説明

圧接コネクタ用ケーブルカバー

【課題】本発明は、圧接コネクタ用ケーブルカバーに関し、従来の圧接コネクタ用ケーブルカバーにおいては、ケーブルの直径が太くなるとケーブル用の溝を形成する係止片が破壊されるおそれがあることが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】圧接コネクタにケーブルを圧接するためのケーブルカバーであって、該ケーブルカバーの厚み方向に穿設される溝でその溝の開口部から底部に差込まれて前記厚み方向に直交する短手方向にケーブルを平行に架設させる凹溝を、当該厚み方向において向き合うように両側端面から穿設して隣接させ、厚み方向に直交する長手方向へ千鳥配置となるように設けた圧接コネクタ用ケーブルカバー1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接コネクタにおいて、ケーブルを挟み込みコネクタ本体に圧接するためのケーブルカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧接コネクタのケーブルカバー11は、図6(A)〜(E)に示すように、合成樹脂製の一方向に長い所要厚さの矩形体であって、その片側面にケーブル挟込み用の溝12が短手方向に並設されている。この溝12は、櫛刃状に植設される係止片13によって形成され、その開口端部はケーブル導入用にテーパが形成されていて、溝12にケーブルを入れやすくなっており、底部はケーブルに合わせて半円形状になっている。前記溝12のピッチは図6(C)に示すように、一例としてt=0.8mmで、係止片13は厚さs=0.4mm程度である。
【0003】
図6(E)に示すように、前記係止片13は、短手方向において両端部に所要長さにして形成され、中間部は前記片側面の大部分を占める凹部14となっている。この凹部14には、圧接コネクタ16(図8参照)のコンタクトにおけるケーブル用接触部16aの先端部が挿入する貫通孔15が設けられている。このようなケーブルカバー11に、図7(A)に示すように、ケーブル17(直径0.58mm)を前記短手方向における両端部の溝12,12へ架設した状態となるようにして差し込む。図7(B)に示すように、ケーブル17の余長部分はカットする。そして、治具等を使用して図7(C)に示すように、圧接コネクタ16に前記ケーブルカバー11を上下から挟むようにする。
【0004】
次に、図8に示すように、ケーブルカバー11を上下方向から圧接して、圧接コネクタ16における千鳥配置にされたコンタクト16aにケーブル17を差し込む。一対で向き合うコンタクト16aによって、前記ケーブル17の外皮が破れてケーブル心線17aが前記コンタクト16aに挟持されて電気的に導通する。このような圧接コネクタのケーブルカバーが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−162871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の圧接コネクタ用ケーブルカバーにおいて、例えば、図7(D)に示すように、ケーブル17bが太く(直径0.73mm)なると、挿入するケーブルカバー11の溝12を幅広くしなければならない。そこで、溝12aのピッチを0.8mmのままにして、溝12aの幅を0.4mm→0.53mmにすると、係止片13aの幅が0.4mm→0.27mmとなって細くなる。ケーブル17bを前記溝12aに差し込むと、細くなった係止片13aの強度不足により変形して破壊されてしまうおそれがある。本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバーは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバーの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、圧接コネクタにケーブルを圧接するためのケーブルカバーであって、該ケーブルカバーの厚み方向に穿設される溝でその溝の開口部から底部に差込まれて前記厚み方向に直交する短手方向にケーブルを平行に架設させる凹溝を、当該厚み方向において向き合うように両側端面から穿設して隣接させ、厚み方向に直交する長手方向へ千鳥配置となるように設けたことである。
また、前記厚み方向における凹溝の底部の位置は、隣接する凹溝の底部の位置よりも当該隣接する凹溝の開口部側に入り込んだ位置にあることを含み、
更に、ケーブルカバーの厚み方向に直交する短手方向における両端部の凹溝を形成する両係止片の間には、前記係止片の間に架設されるケーブルによって長手方向に押し広げられる前記係止片を補強する補強部が設けられていることを含み、
また、前記ケーブルカバーの厚み方向に直交する短手方向における凹溝の両端部には、ケーブルの外皮の一部を前記凹溝から逃がす逃げ溝が設けられていること、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧接コネクタ用ケーブルカバーによれば、前記凹溝が厚み方向において両側から千鳥配置で向き合うように穿設されているので、溝のピッチを従来と同様にして、しかも溝幅を広げても、凹溝を形成する係止片の部材強度が確保されるようになり、係止片が破壊されるようなおそれが解消される。ケーブルを前記凹溝に差し込むときに、凹溝が全体で長手方向に撓むようになって、ケーブルのアッセンブリが容易となる。更に、短手方向における両端部に形成された凹溝部の中間に補強部が設けられたので、長手方向に押し広げられる係止片の補強となる。
更に、逃げ溝があることで、ケーブルの潰れによる影響が緩和されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−A】本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバー1の全体斜視図(A),底面図(B)である。
【図1−B】同本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバー1の正面図(A),平面図(B)である。
【図1−C】同本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバー1の側面図(A),A−A線断面図(B),B−B線断面図(C)である。
【図2−A】同本発明の第2実施例に係る圧接コネクタ用ケーブルカバー1aの全体斜視図(A),正面図(B)である。
【図2−B】同ケーブルカバー1aの平面図(A),底面図(B),側面図(C),C−C線断面図(D)である。
【図3】同本発明の圧接コネクタ用ケーブルカバー1の凹溝2にケーブル17bを差し込む様子を示す説明図である。
【図4】同本発明の圧接コネクタ用ケーブルカバー1を、圧接コネクタ4のケーブル圧接接合部に圧入する状態を示す説明図である。
【図5】ケーブルカバー1を装着した状態の圧接コネクタ4の前方から見た斜視図(A)と、同後方から見た状態の斜視図(B)とである。
【図6】従来例に係るケーブルカバー11の斜視図(A),平面図(B),正面図(C),側面図(D),底面図(E)である。
【図7】ケーブルカバー11の溝12にケーブル17を装着する様子を示す説明図(A),ケーブル17の余長部分をカットする説明図(B),ケーブルカバー11を圧接コネクタ16に圧接する様子を説明する説明図(C),直径の太いケーブル17bをケーブルカバー11aに装着する様子を示す説明図(D)である。
【図8】圧接コネクタ16のコンタクト16aに、ケーブルカバー11を圧接して導通を図る様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る圧接コネクタ用ケーブルカバー1は、図1に示すように、当該ケーブルカバー1の厚み方向においてその両側端面から穿設し、凹溝2を従来と同じピッチで形成するものである。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1実施例に係るケーブルカバー1は、図1−A乃至図1−Cに示すように、圧接コネクタ4(図5参照)にケーブル17a,17b(図7参照)を圧接するためのケーブルカバー1であって、該ケーブルカバー1の厚み方向aに穿設される溝でその溝の開口部2aから底部2bに差込まれて前記厚み方向aに直交する短手方向bに前記ケーブル17a,17bを平行に架設させる凹溝2を、当該厚み方向aにおいて向き合うように両側端面3b,3bから穿設して隣接させ、厚み方向aに直交する長手方向cへ千鳥配置となるように設けたものである。
【0012】
また、前記厚み方向aにおける凹溝2の底部2bの位置は、隣接する凹溝2の底部2bの位置よりも当該隣接する凹溝2の開口部2a側に入り込んだ位置にある。これは、ケーブルカバー1の厚み方向aの厚さ寸法を従来と同程度の厚さ寸法に納めるためである。
【0013】
図1−B(B)及び図1−C(C)に示すように、前記ケーブルカバー1の厚み方向aに直交する短手方向bにおける両端部の凹溝を形成する両係止片3,3の間には、前記係止片3,3の間に架設されるケーブル17a.17bによって長手方向に押し広げられる前記係止片3を補強する補強部3aが設けられている。
【0014】
図1−A(A)に示すように、ケーブルカバー1の長手方向の両端部中央のロック片3cは、圧接コネクタ4にケーブル17a,17bを圧接させた後に、このケーブルカバー1を圧接コネクタ側の係止片で固定するためのものである。
【0015】
このようにしてなるケーブルカバー1を使用すれば、図3に示すように、ケーブルカバー1の厚み方向aにおいて、便宜的に上下方向とすると、最初は、上側の凹溝2に、ケーブル17b(太いケーブル、直径0.73mm)を治具などで差し込んでアッセンブリを行う。ケーブル17bが、従来のケーブル17よりも直径が太くなっているので、ケーブルカバー1の係止片3が長手方向に押し広げられる。前記凹溝2が千鳥配置にされていて、係止片3の側壁がその上下で連結部を形成していて強度が確保されている。
【0016】
また、厚み方向における凹溝2の底部2bの位置は、隣接する凹溝の底部の位置よりも当該隣接する凹溝の開口部側に入り込んだ位置にある。よって、ケーブル17bの心線17cの上下位置は、横方向に同じ位置にあるのではなく、上下にずれているので、長手方向の押圧力がケーブルの外皮を潰して吸収される。こうして、従来の係止片13のように林立していて細くなり破壊される、ということは無い。
【0017】
更に、前記補強部3aが設けられいるので、ケーブルカバー1の短手方向bの中央部において、長手方向cに伸ばそうとする力に抵抗して、ケーブルカバー1の長手方向cの変形を抑制する。次に、前記ケーブルカバー1を上下ひっくり返して、下段の凹溝2にケーブル17bを差し込む。
【0018】
そして、図4に示すように、圧接コネクタ4の後部の圧接部において、千鳥配置に配設されていて金属製であって対になっているコンタクト4aに上下方向から圧接する。このコンタクト4aによって前記ケーブル17bの外皮(合成樹脂製)が破れて心線17cが前記コンタクト4aに挟持され導通が図られる。図5(A),(B)は、使用状態であり、ケーブル17bは省略してある。このように、ケーブルカバー1は、従来と同じ圧接ピッチでありながら、太いケーブル17bに対応することができる。
【実施例2】
【0019】
第2実施例に係るケーブルカバー1aは、ケーブルカバー1aの厚み方向aに直交する短手方向bにおける凹溝2の両端部には、ケーブル17bの外皮の一部を前記凹溝2から逃がす逃げ溝2cが設けられているものである。このような、逃げ溝2cがあることで、ケーブル17bの外皮が潰されて変形するときに、その一部がこの逃げ溝2cに入り込み、変形しやすくなり、ケーブル差込アッセンブリの作業がスムーズになるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るケーブルカバーは、コンタクトにケーブルを圧接させる電気コネクタに適用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 ケーブルカバー、 1a ケーブルカバー、
2 凹溝、 2a 開口部、
2b 底部、 2c
3 係止片、 3a 補強部、
3b 端面、 3c ロック片、
4 圧接コネクタ、 4a コンタクト、
11 ケーブルカバー、
12 溝、 12a 溝、
13 係止片、 13a 係止片、
16 圧接コネクタ、 16a コンタクト、
17 ケーブル、 17a ケーブル心線、
17b 太いケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧接コネクタにケーブルを圧接するためのケーブルカバーであって、該ケーブルカバーの厚み方向に穿設される溝でその溝の開口部から底部に差込まれて前記厚み方向に直交する短手方向にケーブルを平行に架設させる凹溝を、当該厚み方向において向き合うように両側端面から穿設して隣接させ、厚み方向に直交する長手方向へ千鳥配置となるように設けたこと、
を特徴とする圧接コネクタ用ケーブルカバー。
【請求項2】
厚み方向における凹溝の底部の位置は、隣接する凹溝の底部の位置よりも当該隣接する凹溝の開口部側に入り込んだ位置にあること、
を特徴とする請求項1に記載の圧接コネクタ用ケーブルカバー。
【請求項3】
ケーブルカバーの厚み方向に直交する短手方向における両端部の凹溝を形成する両係止片の間には、前記係止片の間に架設されるケーブルによって長手方向に押し広げられる前記係止片を補強する補強部が設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の圧接コネクタ用ケーブルカバー。
【請求項4】
ケーブルカバーの厚み方向に直交する短手方向における凹溝の両端部には、ケーブルの外皮の一部を前記凹溝から逃がす逃げ溝が設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の圧接コネクタ用ケーブルカバー。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図1−C】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−104323(P2012−104323A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250824(P2010−250824)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】