説明

土砂改良方法および植生土壌

【課題】高価な繊維状物質に代えて籾殻の粉末を高含水比の土砂に混入することにより、高含水比の土砂を低コストでかつ大量に改良処理できると共に、籾殻の大量使用を可能にする土砂改良方法を提供する。
【解決手段】浚渫工事1で浚渫された高含水比の浚渫土砂2に、籾殻4を2工程かける粉砕工程5で粉砕して得られた籾殻粉6を所定の割合で混合し、所望により海藻から抽出したアルギン酸を含む抽出物9を加えて、混合・撹拌工程7において撹拌・混合する。すると、籾殻粉6の吸水効果、海藻抽出物9の増粘効果により、土砂の塑性化または団粒化が進み、植物の生育に適した植生土壌8が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水比の土砂を改良する土砂改良方法に係り、特に植生に適した性状に改良するための土砂改良方法と該方法により得られた植生土壌とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浚渫土砂や建設発生土砂などの高含水比の土砂を改良して、植生用として利用する試みが種々なされている。例えば、特許文献1には、高含水比の土砂に、新聞紙の古紙等の繊維状物質と高分子系改良材(凝集材)とを添加して機械的せん断力を加えることにより団粒化させる技術が、特許文献2には、高含水比の土砂に、養分を吸着させた生分解性樹脂製中空繊維を添加して混合攪拌して改良する技術がそれぞれ開示されている。これら技術によれば、繊維が有する吸水効果により土砂の塑性化が進むことに加え、得られた改良土は保水性、保肥性等に優れたものとなり、植生土壌として有用となる。
【0003】
しかし、上記特許文献1に記載の技術によれば、高分子系改良材および古紙に使用されているインクが環境負荷を増大させる原因になる、という問題があった。また、古紙自体に再生紙としての利用があるため、その入手に量的な制限があり、大量に発生する高含水比の土砂の改良処理には向かない、という問題もあった。一方、特許文献2に記載の技術によれば、生分解性樹脂の使用により環境負荷が低減するものの、高価な生分解性樹脂製中空繊維を使用するため、土砂改良に高コストがかかり、前記同様に大量に発生する高含水比の土砂の改良処理には向かない、という問題があった。
【0004】
ところで、農産副産物の1つに、米の脱穀に伴って発生する籾殻がある。この籾殻は、繊維質で硬くて粉砕が困難なため、従来は、籾殻のままで野菜・果樹園や畜舎の敷き料として利用するか、あるいは薫炭として野菜の種まき時の敷きわら代りとして利用するのがほとんどであった。しかし、最近では、籾殻の粉砕化技術の進歩もあって、粉末としての籾殻の利用も進んでおり、例えば、特許文献3には、籾殻の粉末に米ヌカ、コーンブラン、フスマ等の栄養材を混合して食用茸類の培地として利用することが、特許文献4には、食品廃棄物に籾殻を混合してトレー容器として再生利用することがそれぞれ記載されている。しかるに、籾殻の発生量は、玄米の収量の10%強にも達して膨大となっており、前記した利用形態では籾殻の使用量に限界があり、新たな用途開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−125459号公報
【特許文献2】特開2004−229535号公報
【特許文献3】特開平6−225630号公報
【特許文献4】特開2004−292051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、高価な繊維状物質に代えて籾殻の粉末を高含水比の土砂に混入することにより、高含水比の土砂を低コストでかつ大量に改良処理できると共に、籾殻の大量使用を可能にする土砂改良方法を提供し、併せて植生機能に優れかつ環境負荷の小さい植生土壌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る土砂改良方法は、高含水比の土砂に籾殻の粉末を添加して混合・攪拌し、土砂を塑性化させることを特徴とする。
【0007】
籾殻は、粉末化することにより著しく吸水性が高まるので、この粉末を高含水比の土砂に混合・撹拌することで土砂は容易に塑性化し、結果として安価な籾殻の使用により改良コストが大幅に低減する。また、籾殻の粉末を土砂に混入することで、改良土砂に大きな保水性および保肥性が付与されるので、植生土壌として有用となる。
【0008】
本発明の方法において、上記高含水比の土砂としては、浚渫土砂またはシールド工事等で発生する建設発生土砂を用いることができる。これら高含水比の浚渫土砂または建設発生土砂は、通常では排泥池での天日乾燥または大がかりな脱水設備による脱水処理が必要になるが、上記したように籾殻の粉末の添加によって塑性化するので、即時搬出が可能になり、この結果、浚渫工事、シールド工事等に付随する後処理に要するコストが大幅に低減する。
【0009】
本発明の土砂改良方法は、所望により海藻より抽出したアルギン酸含有の抽出物を添加してもよいものである。この場合は、アルギン酸による増粘効果で土砂の団粒化が促進されることに加え、アルギン酸が栄養分となるので、植生土壌としてより一層有用となる。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る植生土壌は、高含水比の土砂に籾殻の粉末を混合・撹拌することにより塑性化させたことを特徴とする。
このように構成された植生土壌は、籾殻の存在によって保水性並びに保肥性に優れたものとなり、籾殻自体が栄養分としてのケイ酸を多量に含んでいることもあって、植生用として極めて有用となる。また、環境負荷を増大させる素材を含まないので、自然環境を悪化させることもない。
【0011】
本植生土壌は、所望により海藻より抽出したアルギン酸含有の抽出物を添加してもよいものである。この場合は、団粒化によって保水性および保肥性がより一層高まると共に、栄養価も高まるので、植生機能がより一層向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る土砂改良方法によれば、高含水比の土砂に入手容易で安価な籾殻の粉末を添加して改良するので、改良コストの大幅な低減を達成できると共に、高含水比の土砂および籾殻の双方の大量処分が可能になり、その利用価値は大なるものがある。また、籾殻の粉末を土砂に混入することで、改良土砂に大きな保水性および保肥性が付与されるので植生土壌として有用となる。
【0013】
また、本発明に係る植生土壌によれば、保水性並びに保肥性に優れるばかりか、栄養価も高いので植生用として極め有用となり、その上、環境負荷を増大させる素材を含まないので、自然環境の保護にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面も参照して説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態としての土砂改良工程を示したものである。本実施形態は、浚渫した土砂を植生に適した性状に改良するもので、浚渫工事1で浚渫された高含水比の浚渫土砂2と米の脱穀工程3で発生した籾殻4を粉砕工程5で粉砕して得られた籾殻粉6とを混合・撹拌工程7において撹拌・混合して、植生土壌8を得るようにしている。
【0015】
籾殻4は、ボールミル、ハンマーミル等の汎用の粉砕機により粉砕したのでは微粉末化が困難であり、上記した粉砕工程5は、籾殻4を擂り潰すように粉砕する一次粉砕工程5aと、前記一次粉砕されたものを機械的に粉砕する二次粉砕工程5bとを含んでいる。前記した一次粉砕工程5aおよび二次粉砕工程5bは、工程を分けて行ってもよいが、1つの粉砕機を利用して連続的に行うことができる。このような粉砕を可能にする粉砕機としては、北川鉄工所社製の「フォーミル(Formill)」があり、ここでは、この粉砕機を利用して一次粉砕工程5aと二次粉砕工程5bとを連続的に実施している。この場合、一次粉砕工程5aでは、粉末がブリケット状に固まった成形体が得られるので、この成形体を同じ粉砕機に再投入して二次粉砕工程5bを実施し、これによって平均粒子径100〜600μmの籾殻粉6が得られるようになる。
【0016】
上記混合・撹拌工程7においては、上記のようにして得られた籾殻粉6を浚渫土砂2に適宜量添加し、混合・撹拌する。この場合、浚渫土砂2に対する籾殻粉6の添加量は、浚渫土砂2の含水比に応じて適宜設定するが、浚渫土砂2の含水比が100〜600%である場合、乾燥土砂に対して籾殻粉6を重量比で30〜50%添加する。このように配合した浚渫土砂2と籾殻粉2とを混合・撹拌すると、籾殻粉6の吸水効果により高含水比の浚渫土砂2の塑性化が進み、これによって塑性化した植生土壌8が得られるようになる。
【0017】
上記のように行う土砂改良方法においては、安価な籾殻4を粉砕して得た籾殻粉6を改良材として使用するので、新聞紙の古紙等の繊維状物質や生分解性樹脂製中空繊維を改良材として使用する場合よりも改良コストが大幅に低減する。また、塑性化によって高含水比の浚渫土砂2の即時搬出が可能になるので、浚渫土砂2の後処理に要するコストが大幅に低減する。さらに、浚渫土砂2および籾殻4の大量処分が可能になるので、両者の再生利用法として極めて有用となる。
【0018】
一方、上記のようにして得られた植生土壌8は、籾殻粉6の存在によって大きな保水性および保肥性が付与されるので、植物の生育に向けて有用となる。特に、籾殻4は、栄養分としてのケイ酸を多量に含んでいるので、ケイ酸補給材としても有用となる。
【0019】
本発明の他の実施形態においては、所望により上記混合・撹拌工程7において、海藻抽出物9を添加混合してもよいものである。この海藻抽出物9は、海藻(渇藻類)から抽出したアルギン酸含有のペーストまたは乾燥物からなるもので、乾燥土砂に対して重量比で1〜3%添加する。この場合、海藻抽出物9の抽出は、海藻を炭酸ナトリウム水溶液(弱アルカリ)に浸潤した後、機械的せん断力を加えてペースト化し、必要により最終的に乾燥する方法を採用することできる。
【0020】
このように海藻抽出物9を添加すると、海藻抽出物9の増粘効果により土砂の塑性化がより一層促進されると共に、団粒化も促進される。団粒化された植生土壌8は、保水性および保肥性がより一層高まるので、植生機能がより一層向上する。また、この実施形態では、籾殻4に含まれるケイ酸分に加え、海藻抽出物9に含まれるアルギン酸が栄養分として補給されるので、植生用として極めて有用となる。なお、前記海藻としては廃棄物(廃棄海藻)を用いるようにしてもよく、この場合は廃棄物である海草の処分も進むので、環境改善にも寄与する。
【実施例1】
【0021】
湖山池から採取した土砂に水を加えて、含水比400%に調整し、この高含水比の土砂に、前記破砕工程5(図1)で得た籾殻粉6を、乾燥土砂に対して重量比で10%、20%、30%、40%,50%の割合で添加し、撹拌容器内で撹拌して土砂の改良状況を観察した。
この結果、籾殻粉の20%添加までは、土砂の塑性化が起こらなかったが、籾殻粉を30%以上添加すると、土砂の塑性化が起こり、50%添加で粒状化するようになった。したがって、高含水比の土砂を改良するには、乾燥土砂に対して籾殻粉を重量比で30〜50%添加するのが望ましいといえる。
【実施例2】
【0022】
実施例1と同様に含水比400%に調整した土砂に、前記破砕工程5(図1)で得た籾殻粉6を、乾燥土砂に対して重量比で10%、20%、30%、40%,50%の割合で添加すると共に、前記廃棄海藻から抽出した海藻抽出物9を、乾燥土砂に対して重量比で3%均一添加し、撹拌容器内で撹拌して土砂の改良状況を観察した。
この結果、籾殻粉の10%添加では、土砂の塑性化は起こらなかったが、籾殻粉を20%以上添加すると、土砂の塑性化が起こり、40%および50%の添加で団粒化するようになった。したがって、海藻抽出物を添加する場合は、高含水比の土砂に、乾燥土砂に対して籾殻粉を重量比で20〜50%添加するの望ましいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一つの実施形態としての土砂改良工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
2 浚渫土砂
4 籾殻
5 籾殻の破砕工程
6 籾殻粉(籾殻の粉末)
7 混合・撹拌工程
8 植生土壌(改良土砂)
9 海藻抽出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水比の土砂に籾殻の粉末を添加して混合・攪拌し、土砂を塑性化させることを特徴とする土砂改良方法。
【請求項2】
高含水比の土砂として、浚渫土砂または建設発生土砂を用いることを特徴とする請求項1に記載の土砂改良方法。
【請求項3】
海藻より抽出したアルギン酸含有の抽出物を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の土砂改良方法。
【請求項4】
高含水比の土砂に籾殻の粉末を添加して混合・攪拌することにより塑性化させたことを特徴とする植生土壌。
【請求項5】
海藻より抽出したアルギン酸含有の抽出物を添加したことを特徴とする請求項4に記載の植生土壌。

【図1】
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【公開番号】特開2008−133311(P2008−133311A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318372(P2006−318372)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】