説明

圧延制御装置、圧延制御方法及び圧延制御プログラム

【課題】リバース圧延を行う圧延機において、被圧延材の形状を測定する形状計を圧延機の片方のみに設けた場合であっても、被圧延材の形状制御を可能とすること。
【解決手段】圧延される前の被圧延材Aの板厚である入側板厚と、圧延された後の被圧延材Aの板厚である出側板厚と、入側板厚の平均値と、出側板厚の平均値とに基づき、被圧延材Aの板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出し、正回転の圧延時に、形状計によって測定された被圧延材Aの形状と目標値とを比較することにより、被圧延材Aの形状偏差を算出し、逆回転の圧延時に、形状の予測値と目標値とを比較することにより形状偏差を算出し、算出された形状偏差に基づき、被圧延材Aの形状と目標値との差異を修正するようにロールを制御するための制御量を決定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延制御装置、圧延制御方法及び圧延制御プログラムに関し、特に、被圧延材の形状制御に関する。
【背景技術】
【0002】
被圧延材を中伸びあるいは耳伸びの無い製品に圧延することは、品質保証上重要なことである。このため、近年に至って、被圧延材の長手方向厚み寸法の均一化のみならず、板幅方向の厚み分布を考慮に入れた圧延制御、即ち被圧延材の形状制御を行うのが一般的となり、種々の方法が提案されるに至っている。
【0003】
そのような方法の例として、複数パスを繰り返して圧延操業を行う場合において、あるパスの圧延中又は当該パスの圧延が終了した後に測定された形状データおよび板クラウン情報に基づいてワークロールベンディング力を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、圧延中に連続して被圧延材の形状を測定し、連続測定されたデータと板クラウン変化率予測モデルの予測板クラウン変化率とから、逐次、圧延中の被圧延材の形状不良を修正するようにワークロールベンディング力を決定する手順と、連続測定されたデータと板クラウン変化率予測モデルの予測板クラウン変化率とから、逐次、板クラウン変化率予測モデルを修正する手順とを含む形状制御方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−32412号公報
【特許文献2】特開平9−295022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数パスを繰り返して圧延操業を行う場合においては、リールに巻き取られた被圧延材を巻き出し、圧延機をある方向に回転させて圧延を行って圧延機の反対側に設置されたリールで圧延後の被圧延材を巻き取る正回転の圧延と、巻き取られた圧延後の被圧延材を巻き出し、圧延機を逆回転させて圧延を行う逆回転の圧延とを繰り返して複数パスの圧延を行うリバース圧延が実施される。
【0006】
このようなリバース圧延において、特許文献1に開示された方法を用いる場合、被圧延材の幅方向の複数の位置において被圧延材の形状を測定する形状計を圧延機の両側に設ける必要がある。しかしながら、そのような形状計は高価であり、圧延装置の初期投資費用や装置の維持費において、無視できない程度の割合を占めている。即ち、圧延機の両側に設けられた形状計を片方のみにすることができれば、相応のコスト削減効果が期待できる。
【0007】
本発明は、上記実情に基づき、リバース圧延を行う圧延機において、被圧延材の形状を測定する形状計を圧延機の片方のみに設けた場合であっても、被圧延材の形状制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御装置であって、前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、前記被圧延材の形状と、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出する形状比較結果算出部と、前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定する制御量決定部と、前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚、前記入側板厚の平均値及び前記出側板厚の平均値に基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出する形状予測部とを含み、前記形状比較結果算出部は、前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出し、前記第2の圧延操業において、前記形状予測部によって算出された前記形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様は、板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御方法であって、前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚と、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚と、前記入側板厚の平均値と、前記出側板厚の平均値とに基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出し、前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出し、前記第2の圧延操業において、前記算出された形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出し、前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の更に他の態様は、板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御プログラムであって、前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚と、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚と、前記入側板厚の平均値と、前記出側板厚の平均値とに基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出するステップと、前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出するステップと、前記第2の圧延操業において、前記算出された形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出するステップと、前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする圧延制御プログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いることで、リバース圧延を行う圧延機において、被圧延材の形状を測定する形状計を圧延機の片方のみに設けた場合であっても、被圧延材の形状制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る圧延装置の全体構成を示す図である。
【図2】ワークロールのたわみ及び被圧延材の形状を示す図である。
【図3】圧延前後における被圧延材の形状を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧延制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る形状予測モデル処理モジュールの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧延装置の正回転時における動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る圧延装置の逆回転時における動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態に係る形状予測モデル処理モジュールの構成を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る圧延装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る圧延装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る圧延装置1は、被圧延材Aと接触して被圧延材Aを圧延するワークロール101a、101b(以降、ワークロール101とする)、圧延荷重を生み出すバックアップロール102a、102b(以降、バックアップロール102とする)、ワークロール101とバックアップロール102との間に設けられる中間ロール103a、103b(以降、中間ロール103とする)を含む。尚、以降の説明においては、ワークロール101、バックアップロール102及び中間ロール103を総じて圧延機とする。
【0014】
本実施形態に係る圧延機においては、一方向に各ロールを回転させて被圧延材を搬送しながら圧延を行う正回転の圧延と、各ロールを逆回転させて被圧延材を搬送しながら圧延を行う逆回転の圧延とを交互に繰り返すことにより、複数回の圧延によって被圧延材Aを目的の厚さに加工するリバース圧延が実施される。
【0015】
ワークロール101及び中間ロール103には、ロール間の圧力を調整するロールベンダが接続されており、夫々ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105が、圧延制御装置110の制御に従って夫々のロールベンダの圧力を制御する。また、バックアップロール102には、圧下制御装置106が接続されており、圧下制御装置106が、圧延制御装置110の制御に応じた圧延荷重をバックアップロール102に与える。また、圧延荷重計108が、バックアップロール102の圧延荷重を計測して圧延制御装置110に入力する。
【0016】
また、圧延機が被圧延材Aを圧延して搬送する方向の片側には、形状計107が設けられている。形状計107は、被圧延材Aの幅方向、即ち、被圧延材の板面と平行な方向であって、搬送方向と垂直な方向の複数の位置における被圧延材Aの板面形状を計測して圧延制御装置110に入力する。これにより、圧延制御装置110は、被圧延材Aの実測形状データを取得する。
【0017】
この実測形状データは、圧延制御装置110において、ワークロールベンダ制御装置104及び中間ロールベンダ制御装置105によるロールベンダの制御(以降、形状制御とする)のために用いられる。本実施形態においては、図1において圧延機の右側、即ち、正回転時において圧延後の被圧延材Aが搬送される側にのみ形状計107が設けられている。従って、正回転の場合にのみ、圧延後の被圧延材Aの実測形状データを取得することが可能となる。
【0018】
ここで、形状計107が測定する被圧延材Aの実測形状について説明する。被圧延材Aを圧延するワークロール101は、ロール長手方向の両側が支持されて設置されるため、上下のワークロール101によって被圧延材Aを挟み込むと、ロールにたわみが生じる。図2(a)は、被圧延材Aが挟まれた状態におけるワークロール101のたわみを示す図である。図2(a)においては、被圧延材Aの搬送方向から見たワークロール101の状態を示している。
【0019】
図2(a)に示すようにワークロール101がたわんだ状態で圧延を行うと、図2(b)に示すように、被圧延材Aは、その板面と平行な方向であって且つ搬送方向と垂直な方向(以降、幅方向とする)において圧延後の板厚に変化が生じる。即ち、幅方向の両端側の板厚がhminで最も薄く、幅方向の中央の板厚がhmaxで最も厚くなる。尚、この際の幅方向における板厚分布の平均値をhとする。このような幅方向の板厚の分布が、板厚プロファイルである。
【0020】
図3(a)、(b)は、本実施形態に係る形状計107が測定する形状データε(i)の概念を示す図である。図2(b)に示すように被圧延材Aにたわみが生じた場合、圧延前と圧延後で被圧延材の板幅が変わらないことを前提とすると、幅方向の両端側の方が、中央部分に比べて薄く圧延された分、板の長さが搬送方向に延ばされることとなる。図3(a)は、圧延前の被圧延材Aを板面に垂直な方向から見た状態を示す図であり、図3(b)は、圧延後の被圧延材Aを板面に垂直な方向から見た状態を示す図である。
【0021】
図3(b)に示すように、圧延後の被圧延材Aの長さの平均値を1とした場合、幅方向を示す因子“i”に応じた位置の被圧延材のAの長さは、平均値からの差異の絶対値ε(i)を用いて、“1+ε(i)”若しくは“1−ε(i)”として表される。本実施形態に係る形状計107は、このように定義される形状体データε(i)を実測値として取得する。
【0022】
本実施形態に係る圧延装置1においては、上述した形状制御により、被圧延材Aの搬送方向の厚さの均一性だけでなく、被圧延材Aの幅方向の厚さの均一性を向上している。そのため、通常であれば圧延機の圧延方向両側に形状計107を設けることとなるが、形状計107が片側にのみ設置されている場合であっても、正回転時及び逆回転時の両方における形状制御を可能とし、且つ形状計107を1つとしたことによる装置のコストの低減が本実施形態に係る要旨である。
【0023】
圧延制御装置110は、図1に示すように、形状予測モデル処理モジュール111、形状偏差計算部112、目標形状設定部113及び制御量決定部114を含む。形状予測モデル処理モジュール111は、本実施形態の要旨に係る構成であり、図1に示す逆回転の圧延操業時、即ち、圧延後の被圧延材Aが搬送される側に形状計107が設けられていない場合において、形状予測モデルの計算により、圧延後の被圧延材Aの圧延後の形状の予測値である予測形状データを生成して形状偏差計算部112に入力する。即ち、形状予測モデル処理モジュール111は、被圧延材Aの圧延後の形状を予測する制御量決定部として機能する。形状予測モデル処理モジュール111の詳細については後述する。
【0024】
形状偏差計算部112は、圧延機の正回転時においては、形状計107から取得した実測形状データと、目標形状設定部113によって設定されている目標となる形状データ(以降、目標形状データとする)とに基づいて形状偏差を計算する。また、形状偏差計算部112は、圧延機の逆回転時においては、形状予測モデル処理モジュール111から入力された予測形状データと、目標形状設定部113によって設定されている目標形状データとに基づいて形状偏差を計算する。
【0025】
即ち、形状偏差計算部112は、被圧延材Aの形状の実測値または予測値と、被圧延材Aの形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出する形状比較結果算出部として機能する。形状偏差計算部112は、算出した形状偏差を制御量決定部114に入力する。ここで、目標形状設定部113は、例えば、予め記憶された目標形状値のデータや、ユーザによって入力された目標形状値のデータを、目標となる形状データとして形状偏差計算部112に出力する。
【0026】
制御量決定部114は、形状偏差計算部112から入力された形状偏差に基づき、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106によるロールベンダ及びバックアップロール夫々の制御量を決定して出力する。これにより、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106が、夫々ロールベンダ及びバックアップロールを制御する。
【0027】
制御量決定部114は、上述したように算出された形状偏差、即ち被圧延材の形状と目標値との差異を修正するように、上記制御量を決定する。また、制御量決定部114は、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106による制御量実績を形状予測モデル処理モジュール111に入力する。
【0028】
このような構成により、圧延制御装置110において、形状計107によって取得された実測形状データまたは形状予測モデル処理モジュールによって予測された予測形状データに基づく被圧延材Aの形状制御が実行される。
【0029】
ここで、圧延制御装置110は、PC(Pesonal Computer)等の情報処理装置によって実現される。ここで、本実施形態に係る圧延制御装置110のハードウェア構成について図4を参照して説明する。図4に示すように、本実施形態に係る圧延制御装置110は、一般的なサーバやPC等と同様の構成を含む。即ち、本実施形態に係る情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス80を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60及び操作部70が接続されている。
【0030】
CPU10は演算手段であり、圧延制御装置110全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
【0031】
I/F50は、バス80と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、配信サーバ2の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス、タッチパネル等、ユーザが圧延制御装置110に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0032】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る圧延制御装置110の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0033】
尚、図4においては、1台の情報処理装置によって圧延制御装置110が構成される場合を例として説明したが、複数台の情報処理装置が連携して処理を行うことにより、図1に示すような圧延制御装置110の機能を実現する場合もあり得る。
【0034】
次に、本実施形態に係る形状予測モデル処理モジュール111の機能について説明する。図5は、形状予測モデル処理モジュール111に含まれる機能及び各機能の連携態様を示す図である。図5に示すように、本実施形態に係る形状予測モデル処理モジュール111は、ロールギャップモデル111a、出側板厚プロファイルモデル111b及び形状予測モデル111cの3つの計算モジュールを含む。
【0035】
ロールギャップモデル111aは、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106による圧延機の制御において測定されたパラメータに基づき、ワークロール101のロールギャップを計算するための計算モジュールであり、以下の式(1)によりロールギャップS(i)を計算する。

【0036】
ここで、Fは、ワークロール101のベンダ圧であり、ワークロールベンダ制御装置104を介して取得可能である。Fは、中間ロール103のベンダ圧であり、中間ロールベンダ制御装置105を介して取得可能である。PDS、PWSは、バックアップロール102の圧延荷重であって、ロール軸方向の両側夫々の圧延荷重であり、ΔPは、圧延荷重の変化量であり、圧延荷重計108を介して取得可能である。ΔSgapは、ロールギャップの変化量であり、専用に設けられた図示しないセンサにより取得可能である。ロールギャップS(i)の“i”とは、図3において説明したように、被圧延材Aの幅方向の位置を示す因子である。
【0037】
出側板厚プロファイルモデル111bは、圧延機によって圧延された被圧延材Aの圧延後の出側板厚h(i)を計算するための計算モジュールであり、以下の式(2)により出側板厚h(i)を計算する。

【0038】
ここで、Mは、圧延機のミル定数であり、予め設定された値が用いられる。P(i)は、被圧延材Aの幅方向の位置に応じた圧延荷重であり、PDS、PWSに基づいて求められる。また、S(i)は、ロールギャップモデル111aによる計算結果が用いられる。
【0039】
形状予測モデル111cは、圧延機の逆回転による圧延操業時において、上述した実測形状データε(i)に対応する予測形状データλ(i)を計算するための計算モジュールであり、以下の式(3)により予測形状データλ(i)を計算する。

【0040】
ここで、h(i)は、出側板厚プロファイルモデルによって計算された出側板厚である。H(i)は、被圧延材Aが圧延機によって圧延される前の板厚を示す入側板厚プロファイルである。上述したように、本実施形態においては、リバース圧延が前提となっているため、形状予測モデル処理モジュール111は、前パスの圧延操業において出側板厚プロファイルモデル111bにより計算された出側板厚h(i)の時系列を反転して変換することにより、今回のパスにおける入側板厚プロファイルH(i)を求める。
【0041】
は、入側板厚H(i)の平均値であり、hは、図2(b)においても説明したように、出側板厚h(i)の平均値であり、夫々以下の式(4)、式(5)によって求められる。


【0042】
ここで、上述したように入側板厚H(i)は、既に算出されている前パスの出側板厚を変換して求められる。従って、形状予測モデル処理モジュール111は、今回のパスの圧延操業の開始に際して、上記式(4)の計算を実行して入側板厚平均値Hを予め求めることができる。他方、出側板厚平均値hは、上記式(2)の計算によって逐次算出される出側板厚h(i)に基づき、逐次再計算される。即ち、形状予測モデル処理モジュール111は、出側板厚h(i)の算出に応じて、上記式(5)の計算を実行し、出側板厚平均値hを再計算する。
【0043】
このように、形状予測モデル111cの計算結果により、圧延機の逆回転による圧延操業時、即ち、圧延機の出側に形状計107が設けられていない場合においても、被圧延材Aの形状データを予測形状データλ(i)として取得することができる。この予測形状データλ(i)を用いて上述した形状制御を実施することが本実施形態に係る要旨である。
【0044】
また、形状予測モデル111cは、圧延機の正回転による圧延操業時において、形状計107によって取得される実績形状データε(i)を用いて、下記の式(6)により、圧延機によって圧延される前の被圧延材Aの板厚、即ち、入側板厚を推定する。

【0045】
上記(6)は、上記式(3)における予測形状データλ(i)を、実測形状データε(i)とし、入側板厚H(i)について解いた式である。形状予測モデル処理モジュール111は、このようにして求めた入側板厚H(i)と、予め測定された被圧延材Aの板厚や、上述したようにh(i)から変換したH(i)とを比較することにより、ロールギャップモデル111a、出側板厚プロファイルモデル111b及び形状予測モデル111cの精度を確認することができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る圧延操業時における圧延制御装置110の動作について説明する。図6は、圧延機を正回転させて圧延操業を行う場合の圧延制御装置110の動作を示すフローチャートである。図6に示すように、圧延制御装置110は、正回転の圧延操業を開始すると、形状計107によって測定された実測形状データε(i)の取得を開始する(S401)。
【0047】
ε(i)の取得が開始されると、形状偏差計算部112が、目標形状設定部113において設定されている目標形状データと、取得された実測形状データε(i)との形状偏差を算出する(S602)。ここで、目標形状設定部113が出力する目標形状データは、実測形状データε(i)や予測形状データλ(i)に対応しており、時系列データであって且つ被圧延材Aの幅方向の位置を示す因子“i”に応じたデータである。
【0048】
形状偏差計算部112によって形状偏差が算出されると、制御量決定部114が、算出された形状偏差に基づいてワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々の制御量を決定し(S603)、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々に設定する。
【0049】
ここで、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々の制御量の変更は、式(1)において説明したF、F、PDS、PWSに夫々影響し、その結果ロールギャップS(i)が変化する。即ち、制御量決定部114は、ロールギャップS(i)の変化により、形状偏差が是正されるようにワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々の制御量を決定する。
【0050】
また、形状予測モデル処理モジュール111は、制御量決定部114から入力されたF、F、PDS、PWSに基づいて圧延荷重P(i)を取得し、図5において説明した手順によりh(i)及びH(i)を算出する(S604)。このようにして算出されたh(i)は、上述したように、次のパス、即ち逆回転による圧延操業の際の入側板厚H(i)のために用いられる。また、S604において算出されたH(i)は、上述したように、形状モデル予測モジュール111の精度の確認等に用いられる。
【0051】
尚、図7においては、S601〜S603の後にS604の処理が実行されるように説明したが、S601〜S603の処理とS604の処理とは並列して実行されても良いし、S604の処理を先に実行しても良い。
【0052】
図7は、圧延機を逆回転させて圧延操業を行う場合の圧延制御装置110の動作を示すフローチャートである。図7に示すように、圧延制御装置110が逆回転の圧延操業を開始すると、形状予測モデル処理モジュール111が、前回のパス、即ち正回転よる圧延操業において算出した出側板厚h(i)を、今回のパスにおける入側板厚H(i)に変換する(S701)。
【0053】
また、形状予測モデル処理モジュール111は、図5において説明した手順により、P(i)を取得し、出側板厚h(i)を算出する(S702)。そして、形状予測モデル処理モジュール111は、形状予測モデル111cにより、予測形状データλ(i)を算出する(S703)。形状予測モデル処理モジュール111によって予測形状データλ(i)が算出されると、形状偏差計算部112が、目標形状設定部113において設定されている目標形状と、取得された予測形状λ(i)との形状偏差を算出する(S704)。
【0054】
形状偏差計算部112によって形状偏差が算出されると、制御量決定部114が、算出された形状偏差に基づき、図6のS603と同様に、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々の制御量を決定し(S705)、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ制御装置105及び圧下制御装置106夫々に設定する。
【0055】
このように、本実施形態に係る圧延制御装置110は、圧延機の正回転による圧延操業時においては、形状計107による実測形状データε(i)に基づいて形状制御を行い、圧延機の逆回転による圧延操業時においては、形状予測モデル処理モジュールによる予測形状データλ(i)に基づいて形状制御を行う。そのため、形状計107を設ける位置を、圧延機における被圧延材Aの搬送方向の片側のみとしても、形状制御を行うことが可能であり、形状計107の数を削減することで圧延装置1のコストを削減することが可能となる。
【0056】
尚、上記実施形態においては、形状予測モデル処理モジュール111が、圧延機の逆回転による圧延操業時、即ち、被圧延材Aの出側に形状計107が設けられている方向の圧延操業時にのみ、予測形状データλ(i)の算出を行う場合を例として説明した。しかしながら、入側板厚H(i)のデータがあれば、圧延機の正回転、逆回転に限らず、予測形状データλ(i)を算出することが可能である。
【0057】
従って、圧延機の正回転による圧延操業時に算出された予測形状データλ(i)を、実測形状データε(i)と比較することにより、形状予測モデル処理モジュールによる形状予測の精度を確認すると共に、予測形状データλ(i)と実測形状データε(i)との差、即ち予測誤差に基づいた形状制御の補正が可能となる。そのような例について図8に示す。
【0058】
図8は、上述した予測誤差Δλ(i)を算出する場合の、形状予測モデル処理モジュール111に含まれる機能及び各機能の連携態様を示す図である。図8の例に示す形状予測モデル111cは、上述したように、圧延機の正回転による圧延操業の際にも予測形状データλ(i)を算出し、実測形状データε(i)との差を予測誤差Δλ(i)として算出する。
【0059】
更に、図8の例に係る形状予測モデル処理モジュール111は、予測誤差反映モデル111dを含む。予測誤差反映モデル111dは、形状予測モデル111cによって算出された予測誤差Δλ(i)を形状制御に反映させるための計算モジュールである。ここで、予測誤差反映モデル111dによる形状制御の補正態様について以下に説明する。
【0060】
形状予測モデル処理モジュール111を構成する要素であるロールギャップモデル111a、出側板厚プロファイルモデル111b、形状予測モデル111cのうち、精度の維持が最も困難なのは、最もパラメータの多いロールギャップモデル111aによって算出されるロールギャップS(i)である。である。即ち、形状予測モデル111cにおいて算出される予測誤差Δλ(i)の要因は、ロールギャップモデル111aによって算出されるロールギャップS(i)の誤差が大きいと考えられる。
【0061】
従って、予測誤差反映モデル111dによる形状制御の補正態様として、例えば、ロールギャップモデル111aによるロールギャップS(i)の算出処理を補正する態様が考えられる。この場合、予測誤差反映モデル111dは、予測誤差Δλ(i)に基づき、ロールギャップモデル111aが算出したロールギャップS(i)を補正するための補正値であって、予測誤差Δλ(i)が低減し、好ましくはゼロになるような補正値を算出してロールギャップモデル111aに入力する。これにより、予測誤差Δλ(i)に基づいた形状制御の補正が可能となる。
【0062】
尚、ロールギャップS(i)を補正するための補正値の算出は、上述した式(3)、式(2)に基づいてロールギャップS(i)について解き、λ(i)をパラメータとした式に変換することによって実現可能である。
【0063】
ここで、上記式(1)において説明したように、ロールギャップS(i)は、数々の測定結果や、測定結果に基づいて求められる値をパラメータとして算出される。従って、算出されたS(i)を補正するための補正値でなく、S(i)のパラメータとなる測定結果や、測定結果に基づいて求められる値を補正するための補正値を、Δλ(i)に基づいて求めても良い。これにより、高精度に測定可能なパラメータには影響を与えずに、形状制御を補正することが可能となる。
【0064】
また、予測誤差Δλ(i)が最終的に影響するのは、形状偏差計算部112によって算出される目標形状との形状偏差及び制御量決定部114において決定されるワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ105及び圧下制御装置106の制御量である。従って、Δλ(i)に基づいて形状予測モデル処理モジュール111内部のモジュールを補正するのではなく、上記形状偏差や制御量を補正するようにしても良い。図9は、そのような態様における圧延装置1の全体構成を示す図である。
【0065】
図9の態様における圧延装置110において、形状予測モデル処理モジュール111は、例えば、予測誤差反映モデル111dによる予測誤差Δλ(i)の処理結果を、目標形状データを補正するための補正値として目標形状設定部113に入力する。この場合、予測誤差反映モデル111dは、予測誤差Δλ(i)に基づき、目標形状データを補正するための補正値を算出する。
【0066】
また、形状予測モデル処理モジュール111は、予測誤差反映モデル111dによる予測誤差Δλ(i)の処理結果を、ワークロールベンダ制御装置104、中間ロールベンダ105及び圧下制御装置106夫々の制御量を補正するための補正値として制御量決定部114に入力しても良い。この場合、予測誤差反映モデル111dは、予測誤差Δλ(i)に基づき、制御量を補正するための補正値を算出する。
【0067】
このように、形状計107によって実測形状データε(i)が取得可能な、圧延機の正回転による圧延操業時においても、形状予測モデル処理モジュール111において予測形状データλ(i)を算出し、実測形状データε(i)の差である予測誤差Δλ(i)を算出することにより、圧延制御装置110による形状制御の精度を確認し、精度が低い場合には形状制御の制御態様を変更して、形状制御の精度を維持することが可能となる。
【0068】
尚、上記実施形態においては、上記式(2)により出側板厚h(i)を算出すると共に、前回のパスにおいて算出した出側板厚h(i)を次のパスにおける入側板厚H(i)に変換する場合を例として説明した。しかしながら、板厚計を設けて出側板厚h(i)及び入側板厚H(i)の実測値を取得するようにしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 圧延装置
10 CPU
20 RAM
30 ROM
40 HDD
50 I/F
60 LCD
70 操作部
80 バス
101、101a、101b ワークロール
102、102a、102b バックアップロール
103、103a、103b 中間ロ―ル
104 ワークロールベンダ制御装置
105 中間ロールベンダ制御装置
106 圧下制御装置
107 形状計
108 圧延荷重計
110 圧延制御装置
111 形状予測モデル処理モジュール
111a ロールギャップモデル
111b 出側板厚プロファイルモデル
111c 形状予測モデル
111d 予測誤差反映モデル
112 形状偏差計算部
113 目標形状設定部
114 制御量決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御装置であって、
前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、
前記被圧延材の形状と、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出する形状比較結果算出部と、
前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定する制御量決定部と、
前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚、前記入側板厚の平均値及び前記出側板厚の平均値に基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出する形状予測部とを含み、
前記形状比較結果算出部は、前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出し、前記第2の圧延操業において、前記形状予測部によって算出された前記形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出することを特徴とする圧延制御装置。
【請求項2】
前記形状予測部は、前記板幅方向の位置“i”に応じた前記入側板厚をH(i)、前記出側板厚をh(i)、前記入側板厚の平均値をH、前記出側板厚の平均値をhとし、以下の式により前記被圧延材の形状の予測値λ(i)を算出することを特徴とする請求項1に記載の圧延制御装置。

【請求項3】
前記形状予測部は、
前記ロールの制御において測定されたパラメータに基づいて前記出側板厚を算出し、
交互に繰り返される前記第1の圧延操業と前記第2の圧延操業において、前回の圧延操業にて算出した前記出側板厚を変換して今回の圧延操業における入側板厚を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延制御装置。
【請求項4】
前記形状予測部は、前記出側板厚の算出に応じて前記出側板厚の平均値を再計算することを特徴とする請求項3に記載の圧延制御装置。
【請求項5】
前記形状予測部は、
前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記形状予測部によって算出された前記形状の予測値との比較結果である予測誤差を算出し、
前記目標値を補正するための補正値を前記算出した予測誤差に基づいて算出して出力することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の圧延制御装置。
【請求項6】
前記形状予測部は、
前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記形状予測部によって算出された前記形状の予測値との比較結果である予測誤差を算出し、
前記形状の予測値の算出過程において用いられるパラメータを補正するための補正値を前記算出した予測誤差に基づいて算出し、前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の圧延制御装置。
【請求項7】
前記形状予測部は、
前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記形状予測部によって算出された前記形状の予測値との比較結果である予測誤差を算出し、
前記制御量を補正するための補正値を前記算出した予測誤差に基づいて算出して出力することを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の圧延制御装置。
【請求項8】
板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御方法であって、
前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、
前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚と、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚と、前記入側板厚の平均値と、前記出側板厚の平均値とに基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出し、
前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出し、
前記第2の圧延操業において、前記算出された形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出し、
前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定することを特徴とする圧延制御方法。
【請求項9】
板状の被圧延材を搬送して少なくとも一対のロールで挟むことによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第1の圧延操業と、前記ロールを逆回転させると共に前記巻き取られた被圧延材を巻き出して前回の圧延とは逆方向に搬送することによって圧延した後に巻き軸によって巻き取る第2の圧延操業とを交互に繰り返すことにより複数回の圧延を行う圧延機を制御する圧延制御プログラムであって、
前記圧延機は、前記搬送される被圧延材の形状を、前記被圧延材の搬送方向と垂直な方向であって且つ前記被圧延材の板面と平行な方向である板幅方向の複数の位置において測定する形状計を、前記被圧延材の搬送方向における前記ロールの片側にのみ有し、
前記ロールによって圧延される前の前記被圧延材の板厚である入側板厚と、圧延された後の前記被圧延材の板厚である出側板厚と、前記入側板厚の平均値と、前記出側板厚の平均値とに基づき、前記被圧延材の前記板幅方向の複数の位置における形状の予測値を算出するステップと、
前記第1の圧延操業において、前記形状計によって測定された前記被圧延材の形状と前記目標値とを比較することにより、前記被圧延材の形状の目標値との比較結果である形状比較結果を算出するステップと、
前記第2の圧延操業において、前記算出された形状の予測値と前記目標値とを比較することにより前記形状比較結果を算出するステップと、
前記算出された形状比較結果に基づき、前記被圧延材の形状と前記目標値との差異を修正するように前記ロールを制御するための制御量を決定するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする圧延制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75301(P2013−75301A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215346(P2011−215346)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】