説明

土壌浄化杭及び土壌浄化工法

【課題】ベンゼンやシアン等による地下汚染の浄化を、地盤強度を弱めることなく行うことができる土壌浄化杭を提供する。
【解決手段】汚染物質が存在する地中に地上から鉛直方向に延びる締固め砂杭18を造成し、この締固め砂杭18の材料中に、汚染物質を無害化するための浄化剤を含ませた。この締固め砂杭18は水平方向に間隔をおいて地中に複数本造成され、この各締固め砂杭18の地上端が、地表面1に造成され、栄養剤や酸素除放剤等を含ませた砕石マット層2に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原位置で汚染土壌を浄化する土壌浄化杭及び土壌浄化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に浸透したベンゼンやVOCs(揮発性有機化合物)の汚染対策として、スパージング井戸や吸引井戸を用いて実施するエアースパージング工法やバイオスパージング工法などがある。また、ベンゼンやVOCsの汚染対策として深層混合処理機を用いてフェントン薬剤を吐出させ、混合攪拌する攪拌式フェントン法などが知られている。さらに、地中に鉛直に揚水井戸や注入井戸を設置して、注入井戸から浄化剤(浄化用の薬剤)を注入し、揚水井戸から揚水することで、地下の帯水層に地下水の流れを作り、この流れを利用して、土中汚染領域を浄化する方法なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したエアースパージング工法やバイオスパージング工法の適用が可能な地盤であっても、もともと液状化しやすい地盤においては、建築計画がある場合、それらの工法により浄化後にあらためて液状化対策などの地盤改良が必要であった。また、上述した従来の攪拌式フェントン法などの地盤を直接混合し浄化する方法は、汚染土の浄化に関しては効果が得られるものの、同時に地盤強度が低下してしまい、もともと液状化が問題とならない地盤であっても、浄化により地盤が緩められて液状化しやすい地盤となってしまうことがあった。この場合は、浄化完了後に改めて地盤改良が必要であった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、ベンゼンやシアン等による地下汚染の浄化を、地盤強度を弱めることなく行うことができ、あるいは、浄化と液状化対策等の地盤強化が同時に可能な土壌浄化杭及び土壌浄化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明の土壌浄化杭は、汚染物質が存在する地中に地上から鉛直方向に延びる締固め砂杭を造成し、その締固め砂杭の材料中に、前記汚染物質を無害化するための浄化剤を含ませたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明の土壌浄化杭は、請求項1に記載の土壌浄化杭であって、前記締固め砂杭が水平方向に間隔をおいて地中に複数本造成され、この各締固め砂杭の地上端が、地表面に前記浄化剤を含ませて造成された透水性マット層に接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の土壌浄化工法は、汚染物質が存在する地中に地上から鉛直方向に延びる中空ケーシングを挿入して該ケーシングの先端からエアを吐出する第1工程と、前記ケーシングの内部に砂と浄化剤の混合物を投入し、ケーシングを徐々に引き上げながら、前記砂と浄化剤の混合物をケーシングの先端からケーシングを抜いた空間に吐出すると共に、吐出した前記砂と浄化剤の混合物をケーシングの振動等の動作により締固め、最終的に前記ケーシングを完全に地上に引き抜くことで、前記砂と浄化剤の混合物による締固め砂杭を地中に造成する第2工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の土壌浄化工法は、請求項3に記載の土壌浄化工法であって、前記第1工程の前後に、地表面に前記浄化剤を含ませた透水性マット層を造成し、前記第2工程において前記締固め砂杭を水平方向に間隔をおいて地中に複数本造成し、この各締固め砂杭の地上端を前記透水性マット層に接続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、地中に鉛直に造成された締固め砂杭が所定の地盤支持強度を発揮する上、締固め砂杭自体が地下水圧の抜け道になるので、液状化を有効に防ぐことができ、液状化対策を別に講じる必要を無くすことができる。また、締固め砂杭の材料中に汚染物質を無害化する浄化剤を含ませているので、周囲の地盤中の汚染水が浄化剤混合の砂杭に集まり、これを通して排出する過程でも浄化を行うことができる締固め砂杭周辺地盤の汚染を浄化することができ、一群の締固め砂杭の施工により、施工した範囲全体を浄化することができる。なお、浄化剤としては、汚染物質を無害化するための分解菌の活動状態を促進させる栄養剤や酸素除放剤を使用することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、複数本の締固め砂杭の地上端を、地表面に造成してある浄化剤を含ませた透水性マット層に接続しているので、透水性マット層を介して水平方向に水分の移動が可能となり、透水性マット層が、鉛直方向に造成してある複数本の砂杭間の連通役を担うことができると共に、浄化をより一段と促進させることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、第1工程で、汚染物質が存在する地中に地上から中空ケーシングを挿入して該ケーシングの先端からエアを吐出するようにしているので、この施工時のエア注入により、地盤をベンゼンやシアンの分解菌の活性化に必要な好気性状態にすることができる。また、第2工程では、砂と浄化剤の混合物による締固め砂杭を地中に造成するので、地盤の透水性・透気性の改善を図ることができ、汚染物質分解菌による好気性分解を促進させる環境を作ることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、第1工程の前後に、地表面に浄化剤を含ませた透水性マット層を造成し、第2工程において造成する締固め砂杭の地上端を透水性マット層に接続させるので、請求項2の発明を簡単かつ確実に実施することができて、その効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の土壌浄化杭を施工する場合の第1工程の前工程で浄化剤を含んだ透水性マット層としての砕石マット層を造成した状態を示す図である。
【図2】同第1工程において、ケーシングを地中に挿入し、エアを吐き出している状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の土壌浄化杭を施工する場合の第2工程を実施している状態を示す図である。
【図4】完成した実施形態の土壌浄化杭の断面図である。
【図5】土壌浄化杭の完成後のメンテナンス例を示す図である。
【図6】土壌浄化杭の完成後のメンテナンスの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は実施形態の土壌浄化杭を施工する場合の第1工程の前工程で浄化剤を含んだ透水性マット層としての砕石マット層を造成した状態を示す図、図2は同第1の工程において、ケーシングを地中に挿入しエアを吐き出している状態を示す図、図3は同土壌浄化杭を施工する場合の第2工程を実施している状態を示す図、図4は完成した実施形態の土壌浄化杭の断面図である。
【0017】
本実施形態の土壌浄化杭を施工する場合は、予め施工前に、適切な配置で揚水井戸やガス吸引井戸(いずれも図示略)を設置しておき、ガス吸引井戸及び揚水井戸から、ベンゼン等の汚染物質の分解・回収ができるにしておく。そして、図1に示すように、栄養剤や酸素除放剤(これらは浄化剤に相当する)を添加混合した透水性のある足場材料としての砕石マット層(透水性マット層)2を地表面1に造成する。
【0018】
次に、第1工程として、図2に示すように、地表面1の足場を兼ねた砕石マット層2を貫通させて、エアー4を先端から吐出させながら、中空ケーシング3を鉛直に地中に挿入していく。この場合のエアー4の吐出は、エアースパージング効果を発揮できるように適正に制御して行う。このエアースパージングにより不飽和土壌中に揮散したガスは、ガス吸引井戸等で回収する。
【0019】
次に、第2工程として、図3に示すように、砂(本明細書では、砂または砕石を含む意味で使う)に栄養剤と酸素除放剤(浄化剤)を混合した混合物11を、地上機10を通してケーシング3の内部にその上端から投入し、ケーシング3を徐々に引き上げながら、砂と浄化剤の混合物11をケーシング3の先端からケーシング3を抜いた空間に吐出すると共に、吐出した砂と浄化剤の混合物11をケーシング3の振動等の動作により締固め、最終的にケーシング3を完全に地上に引き抜くことで、砂と浄化剤の混合物11による締固め砂杭15を地中に造成する(完成した締固め砂杭を図中符号18で示す)。
【0020】
このような締固め砂杭15は、完成すれば個々に土壌浄化杭として機能することになり、図4に示すように、複数本の締固め砂杭18が水平方向に間隔をおいて地中に造成された上で、各締固め砂杭18の地上端が、地表面に造成された砕石マット層2に接続されることで、土壌浄化杭が構成されている。
【0021】
このように施工を行った場合、施工時のエア注入により、地盤をベンゼンやシアンの分解菌の活性化に必要な好気性状態にすることができるので、浄化を促進させることができる。また、締固め砂杭15,18を地盤中に打設することにより、地盤の透水性・透気性の改善が図れるために、好気性分解を促進する環境ができ、ベンゼンやシアンの分解菌を活性化させ浄化を促進することができる。さらに、締固め砂杭15,18の材料中に汚染物質を無害化する浄化剤を含ませているので、周囲の地盤中の汚染水が浄化剤混合の砂杭に集まり、これを通して排出する過程でも浄化を行うことができる締固め砂杭15,18の周辺地盤の汚染を浄化することができ、一群の締固め砂杭15,18の施工により、施工した範囲全体を浄化することができる。
【0022】
また、振動締固めによる締固め砂杭15,18の造成により、確実な液状化防止効果も得られる。さらに、締固め砂杭15,18は、砂や砕石に栄養剤や酸素除放剤などの浄化剤を混合したもので構成されているので、砂杭15,18中に混合された栄養剤と酸素除放剤により、砂杭周辺の原地盤の微生物の活性化を図ることができ、ベンゼン、シアンの分解能力を高めることができ、周囲地盤の汚染を無害化することができる(図4中符号6が無害化領域である)。
【0023】
また、地盤の圧密により生じる過剰な間隙水圧により、地盤中の地下水は透水性の良い締固め砂杭15,18を通して排出されるため、浄化が促進される。この際、移動した排水8は、砕石マット層2の周囲に形成された集水堰9に集水されて浄化処理されるので、確実な浄化が可能となる。さらに、揚水井戸を砂杭施工時に併用することが可能であり、その場合は、締固め時の過剰間隙水圧を速やかに消散させ、締固め効果を一層向上させることができる。
【0024】
なお、ベンゼンやシアンによる汚染対象に限らず、好気性分解が可能な油や揮発性有機化合物(VOCs)等の汚染対象にも本発明は適用することができる。
【0025】
また、メンテナンスの際には、必要に応じて、図5に示すように、追加栄養剤や酸素除放剤や溶存酸素水20などを注入井戸19から再添加するようにすれば、効果を持続させることができる。
【0026】
さらに、図6に示すように、注入井戸28と揚水井戸26を適切に配置して、汚染地下水をまんべんなく循環させることにより、浄化機能付きの締固め砂杭18と浄化機能付き砕石マット層2を通して、浄化をより一層促進させることもできる。なお、図6中符号25は水処理プラント、符号27は薬剤プラントである。その場合、吸引と微生物処理による汚染土壌対策、汚染地下水対策とを併用できるので、コスト削減が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 地表面
2 砕石マット層(浄化剤を含んだ透水性マット層)
3 ケーシング
4 エアー
11 砂と栄養剤と酸素除放剤(浄化剤)の混合物
15,18 締固め砂杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質が存在する地中に地上から鉛直方向に延びる締固め砂杭を造成し、その締固め砂杭の材料中に、前記汚染物質を無害化するための浄化剤を含ませたことを特徴とする土壌浄化杭。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌浄化杭であって、
前記締固め砂杭が水平方向に間隔をおいて地中に複数本造成され、この各締固め砂杭の地上端が、地表面に前記浄化剤を含ませて造成された透水性マット層に接続されていることを特徴とする土壌浄化杭。
【請求項3】
汚染物質が存在する地中に地上から鉛直方向に延びる中空ケーシングを挿入して該ケーシングの先端からエアを吐出する第1工程と、前記ケーシングの内部に砂と浄化剤の混合物を投入し、ケーシングを徐々に引き上げながら、前記砂と浄化剤の混合物をケーシングの先端からケーシングを抜いた空間に吐出すると共に、吐出した前記砂と浄化剤の混合物をケーシングの振動等の動作により締固め、最終的に前記ケーシングを完全に地上に引き抜くことで、前記砂と浄化剤の混合物による締固め砂杭を地中に造成する第1工程と、を具備することを特徴とする土壌浄化工法。
【請求項4】
請求項3に記載の土壌浄化工法であって、
前記第1工程の前後に、地表面に前記浄化剤を含ませた透水性マット層を造成し、前記第2工程において前記締固め砂杭を水平方向に間隔をおいて地中に複数本造成し、この各締固め砂杭の地上端を前記透水性マット層に接続させることを特徴とする土壌浄化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200813(P2011−200813A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71674(P2010−71674)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】