説明

圧延スタンドのロール用の駆動スピンドルを搬送するための台車および方法

本発明は、圧延スタンド300のロールのための少なくとも1本の駆動スピンドルを搬送するための台車100と、この台車を運転するための方法に関する。台車は圧延スタンドの操作側から圧延スタンドを通って駆動側へあるいはその逆に台車を移動させるために走行ユニット105を備え、台車は駆動スピンドルの下へ移動できるように偏平に形成されている。本発明に係る台車は従来技術の代替物である。台車は第1支持装置110と第1駆動ユニット120を備えた昇降台車として形成され、第1駆動ユニット120は場合によっては駆動スピンドル200を有する第1支持装置110を中立位置よりも持ち上げるか、または下降させる働きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延スタンドのロールのための少なくとも1本の駆動スピンドルを搬送するための台車と、この台車を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような台車は従来技術において原理的に知られている。例えば特許文献1から、圧延機ハウジングの駆動スピンドルを挿入または取り外すための方法と装置が知られている。この方法の特徴は、圧延機ハウジングから作業ロールを取り外した後でスピンドルがキャリッジによって支持されて圧延機ハウジングの窓を通って駆動側から操作側へおよびその逆に搬送されることにある。キャリッジにはジブが揺動可能に配置され、駆動スピンドルは搬送のために吊り輪によってジブに懸吊される。従って、この特許文献1に係る装置はかなり高く構成され、少なくとも駆動スピンドルよりも高く配置されている。
【0003】
特許文献2は圧延スタンドの作業ロール用スピンドルを交換するための搬送台車を開示している。この搬送台車はレールに沿ってロールハウジングを通って圧延方向に移動可能である。搬送台車は搬送架台を備え、この搬送架台内で上側の駆動スピンドルが上側から保持され、下側の駆動スピンドルが下側から保持される。搬送台車は場合によってはスピンドルと共にケーブルを介して圧延スタンドを通って移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第2602655号明細書
【特許文献2】特公昭55−094714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底をなす課題は、圧延スタンドのロール用の作業スピンドルを搬送するための代替的な台車および代替的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は装置技術的には請求項1の対象によって解決される。それによれば、台車は、それが第1支持装置と第1駆動ユニットを備えた昇降台車として形成され、第1駆動ユニットが場合によっては駆動スピンドルを有する第1支持装置を中立位置よりも持ち上げるかまたは下降させる働きをすることを特徴とする。
【0007】
本発明における中立位置は、両支持装置を備えた台車の全体高さが最小である、すなわち台車ができるだけ偏平である、第1および/または第2の支持装置の位置を示している。支持装置の一方の持ち上げまたは下降は、台車の全体高さを増大させることになる。
【0008】
要求された台車は、駆動スピンドルの下で移動可能であるように偏平に形成されている。第1支持装置を備えた昇降台車としての形成は、駆動スピンドルのすぐ下まで支持装置を持ち上げることを可能にするので、駆動スピンドルはクレーンの助けなしに、支持装置上に直接降ろされ、台車によって搬出することができる。
【0009】
新しい駆動スピンドルまたはオーバーホールした駆動スピンドルを、圧延スタンドと圧延スタンド用駆動装置、特にピニオンギヤユニットとの間に後で取付けるために、ステップが逆の順序で行われる。先ず最初に、支持装置上の駆動スピンドルが圧延スタンドとピニオンギヤユニットとの間の領域に搬送される。そこで、駆動スピンドルは昇降台車または持ち上げ可能な支持装置によって、その都度必要な高さに持ち上げられる。それによって、駆動スピンドルをピニオンギヤユニットと圧延スタンドのスピンドル収容部に連結することができる。
【0010】
第1の実施形態では、台車が第2支持装置を備え、この第2支持装置が第1支持装置110に統合され、かつ第1支持装置110と共に中立位置に対して昇降させることが可能である。相対的に高さ調節可能な2個の支持装置を設けることにより、作業スピンドルを収容するために支持装置を持ち上げなければならない一層大きな高さが、昇降台車によって達成可能であり、その際昇降台車がその偏平構造を犠牲にする必要がない、すなわちより大きな最低高さで形成する必要がないという利点がある。
【0011】
第2駆動ユニットを備えた第2支持装置は好ましくは高さが昇降台車の元の高さまたは第1支持装置に完全に統一されている。
【0012】
上記の課題はさらに、台車を運転するための方法によって解決される。この方法の利点は実質的に、台車に関連して上述した利点に一致している。
【0013】
特に第1支持装置がそのトグルレバーリンク機構昇降システム(Kniehebel−Hubsystem)またはパンタグラフリンク機構昇降システム(Scherengelenk−Hubsystem)によって、昇降台車の中立位置を越えて持ち上げられるだけでなく、この中立位置の下でも下降させることが可能であるということがきわめて有利である。中立位置または持ち上げ位置において、台車は圧延スタンドが立設されたロールホールのミル床上に移動可能である。支持装置は圧延スタンド内で中立位置の下で下降可能であり、その際特に下側の支持ロールを前もって下降させた後で、この下側の支持ロールに衝突することがない。中立位置の下への支持装置の下降は、支持装置を備えた台車を、駆動スピンドルの頭部の下で移動させることができるという利点がある。支持装置の中立位置で、台車は通常、駆動スピンドルの頭部の下で移動不可能である。
【0014】
第1および/または第2の支持装置が少なくともその中立位置でそれぞれロック可能であると有利である。支持装置はロック位置で、ロックされていない位置よりもはるかに大きな安定性(ねじり強度)を台車に付与する。
【0015】
台車とその運転方法の他の有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0016】
明細書には5つの図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】圧延スタンドとピニオンギヤユニットとの間における作業スピンドルの組み込み状態を示す。
【図2】本発明に係る台車を示す。
【図3】圧延スタンドへの台車の走入を示す。
【図4】中立位置の下への特に第1支持装置の下降を示す。
【図5】駆動スピンドルの頭部の下への下降した支持装置による台車の移動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、上記の図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。すべての図において、同じ技術的要素は同じ参照符号で表されている。
【0019】
図1は2本の駆動スピンドル200を示している。この駆動スピンドルは圧延スタンド300と、作業スピンドルを駆動するための駆動装置400、特にピニオンギヤユニットとの間に配置されている。駆動スピンドルは圧延スタンド300の作業ロールを駆動する働きをする。作業ロールは一般的に、圧延スタンドにおいて上側支持ロール310aと下側支持ロール310bとの間に配置されている。この作業ロールは図1には示していない。というのは、圧延スタンド300を通って台車を移動させるために作業ロールを分解しなければならず、分解されているからである。さらに、駆動スピンドルを搬送するための本発明に係る台車100が示してある。この台車を、場合によっては駆動スピンドルと共に、圧延スタンド300の操作側BSから圧延スタンドを通って駆動側ASへあるいはその逆に移動させるために、台車は走行ユニット105、例えば走行輪を備えている。その際、台車は基本的には、駆動スピンドル200の下方、特に駆動スピンドルの幅広の頭部210の下で移動できるように、偏平に形成されている。
【0020】
図1において、昇降台車の構成部分としての第1の支持装置110が、下側駆動スピンドル200の高さ位置にまたは下側駆動スピンドルの下まで持ち上げられている。この位置で、クレーンの助けなしに駆動スピンドルを第1支持装置上に降ろすことができるので有利である。
【0021】
図2は本発明に係る台車100の構造を詳細に示している。この台車は第1支持装置110と第2支持装置112を備え、この両支持装置はそれぞれ中立位置にある。特に第1支持装置110は第1駆動装置120、例えば油圧シリンダと、第1昇降装置116、例えばトグルレバー式昇降装置とによって、中立位置と相対的に昇降可能である。台車は必要な全体昇降高さに応じて、支持装置の一方のみを備えていてもよいし、両方の支持装置を備えていてもよい。
【0022】
一方の支持装置のための昇降ストロークはトグルレバー式昇降装置116に基づいて制限されている。それを超えるより大きな昇降を達成できるようにするために、本発明では第2支持装置112が第1支持装置110に統合されている。この第2支持装置自体は例えば油圧シリンダの形をした第2駆動ユニット114と、例えば第2トグルレバー式リンク機構の第2昇降装置116とによって、第1支持装置を越えて昇降可能である。
【0023】
台車は好ましくは、それを独立して移動するための固有の第3駆動ユニット140を備えている。その代わりに、台車は外部の駆動装置、例えばケーブルを介して台車に連結されているロール交換用駆動車によって移動させることが可能である。台車の走行ユニット105はそれぞれレール上で台車を移動させるために、走行輪の形あるいはスライドスキッドの形に形成されている。このレールはロールホールの床上に圧延スタンドを通って敷設されている。
【0024】
台車は本発明に従って次のように運転される。
圧延スタンド300の駆動スピンドル200の下へ台車100を移動させ、
駆動スピンドル200の下まで台車の第1および/または第2支持装置112、110を持ち上げ、
駆動スピンドルを収容し、
必要な場合には例えば中立位置まで駆動スピンドルと共に第1および/または第2支持装置を下降させ、そして、
駆動スピンドル200と共に台車を運び去る。
【0025】
駆動スピンドル200の下への台車の移動と、台車の運び去りは、圧延スタンド300を通ってあるいは作業スピンドルに対して横方向に行うことができる。
【0026】
圧延スタンド300を通って駆動スピンドル200まで台車を移動させるときに、走入は次のステップを含む。
台車はそれぞれ中立位置または持ち上げ位置にある第1支持装置および場合によっては第2支持装置と共に、作業ロールを分解した圧延スタンドに入れられる。支持装置の中立位置または持ち上げ位置は、支持装置が挿入時にミル床に衝突しないようにするために必要である。図3参照。
第1の支持装置と場合によっては第2の支持装置は、駆動スピンドル200の頭部210の下で移動させることができるようにするために、頭部に達する前に圧延スタンド300内で中立位置の下まで、ひいては頭部の下まで下降させられる。図4および図5参照。
駆動スピンドルをその頭部と共に収容するために、支持装置は頭部を通過した後で、必要なだけ、一般的には中立位置を越えるまで、駆動スピンドルの下まで持ち上げられる。
【0027】
続いて、駆動スピンドルと共に台車が運び去られる。この場合、第1と第2の支持装置はミル床に衝突しないようにするために、中立位置の下まで下降していない。
【符号の説明】
【0028】
100 台車
105 走行ユニット
110 第1支持装置
112 第2支持装置
114 第2駆動装置
116 昇降装置、例えばトグルレバー式リンク機構またはパンタグラフ式リンク機構
120 第1駆動装置
200 駆動スピンドル
210 駆動スピンドルの頭部
300 圧延スタンド
310a 上側支持ロール
310b 下側支持ロール
400 駆動装置/ピニオンギヤユニット
500 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車(100)が走行ユニット(105)を備え、台車がこの走行ユニットによって駆動スピンドル(200)の下へ移動できるように偏平に形成されている、圧延スタンド(300)のロールのための少なくとも1本の前記駆動スピンドル(200)を搬送するための台車(100)において、
前記台車が第1支持装置(110)と第1駆動ユニット(120)を備えた昇降台車として形成され、前記第1駆動ユニット(120)が前記駆動スピンドル(200)の下まで第1支持装置(110)を持ち上げ、かつ場合によっては前記駆動スピンドル(200)を有する前記第1支持装置(110)を中立位置よりも下降させる働きをすることを特徴とする台車(100)。
【請求項2】
前記台車が第2支持装置(110)を備え、この第2支持装置が前記第1支持装置(110)に統合され、かつ前記第1支持装置(110)と共に前記中立位置よりも下降させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の台車(100)。
【請求項3】
前記第2支持装置(112)を前記第1支持装置(110)と相対的に昇降させるために、第2駆動装置(114)が前記第2支持装置(112)に付設されていることを特徴とする請求項2に記載の台車(100)。
【請求項4】
前記第1および/または第2の駆動ユニット(120、114)がそれぞれ、昇降装置を介して前記第1または第2の支持装置(110、112)に機械的に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の台車(100)。
【請求項5】
前記台車を好ましくはレール(500)上で移動させるために、前記走行ユニット(105)が走行輪またはスライドスキッドによって形成され、前記レールが圧延スタンドを立設させたロールホールのミル床に敷設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の台車(100)。
【請求項6】
前記台車を独立して移動させるために第3駆動ユニット(140)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の台車(100)。
【請求項7】
圧延スタンド(300)の駆動スピンドル(200)の下で台車(100)を移動させるステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の台車(100)を運転するための方法において、
前記駆動スピンドル(200)の下まで前記台車の第1および/または第2の支持装置(110、112)を持ち上げるステップと、
前記駆動スピンドルを収容するステップと、
必要であれば、前記駆動スピンドルと共に前記第1および第2の支持装置を下降させるステップと、
前記駆動スピンドル(200)と共に台車を運び去るステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記駆動スピンドル(200)の下への前記台車(100)の移動が、前記圧延スタンド(300)の操作側(BS)から駆動側(AS)へ前記圧延スタンドを通って行われることと、前記台車の運び去りが逆の方向に行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1支持装置(110)と場合によっては前記第2支持装置(112)を備えた前記台車(100)がその都度の中立位置または持ち上げ位置において、作業ロールを分解した前記圧延スタンドに入れられることと、
前記第1支持装置(110)と場合によっては前記第2支持装置(112)が前記駆動スピンドル(200)の頭部(210)に達する前に、前記中立位置の下まで、ひいては前記頭部の下まで下降させられることと、
前記台車(100)が下降した前記第1支持装置(110)と場合によっては前記第2支持装置(112)と共に前記駆動スピンドルの頭部(210)の下で移動させられることと、
前記駆動スピンドルをその頭部と共に収容するために、前記第1および第2の支持装置(110、112)が前記頭部を通過した後で必要なだけ前記駆動スピンドル(200)の下まで持ち上げられることと、
続いて、前記台車(100)が前記駆動スピンドル(200)と共に運び去られ、この場合第1および第2支持装置が中立位置の下へ下降させられないことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動スピンドル(200)の下への前記台車(100)の移動と、その後に行われる、前記駆動スピンドルと一緒の前記台車の運び去りがそれぞれ、組み込まれた状態の前記駆動スピンドルの縦軸線に対して横向きに行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記駆動スピンドルの下への前記台車の移動が前記圧延スタンド(300)を通って行われ、その後に行われる、前記駆動スピンドルと一緒の前記台車の運び去りが、組み込まれた状態の前記駆動スピンドルの縦軸線に対して横向きに行われるかあるいはその逆に行われることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および/または第2支持装置が少なくとも前記中立位置で、好ましくは下降したおよび/または持ち上げた位置でも、前記台車にロック可能であることを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509183(P2012−509183A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536747(P2011−536747)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005941
【国際公開番号】WO2010/057545
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)