲の汚染域内に設けた複数の予熱穴内の予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する。このため、予熱された地下水は、動粘性係数が低下し、土壌の透水係数が高くなることから、土壌中を流動し易くなり、回収井戸への浸出が促進される。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、汚染土壌中の汚染物質の回収効率が高く、汚染物質を前記汚染域から迅速に除去し、浄化することができ、特に、粘土等の難透水性土壌に適用すると、汚染物質を迅速に除去、浄化することができる。
【0069】
また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって汚染域の土壌から汚染物質や土壌から気化した汚染物質のガスを流下させて回収井戸で回収する。このため、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、地下水中の汚染物質の濃度が低濃度から環境基準の1万倍を超える高濃度の広い範囲に亘って適用することができ、例えば、局部的に高濃度に汚染された汚染域の浄化の他、汚染物質が拡散した広範囲に亘る低濃度の汚染域の汚染域の浄化にも適用することができる。
【0070】
ここで、上述の実施の形態は、汚染物質がVOCの場合について説明した。しかし、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、予熱した地下水によって流下する汚染物質であれば、浄化対象としてVOCに限定されるものではなく、例えば、重金属やガソリン,軽油等の油など、水溶性,非水溶性を問わず種々の汚染物質の浄化に対して適用することが可能である。
【0071】
また、本発明の土壌浄化システム及び土壌浄化方法は、汚染域の地下水を予熱し、予熱した地下水によって汚染物質を流下するが、予熱穴の地下水に、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩の水溶液を中和調整して注入してもよい。この場合、中和調整した亜硫酸水素塩の水溶液は、汚染物質であるVOCを還元的脱塩素反応によって還元分解する還元剤として作用し、VOCを浄化するため、汚染物質を含む地下水を回収する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかる土壌浄化方法を用いた土壌浄化システムを示す断面図である。
【図2】図1の土壌浄化システムを構成する回収井戸、予熱穴及び注水井戸の配置の一例を示す平面図である。
【図3】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図4】図1の土壌浄化システムにおいて、回収井戸内のヒータが地下水を加熱すると共に、予熱穴内のヒータが地下水を予熱する様子を模式的に示す断面図である。
【図5】回収井戸の地下水が目標温度まで加熱され、ヒータによって地下水を加熱した状態で、吸引管からVOCガスを含む気体を吸引する様子を模式的に示す断面図である。
【図6】揚水管によって地下水を揚水することで、地下水の水位が下限水位まで低下した様子を模式的に示す断面図である。
【図7】図6において、吸引管による吸引と、ヒータによる地下水の加熱を再開した様子を模式的に示す断面図である。
【図8】図6の回収井戸の水位が上昇するのに伴い、上流側の注水井戸の地下水の水位が下がり、注水井戸に加熱水を注入する様子を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の土壌浄化システムの洗浄装置におけるVOCを含む地下水の温度制御処理、VOCガスを含む気体の吸引処理及びVOCを含む地下水の揚水処理の手順について説明するフローチャートである。
【図10】図9に示すVOCを含む地下水の温度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図9に示すVOCガスを含む気体の前吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図9に示すVOCを含む地下水の揚水処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図9に示すVOCガスを含む気体の後吸引処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の土壌浄化システムの予熱装置における予熱制御装置によるVOCを含む地下水の予熱制御の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の土壌浄化システムの注水装置における注水制御装置による加熱水の注水制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 浄化装置
2 回収井戸
2a スリット
2b 蓋
3 ヒータ
4 熱電対
5 水位計
6 吸引管
7 揚水管
8 気水分離器
9 曝気処理装置
10 回収ポンプ
11 濃度センサ
12 ガス処理装置
13 回収制御装置
14 温度制御装置
20 予熱装置
21 予熱穴
21a スリット
21b 蓋
22 ヒータ
23 熱電対
24 予熱制御装置
30 注水装置
31 注水井戸
31a スリット
31b 蓋
32 水位計
33 注水管
34 注水ポンプ
35 加熱槽
36 注水制御装置
Af 不透水層
Apo 汚染域
Lu 不飽和層
Lp 透水層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸を有する浄化装置を備え、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムであって、
前記回収井戸周囲の前記汚染域内に掘削される複数の予熱穴と、
前記各予熱穴内に設置され、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱する予熱手段と、
を有した予熱装置を備え、
前記予熱手段が、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって前記地下水の前記回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする土壌浄化システム。
【請求項2】
前記浄化装置は、前記回収井戸内に設けられ、当該回収井戸に浸出する地下水を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌浄化システム。
【請求項3】
前記予熱装置は、
各予熱穴内の前記地下水の温度を検知する水温検知手段と、
検知した水温をもとに前記予熱手段による前記地下水の予熱温度を制御する予熱温度制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌浄化システム。
【請求項4】
前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に掘削される注水井戸と、
用水を加熱して加熱水とする加熱槽と、
前記加熱水を当該注水井戸に注水する注水手段と、
を有する注水装置を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項5】
前記浄化装置は、
前記回収井戸に浸出した前記地下水の水位を検知する水位検知手段と、
前記回収井戸に漏れ出した前記汚染物質が気化した気体の濃度を検知する濃度検知手段と、
検知した前記地下水の水位と前記気体の濃度とをもとに前記気体及び前記汚染物質を含む地下水の回収を制御する回収制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項6】
前記浄化装置は、
前記回収井戸に浸出した地下水の温度を検知する水温検知手段と、
検知した水温をもとに前記加熱手段による前記地下水の加熱温度を制御する温度制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の土壌浄化システム。
【請求項7】
前記注水装置は、
前記注水井戸に注水される加熱水の水位を検知する水位検知手段と、
検知した加熱水の水位をもとに前記加熱槽又は前記注水手段の作動を制御する注水制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項8】
汚染物質による汚染域に設けた回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化方法であって、
前記回収井戸周囲の前記汚染域内に存在する地下水を予熱し、前記回収井戸への前記地下水の浸出を促進させる工程と、
予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出した前記汚染物質を含む地下水を回収し、浄化する工程と、
を含むことを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項9】
前記土壌浄化方法は、前記回収井戸に浸出した地下水を加熱する浸出水加熱工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の土壌浄化方法。
【請求項10】
前記土壌浄化方法は、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に加熱水を注水する注水工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の土壌浄化方法。
【請求項1】
汚染物質による汚染域に掘削された回収井戸を有する浄化装置を備え、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化システムであって、
前記回収井戸周囲の前記汚染域内に掘削される複数の予熱穴と、
前記各予熱穴内に設置され、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱する予熱手段と、
を有した予熱装置を備え、
前記予熱手段が、当該予熱穴内に浸出する地下水を予熱することによって前記地下水の前記回収井戸への浸出を促進させることを特徴とする土壌浄化システム。
【請求項2】
前記浄化装置は、前記回収井戸内に設けられ、当該回収井戸に浸出する地下水を加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌浄化システム。
【請求項3】
前記予熱装置は、
各予熱穴内の前記地下水の温度を検知する水温検知手段と、
検知した水温をもとに前記予熱手段による前記地下水の予熱温度を制御する予熱温度制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌浄化システム。
【請求項4】
前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に掘削される注水井戸と、
用水を加熱して加熱水とする加熱槽と、
前記加熱水を当該注水井戸に注水する注水手段と、
を有する注水装置を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項5】
前記浄化装置は、
前記回収井戸に浸出した前記地下水の水位を検知する水位検知手段と、
前記回収井戸に漏れ出した前記汚染物質が気化した気体の濃度を検知する濃度検知手段と、
検知した前記地下水の水位と前記気体の濃度とをもとに前記気体及び前記汚染物質を含む地下水の回収を制御する回収制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項6】
前記浄化装置は、
前記回収井戸に浸出した地下水の温度を検知する水温検知手段と、
検知した水温をもとに前記加熱手段による前記地下水の加熱温度を制御する温度制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の土壌浄化システム。
【請求項7】
前記注水装置は、
前記注水井戸に注水される加熱水の水位を検知する水位検知手段と、
検知した加熱水の水位をもとに前記加熱槽又は前記注水手段の作動を制御する注水制御手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の土壌浄化システム。
【請求項8】
汚染物質による汚染域に設けた回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出する前記汚染物質を含む地下水を回収して浄化する土壌浄化方法であって、
前記回収井戸周囲の前記汚染域内に存在する地下水を予熱し、前記回収井戸への前記地下水の浸出を促進させる工程と、
予熱した地下水によって流下され、前記回収井戸に漏れ出す前記汚染物質が気化した気体及び前記回収井戸に浸出した前記汚染物質を含む地下水を回収し、浄化する工程と、
を含むことを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項9】
前記土壌浄化方法は、前記回収井戸に浸出した地下水を加熱する浸出水加熱工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の土壌浄化方法。
【請求項10】
前記土壌浄化方法は、前記回収井戸の前記地下水の流下方向上流側に加熱水を注水する注水工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の土壌浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−272273(P2006−272273A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99198(P2005−99198)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000174910)三井金属資源開発株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000174910)三井金属資源開発株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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