説明

土質改良機の撹拌ミキサにおける異常検知装置

【課題】従動部側が過負荷状態になると、過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、そして、負荷状態の異常を検知して、土質改良機全体を保護する。
【解決手段】羽根と一体に回転する撹拌軸を有する従動部と、前記撹拌軸に回転を付与する駆動部とを備え、前記羽根の回転により、土と土質改良剤を混合・撹拌処理する土質改良機の撹拌ミキサにおいて、前記従動部と前記駆動部の間に過負荷保護装置を設け、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になると、前記過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、さらに、前記過負荷保護装置の従動部側の回転状態を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて負荷状態の異常を検知する信号処理手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土質改良機の撹拌ミキサに関するものであり、特に、土質改良機の撹拌ミキサにおける負荷状態の異常を検知する異常検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、埋め立て地等の軟弱地盤に土木建築等の構造物を建設する際、軟弱地盤に固化剤を撒布して脱水し、締め固めにより地盤を改良することが行われて来た。しかし、この方法は、土が水分の多い粘土や粘性のある土質の場合、十分な支持力が得られないことや、土が乾いたときに埃が多く出るという問題等があった。
【0003】
このような問題を解決するために、現在では、軟弱地盤を掘削し、ここで掘削した土に土質改良剤を混ぜて土質の改良を行い、この改良処理をした土を再び建設箇所に戻す方法も行われており、そのための土質改良機も知られている。
【0004】
例えば、ベルトコンベアで送られて来る泥土と土質改良剤を、羽根の回転により混合・撹拌処理する撹拌ミキサを有し、該撹拌ミキサは、ベルトコンベアの流れ方向に略90度をなす角度で設けられた羽根と、該羽根を一体回転可能に取り付けた撹拌軸と、該撹拌軸に継ぎ手を介して動力連結された駆動モータを備え、該駆動モータの回転で撹拌軸と羽根を一体に回転させるようにした土質改良機が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−316028号公報(図4)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の土質改良機の撹拌ミキサは、従動部側における羽根に異物等を噛み込んだ場合、過負荷状態となるが駆動モータは回転を継続しようとするため、従動部側における回転羽根の破損や、従動部側から駆動部側に過負荷トルクが加えられて駆動モータの焼損が生じることがある。また、撹拌ミキサへ原料の送り込みを継続するので、攪拌ミキサの閉塞及びその閉塞により原料の供給側も送り込み不能の異常を引き起こしてしまい、土質改良機全体の異常に繋がる虞があった。
【0006】
このため、従動部と駆動部の間に過負荷保護装置を設け、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になった場合は、該過負荷保護装置に設けられた摩擦板で滑りを発生させてトルクの上昇を抑えるように構成することが考えられる。しかし、該過負荷保護装置により、従動部側と駆動部側の保護はできるが、異常を検知しないので、いつまでも駆動部が無駄に回転し続けて作業性が悪い。
【0007】
そこで、従動部側が過負荷状態になると、過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、そして、負荷状態の異常を検知して、土質改良機全体を保護するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、羽根と一体に回転する撹拌軸を有する従動部と、前記撹拌軸に回転を付与する駆動部とを備え、前記羽根の回転により、土と土質改良剤を混合・撹拌処理する土質改良機の撹拌ミキサにおいて、前記従動部と前記駆動部の間に過負荷保護装置を設け、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になると、前記過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すよう
に構成し、さらに、前記過負荷保護装置の従動部側の回転状態を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて負荷状態の異常を検知する信号処理手段を備えたことを特徴とする土質改良機の撹拌ミキサにおける異常検知装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、異物の噛み込み等により、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になると、過負荷保護装置により従動部と駆動部の連結が外されて、駆動部側はそのまま回転を継続し、従動部側は回転を減速または停止する。これと同時に、過負荷保護装置の従動部側に設置したセンサの検出信号に基づいて、信号処理手段が従動部側に異物噛み込み等の異常が起きたことを検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上述したように、例えば羽根が異物等を噛み込んで従動部側に過負荷トルクが発生すると、過負荷保護装置により従動部と駆動部の連結が外されて、駆動部側及び従動部側の双方を保護することができる。また、過負荷保護装置の従動部側に設置したセンサの検出信号に基づいて、負荷状態の異常を検知することができ、この検知によって、例えば駆動部を停止し、あるいは、原料の送り込みを停止することができ、駆動部及び攪拌ミキサの保護だけでなく、土質改良機全体の保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の土質改良機の撹拌ミキサについて、好適な実施例をあげて説明する。従動部側が過負荷状態になると、過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、そして、負荷状態の異常を検知して、土質改良機全体を保護するという目的を達成するために、羽根と一体に回転する撹拌軸を有する従動部と、前記撹拌軸に回転を付与する駆動部とを備え、前記羽根の回転により、土と土質改良剤を混合・撹拌処理する土質改良機の撹拌ミキサにおいて、前記従動部と前記駆動部の間に過負荷保護装置を設け、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になると、前記過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、さらに、前記過負荷保護装置の従動部側の回転状態を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて負荷状態の異常を検知する信号処理手段を備えたことにより実現した。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例である土質改良機の撹拌ミキサの側面図である。同図に示すように、攪拌ミキサ1は、固定基台2の上側に、底部が開放された函体3が固設されている。また、函体3の底部に近接して土質改良機における土搬送用のベルトコンベア4が設けられている。
【0013】
函体3の内部には、ベルトコンベア4の流れ方向(土及び土質改良剤等原料の移動方向)に対して略90度をなす角度で撹拌軸6を設け、該撹拌軸6に複数個の撹拌用の羽根7,7…を一体回転可能に取り付けている。撹拌軸6は函体3の左右両側面を貫通して、該函体3の左右両側に突出しており、該函体3から突出している両端が、固定基台2に軸受8,8を介して回転可能に支持されている。
【0014】
図2は、撹拌用の羽根7の構造例を示す拡大詳細図である。同図において、羽根7は、撹拌軸6の周面に、ホルダー9を介して、複数のブレード10,10…が放射状に固設されている。
【0015】
図3は、要部を示す拡大詳細図である。同図において、撹拌軸6の一端側には、過負荷保護装置11を介して、電動モータ12が動力連結されている。駆動部である電動モータ12は、従動部側となる撹拌軸6に回転駆動力を付与する。
【0016】
過負荷保護装置11は、駆動部側となる電動モータ12のモータ軸13と一体回転可能に取り付けている駆動側ハブ14と、従動部側となる撹拌軸6と一体回転可能に取り付けている従動側ハブ15と、該駆動側ハブ14と該従動側ハブ15との間に設けられている摩擦板(図示せず)等で構成されている。
【0017】
そして、過負荷保護装置11は、上記摩擦板の摩擦保持力よりも小さい軸トルクが、従動部側と駆動部側との間に働いているときには、従動部側と駆動部側とが互いに動力連結し合って一体的に回転する。反対に、摩擦板の摩擦保持力よりも大きい軸トルク、すなわち設定トルク以上の過負荷状態が生じると、摩擦板が滑り(スリップ)を起こして空転し、従動部側と駆動部側との間の動力連結を低減もしくは遮断するになっている。また、前記設定トルクの大きさは、所定の範囲内で調整することができる。
【0018】
また、過負荷保護装置11の従動部側には、従動側ハブ15の回転状態を検出し、軸トルクに対応した信号を出力するセンサ16を設けている。このセンサ16は、本例では近接スイッチであり、図4に示すように、先端を従動側ハブ15に近接させて、固定基台2に取り付けられている。そして、従動側ハブ15側には、該従動ハブ15と一体に回転する半月状をした被検出片23が取り付けられており、被検出片23が従動側ハブ15と共に回転されて、被検出片23がセンサ16の直前を横切ると、センサ16から波形信号が出力されるようになっている。したがって、この波形信号を分析することにより、従動側ハブ15の回転状態を検知することができる。
【0019】
例えば、電動モータ12が定速回転されている状態において、過負荷保護装置11内に摩擦板による空転がなく、従動部側と駆動部側とが1対1で回転していれば、センサ16から一定周期の波形信号が得られる。これに対して、例えば過負荷が生じて過負荷保護装置11内の摩擦板に空転が発生すると、センサ16から波形信号に大きな変動が発生し、波形信号が連続出力状態になったり、全く得られなくなったりする。このように、前記センサ16の波形信号の変化から信号処理手段(図示せず)が過負荷状態の発生を検知することができる。
【0020】
なお、センサ16は、近接スイッチに限ることなく、リミットスイッチ、ロータリエンコーダ等を使用することも可能である。また、駆動部として電動モータ12を使用しているが、油圧モータ、空圧モータ等、回転駆動力を持つものであれば何でもよい。
【0021】
このように、過負荷保護装置11により従動部と駆動部の連結が外されて、駆動部側及び従動部側の双方を保護することができ、また、センサ16の検出信号に基づいて負荷状態の異常を検知することができるので、この異常検知により電動モータ12を停止させたり、攪拌ミキサ1に原料の投入動作を停止したりすることができるので、攪拌ミキサ1をはじめとする土質改良機全体の保護を図ることができる。
【0022】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る土質改良機の撹拌ミキサの断面図。
【図2】本発明の土質改良機の撹拌ミキサにおける羽根の拡大詳細図。
【図3】本発明の土質改良機の撹拌ミキサにおける要部拡大詳細図。
【図4】本発明の土質改良機の撹拌ミキサにおけるセンサの配置状態の詳細図。
【符号の説明】
【0024】
1 攪拌ミキサ
6 撹拌軸
7 羽根
11 過負荷保護装置
12 電動モータ(駆動部)
13 モータ軸
14 駆動側ハブ
15 従動側ハブ
16 センサ
23 被検出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根と一体に回転する撹拌軸を有する従動部と、前記撹拌軸に回転を付与する駆動部とを備え、前記羽根の回転により、土と土質改良剤を混合・撹拌処理する土質改良機の撹拌ミキサにおいて、
前記従動部と前記駆動部の間に過負荷保護装置を設け、軸トルクが所定値以上になって過負荷状態になると、前記過負荷保護装置が従動部と駆動部の連結を外すように構成し、
さらに、前記過負荷保護装置の従動部側の回転状態を検出するセンサと、該センサの検出信号に基づいて負荷状態の異常を検知する信号処理手段を備えたことを特徴とする土質改良機の撹拌ミキサにおける異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−105660(P2007−105660A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300113(P2005−300113)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】