説明

土木・建築構造物被覆接着工法用複合シート及びその施工方法

【課題】土木・建築構造物に被覆材料を短時間に強固に接着被覆することができる複合シート及び施工方法の提供。
【解決手段】高周波誘導発熱性金属からなり、多孔構造を有するシート状芯材と、その少なくとも1面を被覆し、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン配位体を含む樹脂被覆層により構成された複合シートを、構造体及び非導電性被覆材料との間に配置し、被覆材料側から高周波誘導加熱機により押圧しながら前記シート状芯材を発熱させ、それによって加熱押圧して、樹脂被覆層を溶融し、構造物と被覆材料とを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築構造物被覆接着工法に用いられる複合シート及び、この複合シートを用いる土木・建築構造物被覆接着工法の施工方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本願発明は、高周波誘導発熱性を有するシート状芯材と、それを被覆している熱可塑性樹脂含有樹脂被覆層とを含む、土木・建築構造物被覆接着工法用複合シート、並びに、この複合シート又は複合シート片を接着部材として用いる、土木・建築構造物被覆接着工法の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木・建築構造物の表面に、美観、防水性、遮水性、耐薬品性、耐候性、平滑性及び汚れ防止性、及び/又は汚れ除去性などを付与するために、当該表面を、上記特性を有する被覆材をもって被覆することが知られている。また、被覆材の取り付のために、ビス、釘、アンカーボルト、取り付け枠などを用いる物理的固定法、及び接着材料による固定法が知られている。しかし、上記のビス、釘、アンカーボルトを用いる固定方法では、固定手段が被覆材を貫通し、被覆材に孔をあけるという問題点及び被覆材の取り外しの際に、被覆材を損傷すると問題点もある。
また上記接着液塗布法には、作業現場において、接着剤を構造物又は被覆材に均一に塗布することが難しく、また、構造物の接合面が水平をなしている場合を除き、構造物の接着面に塗布された液状接着剤は重力によって、流下するから、均一な接合が困難であり、均一な接合を得るためには、長時間にわたる加圧などの特別な処置が必要になる。さらに液状接着剤の接着効果は、施工時の温度、湿度などの気象条件により左右されること、長期にわたる使用中に、変質・変色を生ずること、及び環境を汚染するおそれがあることなどの問題点を有している。
【0003】
特開2001−262085号公報(特許文献1)及び特開2002−371253号公報(特許文献2)には、誘導加熱接着シート及びテープが開示されている。これらの誘導加熱接着シート及びテープは、アルミニウム箔などの金属箔からなる高周波誘導発熱シート又はテープと、この発熱シート又はテープに塗布された、ホットメルト型接着剤層とからなるものである。しかし、本発明の発明者らの研究によれば、このような接着シートは、その機械的強さ、接着力、耐久性及び取扱い性などにおいて、土木・建築構造物に対する工法に用いるには、不適当なものであった。
【0004】
本発明の発明者らは、構造物に固定されかつ被覆材に接合する金属製取付け部材を、高周波誘導発熱体として利用し、その接着表面に、ホットメルト接着剤を塗布して、金属製接合部材を構成し、これを予め、構造物の接合表面にアンカーボルトなどにより固定し、固定された金属製接合部材上に被覆材を配置し、金属製接着部材の金属部分を、高周波誘導発熱させて、その表面上のホットメルト接着剤を溶融して、被覆材を、金属製接着部材に、接合することを試みた。その結果、上記試験工法には、下記の問題点があることを確認した。
(1)接合部分における金属表面と、ホットメルト系接着剤層との間に、空気が浸透拡張し、空気中の水蒸気及び酸素などの作用により金属表面が劣化して、金属表面と、接着剤塗膜との間の接着強さが低下し、やがて別離を生ずること。
(2)ホットメルト系接着剤塗膜が薄い場合、接着部材表面と、被覆材表面との平行性が不十分であると、接面部材の一部分のみが、被覆材に接合するが、他の部分は、接合せず、従って十分な接着強さが得られないこと。
(3)被覆材の曲げ剛性が高い場合、被覆材表面に接触しない接着部材を生じ、従って、被覆材を十分に構造物表面に固定することができない場合があること。
(4)上記問題点(1),(2),(3)は、ホットメルト系接着剤の塗膜厚さを大きくすることによって、防止することができるが、しかし、このようにすると、ホットメルト系接着剤を十分溶融するために、加熱時間を、延長する必要を生じ、従って、当然のことながら接着部材の金属部分が長時間にわたり発熱し、昇温することになり、このため、発熱金属部分に接するホットメルト系接着剤部分が、過加熱され、熱劣化を生ずるという問題を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262085号公報
【特許文献2】特開2002−371253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、土木・建築構造物被覆接着工法に用いられ、高周波誘導発熱現象を利用して構造物に、非導電性被覆材を、短時間内に、かつ均等に被覆接着することを可能にし、それによって形成された被覆接合層が、構造物表面の曲折形状にも追随して、屈曲することができ、かつ高い実用耐久性を有する、複合シート、並びに及びこの複合シート又は複合シート片を接着部材として用いる土木・建築構造物被覆接着工法の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の土木・建築構造物被覆接着工法用複合シートは、高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材と、熱可塑性樹脂を主成分として含み、かつ前記シート状芯材の少なくとも1面を被覆している樹脂被覆層とを含み
前記シート状芯材が、前記樹脂被覆層用熱可塑性樹脂が溶融したとき、この樹脂溶融体の浸入、充填が、可能な多孔構造を有し、
前記樹脂被覆層用熱可塑性樹脂がその主成分として、少なくとも1種の、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン配位体を含む
ことを特徴とするものである。
本発明の複合シートにおいて、前記シート状芯材用高周波誘導発熱性金属が、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、及び銅合金から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の複合シートにおいて、前記シート状芯材が、メッシュ状織編物、互に離間して形成された複数の透孔を有するシート及び不織布から選ばれた少なくとも1種の組織構造を有するものであることが好ましい。
本発明の複合シートにおいて、前記樹脂被覆層用エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン配位体が、
エチレンモノマーと、
アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、及び無水マレイン酸から選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共重合体の、
一価乃至三価の電荷を有する金属イオンによる配位体から選ばれることが好ましい。
本発明の複合シートにおいて、前記シート状芯材の両面を、前記樹脂被覆層が被覆し、かつ前記両面樹脂被覆層が前記シート状芯材の多孔構造を介して連続していることが好ましい。
本発明の土木・建築構造物の被覆接着施工方法は、前記本発明の土木・建築構造物被覆接着工法用複合シートを、土木・建築構造物の被覆接着対象物面上に配置し、その上に、非導電性被覆材料を配置し、この非導電性被覆材料を介して、高周波誘導加熱機により押圧しながら、前記複合シート中の、高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材を発熱させて、前記複合シート中の熱可塑性樹脂を溶融し、この熱可塑性樹脂溶融体により、前記被覆接着対象物面に前記非導電性被覆材料を接合固定することを特徴とするものである。
本発明の施工方法において、前記被覆接着対象物が、金属、コンクリート、木材、陶磁器及び合成樹脂から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の施工方法において、前記非導電性被覆材料が、コンクリート、木材、陶磁器及び非導電性合成樹脂から選ばれた、1種以上を含む物品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の土木・建築構造物被覆接着工法用複合シートは、それに含まれる高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材の高周波誘導発熱現象を利用して、前記構造物に、非導電性被覆材を、短時間内に、かつ均等に被覆接着することができ、それによって形成された被覆接合層は、構造物表面の曲折形状に追随して屈曲することができ、かつ高い実用耐久性を有するものである。また本発明の土木・建築構造物被覆接着工法の施工方法は、前記本発明の複合シートを用いて、土木・建築構造物に、非導電性被覆材を、短時間内にかつ均等に、効率よく被覆接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の複合シートの一例を示す断面説明図。
【図2】図1の複合シート中のメッシュ状織物からなるシート状芯材の一例の断面説明図。
【図3】図2のメッシュ状織物の一例の平面説明図。
【図4】本発明の複合シートの他の例を示す断面説明図。
【図5】図4の複合シート中の多孔シートからなるシート状芯材の一例の平面説明図。
【図6】本発明の複合シートの更に他の例を示す断面説明図。
【図7】図6の複合シート中の不織布からなるシート状芯材の一例の平面写真。
【図8】メッシュ状織物構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の一例を示す断面説明図。
【図9】メッシュ状織物構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の他の例を示す断面説明図。
【図10】メッシュ状織物構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の更に他の例を示す断面説明図。
【図11】メッシュ状織物構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の更に他の例を示す断面説明図。
【図12】多孔シート構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の一例を示す断面説明図。
【図13】多孔シート構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の他の例を示す断面説明図。
【図14】多孔シート構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の更に他の例を示す断面説明図。
【図15】不織布構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造物−被覆材料接着体の一例を示す断面説明図。
【図16】不織布構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合シートを用いた、構造体−被覆材料接着体の他の例を示す断面説明図。
【図17】メッシュ状織物構造を有するシート状芯材を含む本発明の複合材料を用いた、構造体−被覆材料接着体の更に他の例を示す断面説明図。
【図18】本発明の複合シートを用いて行われた本発明施工方法の一例を説明するための断面説明図。
【図19】本発明の複合シートを用いて行われた本発明施工方法の他の例を説明するための断面説明図。
【図20】図19の施工方法例を説明するための平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の土木建築構造物被覆接着工法用複合シート(以下複合シートと記す)は、シート状芯材と、その少なくとも1面を被覆している樹脂被覆層とにより構成される。図1において、複合シート1は、シート状芯材2と、その両面を被覆している樹脂被覆層3とにより構成されている。樹脂被覆層は、シート状芯材の片面側にのみ形成されていてもよい。シート状芯材は、高周波誘導発熱性金属により構成され、かつ樹脂被覆層は、熱可塑性樹脂を主成分として含むものである。シート状芯材は、前記樹脂被覆層用熱可塑性樹脂が溶融したとき、この熱可塑性樹脂溶融体が、シート状芯材中に浸透し、それを透過することが可能な多孔構造を有している。
上記メッシュ状織編物組織を形成する糸条は、上記高周波誘導発熱性金属の細線及びテープの縒り線のいずれであってもよい。本発明の複合シートのシート状芯材として用いられるメッシュ状織編物を構成する糸条(金属線)の径、及び、メッシュ目開きは、JIS G 3556(工業用織金網)付表1(線径及び目開きの組み合わせ並びに目開きの許容誤差)、付表2(線径及び目開きの組み合わせ)から適宜に選び出して設定することができる。特に、線径は0.15〜0.3mmであることが好ましく、目開きは線径の2倍以内であることが好ましい。
【0011】
前記シート状芯材は、高周波誘導発熱性を有する金属から適宜に選択して用いることができる。本発明に用いられる高周波誘導発熱性金属を例示すれば、鉄、鉄合金(例えばステンレススチール、センダスト、ケイ素鋼、KS鋼、鉄−ニッケル合金、鉄−ニッケル−コバルト合金及び鉄−コバルト合金など)、アルミニウム、アルミニウム合金(例えばアルミニウム−マグネシウム合金、ジェラルミン、アルミニウム−ケイ素共晶合金など)、銅及び銅合金(例えば真鍮、、丹銅、銅−亜鉛合金、銅−亜鉛−ニッケル合金、銅−スズ合金及び銅−ニッケル合金など)などが用いられる。これらの中では、フェライト系ステンレススチール、アルミニウム−マグネシウム系合金及び真鍮を用いることが好ましい。
【0012】
前記多孔構造を有するシート状芯材は、例えば、メッシュ状織編物、互に離間して形成された複数の透孔を有するシート(多孔板)及び不織布など1種以上の組織構造を有することが好ましい。図2(断面図)、及び図3(平面図)に例示しているように、前記メッシュ状編物2は互に離間して配置された径糸2a及び緯糸2bにより構成され、互に交差する径糸2a及び緯糸2bの間に、空隙空間2cが形成されている。この空隙空間2c内に樹脂被覆層を形成する熱可塑性樹脂の一部を受容することができる。
【0013】
シート状芯材は、多孔シート構造を有していてもよい。例えば図5に示されている多孔シート4は、互に離間した多数の透孔(貫通孔)を有するものであって、図4に示されているように、多孔板4の両面に樹脂被覆層3を形成したとき、樹脂被覆層3が加熱され、それに含まれる熱可塑性樹脂が溶融すれば、その一部を透孔4中に収容することができる。
前記多孔シートの厚さは0.30〜3.00mmであることが好ましく、透孔の形状寸法に格別の制限はないが一般に円形又は四角形であって、そのサイズが0.5〜5.0mmであることが好ましく、1〜2.5mmであることがさらに好ましい。
【0014】
シート状芯材は、不織布構造を有していてもよい。図7に例示されているように、不織布5は、多数の、互に交差又は交絡している繊維5aにより構成され、その間に多数の空隙部5bが形成されている。図6に示されているように、不織布構造を有するシート状芯材5の両面上に樹脂被覆層3を形成して、複合シート1を形成することができる。樹脂被覆層中の熱可塑性樹脂が加熱溶融したときには、その一部が、空隙部5bを充填することができる。
【0015】
複合シートにおいて、シート状芯材の上下両面に樹脂被覆層が形成されている場合、その中の熱可塑性樹脂が加熱され溶融すれば、上下樹脂被覆層は、シート状芯材の多孔構造中に透過、充填して、互に連続し、合体として複合シートを補強することができる。
複合シートにおいてシート状芯材の1面のみに樹脂被覆層が形成されている場合でも、その中の熱可塑性樹脂が加熱溶融したとき、シート状芯材の多孔構造を充填し、さらに、その反対両側に溢れ出て、被接着面に接合することができる。
【0016】
本発明の複合シートに含まれる樹脂被覆層用熱可塑性樹脂は、その主成分として、少なくとも1種のエチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン配位体(以下これを金属イオン配位共重合体と記す)を含むものである。
前記金属イオン配位共重合体はエチレンモノマーと、エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、及び無水マレイン酸などから選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共重合体の、金属イオン、例えば一価乃至三価の電荷を有する金属イオンによるカルボニル配合体から選ぶことができる。上記金属イオンはアルカリ金属イオン(例えばNaイオン、Kイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、Caイオン及びBaイオンなど)、Mgイオン及びZnイオンなどから選ばれることが好ましい。上記金属イオン配位共重合体は、樹脂被覆層中の熱可塑性樹脂の合計質量に対して、30〜100質量%の割合で含まれることが好ましく、60〜100質量%であることがさらに好ましい。金属イオン配位共重合体の含有比率が30質量%未満であると、得られる樹脂被覆層と、シート状芯材との密着性及び被覆接着対象物面との密着性が不十分になるなどの不都合を生ずることがある。
【0017】
本発明の複合シート用樹脂被覆層において、金属イオン配位共重合体として用いられる添加樹脂成分は、例えば、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体系樹脂、エチレン−メタアクリル酸メチル−無水マレイン酸三元共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、クロロプレンゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタンゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、あるいはポリエチレン系樹脂、ブロックポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三重共重合体樹脂、ウレタン樹脂−塩ビ樹脂混合体などの1種以上を用いることが好ましい。また前記樹脂被覆層には、必要に応じて、粘着付与樹脂、オイル類、無機充填材、酸化防止剤、安定剤等の1種以上の添加剤を添加してもよい。また、前記熱可塑性樹脂の組成は、構造物の被接着被覆表面の材質および被覆材料の材質に応じて、適宜選択し用いることが好ましい。例えば被覆材料の接着対象面の材質が、熱可塑性樹脂と木粉等で形成されている、所謂合成木材である場合、或いは接着対象面が樹脂で被覆されている場合には、当該合成木材に用いられている樹脂と同質或いは化学的な界面相互作用力を有する接着可能な樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の複合シートの製造
本発明の複合シートの製造において、シート状芯材の1面上に樹脂被覆層を形成する場合、樹脂被覆層形成用の熱可塑性樹脂(金属イオン配位共重合体を主成分として含む)を樹脂溶融タンク中において、好ましくは、メルトフローレートが10g/100min以上になるように溶融して、好ましくは上記高流動性を有する、樹脂溶融体を調製する。別に離型紙上にシート状芯材を載置し、その上面に、上記樹脂溶融体をコートし、冷却して上記芯材の厚さよりも大きな厚さの樹脂被覆層を形成する。このとき、シート状芯材の多孔性構造が、上記樹脂により十分に充填され、樹脂被覆層中に気泡が残存していないことが好ましい。またシート状芯材上の樹脂被覆層の厚さは、シート状芯材の厚さを超えないことが好ましい。
本発明の複合シートの製造において、シート状芯材の上下両面上に樹脂被覆層に形成する場合には、樹脂溶融タンク内において、上記と同様にして、樹脂溶融体を調製し、離型紙上に載置されているシート状芯材の上面を、前記樹脂溶融体をもって、上記方法によりコートして、上面樹脂被覆層を形成する。次に、新らたな離型紙上に、前記上面被覆されたシート状芯材の下面を上向きにして載置し、これに前記樹脂溶融体をコートし、冷却して、下面樹脂被覆層を形成する。このとき、シート状芯材の上下面に、所望厚さの樹脂被覆層が形成され、かつシート状芯材の多孔質構造が樹脂溶融体により十分に充填されていることが好ましい。つまり得られた複合シート中に気泡が残存していないことが好ましい。また、シート状芯材の上、下面上の樹脂被覆層の厚さは、それぞれ、シート状芯材の厚さを超えないことが好ましい。
樹脂被覆層の厚さが、過大であると、それを溶融するに要する時間及びエネルギーが過大になること、及び余剰の樹脂溶融物が接着部分からはみ出て隆起瘤を形成するなどの、外観的・立体的不都合を生ずることがある。
【0019】
押出し成型機を利用する方法
本発明の複合シートの樹脂被覆層形成用熱可塑性樹脂を、押出し成型機内において、0.5〜30g/10minのメルトフローレートを有する樹脂溶融体を調製できる場合には、樹脂溶融タンクを用いることなく、押出し成形機内において、所望のメルトフローレートを有する樹脂溶融体を調製し、これをダイススリットからシート状に押し出して、シート状芯材の1面上又は両面上をコートする。このとき樹脂被覆層の厚さは、上述と同様にシート状芯材の厚さを超えないようにすることが好ましい。
【0020】
熱プレス機を用いる方法
本発明の複合シートの樹脂被覆層形成用熱可塑性樹脂が、0.5〜30g/10minのメルトフローレートを有する場合、当該熱可塑性樹脂から、熱プレスを用いて、所望の厚さを有するシートを調製する。シート状芯材の上、下面のいずれか一面又は両面上に、前記熱可塑性樹脂シートを重ね合わせ、この積層物を熱プレスに供して、所定の温度、一般的に80〜230℃に加熱しながらプレスして一体化する。この熱プレス法を用いるとき、シート状芯材が不織布構造を有する場合には、メルトフローレートが10〜30g/minの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
本発明に係る土木・建築構造物の被覆接着施工方法は、本発明に係る土木・建築構造物被覆接着工法用複合シートを、土木・建築構造物の被覆接着対象物面上に配置し、その上に、非導電性被覆材料を配置する工程と、この非導電性被覆材料を介して、高周波誘導加熱機により、前記複合シート中の、高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材を発熱させて、前記複合シート中の熱可塑性樹脂を溶融し、この熱可塑性樹脂溶融体により、前記被覆接着対象物面に前記非導電性被覆材料を接合固定する工程とを含むものである。
【0022】
本発明方法において、土木・建築構造物の被覆接着対象物には、それが、本発明の複合シートの樹脂被覆層の溶融体に対して接着可能である限り、格別の限定はないが、一般に、金属(例えば鉄、アルミニウム、銅、及びこれらの合金など)、コンクリート、木材、陶磁器(例えばタイルなど)、及び合成樹脂から選ばれた1種以上を含む物品に対して、施工することができる。
【0023】
本発明方法における非導電性被覆材料の種類には、それが、本発明の複合シートの樹脂被覆層に含まれる熱可塑性樹脂に対して、接着性を有するものである限り、格別の制限はないが、一般に、コンクリート、木材、陶磁器、及び合成樹脂から選ばれた1種以上を含む物品、好ましくはシート状体、板状体などを用いることができる。
【0024】
高周波誘導加熱機の操作条件、押圧方法及び程度などは構造物の被覆接着対象物及び被覆材料の品種、寸法、形状及び複合シートの組成、寸法、形状などに応じて適宜に限定すればよい。
【0025】
本発明の複合シート及び施工方法を下記実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0026】
実施例1(図8)
複合シート1の作製
シート状芯材2:アルミニウム−マグネシウム系合金製の線材(線径:0.25mm)を用いて、目開き0.5mm、空隙率44%、厚さ0.70mmのメッシュ状織物からなるシート状芯材1を用いた。
樹脂被覆層3:下記組成の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
成分 配合質量比
エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(商標:ハイラミン1702、
融点:90℃、MFR:14g/10min) 30
エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸
三元共重合体(融点:100℃、MFR:20
g/10min、商標:ボンダインHX) 70
〔註〕MFR:メルトフローレート
前記シート状芯材2の両面に、前記樹脂組成物を180℃において、塗布被覆して樹脂被覆層3を形成し、それによって厚さ1.15mmの複合シート1を作成した。
構造物(コンクリート)/複合シート/被覆材料(ベニヤ板)接着体21の形成施工
前記複合シートから100mm角の小片を切り出した。構造物のコンクリート板(長さ:300mm、幅:300mm、厚さ:50mm)からなる被覆接着対象物22の多孔表面22aと、ベニヤ板(長さ300mm、幅300mm、厚さ9mm)からなる被覆材料23の多孔表面23aとの間に前記複合シートの小片をはさんで積層部を形成した。携帯型高周波誘導加熱機(商標:SHT−IH 1102、(有)サイヒット社製、発振周波数:20KHz、最大出力電流:1.5KW)を用い、その底面の円形アダプター(直径90mm)をベニヤ板上に押し当てて、前記積層部を押圧し、25秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却し前記積層部を接合一体化した。
この接合体の付着強さを、JIS A 6909の7.9項に記載の試験方法により測定した。付着強さは0.1N/mm2であり、ベニヤ板の表層木部が破壊した。この結果を表1に示す。コンクリート22の多孔表面22aの凹部及びベニヤ板23の多孔表面23aの凹部が、複合シートの樹脂被覆層の熱可塑性樹脂により浸透充填させていることが認められた。
【0027】
実施例2(図9)
複合シート1の作製
実施例1と同一のメッシュ状アルミニウム−マグネシウム合金線材織物をシート状芯材2として用いた。
樹脂被覆層3を、実施例1と同一のエチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体と、融点:140℃、MFR:2.5g/10minのブロックポリプロピレンとの、質量比50:50で混合物により形成した。
上記シート状芯材2と、その両面上に形成された樹脂被覆層により厚さ1.15mmの複合シート1を作製した。
構造物(コンクリート)/複合シート/被覆材料(合成木材)接着体の形成施工
実施例1と同じコンクリート板22(300mm×300mm×50mm)の多孔性表面22aと、ポリプロピレン製合成木材24(300mm×300mm×6mm)の平滑な表面と間に、前記複合シートの100mm×100mm小片をはさんで積層部を形成し、この積層部に実施例1と同様にして、高周波誘導加熱押圧を施した。但し、20秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。複合シートと、ポリプロピレン合成木材との接合部において、これらの溶融樹脂が相互に混合して、樹脂溶融混合域24aが形成していた。付着強さ測定の結果を表1に示す。
【0028】
実施例3(図10)
複合シートの作製
複合シートを実施例1と同様に作製した。但し、樹脂被覆層用エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体の代りに、ブロックポリプロピレン(融点:144℃、MFR:2.5g/10min)を用いて金属イオン配位共重合体とブロックプロピレンとの質量比を50:50にした。
構造物(合成木材)/複合シート/被覆材料(ポリプロピレン板)接着体の形成施工
上記複合シート1の小片(100mm×100mm)を用い、実施例1と同様にして、構造物用合成木材板25(300mm×300mm×120mm、ポリプロピレン樹脂を樹脂成分として含む)の平滑な表面と、被覆材料用ポリプロピレン板27(300mm×300mm×5mm)の平滑表面との間に前記複合シート小片をはさんで積層部を形成し、これを実施例1と同様にして高周波誘導加熱接着した。但し、15秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。付着強さ測定結果を表1に示す。複合シートの樹脂被覆層と、合成材料表面及びポリプロピレン板表面のそれぞれとの接合部において、双方の樹脂が溶融混合して、樹脂溶融混合域26及び27aが形成されていた。
【0029】
実施例4(図11)
複合シートの作製
シート状心材:実施例1に同じ
樹脂被覆層:熱可塑性樹脂の組成は下記のとおりであった。
成分 配合質量比
エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(商標:ハイラミン1705、
融点:98℃、MFR:5.5g/10min) 50
エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸
三元共重合体(商標:ボンダインFX、
融点:107℃、MFR:5g/10min) 50
上記シート状芯材及び熱可塑性樹脂組成物から、実施例1と同様にして複合シート(厚さ1.15mm)を作製した。
構造物(コンクリート板)/複合シート/被覆材料(合成木材)板接着体の形成施工
コンクリート板22(300mm×300mm×50mm)の多孔質表面と、ポリプロピレンを樹脂成分として含む合成木材板28(300mm×300mm×1.6mm)の平滑面との間に、前記複合シート1の小片(100mm×10mm)をはさんで積層部を形成し、これを、実施例1と同じ方法により高周波誘導加熱及び押圧を施して、積層部を接合一体化した。その付着強さ測定結果を表1に示す。
コンクリート板22の多孔質表面の凹部は、複合シートの樹脂被覆層の熱可塑性樹脂により充填されており、合成木材28の接着面28a部分には前記熱可塑性樹脂との樹脂溶融混合域が(図示されていない)形成されていた。
【0030】
実施例5(図12)
複合シートの作製
(1)シート状芯材として、フェライト系ステンレス製パンチングメタル板(厚さ:0.5mm、透孔:径2mm、配列:ピッチ:3mm、角度60度の千鳥配列)を用いた。
(2)樹脂被覆層を、エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(商標:ハイラミン1705、融点:98℃、MFR:5.5g/10min)を用いて実施例1と同様にして形成した。
(3)上記シート状芯材の両面に上記樹脂被覆層を形成して、厚さ:1.25mmの複合シートを作製した。
構造物(レジンコンクリート)/複合シート/被覆材料(合成木材板)接着体の形成施工
構造物として、レジンコンクリート板29(300mm×300mm×50mm)の平滑な面29aと、被覆材料として、ポリプロピレンを樹脂成分として含む合成木材28の平滑な面28aとの間に前記複合シート1の小片(100mm×100mm)をはさんで積層部を形成し、これに、実施例1と同様にして、高周波誘導加熱及び押圧を施して、前記積層部を一体に接着した。但し、20秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。付着強さの測定結果を表1に示す。
レジンコンクリート板29は、その接着面29aにおいて、複合シート1に高い付着強さで接合しており、合成木材28と複合シート1の樹脂被覆層とはその接着面28aにおいて、樹脂溶融混合域(図示されていない)を形成して強固に接合していた。
【0031】
実施例6(図13)
複合シートの作製
(1)シート状芯材として、実施例5に記載のフェライト系ステンレスパンチングメタル板を用いた。
(2)樹脂被覆層には、熱可塑性樹脂として、エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(融点:98℃、MFR:5.5g/10min)を用いた。
(3)実施例1と同様にしてシート状芯材の表面上に樹脂被覆層を形成して複合シート(厚さ1.25mm)を作製した。
構造物(亜鉛メッキ鉄板)/複合シート/被覆材料(高密度ポリエチレン板)接着体の形成施工
構造物として、亜鉛めっき鉄板30(100mm×300mm×4.5mm)と、被覆材料として、高密度ポリエチレン板(100mm×300mm×5mm)との間に前記複合シートをはさんで積層部を形成し、この積層部に、実施例1と同様の高周波誘導加熱及び押圧を施して、前記積層部を一体に接合させた。但し、25秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。亜鉛メッキ鉄板30及び高密度ポリエチレン板31のそれぞれと複合シート1とは、それぞれの接合面30a及び31aにおいて、表1に示す付着強さで接合していた。
【0032】
実施例7(図14)
複合シートの作製
(1)シート状芯材:実施例5に記載のフェライト系ステンレスパンチングメタルを用いた。
(2)樹脂被覆層:エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(融点95℃、MFR:5.5g/10min)からなるシート(厚さ0.50mm)を用いた。
(3)上記シート状芯材の両面上に前記金属イオン配位共重合体シートを180℃において圧着して、複合シート(厚さ:1.25mm)を作製した。
構造物(脱脂鉄板)/複合シート/被覆材料(多孔タイル)接着体の形成施工
脱脂した鉄板32(100mm×300mm×4.5mm)と、多孔タイル33(100mm×300mm×6mm)との間に、上記複合シート1の小片(100mm×100mm)をはさみ、形成された積層部に実施例1と同様の高周波誘導加熱と押圧とを施して、前記積層部を一体に接合した。但し、21秒間通電し、15秒間通電を止めた。付着強さ測定結果を表2に示す。脱脂鉄板32と、複合シート1とは、接着面32aにおいて強固に接着しており、タイル33と複合シートとの接着面においては、タイルの多孔表面33aの凹部に、複合シートの熱可塑性樹脂が浸透して、両者を強固に接着していた。
【0033】
実施例8(図15)
複合シートの作製
(1)シート状芯材:アルミニウム−マグネシウム系合金製線材(線径:0.15mm、繊維長さ:約50mm)から製造された焼結不織布5(厚さ:0.9mm、空隙率:約40%)を用いた。
(2)樹脂被覆層:エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(融点:90℃、MFR:14g/10min)により形成された。
(3)上記シート状芯材の両表面に、上記金属イオン配位共重合体を実施例1と同じ方法により溶融コートして、複合シート(厚さ1.20mm)を作製した。
構造物(脱脂鉄板)/複合シート/被覆材料(エチレン−酢酸ビニル共重合体板)接着体の形成施工
脱脂鉄板32(100mm×300mm×4.5mm)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体板34(100mm×300mm×1.5mm)との間に、前記複合シートの小片(100mm×100mm)をはさんで積層部を形成し、この積層部に実施例1と同様に高周波誘導加熱及び押圧を施して、前記積層部を一体に接合させた。但し、15秒間通電し、15秒間通電を止めた。付着強さの測定結果を表2に示す。脱脂鉄板32及びエチレン−酢酸ビニル共重合体板34のそれぞれは、複合シートと、接着面33a及び34aにおいて、強固に接着していた。
【0034】
実施例9(図面なし)
複合シートの作製
(1)シート状芯材:実施例1に記載のアルミニウム−マグネシウム系合金線材からなるメッシュ状織物を用いた。
(2)樹脂被覆層:熱可塑性樹脂として、下記の組成を有する樹脂組成物を用いた。
成分 配合質量比
エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体
(融点:98℃、MFR:5.5g/10min) 50
ポリ塩化ビニル樹脂/ポリウレタン樹脂混合物 50
(3)上記シート状芯材の両面に、上記熱可塑性樹脂を、実施例1に記載の方法によって、溶融被覆して、厚さ1.20mmの複合シートを作製した。
構造物(脱脂鉄製型枠)/複合シート/被覆材料(軟質ポリウレタン樹脂板)接着体の形成施工
脱脂鉄製型枠(100mm×300mm×4.5mm)と、軟質ポリウレタン樹脂板(100mm×300mm×1.5mm)との間に、上記複合シートの小片(100mm×100mm)をはさんで積層部を形成し、この積層部に実施例1と同様の高周波誘導加熱と押圧とを施して前記積層部を一体に溶融接着させた。但し、10秒間電通し、15秒間電通を止めた。付着強さの測定値を表2に示す。複合シートは、鉄製型枠及び軟質ポリウレタン樹脂板のいずれとも強固に接着していた。
【0035】
実施例10(図16)
複合シートの作製
(1)シート状芯材:実施例7に記載のアルミニウム−マグネシウム系合金線材からなる焼結不織布を用いた。
(2)樹脂被覆層:シート状芯材の1面用及び他面用として下記2種の熱可塑性樹脂を用いた。
(a)エチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体(融点:90℃、MFR:14g/10min)
(b)ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との質量比:50:50の混合樹脂
(3)上記熱可塑性樹脂(a)及び(b)を別々にシート状芯材の一面に溶融被覆して、複合シート(厚さ1.2mm)を作製した。
構造物(脱脂鉄板型枠)/複合シート/被覆材料(軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆ポリエステル織物防水シート)接着体の形成施工
脱脂鉄製型枠35(構造物、100mm×300mm×4.5mm)に、前記複合シートの熱可塑性樹脂(a)被覆面が当接し、液体可塑剤含有の軟質ポリ塩化ビニル樹脂により被覆されているポリエステル繊維織物からなる防水シート36(被覆材料、100mm×300mm×1.5mm)に、前記複合シートの前記熱可塑性樹脂(b)が当接するように構造物と被覆材料の間に複合シートを配置して積層部を形成し、この積層部に実施例1と同様の高周波誘導加熱及び押圧を施して、前記積層部を一体に接着した。但し、10秒間通電し、15秒間通電を止めた。付着強さ測定結果を表2に示す。鉄製型枠35は、その接着面35aにおいて、複合シートに強固に接着しており、防水シート36は、その接着面において、複合シートの、熱可塑性樹脂(b)層と、樹脂浸透域36aを形成して、接着していたが、付着強さ測定において、防水シート層が破壊した。
【0036】
実施例11(図17)
複合シートの作製
(1)シート状芯材:実施例1に記載のアルミニウム−マグネシウム系合金線材製メッシュ状織物を用いた。
(2)樹脂被覆層:実施例1に記載のエチレン−メタクリル酸共重合体のZnイオン配位体を用いた。
(3)上記シート状芯材の両面に、上記金属イオン配位共重合体を溶融被覆して、厚さ1.15mmの複合シートを作製した。
構造物(ガルバニウムメッキ鉄製型枠)/複合シート/被覆材料(ガラス繊維補強不飽和ポリエステル樹脂板上に立体編物を積層一体化したもの)接着体の形成施工
ガルバニウムメッキを施した鉄製型枠(100mm×300mm×4.5mm)と、ガラス繊維補強不飽和ポリエステル樹脂板と、その上に、ポリエステル繊維よりなるパイル状起毛編物を積層一体した被覆材料(100mm×300mm×4mm)との間に、前記複合シートの小片(100mm×100mm)をはさんで積層部を形成し、この積層部に、実施例1と同様の高周波誘導加熱及び押圧を施して、前記積層部を一体に接着させた。但し、20秒間通電し、15秒間通電を止めた。付着強さの測定結果を表2に示す。高い付着強さを示した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
実施例1〜11は、本願発明の複合シートが、金属、コンクリート、木材、陶磁器、合成樹脂などの広い範囲の材料からなる土木・建築構造物構成用物品を、コンクリート、木材、陶磁器、木材、合成樹脂などの広い範囲の非導電性からなる被覆材料を用いて、強固に被覆接着することを確認するものである。
【0040】
実施例12(図18)
本発明方法による構造物の被覆が下記のように施工された。図18において、構造物50の、実施例1に用いられたコンクリート構造物からなる被覆接着対象物51の表面の所定位置に実施例1において用いた複合シート52を配置し、その上に、実施例1において用いられたベニヤ板からなる被覆材料53を配置し、被覆接着対象物51の表面と、被覆材料との間の空隙部に、複合シート1からなる充填材を充填した。被覆接着対象物51と複合シート52と、被覆材料53とが積層されている部分に、実施例1において使用した高周波誘導加熱機のアダプター58を押し当てて15秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。
施工はスムーズに行われ、被覆接着対象物51と被覆材料53とは複合シート52を介して、強固に接着された。
【0041】
実施例13(図19及び20)
本発明方法による構造物の被覆が下記のように行われた。図19は、施工部の断面説明図であり、図20はその平面説明図である。図19及び図20において構造物50の、コンクリート製表面部材55の所定位置に、実施例8において使用した鉄製型枠56を、アンカーボルト57(図20には記載されていない)により固定した。鉄製型枠56の所定位置に実施例8に記載の複合シート52を配置し、その上に実施例8に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体板からなる被覆材料(図20には記載されていない)を重ねた。複合シート52の配置されている積層部に、実施例1に記載の高周波誘導加熱機のアダプターを押し当てて15秒間通電し、15秒間通電を止めて冷却した。上記被覆接着操作はスムーズに行われ、被覆材料を鉄製型枠上に強固に接着固定することができた。
上記と同様の施工試験にいおいて、コンクリート製表面部材を、鉄材、木材、土構造物などにより置き換えたがいずれも施工はスムーズに行われ、被覆材料は、複合シートにより鉄製型枠に強固に接着固定された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の複合シートは、土木・建築構造物の各種材料からなる被覆対象物表面に、非導電性物質からなる被覆材料を、高周波誘導発熱を利用して、容易に、短時間内に、強固に接合することができ、かつ本発明の施工方法は、本発明の複合シートを用いて、短時間内に、簡単な操作で、確実、かつ安全に、構造物の被覆対象物質に被覆材料を強固に接着することができ、かつ構造物に、所望の美観、防水性、遮水性、耐薬品性、耐候製、平滑性、汚れ防止性、汚れ除去促進性などを付与することができる。従って、本願発明の複合シート、及びそれを用いる施工方法は土木・建築構造物に所望の特性を付与するために実用上有用なものである。
【符号の説明】
【0043】
1 複合シート
2 シート状芯材(メッシュ状織物)
2a 径糸
2b 緯糸
2c 空隙空間
3 樹脂被覆層
4 シート状芯材(多孔シート)
4a 透孔
5 シート状芯材(不織布)
5a 繊維
5b 空隙部
21 構造物/複合シート/被覆材料接着体
22 構造物の多孔性被覆接着対象物(コンクリート)
22a 多孔表面
23 多孔被覆材料(ベニヤ板)
23a 多孔面
24 被覆材料(合成木材)
24a 樹脂溶融混合域
25 構造物(合成木材)
26 樹脂溶融混合域
27 被覆材料(合成樹脂板)
27a 樹脂溶融混合域
28 被覆材料(合成木材)
28a 接着面
29 構造物(レジンコンクリート)
29a 接着面
30 構造物(亜鉛メッキ鉄板)
30a 接着面
31 被覆材料(高密度ポリエチレン板)
31a 接着面
32 構造物(脱脂鉄板)
32a 接着面
33 被覆材料(多孔タイル)
33a 多孔表面
34 被覆材料(エチレン−酢酸ビニル共重合体板)
34a 接着面
35 構造物(鉄製型枠)
35a 接着面
36 被覆材料(防水ポリエステル織物布)
36a 樹脂浸透域
37 構造物(ガルバニウムメッキ鉄製型枠)
37a 接着面
38 被覆材料(編物/不飽和ポリエステル複合板)
38a 立体編物層
38b ガラス繊維補強不飽和ポリエステル樹脂積層
50 構造物
51 構造物の被覆接着対象物
52 複合シート
53 被覆材料
54 充填材
55 構造物の表面部材
56 金属枠型
57 アンカーボルト
58 高周波誘導加熱機のアダプター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材と、熱可塑性樹脂を主成分として含み、かつ前記シート状芯材の少なくとも1面を被覆している樹脂被覆層とを含み、
前記シート状芯材が、前記樹脂被覆層用熱可塑性樹脂が溶融したとき、この樹脂溶融体の浸入、充填が、可能な多孔構造を有し、
前記樹脂被覆層用熱可塑性樹脂がその主成分として、少なくとも1種の、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合体の金属イオン配位体を含む
ことを特徴とする、土木・建築構造物被覆接着工法用複合シート。
【請求項2】
前記シート状芯材用高周波誘導発熱性金属が、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、及び銅合金から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記シート状芯材が、メッシュ状織編物、互に離間して形成された複数の透孔を有するシート及び不織布から選ばれた少なくとも1種の組織構造を有する、請求項1に記載の複合シート。
【請求項4】
前記樹脂被覆層用エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン配位体が、
エチレンモノマーと、
アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、及び無水マレイン酸から選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共重合体の、一価乃至三価の電荷を有する金属イオンによる配位体から選ばれる、請求項1に記載の複合シート。
【請求項5】
前記シート状芯材の両面を、前記樹脂被覆層が被覆し、かつ前記両面樹脂被覆層が前記シート状芯材の多孔構造を介して連続している、請求項1に記載の複合シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の土木・建築構造物被覆接着工法用被覆シートを、土木・建築構造物の被覆接着対象物面上に配置し、その上に、非導電性被覆材料を配置し、この非導電性被覆材料を介して、高周波誘導加熱機により押圧しながら、前記複合シート中の、高周波誘導発熱性金属からなるシート状芯材を発熱させて、前記複合シート中の熱可塑性樹脂を溶融し、この熱可塑性樹脂溶融体により、前記被覆接着対象物面に前記非導電性被覆材料を接合固定する
ことを特徴とする土木・建築構造物の被覆接着施工方法。
【請求項7】
前記被覆接着対象物が、金属、コンクリート、木材、陶磁器及び合成樹脂から選ばれた1種以上を含む、請求項6に記載の施工方法。
【請求項8】
前記非導電性被覆材料が、コンクリート、木材、陶磁器及び非導電性合成樹脂から選ばれた、1種以上を含む物品である、請求項6に記載の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−32763(P2011−32763A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180906(P2009−180906)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【特許番号】特許第4436437号(P4436437)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【Fターム(参考)】