説明

土質材料の嵩密度測定方法

【課題】 施工現場などにおいて、ベントナイト系材料などの土質材料の嵩密度を精度よく計測することができる土質材料の嵩密度の計測方法を提供する。
【解決手段】 締固めベントナイト系材料からなる止水層3から供試体21を切り出し、重量を計測する。次に、切り出した供試体21を計測用油23に泡が出なくなるまで漬け込む。その後、供試体21を取り出し、表面の計測用油23を拭き取り、計測用油23が入れられたメスシリンダ24内に供試体21を完全に入れる。そして、計測用油23の増加量をメスシリンダ24によって計測し、供試体21の体積を求める。求めた供試体21の重量および体積から、供試体21の嵩密度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイト系材料などの土質材料の密度、特に、嵩密度(湿潤密度)を測定する測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
締固め工法によって造成された地盤は、嵩密度を計測し、計測された嵩密度から求められた乾燥密度によって管理が行われている。また、放射性廃棄物を処分するための廃棄物処理施設を設けるにあたり、ベントナイト系材料を締め固めて廃棄領域を造成することが考えられている。このような廃棄領域においても、締固め工法の場合と同様、ベントナイト系材料の嵩密度の測定して乾燥密度を求めて、廃棄領域の管理を行うことが考えられる。さらに、廃棄領域においては、放射性廃棄物が廃棄されることから、他の締固め工法の場合などよりも厳しい密度管理を行う必要がある。
【0003】
こうした廃棄領域に設けられるベントナイト系材料の嵩密度を計測する方法としては、たとえば、容積が既知である金属製容器をベントナイト系材料に圧入してベントナイト系材料を採取してその重量を求め、ベントナイト系材料の体積と重量とから嵩密度を算出することが考えられる。また、土の嵩密度を計測する試験と同様の方法によってベントナイト系材料の嵩密度を計測することも考えられる。土の嵩密度の計測方法としては、たとえば非特許文献1に開示されたいわゆるパラフィン法などを用いることによって精度よく嵩密度を計測することができる。
【非特許文献1】日本規格協会編,「JISハンドブック12土木資材/建設用機械・用具」,第3版,日本規格協会,2004年5月25日発行,p.892−895
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術のうち、前者の方法では、金属製容器をベントナイト系材料に圧入する際に、その反力を取る必要がある。ベントナイト系材料を施工する現場において、この反力を取るのが難しいという問題があった。また、ベントナイト系材料を容器に欠損無く圧入するのは困難であるため、正確な嵩密度を求めるのが困難であるという問題もあった。
【0005】
一方、上記従来技術のうち、非特許文献1に開示されたパラフィン法では、嵩密度を精度よく計測することができる。ところが、パラフィン法を行う場合には、パラフィンを溶融させるために高温にする必要がある。施工現場でパラフィンを溶融させるのは、困難であることから、施工現場において嵩密度を精度よく測定するのは困難であった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、施工現場などにおいて、ベントナイト系材料などの土質材料の嵩密度を精度よく計測することができる土質材料の嵩密度の計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る嵩密度の計測方法は、施工対象領域で締め固められて形成された土質材料の一部を切り出して供試体を形成し、供試体の質量を計測し、計測用油内に供試体の全体に入れて、供試体の体積を計測し、供試体の質量および体積から、供試体の嵩密度を求めることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る嵩密度の計測方法では、土質材料を切り出して形成した供試体を計測用油に全体的に入れて供試体の体積を計測している。このとき、水などの液体に供試体を入れてその体積を計測しようとすると、土質材料はメニスカス応力による粒状体の集合体であることから、供試体をスレーキング破壊や膨潤変形させてしまい、正確な体積を計測することができない。この点、本発明に係る嵩密度の計測方法では、供試体を計測用油に入れている。油は分子の大きさが大きいことから土質材料の粒子間に入り込むことができず、供試体の表面に膜を作る。このため、土質材料に浸透してメニスカス応力を破壊することがない。したがって、スレーキング破壊を起こすこともないので制度よく土質材料の体積を計測することができる。さらには、また、計測用油は溶融させる必要などもないので、施工現場などにおいて、ベントナイト系材料などの土質材料の嵩密度を精度よく計測することができる。
【0009】
ここで、土質材料がベントナイト系材料である態様とすることができる。土質材料がベントナイト系材料である場合、計測用油が非電解質であることから、計測用油はベントナイトと陽イオン交換反応を起こさない。したがって、さらにスレーキング破壊などを好適に防止することができ、もってベントナイト系材料の嵩密度を精度よく計測することができる。
【0010】
また、供試体の体積を計測する前に、供試体を計測用油内に漬け込む態様とすることもできる。
【0011】
このように供試体の体積を計測する前に、供試体を計測用油に漬け込むことにより、供試体の表面に付着する空気を除去することができる。したがって、供試体の体積、さらには嵩密度をより正確に計測することができる。
【0012】
さらに、計測用油が、高粘性かつ疎水性を有する態様とするのが好適である。このように、高粘性かつ疎水性の計測用油を用いることにより、供試体の体積、さらには嵩密度をさらに精度よく計測することができる
また、計測用油の粘性度が50〜100mPa・sであるのが好適である。粘性度が50mPa・s未満では、土質材料に計測用油がしみ込む可能性が高くなり、100mPa・sを超えると土質材料の泡切れが悪くなるからである。
【0013】
そして、計測用油が、シリコンオイルまたは食用油である態様とすることができる。計測用油としては、シリコンオイルまたは食用油を好適に用いることができ、これらの油を用いることにより、供試体の嵩密度をより正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る土質材料の嵩密度測定方法によれば、施工現場などにおいて、ベントナイト系材料などの土質材料の嵩密度を精度よく計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0016】
本実施形態に係る土質材料の嵩密度計測方法では、土質材料として締固めベントナイト系材料を用いる。こ締固めのベントナイト系材料は、放射性廃棄物処理施設を構築するために用いられる。図1に示すように、放射性廃棄物処理施設10は、坑道1を有しており、坑道1内に放射性廃棄物2が埋められて廃棄される。坑道1は、たとえばコンクリートによって形成されている。また、放射性廃棄物2は、ガラス質の素材に溶け込まされ、鉄鋼製の容器に鋳込まれている。放射性廃棄物2を埋める際に、その周囲にベントナイト系材料を吹き付けることによって締固め、止水層(人工バリア)3を形成する。この止水層3により、放射性廃棄物2に対する地下水の流通を防止する。この止水層3は、たとえばノズル4を用いた乾式吹付けによって造成される。
【0017】
続いて、締固めベントナイト系材料の嵩密度測定手順について、図2を参照して説明する。締固めベントナイト系材料の嵩密度を測定するにあたっては、まず、図2(a)に示すように、止水層3を構成する締固めベントナイト系材料の一部を任意の形状に切り出して、図2(b)に示すように、締固めベントナイト系材料からなる供試体21を形成する。供試体21の切り出しは、通常のナイフなどを用いて行うことができる。
【0018】
供試体21を切り出したら、供試体21をはかりに直接のせて、供試体21の重量(質量)を計測する。供試体21の重量の計測が済んだら、図2(c)に示すように、容器22内に入れられた計測用油23に供試体21を完全に入れて、一次漬け込みを行う。一次漬け込みは、供試体21の表面に付着する泡がでなくなるまで行う。一次漬け込みを行うことにより、供試体21の表面における空隙が計測用油23で満たされる。ここで、計測用油23としては、シリコンオイルやサラダ油などの食用油を用いることができる。
【0019】
一次漬け込みが済んだら、供試体21を容器22内から取り出し、供試体21の表面についた余分な表面油を軽く拭き取り、図2(d)に示すように、供試体21の表面に計測用油の膜が形成された状態を形成する。続いて、図2(e)に示すように、メスシリンダ24に入れられて嵩が既知となっている計測用油23内に供試体21を完全に入れる。それから、メスシリンダ24によって計測用油23の嵩の増加量を計測することにより、供試体21の体積を計測する。そして、計測された供試体21の重量と体積とから、供試体21の嵩密度を算出する。こうして、供試体21の嵩密度の計測が行われる。
【0020】
嵩密度を算出したら、嵩密度から乾燥密度を求める。乾燥密度は、上記の手順で計測した嵩密度を、供試体の含水比に1を加えた数値で除することによって求めることができる。たとえば、計測された嵩密度が2.16Mg/m、供試体の含水比が35%である場合には、乾燥密度は、下記の(1)式によって算出することができる。
【0021】
乾燥密度=2.16/(1+0.35)=1.6Mg/m ・・・(1)
なお、含水比が既知でない場合には、止水層3からベントナイト系材料を別途切り出し、このベントナイト系材料の含水比を計測すればよい。
【0022】
ここで、本実施形態に係る締固めベントナイト系材料の嵩密度測定では、計測用油が用いられている。物体の嵩密度を計測するためには、供試体の体積を簡便かつ正確に計測することが求められる。ここで、供試体が金属材料などである場合には、水に供試体を完全に入れて水の嵩の増加量を計測することによって、容易の供試体の体積を計測することができる。
【0023】
ところが、供試体が締固めベントナイト系材料である場合、供試体を水に漬け込むと、ベントナイト系材料が膨潤材料であることから、供試体が膨張してその体積を増加してしまう。このため、供試体を水に漬け込んだとしても供試体の正確な体積を計測することは困難であった。また、水に代えて塩水、アルカリ金属水溶液、エタノールなどを用いることが考えられる。これらの水溶液を用いれば、ベントナイト系材料が膨潤材料であるものの、その膨潤を抑制することができる。ところが、これらの水溶液に締固めベントナイト系材料を漬け込むと、ベントナイト系材料は焼結されたものではなく、単に締め固められただけのものであるため、数分間経過した状態で締固めベントナイト系材料が崩れ始め粒状になってしまい、体積の計測が困難となってしまう。このようなベントナイト系材料の崩壊は、水溶液として水を用いた場合にも同様に見られるものである。
【0024】
そこで、本実施形態に係る締固めベントナイト系材料の計測方法では、供試体を漬け込む水溶液として計測用油を用いている。計測用油は、非電解質であることから、ベントナイトと陽イオン交換反応を起こさないことから、ベントナイト系材料の崩壊には寄与しないことになる。
【0025】
また、計測用油であるシリコンオイルや食用油は、高粘性かつ疎水性を有している。このため、分子構造が大きいので、ベントナイト層間に入り込むことができず、供試体の膨潤を起こさないようにすることができる。また、ベントナイト層間に入り込むことができないことから、メニスカス応力(毛管応力)のみで粉体・粒状体が締め固められているだけの集合体であるベントナイトの表面に膜を作る。このため、浸透によってメニスカス応力を除去して破壊に至るスレーキング破壊を起こさないようにすることができる。
【0026】
さらに、粘性が大きいためにベントナイト粒子間の空隙に入り込むこともできない。しかも、疎水性を有することにより、ベントナイト系材料が有する水分と置換することができない。
【0027】
これらの理由から、ベントナイト系材料のサクションが保持され、供試体の崩壊、変形を防止することができる。したがって、供試体の体積を精度よく計測することができる。さらに、パラフィンなどのように高温で溶融させる必要もないので、施工現場などにおいても容易にその計測を行うことができる。他方、これらの計測用油は不揮発性であることから、供試体を変形させないようにすることができる。
【0028】
ここで用いられる計測用油としては、たとえば灯油やケロシンなどの比較的低粘性の鉱油を用いることもできる。これらの鉱油を用いたとしても、ベントナイト系材料の膨潤を抑制する効果を得ることができる。ところが、締固めベントナイト系材料は粉体・粒状体であることから、この供試体を低粘性油に漬け込むと、材料表面の空隙からすばやく浸透してしまい、供試体を取り出した際に空隙から直ちに排出される。したがって、計測用油としては、粘性の高いもの、具体的に50mPa・s以上のものであるのが好ましい。
【0029】
その反面、計測用油の粘性が高すぎると、供試体を計測用油に漬け込んだ際の泡切れが悪くなってしまい、計測に時間がかかることとなってしまう。このことから、計測用油としては、粘性が高すぎないもの、具体的に100mPa・s以下のものを用いるのが好ましい。
【0030】
また、計測用油としては、供試体の材料や配合、含水比、締固め程度などの施工条件に応じて、事前に粘性が異なる数種類の油に材料を浸漬させ、材料の変化を確認しておくことが望ましい。
【0031】
他方、上記実施形態では、供試体21の重量を計測するために、供試体21を重量計に直接のせていたが、図3に示すようにして供試体21の重量を計測することもできる。この方法では、供試体21の重量と体積を同時に計測することができる。まず、電子天秤31の上に計測用油23が入れられた容器32を乗せ、その重量を計測する。次に、この容器32に供試体21を入れ、その重量を計測する。このときの重量の増加分から浮力を計算する。そして、計測用油23の比重から、供試体21の体積を求めることもできる。また、バネはかり33で供試体21にかかる浮力を計測し、計測された浮力と計測用油23の比重から供試体21の体積を求めることもできる。
【0032】
次に、本実施形態に係るベントナイト系材料の嵩密度計測方法で計測した場合と、JIS A 1224に規定するノギス法でベントナイト系材料の嵩密度を計測した実験を行った例について説明する。
【0033】
この例では、表1および図4に示す粒度分布を有するベントナイト系材料の嵩密度を計測した。
【0034】
【表1】

【0035】
また、同時にゴム、鉄についても同様にして本発明に係る計測方法およびノギス法による嵩密度の計測を行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から分かるように、本発明に係る計測方法では、計測対象がゴム、鉄、締固めベントナイト系材料のいずれであっても、ノギス法と同様の嵩密度を計測することができた。このことから、本発明に係る計測方法により、ノギス法と同等の精度で嵩密度を計測できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】放射性廃棄物処理施設の造成過程の正断面図である。
【図2】本発明に係る嵩密度の計測方法の手順を示す工程図である。
【図3】嵩密度の計測の他の例を説明するための模式図である。
【図4】嵩密度の計測を行う際の実験に用いたベントナイト系材料の粒度分布を示す粒径加積曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1…坑道
2…放射性廃棄物
3…止水層
4…ノズル
10…放射性廃棄物処理施設
21…供試体
22…容器
23…計測用油
24…メスシリンダ
31…電子天秤
32…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象領域で締め固められて形成された土質材料の一部を切り出して供試体を形成し、
前記供試体の質量を計測し、
計測用油内に前記供試体の全体に入れて、前記供試体の体積を計測し、
前記供試体の質量および体積から、前記供試体の嵩密度を求めることを特徴とする土質材料の嵩密度測定方法。
【請求項2】
前記土質材料がベントナイト系材料である請求項1に記載の土質材料の嵩密度測定方法。
【請求項3】
前記供試体の体積を計測する前に、前記供試体を前記計測用油内に漬け込む請求項1または請求項2に記載の土質材料の嵩密度測定方法。
【請求項4】
前記計測用油が、高粘性かつ疎水性を有する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の土質材料の嵩密度測定方法。
【請求項5】
前記計測用油の粘性度が50〜100mPa・sである請求項4に記載の土質材料の嵩密度測定方法。
【請求項6】
前記計測用油が、シリコンオイルまたは食用油である請求項4または請求項5に記載の土質材料の嵩密度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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