説明

圧縮伸延脊椎固定システム

ラチェット機構を有するねじロッド構造を含む、圧縮伸延脊椎固定システム、および圧縮伸延脊椎固定を行う方法を提供する。ねじロッド構造の骨ねじは、ねじロッド構造のロッド上のラチェット歯に係合する歯止めを有しうる。骨ねじをロッドの長さに沿って徐々に動かすことで、伸延力または圧縮力を印加することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本技術は、脊椎の外科的処置用の移植片、および該移植片を使用して脊椎を安定化させるための方法に関する。より具体的には、本技術は、ねじロッド構造を含む圧縮伸延脊椎固定システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
前側、後ろ側、および側方の脊椎固定は、変性疾患、外傷、変形および腫瘍過程の処置に一般的に使用される。最新技術は、剛性の骨ねじを隣接する脊椎分節の後弓、椎弓根または椎体に配置することを含む。次に、脊椎を安定化させ、漸進的な骨固定を可能にするために、これらの骨ねじを剛性金属ロッドによって互いに接続する。そのような骨ねじロッド構造は、ワイヤリングなどの代替固定技術に比べて優れているそれらの生体力学的安定性、および脊椎の3本柱の固定によって与えられる利点が理由で注目を集めた。そのようなシステムは、より複雑な構造配置およびねじ接続を可能にする多軸ねじ頭技術の出現によって、近年さらに汎用的になった。現行のねじロッドシステムは、脊椎の運動分節を中立位置に固定するために理想的であるが、特定の状況では、脊椎のバランスを改善し、脊椎固定を支援するために、圧縮力または伸延力の印加が必要になる。
【0003】
現行のねじベースの脊椎固定システムは、椎弓根、環椎外側塊、椎弓板および/または椎体などの各椎骨レベルの骨部分に係留されるねじを接続するために、平滑で円柱状の金属またはセラミックロッドを使用する。現在知られているねじベースの脊椎固定システムの一例を図1に示す。図1に示すように、骨ねじ10はロッド12に接続される。ロッド12は円柱状であり、平滑な外面を有する。骨ねじ10は、図示するように角度が変化する頭を有しうるねじ頭14を有するか、または角度が固定されたねじであり得る。骨ねじ10は、ねじ頭14に取り付けられたねじ軸16を含む。骨ねじ10はまた、ねじ頭14に取り付けられた止めねじ18を含む。骨ねじを脊椎の所望の骨部分に取り付け、ロッド12を骨ねじに摺動させた後、止めねじ18を締め付けて骨ねじ10をロッド12上の所望の場所に固着させることによって、骨ねじ10をロッド12に接続することができる。
【0004】
この器具構成を配置した後、通常、脊椎外科医は、脊椎矢状断バランスを改善すべく脊柱前弯を改善するために、または脊椎固定を改善すべく椎体間移植片に加圧するために、隣接するねじ間に手動で圧縮力を印加する。あるいは、外科医は、椎間板切除もしくは椎体間移植片配置のために円板空間へのアクセスを改善するか、または変形の矯正に影響を与えるために、隣接するねじ間に伸延力を印加しようとすることがある。平滑で円柱状であるロッド設計に起因して、現行の脊椎固定システムは、圧縮力または伸延力の維持を行わないかまたはこれを可能にしない。代わりに、1人の外科医は、2つのねじ間で手動の圧縮を行わなければならず、一方、第2の外科医は、各固定地点においてロッドを定位置に締め付けようとする。この技術は煩雑でかつ技術的に困難である。
【発明の概要】
【0005】
本技術は、ラチェット機構を含むねじロッド構造を包含する圧縮伸延脊椎固定システムに関する。
【0006】
一局面では、少なくとも1つの骨ねじと、少なくとも1つの骨ねじに接続された歯付きロッドとを含む、圧縮伸延脊椎固定システムが提供される。少なくとも1つの骨ねじは、ねじ軸と、ねじ頭と、止めねじと、歯止めとを含みうる。歯付きロッドは、少なくとも1つの骨ねじの歯止めを受け止める複数のラチェット歯を有しうる。
【0007】
別の局面では、第1の骨ねじを患者の脊椎の第1の骨部分に取り付ける段階、および歯付きロッドを第1の骨ねじのねじ頭に配置する段階を含む、圧縮伸延脊椎固定を行う方法が提供される。第1の骨ねじは、第1の骨ねじを第1の骨部分に取り付けるねじ軸と、ねじ頭と、止めねじと、歯止めとを含みうる。歯付きロッドはラチェット歯を含みうる。本方法はまた、第1の骨ねじの歯止めを歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向ける段階、および骨ねじを歯付きロッドの長さに沿って徐々に動かす段階を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
説明および記述の目的で具体例を選択した。本明細書の一部を形成する添付図面にそれらを示す。
【0009】
【図1】先行技術のねじロッド構造の一例を示す。
【図2】本技術のねじロッド構造の一例を示す。
【図3】図2の例の分解図を示す。
【図4】第1の向きにある、図2の例のねじを示す。
【図5】第2のまたは逆の向きにある、図2の例のねじを示す。
【図6】ラチェットおよび歯止め機構を示す拡大領域を伴う断面図において図2の例のねじを示す。
【図7】第1の向きにある、本技術のねじロッド構造の第2の例を示す。
【図8】第2のまたは逆の向きにある、図7の例のねじを示す。
【図9】第1の向きにある、本技術のねじロッド構造の第3の例を示す。
【図10】第2のまたは逆の向きにある、図9の例のねじを示す。
【図11】図9の例のねじの分解図を示す。
【図12】第1の向きにある、本技術のねじロッド構造の第4の例を示す。
【図13】第2のまたは逆の向きにある、図12の例のねじを示す。
【図14】第1の向きにある、本技術のねじロッド構造の第5の例を示す。
【図15】図14の例のねじの分解図を示す。
【図16】図14の例のねじの断面図を示す。
【図17】第1の向きにある、本技術のねじロッド構造の第6の例を示す。
【図18】図17の例のねじの分解図を示す。
【図19】三角形のラチェット歯がロッドに切り込まれている、本技術のロッド上の歯の一例の断面図を示す。
【図20】鋸歯状のラチェット歯がロッドに切り込まれている、本技術のロッド上の歯の第2の例の断面図を示す。
【図21】間隔の空いたラチェット歯がロッドに切り込まれている、本技術のロッド上の歯の第3の例の断面図を示す。
【図22】正方形のラチェット歯がロッドに切り込まれている、本技術のロッド上の歯の第4の例の断面図を示す。
【図23】螺旋コイルがロッドに焼結、溶接、はんだ付け、接着、または他のやり方で取り付けられている、本技術のロッド上の歯の第5の例の断面図を示す。
【図24】螺旋状のねじ山がロッドに切り込まれている、本技術のロッド上の歯の第6の例の断面図を示す。
【図25】ラチェット歯がロッドにわたってまっすぐ切り込まれている、本技術のロッドの一例の斜視図を示す。
【図26】図25に示すロッドの例の断面図を示す。
【図27】ラチェット歯がロッド上で半径方向に切り込まれている、本技術のロッドの第2の例の斜視図を示す。
【図28】図27に示すロッドの例の断面図を示す。
【図29】本技術のねじロッド構造の第7の例を示す。
【図30】図29に示すねじロッド構造の断面図を示す。
【図31】本技術のねじロッド構造の第8の例を示す。
【図32】図31に示すねじロッド構造の分解図を示す。
【図33】図31に示すねじロッド構造の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本技術は、ねじロッド構造を含む圧縮伸延脊椎固定システムに関する。より具体的には、本技術は、圧縮力および伸延力を脊柱に課すためのラチェットおよび歯止め機構を包含する、ロッドおよびねじを提供する。好ましくは、本明細書に記載の圧縮伸延脊椎固定システムは、1人の外科医が、隣接する脊椎レベル間に所望の圧縮力または伸延力を途切れなく効率的に印加できるようにすることができる。少なくともいくつかの例では既存の骨ねじロッド技術に一体化されうる本技術の圧縮伸延脊椎固定システムにおいて提供される独自のラチェット機構を使用することによって、局所的な力を分節ごとに、または所与の脊椎構造全体にわたって維持して、伝統的なねじロッドシステムに固有の煩雑な圧縮/伸延技術を回避することができる。局所的な力の維持の改善と、適用および使用の容易さとを組み合わせることで、本技術の圧縮伸延脊椎固定システムは、複雑な脊椎疾患の処置における脊椎外科医の医療設備を強化することができる。
【0011】
本技術の圧縮伸延脊椎固定システムを、添付図面を参照して以下の例においてさらに詳細に説明するが、これらは単に例示であることが意図される。図面を参照すると、各図を通じて同様の数字は同様の部分を示す。本技術の圧縮伸延脊椎固定システムは、本技術の歯付きロッドと、本技術の少なくとも1つの骨ねじとを含む。いくつかの例では、本技術の圧縮伸延脊椎固定システムは、本技術の歯付きロッドと、本技術の少なくとも1つの骨ねじと、従来の少なくとも1つの骨ねじとを含む。他の例では、本技術の圧縮伸延脊椎固定システムは、本技術の歯付きロッドと、本技術の第1の骨ねじと、本技術の第2の骨ねじとを含む。
【0012】
本明細書においておよび以下の特許請求の範囲を通じて使用する「骨ねじを歯付きロッドの長さに沿って徐々に動かす」の意味は、骨ねじの運動、ロッドの運動、または骨ねじおよびロッドの両方の運動によって、骨ねじの位置がその当初の位置に対して歯付きロッドの長さに沿って変化することを意味する。本明細書においておよび以下の特許請求の範囲を通じて使用する「a」、「an」および「the」の意味は、文脈上別途明確な指示がない限り、複数への言及を含む。また、本明細書においておよび以下の特許請求の範囲を通じて使用する「in」の意味は、文脈上別途明確な指示がない限り、「in」および「on」を含む。
【0013】
本技術の圧縮伸延脊椎固定システムのロッドは、ラチェット歯を含み、ラチェット歯は、ロッドの長さの一部に沿って、好ましくはロッドの長さ全体または実質的に長さ全体に沿って等間隔であることが好ましい。等間隔のラチェット歯をロッドの長さに沿って配置することで、ロッドを手術室内で所望のように切断および起伏をつけることが可能になりうる。いくつかの例では、例えば通常は2つ、3つおよび4つの椎骨レベルにわたる短いセグメント構造用に、予め切断されかつ予め起伏がつけられたロッドを提供することができる。ラチェット歯は、ロッドの外周全体、ロッドの外周の半分、ロッドの外周の3分の1、ロッドの外周の4分の1、またはロッドの外周の任意の他の好適な部分を含むがそれに限定されない、ロッドの外面または外周の少なくとも一部を覆うことができる。ラチェット歯は、歯付きロッドにおける陥没として、または歯付きロッドから拡張した突起として形成することができる。本技術の歯付きロッドは、チタン、チタン合金、ステンレス鋼もしくはコバルトクロムなどの生体適合性金属; PEEKなどの生体適合性ポリマー; 炭素繊維などの複合材料; または別の生体適合性金属もしくは生体適合性ポリマーでコーティングされた生体適合性金属を含むがそれに限定されない、任意の好適な材料から作製することができる。少なくともいくつかの例では、ラチェット歯の高さを含まないロッドの直径である歯付きロッドの内径は、公知の平滑なロッドで現在使用されている直径であって、現在知られているロッドと同一の機械強度を与えることができる直径と同一でありうる。
【0014】
本技術の骨ねじも、チタン、チタン合金、ステンレス鋼もしくはコバルトクロムなどの生体適合性金属; PEEKなどの生体適合性ポリマー; 炭素繊維などの複合材料; またはこれらの組み合わせを含むがそれに限定されない、任意の好適な材料から作製することができる。本技術の骨ねじは、歯付きロッド上の歯に係合してラチェット機構を提供することができる歯止めを含む。歯止めは、歯付きロッド上のある場所において少なくとも1つのラチェット歯に係合し、ロッド上で、骨ねじが一方向に徐々に動くことで、所望の圧縮力または伸延力のいずれかを維持することを可能にする。歯止めは、いくつかの例では可撓性であり、一方、他の例では剛性である。本明細書に記載の例の一部は可逆的な歯止めを含み、すなわち、歯止めを調節することで、歯付きロッドの長さに沿った、歯止めの向きに応じたいずれかの方向で徐々に動かすことを可能にする。しかし、他の例では、不可逆的で、単一方向にのみ徐々に動くようにする歯止めも提供される。本技術の骨ねじは、骨ねじを脊椎の所望の骨部分に取り付けるために使用可能な、ねじ軸などの軸も含みうる。本技術の骨ねじは、ねじ頭および止めねじをさらに含みうる。
【0015】
図2〜図6は、ラチェット歯104を有する歯付きロッド102と、本技術の第1の骨ねじ106と、本技術の第2の骨ねじ108とを含む、本技術のねじロッド構造100の一例を示す。代替例では、骨ねじ106または骨ねじ108のいずれかが、図1に示す骨ねじ10などの従来の骨ねじで代替される可能性がある。図2の図示例では、各骨ねじはねじ軸110と、ねじ頭112と、止めねじ114と、歯止め116とを含む。各骨ねじの止めねじ114は、歯止め116を止めねじ114上に保持する保持リング118を含む。歯止め116は可撓性であることが好ましく、ベンド120およびブレード122を含む。
【0016】
歯付きロッド102は摺動可能に第1の骨ねじ106および第2の骨ねじ108に接続される。各骨ねじの各歯止め116のブレード122は、歯付きロッド102上のラチェット歯104の少なくとも1つの歯に係合する。第1の骨ねじ106は、歯付きロッド102に沿って、矢印Aに示す方向に徐々に動くことが可能であるが、第1の骨ねじ106のブレード122と歯付きロッド102のラチェット歯104との係合は、第1の骨ねじ106の反対方向の運動を妨げうる。同様に、第2の骨ねじ108は、歯付きロッド102に沿って、矢印Bに示す方向に徐々に動くことが可能であるが、第2の骨ねじ108のブレード122と歯付きロッド102のラチェット歯104との係合は、第2の骨ねじ108の反対方向の運動を妨げうる。
【0017】
図3は、第1の骨ねじ106の分解図を示し、この図は歯止め116の止めねじ114への取り付けをさらに示す。図示するように、保持リング118は円形で可撓性の材料であり、保持リング118の直径の拡張を可能にする切断部124を有する。止めねじ114は、保持リング溝130を含む円形ボス128と、ねじ部132とを有する。歯止め116は、止めねじ114上の円形ボス128と連絡する円形空洞126を有する。歯止め116が円形ボス128の上を摺動し、保持リング118が保持リング溝130に捕捉されることで、歯止め116の回転を制約することなく歯止め116が止めねじ114に取り付けられる。
【0018】
使用時に、椎骨の後弓、椎弓根または椎体などの患者の脊椎の骨部分に第1の骨ねじ106を挿入することができる。次に、歯付きロッド102をねじ頭112内の陥凹134に配置することができる。歯止め116が歯付きロッド102のラチェット歯104と効果的に係合するまで、止めねじ114をねじ頭112に螺入することができる。次に、歯止め116の向きに依存する伸延力または圧縮力を使用して、第1の骨ねじ106、したがってそれが取り付けられている椎骨を歯付きロッド102に対して摺動させることができる。
【0019】
図4は、矢印Cの方向の歯止め116の回転が、図5に示す向きに変化することで第1の骨ねじ106の移動方向を逆転させることが可能であることを示す。歯止め116は、図4に示す第1の位置から、第1の位置より約180°にある図5に示す第2の位置まで回動可能である。歯止め116は、歯止め116の不用意な回転を防止することができるロックボス136を含みうる。ロックボス136がねじ頭112を離れるのに十分なだけ止めねじ114が緩められた場合に、ロックボス136は歯止め116の回転を可能にしうる。第1の骨ねじ106が歯付きロッド102に沿って所望の場所に移動した後、止めねじ114を締め付けてねじ頭112を歯付きロッド102に強固に固定することができる。図6は、先に記載の第1の骨ねじ106の要素をさらに示す拡大図を伴う、第1の骨ねじ106の断面図を示す。
【0020】
図7および図8は、本技術のねじロッド構造の第2の例を示す。図7および図8に示すねじロッド構造200は、ラチェット歯204を有する歯付きロッド202と、骨ねじ206とを含む。骨ねじ206は、ねじ軸208と、ねじ頭210と、止めねじ212と、歯止め214とを有する。歯止め214は、ピンなどのファスナ216によってねじ頭210の側面に回動可能に装着されうる。歯止め214は、ベンド218およびブレード220を含む。歯止め214のブレード220は、歯付きロッド202のラチェット歯204に係合する。図7に示す第1の位置から、第1の位置より約180°にある図8に示す第2の位置への、歯止め214の回転により、歯付きロッド202の長さに沿った骨ねじ206の移動方向を逆転させることができる。
【0021】
図9〜図11は、本技術のねじロッド構造の第3の例を示し、図11は分解図を示す。図9〜図11に示すねじロッド構造300は、ラチェット歯304を有する歯付きロッド302と、骨ねじ306とを含む。骨ねじ306は、ねじ軸308と、歯止め受け止め溝318を有するねじ頭310と、止めねじ312と、歯止め314とを有する。歯止め314は、ねじ頭310の歯止め受け止め溝318によって受け止められることでねじ頭310に接続されうる、クリップ式の歯止めである。歯止め318は切断部316を含むことができ、切断部は、歯止め314の直径の拡張を可能にすることで、ねじ頭310の歯止め受け止め溝318に歯止め314を設置することを容易にする。歯止め314は、ばね部320およびブレード322を含みうる。ブレード322は歯付きロッド302のラチェット歯304に係合する。ばね部320は、歯止め314に可撓性を与えることで、骨ねじ306が歯付きロッド302の長さに沿って徐々に動く際にブレード322が歯付きロッド302のラチェット歯304の上を摺動することを可能にしうる。図9に示す第1の位置から、第1の位置より約180°にある図10に示す第2の位置への、歯止め314の回転により、歯付きロッド302の長さに沿った骨ねじ306の移動方向を逆転させることができる。
【0022】
図12および図13は、本技術のねじロッド構造の第4の例を示す。図示されるねじロッド構造400は、ラチェット歯404を有する歯付きロッド402と、骨ねじ406とを含む。骨ねじ406は、ねじ軸408と、ねじ頭410と、止めねじ412と、摺動歯止め414とを有する。摺動歯止め414は、ピンなどのファスナ416によってねじ頭410に摺動可能に取り付けられうる。歯止め414は、ファスナ溝420も含むことができ、ファスナは、ファスナ溝を通って伸びることで、歯止め414をねじ頭410に摺動可能に取り付けることができる。ねじ頭410は、ねじ頭310の側面に歯止め受け止め溝418を含みうるものであり、摺動歯止め414は、摺動可能に歯止め受け止め溝418に受け止められうる。歯止めは、一方の第1の端部に第1のブレード422を、反対の端部に第2のブレード422(図示せず)をさらに含みうる。第1のブレード422は、摺動可能な歯止めが図12に示す第1の位置にある際に歯付きロッド402のラチェット歯404に係合することで、骨ねじが歯付きロッドの長さに沿って一方向に徐々に動くことを可能にする。第1のブレード422の鏡像でありうる第2のブレード422は、摺動可能な歯止めが図13に示す第2の位置にある際に歯付きロッド402のラチェット歯404に係合することで、骨ねじが歯付きロッドの長さに沿って反対方向に徐々に動くことを可能にする。
【0023】
図14〜図16は、本技術のねじロッド構造の第5の例を示し、図15は分解図であり、図16は断面図である。ねじロッド構造500は、ラチェット歯504を有する歯付きロッド502と、骨ねじ506とを含む。骨ねじ506は、ねじ軸508と、ねじ頭510と、止めねじ512と、歯止め514とを有する。歯止め514は、歯付きロッド502のラチェット歯504に係合する止めねじ512の下面に隆起したボスでありうる。板ばね516は、ねじ頭510のロッド収容溝518の下に位置決めされうるものであり、歯付きロッド502に上向きの力を与えることで、ラチェット歯504と歯止め514との係合を確実にすることができる。水平力が矢印Dの方向で及ぼされる場合、板ばね516は妨げにならない方向に撓み、歯付きロッド502の長さに沿って骨ねじ506が徐々に動くことを可能にすることができる。
【0024】
図17および図18は、本技術のねじロッド構造の第6の例を示し、図18は分解図である。ねじロッド構造600は、ラチェット歯604を有する歯付きロッド602と、骨ねじ606とを含む。骨ねじ606は、ねじ軸608と、ねじ頭610と、止めねじ612と、歯止め614とを有する。歯止め614は、陥凹618を有するフレーム616に取り付けられている。陥凹618がねじ頭610に付けられ、これはねじ頭610を下降して歯付きロッド602と位置合わせされうるものであり、これにより歯止め614が歯付きロッド602のラチェット歯602に係合する。歯止め614は、ピンなどのファスナ620によってフレーム616に取り付けられてもよく、ファスナは、空洞624を通ってフレーム618中を伸びて、歯止め616の歯止め穴626へのファスナ620の圧入によって歯止め614に強固に取り付けられうる。図示するように、ファスナ620は六角形のヘッド622を有しうる。ばね628は、ばねファスナ630によってフレーム618に取り付けてもよく、内向きの力を歯止め614に及ぼすことで歯止め614とラチェット歯602との係合を維持することができる。ラチェット歯602から歯止め614を解放するために、操作者はファスナ618の六角形のヘッド622を時計回りに回転させることができる。
【0025】
図19〜図24は、本技術の歯付きロッド700上に形成されうるラチェット歯の例を示す。ラチェット歯は、任意の好適な様式、例えば切断、プレス、転造、鍛造、成形または他のやり方で、歯付きロッド700上に形成されうる。一例では、ラチェット歯を有する歯付きロッド700を、MIM(金属射出成形)などの成形操作で製作することができる。他の例では、ウォータージェット切断、EDM(放電加工)、エッチングまたはECM(電解加工)によって、ラチェット歯を形成することができる。図19は、三角形の歯702を有する歯付きロッド700を示す。図20は、鋸状の歯704を有する歯付きロッド700を示す。図21は、千鳥配列パターンの三角形の歯706を有する歯付きロッド700を示し、ここでラチェット歯706はオフセットRによって隔てられている。図22は、正方形の歯708を有する歯付きロッド700を示す。図23は、ラチェット歯を有する歯付きロッド700を示し、ラチェット歯は、歯付きロッド700に巻き付いて固着される螺旋状材料710によって形成される。螺旋状材料710は、例えば焼結、溶接、はんだ付けまたは接着を含む任意の好適な様式で、歯付きロッドに固着されうる。図24は、螺旋ねじ山712で形成されるラチェット歯を有する歯付きロッド700を示す。螺旋ねじ山712は任意の好適な様式で形成されうるものであり、例えば、歯付きロッド700に切り込まれるか、または、歯付きロッド700の疲労寿命を増大させうるねじ転造操作によって形成される。
【0026】
図25および26は、三角形の歯714を有する歯付きロッド700を示し、この歯は歯付きロッド700の外面にわたってまっすぐ、すなわち直線的な軌道で形成される。図26および27は、三角形の歯714を有する歯付きロッド700を示し、この歯は歯付きロッド700の外面にわたって半径方向に、すなわち非直線的な弓形の軌道で形成される。
【0027】
図29および図30は、本技術のねじロッド構造の第7の例を示し、図30は断面図である。ねじロッド構造800は、ラチェット歯804を有する歯付きロッド802と、骨ねじ806とを含む。骨ねじ806は、ねじ軸808と、ねじ頭810と、止めねじ812と、歯止め814とを有する。歯止め814は、ねじ頭810の側面に位置するトグル歯止めである。トグル歯止め814は、ねじ頭810の側面の陥凹816内に収納される。トグル歯止め814は、ピンなどのファスナ818によって、好ましくはトグル歯止め814の中心において、ねじ頭810に取り付けられる。トグル歯止め814は、ファスナの周りを、図30に示す第1の位置から、第1の位置のそれとは反対の向きを有する第2の位置まで回転しうるものであり、したがって、骨ねじ806が、歯付きロッド802の長さに沿ってそれぞれ第1または第2の方向に徐々に動くことを可能にする。トグル歯止め814は、ばね荷重式であってもよく、あるいは、操作者が及ぼす手動の力によってそれを第1の位置から第2の位置まで回転させるために十分な摩擦を示しうる。
【0028】
屈曲または回転する歯止めを既に説明したが、歯止めが歯付きロッドから直線的に移動して離れ、螺旋ばね、板ばね、機械加工ばね、または任意の弾性材料などのばねの作用によって、歯付きロッドとの接触に戻ることもできると理解すべきである。図31〜図33は、そのような直線的に移動する歯止めを有する本技術のねじロッド構造の一例を示し、図32は分解図であり、図33は断面図である。ねじロッド構造900は、ラチェット歯904を有する歯付きロッド902と、骨ねじ906とを含む。骨ねじ906は、ねじ軸908と、ねじ頭910と、止めねじ912と、歯止め914とを有する。歯止め914は、ねじ頭910の側面に取り付けられており、キー溝924を有するねじ頭空洞922に位置しうる。歯止め914はプランジャ歯止めであり、歯916、止まり穴926、螺旋切断部918および回転防止ボス920を有する。螺旋切断部918は、プランジャ歯止め914を螺旋ばねのように圧縮させる。螺旋切断部918の代わりに、プランジャ歯止め914に巻き線型螺旋ばね、板ばね、または他の弾性材料を組み込んでもよい。プランジャ歯止め914の回転防止ボス920は、ねじ頭910のキー溝924と位置合わせされることで、プランジャ歯止め914と歯付きロッド902のラチェット歯904との位置合わせを維持することができる。骨ねじ900が歯付きロッド902の長さに沿って徐々に動くと、螺旋ばね918は、プランジャ歯止め914が歯付きロッド902との接触を維持して一方向のみの運動を可能にするように、圧縮および伸展されうる。
【0029】
本技術の少なくとも1つの骨ねじと本技術の少なくとも1つのロッドとを含むねじロッド構造は、所望に応じて所与の構造の各レベルにわたって順次、圧縮力または伸延力を印加させることができる。
【0030】
少なくとも一例では、圧縮力または伸延力の印加は、最初に本技術の少なくとも1つの骨ねじを患者の脊椎の少なくとも1つの所望の骨部分に取り付けることによって達成することができる。一例では、第1の骨ねじを患者の脊椎の第1の骨部分に取り付けることができ、第2の骨ねじを患者の脊椎の第2の骨部分に取り付けることができる。骨ねじの少なくとも一方または両方が歯止めを有しうる。本技術の歯付きロッドは、任意で外科医などの操作者によって成形されてもよく、その後、各骨ねじに取り付けることができる。いくつかの例では、歯付きロッドを第1の骨ねじのねじ頭および第2の骨ねじのねじ頭に配置した後、第1の止めねじを第1のねじのねじ頭上に配置し、第2の止めねじを第2のねじのねじ頭上に配置して、歯付きロッドを各骨ねじのねじ頭内に維持することによって、歯付きロッドを各骨ねじに取り付けることができる。歯止めを有する少なくとも1つの骨ねじの歯止めを、歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向けることができる。いくつかの例では、所望に応じて伸延力または圧縮力のいずれかの印加のために、歯止めを、第1の位置または第2の位置で歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向けることができる。次に、歯止めを有する骨ねじ、または歯止めを有する少なくとも1つの骨ねじを歯付きロッドの長さに沿って徐々に動かすことで、所望量の伸延力または圧縮力を印加することができる。所望量の伸延力または圧縮力が実現された時点で、各止めねじを締め付けて、歯付きロッドに対して固定位置に各骨ねじを維持することができる。伸延力または圧縮力を一時的または持続的に維持することができる。
【0031】
伸延力または圧縮力を使用して、患者の脊椎の骨部分間の距離を変えることができる。例えば、第1の骨ねじを第1の椎骨に取り付け、第2の骨ねじを第2の椎骨に取り付けることによって、患者の椎骨間の距離を変えることができ、ここで少なくとも第1の骨ねじが歯止めを有する。次に、歯付きロッドを第1および第2の骨ねじに取り付けることができ、第1の骨ねじの歯止めを、歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向けることができる。この方法は、第1の椎骨と第2の椎骨との間の距離を変えることを含みうる。第1の骨ねじを所望の量で歯付きロッドの長さに沿って徐々に動かすことで、第1の椎骨と第2の椎骨との間の所望の変更された距離を得るのに十分な量の伸延力または圧縮力を印加することによって、第1の椎骨と第2の椎骨との間の距離を変えることができる。次に、変更された距離を、歯付きロッドのラチェット歯に係合する歯止めによって一時的または持続的に維持することができる。
【実施例】
【0032】
本技術のねじロッド構造を、図2〜6に示す例に従って作製した。歯付きロッドは、歯付きロッドの長さに沿って90°角を有する溝を切削することで形成された三角形のラチェット歯を有していた。溝は約0.75mm間隔で切削され、半径方向に約60°の弧として切削された。歯付きロッドは約5.5mmの内径を有し、グレード23チタン合金(Ti6A14V-ELI)から作製された。歯止めもグレード23チタン合金(Ti6A14V-ELI)で作製され、厚さが約0.016インチ(0.4mm)であった。歯止めのブレードは幅が約5mmであった。
【0033】
具体例を例示目的で本明細書において説明したが、本開示の真意または範囲を逸脱することなく各種変更を行うことができることが、上記から認識されるであろう。したがって、上記の詳細な説明を限定的というよりむしろ例示的であると見なすべきであり、かつ、すべての等価物を含む以下の特許請求の範囲が、特許請求される事項を特に示しかつ明確に特許請求するように意図されていると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯止めを含む少なくとも1つの骨ねじと、
少なくとも1つの骨ねじに接続され、複数のラチェット歯を有する歯付きロッドとを含み、
少なくとも1つの骨ねじの歯止めが歯付きロッドのラチェット歯に係合する、
圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項2】
歯止めが回動可能に骨ねじに接続されている、請求項1記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項3】
歯止めが第1の位置から、第1の位置より約180°にある第2の位置まで回動可能である、請求項2記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項4】
骨ねじが止めねじをさらに含み、歯止めが止めねじに接続されている、請求項1記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項5】
歯止めが保持リングによって止めねじ上に保持されている、請求項4記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項6】
歯止めが止めねじの下面に位置している、請求項4記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項7】
骨ねじがねじ頭をさらに含み、歯止めがファスナによってねじ頭の側面に装着されている、請求項1記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項8】
ねじ頭が、歯止めを受け止める歯止め受け止め溝を含む、請求項7記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項9】
歯止めが摺動可能に骨ねじに接続されている、請求項1記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項10】
歯止めを含む第1の骨ねじと、
歯止めを含む第2の骨ねじとを含み、
歯付きロッドが第1の骨ねじと第2の骨ねじとの両方に接続され、第1の骨ねじの歯止めが歯付きロッドのラチェット歯に係合し、第2の骨ねじの歯止めが歯付きロッドのラチェット歯に係合する、
請求項1記載の圧縮伸延脊椎固定システム。
【請求項11】
歯止めを含む第1の骨ねじを患者の脊椎の第1の骨部分に取り付ける段階、
ラチェット歯を含む歯付きロッドを前記第1の骨ねじに取り付ける段階、
第1の骨ねじの歯止めを前記歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向ける段階、および
第1の骨ねじを歯付きロッドの長さに沿って徐々に動かす段階
を含む、圧縮伸延脊椎固定を行う方法。
【請求項12】
歯止めが回動可能に骨ねじに接続されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
歯止めが第1の位置から、第1の位置より約180°にある第2の位置まで回動可能である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
歯止めが摺動可能に骨ねじに接続されている、請求項11記載の方法。
【請求項15】
歯止めを含む第2の骨ねじを患者の脊椎の第2の骨部分に取り付ける段階、
歯付きロッドを前記第2の骨ねじに取り付ける段階、および
第2の骨ねじの歯止めを歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向ける段階
をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
歯止めを含む第1の骨ねじを第1の椎骨に取り付ける段階、
第2の骨ねじを第2の椎骨に取り付ける段階、
ラチェット歯を有する歯付きロッドを前記第1の骨ねじおよび第2の骨ねじに取り付ける段階、
第1の骨ねじの歯止めを歯付きロッドのラチェット歯に係合する方向に向ける段階、ならびに
第1の椎骨と第2の椎骨との間の距離を変える段階、ならびに
第1の椎骨と第2の椎骨との間の変更された距離を維持する段階
を含む、患者の椎骨間の距離を変える方法。
【請求項17】
変更された距離が一時的に維持される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
変更された距離が持続的に維持される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
第2の骨ねじが歯止めを含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2013−516273(P2013−516273A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548007(P2012−548007)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058624
【国際公開番号】WO2011/084275
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【出願人】(512279604)ニューラクシス リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】