説明

圧延異常検出方法および圧延機の異常検出装置

【課題】小曲りの発生を圧延時に検出して早期に対処し得るようにした圧延機の異常検出方法および装置を提供する。
【解決手段】異常検出装置28は、第2ロールスタンド18のベアリング押さえ26に配設される振動センサ30と、振動センサ30で検出された振動データを基に異常判定を行なう判定手段32と、判定手段32で異常と判断された際に異常発生を報知する報知手段34とを備える。小曲りが発生した際には、振動数が90Hz〜130Hzの範囲内の振動における振動速度のピーク値が0.04cm/s以上となる。そこで、判定手段32では、振動センサ30で検出された振動数が90Hz〜130Hzの範囲に現われる振動における振動速度のピーク値が0.04cm/s以上である場合に、小曲りが発生していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のロールスタンドで構成された圧延機で発生する異常を検出する圧延異常検出方法および圧延機の異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒材や線材等の被圧延材料の熱間圧延の仕上圧延に用いられる圧延機として、サイジングミルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このサイジングミルは、一対の圧延ロールが設けられた複数のロールスタンドから構成され、被圧延材料を各ロールスタンドの圧延ロールによって上下、左右から交互に圧延することにより所要の線径に仕上圧延される。
【0003】
圧延機では、一対の圧延ロール間に形成されるカリバに対する被圧延材料の入側に、ローラ等よりなる保持ガイドを配置し、被圧延材料を保持ガイドによってカリバに正しい姿勢で案内するよう構成されている。しかしながら、一対の圧延ロールの間隔調整を行なった場合には、保持ガイドも適正な位置への調整が必要であり、調整に時間が掛かる欠点がある。また、保持ガイドの案内不良は圧延製品の不良に繋がるため、ベアリングのメンテナンス、ローラの表面疵点検、回転状況の点検等を頻繁に行なわなければならなかった。
【0004】
そこで、前記サイジングミルでは、スタンド間距離を短かくすることで、保持ガイドを不要としたガイドレス圧延を行ない得るようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−229787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記保持ガイドを備えていないサイジングミルでは、各ロールスタンドに配設される一対の圧延ロール間に形成されるカリバと被圧延材料との間に生ずる隙間に起因して、圧延時に被圧延材料が振動し、該振動に起因して縞模様のように見える微小な蛇行状の曲り(以下、小曲りと称す)が発生し、不良品となる問題がある。
【0007】
前記小曲りは微小であるため、被圧延材料が高速で走行している圧延時には目視によって発見することが極めて困難であり、圧延後における冷却床での搬送途中や、矯正時において目視によって発見されているのが現状である。そして、圧延後に小曲りが発見されたときには、既に大量の不良品が発生してしまっている問題が指摘される。
【0008】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、小曲り等の異常発生を圧延時に検出して早期に対処し得るようにした圧延異常検出方法および圧延機の異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る圧延異常検出方法は、
一対の圧延ロールを回転自在に配設したロールスタンドを複数直列に備えた圧延機で被圧延材料を圧延した際に、被圧延材料の給送方向に交差する方向への振動を検出し、該検出された振動に基づいて被圧延材料の圧延異常を検出することを要旨とする。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、圧延中に検出した振動によって小曲り等の異常を検出することができるので、異常を解消するための対策を圧延中に行なうことができ、不良品が大量に発生するのを防止し得る。
【0011】
請求項2に係る発明では、特定の振動数で検出される前記被圧延材料の振動での被圧延材料の給送方向に交差する方向への変動に基づく変動値が閾値より大きい場合に、被圧延材料に小曲りが発生している異常と判断することを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、小曲りが発生した際に現われる特有の振動に基づいて被圧延材料に小曲りが発生したことを確実に検出し得る。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項3の発明に係る圧延機の異常検出装置は、
一対の圧延ロールを備えたロールスタンドを複数直列に配置して被圧延材料を圧延する圧延機において、
圧延中の被圧延材料の振動を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された振動と閾値とを比較して異常判定を行なう判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、圧延中に検出した振動によって小曲り等の異常を検出することができるので、異常を解消するための対策を圧延中に行なうことができ、不良品が大量に発生するのを防止し得る。
【0014】
請求項4に係る発明では、前記判定手段は、前記検出手段で検出される特定の振動数の振動での被圧延材料の給送方向に交差する方向への変動に基づく変動値が閾値より大きい場合に、被圧延材料に小曲りが発生している異常と判断するよう構成したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、小曲りが発生した際に現われる特有の振動に基づいて被圧延材料に小曲りが発生したことを確実に検出し得る。
【0015】
請求項5に係る発明では、前記判定手段での判定結果が異常と判断された場合に異常を報知する報知手段を備えたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、小曲り等の異常が発生したことを作業者に報知して、早期な対応を行なわせることができる。
【0016】
請求項6に係る発明では、前記検出手段は、前記被圧延材料の振動数および変動値としての振動速度を検出する振動センサであることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、簡単な構成で小曲り等の異常を検出することができる。
【0017】
請求項7に係る発明では、前記検出手段は、前記ロールスタンド間を通過する被圧延材料の表面を撮影する高速度カメラと、該高速度カメラで撮影した画像から被圧延材料の表面に現われる波状の特徴部分の変位から振動数および変動値としての振れ幅を計測する画像データ処理部とから構成したことを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、圧延機に検出手段を取付ける構成を必要とせず、構成が簡単となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る圧延異常検出方法および圧延機の異常検出装置によれば、圧延時に小曲り等の異常を検出して早期に対処し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例に係る圧延機の異常検出装置を示す概略図である。
【図2】実施例に係る圧延機の全体を示す概略図である。
【図3】実施例に係る圧延機で実施した実験例の結果を示すグラフである。
【図4】実施例に係る振動センサにより検出した振動数を示すグラフであって、(a)は小曲りが発生していない状態を示し、(b)は小曲がりが発生している状態を示す。
【図5】別実施例に係る圧延機の異常検出装置を示す概略図である。
【図6】一対の圧延ロールで形成されるカリバ内で被圧延材料が左右方向に振動した際の被圧延材料と圧延ロールとの接触状態の変化を示す説明図である。
【図7】カリバ内で被圧延材料が振動することで材料表面に現われる波状模様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る圧延異常検出方法および圧延機の異常検出装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、実施例に係る圧延機の異常検出装置を示す概略図であり、図2は、圧延機の概略図である。実施例の圧延機10は、被圧延材料12のパスラインを挟んで対向する一対の圧延ロール14,14を回転可能に備えた複数(実施例では3基)のロールスタンド16,18,20を、被圧延材料12の給送方向に直列に配置して構成されたサイジングミルである。なお、各ロールスタンドについて、以下、最上流側を第1ロールスタンド16と指称し、中間を第2ロールスタンド18と指称し、最下流側を第3ロールスタンド20と指称する。第1ロールスタンド16および第3ロールスタンド20では、夫々一対の圧延ロール14,14が、垂直な軸回りに回転するよう配置され、第2ロールスタンド18では、一対の圧延ロール14,14が水平な軸回りに回転するよう配置されており、隣接するロールスタンド16,18,20の各圧延ロール14の回転軸心が90°の角度で互いに直交している。また圧延機10は、各ロールスタンド16,18,20間に案内ガイドを備えていないガイドレス圧延機である。
【0022】
前記3基のロールスタンド16,18,20の圧延ロール14は、共通のモータに減速機を介して夫々接続されて、該モータによって全ての圧延ロール14が同期して回転するよう構成される。なお、圧延ロール径を変更したり、モータの動力を圧延ロール14に伝達する歯車のギヤ比を変更することで、各ロールスタンド16,18,20間での圧延ロール14の回転速度が異なるよう設定される。
【0023】
前記第1〜第3ロールスタンド16,18,20の構成は、圧延ロール14の回転軸心の向きが異なるだけで基本的な構成は同じであるので、後述する異常検出装置28が配設される第2ロールスタンド18について説明する。図1に示す如く、第2ロールスタンド18は、図示しないフレームにおける被圧延材料12のパスラインを挟む上側と下側との夫々の位置に、圧延ロール14の軸方向に延出する回転軸14aの両端が、ベアリング22を内蔵したチョック24,24によって回転自在に支持されている。前記回転軸14aにおける減速機が接続される駆動側とは反対の操作側の部分を支持するチョック24の端部に、ベアリング押さえ26が配設されている。そして、上側(一方)の圧延ロール14を支持する一対のチョック24,24を、図示しない圧下装置によって下側(他方)の圧延ロール14に対して近接・離間移動することで圧下調整を行ない得るよう構成される。
【0024】
前記第2ロールスタンド18に、異常検出装置28が配設されている。この異常検出装置28は、前記ベアリング押さえ26に配設され、該第2ロールスタンド18で発生する振動(被圧延材料12の給送方向に交差する方向への振動)を検出する検出手段としての振動センサ30と、該振動センサ30で検出された振動数や振動速度(変動値)の振動データを基に異常判定を行なう判定手段32と、判定手段32で異常と判断された際に異常発生を報知する報知手段34とを備える。振動センサ30は、一般的な2軸または3軸の加速度センサが用いられ、また報知手段34としては、ランプやスピーカ等が用いられる。
【0025】
ここで、被圧延材料12に小曲りが発生していない正常な圧延状態での第2ロールスタンド18で発生する振動数は、90Hzより低いのに対し、被圧延材料12に小曲りが発生している状態での振動数は、90Hz〜130Hz(特定の振動数)の範囲内であることが、実験により確認されている。
【0026】
すなわち、被圧延材料12の鋼種として構造用鋼のJIS S40Cを用い、実施例の圧延機10で直径24mmの被圧延材料12を、直径22mmまで仕上速度(第3ロールスタンド20から送出される被圧延材料12の速度)が6〜9m/sの条件で圧延する実験を行なった。また実験では、第2ロールスタンド18に振動センサ30を配設し、第1ロールスタンド16と第2ロールスタンド18との間で小曲りが発生したときの振動センサ30で検出した振動数、および第2ロールスタンド18と第3ロールスタンド20との間で小曲りが発生したときの振動センサ30で検出した振動数を図3に示す。なお、図3では、第1ロールスタンド16と第2ロールスタンド18との間で小曲りが発生したときの振動数を白丸で示し、第2ロールスタンド18と第3ロールスタンド20との間で小曲りが発生したときの振動数を黒丸で示している。その結果、第1ロールスタンド16と第2ロールスタンド18との間での小曲り発生時、および第2ロールスタンド18と第3ロールスタンド20との間での小曲り発生時の何れの場合も、振動センサ30で検出した振動数は90Hz〜130Hzの範囲に収まっていることが判明した。
【0027】
図4は、前記実験における圧延中の振動速度の変化を示したものであって、図4(a)は、小曲りが発生していない状態を示し、該小曲りが発生していない状態では、90Hz〜130Hzの範囲で、0.04cm/s以上の振動速度のピーク値が現われていないことが分かる。また、図4(b)は、小曲りが発生している状態を示し、該小曲りが発生している状態では、90Hz〜130Hzの範囲で、0.04cm/s以上の振動速度のピーク値が現われることが分かる。すなわち、振動数が90Hz〜130Hzの範囲に現われる振動について、振動速度のピーク値が0.04cm/s以上の振動を検出するようにすれば、ロールスタンド自体の固有振動か、または小曲りが発生したことによる振動かを判定し得ることが分かる。なお、前記振動速度は、一対の圧延ロール14,14で形成されるカリバ15内で被圧延材料12が給送方向と交差する方向へ変動することにより起因して変化する変動値の一つである。
【0028】
前記知見に基づき、前記判定手段32では、90Hzを下限の振動閾値T1とすると共に130Hzを上限の振動閾値T2とし、両振動閾値T1,T2と、前記振動センサ30で検出された振動数の振動検出値Nとを比較し、振動検出値Nが下限および上限の振動閾値T1,T2の範囲内(90Hz≦N≦130Hz)である場合に小曲りが発生していると判断するよう設定される。なお、判定手段32では、0.04cm/sを速度閾値Sとし、振動センサ30で検出された振動速度の速度検出値Vについて、速度閾値S以上(0.04cm/s≦V)の振動のみを有効として判定するよう設定される。
【0029】
実施例の異常検出装置28では、被圧延材料12を圧延機10で圧延中において、前記第2ロールスタンド18に配設した振動センサ30で検出される振動数の振動検出値Nおよび振動速度の速度検出値Vが判定手段32に入力される。そして、判定手段32では、振動検出値Nと振動閾値T1,T2とを比較し、振動検出値Nが振動閾値T1,T2の範囲外(90Hz>N>130Hz)であれば、小曲がりが発生していないと判断する。これに対し、振動検出値Nが振動閾値T1,T2の範囲内(90Hz≦N≦130Hz)の振動における速度検出値Vのピーク値が速度閾値S以上(0.04cm/s≦V)であれば、小曲がりが発生していると判断する。判定手段32は、小曲りが発生していると判断した場合は、報知手段34を制御して小曲り発生を光や音等によって報知して作業者に覚知させる。
【0030】
前記報知手段34により小曲りの発生を覚知した作業者は、圧延機10の稼働状態において小曲りを解消する対策を行なうことができる。すなわち、小曲り発生時に、圧延ロール14,14の回転速度を低下させたり、第1ロールスタンド16における一対の圧延ロール14,14の圧下量を大きくしてスタンド間張力を大きくすることで解消することが経験により分かっているので、これらの対策を行なうことで、圧延中に小曲りの発生を解消することができる。従って、不良品が大量に発生するのを未然に防ぐことができる。
【0031】
また、実施例の異常検出装置28では、第2ロールスタンド18に振動センサ30を配設するだけの簡単な構成で小曲りの発生を検出し得るので、コストの上昇を抑制し得る。なお、前記振動閾値T1,T2および速度閾値Sは、被圧延材料12の鋼種やサイズ、および仕上速度等の圧延条件によって異なるものであって、これら閾値T1,T2,Sは、圧延条件に応じて最適な値が設定される。
【0032】
〔別実施例について〕
図5は、異常検出装置の別実施例を示す概略図であって、検出手段として高速度カメラ38を用いている。すなわち、別実施例の異常検出装置36は、スタンド間を通過する被圧延材料12の表面を撮影可能な位置に配置した高速度カメラ38と、該カメラ38で撮影した画像が入力される画像入力部40と、該画像入力部40に入力された画像に基づいて振動分析を行ない、振動数および振れ幅(変動値)を計測する画像データ処理部42と、該画像データ処理部42で計測された振動数を振動検出値Nとすると共に振れ幅を振れ幅検出値Uとし、これら検出値N,Uを前記振動閾値T1,T2および後述する振れ幅閾値Wと比較して異常判定を行なう判定手段44と、判定手段44で小曲りが発生したと判断した際に異常発生を報知する報知手段46とを備える。
【0033】
ここで、被圧延材料12に小曲りが発生する原因となるカリバ15内での振動に際し、カリバ15内での圧延ロール14,14に対する被圧延材料12の状態変化について、第2ロールスタンド18の場合で説明する。上下に対向する圧延ロール14,14で形成されるカリバ15内を通過する被圧延材料12では、圧延ロール14,14の対向方向と直交する左右方向に被圧延材料12が振動し、図6(a)に示すように被圧延材料12がカリバ15内で左方に移動した際には、該被圧延材料12における中心を通る垂直線Cより左側の円弧面と圧延ロール14,14との接触面積(斜線部分)が大きくなる。一方、図6(b)に示すように被圧延材料12が右方に移動した際には、該被圧延材料12における垂直線Cより左側の円弧面と圧延ロール14,14との接触面積(斜線部分)が小さくなる。また、加熱圧延される被圧延材料12では、圧延ロール14,14に接触する部分は熱が奪われることで表面温度が低くなり、接触していない部分に比べて暗くなる(黒色となる)。すなわち、被圧延材料12が振動して圧延ロール14,14に対する接触面積が変化する状態では、図7に示す如く、被圧延材料12には明部分12aと暗部分12b(図7の斜線部分)との境界が波状の模様として給材方向に連続して現われる。
【0034】
そこで、別実施例では、被圧延材料12の表面に現われる特徴部分となる波状模様を高速度カメラ38で撮影し、該撮影された画像に基づいて振動分析を行なって振動数および振れ幅を計測することで、異常判定を行なうよう構成されている。別実施例では、高速度カメラ38と画像データ処理部42とから被圧延材料12の振動数および振れ幅を検出する検出手段が構成される。具体的には、振動閾値T1,T2の範囲内の振動を検出した際の波状模様における明部分12aの最小高さ(幅)lと最大高さ(幅)Lとの差である振れ幅(L−l)が、予め設定された振れ幅閾値W以上か否かで小曲りの発生を判定するようになっている。すなわち、カリバ15内での被圧延材料12の給送方向に交差する方向への変動に基づく移動量が大きければ、前記明部分12aと暗部分12bとに関する前記振れ幅(L−l)が大きくなり、逆に移動量が小さければ振れ幅(L−l)は小さくなり、(L−l)<Wで正常、(L−l)≧Wで異常と判断し得る。なお、振れ幅閾値Wについても、前記各閾値T1,T2,Sと同様に、被圧延材料12の鋼種やサイズ、および仕上速度等の圧延条件によって異なるものであって、該振れ幅閾値Wは圧延条件に応じて最適な値が設定される。
【0035】
別実施例の異常検出装置36では、第2ロールスタンド18と第3ロールスタンド20との間を通る被圧延材料12の表面を側方から高速度カメラ38で撮影する。該高速度カメラ38で撮影された画像は、画像入力部40に入力され、該画像入力部40に入力された画像に基づいて画像データ処理部42で振動分析を行なって振動数および振れ幅を計測する。そして、計測された振動数の振動検出値Nおよび振れ幅の振れ幅検出値Uと前記振動閾値値T1,T2および振れ幅閾値Wとを比較して判定手段44で異常か否かを判定する。判定手段44では、振動検出値Nが振動閾値T1,T2の範囲外(90Hz>N>130Hz)であれば、小曲がりが発生していないと判断する。これに対し、振動検出値Nが振動閾値T1,T2の範囲内(90Hz≦N≦130Hz)の振動(特定の振動数の振動)における振れ幅検出値Uが振れ幅閾値W以上(U≧W)であれば、小曲がりが発生していると判断する。そして、判定手段44は、小曲りが発生していると判断した場合は、報知手段46を制御して小曲り発生を光や音等によって報知して作業者に覚知させる。
【0036】
別実施例の異常検出装置36は、前記実施例と同様に、被圧延材料12を圧延中に小曲りの発生を検出することができ、早期に対策を行なうことで不良品が大量発生するのを未然に防ぐことができる。また別実施例の異常検出装置36は、圧延機自体に高速度カメラ38を取付ける必要がないので、圧延機自在の構造を変更する必要はなく、既存の圧延機10に簡単に採用することができる。
【0037】
〔変更例〕
本発明は、実施例の構成に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば以下の構成を採用し得る。
(1) 実施例では、第2ロールスタンドに振動センサを配設したが、第1ロールスタンドに振動センサを配設してもよい。また振動センサの配設位置は、ロールスタンドで発生する振動を検出し得る箇所であれば、ベアリング押えに限らず、その他の箇所であってもよい。
(2) 振動センサは、2軸や3軸の加速度センサに限らず、1軸の加速度センサであってもよく、該センサで検出可能な振動方向を、取付け対象となるロールスタンドでの被圧延材料の振動方向と一致して取付ければよい。また、振動センサは、加速度センサに限らず、振動数を検出可能なセンサであれば公知の各種方式のセンサを採用し得る。
(3) 別実施例では、第2ロールスタンドと第3ロールスタンドとの間を通る被圧延材料を高速度カメラで撮影したが、第1ロールスタンドと第2ロールスタンドとの間を通る被圧延材料を撮影するようにしてもよい。但し、カリバ内での被圧延材料の振動に起因して表面に現われる特徴部分となる波状模様は、一対の圧延ロールの対向方向とは交差する円弧面に現われるので、第1ロールスタンドと第2ロールスタンドとの間を通る被圧延材料を撮影する場合は、被圧延材料の下側部分または上側部分を撮影するように高速度カメラを配置すればよい。
(4) 別実施例では、振動数と振れ幅とを対応する閾値と比較して異常判定を行なうようにしたが、高速度カメラで撮影した画像を基に画像データ処理部で振動分析を行なって振動数および振動速度を計測し、振動数と振動速度とを対応する閾値と比較して異常判定を行なうようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
12 被圧延材料,14 圧延ロール,30 振動センサ(検出手段),32 判定手段
34 報知手段,38 高速度カメラ(検出手段),42 画像データ処理部(検出手段)
44 判定手段,46 報知手段,N 振動検出値(検出された振動数)
V 速度検出値(検出された振動速度,変動値),T1 上限の振動閾値
T2 下限の振動閾値,S 速度閾値,U 振れ幅検出値(検出された振れ幅,変動値)
W 振れ幅閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の圧延ロール(14,14)を回転自在に配設したロールスタンド(16,18,20)を複数直列に備えた圧延機(10)で被圧延材料(12)を圧延した際に、被圧延材料(12)の給送方向に交差する方向への振動を検出し、該検出された振動に基づいて被圧延材料(12)の圧延異常を検出する
ことを特徴とする圧延異常検出方法。
【請求項2】
特定の振動数で検出される前記被圧延材料(12)の振動での被圧延材料(12)の給送方向に交差する方向への変動に基づく変動値が閾値(S,W)より大きい場合に、被圧延材料(12)に小曲りが発生している異常と判断する請求項1記載の圧延異常検出方法。
【請求項3】
一対の圧延ロール(14,14)を備えたロールスタンド(16,18,20)を複数直列に配置して被圧延材料(12)を圧延する圧延機において、
圧延中の被圧延材料(12)の振動を検出する検出手段(30,38,42)と、
前記検出手段(30,38,42)で検出された振動と閾値(S,W,T1,T2)とを比較して異常判定を行なう判定手段(32,44)とを備えた
ことを特徴とする圧延機の異常検出装置。
【請求項4】
前記判定手段(32,44)は、前記検出手段(30,38,42)で検出される特定の振動数の振動での被圧延材料(12)の給送方向に交差する方向への変動に基づく変動値が閾値(S,W)より大きい場合に、被圧延材料(12)に小曲りが発生している異常と判断するよう構成した請求項3記載の圧延機の異常検出装置。
【請求項5】
前記判定手段(32,44)での判定結果が異常と判断された場合に異常を報知する報知手段(34,46)を備えた請求項3または4記載の圧延機の異常検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記被圧延材料(12)の振動数(N)および変動値としての振動速度(V)を検出する振動センサ(30)である請求項3〜5の何れか一項に記載の圧延機の異常検出装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記ロールスタンド(16,18,20)間を通過する被圧延材料(12)の表面を撮影する高速度カメラ(38)と、該高速度カメラ(38)で撮影した画像から被圧延材料(12)の表面に現われる波状の特徴部分の変位から振動数(N)および変動値としての振れ幅(U)を計測する画像データ処理部(42)とから構成した請求項3〜6の何れか一項に記載の圧延機の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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