説明

土木用排水材

【課題】土中への打設時に芯材と濾過材が滑動したり、また湾曲によって濾過材が破断したりすることがなく、取扱性が良好で、かつ長期にわたり排水性を維持することができる土木用排水材を提供する。
【解決手段】多数の凹凸を有する帯状板状芯材の周面が透水性濾過材で被覆され、かつ該透水性濾過材と前記帯状板状芯材とが相互に接する部分の少なくとも一部が固着されている構造体において、該構造体を5日間48℃コンポスト化処理した後の前記透水性濾過材の破断伸度Aと前記帯状板状芯材の破断伸度Bとの関係がA>Bであることを特徴とする土木用排水材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木用排水材に関し、さらに詳しくは主として大深度の地盤改良用の人工垂直排水材として好適な土木用排水材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国土の再開発を担って海洋や湖沼の埋立てが盛んに行なわれるようになっているが、これまで、これら含水比の極めて高い、いわゆる超軟弱地盤の地盤改良には主として海砂などの天然透水性材料を用いた排水圧密工法としてサンドパイル工法が主体的に行なわれてきたが、海砂の枯渇ならびに価格高騰などを背景として人工排水材の開発が求められている。しかしながら、含水比の高い地盤を主たる対象とする大深度用垂直排水材では圧密沈下率が50%を超えることも稀ではなく、土中で排水材が50%以上の圧縮押曲げ変形を受けることも珍しくない。
ところで、人工の垂直排水材としては、これまでにプラスチック芯材の周面を透水性材料で被覆したものが数多く提案されている。これまでに提案された人工排水材における芯材と透水性材料との複合一体化の構造としては、大別して二つのタイプがある。
一つは、特許文献1などに記載されるように、芯材の周面に透水性材料が単純に被覆されているもので、芯材と透水性材料が相互に自由に滑動可能なタイプである。他の一つは特許文献2または特許文献3に記載されているように、芯材と透水性材料とが部分または全面にわたって耐久性のある耐水性接着によって固着一体化されているタイプである。
【0003】
しかしながら、前記の両タイプにはそれぞれ次のような問題点が存在するために、大深度用垂直排水材として本格使用されるに至っていないのが実情である。通常、これらの帯状排水材は長尺物として丸捲きの形態で製品化されるが、前者の非接着タイプの排水材では、芯材と透水性濾過材とが一体化されていないために帯状の長尺製品を丸捲きする場合に前記の芯材と濾過材とが別個の挙動を示して、部分的に被覆濾過材がダブついたり、シワになったりする欠点があり、これが土中において排水材に土圧が加わった時に当該部分の被覆濾過材が該土圧の作用で容易に変形して排水材の通水断面積を減少させる等の問題を引き起こすことがあった。また、このタイプではマンドレルによって先端部分を把持して土中に打設する作業等において芯材と濾過材との間の滑動によって作業が不完全になるなどの問題もあった。
また、後者の耐久性接着タイプの排水材は、排水材の製造上の問題がなく、また取扱性能や土中打設終了までの初期性能に優れる利点がある反面、大深度用垂直排水材として用いた場合、当然ながら地盤には高レベルの圧密沈下現象が生じるため、それに伴って排水材に高レベルの軸方向圧縮が加わり、そのため排水材は大きく腕曲することになるが、この際芯材と濾過材とが耐水性の高い耐久型接着剤によって部分または全面で強固に結合されているため、図7に示すように、腕曲部の外周面側では高い引張り作用を受けた濾過材3が破断または穴あき現象を引き起こして濾過材として機能しなくなるという問題があった。
【0004】
このような湾曲時における透水材料の破壊を低減するために、芯材と透水材料を弾性接着剤にて接合し、透水材料と芯材の間で緩衝的な役割を導入することが特許文献4に提案されている。さらに、特許文献5には、水に接触することで接着力が低下する接着剤にて透水材料と芯材を接着させることで、埋設時には透水材料と芯材の接合タイプとして働き、埋設後水に接触することで芯材から透水材料が解放され、湾曲時の破損を防止するものが開示されている。
しかしながら、前者においては地盤の低下が比較的小さく湾曲の程度が小さい場合に対しては効果が高いが、接着剤の変形の限度を超える大きな湾曲を示す状況においては十分な効果が得られない。また、後者においては、濾過材と芯材が接着されていないものと同様、土中において排水材に土圧が加わった時に当該部分の被覆濾過材が該土圧の作用で容易に変形して排水材の通水断面積を減少させる等の問題を引き起こす。また、接着剤が水や湿度の影響を大きく受け、透水材料と芯材の剥離につながるため、現場での施工・保管が非常に難しい上という問題があった。
【特許文献1】特公平2−22168号公報
【特許文献2】特開昭63−67321号公報
【特許文献3】特開平1−207515号公報
【特許文献4】特開平5−106217号公報
【特許文献5】特開平5−79032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、土中への打設時に芯材と濾過材が滑動したり、また湾曲によって濾過材が破断したりすることがなく、取扱性が良好で、かつ長期にわたり排水性を維持することができる土木用排水材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、排水材の製造、運搬、保管、土中打設終了時までは芯材と濾過材を強固に固着一体化させ、土中に付設後は生分解作用などにより芯材から優先的に強力低下を起こさせることにより、上記課題を達成できることを見い出し、本発明に到達した。
上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下の通りである。
【0007】
(1)多数の凹凸を有する帯状板状芯材の周面が透水性濾過材で被覆され、かつ該透水性濾過材と前記帯状板状芯材とが相互に接する部分の少なくとも一部が固着されている構造体において、該構造体を5日間48℃コンポスト化処理した後の前記透水性濾過材の破断伸度Aと前記帯状板状芯材の破断伸度Bとの関係がA>Bであることを特徴とする土木用排水材。
(2)前記透水性濾過材がポリエステルからなる長繊維不織布であることを特徴とする(1)に記載の土木用排水材。
(3)前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルであって、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、およびD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれる重合体またはこれらの重合体から選ばれる二種以上のブレンド体であることを特徴とする(2)に記載の土木用排水材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の土木用排水材によれば、標準状態では帯状板状芯材と透水性濾過材と一体化しているため強固な固着状態が得られ、取扱性に優れるとともに、土中に埋設後には帯状板状芯材が優先的に強度劣化を起こすため、土圧や変形による透水性濾過材の破損が少なく、長期にわたる排水性を維持することができる。
従って、本発明の土木用排水材は、排水材に圧縮や曲げの力が作用するような大深度用垂直排水材として極めて有用である。また上記のような特性を有するため、大深度用垂直排水材以外にも低深度用の垂直排水材や水平用排水材としても利用価値の高いものであり、各種地盤改良に寄与するところが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について説明する。
本発明の土木用排水材は、例えば、図1に示すように、多数の凹凸を有する帯状板状芯材2の周面が透水性濾過材3で被覆され、かつ該透水性濾過材3と帯状板状芯材3とが相互に接する部分の少なくとも一部が固着された接着点4を有する構造体(排水材1)であり、前記透水性濾過材3と帯状板状芯材2には、該構造体を5日間48℃コンポスト化処理した後の、透水性濾過材3の破断伸度Aと帯状板状芯材2の破断伸度Bとの関係がA>B、好ましくはA>B×1.3、より好ましくはA>B×2.5であるものが用いられる。
構造体を構成する透水性濾過材と帯状板状芯材として、上記関係にあるものを用いることにより、地盤の低下や湾曲などによって土中に応力が発生した場合でも、透水性濾過材が該応力によって破損する前に帯状板状芯材の一部が座屈や崩壊するため、該透水性濾過材に応力が集中するのを防止できることから透水性濾過材への応力が低減され、透水性濾過材の破損を防ぐことができ、該透水性濾過材による長期にわたる排水性を維持することができる。一方、帯状板状芯材の破断伸度Bが透水性濾過材の破断伸度A以上(A≦B)となった場合、土圧や変形によって排水材に加わる応力で帯状板状芯材の一部が崩壊して透水性濾過材にかかる応力が緩和する前に、透水性濾過材が破損してしまうため、該透水性濾過材による排水性を維持することができなくなる。
【0010】
本発明において、構造体を5日間48℃コンポスト化処理した後の透水性濾過材および帯状板状芯材のそれぞれ破断伸度A、Bは、以下の方法により測定される。
まず、JIS K−6437に準拠したコンポスト化処理の温度を48℃に調整して5日間、試料を静置した後、該試料を取り出し、試料に力がかからないように簡単な水洗を行い、余分な泥を落とした後、20℃65%RHの環境下において24時間、直射日光を避けた状態で乾燥する。その後、長さ20cm、幅3cmに切り出す。この時、帯状板状芯材と透水性濾過材がコンポスト化による劣化以外に物理的な損傷を受けず容易に剥離する場合、剥離した帯状板状芯材と透水性濾過材についてそれぞれ引張強伸度試験に供する。物理的な損傷を受ける可能性がある場合は、帯状板状芯材と透水性濾過材の試験片採取用にそれぞれ長さ20cm、幅3cmの試験片を切り出し、帯状板状芯材と透水性濾過材との接合点以外の透水性濾過材を切り取るなどの方法で透水性濾過材を取り除いた後の帯状板状芯材を試験片とし、また透水性濾過材に関しても同様に接合点以外の帯状板状芯材を切り取るなどの方法で取り除いたものを試験片に供する。引張強伸度試験における条件は、試料幅3cm、把持間隔100mm、引張強伸度10mm/分とし、最初に現れるピークにおける伸度をもって破断伸度とする。
【0011】
本発明に用いられる帯状板状芯材としては、おおよそ平らで細長い形状で、多数の凹凸を有するものであれば特に限定はない。その素材としては、土中にて強度低下を起こす素材を選定するのが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、セルロース等で熱成形可能なものが用いられる。また帯状板状芯材の材料厚みは、大深度地盤の高い地盤圧力の面から、おおむね0.4〜0.8mm、より好ましくは0.6〜0.7mmであり、帯状板状芯材の成形厚さは、大深度地盤の高含水比の面から大きな排水管路(排水断面積)を確保する必要があるため、おおむね4〜8mm、より好ましくは6〜7mm程度とされる。
帯状板状芯材に形成される凹凸形状の一例を図2に示したが、凹凸の形状はこれらに限定されるものではない。凸部は穿孔されていても、されていなくてもよい。独立突起形状は高い排水管路が得られるため、好ましく使用される。独立突起の芯間距離は、10〜20mmが好ましいが、帯状板状芯材の材料厚み、成形厚さ等を勘案して総合的に決定するのが望ましい。帯状板状芯材の幅は、10cm前後、長さは100〜200m程度で丸捲き可能なものが好ましい。突起の高さは2〜15mmが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる透水性濾過材としては、土粒子の分離性能の面から、スパンボンド、サーマルボンド、レジンボンド、スパンレースなど各種不織布や、これらの複合シートが挙げられるが、特に強度の点から長繊維からなる不織布が好ましく用いられる。
不織布の構成繊維の単糸デニールは、土粒子分離性能および土圧耐久性の面から、おおむね1〜5dtex、より好ましくは2〜4dtexであり、目付けは30〜200g/m2 、より好ましくは40〜120g/m2 とするのがよい。
繊維配列の分散度はより高いのが好ましく、タテ、ヨコおよび両斜め方向に略均等に分散配列されているほど望ましい。また素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVA、セルロースなどの通常不織布に使用される繊維が使用されるが、特に強度の点からポリエステル繊維が好ましく用いられる。
ポリエステル繊維の中でも、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、およびD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれる重合体またはこれらの重合体から選ばれる二種以上のブレンド体である脂肪族ポリエステルは、強度が高いことに加え、排水機能を終えた後、最終的に土中で分解されるため環境負荷低減の観点からもより好ましく使用される。
【0013】
透水性濾過材として、生分解性を有しない素材または帯状板状芯材に比較して土中における耐久性が高い素材を使用することにより、48℃コンポスト化処理5日後の透水性濾過材の破断伸度Aと帯状板状芯材の破断伸度Bとの関係をA>Bとすることができ、本発明の目的が達成される。すなわち、透水性濾過材にポリエステルなど土中における耐久性が高い素材を使用した場合、帯状板状芯材としてポリ乳酸、PVA、ポリ酪酸、ポリ−ε−カプロラクトン、セルロースなどの生分解性を示す素材を使用することができる。
また透水性濾過材としてポリ乳酸を使用した場合には、帯状板状芯材としてポリ酪酸、ポリ−ε−カプロタクトンなど生分解速度の早い素材を選定することで本発明の目的が達成される。さらに生分解速度の調整は、素材の選定だけではなく、厚みや形状により調整することも可能である。
本発明の土木用排水材において、帯状板状芯材2と透水性濾過材3とが相互に接する部分とは、図1に示すように帯状板状芯材2に多数個所存在する凸部の頂点と透水性濾過材3との接着点4をいい、本発明おいては、これらの接着点4の全てまたは一部を接着し、帯状板状芯材2と透水性濾過材3を固定したものをいう。これらの接着方法は、熱接着、接着樹脂の使用など特に限定するものではないが、接着樹脂を使用する場合には、PVAやセルロースなど生分解性を有する樹脂が環境負荷の低減の点から好ましい。
【0014】
本発明の土木用排水材の製造方法と作用効果を図3、図4および図5を用いて説明する。
図3は、本発明における排水材の製造方法の一例を示す説明図である。帯状板状芯材2はガイドロール6により連続的に繰出され、帯状板状芯材2の表裏両面の凸部頂点部にロールコーター7により接着剤5が塗付され、次いで別に巻回された透水性濾過材3が濾過材被覆装置8により帯状板状芯材2の表面に連続的に供給され、該帯状板状芯材2の周面をとり囲むように透水性濾過材3が連続的に被覆され、次いで接着剤押出装置9により押出された接着剤により前記被覆された透水性濾過材3の重ね合わせ部分が固着され、さらにプレスロール13により乾燥装置10に供給されて乾燥された後、ガイドロール6に導かれて丸捲きされた長尺物の排水材1を得る。
【0015】
図4は、本発明の土木用排水材の打設時の使用状態を示す説明図、図5は、打設後の圧密沈下時の状態を示す説明図である。なお、図4中の11は盛土、12は地盤面を示す。排水材1は、打設機に供給され、打設機のマンドレルにより先端部を把持された状態で土中に引き込まれて垂直方向に打設される。
本発明の土木用排水材によれば、排水材の製造、運搬、打設の終了までは帯状板状芯材2と透水性濾過材3とが接着性材料によって強固に一体化されているため、濾過材のズレや破損さらには取扱性不良などの問題は発生せず、合理的な製造・運搬・打設が可能となる。また土中に埋設された排水材1は、帯状板状芯材2と透水性濾過材3が所定の関係を有することから、打設後に帯状板状芯材2が優先的に座屈、崩壊するため、透水性濾過材3への応力が低減され、図5に示すように圧密沈下が進行して排水材1に50%を超えるような大きな押曲げ変形が生じても、透水性濾過材は帯状板状芯材の変形により安定構造をとることができる。その結果、透水性濾過材は破損することなく、長期間にわたる土中埋設に耐え、高い排水機能を持続することができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明を実施例により説明する。なお、例中の測定および評価は下記の方法により行った。
(1) 目付(g/m2
JIS−L−1906に規定の方法に従い、縦20cm×横25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3箇採取して質量を測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して求める。
(2) 48℃コンポスト化処理5日後の破断伸度
JIS K−6437に準拠したコンポスト化処理にて48℃に調整し、5日間静置した試料(排水材)を取り出し、試料に力がかからないように簡単な水洗を行い、余分な泥を落とした後、20℃65%RHの環境下において24時間、直射日光を避けた状態で乾燥する。
その後、長さ20cm、幅3cmに切り出す。この時、帯状板状芯材と透水性濾過材がコンポスト化による劣化以外に物理的な損傷を受けず容易に剥離する場合、剥離した帯状板状芯材と透水性濾過材をそれぞれ引張強伸度試験に供する。物理的な損傷を受ける可能性がある場合は、帯状板状芯材と透水性濾過材の試験片採取用にそれぞれ長さ20cm、幅3cmの試験片を切り出す。帯状板状芯材を試験片とする場合は、接合点以外の透水性濾過材を切り取るなどの方法で取り除き試験に供する。透水性濾過材に関しても同様に、接合点以外の帯状板状芯材を切り取るなどの方法で取り除き試験に供する。引張強伸度試験における条件は、試料幅3cm、把持間隔100mm、引張強伸度10mm/分とし、最初に現れるピークにおける伸度をもって破断伸度とする。
【0017】
(3) 屈曲時の透水性濾過材形状変化
コンポスト化5日経過後の排水材を押曲げした時の透水性濾過材の破損状況を目視観察により確認した。すなわち、帯状板状芯材の周面を透水性濾過材で被覆すると共に、この両材料が相互に接する凸部頂点部が接着性材料で固着された幅10cm、長さ20cmの排水材サンプルをJIS−K−6437に準拠したコンポスト化処理にて48℃にて調整し、5日間静置した試料を取り出し、試料に力がかからないように簡単な水洗を行い、余分な泥を落とした後、20℃65%RHの環境下において24時間、直射日光を避けた状態で乾燥した後、1mm/分の速度で側圧5kg・f/cm2 の条件下で圧縮押曲げを行ない、透水性濾過材の破損状態を観察した。
(4) 変形後透水性評価
上記(3) で圧縮曲げ試験に供したサンプルから透水性濾過材を(2) に準拠する方法で取り出し、JIS−A1218定水位透水試験に準じて内径10cm、水頭10cmの条件下でスパンボンドの面に対して垂直方向の透水量を測定して透水係数を測定した。
【0018】
[実施例1]
帯状板状芯材2として、図6に示すような、厚み0.6mm、凸部の頂点直径Dが5mm、高さが6mm、凸部芯間距離Lが20mmであり、融点が61℃で、185℃での溶融粘度が2600Pa.sであるポリカプロラクタン製の独立凹凸成型芯材を用い、また透水性濾過材として、ポリエチレンテレフタレートからなる単糸デニール2dtex、目付け50g/m2 、厚さ0.18mmのスパンボンド不織布を用い、上記の独立凹凸成型帯状板状芯材の一列3個の頂点部全面と上記スパンボンド不織布が相互に接する部分をアクリル系接着剤にて固着した帯状の幅10cmの排水材を作製した。
【0019】
[実施例2]
実施例1において、透水性濾過材として下記の方法で製造した単糸デニール2dtex、目付50g/m2 、厚さ0.18mmのポリ乳酸スパンボンド不織布を用い、接着材としてPVA樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして帯状の幅10cmの排水材を作製した。
ポリ乳酸スパンボンド不織布は、融点170℃、MFR値が10g/分のポリ乳酸〔D体/L体の共重合比(モル比)=1.3/98.7〕熱可塑性樹脂を、押出温度215℃で押出して1540ホールの紡糸口金を用いてフィラメント群を紡出し、高速気流牽引装置を使用して牽引し、移動する吸引装置の付いた金網製ウエブコンベアに受けてウエブを作製した後、該ウエブを彫刻ロールと平滑ロールを組み合わせた熱圧着ロールにて50kg/cmの圧力で部分熱圧着することにより得た。
【0020】
[実施例3]
実施例1において、帯状板状芯材として、厚み0.6mm、凸部の頂点直径Dが5mm、高さ6mmで、凸部芯間距離Lが20mmである塩化ビニルからなる熱可塑性樹脂製の凹凸成型芯材を用い、透水性濾過材として、ポリプロピレンからなる単糸デニール2dtex、目付け50g/m2 、厚さ0.35mmのスパンボンド不織布を用いた以外は実施例1と同様にして帯状の幅10cmの排水材を作製した。
【0021】
[実施例4]
実施例3において、透水性濾過材として、ナイロン6からなる単糸デニール2dtex、目付け50g/m2 、厚さ0.35mmのスパンボンド不織布を用いた以外は実施例3と同様にして帯状の幅10cmの排水材を作製した。
【0022】
[比較例1]
実施例1において、帯状板状芯材として、実施例3で用いた熱可塑性樹脂性の凹凸成型芯材を用いた以外は、実施例1と同様にして帯状の幅10cmの排水材を作製した。
[比較例2]
比較例1において、透水性濾過材として、実施例2で用いたスパンボンド不織布を用いた以外は比較例1と同様にして帯状の幅10cmの排水材を作製した。
【0023】
実施例1〜4および比較例1、2で用いた排水材を構成する帯状板状芯材と透水性濾過材の物性および該排水材を5日間48℃コンポスト化処理した後の帯状板状芯材および透水性濾過材の物性を測定し、その結果を表1に示した。
表1から、実施例1〜4で得られた排水材では、コンポスト化5日後の曲げ試験において、帯状板状芯材の一部が座屈や亀裂が発生し、透水性濾過材の損傷がなく、透水性が維持されていることが確認された。一方、比較例1〜2で得られた排水材では、曲げ試験において、透水性濾過材が曲げに追従しきれずに破損してしまうことが確認された。
また透水係数の測定結果から、実施例1〜4で得られた排水材では、コンポスト化5日後の透水性濾過材の透水性が維持されていたが、比較例1、2では、透水性濾過材に破損があり、透水係数を測定できなかった。この結果は、本発明の排水材が大深度垂直排水材としての理想的な機能を備えていることを示すものである。
【0024】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の土木用排水材は、土中に埋設前の取扱性に優れるとともに、土中に埋設後には帯状板状芯材が優先的に強度劣化を起こし、土圧や変形による透水性濾過材の破損が少なく、長期にわたる排水性を維持することができるため、排水材に圧縮や曲げの力が作用するような大深度用垂直排水材として極めて有用である。また低深度用の垂直排水材や水平用排水材としても利用価値の高く、各種地盤改良に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一例を示す土木用排水材の構造断面模式図である。
【図2】本発明に用いられる帯状板状芯材の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の土木用排水材の製造装置の一例を示す模式図である。
【図4】土木用排水材を打設し、盛土を行った施工図である。
【図5】打設後の地盤の圧密により土木用排水材の変形を表す模式図である。
【図6】実施例に用いた帯状板状芯材の模式図である。
【図7】従来の排水材の打設後の湾曲状態を表す模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1…排水材、2…凹凸成形帯状板状芯材、3…透水性濾過材、4…接着点、5…接着剤、6…ガイドロール、7…ロールコーター、8…濾過材被覆装置、9…接着剤押出装置、10…乾燥装置、11…盛土、12…地盤面、13…プレスロール、D…凸部頂点直径、L…凸部芯間距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の凹凸を有する帯状板状芯材の周面が透水性濾過材で被覆され、かつ該透水性濾過材と前記帯状板状芯材とが相互に接する部分の少なくとも一部が固着されている構造体において、該構造体を5日間48℃コンポスト化処理した後の前記透水性濾過材の破断伸度Aと前記帯状板状芯材の破断伸度Bとの関係がA>Bであることを特徴とする土木用排水材。
【請求項2】
前記透水性濾過材がポリエステルからなる長繊維不織布であることを特徴とする請求項1に記載の土木用排水材。
【請求項3】
前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルであって、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、およびD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれる重合体またはこれらの重合体から選ばれる二種以上のブレンド体であることを特徴とする請求項2に記載の土木用排水材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−112155(P2006−112155A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301689(P2004−301689)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】