説明

圧力容器

【課題】蓋体の外周を覆う外装部材が高温にならないようにして作業の安全性を図ることができる圧力容器を提供する。
【解決手段】開口部が形成された缶体34と、缶体34の開口部を閉塞するために缶体34に対して開閉可能な蓋体36と、缶体34の周囲を囲む外装部材37と、蓋体36の周囲を囲む蓋体外装部材47とを備える圧力容器30において、蓋体外装部材47の下端部に空気取り入れ口50が設けられ、空気取り入れ口50から流入して蓋体36と蓋体外装部材47との間の隙間を通過した空気を排出する空気排出口52が蓋体外装部材47の上端部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の周囲に外装を設けた圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具や各種実験器具等の対象物を収納し、加圧・加温等して滅菌する滅菌装置や、あるいは減圧下で製品の環境試験を行う環境試験装置が従来より知られている。このような装置には、圧力容器が用いられる。
【0003】
圧力容器は、内部に対象物を収納する缶体と、缶体の開口部を閉塞するための蓋体とを備えている。蓋体は、ヒンジによって開閉可能に設けられている。
圧力容器の周囲は、外装部材によって覆われている。
【0004】
従来の圧力容器の一例を図7に示す。
この圧力容器10は、缶体12と、缶体12に蒸気を供給する給蒸装置14と、缶体12内の空気を引く真空ポンプ13とを備えている。缶体12、給蒸装置14、および真空ポンプ13の周囲は外装部材11で覆われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来の圧力容器の外観を図8に示す。
このような圧力容器10は、缶体12が開口部15が正面を向くように横置きに設置され、缶体12の周囲は外装部材16で覆われている。また、缶体12の開口部は、蓋体17によって閉塞される。この蓋体17の外側も外装部材18で覆われる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−293697号公報
【特許文献2】特開2001−355730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の圧力容器では、缶体を高温に加熱して用いる場合、缶体の開口部を覆う蓋体からの熱が、蓋体の外装部材にまで及んでしまうことがある。
蓋体の外装部材は、作業者が蓋体の開閉を行う際に触れる場所であるので、蓋体の外装部材が高温になってしまうと、作業者のやけどのおそれがあるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、蓋体の外周を覆う外装部材が高温にならないようにして作業の安全性を図ることができる圧力容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる圧力容器によれば、開口部が形成された缶体と、該缶体の開口部を閉塞するために缶体に対して開閉可能な蓋体と、缶体の周囲を囲む外装部材と、蓋体の周囲を囲む蓋体外装部材とを備える圧力容器において、蓋体外装部材の下端部に空気取り入れ口が設けられ、空気取り入れ口から流入して蓋体と蓋体外装部材との間の隙間を通過した空気を排出する空気排出口が蓋体外装部材の上端部に設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、蓋体外装部材と蓋体との間の空気を下方から上方に向けて排出することができる。このため、蓋体外装部材が高温になってしまうことを防止することができる。
【0010】
また、前記空気排出口は、缶体側に向けて設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、蓋体外装部材と蓋体との間の空気を缶体側に向けて排出するので、高温の空気が作業者に直接あたることを防止できる。
【0011】
さらに、前記蓋体外装部材の上端面には、第2の空気取り入れ口が設けられ、該第2の空気取り入れ口の内側には、蓋体からの輻射熱が蓋体外装部材の上端面に輻射しないように妨げるための熱遮断板が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、第2の空気取り入れ口から空気が取り入れられ、且つ蓋体外装部材の上端面には輻射熱が直接あたらないので、蓋体外装部材の上端面が高温になることを防止できる。
【0012】
なお、前記外装部材の、缶体の開口部が設けられている側と反対側の面には、缶体と外装部材との間の空気を外装部材の外部へ排気する複数の排気孔と、排気孔から外部へ排気するための複数のファンとが設けられ、缶体と外装部材との間の空気温度を測定する温度センサが設けられ、該温度センサの温度に基づいて各前記ファンの駆動を制御する制御手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、外装部材全体の温度が高温になることを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧力容器によれば、蓋体外装部材が高温になってしまうことを防止することができ、作業者の作業の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる圧力容器の正面図である。
【図2】圧力容器の平面図である。
【図3】外装部材の内部構成を示す平面図である。
【図4】外装部材の内部構成を示す側面図である。
【図5】蓋体外装部材の背面図(缶体側から見た図)である。
【図6】図5に示した蓋体外装部材の一部破断面図である。
【図7】従来の圧力容器の説明図である。
【図8】従来の他の圧力容器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、図1〜図6の添付図面に基づいて説明する。
圧力容器30は、有底円筒状の缶体34と、缶体34の開口部35を閉塞するための蓋体36とを備えている。缶体34は横置きに配置されており、開口部35も水平方向を向いている。
【0016】
缶体34の周囲には、外装部材37が配置されている。外装部材37は、缶体34の上面側に配置される上面37aと、缶体34の開口部35とは反対側に配置される背面37bと、缶体34の下面側に配置される底面37cと、缶体34の左右両側に配置される側面37d,37dを有しており、ほぼ直方体状に形成される。
【0017】
缶体34の開口部35の周囲には、外装部材37の正面37eが配置される。ただし、缶体34の開口部35の周囲は、正面37eよりも外部に突出した状態であり、且つ缶体34の開口部35の周囲と正面37eとの間はわずかな隙間39が空いている。
この隙間39から、外装部材37と缶体34内に外部から空気を取り入れることができる。
【0018】
蓋体36は、缶体34の開口部35を閉塞すべく設けられており、ヒンジアーム40によってヒンジ部42に連結されている。蓋体36は、ヒンジ部42の回動軸43を中心にして回動可能に設けられており、これにより缶体34の開口部35を開閉することができる。
なお、ヒンジ部42は缶体34の外装部材37の外側に配置されているが、ヒンジ部42を固定する基台44は、外装部材37の内部に設けられている。本実施形態では、ヒンジ部42の基台44は、外装部材37の底面37cに固定されている。
【0019】
蓋体36は、鏡面側(缶体34の開口部35側を向き、開口部35の閉塞時には、缶体34と一体に圧力容器としての性能を発揮する側)を除き、周囲が蓋体外装部材47で覆われている。
なお、本実施形態では、図1に示すように、蓋体外装部材47は、缶体34の外装部材37よりも上下方向および横方向が小さく形成されている。このため、外装部材37の正面37eには、圧力計や温度計などの表示機能が設けられている。
【0020】
蓋体外装部材47は、蓋体36の上面側に配置される上面47aと、蓋体36の鏡面側の周囲を覆う背面47bと、蓋体36の底面側に配置される底面47cと、蓋体36の両側面側に配置される側面47d,47dと、蓋体36の正面側に配置される正面47eとを備えている。
【0021】
蓋体外装部材47のうち、底面47cには空気取り入れ口50が形成されている。空気取り入れ口50は、長円型の穴51が複数整列して形成されている。
蓋体外装部材47の背面47bの上部には、空気取り入れ口50から流入してきた空気を排出する空気排出口52が形成されている。空気排出口52も、長円型の穴53が複数整列して形成されている。
【0022】
蓋体外装部材47と蓋体36との間には、特にファン等の空気の強制循環手段は設けられてはいないが、暖められた空気が上昇する性質を利用して蓋体外装部材47と蓋体36との間の空気が流通する。
すなわち、蓋体36の温度上昇によって蓋体外装部材47と蓋体36との間の空気が加熱されると、加熱された空気は上昇して空気排出口52から排出される。また、加熱されていない空気が、底面47cの空気取り入れ口50から蓋体外装部材47と蓋体36との間に流入する。加熱されていない空気は、蓋体36によって加熱されながら上昇し、空気排出口52から排出される。
【0023】
このように、下から上に向けて蓋体36と蓋体外装部材47の間の空気が流通するので、蓋体36と蓋体外装部材47との間に加熱された空気が溜まることがなく、蓋体外装部材47が高温になってしまうことを防止できる。
また、空気排出口52は、蓋体外装部材47の上面47aではなく、背面47bに形成されている。したがって、高温の空気が作業者に直接あたってしまうことを防止できる。また、且つ空気排出口52から排出された空気は外装部材37と缶体34との間の隙間39から外装部材37内に進入する流れも生じるので、外装部材37内に取り入れられた空気として外装部材37の背面37bから排出される。
【0024】
さらに、蓋体外装部材47の上面47aには上方からの外気を取り入れる第2の空気取り入れ口56が形成されている。第2の空気取り入れ口56は、長円型の穴57が複数整列して形成されている。
第2の空気取り入れ口56から、蓋体36と蓋体外装部材47との間に加熱されていない外部の空気が流入すると、蓋体36と蓋体外装部材47との間を上昇してきて加熱された空気とともに空気排出口52から排出される。
【0025】
なお、蓋体外装部材47の上面47aに対して蓋体36の輻射熱が輻射されないように、妨げるべく、上面47aの内側に蓋体36との間には熱遮断板60が配置されている。
本実施形態では、熱遮断板60としては金属製の板状体を上面47aに対して平行となるように配置している。
ただし、上面47aには第2の空気取り入れ口56が形成されているので、空気取り入れ口56からの空気の流入が熱遮断板60によって妨げられないようにする必要がある。
そこで、熱遮断板60は、第2の空気取り入れ口56からの空気が蓋体外装部材47内に流入するように、上面47aに対して隙間をあけて配置するとともに、その面積を上面47aの面積よりも小さくなるように形成する。このため、第2の空気取り入れ口56から流入した空気は、熱遮断板60の周囲を通って蓋体外装部材47内に流入することができる。
【0026】
また、缶体34の周囲の外装部材37の背面37bには、2つの排気孔62,62を設け、外装部材37内の空気を背後へ排気する。各排気孔62にはファン64を設け、ファン64の駆動によって強制的に空気を排気するとよい。
【0027】
なお、ファン64の駆動は、外装部材37内部の温度によって制御するとよい。例えば、外装部材37と缶体34の間の隙間に温度センサ68を設け、この温度センサ68の検出する温度に基づいて、2つのファン64,64の駆動制御を実行する制御部70を設けるとよい。
【0028】
制御部70は、ROMおよびRAMを有する半導体メモリと、半導体メモリ内に記憶された制御プログラムに基づいて所定の制御信号を出力する制御用マイコンとを備えている。
制御部70は、温度センサ68からの温度信号を受信すると、受信した温度信号に基づいて各ファン64,64の双方の運転、いずれか一方のみの運転、または双方停止のいずれかとなるように制御する。
【0029】
例えば、半導体メモリ内には、あらかじめ外装部材37内の温度の第1の閾値と、第1の閾値よりも高温の第2の閾値を記憶させておく。
制御部70は、温度センサ68で検出した温度が第1の閾値未満の場合には、2つのファン64,64の双方が運転を停止するように両ファン64に制御信号を出力する。
また、制御部70は、温度センサ68で検出した温度が第1の閾値以上で且つ第2の閾値未満の場合には、2つのファン64,64のうちのいずれか一方のみを駆動させ、他方を停止するように制御信号を出力する。このとき、下方に位置する側のファン64を停止させるとよい。
さらに、制御部70は、温度センサ68で検出した温度が第2の閾値以上の場合には、2つのファン64,64の両方が駆動するように制御信号を出力する。
【0030】
このように、外装部材37内の温度状況に基づいて、排気用のファン64の駆動を制御することができるので、外装部材37内の温度を適温に維持することができる。このため、外装部材37が高温になりすぎて作業に支障をきたすような事態を避けることができる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、ファン64の数が2つの場合について説明した。しかし、ファン64の駆動制御を実行する実施形態としては、ファン64の数は2つに限定されず、複数であればよい。
また、ファン64の駆動制御を実行しない実施形態では、ファン64の数は1つであってもよい。
【0032】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【符号の説明】
【0033】
30 圧力容器
34 缶体
35 開口部
36 蓋体
37 外装部材
37a 上面
37b 背面
37c 底面
37d,37d 側面
37e 正面
39 隙間
40 ヒンジアーム
42 ヒンジ部
43 回動軸
44 基台
47 蓋体外装部材
47a 上面
47b 背面
47c 底面
47d,47d 側面
47e 正面
50 空気取り入れ口
51 長円型の穴
52 空気排出口
53 長円型の穴
56 第2の空気取り入れ口
57 長円型の穴
60 熱遮断板
62 排気孔
64 ファン
68 温度センサ
70 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された缶体と、
該缶体の開口部を閉塞するために缶体に対して開閉可能な蓋体と、
缶体の周囲を囲む外装部材と、
蓋体の周囲を囲む蓋体外装部材とを備える圧力容器において、
蓋体外装部材の下端部に空気取り入れ口が設けられ、
空気取り入れ口から流入して蓋体と蓋体外装部材との間の隙間を通過した空気を排出する空気排出口が蓋体外装部材の上端部に設けられていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記空気排出口は、缶体側に向けて設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧力容器。
【請求項3】
前記蓋体外装部材の上端面には、第2の空気取り入れ口が設けられ、
該第2の空気取り入れ口の内側には、蓋体からの輻射熱が蓋体外装部材の上端面に輻射しないように妨げるための熱遮断板が設けられていることを特徴とする請求項2記載の圧力容器。
【請求項4】
前記外装部材の、缶体の開口部が設けられている側と反対側の面には、缶体と外装部材との間の空気を外装部材の外部へ排気する複数の排気孔と、排気孔から外部へ排気するための複数のファンとが設けられ、
缶体と外装部材との間の空気温度を測定する温度センサが設けられ、
該温度センサの温度に基づいて各前記ファンの駆動を制御する制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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