説明

圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置

【目的】 確実にジーゼルエンジンの失火を抑止することができるようにする。
【構成】 圧力波過給機4と、この圧力波過給機4をバイパスするバイパス吸気通路2cと、上記圧力波過給機側の吸気通路2を開通する状態とバイパス吸気通路2cを開通する状態とに切り換えるスターティングバルブ5を備える圧力波過給機付ディーゼルエンジン1において、上記ディーゼルエンジン1の燃焼室にグロープラグ8が設けられ、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、圧力波過給機4から加圧吸気がエンジンへ供給される過給状態を検出する過給検出手段とが設けられるとともに、これらの検出手段からの信号を受けて特定のアフターグロー用運転領域内において非過給状態のときにグロープラグに通電し、過給状態のときにグロープラグへの通電を停止する制御手段9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、失火状態を抑止するために用いられる圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンは、エンジンの燃焼室に供給された空気がピストンによって圧縮され、圧縮熱が発生したところに燃料が噴射供給されるように構成されている。すなわち圧縮状態で発熱した空気に燃料が供給されるから、燃料は爆発的に燃焼し、そのエネルギーがピストンの機械的な往復運動として外部に取り出されるようになっている。
【0003】ところで、ディーゼルエンジンの燃焼効率を上昇させるためには、なるだけ多くの空気を燃焼室内に詰め込む必要があるため、加圧された空気が供給されるように構成された、いわゆる過給機が採用されているものも多い。
【0004】ディーゼルエンジンに適用される過給機として圧力波過給機が知られている。本発明に係るグロープラグ通電装置はこのような圧力波過給機が装着されているディーゼルエンジンを対象としたものである。
【0005】この圧力波過給機は、多数の気体通路を有してケース内に回転可能に支承されたロータを備えるとともに、ロータの一側端のケースに排気の導入口および吐出口を有し、ロータの他側端のケースに吸気の導入口および吐出口を有している。そして、ロータの回転に伴い、上記気体通路に対する排気導入と、その排気の圧力波により加圧された吸気の吐出と、排気の吐出と、吸気の導入とが順次行われ、排気の圧力波エネルギーを利用した吸気過給が行われるようになっている。
【0006】このように、ディーゼルエンジンに加圧波過給機が採用された場合には、それとセットで上記スターティングバルブを併用することによってエンジンの駆動効率を上昇させることができるのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の加圧波過給機が採用されたディーゼルエンジンにおいては、上記スターティングバルブは、その上流側の圧力に応じて作動し、その開閉の切り換わり点は上流側の圧力状態、およびメインフラップのセット力によって決まるが、後者のセット力は機械式制御のためバラツキがあり、また前者の圧力はエンジンの運転状態によっても変化し、これらの要因でメインフラップ開閉ポイントにバラツキがある。
【0008】ところで、失火対策としてグロープラグを設け、始動後も失火し易い領域でグロープラグに通電するいわゆるアフターグロー制御は従来から知られている。
【0009】例えば、実開昭60−149881号公報によって開示されているものは、無負荷かつ低温であるか、あるいは無負荷かつ始動から所定時間内はグロープラグに通電が行われる。しかし、このように時間または領域を一律に設定するだけでは、特に前述のようにスターティングバルブ開閉作動にバラツキがあると、非過給状態で圧縮温度が上昇しない状況においてアフターグローが行われない場合があったり、過給され圧縮温度が上昇する状態でアフターグローが行われたりする。
【0010】前者の場合は、失火を有効に防止することができず、また後者の場合はグロープラグの劣化を早めるという欠点を有している。
【0011】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、確実に失火を抑止するとともに、グロープラグの耐久性を高めることができる圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置は、圧力波過給機と、この圧力波過給機をバイパスするバイパス吸気通路と、上記圧力波過給機側の吸気通路を開通する状態とバイパス吸気通路を開通する状態とに切り換えるスターティングバルブを備える圧力波過給機付ディーゼルエンジンにおいて、上記ディーゼルエンジンの燃焼室にグロープラグが設けられ、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、圧力波過給機から加圧吸気がエンジンへ供給される過給状態を検出する過給検出手段とが設けられるとともに、これらの検出手段からの信号を受けて特定のアフターグロー用運転領域内において非過給状態のときにグロープラグに通電し、過給状態のときにグロープラグへの通電を停止する制御手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】本発明の請求項2記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置は、請求項1記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置において、スターティングバルブが吸気通路の過給機側通路を開閉するメインフラップと、バイパス吸気通路を開閉するバイパスバルブとを備え、過給検出手段が上記メインフラップの開度によって過給状態を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】本発明の請求項3記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置は、請求項2記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置において、アフターグロー用運転領域の限界がメインフラップの開閉動作のバラツキの範囲の上限値に対応するように設定されていることを特徴とするものである。
【0015】本発明の請求項4記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置は、請求項2または3記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置において、上記メインフラップの開度はメインフラップの位置を検出する位置検出センサによって検知されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
【作用】上記請求項1記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置によれば、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、圧力波過給機から加圧吸気がエンジンへ供給される過給状態を検出する過給検出手段とが設けられるとともに、これらの検出手段からの信号を受けて特定のアフターグロー用運転領域内において非過給状態のときにグロープラグに通電し、過給状態のときにグロープラグへの通電を停止する制御手段が設けられているため、上記運転状態検出手段によってアフターグロー用運転領域内にあることが検出され、かつ過給検出手段によって非過給状態であることが検出された場合には、上記制御装置によってグロープラグは通電されるように制御され、燃焼室内はグロープラグによって加熱され、その結果エンジンの失火は有効に抑止される。
【0017】また、上記過給検出手段によって過給状態であることが検出された場合には、上記制御装置によってグロープラグへの通電は遮断されるように制御され、グロープラグの無駄な発熱は行われず、結果としてグロープラグの耐久性を向上させることができる。
【0018】上記請求項2記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置によれば、スターティングバルブが吸気通路の過給機側通路を開閉するメインフラップと、バイパス吸気通路を開閉するバイパスバルブとを備え、過給検出手段が上記メインフラップの開度によって過給状態を検出するように構成されているため、メインフラップとバイパスバルブとを連動させることにより一元的に過給状態と非過給状態とが切り換え可能であり、従って、メインフラップのみの開度の検出によって過給状態であるか否かの検出を行うことができる。
【0019】上記請求項3記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置によれば、アフターグロー用運転領域の限界がメインフラップの開閉動作のバラツキの範囲の上限値に対応するように設定されているため、メインフラップの開度が変動しても、アフターグロー用運転領域は失火領域をカバーしており、確実にエンジン失火を抑止することができる。
【0020】上記請求項4記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置によれば、メインフラップの開度はメインフラップの位置を検出する位置検出センサによって検知されるように構成されているため、比較的簡単な機構で適正にメインフラップの開度を検出することができる。
【0021】
【実施例】図1は、本発明に係る圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置の一例を示す説明図である。この図に示すように、ディーゼルエンジンはエンジン本体1と、このエンジン本体1に吸入空気(以下吸気という)を送り込む吸気通路2と、エンジン本体1からの燃焼排ガス(以下排気という)を送り出す排気通路3と、吸気通路2および排気通路3の接点に設けられた吸気を加圧するための圧力波過給機4と、この圧力波過給機4をバイパスするバイパス吸気通路2cと、スターティングバルブ5とから基本構成されている。
【0022】このようなエンジン本体1の各シリンダの燃焼室にはグロープラグ8が設けられており、エンジンの駆動状態が所定の領域内に入る低回転低負荷運転のときには、制御装置9からの指示信号に基づいてこのグロープラグ8に通電され、その結果グロープラグ8は発熱して燃料は予熱されるようになっている。
【0023】上記吸気通路2は、圧力波過給機4に非加圧吸気を導入するエアクリーナ6の設けられた前吸気通路2aと圧力波過給機4からの加圧吸気を導出する後吸気通路2bとに分割されており、エアクリーナ6の下流側の前吸気通路2aと後吸気通路2bとは上記バイパス吸気通路2cによって接続されている。また、後吸気通路2bのバイパス吸気通路2cよりも下流側には吸気を冷却するクーラ21が設けられている。このクーラ21の下流側の後吸気通路2bは、複数のエンジンシリンダに供給される吸気の分配部である吸気マニホールド22に続き、そこから各シリンダに吸気が供給される。
【0024】一方、排気通路3は排気マニホールド32に続いた圧力波過給機4の上流側の前排気通路3aと圧力波過給機4の下流側の後排気通路3bに分割されており、それらの間にはバイパス管31が設けられている。そしてこのバイパス管31は普段はダンパー31aで閉止されている。
【0025】上記圧力波過給機4は、円筒状のケーシング41と、このケーシング41内に内装され図外の回転軸周りに回転する円柱状のセルホイル42とから構成されている。このセルホイル42には回転軸周りに多数のスリット空間43が回転軸に平行にセルホイル42を連通するように設けられている。
【0026】このようなようなセルホイル42はケーシング41内でエンジンの回転と同期して回転軸周りに回転するように構成されている。そして、セルホイル42の一側端面には前吸気通路2aおよび後吸気通路2bのそれぞれの開口が対向し、またセルホイル42の他側端面には前排気通路3aおよび後排気通路3bのそれぞれの開口が対向し、セルホイル42のスリット空間43を介して後吸気通路2bと前排気通路3aとは互いに連通し、かつ、前吸気通路2aと後排気通路3bとも互いに連通するようになっている。
【0027】従って、この圧力波過給機4においては、前排気通路3aを介してセルホイル42に供給された排気は、回転軸周りに多数形成されたスリット空間43のいずれかに導入され、スリット空間43の他端部に前吸気通路2aを介して導入されている吸気に圧力波の作用で加圧し、加圧された吸気は後吸気通路2に導出されるとともに、排気自身はセルホイル42の回転でスリット空間43が後排気通路3bの開口に対面したとき、前吸気通路2aからスリット空間43内に導入された吸気に衝突して跳ね返され、そこから後排気通路3bを介して系外に導出される。
【0028】つぎに、圧力波過給機4の吸気通路2側にはスターティングバルブ5が設けられている。このスターティングバルブ5は、後吸気通路2b内に設けられた圧力波過給機4からの加圧吸気の供給および遮断を司るメインフラップ51とバイパス吸気通路2cに設けられたバイパスバルブ52とから構成されている。
【0029】図2はスターティングバルブ5の断面視の説明図であり、メインフラップ51が閉止している状態を示しており、また、図3はメインフラップが開通している状態を示している。まず図2に示すように、メインフラップ51は付勢手段7により開弁方向に付勢されており、圧力波過給機4からの吸気の吐出を受けた場合はその吐出量に応じて閉弁するように構成されている。
【0030】また、バイパスバルブ52は、バネ力の小さなスプリング53開弁方向に付勢されており、メインフラップ51が閉弁しているときは開かれ、メインフラップ51が開弁しているときはこのメインフラップ51に連動して閉じられるようになっている。従って、メインフラップ51が全開になった状態においては、バイパスバルブ52は前閉になっている。
【0031】上記付勢手段7は、ロッド71およびリンク等を介してメインフラップ51に連結されてケース72内に位置する可動板73と、この可動板73をメインフラップ51の開弁方向に押圧するスプリング74と、ケース72の左側端に位置して可動板73を吸着する磁石75とを備えている。
【0032】この付勢手段7により、圧力波過給機4からの吸気の吐出圧が低いときにはメインフラップ51がほぼ閉じられ、上記吐出圧が所定値を超えるてある程度押し開かれると、その後は急激に全開状態になり、またこのメインフラップ51の開作動によってバイパスバルブ52が閉止される。
【0033】スターティングバルブ5の以上のような構成により、エンジンの回転数が高くかつ高負荷のいわゆる高回転高負荷領域のエンジンの駆動状況においては、後吸気通路2bへ吐出される加圧吸気の量は多く、そのため強い力で押圧するのでメインフラップ51は開通され、それに押されてバイパスバルブ52は閉止され、エンジン本体1には加圧吸気が供給される過給状態になる。
【0034】逆に、回転数があまり高くない低回転低負荷領域のエンジンの駆動状況では、圧力波過給機4からの加圧吸気の後吸気通路2bへの吐出量は少なく、従ってメインフラップ51はほぼ閉じられた状況となり、その結果バイパスバルブ52は開通してエンジン本体1にはバイパス吸気通路2cを介した非加圧吸気が供給され非過給状態になる。このような状況においてはエンジンは失火することが多い。
【0035】本発明は、エンジン負荷が低く、かつ、エンジン回転数が所定の値以下の状態のいわゆる低負荷低回転領域で駆動しているエンジンの失火を抑止するものであり、失火がどういう状況において発生するかを厳密に検討した結果達成することができたものである。以下失火のメカニズムについて、図4を基に説明する。
【0036】図4は、横軸をエンジンの回転数とし、縦軸をシャフトの回転トルク、燃焼室温度または吸気圧力としたグラフである。まず同図のグラフ1は、横軸をエンジン回転数、縦軸をトルクとして運転領域を示すものであり、傾斜実線(メインフラップ開閉境界線)を境にしてその左側はメインフラップ51が閉止している領域、同右側はメインフラップ51が開通している領域であるが、このグラフ1に示すように、トルクが小さく、所定の回転数以下であり、かつ、メインフラップ51が閉止しているハッチングで表示された領域において、エンジンの失火が起こる頻度が極めて高いのである。なお、上記トルクはエンジン負荷を表す指標である。
【0037】同図のグラフ2においては、回転数と燃焼室温度との関係を示しているが、このグラフで判る通り、メインフラップ51の開閉状態は重要な意味を有している。すなわち、メインフラップ51が閉止されている状況では、燃焼室の温度は常に低温で横這い状態であり、結局エンジンはあまり温まった状態にはなっていないため、失火は起こりやすいのである。これに対し、回転数が上昇しメインフラップ51が開通すると、圧力波過給機4からの加圧吸気がエンジン本体1に送りこまれるようになるため、それ以後燃焼室の温度も急激に上昇して失火は起こらない状態になっている。
【0038】同図のグラフ3は、エンジン回転数と後吸気通路2b内の吸気圧力との関係を示しているが、このグラフ3から判る通り、メインフラップ51が閉止されているときは非加圧吸気がバイパスバルブ52を介して後吸気通路2bに導入され、その圧力は大気圧より低い状態になっている。これに対し、回転数が上がってメインフラップ51が開通すると、圧力波過給機4から加圧吸気が後吸気通路2bに導入されるため、急激に吸気圧力も上昇している。
【0039】これらのグラフで判るとおり、エンジンが失火するか否かはメインフラップ51が閉止しているか開通しているかが大きな要因であり、以上述べたとおり、閉止している状態で失火が起こり易い。
【0040】ところで、メインフラップ51の開閉ポイントは、圧力波過給機4から後吸気通路2b内に吐出される必ずしも圧変動が安定的ではない加圧吸気量と、付勢手段7のスプリング74および磁石75の力との力学的なバランスにより決まるため、あまり安定したものではなく、相当のバラツキを有している。このバラツキの範囲をグラフの点直線で示しており、従って、失火が起こる領域についてもグラフ1の点描範囲で変動することになる。
【0041】本発明は、以上のようなメインフラップ51の開閉状態は極めて変動しやすいという状況を踏まえ、グラフ1の点描範囲をも含めてアフターグロー運転領域とした上で、さらに過給状態を検出し、それに基づいてアフターグロー制御を行うことにより、上記変動に充分対応することができるように構成されたものである。
【0042】すなわち、スターティングバルブ5にはメインフラップ51の閉状態検出器としてのリミットスイッチ10が設けられている。このリミットスイッチ10が本実施例における過給検出手段である。このリミットスイッチ10は、付勢手段7のロッド71の先端部が当接すればスイッチONされ、その結果メインフラップ閉止信号94が制御装置9に発信されるように構成されている。すなわち、このリミットスイッチ10はメインフラップ51がどの位置にあるかを検出する一種の位置検出センサとしての機能を果たすものであるが、本発明においてはメインフラップ51の開閉状態の検知は上記リミットスイッチ10に限定されるものではなく、その他の位置検出手段が採用されてもよい。
【0043】その他、制御装置9には、エンジンの回転数91、アクセル開度92および冷却水水温93も信号として入力されるようになっている。上記アクセル開度92はエンジン負荷を表示するための指標として採用され、運転状態検出手段としての図外の所定のセンサーによって検出されるようになっている。
【0044】そして、制御装置9内には予めグロープラグ8に通電するためのアクセル開度の設定値が入力されており、エンジンが回転しており、アクセル開度92が上記設定値以下であり、かつ、リミットスイッチ10からメインフラップ閉止信号94が入力された場合には、制御装置9からの指令信号の基にグロープラグ8には通電されるようになっている。
【0045】以下本発明の作用について、図5に例示したフローチャートおよび図1を基に説明する。まず、イグニッションキーが入れられ自動車の電気系統に通電されると、制御装置9はスタートアップし、ステップS1において制御装置9にエンジン回転数信号91、アクセル開度信号92、冷却水水温93およびメインフラップ開閉信号94が入力される。
【0046】そして、ステップS2において冷却水の水温が予め設定された温度よりも低いか否かが判別され、ステップS3で運転領域がアフターグロー用運転領域に入っているか否かが、ステップS4でメインフラップ51が閉止しているか否かが判別される。上記ステップS2〜ステップS4の条件をすべて満足している場合、すなわち冷却水の水温は設定温度以下の低温であり、運転領域がアフターグロー用運転領域に入っており、メインフラップ51は閉止されて圧力波過給機4からの加圧吸気がエンジン本体1に供給されていないエンジン低回転低負荷領域の場合には、ステップS5が実行されてグロープラグ8に通電されるため、燃料は予熱されエンジンの失火は有効に抑止される。
【0047】また、上記ステップS3〜ステップS4の条件のいずれかが満足されなかった場合、すなわち冷却水の水温が高い場合、アフターグロー用運転領域外である場合、アフターグロー用運転領域内であってもメインフラップ51が開通して圧力波過給機4からの加圧吸気がエンジン本体1に供給される過給状態にある場合には、ステップS6が実行されてグロープラグ8への通電は遮断される。
【0048】つまり、これらの場合は、アフターグローによらなくても、圧縮温度が充分に上昇して正常に着火が行われ、またこのような状況下での通電によるグロープラグ8の過熱が防止される。
【0049】以上のように、本発明のグロープラグ通電装置は、エンジン失火に対する最も敏感な制御要素であるメインフラップ51の閉止状態を検出し、それを基にグロープラグ8への通電および通電遮断を行うものであるため、常に適切にグロープラグ8への通電が行われ、エンジン失火を適切に回避することができるとともに、過給状態で通電した場合に起こるグロープラグ8の過熱を防止することができ、グロープラグ8の寿命を延長させることができる。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように本発明の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置は、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、圧力波過給機から加圧吸気がエンジンへ供給される過給状態を検出する過給検出手段とが設けられ、これらの検出手段からの信号を受けて特定のアフターグロー用運転領域内において非過給状態のときにグロープラグに通電し、過給状態のときにグロープラグへの通電を停止する制御手段が設けられているため、上記運転状態検出手段によってアフターグロー用運転領域内にあることが検出され、かつ過給検出手段によって非過給状態であることが検出された場合には、上記制御装置からの指令によってグロープラグは通電され、その結果燃焼室内はグロープラグの発熱によって加熱され、エンジンの失火は有効に抑止される。
【0051】また、上記過給検出手段によって過給状態であることが検出された場合には、上記制御装置によってグロープラグへの通電は遮断されるため、グロープラグの過熱は防止され、結果としてグロープラグの耐久性を向上させることができる。
【0052】また、上記スターティングバルブは吸気通路の過給側通路を開閉するメインフラップと、バイパス吸気通路を開閉するバイパスバルブとによって構成し、上記メインフラップの開度によって過給状態を検出するようにすれば、メインフラップとバイパスバルブとを連動させることにより一元的に過給状態と非過給状態とが切り換え可能であり、その結果メインフラップのみの開度の検出によって過給状態であるか否かの検出を行うことができ好都合である。
【0053】さらに、アフターグロー用運転領域の限界をメインフラップの開閉動作のバラツキの範囲の上限値に対応するように設定すれば、メインフラップの開度が変動しても、アフターグロー用運転領域は失火領域をカバーしており、充分上記バラツキに対応してエンジン失火を抑止することができる。
【0054】加えて、メインフラップの開度をメインフラップの位置を検出する位置検出センサによって検知するようにすれば、比較的簡単な機構で適正にメインフラップの開度を検出することができ有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置の一例を示す説明図である。
【図2】スターティングバルブの断面視の説明図であり、メインフラップが閉止している状態を示している。
【図3】スターティングバルブの断面視の説明図であり、メインフラップが開通している状態を示している。
【図4】横軸にエンジンの回転数をとり、縦軸にトルクをとった場合の運転領域を示すグラフ、および横軸にエンジンの回転数をとり、縦軸に燃焼室温度および吸気圧力をとった場合の両者の関係を示すグラフである。
【図5】グロープラグ通電装置の制御の流れを例示するフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2 吸気通路
3 排気通路
4 圧力波過給機
5 スターティングバルブ
51 メインフラップ
52 バイパスバルブ
7 付勢手段
8 グロープラグ
9 制御装置
10 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧力波過給機と、この圧力波過給機をバイパスするバイパス吸気通路と、上記圧力波過給機側の吸気通路を開通する状態とバイパス吸気通路を開通する状態とに切り換えるスターティングバルブを備える圧力波過給機付ディーゼルエンジンにおいて、上記ディーゼルエンジンの燃焼室にグロープラグが設けられ、エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段と、圧力波過給機から加圧吸気がエンジンへ供給される過給状態を検出する過給検出手段とが設けられるとともに、これらの検出手段からの信号を受けて特定のアフターグロー用運転領域内において非過給状態のときにグロープラグに通電し、過給状態のときにグロープラグへの通電を停止する制御手段が設けられていることを特徴とする圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置。
【請求項2】 スターティングバルブが吸気通路の過給機側通路を開閉するメインフラップと、バイパス吸気通路を開閉するバイパスバルブとを備え、過給検出手段が上記メインフラップの開度によって過給状態を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置。
【請求項3】 アフターグロー用運転領域の限界がメインフラップの開閉動作のバラツキの範囲の上限値に対応するように設定されていることを特徴とする請求項2記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置。
【請求項4】 上記メインフラップの開度はメインフラップの位置を検出する位置検出センサによって検知されるように構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の圧力波過給機付ディーゼルエンジンのグロープラグ通電装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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