説明

圧着装置

【課題】容器のフランジの周囲でキャップを圧着するための圧着装置、即ち、容器に損傷を与えない圧着装置を提供する。
【解決手段】容器2のフランジ20の周囲にキャップ21を圧着するための圧着装置1であって、該装置は、ディスク10を有すると共に、該フランジ20の周囲へのキャップ21の圧着を達成するように、ディスク10と、容器2のフランジ20との間の相対的な運動を生成するための手段を有する。該ディスク10は、互いに隣接する第1100のおよび第2101のディスク部材を有し、第2のディスク部材101は、第1のディスク部材100を超えて外側に広がり、かつ容器2の硬度よりも小さい硬度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の序文部分に依る圧着装置(crimping device、クリンプするデバイス)に関する。
【0002】
圧着装置は、容器を密封するために産業上広く使用されている。例えば、ある種の医薬品の製造のための製造ラインでは、最初に、フランジを有する容器に製品(例えば、液体)が詰め込まれ、次いで、ストッパー(セプタム(septum:中隔))が容器の開口部に挿入される。最後に、容器のフランジを取り巻いて、キャップ(例えば、アルミニウムからなるもの)を圧着(crimping、クリンプ)することにより、容器は該キャップによって密封される。圧着は、円形のディスクを有する圧着装置によって行なわれ、容器が自体の軸の周りを回転させられながら、該圧着装置が、容器のフランジの下でキャップを変形させる。
【0003】
公知の圧着装置は、高い耐久性を示す硬化させた鋼で作られた円形のディスクを有する。該円形のディスクは、フランジの周囲に圧着されることになるキャップにのみ接触する(キャップを変形させる)ように構成される。しかしながら、圧着処理中に、硬化させた鋼で作られた円形のディスクが、どうしても容器に当たってしまうことが起こり得る。容器はしばしばガラス瓶であるため、円形のディスクがガラス瓶にそのように当たることにより、傷がガラス瓶に形成されることとなり得る。これらの傷は、ガラス瓶を弱くさせ得るかまたは損傷(ダメージ)を与えることさえあり得、時にはガラス瓶を壊すことさえあり得る。或いは、ガラス瓶にひびまたは亀裂が生じることがあり、その結果、瓶の内容物がそれらのひびまたは亀裂から漏れることがあり得る。これらのことが起こると、そのいずれもが、瓶の内容物の汚染を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、本発明の目的は、上述した欠点を持たない、容器のフランジの周囲でキャップを圧着するための圧着装置、即ち、容器に損傷を与えない圧着装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴によって特徴付けられる圧着装置によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項の特徴から明らかとなる。
【0006】
とりわけて言うと、本発明による、容器のフランジの周囲にキャップを圧着するための圧着装置は、ディスクを有すると共に、該フランジの周囲へのキャップの圧着をもたらすように、ディスクと容器のフランジとの間の相対的な運動を生成するための手段を有する。圧着中に、第1のディスク部材が該キャップに接触して、容器のフランジの周囲にキャップを圧着するようになっていながらも、第2のディスク部材がキャップに接触しないように、第1のおよび第2のディスク部材が配置されている。
【0007】
それゆえ、仮に起こるとしても、第2のディスク部材のみが、圧着中に容器に当たり得る。従って、第2のディスク部材は、第1のディスク部材が容器に当たることを効果的に防止し、同時に、容器のフランジの周囲へのキャップの圧着は、キャップに接触している第1のディスク部材によって確実に行なわれる。第1のディスク部材は、目下のところ、公知の圧着装置と同様に、硬化させた鋼で作られても良く、それゆえ、高い耐久性を示し得ると同時に、容器(例、ガラス瓶)へのダメージが防止される。
【0008】
本発明の圧着装置の更なる実施形態では、第1のおよび第2のディスク部材は、共通の回転軸を有する円形のディスク部材であり、第2のディスク部材の直径が、第1のディスク部材の直径よりも大きい。製造ラインでの円形の相対的な運動は、構造上の観点から実現および実施が比較的容易であるため、円形のディスク部材の使用は、円形の開口部および円形のフランジを有する容器のフランジの周囲でのキャップの圧着のためには、簡便なやり方である。
【0009】
本発明の圧着装置の更なる実施形態では、ディスクと容器のフランジとの間の相対的な運動を生成するための手段は、該ディスクがキャップと接触しながら、圧着されるべきキャップを保持する容器がその回転軸の周りを回転するように設計される。圧着が容器の全周囲で達成され、容器はそのフランジの全周囲で密封される。これもまた、構造上の観点から、製造ラインでの相対的な運動を実施する簡便なやり方を構成する。
【0010】
本発明の圧着装置のいっそう更なる実施形態では、第1のディスク部材がピンを有し、かつ、第2のディスク部材が穴を有する。第1のディスク部材のピンは、第2のディスク部材の穴に圧入(プレスフィット)される。これは、圧着装置のディスクを形成するために、第1および第2のディスク部材を互いに対してしっかりと取り付ける簡便なやり方である。
【0011】
本発明による圧着装置の更なる実施形態は、第2のディスク部材を第1のディスク部材に固定するネジを有する。これらのネジによって、第1のおよび第2のディスク部材が一緒に取り付けられることが可能となり、かつ、第2のディスク部材が第1のディスク部材の全周囲で第1のディスク部材を超えて半径方向に外側に広がり、それによって容器へのダメージを回避することを確実にすることが可能となる。いずれかのディスク部材の交換もまた、ねじを外して第2のディスク部材を第1のディスク部材から外すことによる、単純なやり方で行なうことができる。
【0012】
本発明による圧着装置の別の更なる実施形態では、第2のディスク部材は、0.1mmから0.4mmまでだけ、とりわけ、約0.2mmだけ、第1のディスク部材を超えて半径方向に外側に広がる。この距離は、第1のディスク部材が容器に当たらないことを確実にするために好適なものである。
【0013】
更に、本発明による圧着装置の更なる実施形態では、第2のディスク部材は、1mmから10mmまでの範囲内の、とりわけ、約2mmの厚さを有する。第2のディスク部材の特定した厚さは、容器に当たることによって引き起こされる第2のディスク部材の変形を防止するために好適である。
【0014】
本発明の圧着装置の一層更なる実施形態では、第2のディスク部材は、ERTYLYTE(登録商標) PETで作られる。この素材は、頑丈かつ耐久性があり、また、(ガラス)容器にダメージを与えない。第2のディスク部材のための好適な代替的な素材は、容易に滅菌され得るPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)である。
【0015】
本発明の圧着装置の更なる有利な特徴は、図面による補助と共に、具体的な実施形態の以下の詳細な説明によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、先行技術の圧着装置、および容器を示している。
【図2】図2は、本発明の圧着装置の一つの実施形態、および容器を示している。
【図3】図3は、圧着前のキャップを有する容器の一つの実施形態を示している。
【図4】図4は、圧着中の図3の容器および図2の圧着装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、先行技術の圧着装置P1を示している。圧着装置P1は、高い耐久性を示す硬化させた鋼で作られたディスクP10を有する。容器2のフランジ20の周囲でキャップ21を圧着する際のディスクP10が示されている。容器2は、ディスクP10の隣に位置しており、ディスクP10は、フランジ20の下に配置されている。次いで容器2が自体の軸の周りを回転させられ、ディスクP10が容器2のフランジ20に対して内側にキャップ21を圧着することにより容器2を密封する。図1に示すように、ディスクP10は、キャップ21にのみ接触するように配置される。しかしながら、圧着処理中にディスクP10が容器2に当たることが起こり得る。容器2はしばしばガラス瓶であるため、ディスクP10がガラス瓶に対してそのように当たることにより、傷がガラス瓶に形成されることとなり得る。これらの傷は、ガラス瓶を弱くさせ得るかまたはダメージを与えることさえあり得、時にはガラス瓶を壊すことさえあり得る。
【0018】
図2は、本発明の圧着装置1の一つの実施形態を示している。圧着装置1は、ディスク10を有する。ディスク10は、第1のディスク部材100と第2のディスク部材101とを有する。第2のディスク部材101は、第1のディスク部材100に隣接し、第1のディスク部材を超えて外側に広がっている。図2には、容器2もまた示されており、該容器は、フランジ20とキャップ21(例えば、アルミニウムからなる)とを有し、該キャップは、容器2の開口部をカバーしている。キャップ21は、フランジ20の周囲に圧着(クリンプ)されている。第1のディスク部材100と第2のディスク部材101は、共通の回転軸11を有する円形のディスク部材であり、第2のディスク部材101の直径は、第1のディスク部材100の直径よりも大きい。第2のディスク部材101は、0.1mmから0.4mmまでだけ、具体的には約0.2mmだけ、第1のディスク部材100を超えて半径方向に外側に広がっている。第2のディスク部材101は、1mmから10mmまでの範囲内、具体的には、約2mmの厚さを有し、ERTYLYTE(登録商標) PETで作られ、それは、例えば、Angst+Pfister AG,チューリッヒ、スイス国から入手可能であり、または、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から作られる。圧着装置1は、ディスク10と容器2のフランジ20との間の相対的な運動(図4の矢印4を参照)を生成するための手段をも有しており、第1のディスク部材100がキャップ21と接触しながら、キャップ21を保持する容器が、該容器の回転軸に関して回転させられるようになっている。キャップ21を変形させることによって、該キャップ21をフランジ20に対して内側に圧着させるように、容器2が、その回転軸の周りを全周囲回転させられる。ディスク10は、キャップ21に接触する(キャップを変形させる)だけとなるように配置される。しかしながら、圧着処理中に、ディスク10がどうしても容器2に当たることが起こり得る。そのような場合には、第1のディスク部材100を超えて半径方向に外側に広がる第2のディスク部材101のみが容器2に当たる。第1のディスク部材100は、容器2に全く当たらない。第2のディスク部材101は、容器2の硬度よりも小さい硬度を有するため、第2のディスク部材101が容器2に当たるときには、容器2への損傷(ダメージ)は生じない。
【0019】
圧着装置1は、第2のディスク部材101を第1のディスク部材100に固定するネジ12を有しても良く、或いは代替的には、第1のディスク部材100がピン13を有し、かつ、第2のディスク部材101が穴を有し、第1のディスク部材100のピン13が、第2のディスク部材101の穴に圧入される。
【0020】
図3は、圧着(クリンピング)前の、フランジ20とキャップ21とを有する容器2の一つの実施形態を示している。ストッパー(セプタム)23、および、キャップの一部を形成する保護用のプラスチックのボタン22もまた示されている。製造中に、容器2に製品が詰め込まれた時点で、容器2を閉じるために、ストッパー23が容器2の開口部内に挿入される。続いて、キャップ21と保護用のボタン22とが、ストッパー23と容器2のフランジ20の上に配置される。キャップ21は、今や、圧着の準備ができている。保護用のボタン22は、ストッパー23のダメージ(損傷)を防ぎ、かつ、容器がまだ開かれていないことを示す。
【0021】
図4は、図3の容器2および図2の圧着装置1の断面を示している。圧着装置1は、ディスク10を有し、該ディスクは、第1のディスク部材100と、第2のディスク部材101とを有する。容器2は、そのフランジ20と、キャップ21と、保護用のボタン22と、ストッパー(セプタム)23と共に示されている。加えて、保持具(リテーナー)3が、圧着中に容器2を所定の位置に保持する。図4は、キャップ21が圧着されている容器2を右手側に示しており、一方、左手側では、キャップ21はまだ圧着されていない。
【0022】
本発明による圧着装置のその他の代替的な特徴が考えられる。この文脈において明示的に述べるものとしては以下のものである:
・第1のディスク部材に第2のディスク部材を取り付けることの他の可能性、例えば、第2のディスク部材を第1のディスク部材に接着剤で付けること。
・容器を所定の位置に固定して保持し、圧着装置のディスクを容器の周りをめぐって回転させてキャップの圧着を行うこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(2)のフランジ(20)の周囲にキャップ(21)を圧着するための圧着装置(1)であって、該圧着装置は、
ディスク(10)を有すると共に、
該フランジ(20)の周囲へのキャップ(21)の圧着をもたらすように、ディスク(10)と容器(2)のフランジ(20)との間の相対的な運動を生成するための手段を有し、
該ディスク(10)は、第1(100)のおよび第2(101)のディスク部材を有し、これらは互いに隣接しており、第2のディスク部材(101)は、第1のディスク部材(100)を超えて外側に広がり、かつ、容器(2)の硬度よりも小さい硬度を有し、かつ、
圧着中に、第1のディスク部材(100)が該キャップ(21)に接触して、容器(2)のフランジ(20)の周囲にキャップ(21)を圧着するようになっていながらも、第2のディスク部材(101)がキャップ(21)に接触しないように、第1(100)のおよび第2(101)のディスク部材が配置されている、
前記圧着装置。
【請求項2】
第1(100)のおよび第2(101)のディスク部材が、共通の回転軸を有する円形のディスク部材であり、第2のディスク部材(101)の直径が、第1のディスク部材(100)の直径よりも大きい、請求項1に記載の圧着装置(1)。
【請求項3】
該ディスク(10)と容器(2)のフランジ(20)との間の相対的な運動を生成するための手段は、
該ディスク(10)がキャップ(21)と接触しながら、圧着されるべきキャップ(21)を保持する容器(2)がその回転軸の周りを回転するように、設計されている、請求項1または2に記載の圧着装置(1)。
【請求項4】
第1のディスク部材(100)がピンを有し、かつ、第2のディスク部材(101)が穴を有し、かつ、
第1のディスク部材(100)のピンが、第2のディスク部材(101)の穴に圧入されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧着装置(1)。
【請求項5】
第2のディスク(101)部材を第1のディスク部材(100)に固定するネジを更に有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧着装置(1)。
【請求項6】
第2のディスク部材(101)が、0.1mmから0.4mmまでだけ、とりわけ、約0.2mmだけ、第1のディスク部材(100)を超えて半径方向に外側に広がっている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧着装置(1)。
【請求項7】
第2のディスク部材(101)が、1mmから10mmまでの範囲内の、とりわけ、約2mmの厚さを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧着装置(1)。
【請求項8】
第2のディスク部材(101)が、ERTYLYTE(登録商標) PET、または、PEEKで作られている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧着装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−196710(P2009−196710A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−24926(P2009−24926)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】